vol.40 「学校が好き」という才能

法政大学中学高等学校
「学校が好き」という才能
自由と進歩の下、他者と関わり、個性を磨く
1936年、前身となる法政中学校の創立以来、大学の『自由と進歩』の開かれた校風の下、
『自主自律』の精神をはぐくんできた。
「法政一中」
「法政一高」の名で親しまれた男子校から2007年に男女共学化、新キャンパスに移転した。更なる発展を目指し、
小規模校ならではの温かな雰囲気の中、一人ひとりの個性を豊かに伸ばしている。
共学第1期生は現在大学2年生。その原点である中高の6年間を伺った。
その中で、この言葉が心に残った。
「今の夢があるのは法政中高に行ったから」
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Hosei University Junior and Senior High School
運動部の中には、女子のマネージャーも活躍
ブラスバンド会、チアリーディング部、野球部による混成応援団
象に残っていると語る。「国語の先生が、以前、
を 認 め 合 う 風 通 し の 良 い 校 風 は そ の ま ま に、
ぶのが法政中高だ。興味を深め、互いの価値観
〝自由〟という言葉を考えた時、真っ先に浮か
ればと強く思いました」。更には裁判傍聴や模
から物事を見つめ、自分で考える力を持たなけ
るだけの勉強だけじゃなく、今までと違う視点
いて話してくださったんです。そこでただ覚え
裁判所に勤めていた経験があり、冤罪事件につ
2007年度の男女共学化により、ますます多
擬裁判など学外での体験の機会に恵まれたこと
どの科目もきちんと学ぶことで、幅広い視野と
学と密接に連携を行うことで、学部選びで失敗
これらと並行して高1からキャンパス見学会、
高2では卒業生の講演などを段階的に実施。大
も進路決定に役立ったという。
彩な個性が生まれ、その存在感を増している。
確かな教養を身に付ける。加えて特筆すべきは、
することなく、明確な目標を持った進学につな
その特徴を成すものが大学付属校という環境
を存分に活かした教育だ。文系・理系に分けず、
高2から実施される選択授業だ。法政大学の強
げている。
すごく活きています」。法政大学経済学部に進
ループワークの進め方など、高校時代の経験が
の部活の発表を忘れるくらい圧倒されて、入部
「入学式の時にブラスバンドの演奏を聴き、他
活動や行事に生徒たちが主体的に関わっている。
そして法政中高たらしめるものが自主自律の
精神だ。学校生活を充実したものにしようと、部
互いを認める
だから個性が生まれる
みであるマスコミをはじめ、英語でのディスカッ
ション、簿記演習など内容は多岐に渡る。その
形式もゼミや、卒業生・外部講師を招くなど、一
般的な授業とは一線を画す多様な学びを重視し
学した高橋慶安さんは、在学当時『数学とマー
を 決 意 し ま し た 」。 今 野 愛 海 さ ん( 法 政 大 学 社
ており、そこで将来の目標を見つける生徒も多い。
ケティング戦略ゼミ』を受講。企業とのアポイ
会学部)は在学中ブラスバンド会に所属。当初
「 大 学 で は ゼ ミ 長 を や っ て い る の で す が、 グ
ントからはじまり、調査・討論・発表まですべ
加わることで表現の幅が広がり、現在も野球部
て生徒が行った。「改めて振り返ると、高校生で
をはじめ多くの運動部の重要な大会で欠かせな
は男子生徒が多く
「体育会系文化部という感じ」
学OBの起業家などさまざまな業界で活躍する
い応援の要として学校を盛り上げている。
あのレベルをやっていたのはすごい」(高橋さ
人物の講演を行うなど、学外からの刺激も豊富
「内輪だけでなく、お客さんを含め、多くの人
部員も増え、妥協しない厳しさに新たな発想が
だ。高橋さんも自身の経験を踏まえ、在学生の
キャリアデザイン学部に進学した青柳賢信さん
( 今 野 さ ん )だ っ た と い う。 し か し 次 第 に 女 子
サポートを積極的に行っている。
は在学当時生徒会執行部に所属。さまざまな行
ん)と語り、大学にもひけをとらない授業内容
また個々の教員たちも教育への高い意識を持
ち、専門分野を活かした指導を行っている。法
は今の活動につながっているという。他にも大
学部に進学した加藤彩乃さんは夏期・冬期の特
事に携わり、合唱コンクールなど今も続く企画
そのことを再確認しようという発想でした。ほ
「 み ん な 学 校 が 好 き と い う の は 一 致 し て い て、
に 校 歌 を 歌 う と い う 初 め て の 試 み が 行 わ れ た。
えたい』との考えから、締めくくりとして最後
が集まる法政中高で全員が共有できるものを伝
く思い出に残っているという。『いろいろな個性
集める鈴掛祭(文化祭)はその集大成として強
を立ち上げてきた。中でも毎年多くの来場者を
に喜んでもらえる文化祭にしたかったんです」。
別講座で裁判事例について学んだことが強く印
高橋さん 在学当時はスキー部に所属
める温かな視線にあるのだ。
自由である理由、それは学校を愛し、互いを認
く自らの目標に突き進むことができる。法政が
して成り立っている。だからこそ臆することな
個性を尊重し、受け入れることが自然のものと
や先生の名前が出て尽きなかった。それぞれの
出を話す時、一様に朗らかで、次々と昔の仲間
なんです」(高橋さん)。卒業生たち4人が思い
徒も先生も、学校の中の人はみんな視点が様々
で自分に合ったものを学べるところ。だから生
なくいろいろな考えを知ることができ、その中
「法政のいいところは、押し付けられるのでは
成すものであり、最大の強みなのだろう。
全力を傾けられる。これこそが法政中高の色を
づいているからこそ、いざというときに団結し、
柳さん)。こうした意識が素直に生徒たちに根
とんど異論もなくすんなり決まったんです」(青
加藤さん 在学当時は女子バレー部に所属
(写真最前列右)
青柳さん(在学当時、写真後列右)
今野さんは在学中より被災地のボランティア
活動に従事、現在も継続している
高橋慶安さん
加藤彩乃さん
青柳賢信さん
今野愛海さん
毎年9月開催の鈴掛祭は最大の行事
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自分の道を選び取る
硬式野球部は秋季東京都野球大会でベスト4に進出