脊柱変形と筋硬結・圧痛の関係 秋田県 ほのぼの苑 サトウ マッサージ師 ジュン 佐藤 順 佐藤 貴子 猿田 光子 【はじめに】老人保健施設の入所者や通所者の中に は、脊柱変形を原因とする腰背部痛、肩こり、下肢の はりを有する人が少なくない。当苑では、これらの痛 みに対してマッサージがある程度の成果をあげてい る。今回、脊柱変形といわゆる筋硬結、圧痛点の関係 を調査し検討したので報告する。 【対象と方法】対象は、脊柱変形が認められ、かつ独 歩が可能な入・通所者20例である。全例女性で、その 平均年齢は78.5歳であった。方法は、同意が得られた 対象者にまず問診により日常生活動作での痛みの部位 などを聞き、触診にて筋硬結、圧痛点を調べた。ま た、脊柱変形を客観的に評価するために全例の脊椎レ ントゲン写真を観察し、有田らの分類に準じて円背、 凹円背、全後弯、亀背、平背、凹背の6群に分類し た。 【結果】脊柱変形型では全後弯が10例と最も多く、次 いで平背、円背のいずれもが4例であった。全後弯で は後弯頂椎から2横指遠位に圧痛点があり、筋硬結の 部位と一致していた。平背、凹背では上位胸椎レベル に圧痛、筋硬結がみられ、下位腰椎では筋硬結のみ存 在していた。円背では、第5胸椎から第10胸椎の間に 圧痛、筋硬結がみられ、第11胸椎から第2腰椎の間で は筋硬結のみ存在した。凹円背では、第8胸椎から第 12胸椎の間に圧痛を伴う筋硬結がみられた。 【考察】近年超高齢社会を迎え、脊椎骨粗鬆症に伴う 椎体圧迫骨折により脊柱変形を来す老人が増えてい る。しかも当苑の周囲町村では、主に農業を営んでい る家が多いため、更に脊柱変形を有する人が多い傾向 にある。脊柱の弯曲が正常な例では腰背部の筋緊張は 正常に保たれている。しかし、脊柱変形に伴い脊柱起 立筋群の緊張の分布が変化すれば、圧痛、筋硬結が生 じやすいと考えられる。全後弯型では脊柱起立筋が頂 椎を境に上下に伸展され、平背、凹背型では上位胸椎 部および腰部の筋が短縮する。円背型では、頸部、下 位胸椎部において筋が短縮し、上位胸椎部において筋 が伸張すると考えられる。筋が最適な長さよりも変化 した場合、立位姿勢を維持するためには、さらなる筋 緊張が強いられることになる。脊柱変形者に対して は、筋緊張の軽減というマッサージ効果を脊柱全体に 期待することは現実的ではなく、前述の筋に重点を置 いてマッサージすることで腰背部痛の軽減をはかるこ とが可能である。また、圧痛を伴う筋硬結の部では、 痛みは悪化する傾向があるため注意を要する。
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