第3回情報モラル向上研究会議「子どもの安全を守る情報モラル推進

第3回情報モラル向上研究会議「子どもの安全を守る情報モラル推進事業」議事録(抄)
平成21年12月25日
15:00~
白壁庁舎3階C会議室
1
あいさつ
【事務局(愛知県総合教育センター情報教育部長)
水井俊之】
愛知情報モラル対応講座に参加して、出会い系サイトの被害についての説明を聞いた。出会い系
サイト規制法が強化された結果、今年になって一般サイト(プロフ・ブログ)からの被害が、出会
い系サイトを上回ったそうである。
この 10 年間に、インターネットの発達とともに新しい犯罪が生まれ、それに対応して新しい法律
ができている。学校教育でも、10 年前は情報教育担当者が中心となってネットワーク犯罪などにつ
いて指導していたが、今では生徒指導担当者が中心となって携帯電話の使い方やネットいじめなど
について指導することが多い。
本日は情報モラル教育に関する実態調査の中間報告を行う。この会でご意見をいただければ、次
回に向けて掘り下げていけるので、委員の皆様のご意見をいただきたい。
2
議事(報告事項)
(1) 情報モラル向上研究会議委員の一部変更について
【事務局(愛知県総合教育センター情報教育部情報システム研究室長)
伊藤博行】
愛知県警察本部生活安全総務課サイバー犯罪対策室課長補佐の大森恒雄様に代わり、同じくサ
イバー犯罪対策室長の岩瀬広紀様に委員を委嘱する。
(2) 第2回啓発について
【事務局(愛知県教育委員会管理部総務課教育企画室室長補佐)
冨田正美】
金城大学の学生の協力を得て啓発パンフレットを発行したところ、子供会、大学、名古屋市教
育委員会からぜひほしいという問い合わせを受けるなど、大きな反響があった。
アスクネットが発行するフリーペーパー「Schan」に高校生との対談の特集を組んでもらい、そ
の中に愛知県の取組を載せてもらった。
愛知情報モラル対応講座に出席して、携帯電話の実態がよくわかった。
(3) 情報モラル専用サイト「i-モラル」の取組状況について
【事務局(愛知県教育委員会学習教育部義務教育課指導主事)
小澤厚義】
i-モラルでは現在小中学校の約6割(約550校)の実践を紹介をしている。学校現場での実
践内容として、年間計画に従って授業をしている学校、情報モラル週間をつくり公開授業をして
いる学校、公開授業で情報モラルの授業内容について保護者から意見を聞いた学校、教科での取
組を紹介している学校など、今後に生かすことができる内容が多くなった。
現在アクセス数は、1日あたり約1000件、開始以来延べ約19万件である。
(4) 家庭・地域・学校の連携による情報モラル向上推進事業について
【事務局(愛知県教育委員会学習教育部高等学校教育課主査)
橋本敏弘】
各地域で講演、研究発表、シンポジウムを実施した。講師として本会議の委員の方にも講演を
していただいた。参加者は中学校・高等学校の教員と保護者である。
中学生・高校生による情報モラルについての作文・ポスターの優秀作品の披露・表彰も行われ、
生徒の抱える悩みなどを直接聞く貴重な機会になった。
(5) 愛知情報モラル対応講座について
【事務局(愛知県教育・スポーツ振興財団生涯学習振興課教育主事)
金田季也】
第1回は講義と実践報告、第2回は愛知県の実態・疑似体験とワークショップという内容であ
った。その中で、「大人がもっと知ることが必要だ」「日ごろから親子のコミュニケーションを大
切にする中で、親が子供の携帯電話使用をコントロールすべきである」
「知らない人へ伝えていく
ことが重要である」などの意見が出された。
参加者の感想から「情報モラルに対する教師の意識の高まりは不十分である」
「保護者の無関心
をいかに改善するか」
「大人と若者のギャップをいかに埋めるか」「若者の力をどのように生かす
か」という問題点が見えてくる。
3
議事(協議事項)
(1) 情報モラル教育に関する実態調査の中間報告について
【事務局(愛知県総合教育センター情報教育部情報システム研究室研究指導主事) 小山真臣】
今回は実態調査の中間報告として、今わかっている範囲で結果を報告する。
調査対象は、県立高等学校78校と県立特別支援学校12校の高等部の生徒、保護者、教員で
ある。生徒9,094人、保護者7,752人、教員1,743人から有効回答が得られた。
ア
生徒向けアンケートより
携帯電話を持っている生徒は97%である。取得時期については小学校段階で16%、中学
校入学前後からの中学校段階で51.3%であり、高校入学までには7割近くの子供たちが、
既に携帯電話を取得している。このことから、携帯電話を含めた、情報モラル教育の早期実施
の必要性が伺える。
携帯電話の利用場面については、家族の目の届かないところでの利用が多い。携帯電話利用
に関する家庭内でのルールについては、「利用方法」についてのルールも「利用内容」につい
てのルールも「ルールがある」とする生徒が、保護者に対する同様の質問で、
「(子供と一緒に)
ルールを決めた」と考えている保護者より尐なく、親の意識と子供の意識はかなり差がある。
保護者が子供たちに具体的に指導することが必要である。
男女別にメールの送受信回数をみると、女子の方がメールを頻繁に利用している。問5の「1
日当たりのメール送受信数」回数と問2の「学習時間」の関係をみると、メール送受信回数が
多い生徒ほど学習時間が尐なくなっている。インターネットの利用手段はパソコンと携帯電話
がほぼ同じ割合であった。最近「インターネット機能」が問題となっている「通信機能付きゲ
ーム機」との回答もあった。普段学校のある日の携帯電話や自宅のパソコンなどを用いた1日
当たりのインターネットの利用時間はほぼ全国並みで、「4割以上」の子供たちが「1時間以
上」利用している。長時間のインターネットの利用は、携帯電話に関しては、パケット定額制
の影響も考えられる。子供たちがインターネットでよくしていることは、パソコンでの利用も
含まれているため「ホームページで調べもの」が多いが、携帯電話で行われることの多い「プ
ロフ・ブログの利用」も多い。問23の「1日あたりのインターネットの利用時間」と問2の
学習時間の関係をみると、1時間以上インターネットを利用する生徒に学習時間の減尐が見ら
れる。
チェーンメールを送られた経験については、多くの子供たちがチェーンメールを送られたこ
とがあると答えている。文部科学省の調査結果でみても、全国的にも「チェーンメール」が
多
い。ネット上での悪口を書かれた経験については、愛知県、全国ともに約1割である。自分の
写真や個人情報を流された経験については約5%である。インターネットで知り合った人と実
際に会った経験については、全国で7.7%、愛知県では約1割である。学校、クラスの中の
1割の子供たちがこの様な行動をとっているということで、犯罪被害が心配される。インター
ネットを利用していてトラブルに遭った経験については、本県では約1割の子供たちがトラブ
ルに遭ったと答えている。トラブルに遭った時の相談相手は、小学生、中学生、高校生と次第
に減尐しているが、やはり保護者に頼ることが多い。トラブルの解決に向けて、保護者の持つ
「知識」や「意識」が重要である。一方で、トラブルが起きた時に誰にも相談できなかった子
供も約1割いて、これらの子供たちには、トラブル時の対応方法について教えていく必要を感
じる。
フィルタリングの状況については、小学生、中学生とも「わからない」が多いが、保護者に
尋ねると実際には多くがフィルタリングを行っている。それでも、フィルタリングのない状態
で利用している小学生の2割、中学生の4割というのは尐ないとは言えない。県立高校・特別
支援学校の生徒では半数以上がフィルタリングのない状態で、保護者の回答とほぼ同じである。
文科省の調査と比較するとフィルタリングの割合が倍になっているが、これは文科省の調査時
期が昨年の秋冬であり、今年 4 月の規制法の実施前であったことが影響していると思われる。
学年別にみたフィルタリングの状況についても、フィルタリングサービスが原則ではなかった
現在の3年生の方がフィルタリングしていない、または、解除した子供が多く、今後の推移に
注目する必要がある。フィルタリングをしていない、または解除した理由は、プロフ・ブログ
の利用や音楽・動画などのダウンロードのためが多くなっている。また、現在フィルタリング
をしている生徒に、フィルタリングを解除したいかと尋ねたところ、約50%が「解除したい」
と答えており、その理由として、プロフ・ブログと音楽・動画のダウンロードが多くなってい
る。
プロフやブログを作って、インターネットで公開した経験は、全国では約4割。本県では約
5割との結果がでた。男女別に見てみると、男子平均33.3%に対して、女子平均67.6%
と、女子のプロフ・ブログの利用が非常に多い。(これらのプロフ・ブログの利用に伴って、
自分のページにアダルトサイトへのリンクの書き込みや知らない人から交際を求められると
いったことも起きている。)子供たちが公開したプロフ・ブログサイトは、約8割が携帯専用
サイトで、その半数以上が何らかの形でパスワードが設定されており、子供たちが何をしてい
るかを把握することは難しくなっているのが現状である。プロフ・ブログの中では、自分の名
前や学校名、写真を公開したり、友達の情報を掲載したりする子供も多くいる。学校裏サイト
以外にも、プロフやブログなども学校の情報交換の場として利用されることもある。自分の学
校やクラスなどに関するプロフ・ブログへのかかわり方については、2/3がその存在を知っ
ており、頻繁にアクセスしている。
インターネットや携帯電話の危険性について「誰から学んだか」については、低学年では保
護者、高学年では学校の先生が多くなる傾向がみられる。
「ルールやモラルを大切にして行動していると思うか」については、8割以上の子供たちが
意識を持って行動していることを誇らしく思うと同時に、残り2割の子供たちへのさらなる啓
発の必要性を感じる。
イ
保護者・教員向けアンケートより
携帯電話を持たせた理由は多い順に「連絡が取れる」
「子供にせがまれた」
「お祝い」
「友達と
の付き合い」となっている。
「連絡や安心」というキーワードともう一つ「友達づきあい」(仲
間はずれはかわいそう)という事情が見えてくる。携帯電話を子供に持たせる上でよい点とし
ては、「連絡が取れる」「安心」を挙げており、反対に心配な点としては、「トラブルに巻き込
まれる心配」や「勉強の妨げ」を挙げている。勉強時間との関係は先に示したとおりだが、ト
ラブルについても心配しながらフィルタリングを解除してしまうのが現状である。フィルタリ
ングを解除した理由のうち、一番多かった理由は「子供を信頼している」であった。子供から
インターネットの利用に関して悩み相談を受けた経験については、チェーンメールが26%、
悪口が11.6%、写真や個人情報の流出が4.8%であった。子供のプロフやブログの存在
を知っているかについては、「見た、知っている」、「あると思う」合計で28.5%であり、
半数しか気づいていない。書き込む内容についての指導をしているかについては、約1/4し
か指導されていない。これは、プロフ・ブログについてあまり理解されていないからかも知れ
ない。家庭で、子供たちに携帯電話やパソコンなどの利用に伴うモラルを指導している中心は
母親であり、保護者、特に母親への情報モラルの啓発が重要である。それぞれの言葉の認知度
についても「プロフ」や「学校裏サイト」については半数以上があまり理解されていない。保
護者が携帯電話やパソコン利用に伴う危険について知るのは、学校からの配布や保護者会など
であり、これに比べて携帯電話の購入時などの説明で知る機会は尐ない。
教員に尋ねた「学校で指導しなくてはならないと思うこと」と、保護者が学校に求める「子
供たちに指導してほしいこと」では意識のずれが大きく、「ワンクリック詐欺」で顕著な差が
ある。教員が学校から保護者への情報提供として考えていることと、保護者が学校から情報提
供してほしいと考えていることを比べると、保護者は話し合いや講演会などの「参加型」より
も、「学校だより」や「ホームページ」のような自宅で受け取れる形を望んでおり、ここでも
意識のずれを確認できた。
【吉清忍委員(総務省東海総合通信局情報通信部電気通信事業課課長)】
今回の実態調査で愛知県の特徴等は読み取れたのか。全国との調査と似ていると思われるが、
いかがか。
【事務局
小山真臣】
今の段階では全国調査とほぼ同じ結果のように見えるが、今後分析を進めていく中で特徴等が
見えてくると思う。
【阿部圭一委員長(愛知工業大学教授)】
P9の問49について、文科省は複数回答だが、愛知県は複数回答ではないのか。
【事務局
小山真臣】
複数回答ではない。回答方法が異なるので単純に比較することができないが、愛知県では小中
高とも保護者から説明を受けている生徒が多く、学校の先生から説明を受けている生徒が尐ない。
【長谷川元洋副委員長(金城学院大学准教授)】
P13の問35について。
「学校で指導しなくてはならないと思うこと」の質問項目の中に「ワ
ンクリック詐欺や架空請求などへの対応」があるが、この問いに対する教員の数字が6.1%と
低いが、どの教科の先生が回答されているか教えてほしい。
【事務局
小山真臣】
これを回答された方の教科は分析できていない。アンケート対象は担任、情報担当者等である。
【長谷川元洋副委員長】
この調査結果から来年度の教員研修の内容を検討されると思うが、このワンクリック詐欺や架
空請求などは家庭科や公民などの授業の中で指導することもできるので、詳細に分析され活用さ
れるとよいと考えて質問をした。
【大川しげり委員(愛知県小中学校PTA連絡協議会副会長)】
問38、39の3番、4番で教員と保護者に差を感じるが、そのあたりを具体的にもう尐し教
えてほしい。教員が必要としているのは、専門家による講演会で、保護者の方が必要としている
のは、子供の授業への参観型である。このあたりの差を埋めるためにはどうしたらいいのかとい
うことが気になる。私は中学生の保護者なので、子供から技術家庭の授業などで、実際にこうい
う情報提供はあると聞くが、保護者としては、全く何も知らないという状況がよく感じられるの
で、そのあたりを教えてほしい。
【事務局
小山真臣】
教員側は、専門知識を持った方の知識を直接保護者の方に聞いていただいた方が良いというこ
とで、講演会を実施したいと考えているように思う。それに対して、保護者の方々は、子供たち
を含めたやりとり中でそういった知識をソフトな感覚の中で受けられたらいいと考えているよう
に感じる。両者の差はについては、今後詳しく分析していきたい。
【大澤義洋委員(瀬戸市教育委員会教育長)】
全体を通して大人と子供たちの意識のずれが各所で見られる。これは予想していたことではあ
るが、愛知情報モラル対応講座の感想(資料4)を見ると、「大学生は当たり前だと思っている
ことを、大人たちはびっくりする」と大学生はそのことを言っている。この辺の調査をもう尐し
深めていけないか。今回のこの調査は実態調査である。「携帯電話を持ちたいのか、持ちたくな
いのか」「持ったらどういうことに注意したいかと思っているのか」という意識調査が今後必要
である。一定の指導をする前と指導した後との違いを表す資料が欲しい。
【長谷川元洋副委員長】
(大川しげり委員の質問に関連して) 義務教育問題研究協議会でこういうもの(情報モラル教
育の学年別指導計画)を現在作っていて、私も協力している。これは、今年度中に完成し、来年
4月には愛知県内すべての学校に配布される。そうすると、この回答の中で、「自信がない」と
答えた先生も、ある程度の自信を持って指導ができるようになると期待している。現時点では,
指導できるように研修するなどして準備をしている段階であるため,情報モラルをテーマとした
授業を保護者に参観していただくようになるまで,もう尐し時間がかかるのではないか。
【阿部圭一委員長】
(大川しげり委員の質問に関連して) 「情報モラルの専門家による保護者を対象とした講演会
を行うこと」に対する希望が保護者の方は教員に比べて1/3ぐらいしかないというのは、もう
ひとつの(フィルタリング解除の理由についての)設問で「自分の子供を信用している」という
回答が5割近くあったことと関連している。保護者の方は実態を知った上で信頼しているのか、
実態を知らないから子供を信頼できるのではないか。実態がこんなにひどいと分かっていれば、
わざわざ足を運んででも専門家の講演会や説明会に足を運ぶのだが、(実態を知らないから)そ
の辺が今ひとつであるという可能性が考えられる。
リスクというのはリスクの起きる確率と起きた時の被害の程度、その両方が関わってくる。い
くら被害の程度が大きくても、自分の子供がそういう被害に合う確率が小さいと見ている間はそ
んなに関心が高まらない。例えば、「いじめで不登校になるとか転校せざるを得ない」これは大
変な被害であるが確率的には非常に小さいから(保護者は)他人事だと思っている、という状況
がある。それをどうしていくかが一つのポイントである。
【下廣信秀委員(愛知県公立高等学校PTA連合会会計)】
2ページのところの問17が一番分かりやすい。保護者はルールを決めたということで子供を
信用している。設問にあるのはルールについてであるが、マナーについてとなるとこれぐらいは
当然知っていると保護者は認識して、例えば「危険なところはどういうところか」というような
肝心な指導をしている保護者は尐ないのではないか。資料4の「講座参加者の声を通して出てき
た課題」の中に保護者の無関心というのがあったが、保護者の方がもっとしっかりしないと根本
的に直らない。学校の先生と保護者の間にギャップがあり、保護者の意識が尐なく危険性を感じ
ないから、専門家を呼ばなくても良い(と感じている)。長い期間ではなくても専門家を呼んで
やっていった方が効果的である。また、保護者同士の話合いが効果的だと思う。
【松本時寛委員(常滑市立青海中学校校長)】
最後の問35、36、38、39については、このアンケートの回答が2つまでとなっている
ことが結果に反映している。学校で生徒に指導する場合、(ネット上での誹謗中傷など)こうい
った問題は生徒指導上の問題として捉えて指導することが多く、その必要を感じている。それが
45%とか55.1%という上の二つにはっきり出ている。
問38、39も保護者と教員の意識の違いが出ている。我々が使い慣れているパソコンや携帯
電話の機能はほんの一部なので、学校現場にいても実際にはパソコンや携帯電話に関わる指導は
非常に弱い。学校の方でも指導するが、携帯電話やパソコンのインターネットの使い方について
は、保護者にもっと見てほしいという、教員の願いがある。3のところの保護者を対象とした講
演会や安全教室を開催する学校は多いが、参加者が非常に尐ないという声が聞こえてくる。関心
のある保護者には参加してもらえるが、そうでない保護者の方が多いのが実態である。できるだ
け参加してもらえるように、興味を持ってもらえるように学校でも考えるが、これがなかなか難
しい。アンケートの内容をどこまで理解して回答しているのかというのも一つ問題がある。
【稲葉耕一委員(東浦町教育委員会教育長)】
「保護者の方にいろいろな実態を知ってもらいたい」「本当にこんな危険な目に遭うことが実
際にあるのだから専門家から(保護者に)話をしてもらったほうがよい」という思いが、先生方
にはある。ところが、
(保護者には)
「高校生だから、直接本人が講演を聞いたほうが、むしろイ
ンパクトがある」
「私が聞いて子供に話をしても、年齢が高くなってくるとあまり聞かない」と
いう意識が先にたってしまい、その差がこのアンケートに出ているのではないか。(学校では)
生徒を対象にした講演会をやっていくことが必要であり、特に高等学校の場合は通学範囲も広い
ので、保護者の方にはプリントで知らせるということが多いのではないか。
私の町の中学校の場合は、直接生徒対象に、特に危険性のある事例などをサイバー犯罪対策室
へ(講演を)お願いして、実態を生徒に知ってもらう。その時に都合のつく保護者もいっしょに
参加してもらうという形態が多い。現実にこんな危険まで受けている場合があるということを聞
いた保護者が、そこからまた自分の知り合いに話をして徐々に伝わっている段階である。
【阿部圭一委員長】
この点(学校から保護者への情報提供)について、昨年行われた小中学校での結果との違いが
あれば、それを次回示してもらいたい。確かに、(保護者への情報提供は)小中学校で重点的に
行った方がいいかもしれない。
【下廣信秀委員】
以前より先生方は子供たちに指導しているし、保護者より子供たちの方が携帯電話のことは詳
しいので、高校生くらいになると携帯電話がどれだけ危険かということをわかっている子供もい
る。ただ、それを知らない親がいること自体がよくない。高校生の子供をもった親も、小学生(の
子供をもった親)も親であることは同じなので、もう尐し保護者を教育するほうが、より効果的
ではないのか。
【事務局
冨田正美】
委員さんが言われることを聞き、本当に若い人のトラブルをなくそうと活動していることをう
れしいと感じた。携帯電話が使われ始めたのは2000年頃であり、今は携帯電話があることが
普通になってきたが、われわれ(が若い)ころは当然携帯電話がなかった。(子供たちと我々は)
そこから違うのということを踏まえて、携帯電話がはびこっている世の中にいる子供たちのこと
を考える必要がある。今なお携帯電話が電話だと思っている先生方、大人、保護者がいる。
私は携帯電話を使って疑似体験を受けたが、確かに2・3回クリックするだけで、卑猥な画像
が簡単に手に入る。そういうことを話してもらうことは大事である。子供がひっかかるトラブル
を知っておくことは必要である。
(主に指導をするのは)先生か保護者かということについては、契約しているのは保護者だか
ら、
(指導するのも)保護者である。ただ、子供を携帯から守るという観点では、
(指導するのは)
親でも先生でも地域の人でも誰でもいい。知っている人から知らない人へ伝えていくことは大事
なことであり、保護者同士が伝え合うことは効果的である。
【吉清忍委員】
総務省でも3~4年前から、保護者の方や教員の方に対する啓発講座として、e-ネットキャ
ラバン(安心安全講座)を実施している。電気通信事業者の方に協力してもらい、ある程度のス
キルを持つ専門家の方々を認定の講師として登録し、各地のニーズにあわせて講師を派遣してい
る。
すでに、年間1千講座以上の実績をあげているが、東海4県の地区では、愛知県の開催回数が
尐ないという実態がある。愛知県の教育委員会の方にも、e-ネットキャラバンを活用してもら
いたい。
すでに三重県は、県の教育委員会が直接力を入れて大勢の講師を育成・登録している。講師の
方には県内の各中学校や高校のPTAの会合などに行ってもらい、必要な講座を実施してもらっ
ている。非常に好評で、講座を受けた保護者の方からは、「全然知らないことを本当によく教え
てくれてありがとう」という反応が多かった。だから、先生方や保護者の方に理解してもらうこ
とが重要だと前から認識していた。
講座が行われた地域での犯罪の件数を警察の方に伺うと、確かに(その効果が)実績として出
ている。愛知県の方にそのような状況について知ってもらうチャンスが今までなかったので、こ
の場を借りてe-ネットキャラバンの活用について検討をお願いする。
【大澤義洋委員】
今の若い人に比べて、今の親たちや学校の先生たちは携帯電話の無い時代に育っている。その
ような経験のない大人たちには(子供たちの指導は)無理かもしれない。しかし、だからこそ知
ってもらいたいということで(保護者対象の講座を)やっていく必要がある。
今の子供たちが親になったり、あるいは社会人になったり、あるいは学校の先生になったりし
たときに、学校現場や社会での情報モラルに対して(の考え方は)いったいどのように変わって
いくのだろうかと考えると、今はつらい時代だという印象がある。
(子供たちが)社会人になったときにきちんとそれを伝えていけるように、学校として今の子
供たちにどうすべきか。小学校1年生から高校生までの、その年齢に応じた計画的なカリキュラ
ムを作り、そして計画的に(情報モラルの指導を)していく必要がある。確かに生徒指導など様々
な場面で指導しているが、きちんとした形で位置づけていく必要性がある。
【阿部圭一委員長】
当面は親や生徒本人への働きかけを進めなければいけない。その点、e-ネットキャラバンに
ついては大変評価をしている。一方、NPOで年間500回ぐらいの講演会・講習会をやってい
る青尐年メディア研究協会の下田博次さんが、「講習が年間3000回仮にあったとして、毎回
200人の人に聞いてもらったとしても年間60万人しか受講できない。小学校5年から高校生
までとその保護者というと1000万人ぐらいになる。焼け石に水だ」と言っている。そこで、
下田さんたちは、知っている人から知らない人へ、問題に気づいた人が周りや親に、どのような
問題があるのかを口コミで伝えてもらうということをすすめている。私もこれを広めていくべき
だと思っている。
【事務局(愛知県教育委員会学習教育部義務教育課主査)
玉置崇】
現在、愛知県ではi-モラルという情報モラル向上のための専用サイトが立ち上がっている。そ
こでは、各学校での情報モラル向上に向けた授業や指導を呼びかけて、その写真やテキストを掲
載している。さらに、保護者にこの専用サイトを見てもらうために、各校のホームページにリン
クを設定してもらおうと考えている。
今後、その後の保護者の意識の変化やどのようにモラル向上が図られたのかという調査もして、
本当にこのような取組が、これらの目的に資するのかという点について、調べていかなければな
らない。
現在、義務教育問題研究会では、3月末までに、小中学校に指導案付きで提出してもらおうと
考えている。これを円滑に実施して、今後の活動の充実につなげていきたい。
【白上昌子委員(特定非営利活動法人アスクネット)】
「Schan」の中で、保護者と高校生の座談会形式の対談を企画したが、基本的にサイトな
どにアクセスすることは危険性が高いという論調であった。例えば、自分の子供が掲示板を作り
たいと言ったとき、ここの(座談会に参加した)保護者は、「そのような危険なものは、作っち
ゃだめだ」という感じであった。確かに、悪口を書いていじめたりすると悪い方向にいってしま
うが、励ましを送るとか応援するといったよい使い方もある。
公園で「アメあげるから付いておいで」という誘いに対して、危ないから付いていってはいけ
ないと親が教えるように、ネット上の甘い誘いに対しても、「アメあげるから付いておいで」と
いうことと同じだということを教えなくてはならない。ようやく法整備も追い付いてきたのだか
ら、バーチャルな世界とリアルな世界の区別なく、サイトの中での出来事も何が犯罪で何が悪い
ことかを、子供が小さい段階からきちんと教えていくことが必要である。親と子が一緒になって
学んでいく時代がきたのではないか。
(2) その他(研究会議の進め方について)
【阿部圭一委員長】
できたらこの研究会で何らかの提言を出すべきではないか。もちろんこれは委員の皆様の総意
で決まることである。
【駒田弘次委員(KDDI株式会社中部総支社管理部課長)】
KDDIでは一年間に1000回以上のケータイ教室を開催しているので、ある程度テキスト
は充実してきた。また、ドコモさんも当社も文科省さんもDVDを出している。テキストやDV
Dは数的にも内容的にも各学校にそれぞれ配布できるぐらい整ってきた。あとは仕上げとしてど
うするかということである。
私は講師として点的には説明しているが、点が線になって広がっていくためは、先生方が教材
を利用して尐し裾野を広げていくことが一番である。
【大川しげり委員】
携帯電話の有害サイトの利用もかなり低年齢化していることを考えると、小学生(中学年)か
ら中学生への調査を継続的に、より深めてもらいたい。
【長谷川元洋副委員長】
今回は携帯電話をターゲットにしているが、携帯ゲーム機も対象に入れなければならないので
はないか。ニュージーランドのNGOが作った「ネットいじめ(Cyber bullying)」をテーマに
した啓発ビデオの中では、子供は携帯電話に加えて携帯ゲーム機も使ってインターネットにアク
セスしている。今では携帯ゲーム機はインターネットに接続でき、携帯電話やコンピュータと同
じことができる。ツールを固定化せず、コミュニケーションがとれるという機能を持ったものに
焦点を当て、本質的なことは何かをもっと明確に議論をしていかなければならない。来年度以降
も継続的な調査が可能ならば、それも検討してもらいたい。
【岩瀬広紀委員(愛知県警察本部生活安全総務課サイバー犯罪対策室室長)】
講話をしていると主催者からの要望として「インターネットと携帯電話について話をしてほし
い」といわれることが多いと感じる。インターネットにつながる機器はいろいろある。殊更イン
ターネットと携帯電話を考えていることが、まず誤解であろう。実際にゲーム機を使って子供が
犯行予告をネット上に書き込む事件が愛知県でも起こっている。機器を分けて考える必要はなく、
インターネットに接続できるものをひと括りにして教育していく必要がある。保護者は「携帯は
危ない」という認識になっているケースが多いためそのような話をしてしまうが、実際にはイン
ターネットに接続できるものは同じだ、という前提を保護者にも理解してもらう必要がある。
【吉清忍委員】
面的な広がりを今後追及していただけないか。携帯電話事業者やケーブルテレビ事業者が、子
供のためにとか親御さんと一緒にとか様々な機会に講話をするなどの活動をしている。現在その
各活動が点になってしまっている。社会運動化して、それぞれの親御さんや先生方が地域でいろ
いろ口伝えをしていくことが重要なことではないか。組織的に何かを組み立てていくというのは、
どうしても線的なあるいは点的なものでしかない。面的に広げるには、地域のコミュニティの中
でそういった話題が出て、親御さんたちが参加してやっていくという形になればよい。そのため
に、われわれがトリガーになればいいと思い、e-ネットキャラバンの活動を通じて地域に入っ
ている。e-ネットキャラバンを活用して、そのスタイルを真似しながら新たな講座や地域の話
合いの場を作ってもらえば、社会運動として愛知県の中に広がっていくのではないか。
【吉清忍委員】
愛知県を含めた東海4県の中学生50万人にこのようなカード(e-ネット安心カード)を配布
した。来年度も予算が付き、全中学生に配布の予定なので協力していただきたい。東海4県では
名古屋市からの積極的な協力が得られないので、愛知県からの口添えをいただきたい。このカー
ドによる当局への中学生による悩み相談などトラブルなどの相談には直接対応している。カード
の配布によるメリットは、一人で悩まないことが重要だと知ってもらうことである。ぜひ協力し
ていただきたい。