ようこそ! モンテ・ビアンコ(左)などの高峰に囲まれたトレイルを、ゆっくり、 どこまでも歩く(藤巻 翔=写真) アオスタ州概念図 シャモニ イタリア グラン・コンバン スイス 4314 ラ・ トゥイール アオスタ谷 グレッソネイ モン・エミリウス ピラ プッタ・テルシバ 3515 グラン・ グラン・ サッツエール パラディーゾ 3656 4061 10 20km ピエモンテ州 ミラノ・トリノへ コーニュ 3557 ドンナス フランス 0 モンテ・ ローザ グランサンベナルド峠 モンテ・ クールマイユール ビアンコ アオスタ 4201 4559 チェルビニア グランド・ジョラス 4810 モンテ・ 4478チェルヴィーノ contents Theme 1 トレッキング P122 〜 クールマイユール周辺 グラン・パラディーゾ周辺 チェルビニア周辺 Theme 2 クライミング Theme 3 トレイルレース Theme 4 インフォメーション P130 〜 ローマ モン・ブラン︑ マッターホルンなどの名峰が並ぶアルプス山脈西部︒ この山脈の南側にあたるイタリア・アオスタ州 ︵ヴァッレ・ダオスタ自治州︶ には︑ 明るい陽光が降り注ぐ 4000m峰と︑ それらをつなぐ無数の静かなトレイルがある︒ トリノ ミラノ P132 〜 P136 取材協力=ヴァッレ・ダオスタ自治州観光局 121 yama-to-keikoku 2013.03 辺 クールマイユール周 0 10km デュ・ミディ 3842 グランド ・ モンブラン・ ジョラス デュ・タキュル 4201 4248 1695 2026 リコニー山 クール マイユール ミアージュ氷河 2343 谷 2930 コンバル湖 ェニ ヴ 1239 2197 エリザベッタ B TM 小屋 Alt eV ie ラ・ トゥイール B TM te Vie Al 2934 マラトラ峠 ボナッティ小屋 谷 モンテ・ ェレ ビアンコ ブレンバ氷河 4810シェティフ山 フ グラン・ フェレ峠 ラバシェイ シャモニ エギーユ・ スイス フランス 122 Theme 1 トレッキング モンテ・ビアンコ︑ モンテ・チェルビーノ︑ モンテ・ローザ︑ グラン・パラディーゾなどの名峰を擁するアオスタ州︒ 美しいトレイルのごく一部を︑ ハイライトで歩いた︒ 藤巻 翔=写真 宮崎英樹・本誌=文 アルパインツアーサービス=取材協力 フェレ谷の目抜き通り 「TMB」を歩く 中央の広い谷がフェレ谷(Val Ferret) 。 TMB(ツール・ド・モンブラン)のコー スでも特に人気が高いのが、グランド・ ジョラス(Grandes Jorasses、4203m、 写真右)を間近に見上げられるボナッテ ィ小屋(Rifugio Walter Bonatti)付近だ。 中央奥の雪をかぶった山がモンテ・ビアン コ(Monte Bianco、4810m) 。 モンテ・ビアンコの麓 ヴェニ谷からエリザベッタ小屋へ 今日はヴェニ谷を詰め、コンバ ル 湖(L a g o Combal) を経てエリザベッタ小屋(Rifugio Eli zabetta Soldimi、2197m)まで。ミアージュ氷 河などモンテ・ビアンコ南面の氷河群を見上げ ながら歩く半日行程だ。ジープ道のため気軽に 歩け、子ども連れやお年寄りの姿も多い。正面 に目的地のエリザベッタ小屋が見えてきた。 モン・ブラン ︵48 m︶ ︒ ーロッパアルプスの最高峰 フランスとイタリアの国境 など︑多彩なトレイルを楽しんだ︒ 山︑ラバシェイからマラトラ峠の往復 的登山者以外は訪れないリコニー山登 ールの衛兵・シェティフ山登山︑本格 ヴェニ谷ハイキングや︑クールマイユ 今回はクールマイユールを拠点に︑ でも楽しむことができる︒ スの便利な一部区間は軽装のハイカー 踏破を狙うトレッカーも多い︒アクセ モンブラン︶は人気が高く︑全行程の キングコースのTMB︵ツール・ド・ のモン・ブラン山群を一周するトレッ ン・ブランやグランド・ジョラスなど スイス︑そして再びシャモニへと︑モ タリアのクールマイユールを通って︑ 大きい︒フランスのシャモニから︑イ また︑ここはトレイルのスケールも 面が大きいと思う︒ つこいイタリア人の国だから︑という の強さだけでなく︑やはり陽気で人な はなにしろ明るい︒その理由は日差し ない︒だが︑山全体や町に漂う雰囲気 ランスやスイス側より小さいかもしれ あたるためか︑確かに氷河の規模はフ イユールだ︒アルプス山脈の南斜面に イタリア側にある登山基地がクールマ はモンテ・ビアンコと呼ばれる︶の南︑ 同じくモン・ブラン︵イタリア側で ん日本人も︶で大にぎわいとなる︒ は世界各国から訪れる観光客︵もちろ 大観光リゾートのシャモニがある︒夏 に位置し︑北のフランス側山麓には一 ヨ 1 0 124 リコニー山頂から モンテ・ビアンコの大展望を独占 リコニー山 (Testa di Licony、2930m) は、モン テ・ビアンコやグランド・ジョラスの最高の展 望台だ。クールマイユールから半日行程で登頂 できる。山頂直下に立つ快適なパスカル避難小 屋に泊まり、迎えた翌朝、 「白い山」 (モンテ・ ビアンコの直訳) が赤く染まるのを、飽かず眺 めていた 1 市街地の裏山、シェティフ山へ クールマイユール市街からモン テ・ビアンコ方面を見たとき、ま 2 山道をたどる。危険箇所もなく、 比較的容易に山頂へ立てる。 るでモンテ・ビアンコを隠すため 標高2343mの山頂に立てば、 に立ちはだかっているような三角 モンテ・ビアンコの眺望はもちろ 錐の岩峰が見える。これがシェテ ん、ヴェニ谷やフェレ谷の奥まで ィフ山 (Monte Chetif) だ。 見渡すことができる。頂上から東 難攻不落に思えるが、じつは裏 に100mほど進むと、岩峰上に巨 側に登山道がある。ゴンドラが運 大なマドンナ像が設置してあり、 3 1山頂からはクールマイユール市街が 一望 2シェティフ山 (中央手前) とモ 行していれば山頂南側まで上がり、 ここからクールマイユールの市街 西側へ回り込んでから頂上への登 リコニー山頂の避難小屋に泊まる イタリア語で避難小屋はBivacco いトレイルを登り、リコニー峠 (ビバッコ) 。避難小屋といっても、 (C o l l e d i L i c o n y)を経てパスカ 本当のシェルターから、設備が充 実したものまでさまざまだという。 ル避難小屋へ到着。 食中。2段のベッドスペースの布 Pascal)は快適だよ」と、ガイド 団は新しく、太陽光発電の照明も のパトリックが教えてくれた。布 ある。一番の贅沢は、部屋にいな 団、 ガスコンロ、 鍋などもあるそう がらモンテ・ビアンコを眺められ だ。 「よし、行こう」 と即決。 ること。同宿者と食料やワインを 125 yama-to-keikoku 2013.03 1太陽熱で室内を暖める装置付き 2 1 中は2段のベッドスペース(定員12人) とリビング、簡単なキッチンあり 3 まだ明るい夜8時過ぎ、若いカップル が到着。定員ちょうどになった 中では地元の7人連れ家族が夕 「パスカル避難小屋(B i v a c c o L . クールマイユールから歩きやす ンテ・ビアンコ (右奥) 。モンテ・ビア ンコの大きさが際立つ 3山頂近くで 地元イタリア人の親子と出会った 地を眼下に収めることができる。 分け合い、楽しい一夜を過ごした。 2 3 最高所の峠・ロソン峠をめざして ロソン峠(Colle Lauson、3296m)めざしての 登り。見渡す限り人の姿はない。ここで日がな 一日、昼寝でも読書でもしていたい。とはいえ 行程はハードだ。今日は登り標高差1600mと、 峠からセッラ小屋(Rifugio Vittorio Sella)ま での下り標高差700mを一気に歩くのだ。 トレイルラン中の夫婦をパシャリ グラン・パラディー ゾ周辺 e i V e t l A lte V ie オスタ州の南端に位置する グラン・パラディーゾ︵ 大 いなる楽園の意︶は︑イタ リアの4000m 峰のなかでも︑山全 ア 体がイタリア国内にある唯一の山だ︒ 山頂から巨大な氷河が四方に張り出し︑ 遠くからでもその姿がわかる︒ ︶ ﹂ 私たちは︑アオスタ州を一周するロ ングトレイル ﹁アルテ・ビエ ︵ に最も近づくパートを歩いた︒トレイ のコース中で︑グラン・パラディーゾ でもあり︑レースの最高点ロソン峠を ルレース ﹁トル・デ・ジアン﹂のコース 行程だ︒ 越え︑セッラ小屋に泊まる1泊2日の 実際に歩くまで︑ここまでスケール ピエモンテ州 10km の大きなコースとは思いもしなかった︒ 0 トレイルが通る谷は︑地図上では浅く 3650 グラン・パラディーゾ ロッチア・ 4061 ビバ て広い谷にしか見えないが︑実際に行 2334 ってみるととんでもない︒どっちを見 モネー そのうえ︑途中で行き合った登山者 3778 プンタ・ディ・ ヘルベテ バルノンティ 1667 20 ても大きな氷河跡なのだ︒ オルッセ ぼ独占できる幸せ︒ここはまさしく︑ 1666 2587 セッラ小屋 A 3969 3296 はわずか 人ほど︒贅沢な眺望を︑ほ ラ・グリボラ ロソン峠 トレッカーのためのパラダイスだ︒ ヴァルサヴァランシュ ニュ 谷 コーニュ コー 1 コース料理の出るセッラ小屋に泊まる セッラ小屋は、食堂、2段ベッ 山小屋が多い。 また、 宿泊もできる ドの客室が備わり、雰囲気は北ア が、充実した昼食メニューを楽し ルプスの山小屋に近い。水洗トイ みに訪れる人が多い山小屋もある。 レやシャワーもある。宿泊客はフ なお、アオスタ州観光局のウェ ランス人、イギリス人など国際色 ブサイト(www.lovevda.it/)から、 2 3 豊か。宿泊には事前予約が必要だ。 [Food and Accomodation]→[Where www.rifugiosella.com/ to sleep]→[Mountain Huts]と進み、 アオスタ州にはほかにも営業山 エリアを選択するか山小屋名を入 小屋が多数ある。山スキーシーズ 力すれば、各山小屋のURLや連絡 ンの春と、夏季に分けて営業する 先が表示される。 1氷河跡の幅広い谷に立つセッラ小屋。 周囲には山スキーによさそうな斜面が 広がる。収容人数は160人 2夕食は 簡単なコース料理 3食堂。宿泊客は 食事のあとも会話を楽しんでいる 126 グラン・パラディーゾの ベストビューポイント セッラ小屋を早朝に出発し、朝のうちにバルノ ンティ(Valnonty)へ下山。続いて、グラン・ パラディーゾ(Gran Paradiso、4061m)の全 容を間近に見られる絶景ポイント、 モネー(Money、 2334m)を往復することに。登ること2時間、 そこは夏の放牧場の跡地のようで、平坦な地形 が広がっていた。静かで、気持ちいい風が吹き 渡るそこは、まさに天国のようだった。 アイベックスの群れを何 度も見ることができた ーザ周辺 チェルビニア、モンテ・ロ モンテ・チェルヴィーノの根元へ最接近 スイス国境へと続くゴンドラの中間駅プラン・ メゾン(Plan Maison、2547m)から、モンテ・ チェルヴィーノの岩峰付け根へ向かう。見上げ るとあまりに急で恐ろしいほど。急なザレ場を トラバースするとオリオンデ小屋(R i f u g i o Duca degli Abruzzi all Orionde、2802m) 。あ とはチェルビニアの町めざして下るだけだ。 128 ヨ ーロッパアルプスで最も有 名な山は︑マッターホルン だろう︒これはスイス側の 名称であり︑イタリア側ではモンテ・ チェルヴィーノと呼ばれる︒スイス側 イタリア側から見てもやはり︑鋭く天 からの見慣れた形とはかなり違うが︑ 4165 イタリア側の山麓にはリゾートタウ ブライト 4559 ホルン を突いているのは同じだ︒ までゴンドラで上がれば︑違った角度 ン・チェルビニアがある︒スイス国境 にはユングフラウなどスイスアルプス からチェルヴィーノを眺めたり︑さら の名峰を遠望することもできる︒周辺 たくさんのスキーヤーが広大な斜面を の氷河上では真夏でもスキーができ︑ で専用コースを下るアクティビティも 滑っていた︒また︑マウンテンバイク アルテ・ビエ(A l t e V i e)のコースを意 味する。数字をたどればミスコースする ことはない 3ゴンドラとロープウェイ でスイス国境の展望台プラトー・ローザ へ 4チェルビニアの市街地 このチェルビニアを拠点に︑ モンテ・ 1モンテ・チェルヴィーノの岩肌に肉薄 2三角マークは、アオスタ州を一周する 3 4 盛んで︑レンタルも充実している︒ レッキングができるという︒私たちは チェルヴィーノの岩峰直下まで迫るト 今日は、グラン・トルナレン小屋(Rifugio Grand Tournalin、2534m)を出発し、ナナ峠(Col de N a n n a z、2775m )、フォン テーヌ 峠(C o l F o n t a n e t t e、2697m)を経てヴァルトゥルナ ンシュ(Va l t o u r n e n c h e)まで、約3時間のト レッキング。モンテ・ローザの山頂付近に雲が かかり、残念ながら全容は望めなかった。 し︑ゴンドラ中間駅のプラン・メゾン モンテ・ローザ山群を背に 日本からのトレッキングツアーに同行 からオリオンデ小屋を経て︑チェルビ ニアに下るコースを歩いた︒ モンテ・ローザ 2775 2534 そしてもうひとつ︒モンテ・チェル 東側にあるのがモンテ・ローザ山群だ︒ ヴァルトウル ナンシュ グラン・ 1526 トルナレン小屋 ナナ峠 ヴィーノからブライトホルンを挟んで る巨峰で︑チェルヴィーノとは違った 2697 4000m 以上の多数のピークを連ね 魅力がある︒この山はあまりに大きく︑ 近づき過ぎるとよく見えない︒そこで︑ やや離れたトレッキングコースを歩き︑ その全容を眺めることにした︒ プラン・メゾン駅 プラトー・ローザ チェル 3480 ビニア 2547 2012 ブルー湖 シャンポリュック Alt eV ie 10km フォンテーヌ峠 0 4478 オリオンデ小屋 2802 1 スイス 2 ヘルンリ小屋 ソルベイ小屋 カレル小屋 モンテ・チェルヴィーノ 際山岳ガイド︵当時はアスピラントガ った︒きっかけは︑夫で国 ルヴィーノへ登ることにな タリア側からモンテ・チェ となる︒とはいえ︑ルンゼのトラバー 標高差約1000m のアプローチ登攀 を上り︑オリオンデ小屋を 時半出発︒ 出発日︑ジープで標高差約800m かなか大変だった︒カレル小屋の宿泊 ス︑オーバーハングを太いフィックス 者は 人ほどで︑ほとんどがガイドな イド︶ のツベートの常連客Kさんが ﹁登 ルート状況を調べたが︑なかなか資 しの個人山行だ︒ 段ベッドがあり︑ ロープにしがみついての登りなど︑な でスイス側に抜けられず途中でビバー 料がない︒過去に登った友人は︑一日 りたい﹂と言ってきたからだ︒ 9 はやさしいかも﹂という打算のもと︑ で︑ ﹁フォローで登るかぎり体力的に 最終アタックの標高差は︑スイス側の 通常1200m に対しイタリア側は約 650m ︒クライミング要素も強いの クしたとか︒私には無理だと思ったが︑ か︑小屋のすぐ上のオーバーハングで 自信がないパーティほど早く出るため め︑アリヤーシュが 時出発に決定︒ 出発するなか︑まだ岩が凍っているた 翌朝も晴天︒ほとんどのパーティが 所でもあり︑夜はよく眠れなかった︒ 毛布も充分︑プロパンガスもある︒高 と私の パーティ︑計 人である︒ ︵チーフガイド︶とKさん︑ツベート 際ガイド︑アンドレル・アリヤーシュ 今回のメンバーはスロベニア人の国 烈追い抜き作戦が始まった︒普段から スタート︒ここからアリヤーシュの猛 が︑寒いので小屋に戻り︑ 分後に再 早くも大渋滞! いったん小屋を出た 6 * * 私も登らせてもらうことになったのだ︒ 3 50 モンテ・チェルヴィーノがそびえてい 背後には︑ズシッと大きな黒い岩肌の について抜かすしかない︒フォロワー のKさんと私も︑遅れまいと必死だ︒ 方も遠慮がち ︵笑︶ ︒でもアリヤーシュ ょっと日本人ナイズされていて︑抜き アルプスでガイドをしているアリヤー ッターホルン﹂と呼んでいるそうだ︒ る︒地元ガイドは﹁サニーサイド・マ イタリア側ルートはほぼクライミン 小さなリゾートタウンのチェルビニ 登頂成功の鍵は天候だ︒ガイド事務 ードする人はルートファインディング グなので︑フォロワーは楽しいが︑リ いく︒日本暮らしが長いツベートはち 所で聞くと︑ 月に入って雪が降り︑ シュは容赦なく前のパーティを抜いて ほとんどがアイゼン登攀になるとのこ 本人はほとんど見かけない︒町のすぐ 30 アは多くの人でにぎわっているが︑日 4 り高度な技術が必要となる︒しかし一 やロープワーク︑追い抜きなど︑かな ドのリードは速く︑多くのパーティが 般パーティよりはるかに手慣れたガイ 予報をにらみつつ︑唯一天候が安定し * そうな日に狙いを定める︒ と︒毎日︑冷たい雨が降るなか︑天気 7 名峰・マッターホルンは︑ スイス側から見た山容が有名で︑ 登攀者も︑ スイス側から往復する人が圧倒的に多い︒ イタリア側では ﹁モンテ・チェルヴィーノ﹂ と呼ばれ︑ 麓の町チェルビニアからの登攀ルートがある︒ 中嶋千春=文・写真 なかしま・ちはる 夫の国際山岳ガイド、ツベート・ポドロ ガル氏とともに、山岳ガイドサービスや 国内外の登山・ハイキングの手配を行な うC&C.JAPANを運営している。 www.candcjp.com チェルビニアから見上げるモンテ・チェルヴィーノ︒山頂から左に落ちるスカイラインを登る︵藤巻 翔=写真︶ 2 2 クライミング Theme 130 アイゼン登攀に限界を感じて途中で断 もないので︑リフトとロープウェイを り︑イタリア側に帰る予定だったが︑ 経由でイタリア側に帰った︒ 乗り継ぎ︑クライン・マッターホルン 帰路︑スイス側の登山道には日本人 セラックが多くて危険だし︑歩く気力 13 シュたちは全パーティを抜いて登頂︑ 3 念したこともあって︑結局︑アリヤー 私たちペアは 番目︑ 時の登頂だっ た︒わずかなチャンスをものにして登 頂でき︑感無量だ︒ ハイカーや観光客がいっぱい︒ ﹁どちらからですか?﹂と聞かれれば︑ これからスイス側へ標高差1200 m の下りだ︒すぐ︑スイス側から登頂 こうからです!﹂とマッターホルンを 昨日のへなちょこぶりは棚に上げ︑待 指さし︑自慢げに答える私なのだった︒ ってましたとばかりに︑ ﹁あの山の向 より難しい︒アリヤーシュは強気でロ * いついた︒下山での追い抜きは登攀時 ープをセットして割り込んでいくが︑ チェルビニアのガイド事務所のすぐ して引き返す途中の最終パーティに追 ヤーシュたちとの距離が開いていく︒ レル小屋が移設展示されている︒新し 横に︑1893年に作られた最初のカ ツベートはなかなか割り込めず︑アリ 途中のパーティを抜くのに手間取る︒ い小屋もガイド協会が管理しており︑ 最終パーティを抜いてからも︑ほかの 全パーティを抜いたのはソルベイ避難 を訪れたとき︑ちょうどカリスマ的存 オリオンデ小屋からカレル小屋(R i f u g i o ルートも彼らが整備している︒事務所 オリオンデ小屋は、新しくきれいな山小屋 で宿泊もOK。 小屋の前だったが︑ほかのパーティは 人数と時間が限られる。 ほぼソルベイ避難小屋でビバーク︒だ はインフォメーションセンターに確認)で、 在のガイド︑レオナルド・カレル氏が 小屋までジープを使う場合は要予約(予約先 いて︑親切に施設を案内してくれた︒ チェルビニアからオリオンデ小屋まで標高 差約800 m、2時間程度の歩き。オリオンデ ここからは枝道が多く︑ルートファ 参考所要時間 ったら早く抜かせてほしかった⁝⁝︒ 登頂日 2012年7月31日 たが︑私のヘッドランプがうまくつか DATA インディングが難しい︒日も落ちてき ヘルンリ小屋に着いたのは︑日にち 2 ない︒ゆっくり時間をかけて下山する︒ 時半到着︶︒私たちはなんと下山に 20 をまたいだ 時︵アリヤーシュたちは 時間︑カレル小屋を出てから 時間 が経過していた! いやはや長い一日 だった︒私はハーネスを外すのが厄介 なかった︒あいているベッドに倒れる だったので︑ 時間トイレに行ってい * ように潜り込み︑就寝︒ 翌日はヘルンリ小屋を出て︑谷を渡 20 13 21 J.A.Carrel、3830m)まで標高差約1000m、 4時間半。カレル小屋からモンテ・チェルヴ ィーノのイタリア側山頂(4476 m)まで標 高差約650m、7時間。スイス側頂上(4478m) 2 1 4 3 からスイス側のヘルンリ小屋(3263 m)ま では標高差1200mの下りで、9時間半から13 時間。 ※今回のフォロワー2人は体力的に強いほう ではない。地元のガイドを雇う場合、この所 要時間だと引き返しになる可能性が大きい。 登攀推奨時期 通常は7月末から8月。 登攀推奨技術 ミックスクライミングに慣れ ている人で、垂直の壁も可能な登攀技術と腕 力が必要。高所で1日16時間程度の行動がで きる体力が必要。イタリア側から往復の場合 は荷物をデポできるため、体力の消耗は多少 軽減される。 チェルビニアインフォメーションセンター チェルビニア周辺だけでなく、近郊の山小屋 の予約を取ってくれたり、とても親切に対応 してくれた。しかし、山でのクライミングに ついてはガイドオフィスに尋ねてくれとのこ とだった。www.cervinia.it/pages/Home_i_ en/212 5 Eメール:[email protected] チェルビーノガイド事務所 (Societa delle Guide Alpine del Cervino)チ ェルビニアの街中にある。スイス側に比べる と、天候によっての日程変更も融通が利きや すく、料金設定も良心的だと感じた。 www.guidedelcervino.com/index_e.asp Eメール:[email protected] 131 yama-to-keikoku 2013.03 1 オリオンデ小屋からカレル小屋めざしてアプ ローチ登攀中 2 岩稜にせり出すように立つカ レル小屋に到着 3 カレル小屋は明日の登頂を 狙う登山者で大にぎわい 4 雪のついた岩稜を 登るツベート・中嶋パーティ 5 イタリア側ピ ーク(後方)からスイス側ピークへ雪稜を移動
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