データ集録チュートリアル - National Instruments

データ集録チュートリアル
コンピュータベースのデータ集録システムでは、信頼性の高い測定結果を簡単に得ることができ、研究、工業用
制御、テスト・計測などさまざまな分野で使用されています。
・コンピュータ
・トランスジューサ
・信号調節
・データ集録ハードウェア
・ソフトウェア
トランスジューサ
トランスジューサは、物理現象を電気信号に変換する装置です。例えば、熱電対、RTD (抵抗温度検知器)、サ
ーミスタ、IC センサなどのトランスジューサは、温度を電圧や抵抗に変換します。また、ひずみゲージ、フロートラ
ンスジューサ、圧力トランスジューサなどのように、力や流量、圧力などを電気信号に変換するものもあります。ど
ちらのトランスジューサにおいても、モニタする物理的パラメータに比例した電気信号が発生します。
信号調節
多くの場合、トランスジューサ出力をDAQ ボードに取り込む前に信号調節を行う必要があります。信号調節アク
セサリでは、絶縁、フィルタ、励起、低レベル信号の増幅、ト
ランスジューサのブリッジなどを行い、DAQ ボードで取り込むことのできる高レベル信号に変換します。熱電対は、
異なる金属を組み合わせ、そこに加えた温度に比例した電圧を発生するものです。熱電対出力は非常に小さく、
温度が1 ℃変化しても、7 μV から40 μV しか変化しません。そのため、正確に温度を測定するためには、こ
の信号を増幅する高ゲインの信号調節システムを使用するか、ノイズとひずみが非常に低い高分解能信号調節
システムを使用する必要があります。熱電対による測定では、熱電対リードと熱電対を形成している2 種類の金
属との接点で発生した電圧を補償する熱電対冷接点補償を行う必要があります。熱電対冷接点補償のためのハ
ードウェアやソフトウェアは、接触位置の基準温度を感知し、その電圧誤差を測定された熱電対電圧から取り除く
処理を行います。信号調節アクセサリの多くは、この処理を行うためにIC 温度センサを搭載しています。RTD 、
サーミスタ、ひずみゲージなどその他のトランスジューサの場合では、温度やひずみに応じて抵抗値が変化しま
す。このような抵抗センサでは、抵抗値の変化を検出するために、正確な励起電流ソース又は励起電圧ソースが
必要となります。サーミスタの抵抗値は比較的大きく、基本的に電圧ソースと基準抵抗を使用
するだけで測定できます。しかし、RTD やひずみゲージは、抵抗値が小さい低感度のデバイスであるため、感度
を向上してリード線の抵抗を補償する回路が必要になります。RTD は、通常4 線式構成で使用されます。4 線
式構成では、1 対の電線で励起電流を転送して、もう1 対の電線でRTD 電圧を検出するため、計測システムに
接続されたリード線に電流が流れず、リード線の抵抗による誤差を防止することができます。次ページの表1 で
は、上記のようなトランスジューサで必要となる信号調節を示しています。
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データ集録ハードウェア
アナログ入力について
DAQ 製品のアナログ入力の仕様から、製品の処理能力と精度を把握できます。ほとんどのDAQ 製品のチャネ
ル数、サンプリングレート、分解能、入力範囲が基本仕様として記載されています。シングルエンド型、差動型、ま
た両方のタイプの入力を持つボードの場合、アナログ入力チャネル数が各タイプ別に記載されています。シング
ルエンド型入力では、共通接地点を基準としており、非基準化シングルエンド型入力では、AISENSE を基準とし
ています。このノードにおける電位は、システムの接地電位を基準に変更できます。入力信号レベルが高く(1V以
上)、信号源からアナログ入力ハードウェアまでのリード線が短く(5m 以内)、すべての入力信号が共通接地点を
基準としている場合には、シングルエンド型入力を使用します。それ以外の信号については、差動型入力を使用
します。差動型計測システムは非基準形とも呼ばれ、どちらの入力ラインにも決まった基準がありません。理想的
な差動型計測システムは、(+)入力と(−)入力の2 つのターミナル間に発生する電位差にのみ応答します。こ
の2 つの増幅器入力において、増幅器の接地点に対して測定された電圧は、コモンモードと呼ばれます。コモン
モード電圧範囲とは、差動型モードにおけるD A Q ボードのコモンモード電圧信号除去機能を示します。差動型
モードでは両方のリード線で発生したノイズが、コモンモードノイズとしてキャンセルされるため、ノイズによる誤差
が減少します。
サンプリングレート
サンプリングレートは、変換を行う頻度を示すパラメータです。より高いサンプリングレートでデータ集録を行うこと
で、一定時間内でより多くのデータポイントを集録し、元の信号を正確に再現することが可能です。図2 に示すよ
うに、すべての入力信号に対して十分に高いサンプリングレートでサンプルを行うことにより、アナログ信号を忠
実に再現できます。DAQ ボードによるデジタル化処理よりも信号が早く変化する場合、測定データに誤差が発生
します。また、サンプリングレートが低すぎる場合には、まったく異なる周波数のデータとして信号が表されます。
このような信号のひずみを、エイリアシングといいます。ナイキスト定義によると、信号のエイリアシングを防止す
るためには、信号の最大周波数成分の最低2 倍のレートでサンプリングする必要があります。サンプリング周波
数の半分の周波数をナイキスト周波数と呼びます。理論的には、信号のナイキスト周波数と同等またはそれ以下
の周波数にある信号のデータを抽出することが可能です。ナイキスト周波数を超える周波数は、エイリアスとなり、
DC からナイキスト周波数の間の周波数成分として現れます。例えば、最大20kHz の周波数成分を持つマイクで
音声信号を電気信号に変換する場合、この信号を正確に集録するため
サンプリングの方法
複数の入力チャネルからデータを集録する場合、アナログマルチプレクサを使用して、A/D 変換器に一定速度で
それぞれの信号を送ります。これは連続スキャンと呼ばれる方法で、各入力チャネル毎に独立した増幅器とA/D
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変換器を使用する場合に比べ、低コストでサンプリングを行えます。マルチプレクサでは、各チャネル間の切り替
えを行うため、各チャネルのサンプル間で時間的なずれが生じます。アナログマルチプレクサでは、ひとつの入力
信号だけをA/D 変換器に接続します。各サンプルポイント間における時間関係が重要とされないアプリケーショ
ンではこの方法が使用できますが、入力間における時間関係が重要となるアプリケーション(AC 信号の位相解
析など)では、同時サンプリングを行う必要があります。同時サンプリングが実行可能なDAQ 製品には、各入力
チャネル毎にサンプルアンドホールド回路が搭載されています。サンプルアンドホールド回路を追加せずに、同時
サンプリングハードウェアをシミュレーションすることも可能です。温度や圧力といった低周波数の信号を測定す
る場合、インターバルスキャンを行うことにより、連続スキャンと同様に低コストで同時サンプリングと同等の効果
を得ることができます。これは、あるインターバルで入力チャネルのスキャンを行い、別のインターバルでスキャン
を繰り返し行う時間を決定する方法です。入力チャネルをマイクロ秒単位でスキャンすることで、同時サンプリン
グを行った場合と同じ効果を得ることができます。
多重化
多重化は、1台のA/D変換器で複数の信号を測定する一般的な方法です。マルチプレクサでは、ひとつのチャネ
ルをA/D 変換器に接続してデジタル化処理を行った後、次のチャネルに切り替えて処理を繰り返します。同じ
A/D 変換器で複数のチャネルのサンプリングを行うため、各チャネル毎の最大サンプリングレートは、サンプリン
グするチャネル数に反比例します。例えば、PCI- MIO- 16E- 1 を使用して1.25MS/秒で10 チャネルのサンプリン
グを行う場合、各チャネルの最大サンプリングレートは、
125kS/秒になります。外部アナログマルチプレクサを使用するとで、1 枚のボードで測定できるチャネル数を増
やすこともできます。例えば、SCXI では、マルチプレクサモジュールを搭載し、1 枚のボードで処理できる入力チ
ャネル数を3,072 まで拡張できます。AMUX- 64T アナログマルチプレクサでは、1 枚のボードで256 の信号の
サンプリングが可能です。外部マルチプレクサにより、サンプリングするチャネル数に反比例して最大サンプリン
グレートは低下します。
分解能
分解能は、A/D変換器でアナログ信号を表すために使用するビット数のことを指します。分解能が高いほど、電
圧範囲が細かく区別されていることになり、検出可能な電圧変化がより小さくなります。図3 では、正弦波を理想
的な3 ビットA/D 変換器でデジタル化されたデジタル画像を示しています。3 ビットA/D 変換器ではアナログ信
号範囲を2 3 、つまり8つに分割します。分割された各範囲は、000 から111 というバイナリコードで表されます。
元のアナログ信号をデジタル化する際にはデータが失われますが、分解
能を16ビットまで高めるとA/D 変換器の出力は8 から65,536 まで増加し、精度の高いデータをデジタル化できま
す。ただし、これにはアナログ入力回路が適切に設計されている必要があります。
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範囲
範囲(レンジ)とは、A/D 変換器で取り扱い可能な最小電圧レベルから最大電圧レベルまでを指します。当社の
マルチファンクションDAQボードは、さまざまなレベルの電圧に対応できるようあらゆる範囲に切り替えて使用す
ることが可能であり、信号範囲とA/D 変換器の範囲を一致させて、A/D 変換器の分解能を最大に活用した高精
度な計測を行うことができます。DAQ ボードの範囲、分解能、ゲインにより、検出可能な最小電圧変化が決定さ
れます。この電圧変化がデジタル値の1LSB に相当する電圧で、コード幅と呼ばれます。理想的なコード幅は、2
を分解能のビット数分累乗した値とゲインの積で電圧範囲を割ることで求めることができます。例えば、16 ビット
マルチファンクションDAQ ボードであるPCI- MIO- 16XE- 10 の場合、電圧範囲を0Vから10V 又は- 10V から
10V 、ゲインを1、2、5、10、20、50、100に設定することが可能です。電圧範囲を0V から10V とし、ゲインを1 0 0
とした場合の理想的なコード幅は、以下のようになります。
10V
100 ×2
16 =1.5 μV
よって、デジタル化された値の1 ビットによる理論的な分解能は、1.5 μV になります。
アナログ入力
DAQボードの基本仕様が「100kS/秒のサンプリングレートで16ビット分解能のA/D 変換器を搭載」と定義されて
いても、そのDAQボードで16のチャネルすべてを100kS/秒でサンプルし、16ビットの精度が得られるということで
はありません。16 ビットA/D 変換器を搭載した製品でも、有効ビット数として1 2 ビット未満しか得られないもの
もあります。DAQ製品を選択する際には、DNL 、相対精度、増幅器の整定時間、ノイズの各仕様を細かくチェック
して、DAQ製品から必要なデータが得られるかどうか確かめる必要があります。
差動型非線形性(DNL )
理想的なA/D変換器では、DAQボードに加える電圧レベルが高くなるにつれ、A/D 変換器から出力されるデジタ
ルコードが直線的に増加します。この理想的なA/D変換器の出力コードを電圧に対してプロットすると、プロットは
直線となって表示されます。この理想直線からのずれを、非線形性といいます。理想的なアナログコード幅から、
LSB(最下位ビット)と呼ばれるユニットが決定されます。1LSBの理想値から、コード幅のずれの最大値をLSB単
位で表したものがDNL です。理想的なDNL は0LSBですが、DNL が+/- 0.5 LSB 以内であれば、そのボードは
高精度であると言えます。コード幅に上限はありませんが、コード幅が0LSBを下回ることはないので、DNL が1LSB以下になることはありません。性能の良くないDAQ ボードの場合、ゼロ又は非常にゼロに近いコード幅を持
つことがあり、コード損失が発生することがあります。このようにコード損失が発生した場合、DAQ ボードにどの
ような入力電圧を加えても損失したコードが出力されることはありません。ボードの仕様でDNL にコード損失がな
いことが記載されていますが、この場合はDNL の下限が- 1LSBであることを示しているだけで、ゼロ又は非常に
ゼロに近いコード幅を持つことによるコード損失については言及されていません。当社の全てのDAQ ボードは、
コード損失のないことが保証されており、仕様にはDNLが明記されています。DNLは、階段を上る状態に例えるこ
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とができます。高性能なボードのDNLでは、各ステップの高さと幅は均一になっています。しかし、コード損失のあ
る性能の低いボードのD N L ではステップは均一ではなく、理想的なステップよりも幅が広かったり、高さが高い
場合があります(図5 参照)。コード幅が1.5μVで、500μV よりも少し上でコード損失が発生しているDAQ ボー
ド(前述)の場合、電圧が502 μV に上昇しても検出することはできません。電圧があと1LSB分上昇し、503μV
を超えて初めて電圧変化を検出することができます。この様にDNLの性能が良くないと、ボードの測により変化す
るマルチプレクサの出力に対応し、A/D 変換器の精度まですばやく整定を行う増幅器が必要となります(図6)。
整定が遅い場合には、前のチャネルから測定しようとしている現在のチャネルへ変換中であるアナログ信号を変
換してしまいます。増幅器がある精度に整定するために必要な時間を、整定時間といいます。整定時間はゲイン
とサンプリングレートによって変化するため、長い整定時間を持つボードでは誤差が発生する可能性があります。
誤差はDAQ ボードのアナログ部分で発生するため、増幅器が正しく整定できなかった場合でも、ボードからコン
ピュータへエラーメッセージを送ることはできません。複数のチャネルを、高ゲイン、高レートでサンプリングすると、
増幅器が正しく整定できなくなる可能性が高くなります。このような条件では、マルチプレクサで入力信号を切り
替えた際に発生する大きな電圧差に増幅器は対応できません。ゲインが高いほど、またチャネルの切り替え時間
が短いほど、増幅器が正しく整定できる可能性は低くなります。実際、従来のプログラム可能なゲイン増幅器を使
用してゲイン100で増幅する場合、2 μ秒で1 2 ビット精度まで整定することは不可能でした。このため当社では
NI- PGIAを開発、当社のNI- PGIA を使用したDAQ ボードは、高ゲイン、高サンプリングレートでも整定できます。
完璧な増幅器を使用していても、入力側にマルチプレクサを使用したDAQボードでは、スキャニングに伴い整定
時間により問題が発生する可能性があります。あるチャネルでサンプリングされた電圧は、入力マルチプレクサ
の出力での寄生キャパシタンスで保持されます。次にスキャンされるチャネルの出力インピーダンスが十分に低く
なければ、サンプリングされるまでの時間内定精度が低下します。
相対精度
相対精度とは、理想的なDAQボード転送関数である直線からのずれの最大値をLSB 単位で表したものです。入
力電圧のフルスケールをスイープしてデジタル化することで、DAQ ボードの相対精度を求めることができます。
デジタル化された結果をプロットすると、直線として表示されます(図4a 参照)。しかし実際の直線(計算値)をデ
ジタル値から差し引いてプロットすると、図4b のように0 以上の値でずれが発生します。この0 以上の値にある
ずれの最大値が、DAQ ボードの相対精度です。DAQ ボードの相対精度が良いほど、電圧値をA/D 変換器の
バイナリコードに正確に変換できることを示します。相対精度を向上させるためには、A/D 変換器と周辺アナロ
グ回路の両方を適切に設計する必要があります。
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整定時間
プラグインDAQ ボードでは、通常、アナログ信号をマルチプレクサで選択し、それを増幅器で増幅してA/D 変換
器でデジタル信号に変換する処理を行います。ここでは、チャネルの切り替えでマルチプレクサの出力キャパシタ
ンスの電圧を十分に上げることは不可能で、サンプリングされたデータには、一つ前にスキャニングされたチャネ
ルの影響が残ってしまいます。こうしたことから、スキャンされる信号ソースのインピーダンスは1k Ω未満とする
ことをお勧めします。インピーダンスを十分に低くできない場合には、チャネル毎に独立したバッファか増幅機能
を持ったシステムをご使用されることをお勧めします、SC- 2040 やSCXI モジュールの多くには、独立したバッフ
ァがあります。また、PCI-6110E とPCI-6111Eの2つのDAQボードと全てのダイナミック信号集録(DSA )ボード、
全てのコンピュータベースオシロスコープ製品は、各チャネルが完全に独立しており、このようなスキャンに関す
る問題は発生しません。
ノイズ
デジタル化された信号のうち、実際の信号と異なる値をノイズと呼びます。コンピュータは大量のノイズが発生す
るデジタル環境であるため、プラグインボードでデータを集録するにはマルチレイヤDAQボード上のレイアウトを
慎重に行う必要があります。A/D 変換器、増幅器、バスインタフェースの各回路を単層又は複層基盤上にただ
配置してボードを構成するだけでは、非常に大きなノイズが発生してしまいます。当社では、ボード上のノイズに
影響されやすいアナログ部分を金属シールドで覆い、さらにボード自体の積層間にノイズシールドを挟むことで低
ノイズ化を図っています。
図7 は、同じA/D 変換器を使用した2 種類のDAQ製品について、そのDCノイズプロットを示しています。ノイズ
プロットから、DAQ ボードのノイズの範囲と分布を把握することができます。図7a は当社の16 ビットDAQボード
AT-MIO- 16XE-10のノイズプロットを示していますが、ここではサンプルが0に集中し、他のコードはあまり発生し
ていません。分布は、ランダムノイズのガウス分布になっています。また、このプロットから、ピークノイズレベルは
+/- 3LSB以
内であることが分かります。これに対して、図7b は、ノイズの多い他社DAQ 製品のノイズプロットを示しています
が、当社製品とまったく異なったノイズ分布になっています。ゼロからはずれたサンプルが大量に発生していると
ともに、20 LSB を超えるノイズも発生しています。図7 は、入力範囲を+/-10V、ゲインを10 としてテストを行った
結果です。つまり、1 LSB =31 μV であり、20 LSB というノイズレベルでは620μVのノイズが発生していることを
意味します。
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アナログ出力
通常、データ集録システムの励起にはアナログ出力回路が必要になります。整定時間、スルーレート、分解能な
どD/A 変換器のさまざまな仕様が、出力される信号に影響を与えます。整定時間とスルーレートにより、D/A変
換器の出力信号レベルの変化速度が決定されます。増幅器がある精度に整定するために必要な時間を、整定
時間といいます。整定時間は通常、電圧のフルスケールの変化によって定義されます。スルーレートとは、D/A変
換器が出力信号を変化させることのできる最大速度を示します。整定時間が短く、スルーレートの高いD/A変換
器では、出力信号を正確かつ短時間で新しい電圧レベルに変化でき、その結果高い周波数の信号を発生させる
ことができます。短い整定時間や高いスルーレートを必要とするアプリケーションとしては、音声信号の生成があ
ります。音声の範囲をカバーする高周波を生成するためには、整定時間が短く、スルーレートの高いD/A変換器
が必要です。これに対して整定時間が短く、スルーレートの高いD/A 変換器を必要としないアプリケーションには、
ヒーター制御用の電源などが挙げられます。この場合、電圧の変化に対するヒーターの応答が悪いため、高速
D/A変換を行う必要がありません。このように、アプリケーションにより、D/A 変換器には異なった仕様が求めら
れます。出力分解能は入力分解能と似ており、アナログ出力を生成するデジタルコードで使用されるビット数を指
します。ビット数が大きければ出力電圧の増加分が小さくなり、出力信号をスムースに変化させることが可能にな
ります。ダイナミックレンジが広く、電圧増加分の小さいアナログ出力信号を発生させる必要のあるアプリケーショ
ンでは、電圧出力の分解能を高くする必要があります。
デジタルI/O
コンピュータベースデータ集録システムでは、DIOインタフェースを使用してプロセス制御やテストパターンの生成、
周辺装置機器との通信などを行います。ここでは、使用できるデジタルラインの数、デジタルデータの送受信速度、
ラインのドライブ能力などが重要なパラメータとなります。デジタルラインを使用してヒーターやモータ、照明など応
答速度の遅い機器のON/OFF 制御を行う場合、高速データレートは必要ありません。また、制御の対象となる機
器と同じ数のデジタルラインを用意する必要があります。いずれの場合でも、デバイスのON/OFF 制御を行うた
めの電流は、ボードからの駆動電流以下でなければなりません。DAQハードウェアの出力が電流の小さなTTL
信号であっても、適切なデジタル信号調節アクセサリを使用することで、高電圧、高電流の工業用ハードウェアを
モニタしたり制御できます。例えば、大型バルブの開閉には、100VAC、2Aの電圧と電流が必要です。デジタル
I/Oボードの出力は0から5VDC、電流は数ミリアンペアというレベルですから、このバルブの開閉を制御するため
には、SSR シリーズやER-8/16 、SC- 206X シリーズ、SCXI モジュールのいずれかが必要となります。コンピュ
ータとデータロガーやデータプロセッサ、プリンタなどの周辺機器との間でデータの転送を行う際には、通常デー
タを1 バイト(8ビット)単位で転送するため、プラグインデジタルI/Oボードのデジタルラインは8本ずつのグループ
になっています。また、通信時の同期を取るために、ハンドシェーク用の回路を持つデジタルボードもあります。チ
ャネル数、データレート、ハンドシェークなどの仕様ははいずれも重要で、これらの仕様を十分に考慮してアプリケ
ーションに適した製品を使用しなければなりません。
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タイミングI/O
デジタルイベントの発生数やデジタルパルスタイミング、矩形波、パルスの生成など、さまざまなアプリケーション
でカウンタ/タイマ回路が使用されています。ゲート、ソース、出力というカウンタ/タイマの3種類の信号を使用し
てこのようなアプリケーションを開発できます。ゲートとはデジタル入力で、カウンタ機能のON/OFF を行うための
信号です。ソースもデジタル入力であり、このソースがトグルされる度にカウンタが増加し、カウンタ動作における
タイムベースを提供します。出力は、デジタルの矩形波やパルスを、出力ラインに生成します。カウンタ/タイマで
最も重要となる仕様は、分解能とクロック周波数です。分解能とは、カウンタで使用されるビット数のことです。分
解能が高ければ、そのカウンタはより高い値までカウントできます。クロック周波数により、デジタルソース入力の
トグル速度が決定されます。クロック周波数が高いほどカウンタの増加が速くなり、これにより入力側ではより高
い周波数信号まで検出でき、出力側ではより高い周波数のパルスや矩形波を生成できます。当社のEシリーズ
DAQボードで使用しているDAQ-STCカウンタ/タイマには、クロック周波数が20MHzの24ビットカウンタが搭載され
ています。このカウンタ/タイマはアップ/ダウンカウンタ/タイマといわれ、外部デジタル信号のレベルに応じて数
値の増加分/減少分がカウントできます。このタイプのカウンタ/タイマは、回転式エンコーダや直線式エンコーダ
の位置決めなどのアプリケーションで使用されます。
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バスマスタやDMA によるシステム性能の向上
データ集録システムを構築する上では、高速データスループットと同時データ処理能力の組み合わせが重要とな
ります。システムレベルのタスクを実行し続けるためにも、RAMへのデータ転送でプロセッサを占有しないように
する必要があります。ISAバスでは、コンピュータマザーボード上の特殊回路を使用して、DMA(ダイレクトメモリア
クセス)によりRAMとの間でのデータ通信を可能にします。マイクロプロセッサへの割り込みを行わずに、PCとボ
ード上のDMAコンポーネントが、ボードとRAM間のデータ転送を効率的に処理します。データスループットレート
が最大132MB/秒のPCIバスでも、プロセッサを占有しないためのDMAがサポートされています。ISAバスと違い、
PCIバスではマザーボード上にDMA 回路はありませんが、DAQボードによる「バスマスタ」が可能になっています。
バスマスタでは、PCI DAQボードがPCIバスをコントロールし、高速でデータを転送後にバスを解放することで他の
周辺装置を使用可能にします。図8は、PCIバスマスタによるRAMへのデータ転送を示したものです。データを受
信している間に、プロセッサがそのデータを読み出し、そのデータを使ってシステムレベルのタスクを実行すること
が可能です。ただし全てのPCI DAQボードがバスマスタ回路をサポートしているわけではありません。バスマスタ
をサポートしていないPCIボードでは、割り込みでデータ転送を処理するため、プロセッサを消費してシステムの性
能を低下させます。スレーブPCIボードを使用したシステムよりも、DMAをサポートしたISAボードを使用したシステ
ムの方が性能は高くなります。バスマスタ回路をサポートしているDAQボードでも、その多くは従来のバスマスタ
チップを搭載しており、データ集録におけるデータ転送を行うための大がかりな拡張回路が必要となります。さら
にこのチップでは、RAMへの高速データ転送が可能であっても、連続データ転送が不可能であるなどの制約があ
ります。当社はこのような問題を解決するために、MITEASICを開発しました。MITEは独立したDMAラインを3本装
備しており、Windows NT、Windows 95/98などの仮想メモリベースのオペレーティングシステムにある不連続メモ
リ領域に対しても、スキャタ/ギャザにより100MB/秒以上でシームレスにデータ転送を行えます。
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ドライバソフトウェア
ソフトウェアがなければDAQハードウェアは使用できません。また、品質の良くないソフトウェアとDAQハードウェ
アを組み合わせて使用した場合、大きな問題が発生することがあります。ドライバソフトウェアは、ほとんどのデー
タ集録アプリケーションで使用されているソフトウェアで、DAQハードウェアのレジスタを直接プログラム、その動
作管理、プロセッサ割り込み、DMAなどのコンピュータリソースとメモリとの統合などを行います。ドライバソフトウ
ェアは、高い性能を保ちながら、低レベルで複雑なハードウェアのプログラミングを必要とせずに、解りやすいユ
ーザインタフェースを提供します。当社が提供するNI-DAQは、フル機能の高性能DAQドライバソフトウェアです。
NI- DAQ の機能
DAQハードウェアの制御を行うドライバソフトウェアの機能は、
アナログI/O、デジタルI/O、タイミングI/Oに分類されます。ほとんどのドライバソフトウェアではこのような基本機
能を備えていますが、実際にはこうした基本機能以外の機能も必要となります。NI- DAQではデータ通信以外の
次の機能を全て備えており、開発期間の大幅な削減を実現します。
* 指定されたサンプリングレートによるデータ集録
* 前面におけるデータ処理と、バックグラウンドでデータ集録の同時処理(連続データ集録)
* データ転送でのプログラムI/O、割り込み、DMAの使用
* ディスクへのストリームデータ(連続データ形式)の送受信
* 複数の機能を同時実行
* 複数DAQボードの統合
* 信号調節製品とのシームレスな統合
アプリケーションソフトウェア
アプリケーションソフトウェアを活用することで、DAQハードウェアのプログラムを効率よく作成できます。アプリケ
ーションソフトウェアを使用する場合でも、ドライバソフトウェアからDAQハードウェアの制御を行うため、上記のよ
うなドライバソフトウェアに関する点を考慮しておく必要があります。アプリケーションソフトウェアにより、ドライバ
ソフトウェアの機能に解析や表示機能を追加でき、さらにデータ集録システムに計測制御(GPIB 、RS- 232 、
PXI 、VXI)を統合することも可能です。当社は、テスト・計測、データ集録、制御を統合したアプリケーションの開
発環境として、グラフィカルプログラミングツールLabVIEW 、C/C++プログラミングツールLabWindows/CVIを提供
しています。ActiveXコントロールソフトウェアであるComponentWorks により、Visual Basicからでも32ビットOLEコ
ントロールを使用して、すべての計測機能を利用することができます。Measureでは、Excel環境からのデータ集録
を実現します。ターンキー仮想計測器VirtualBenchは、オシロスコープ、ダイナミック信号アナライザ、任意波形発
生器(ARB)、ファンクションジェネレータ、DMM、データロガーなどのソフトウェアパネルを提供し、プログラミング
することなくコンピュータを計測器ワークベンチとして使用できます。
更にソフトウェアの詳細などについてご興味のある方は、無料セミナーへのご参加がお勧めです。
詳しくは、www.ni.com/jp/seminar をご参照ください。
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