第57巻第1号平成26年4月1日発行(毎月1回1日発行) April 2014 患者中心の情報管理とそれを可能にする新しいインフォームド コンセント 機械翻訳のいま 統計的手法を中心に JDreamIIIの紹介とサービス連携 日本版NIH創設に向けた新しい指標の開発(4) パイプラインにつながる特許の判別指標 連載: インフォプロによるビジネス調査−成功のカギと役立つコンテンツ 第1回 ビジネス調査とは vol.57 no.1 p.1-68 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management 巻頭言 1 大竹 暁 患者中心の情報管理とそれを可能にする新しいイン フォームドコンセント 3 森田瑞樹 ■これまで医療機関や研究機関によってしか得られなかった医療・健康情報が,民 間企業や個人でも入手できる時代になりました。情報の種類も,従来の診療情報 に加えて遺伝情報や血圧や心拍数など多様になっています。自分自身の個人情報 であるこれらの医療・健康情報の管理について,無関心ではいられません。これ らの情報を利用するにあたって必要なインフォームドコンセント(説明と同意) のあり方について,ダイナミックコンセントと呼ばれる新しい方法を中心に概説 します。 機械翻訳のいま 12 隅田英一郎 22 長谷川均 29 治部眞里 長部喜幸 統計的手法を中心に Es Ev Eo ①語順変換 Es Eo Ev ②単語変換 Js Jo Jv ■21世紀を迎えた今日,自動翻訳はどこまで可能になったのでしょうか。ここでは, 2000年以降急速に進展した翻訳手法のうち,統計翻訳と呼ばれる技術について解 説します。この手法は,対訳データから翻訳に必要なモデルを導き,これに基づい て確率を最大にするように翻訳するものです。旅行会話音声翻訳と特許テキスト翻 訳の事例を用いて,高精度の統計翻訳を紹介します。 JDreamIIIの紹介とサービス連携 ■JDreamIII科学技術文献情報データベースサービスが開始してから1年が過ぎまし た。JDreamIIの後継サービスであるJDreamIIIがサービス移管にあたって最優先に したのは,それまでの利用者の資産の継承でした。さらに初めての利用者にも直 感的に操作できるサービスを目指したことなど,JDreamIIIの開発コンセプトとそ の後の機能強化を中心に,開発担当者が解説します。 日本版NIH創設に向けた新しい指標の開発(4) パイプラインにつながる特許の判別指標 ■第1回から第3回において,製薬企業が有する個々のパイプラインや医薬品によっ 日本版NIH創設に向けた 新しい指標の開発(4) て各国の現状および将来における新薬創出力が把握できることを示しました。今 回は,製薬企業の基礎研究における個々の研究開発テーマの進捗状況と関連する 特許を抽出して,特許の質に関係するさまざまな指標との相関を分析しました。 その結果得られた,製品につながる特許を判別するための指標を提示します。 目次 月号 April 連載: インフォプロによるビジネス調査-成功のカギと役立つ コンテンツ 38 上野佳恵 43 江上敏哲 47 齋藤久実子 50 名和小太郎 55 中村文胤 57 伊藤 祥 62 坂下鈴鹿 第1回 ビジネス調査とは 視点: デジタルなら海を越えられるか 海外の日本研究を支援するために リレーエッセー: つながれインフォプロ 第7回 情報論議 根堀り葉堀り: アイデアの独占 その正当化への迷い 集会報告: 第21回情報活動研究会 「使いこなそう!国立国会図書館のウェブコンテンツ」 集会報告: データサイエンス・アドベンチャー杯 この本!~おすすめします~: 科学×文学 65 情報界のトピックス 68 編集後記 vol.57 no.1 JOHO KANRI 2014 Contents April Journal of Information Processing and Management Preface 1 OHTAKE Satoru Patient-centered medical and health information management and dynamic informed consent 3 MORITA Mizuki Present state of machine translation with a focus on statistical approach 12 SUMITA Eiichiro JDreamIII and service linking 22 HASEGAWA Hitoshi Development of new indicators for the launch of a Japanese version of the NIH (4) Refined indicators for patents linked with marketed drugs and pipelines 29 JIBU Mari OSABE Yoshiyuki Series: 38 UENO Yoshie Opinion: 43 EGAMI Toshinori Relay essay: 47 SAITOU Kumiko In-depth argument on information: 50 NAWA Kotaro Meeting: 55 NAKAMURA Ayatsugu Meeting: 57 ITO Sachi My bookshelf: 62 SAKASHITA Suzuka Keys to success of business research - tips and useful contents Part 1: Procedure of business research Can digital go abroad? For international Japanese studies Building networks among info pros (7) Monopolizing ideas Unsurely justifiable The 21th INFOMATES working group report All Analytics Championship Powered by SAS Science and literature 65 Topics of the information community 68 Editor's note 科学技術振興機構 理事 大竹 暁 情報管理 57(1), 001-002, doi: 10.1241/johokanri.57.1 (http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.57.1) 2014年度が始まりました。日本にとって今年は, 機感が希薄です。公的研究機関の文献購読料は多く かなり挑戦的な年になると言われています。さまざ 見積もっても政府の科学技術関係予算の1パーセント まな課題を抱える中,世界の中で日本はどう生きて 程度,研究開発に関連する情報の整理や収集,研究 いくのか,それが問われると思います。今後の経済 の結果得られたデータの整理などを加えても公的研 の成長戦略をどのように具体化していくのか,少子 究投資の数パーセントです。科学技術コミュニティー 高齢化に向かう社会の課題を解決し,いかに人々が が,研究における国際競争を理由にこの程度の投資 生き生きと暮らせる社会を実現していくのか,世界 を惜しんで,予算を狭義の研究活動のみに投じるの の中で埋没することなく世界の持続的発展にどう貢 は「研究しっぱなし」の姿勢にほかならず,とても 献し存在感を示していくのか,といった問題に積極 残念です。この姿勢にもイノベーションが必要です。 的に挑戦していくことになります。 各国とも研究開発のコストが高くなり,時間もか その際,鍵を握るものの1つが科学技術によるイノ かるが,一方でスピードも求められており,かつ公 ベーションの実現です。その中で,科学技術に関す 的な資源を投入することの妥当性,そのアウトプッ る情報をいかに活用するのかが,大変重要になると トのオープンな利活用を求める声も高まっていま 考えられています。科学技術やイノベーションに関 す。裏を返せば,どのような戦略性をもって対応し する情報をどう扱っていくのか,論文やデータのオー ていくのか,各国ともに自らの発展にどのように結 プン化の動向をどう有効に活用していくのか,ビッ び付けていくのかを懸命に考えています。 グデータの時代にどのように意味あるものを効果的 科学技術振興機構(J S T)は科学技術の推進とそれ に取り出していくのか,など情報をもとに科学技術 によるイノベーションの実現に向けて機構法に定め を飛躍的に進めていくことが世界的に注目されてい られたように「内外の科学技術情報を収集し、整理 ます。一例をあげれば,米国科学振興協会(A A A S) し、保管し、提供し、及び閲覧させること」を業務 は2015年の年次総会のテーマを「イノベーション, としています。これまでは,科学技術情報について 情報とイメージング」と設定しています。 は文献情報を主たる対象として事業を進めてきまし 文献購読料の高騰化ばかりに目を奪われ,日本の たが,一昨年度に文献抄録提供事業の民間への移行 科学技術コミュニティーは,世界がオープン化の中 を実現し,これまでの仕事に一区切りがつきました。 で知的発想の競争の激化に向かっていくことへの危 今後は,先に述べた急速に変化する世の中の動きを 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 1 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management 見据えつつ,民間でもさまざまな情報産業がある中, 窮屈な研究を強いられるということになります。そ 公的機関として,どのような科学技術情報の提供や の意味で国内のデータを取りまとめていくバイオサ 流通が求められるのか,世界の情勢の背景にある各 イエンスデータベースセンター(National Bioscience 国の科学技術イノベーション戦略に思いを巡らせな Database Center: NBDC)のような取り組みも重要で, がら,われわれのなすべきことを考えていきます。 今後は,バイオデータの量,質の拡大向上,利用の たとえば,世界が何に注目して,そこで誰がリード 拡大にとどまらず,このようなやり方で地球環境, しているのか,将来性はどうか,などといったこと 防災,材料などの情報をどう束ねていくのか,といっ は論文のオープン化の中で明確になる可能性があり, た議論が進むと思います。ビッグデータに関しては, 政策立案の根拠や研究現場の方向性の決定に重要な 膨大なデータの中で意味のあるものをどう見つけ出 情報となります。ただし,情報の流通だけに頼って すかという技術の研究開発を進め,その成果をもと いては不十分で,高度な機械翻訳の普及やそれを活 に有意な情報の提供実現を目指します。 用しての分析が不可欠です。オープンデータでは, 目まぐるしく状況が変わる中,J S Tは決して過去の 各研究者が自らのデータに依拠するだけでなく,同 勝ちパターンや手法にとらわれることなく,科学技 様の研究データを活用して統計精度の向上や条件の 術によるイノベーションの実現という大きな目的の 違う研究データを活用した仮説の検証などを行うこ 実現の鍵となる科学技術情報に関する事業を進めて とが可能となり,かつ積極的に取り組むことで,各 いきます。 分野のデータの質に対する要請に先手をとって世界 に提案していくことができます。逆に,遅れてしま うと,自らの意思の反映されない「基準」に従って 2 http://johokanri.jp/ April 本誌読者の皆様にも,その観点から引き続きご支 援いただきたくお願い申し上げます。 患者中心の情報管理とそれを可能にする新しいインフォームドコンセント 患者中心の情報管理とそれを可能にする 新しいインフォームドコンセント Patient-centered medical and health information management and dynamic informed consent 森田 瑞樹1 MORITA Mizuki1 1 東京大学 大学院情報理工学研究科 ソーシャルICT研究センター(〒113-8654 東京都文京区本郷7-3-1)TEL: 03-5841-0899 E-mail: [email protected] 1 Social ICT Research Center, Graduate School of Information Science and Technology, The University of Tokyo (7-3-1 Hongo Bunkyo-ku, Tokyo 113-8654) 原稿受理(2014-01-24) 情報管理 57(1), 003-011, doi: 10.1241/johokanri.57.3 (http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.57.3) 著者抄録 遺伝情報をはじめとした私たちの医療・健康情報は,利活用することで個人および公共の双方にとって利益をもたら すものであると同時に,機微性の高い情報でありその扱いには慎重さが求められる。そのため,それらは医療機関や 研究機関において厳重に管理されている。しかし近年,医療・健康情報を取り巻く状況には大きな変化が起こってお り,新しい考え方が必要である。これはまた,患者や一般市民が自分自身の個人情報をコントロールできる範囲を広 げ,同時に,患者や一般市民による医学研究への関与を深める可能性を秘めている。こうした状況の変化を踏まえつつ, ダイナミックコンセントと呼ばれる比較的新しいインフォームドコンセントの方法を中心に,患者・一般市民による 医療・健康情報の管理について概観する。 キーワード 医療・健康情報の管理,患者中心,インフォームドコンセント,ダイナミックコンセント,患者・市民参画 1. はじめに た状態で蓄積されるようになってきた。その一方で, 個人や企業からも多様かつ重要な医療・健康情報が 医 療 も ビ ッ グ デ ー タ の 時 代 で あ る。2004年 の 年 頭教書において米国のブッシュ大統領(当時)は, 大量に生成されるようになってきた。 こうして蓄積される膨大な医療・健康情報は,私 2014年までにすべての米国民の診療録(カルテ)を たちの将来の健康に大きなインパクトを与えうる。 電子化することを宣言した。2014年になった現在, 画期的な新薬や治療法の開発につながるかもしれな そのとおりになっているかどうかはともかく,わが いし,また,病気の発症や予防などと関係のある生 国においても私たちの診療情報は徐々に電子化され 活習慣(食事,運動,睡眠,住環境,労働環境など) 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 3 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management http://johokanri.jp/ April が明らかにされるかもしれない。こうした結果とし また患者・一般市民が直接意思を伝えることのでき て,寿命や健康寿命を延ばすことができるだろう。 るほぼ唯一の機会である。そのため,インフォーム 極端な例では,遺伝子検査などによって遺伝病の発 ドコンセントは患者や一般市民による自身の情報の 症リスクが高いとされた場合でも,医薬品や生活習 コントロールにおいて特別の意味をもっており,個 慣によってその発症や進行を遅らせることができる 人の意思を尊重しつつ情報を利活用する方法を模索 ようになるかもしれない。もしくは,病気を抱えな していく中で,さらに議論を深めるべき課題である。 がらでも長期にわたってQOL(Quality of Life, 生活の 本稿では,患者や一般市民の医療・健康情報の利 質)を高く維持するための自分に合った方法を知る 活用と保護についての事例を紹介し,近年の環境の ことができるかもしれない。 変化を踏まえて整理をする。また,ダイナミックコ 一方で,医療・健康情報にはとても機微性の高い ンセントと呼ばれる比較的新しいインフォームドコ ものが含まれており,その扱いには非常な慎重さが ンセントを中心に,患者や一般市民による個人情報 求められる。わかりやすいものは遺伝情報であろう。 のコントロールのあり方について考える。 ろうえい たとえば,私の遺伝情報が意図せぬところで漏洩し, そこには遺伝病のリスクについての情報が含まれて 2. 医療・健康情報の流通の新時代 いたとする。現在知られていないリスクでも,将来 の研究によって明らかになるリスクもあるだろう。 医療情報と健康情報の境界はもともと曖昧であ その情報の漏洩による影響は私だけではなく,私の る。しかし近年,この線引きがさらに難しくなるケー 親族や子ども,さらにはその子孫にまで及ぶ。もっ スが出てきた。遺伝情報が民間企業によって大量に とソフトな健康情報であっても,名前と体重が漏洩 生み出されるようになり,また,個人が気軽に測定 することが耐えられないと感じる人もいるだろう。 できる医療・健康情報の幅が広がってきた。つまり, また,日々の活動量の経時変化からは生活環境が推 これまで医療機関や研究機関によってしか得られな 定できてしまうだろう。ほとんどの人にとってはそ かった医療・健康情報を,それらを介さないで民間 うした情報には価値がないかもしれないが,しかし 企業や個人が手にする時代になった(それによって そこに何らかの意味を見いだす人もいるし,知らな 医療情報に市場原理が持ち込まれることになり,そ い人にそうした情報がさらされるのはそもそも気持 の問題は少しずつ顕在化しつつある)。また,一部の ちが悪い。 バイタルサイン(血圧や心拍数など)については連 こうした性質から,医療・健康情報の研究利用に 続的に計測することが可能になり,医療機関でも得 は厳重な管理が求められている。たとえば,患者や られなかった医療・健康情報が個人で得られるよう 一般市民の診療情報の二次利用に際しては,情報セ になってきた。こうした変化は,患者や一般市民に キュリティや匿名化といった技術および運用上の対 よる自らの健康情報の管理および活用をいっそう加 策を講じると同時に,インフォームドコンセント(説 速させる。 明と同意)によって本人の意思が尊重される。医療 の歴史は人類の歴史と言っても過言ではないくらい への対応として,今までは外へ出しづらかった医療 に古いが,インフォームドコンセントの歴史は逆に 機関の診療情報を民間企業へ提供することを促進す 驚くほど浅く,まだ十分に成熟しているとは言いが るルール作りが内閣官房,経済産業省,厚生労働省 たい。しかし,インフォームドコンセントは患者・ によって進められている。 一般市民と医学研究との数少ない接点の1つであり, 4 一方,疾病構造の変化(感染症から生活習慣病へ) 患者中心の情報管理とそれを可能にする新しいインフォームドコンセント 2.1 消費者直販型(DTC)サービス 遺伝情報は「究極の個人情報」とも呼ばれる。近 グ(Lifelog) 」を大量に蓄積することが容易になって きた。 年の遺伝子解析のコストダウンは著しく,そのこと 2014年はウェアラブルデバイスが本格的に普及す が個人を対象とした遺伝子検査サービスの隆盛へ る可能性があるとして,「ウェアラブル元年」と呼ば とつながっている。これらは消費者直販型(D i r e c t - れることがある。ウェアラブルデバイスとは身に着 t o - C o n s u m e r : D T C)サービスと呼ばれ,d e C O D E けることのできる電子機器のことを指しており,健 g e n e t i c s(1996年創業,2012年A m g e nが買収)1), 康関連のものとしては,昔から親しまれている歩数 23andMe(2006年創業)2),Navigenics(2007年創業, 計(万歩計)もその1つと考えることができる。最 3) 2012年Life Technologiesが買収) などがよく知ら 近では歩数だけではなく,活動量(activity)や睡眠 れている。これらのサービスを利用することで,患 の時間と質,心拍数などを計測できるものが販売さ 者や一般市民は医療機関に足を運ぶことなく(キッ れている。代表的なものには,NIKE+ FUELBAND10), こうくう トを取り寄せて口腔粘膜や唾液などのD N Aを抽出で Jawbone UP11),FitBit12)などがある。常に身に着け きる生体試料を採取し返送することで),安価に自 ていることで, 自分の行動やバイタルサイン(心拍数, 分の遺伝情報を解析することができる。経済産業省 血圧,体温など)を自動的かつ連続的に記録するこ によると,国内で遺伝子検査ビジネスを展開する事 とができる。また,ウェアラブルデバイスを販売し 業者の数は2012年には738に上った4)。D T Cサービス ている企業はインターネットのサービスも提供して によって解析された遺伝子データはすべて企業にあ おり,計測したデータを分析することも容易になっ る。いまや,世界最大規模の遺伝情報を保有してい ている。 るのは公的機関ではなく民間企業である。 さまざまな健康情報を気軽に計測できるように なお,現時点では,民間のサービスは情報の精度 なったことを背景に,自分の健康を定量的に解析して などが疑問視されている。理研ジェネシスの城戸ら 13)と称する活 活用しようというQuantified Self(QS) が行った遺伝子検査サービス3社の比較では,疾患を 動がシリコンバレー(米国)で始まり, 広まっている。 発症するリスクについての全体の傾向は一致してい 日本でもQS Tokyo14)と冠したイベント(QS Meetup たものの,22のうち8疾患ではリスクが逆転した5)。 と呼ばれる)がこれまでに数回開催されている。 また,New York Timesの記者が同様の比較を行って おり(比較されている企業は城戸らの研究とは異な る),この記事においてもやはり,疾患によって発症 6) 2.3 法律やガイドラインの対応 世界保健機関(W H O)の報告書では,2005年の世 リスクが逆転した 。米国食品医薬品局(U. S . F o o d 界の全死亡の約6割は慢性疾患によるものと推計され and Drug Administration: FDA)7)は2013年11月, ている15)。また,厚生労働省によると,わが国では 23a n d M eに対して遺伝子検査キットの出荷停止命令 生活習慣病が医療費全体の中で占める割合は約3割, を出した8)。また,経済産業省は優良事業者を認定す 死亡数では約6割である16)。50年前には死因の上位で る制度を作り,2015年度にも導入することを目指し あった結核や肺炎などの感染症は,ペニシリンの発 9) ている 。 見とその後の抗生物質の普及などによってもはや死 の病ではなくなり,いまや生活習慣病がその地位を 2.2 ライフログ 占めている。 センサーやデバイスの発達,記憶媒体の価格低下 こうした状況を踏まえ,厚生労働省は健康増進と などによって,自分の生活に関する記録「ライフロ 医療費抑制を目的として,医療機関の診療情報をス 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 5 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management http://johokanri.jp/ April ポーツクラブや給食会社などの民間事業者へ提供す る際のルールを作り,指針(ガイドライン)として 究利用する際,そのたびに同意を得る ・ 包 括 同 意, 概 括 的 同 意, 一 般 的 同 意(b r o a d 公開する準備を進めている17),18)。糖尿病などの患 consent, general consent) :情報を収集する前に, 者を対象に食事や運動メニューを提供することは健 将来のすべての研究に対してある程度まで目的 康増進につながりうるが,しかし民間事業者がそう を限定した同意を得る したサービスを展開した際にそれが診療にあたると 判断された場合には医師法に抵触することになる。 ・ 段階的同意(tiered consent) :同意の範囲に複 数の段階を設ける これまではどこまで許容されるのかの線引きが不明 ・ 白紙同意(blanket consent, open consent) :情 瞭であったため,そうした事業を展開することは事 報を収集する前に,将来のすべての研究に対し 実上極めて困難であった。新しいガイドラインでは, て目的を限定しない同意を得る 医師の指導に基づくメニューであれば民間事業者が ・ 推定同意,みなし同意(presumed consent) : 提供できると明記される。医業の範囲を明確にする 何らかの方法で収集した医療・健康情報を研究 ことで,民間事業者による診療情報の利活用が動き 利用するために,拒否の意思表示をしない限り 出すことになる。 同意をしたとみなす(オプトアウト方式,o p t - また,医療情報の流通に対して現行の個人情報保 out) 護法は対応できていない,マイナンバーは医療分野 ・ 同意なし(no consent) :何らかの方法で収集し では使用しないようになっている,といった状況を た医療・健康情報を研究利用するために,明示 踏まえ,医療における個人情報の取り扱いについて 的に同意を得ることをしない 定める個人情報保護法の個別法についての検討が進 カナダのAlberta大学のCaulfieldは2002年の記事で, められ,2012年9月に報告書がまとめられた(医療等 白紙同意の採用が増えていると報告したが20),現在 分野における情報の利活用と保護のための環境整備 では世界の主要な11のバイオバンクのうち9か所で包 19) 。 のあり方に関する報告書) 括同意が採用されている21)。しかしこの論文による 3. 患者中心のインフォームドコンセント と,それにもかかわらず,どのようなインフォーム ドコンセントが適切かという議論はあまり活発にな されておらず,また,研究者の間でコンセンサスも 患者や一般市民による医療・健康情報の管理の中 で,本人の意思を反映することのできる箇所はイン 得られていない21)。ここには理想と現実のギャップ がある。 フォームドコンセントである。インフォームドコン セントは,治療行為や医学研究の前に,患者の保護 と自己決定の尊重のために,患者が説明を受けて理 包括同意は,現時点では多くの場合に唯一の現実 解をしたうえで同意をする行為である。本稿では診 的なインフォームドコンセントだと言われる22)。前 療や治療行為におけるインフォームドコンセントは 述のように,今日の主要なバイオバンクの多くで包 対象とせず,患者や一般市民の医療・健康情報を医 括同意が採用されている21)。包括同意には利点もあ 学研究に利用する場合に絞って考えることにする。 れば問題点もあるものの23),白紙同意や推定同意に インフォームドコンセントにはいくつかのバリ エーションがある: ・ 個別同意(specific consent):収集した情報を研 6 3.1 現行のインフォームドコンセントの限界 は倫理的な問題が大きく,一方で個別同意では手間 がかかりすぎるといったことから,包括同意は現実 的な落としどころであるかもしれない。しかし,自 患者中心の情報管理とそれを可能にする新しいインフォームドコンセント 分の医療・健康情報が実際にどのような目的で使わ は,目的だけではなく,それを利用する相手と利用 れるのかを知り得ない状況で同意をしなくてはなら される情報の種類にも影響を受ける。これらの「誰 ないという問題が,依然として残っている。 に」「何のために」「どの情報が」利用されるのかと Nature誌の記者Haydenは2012年6月21日号のNews いう情報も,やはり収集時点で知ることは困難であ Featureにおいて,インフォームドコンセントに関連 る。ここに包括同意の限界がある。これらを満たす してトラブルが増えており,そのあり方が転機を迎 ためには個別同意が必要であるが,しかし個別同意 えていると指摘している。この記事でHaydenは,い は手間がかかりすぎるといった理由で却下される。 くつかのインフォームドコンセントをめぐる不祥事 個別同意に対する批判としてはほかに,協力者(同 について説明した後,「これらの事例は,研究に協力 意した患者や一般市民)はその都度同意を求められ しようとする市民が事前に知らされておくべき事柄 ることを煩わしく感じる,というものがある。しか について,研究者と市民の認識に隔たりがあること し実際には,そのように感じる患者・一般市民もい を示している」と述べている 24)。 るが,そうではなくきちんと確認をして欲しいと思っ 一般市民は自分の医療・健康情報の利用に対して ている人たちもいる。個人の価値観の多様性へ対応 どのように感じているのだろうか? 日立製作所と ができないことは包括同意でも同様である。この点 博報堂による「ビッグデータで取り扱う生活者情報 については段階的同意によって解決される。しかし, に関する意識調査」では,「商品購入履歴」「健康診 段階的同意では先にあげた,あらかじめ目的を知る 断結果や病歴などの健康情報」「交通機関利用・移動 ことはできないという課題を解決できない。 の履歴」の3種類の情報について,企業などによる活 用に対する市民の意識を調査している(2013年3月に 3.2 ダイナミックコンセント インターネット調査,対象は全国の20〜60代の男女 手間がかかり過ぎず,かつ多様な患者のニーズに 1,030名)。この中で,活用を認める条件として何を重 応える仕組みにするにはどうしたらいいか。このた 視するかという質問に対し,上位2つの項目はいずれ めに,はじめに包括同意を取得したうえで,さらに の情報においても一致しているものの,3番目に重視 個別の研究において再同意(re-consent)を得る,た することとして健康情報では「企業などが生活者情 だし再同意はオプトアウト方式とする(つまり,拒 報を活用する際,あなたにその都度事前に許可を求 否したい場合のみ意思表示をする),という方法があ める」が入っていることが特徴的であった(割合と りうる。言い方を変えると,この方法は包括同意と しては,49.3%の回答者がこれを選んだ)。なお,1位 推定同意の組み合わせである(もちろん,白紙同意 と2位はそれぞれ「活用される自分の情報をいつでも や段階同意と推定同意の組み合わせなどのバリエー 削除できる」と「企業などが情報を活用する際,そ ションを考えることもできる)。こうすることで,自 の利用範囲を明示する」である25)。 分の情報が利用されるたびにその詳細を知って利用 科学研究は,常に新しいことを追究し続ける。そ の可否を意思表示することができる。また,何度も のため,情報の収集時点で将来どのような研究でそ 答えるのが煩わしいと考えている協力者は再同意の れらが利用されることになるのかを明示することは, 連絡をただ無視すればよい。コストについては,推 本質的にできない。たとえば,10年前に現在の遺伝 定同意については電子メールでの通知とすることで 子解析の状況やそれに関連する研究を予測し,かつ 軽減できるだろう(そして,そのようにする旨を包 それを患者や一般市民が理解できるように説明でき 括同意の中に含める)。この同意の取得方法は,協力 ただろうか? また,提供の可否を判断するために 者による「総論賛成・各論反対」を可能にする。 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 7 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management http://johokanri.jp/ April こ う し た 考 え 方 は, ダ イ ナ ミ ッ ク コ ン セ ン ト(dynamic consentもしくはdynamic informed でも,ダイナミックコンセントについて研究をして いる34)。 26)と呼ばれる考え方の1つととらえること c o n s e n t) ができる。ダイナミックコンセントでは,医療・健 康情報や生体試料を収集する際に同意を取得し,さ こうした動的なインフォームドコンセントには, らにその情報や試料を利用する際に再同意を取得す 先にあげた柔軟性以外にも利点があると考えられ る。はじめに一度しか同意を取得しない「静的(static) る。それは,何度も研究に関する通知が送られるこ な」包括同意や白紙同意などに対して,ダイナミッ とで,患者や一般市民が医学研究に触れる機会が増 クコンセントは,同意内容の変更や撤回がしやすい え,それが医学研究への関心や理解を深めることに ように協力者と複数回もしくは継続的に接点をもつ つながりうる,ということである。これは,研究者 ようになっており,この意味で「動的(dynamic)な」 や研究機関にとってはまたとない広報の機会ととら 同意である。別の説明を,プログラミング言語にお えることができる。特に,自分の情報が利用される ける静的言語(static language)と動的言語(dynamic ことについての広報なので,患者や一般市民からの language)の関係との類推から試みる。コンピュー その研究への関心は高いはずである。 タープログラムを実行しなくても決まっている性質 一方で,欠点もある。医学研究者などの情報を利 を「静的な性質」と呼ぶ。一方で,コンピューター 用する側の立場に立ってみると,利用する時になっ プログラムを動かして初めて決まる性質を「動的な てみないと利用できる情報の量がわからないことに 性質」と呼ぶ。そして,動的な性質をもつプログラ なる。このため,研究計画が立てにくく,場合によっ ミング言語が動的言語である 27) 。インフォームドコ ては研究計画の見直しが必要になる。その場合には, ンセントに話を戻すと,患者や一般市民の蓄積した 倫理審査委員会の承認もあらためて得なくてはなら 情報をどのような目的で利用するかは,具体的な研 ないだろう。周到な準備が必要な大規模な医学研究 究計画が立てられて初めて決まる。このとき,目的 においては,これは無視できない大きなデメリット が決まってから再同意を得るのが動的な同意(ダイ となる。 ナミックコンセント)である。 しかし,あえて別の見方をすると,多くの患者・ ダイナミックコンセントでは包括同意や白紙同意 一般市民が協力を拒むようなことが起こらないよう などよりも手間がかかるようになるが,電子メール に,研究者は研究の意義や想定される危険性につい やインターネットなどの情報通信技術(I C T)を活 て丁寧に説明をしなくてはならない。このことは, (い 用することでその手間を軽減することができる。ダ ささか楽観的な考え方ではあるものの)患者や一般 イナミックコンセントに類する考え方はこの10年の 市民の多くが理解できる研究の説明を心掛ける研究 間に何度か提案されており,再同意の方法には相違 文化を育むことにつながると考えることができる。 がみられるものの,いずれもI C Tを活用するように これらの利点と欠点のバランスがどこで取られる なっている26),28)。ダイナミックコンセントについて ことになるのかは,今後,研究者や患者を含めた私 わずかに言及した文献は散見されるが,比較的まと たち国民全体の価値観の中で決まるだろう。本稿で まったものとしては,米国企業First Genetic Trustや は,患者や一般市民に由来する情報や試料(臓器, Alliance29)による試みを紹介したも 細胞や血液など)はその本人のものであり,自律を のがある30)~ 32)。英国で2008年に始まったE n C o R e 求める場合にはそれを尊重できる体制を整えるのが (Ensuring Consent and Revocation)プロジェクト33) 望ましい,という考え方に基づいている。一方,医 患者団体Genetic 8 3.3 ダイナミックコンセントの利点と欠点 患者中心の情報管理とそれを可能にする新しいインフォームドコンセント 薬基盤研究所の増井は,人由来の情報と試料には公 4. おわりに 共性があり,そのため一度研究者に渡った情報や試 料の管理責任は研究者が担うべきものである,とい 医療・健康情報を取り巻く環境が大きく変わりつ う価値観に基づき,ダイナミックコンセントに対し つある状況の中で,私たちの医療・健康情報をどの て次の2つの批判を述べている35)。第1に協力者(患 ように管理するかを考えなくてはならない。本稿で 者や一般市民)に対して倫理的な責任を押しつける は,こうした文脈においてインフォームドコンセン ことになり,同時に,研究者の倫理的な自律を妨げ トおよびダイナミックコンセントがどのように位置 る。第2に協力者が研究と継続的につながることに づけられるかを概観した。インフォームドコンセン よって研究結果の返還要求が強まることになり,そ トや利用規約は,医療・健康情報の管理のごく一部 れによって医学研究の遂行が妨げられる。 である。しかし,ここは患者や一般市民の意思が反 ここでは,ダイナミックコンセントがほかよりも 映される部分であるため,重要な一部である。それ 優れており,すべてのインフォームドコンセントは にも関わらず,現状では十分に最適化されていると こうあるべきだと主張しているわけではない。しか は言いがたい。インフォームドコンセントのあり方 し,患者中心の情報管理のあり方として,また同時 をとらえ直すことで,自分自身の医療・健康情報が に医学研究への患者や一般市民の関与と理解を深め どのように利用されるかを患者・一般市民がコント るための仕組みの1つとして,こうした柔軟なイン ロールできる範囲が広がり,また医学研究への患者・ フォームドコンセントのあり方は議論を重ねる価値 市民参画(Patient and Public Involvement: PPI)の機 がある。なお,医療もしくは研究機関による医学研 会を増やすことができるだろう。そのことが医学研 究ではなく,民間企業が提供する医療・健康サービ 究の発展に寄与するのか,もしくは阻害するのかと スではインフォームドコンセントではなく利用規約 いうことについては,今後の議論に委ねたい。 がこれに相当するが,これらが扱う情報の領域が拡 大していることを考慮すると,同様に利用規約のあ 謝辞 り方も再検討されるべきである(本稿の執筆後,経 本稿の草稿に大変有益なコメントをくださった高 済産業省は「遺伝子検査ビジネス実施事業者の遵守 祖歩美氏および丹治信氏にこの場を借りてお礼申し 事項」36)を発表し,事業者に対して「倫理的・法的・ 上げます。 社会的課題への対応」の1つとしてインフォームドコ ンセントの取得を要求した)。 参考文献 1) deCODE genetics. http://www.decode.com, (accessed 2014-01-10). 2) 23andMe. https://www.23andme.com, (accessed 2014-01-10). 3) Navigenics. https://www.navigenics.com, (accessed 2014-01-10). 4) 経済産業省. 平成24年度中小企業支援調査:個人遺伝情報保護の環境整備に関する調査(遺伝子検査ビ ジネスに関する調査)報告書(2013年2月) . http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/ bio/24idenshibizinesu.pdf, (accessed 2014-02-03). 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 9 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management April http://johokanri.jp/ 5) Kido, Takashi; Kawashima, Minae; Nishino, Seiji; Swan, Melanie; Kamatani, Naoyuki; Butte, Atul J. 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Those changes are expanding the area of personal information under control of patients and the public and are strengthening patient and public involvement in medical research. This paper presents perspectives on recent patientcentered medical and health information management, emphasizing dynamic consent (dynamic informed consent) and recent environmental changes. Key words medical and health information management, patient-centered, informed consent, dynamic consent, patient and public involvement 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 11 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management http://johokanri.jp/ April 機械翻訳のいま 統計的手法を中心に Present state of machine translation with a focus on statistical approach 隅田 英一郎1 SUMITA Eiichiro1 1 情報通信研究機構/ユニバーサルコミュニケーション研究所(〒619-0289 京都府相楽郡精華町光台3-5)E - m a i l : e i i c h i r o . [email protected] 1 National Institute of Information and Communications Technology (NICT), Universal Communication Research Institute (3-5 Hikaridai Seika-cho Soraku-gun, Kyoto 619-0289) 原稿受理(2014-02-04) 情報管理 57(1), 012-021, doi: 10.1241/johokanri.57.12 (http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.57.12) 著者抄録 ちまた 本稿では,半世紀を越える歴史があり,現在,巷にあふれる自動翻訳システムの 2014 年の到達点を紹介する。自動翻 訳に対する人々の印象はさまざまである。翻訳対象の言語・分野・文長などによって,翻訳品質が大きく違うからである。 たとえば,日本語と英語の間では,汎用で高精度な自動翻訳システムは現存しない。一方,日本語と韓国語の間では, 汎用で高精度な自動翻訳システムが手軽に利用できる。技術に立ち返って,現在の自動翻訳の真の姿を共有すること を目的として,中核技術になっている統計翻訳について詳しく説明する。統計翻訳は,対訳データから翻訳に必要な モデルを導出し,これに基づく確率を最大化するように翻訳する。統計翻訳は,①専門分野の高精度翻訳を実現できる, ②多言語化が容易である等の従来技術にない特徴を有する。統計翻訳を旅行会話に適用した音声翻訳と特許に適用し たテキスト翻訳を例に,高精度の自動翻訳について紹介する。 キーワード 機械翻訳,自動翻訳,統計翻訳,音声翻訳,旅行会話,特許翻訳,多言語処理,汎用,専用,対訳 1. はじめに 国政府は実用システムを目指し多額の研究予算を投 じた。1954年のシステムは,当時最先端の計算機で 12 機械翻訳とは,ソフトウェアでテキストを第1の言 あったIBM701(2KHzの演算装置と9KBの記憶装置)に, 語(原言語という)から第2の言語(目的言語という) 250単語の対訳辞書と6個の(原言語側の単語を参照 に翻訳することを指し,自動翻訳とも呼ばれる。 して,目的言語側の単語・語順を制御する)構文変 簡 単 に 機 械 翻 訳 の 歴 史 を 振 り 返 る。1954年 に は 換の規則とからなるロシア語から英語への翻訳シス Georgetown大学とIBM社による機械翻訳の人類初の テムであった。これは規則に基づく翻訳1) と呼ばれ 実験が行われた。実験は人々に強い衝撃を与え,米 る手法であって,その後,半世紀にわたって,さま 機械翻訳のいま ざまな工夫が加えられ,現在も商用システムの基本 データ)を導出し,これらの確率の積を最大化する 技術として広く活用されている。 訳文候補を出力する。 ハードウェアが格段に進化したこと,言語に関す 図1は,対訳データから,確率付きの対訳辞書が学 るデータが大量に計算機上に集積されるようになっ 習されることを示している。 「どこですか」は「Where たこと,音声認識で言語データを統計的にモデル化 is」 に確率60%で対応することが自動的に取得される。 する手法が大成功したこと,記憶に基づく推論を使っ たコンピュータープログラムがチェス名人を破った 3. 統計翻訳の特徴 こと,などを受けて,2000年以降,機械翻訳の研究 において,対訳データに基づく翻訳手法1) が急速に 統計翻訳の特徴は,規則に基づく翻訳に比べて, 進展した。1つは用例翻訳(Example-based Machine ①専門分野向けの高精度の翻訳システムを構築でき Translation: EBMT)2)と呼ばれ,類似した対訳データ ること,②翻訳システムの多言語化が容易であるこ を修正して翻訳を行うものであり,2つ目は統計翻 と,である。 訳(Statistical Machine Translation: SMT)3)と呼ばれ, 具体的な事例である旅行会話音声翻訳と特許テキ 対訳データから翻訳に必要なモデルを導出し,これ スト翻訳を用いて説明する。2つの分野は後述するよ に基づく確率を最大化するように翻訳するものであ うに,日本国民にとって,外国語の通訳・翻訳が必 る。本稿では,後者の統計翻訳を中心に説明する。 要となる典型的な分野となっているが,従来の方式 では高精度なシステムを構築することができなかっ 2. 統計翻訳の基本のアイデア たこともあり,統計翻訳が採用された。 統計翻訳(S M T)では,対訳データから二言語間 の単語や句の対応関係を抽出した翻訳モデル(確率 3.1 多言語翻訳(旅行会話音声翻訳) 3.1.1 背景 付きの対訳辞書と確率付きの語順変換表)と訳文の 成長戦略, 「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」 (平成 言語らしさを表現する言語モデル(英日翻訳であれ 25年6月14日閣議決定)注1)の中で, 「クールジャパン ば,並びの自然さを表す確率付き日本語の単語連鎖 の推進及び訪日外国人旅行者や対内直接投資の受入 1. 京都駅はどこですか Could you direct me to Kyoto station? 2. 駅はどこですか Where is the station? 3. トイレはどこですか Where is the rest room? 4. タクシー乗場はどこですか 5. Where is the taxi stand? ここはどこですか Where am I? 確率付き対訳辞書の自動作成 どこですか → Where is 3/5=60% どこですか → Could you direct me to 1/5=20% どこですか → Where am 1/5=20% 図1 統計翻訳の基本 1 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 13 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management http://johokanri.jp/ April れ拡大により、徹底したグローバル化を進める」こ とが求められ,「訪日外国人旅行者は2030年に3,000 万人超を目指す」という目標が立てられている。 外国人旅行者の主たる不満は,言葉の壁であった り,宿泊施設など接客側も言葉の問題から外国人旅 行者を積極的に受け入れられないという現実による ものである。 人間の通訳はコストが高く時間の制約などがある ことから,この問題の解消に対する,コンピューター システムによる自動音声翻訳への期待が大きい。 3.1.2 スマホ用音声翻訳アプリVoiceTra このような「言葉の壁」を克服するため,情報通 信研究機構(NICT)では,多言語音声翻訳ソフトウェ アの研究・開発を進めている。その成果として,音 図2 VoiceTraの画面表示例(日英翻訳) 声翻訳ソフトウェア注2)をスマートフォン用に公開し た。このアプリケーションを使えば,たとえば図2と 図3の組み合わせで示したような日本語と英語の対話 ができる。電話するときのようにスマートフォンを 耳元に近づけると短時間振動するので,これを合図 に音声を入力すると,翻訳結果が音声で返る。図2の 1番目の窓はシステムが認識した(聞き取った)結果, 3番目の窓が翻訳結果である。2番目の窓は, 「逆翻訳」 (翻訳文をもとの言語に逆に翻訳する)の結果で,こ れを見て正しく翻訳できたかを確認できる。 3.1.3 旅行会話音声翻訳の事業化 NICTと成田国際空港株式会社(NAA)は2010年10月 4日~ 2011年2月25日,商用化検証実験を実施した。 成田国際空港に関連する固有名詞(エアライン名,観 光地名,駅名,商品名等)1,600件を追加し,従来, 語彙の不足から「穴のカウンターはどこですか?」と 図3 上図の応答例(英日翻訳) 誤認識されていた音声も「ANAのカウンターはどこで すか?」と正しく認識・翻訳することが可能となっ スマートフォンにダウンロードするサービスを開始し た。NAAは, 「音声翻訳技術」が外国人との「言葉の た。これを契機にVoiceTraは多数の会社に技術移転さ 壁」解消のソリューションになると判断して事業化に れた。 着手し,2011年12月末にアプリケーションを旅行者の 14 機械翻訳のいま とにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与 3.1.4 翻訳ソフトウェアの性能 VoiceTraは旅行会話を対象としているが,その翻訳 することを目的とする」とある。逆に,製品を作り 能力としては,おおよそT O E I C600点の人の能力に相 販売するためには,他人の特許を侵害しないように, 当する。 あらかじめ調査をしておく必要がある。これを怠る VoiceTraの特徴には,このように高品質な点に加え と,膨大な補償金を払うことになりかねない。 て多言語対応が容易な点がある。これは,SMTが多言 特許制度は国ごとに定められており,日本では日 語のN個の言語からなる多言語対訳データを用意すれ 本語,中国では中国語で,各国政府に申請すること ば,すべての組み合わせであるN(N-1)個の翻訳 になっている。一方,経済はグローバル化している システムが自動的に構築できることによる。VoiceTra から,たとえば,日本の企業が中国に製品を輸出す は,すでに旅行会話の分野で多言語対訳データ(N= るためには,中国の特許の調査が不可欠になる。中 21)を構築し,すべての組み合わせである420通りの 国は今や世界第2位の経済大国であるので,日本企業 翻訳システムを実現し,それらが十分に実用レベル も中国市場への進出が今後の発展の要になる。一方 の翻訳品質を達成していることを確認している。 で,最近の中国では特許の出願数も急速に伸びてお り,今や世界第2位である。実際に侵害・訴訟事案が 図4のグラフは,20の外国語から日本語への翻訳に 増加している4)。 ついて,NICTのVoiceTra(濃い灰色で表示)と広く 困ったことに,中国語を日本語に翻訳できる翻訳 利用されている多言語ソフトウェア(淡い灰色で表 示)とを,翻訳率(翻訳者が評価した意味が通じる率) 者の数は限られるし,人間による翻訳はコストと時 で比較したものである。 間がかさむ。そこで,中国語特許文書の高精度の自 動翻訳システムの開発が焦眉の課題となっていた。 3.2 高精度専門分野用翻訳(特許テキスト翻訳) 英語でも,従来の特許用の自動翻訳システムの精度 3.2.1 背景 は十分でない場合が多く,高精度の自動翻訳システ アイデアは,特許制度がなければ,他人に簡単に ムが求められていた。 盗まれてしまう。特許制度は,こういったことが起 こらないよう,発明者には一定期間,独占的な権利 3.2.2 特許翻訳の難しさ を与えて保護を図るものであり,日本の特許法第1 特許文を翻訳することは大変難しい。実際,高度 条には, 「この法律は、発明の保護及び利用を図るこ な技能が必要とされることから,翻訳会社の翻訳費 翻訳率の比較 (%) 日本語への翻訳率 100 80 60 NICTのVoiceTra 40 多言語ソフトウェア 20 北京語 台湾華語 タガログ語 ベトナム語 タイ語 ブラジル語 ロシア語 オランダ語 ポルトガル語 マレー語 イタリア語 韓国語 インドネシア語 フランス語 ヒンディ語 スペイン語 英語 デンマーク語 アラビア語 ドイツ語 0 翻訳元の言語 図4 VoiceTraと広く利用されている多言語ソフトウェアとの翻訳率の比較 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 15 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 http://johokanri.jp/ April Journal of Information Processing and Management 用の単価も他の分野の文書より大幅に高額になって ことによって,解釈が困難になり翻訳誤りが増える いる。 こと(図5) ,2つ目は専門用語が膨大で,これを十分 理由の1つ目は1文の長さが非常に長いこと,その んどん新規に作られるため追補が追い付かないこと 0.8 翻 訳 率 カバーする対訳辞書が存在しないし,専門用語はど である。 0.6 0.4 さらに,中国語・英語と日本語は文法がまったく 0.2 異なることから,従来の自動翻訳技術では翻訳精度 0 5 10 15 単語数 20 図5 1文の長さ(単語数)と翻訳率 翻訳率 1 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 が低い状況だった(図6)。表1の従来技術AおよびBに 示したように,意味不明な翻訳が出力されることが 少なくない。 3.2.3 フォーラムNTCIRと自動翻訳 本項で,統計翻訳(S M T)がこの状況を打開した ことを説明する。 N T C I R(N I I T e s t b e d s a n d C o m m u n i t y f o r Information access Research)5)という国際的共同 研究のフォーラムで催された特許の自動翻訳に関す る評価ワークショップを軸にしながら,S M Tによる 特許翻訳の急速な進展に関して紹介する。N T C I Rは, 情報アクセスシステムの評価を国内外の多数の研究 者が共同実施するオープンイノベーションのための フォーラムであり,1998年の立ち上げ以降1年半ごと 図6 言語対と翻訳率 従来技術の翻訳品質 表1 従来技術の翻訳品質 中国語 图一是表示应用本发明的车用发动机 の原文 的传感器设置结构的发动机一的整体 结构的图 図1は、本発明に係る車用エンジンの 模範訳 センサ配設構造を応用したエンジン 1の全体構成図を示している 従来技 図はちょっと本発明した車を応用す 術Aの ることを示してエンジンでのセンサ 訳 ーであり構造のエンジンの1の全体 構造の図を設置します 16 に,多様なタスクの評価結果について議論するため に国際ワークショップを開催している。2008年12月 開催の第7回のN T C I Rの会議からは,特許を対象とし |1 た自動翻訳に関する評価も行われている。この中で, 従来技術とS M Tの比較が重要なテーマの1つになって いた。 (1)翻訳品質と検索精度 第7回のN T C I Rで,はじめて特許の自動翻訳の従来 技術とSMTの比較が行われた。 ま ず, 翻 訳 品 質 に 関 し て 比 較 し た。 英 日 翻 訳 に おいて,従来技術とS M Tの訳文を意味が通じるか (adequacy)と流暢か(fluency)の2つの観点6)で 従来技 図は つは応用の当発明の自動車用 術Bの エンジンのセンサーが構造のエンジ 5段階評価し,平均をとった尺度で比較したところ, 訳 ン の全体の構造の図を設けると表 従来技術を使ったシステムがS M Tのすべてのシステ しています ムより,品質がよかった。 機械翻訳のいま 次に,異言語検索の精度と翻訳品質の関係を調べ た。異言語検索とは,日本語の特許文献を英語の検 訳品質が従来法の品質を上回ることが確認された。 日英の場合は,毎回,性能が改善しているものの, 索キーワードで検索するなど,検索対象と検索キー 現時点では,まだ統計翻訳の翻訳品質は従来法の品 ワードの言語が異なる検索のことである。この言語 質を下回っている。 の差を対訳辞書や自動翻訳で解消する。検索の精 (3)大規模実験での翻訳品質 度にはMAP(Mean Average Precision)7)と呼ばれ ただし,これはN T C I Rで利用された300万文という る標準的な評価尺度があり,翻訳の品質にはB L E U 限定された対訳データを使った評価の結果である。 (Bilingual Evaluation Understudy)6)と呼ばれる標準 一方,S M Tは,対訳データの量が多ければ多いほど, 的な評価尺度がある。実験では,BLEUとMAPには強 翻訳品質がよくなることがわかっているので,対訳 い相関(相関係数0.936)があり,BLEUが高ければ高 データの量は増やすことによって品質向上が確実に いほど,M A Pが高くなることがわかった。S M Tはこ 可能であり,S M Tの優位性に疑いを差し挟む余地は のB L E Uを目的関数にして最適化することから,研究 少ない。実際,独自に,N I C Tは自動文対応技術9)を の進捗にともない年々 BLEUが改善されるので,同時 駆使して2,700万文の日英対訳データを構築し,これ にM A Pも改善されていることになる。一方,従来技 を使った日英・英日のS M Tは従来技術によるシステ 術は,BLEUもMAPも低かった。さらに,理屈のうえ ムを品質で圧倒していることを確認した。 からも,経験的にも,従来技術を改良しても,B L E U は大きく変化しないし,M A Pも大きく改善しないと 想定しても間違う可能性は低い。 まとめると,検索の側面から考えると従来技術は (4)SMTでの構文を使った語順変換 同じデータ量でもアルゴリズムによる性能差が大 きく変わるので,与えられたデータで,より高精度 を実現する良いアルゴリズムの研究が重要になる。 有効性が低く改良の期待も薄いが,逆に,S M Tはす 日本語と英語のように,文法が異なる言語間の翻 でに従来技術を圧倒しており,その後の進展も急速 訳を高精度化するための新しい技術が盛んに研究開 であり,性能が飽和する兆しもまだみえないので, 発されている。 軍配は明らかであった。 たとえば,英日翻訳では,英語文の構文を計算し, 一方で,翻訳品質の面では,当時は,従来技術が 主辞が必ず後置されるという日本語の特性を利用し SMTを上回っていたが,後述のように,その後のSMT て英語の構文構造を日本語のそれに変換した後,自 のアルゴリズムの進展と,対訳データの増量によっ 動学習による確率付き対訳辞書などを用いて訳語を て逆転することになり,S M Tが翻訳品質でも検索性 選択する手法で,翻訳の精度を大きく改善できるこ 能でも最終的には優位に立つことになった。 とが示されている10)。 (2)統計翻訳の急成長 言語対によって翻訳の難しさは違い,自動翻訳, さらに,N I C Tは,英日翻訳に限定することなく適 用可能となるように,語順制御を自動的に学習する 特に統計翻訳の研究開発や翻訳性能の状況は異な 手法(新技術)を提案し(図7),これによって,特 る。英日のように語順が大きく異なる言語では翻訳 許文書のような長文の文書においても高精度な翻訳 品質が低く,年々,精度の改善を示しつつも長い間, を可能とした。 従来技術の翻訳品質を上回ることができなかった。 平均約25語のテストセットで,中国語特許文書を 2010年前後に提唱された一連の語順変換と訳語選 翻訳率80%,英語特許文書を翻訳率85%という高精度 択を分離する技術(3.2.3(4))が奏功し,英日の場合, で日本語に翻訳できた。表1のサンプル入力に対する 2013年6月開催の第10回NTCIR8)では,統計翻訳の翻 提案システムの訳文を表2に示す。 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 17 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management http://johokanri.jp/ April 3.2.4 統計翻訳の事業化 I gave him apples N I C Tは3.2.3の最後に述べた技術をただちに事業化 語順変換 自動学習 した語順 変換規則 日本特許情報機構(Japio)と共同で開発した, 「中 日自動翻訳ソフトウェア」の翻訳者が判定した翻訳 率は,従来技術の3倍以上の値を達成している。図8 I him apples gave 訳語選択 した。 自動学習 した確率 付きの対 訳辞書 私は 彼に リンゴを あげた のように,この「中日自動翻訳ソフトウェア」によっ て,J a p i oは中国の特許文献を日本語に翻訳し,デー タベース化し,特許検索事業としてサービスを開始 した11)。図9に「センサ配設構造」に対する検索結果 の中国語特許と自動翻訳の一部を例示する。 図7 NICTの新方式の統計翻訳 また,日本発明資料株式会社(以下「ニッパツ」 ) 表2 NICTの新方式による統計翻訳例 中国語 の原文 图一是表示应用本发明的车用发动机的 |1 传感器设置结构的发动机一的整体结构 的图 図1は、本発明に係る車用エンジンのセ 模範訳 ンサ配設構造を応用したエンジン1の 全体構成図を示している 提案技 図一は本発明に係る車両用エンジンの 術での センサ配設構造のエンジン一の全体構 訳 成を示す図 図9 中日自動翻訳ソフトウェアによる検索例: 「センサ配設構造」に対する検索結果の中国語特許と 自動翻訳の一部 図8 自動翻訳を活用した中国語特許の検索システム 18 機械翻訳のいま と共同で開発した英日の「自動翻訳ソフトウェア」 G o o g l e翻訳は統計翻訳を採用しているが,1つの では,(特許要約1件あたりの)訳語誤り数を従来技 サービスですべての分野をカバーしようとしている 術と比べて,約12分の1に削減するという高い品質を ことと,日本語に特化した工夫がないであろうこと 実現した。ニッパツは,今回開発した「自動翻訳ソ から,高い翻訳精度が実現できていない注3)。 フトウェア」によって,英語特許を対象にして同様 のサービスを事業化した12)。 これらの自動翻訳システムは企業の知財部や弁理 士や審査官の調査のための特許検索で役立つだろう。 4. 統計翻訳の周辺の話題 4.4 機械が翻訳しやすい日本語文章の作り方はあ るか? この点については,クリアに述べることは難しい。 産業日本語研究会はこの点に興味をもって毎年シン ポジウムを開催してきたので,Webサイト注4)を参照 すると関連情報が入手可能である。 4.1 統計翻訳が適用しやすい文献とそうでない文 献はあるのだろうか? 文長は短いほうがよく,言語対は類似した言語間 がよいのだが,これらの側面は盛んな研究によって, どんどん改善されている。 機械に限定してではないが,翻訳しやすい日本語 について,調査研究された結果がいくつか出版され ているので,参考にされたい13),14)。 5. おわりに より本質的には,対訳データが入手しやすいかど うかが死活的に重要である。特許の統計翻訳が成功 本稿では,性質がまったく異なる旅行会話と特許 した理由の1つには大規模な対訳データが比較的簡単 の2分野において,統計翻訳(S M T)技術によって, に入手できることがある。大量の対訳データの存在 従来技術を大きく上回る高精度の自動翻訳システム を前提にしている手法なので,データ量が少ないと を実用化できたことを述べ,さらに,統計翻訳技術 十分な翻訳精度が出ない。この限界に挑戦する研究 と従来技術を比較対照して説明した。 も盛んに行われている。 さらにS M Tが適用可能な分野は上記の2分野に限定 されるわけではなく, 電子通販の商品説明, コンピュー 4.2 統計翻訳は英日だけでなく,中日や韓日など 他の言語対への適用は可能か? 統計翻訳は(翻訳精度に差は出るが)原則言語対 ターマニュアル,論文,S N Sなど多様な分野ですでに 成功したり,トライアルが始まったりしている。 統計翻訳は,英語・フランス語間という似た言語 を選ばず適用できる手法である。英日だけでなく, 対から始まったが,現在では,英語・日本語間とい 中日で成功していることから,言語が似ている韓日 う最難関の言語対でも有効であることが証明され などは少ないデータ量でも十分な翻訳性能が出るだ た。ステークホルダーはこのBIG WAVEをうまくつか ろう注3)。 むことが重要だろう。 今後は,要素技術である解析の分野適応を改善す 4.3 Webサイトの翻訳サービスはどのような技術 を使っているか? W e bサイトにより異なり,規則翻訳も統計翻訳も ることなど,より長文の正確な翻訳を実現するため の技術や文章全体での訳語の一貫性を実現する文脈 処理技術の創出などが課題になる。 利用されている。前者の代表は「YAHOO!翻訳」で, 後者の代表は「Google翻訳」である。 なお本稿は,統一したテーマの下,著者による過 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 19 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management 去の複数の資料(たとえば,参考文献15)など)に加 筆したものである。 http://johokanri.jp/ April 謝辞 本研究開発を推進したN I C Tの関係者,N I C Tの技術 を評価し実用化してくださったATR-Trek,フィート, KDDI,バオバブ,Japio,日本発明資料の関係者に深 く感謝する。 本文の注 注1) http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/saikou_jpn.pdf 注2) 現在はNICTからFEAT社にライセンスされ,VoiceTra+という名前で運用されている。詳細はhttp:// voicetra-plus.jp/index.htmlを参照。 注3) ただし,同翻訳システムは,開発者のたゆまざる努力で,毎年翻訳精度が改善されていることにも言 及しておきたい。 注4) 産業日本語研究会. http://www.tech-jpn.jp/xoops/html/ 参考文献 1) 隅田英一郎. "機械翻訳". 言語処理学事典. 言語処理学会 編. 共立出版, 2009, p. 262-263. 2) 黒橋禎夫. "用例に基づく翻訳". 言語処理学事典. 言語処理学会 編. 共立出版, 2009, p. 264-265. 3) 塚本元. "統計に基づく翻訳". 言語処理学事典. 言語処理学会 編. 共立出版, 2009, p. 266-269. 4) 特許庁. 知的財産立国に向けた新たな課題と対応. https://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/pdf/ tizai_bukai_18_paper/siryou_01.pdf,(accessed 2014-02-04) . 5) NTCIR. http://ntcir.nii.ac.jp/jp/about/, (accessed 2014-02-04). 6) 安田圭志, 隅田英一郎. 機械翻訳の研究・開発における翻訳自動評価技術とその応用. 人工知能学会誌. 2008, vol. 23, no. 1, p. 2-9. 7) 岸田和明. 情報検索における評価方法の変遷とその課題. 情報管理. 2011, vol. 54, no. 8, p. 439-448. 8) Patent Machine Translation Task at NTCIR-10. http://ntcir.nii.ac.jp/PatentMT-2/, (accessed 2014-02-04). 9) Utiyama, Masao; Isahara, Hitoshi. (2003) Reliable Measures for Aligning Japanese-English News Articles and Sentences. ACL-2003, p. 72-79. 10) Isozaki, Hideki; Sudoh, Katsuhito; Tsukada, Hajime; Duh, Kevin. "Head Finalization: A Simple Reordering Rule for SOV Languages". Proceedings of WMT-2010 (ACL 2010 Joint Fifth Workshop on Statistical Machine Translation and Metrics MATR), 2010, p. 244-251. 11) 独立行政法人情報通信研究機構, 一般財団法人日本特許情報機構. N I C Tの高精度な中日自動翻訳ソフト ウェアがJapioのサービスに. 2013-03-28. http://www.nict.go.jp/press/2013/03/28-1.html,(accessed 2014-02-04). 12) 独立行政法人 情報通信研究機構, 日本発明資料株式会社. “英語特許文” の高精度「自動翻訳ソフトウェア」 を開発. 2013-03-21. http://www.nict.go.jp/press/2013/03/21-1.html,(accessed 2014-02-04) . 13) 一般財団法人日本特許情報機構. 特許ライティングマニュアル(初版).2013-8-29. http://japio-tjp.org/ 20 機械翻訳のいま topsubs/pwmdls1.htm,(accessed 2014-02-04) . 14) 日本翻訳連盟標準スタイルガイド検討委員会. JTF日本語標準スタイルガイド(翻訳用) . http://www.jtf. jp/jp/style_guide/pdf/jtf_style_guide.pdf,(accessed 2014-02-04) . 15) 隅田英一郎. 特許を対象とする高精度な自動翻訳技術の異言語検索における実用化. J a p i o Y E A R B O O K . 2013, p. 280-285. Author Abstract This article examines the point where half-century old machine translation systems freely available to the public reached in 2014. People have different impressions of machine translation as its quality largely varies with the languages, areas, text lengths and so forth the translation deals with. For example, we have no general-purpose highly accurate automatic translation system for Japanese-English readily available yet. On the other hand, we have highly accurate general-purpose automatic translation systems for JapaneseKorean. This article elaborates on statistical machine translation, the core technology, to help recognize the true state of today's automatic translations. Statistical machine translation works in such a way that it derives a statistical model necessary for translation from bilingual data and maximizes probability based on that model. Statistical machine translation offers some unique features including high accuracy in specialized areas and ease of multilingualization. We introduce high accuracy automatic translation by taking, for example, both a speech translation, which applies statistical machine translation to conversations in travel scenes, and a text translation, which applies the same to patent information. Key words machine translation, automatic translation, statistical machine translation, speech translation, conversations in travel scenes, patent translation, multilingualization, general-purpose, dedicated-purpose, parallel translation 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 21 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management http://johokanri.jp/ April JDreamIIIの紹介とサービス連携 JDreamIII and service linking 長谷川 均1 HASEGAWA Hitoshi1 1 株式会社ジー・サーチ 新規事業開発室(〒108-0022 東京都港区海岸3-9-15 L O O P - Xビル)T E L : 03-3452-1664 E - m a i l : [email protected] 1 G-Search Limited. Business Development Office (Loop-x Bldg. 3-9-15 Kaigan Minato-ku, Tokyo 108-0022) 原稿受理(2014-01-28) 情報管理 57(1), 022-028, doi: 10.1241/johokanri.57.22 (http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.57.22) 著者抄録 株式会社ジー・サーチは 2013 年 4 月から JDreamIII 科学技術文献情報データベースサービスを開始した。JDreamIII は 独立行政法人科学技術振興機構より提供されていた J D r e a m I I の後継サービスである。サービスの移管にあたり,利 用者の資産を継承し,確実にサービスを移行できることを最優先に開発コンセプトをまとめた。既存の利用者向けに JDream II との高い互換性をもち,詳細な条件を設定できる検索インターフェースと,エンドユーザー向けにインター ネットの検索エンジンを意識したシンプルな検索インターフェースを提供している。また,当社独自の機能として, JDream を補完する他のサービスとの連携機能を搭載するなどの工夫を行っている。サービス開始当初,搭載を見送っ た機能を含め,検索機能,管理機能,サービス連携機能を強化した J D r e a m I I I R2.0 の提供を 2013 年 11 月 5 日より開 始した。 キーワード JDreamIII,科学技術情報,文献検索,情報検索システム,情報サービス,サービス連携,複製,再配布 1. はじめに でき,現在に至っている。 本稿ではJDreamIIIの開発経緯と機能強化について JDreamIII(ジェイドリームスリー)は2013年4月1 日より株式会社ジー・サーチが提供を開始した日本 最大級の科学技術文献情報データベースサービスで ある 2. JDream移管の経緯 1) 。ご存じの方も多いと思うが,独立行政法人科 学技術振興機構(JST)から提供されていたJDreamII 当社は2012年4月にJSTとの間で,文献情報提供事業 の後継サービスとなる。JDreamIIIの開発と運用にあ に係る提供業務を当社に移管する契約を締結した2)。 たり,J S Tと緊密な連絡を取りながら進めた結果,大 移管の経緯は次のとおりである。 きな混乱もなくJ D r e a m I Iの利用者を移行することが 22 紹介する。 2010年4月26日に実施された政府の事業仕分けの JDreamIIIの紹介とサービス連携 際,J S Tが対象機関となり,J D r e a mサービスを含む ビスの両方を取り扱っていたため,それぞれの利用 「科学技術文献情報提供事業」は「事業の実施は民間 者がサービスに求める機能に違いがあり,それに の判断に任せる」との判断が下された。そして,同 適するインターフェースは大きく異なると考えてい 年12月に閣議決定された「独立行政法人の事務・事 た。そのため,JDreamIIIを提供するにあたり,どの 業の見直しの基本方針」では,「科学技術文献情報提 ようなインターフェースにするのかは社内でも意見 供事業」については,「2011年度中に引受け手となる が分かれた。検討を重ねた結果,既存ユーザー向け 事業者の選定を開始し、2012年度中に民間事業者に にはJDreamIIと高い互換性をもつ「アドバンスドサー よるサービスを実施する」ことが記載された3)。これ チ」 , エンドユーザー向けにはGoogleライクな「クイッ を踏まえ実施された「科学技術文献情報提供事業に クサーチ」を用意することとなった。 係る提供業務の事業者公募」の結果,当社が優先交 渉権者として選定され,事業契約を締結した。なお, 3.1 高精度な検索が可能なアドバンスドサーチ 移管対象は情報提供サービスの部分であり,データ J D r e a m I Iで は2つ の 検 索 モ ー ド( シ ン プ ル モ ー そのものは引き続きJ S Tが作成しており,データの継 ド お よ び コ マ ン ド モ ー ド ) が 用 意 さ れ て い た が, 続性と品質が維持されている。 JDreamIIIではこの2つを統合し, 「アドバンスドサー 3. JDreamIIIの開発コンセプト チ」として提供することになった(図1参照) 。 アドバンスドサーチには,2つの入力ボックスが用 意されている。画面上部のコマンド入力ボックスに JDreamIIIの開発にあたり,最も困難だったのは開 は直接検索式を入力する。J D r e a m I Iで利用できる論 発期間が限られていたことであった。移管が決定し 理演算子,近接演算子,フィールドコードをサポー てから,実際のサービス提供までに残されていた期 トしており,検索結果は集合として保存される。 間は1年に満たなかった。限られた時間の中で間違い J D r e a m I Iと高い互換性を維持しているため,コマン なく移行するため,利用者の資産を継承することを ドモードの利用者にとっても違和感なく検索を進め 最優先に開発のコンセプトをまとめた。ここでいう ることができる。 資産の継承とは,具体的にはJ D r e a m I Iでご利用いた 一方,コマンド入力ボックスの下には,検索キー だいていた保存式とSDI(Selective Dissemination of ワードとそれに組み合わせるフィールドコードをプ Information,予約提供サービス)式がJDreamIIIで利 ルダウンメニューから選択する「追加条件入力ボッ 用できることを指すが,それにとどまらず,JDreamII クス」を用意した。これはJ D r e a m I Iのシンプルモー に関する利用者のノウハウがそのままJDreamIII検索 サービスでも活用できることであり,J D r e a m I Iとの 高い互換性が必須であると考えた。 その一方で,初めて利用する人でも直感的に操作 できるサービスでないと,利用の裾野が広がらない ことも事実である。当社は1991年から「G-Searchデー タベース事業」を開始し,新聞・雑誌記事,企業情 報を中心としたG - S e a r c hデータベースを提供してき た。さらに2000年より海外のD i a l o gなども扱ってい る。コンシューマー向けサービスと専門家向けサー 図1 JDreamIII アドバンスドサーチ 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 23 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management http://johokanri.jp/ April ドを意識したものである。コマンド入力ボックスと てしまう。そこで,クイックサーチでは[絞り込み条 追加条件入力ボックスはそれぞれ独立して利用でき 件]ボタンを用意し,発行年,原文献の言語,抄録の る。どちらを使っても検索可能であるし,検索結果 有無などの条件を指定して絞り込む機能を追加して は集合として保存される。そのため,どちらの検索 いる。 ボックスを使うかは,検索中に切り替えることもで このように利用者層が異なることを前提とした2系 きるし,両方のボックスにキーワードを入力した場 統の検索インターフェースを用意したが,実際にサー 合にはA N D検索となる。いつもコマンドで利用して ビスを開始すると検索ファイル(JSTPlus,JMEDPlus) いる人でも,普段使わないフィールドを検索すると によって利用方法がかなり異なることがわかった。 きは,追加条件入力ボックスでプルダウンからフィー ルド選択する,といった利用方法が考えられる。 表1は2013年4 ~ 11月までのアドバンスドサーチ, クイックサーチの検索回数の割合であるが,JSTPlus ではクイックサーチの利用が多く,JMEDPlusでは圧 3.2 エンドユーザー検索を強力に支援するクイッ クサーチ 倒的にアドバンスドサーチの利用が多い。この結果 からJSTPlusでは研究者・技術者自身による検索が多 クイックサーチは,JDreamIIIで新たに導入した検 く,JMEDPlusでは検索専門家がコマンドやフィール 索インターフェースで,初めての利用者でも直感的 ドコードを駆使した検索を行っていることが推測で に操作できることを目指した。G o o g l eに代表される きる。 インターネットの検索エンジンを意識した,入力ボッ クスが1つ用意されているだけのシンプルな構成であ 4. JDreamIII R2.0登場 る(図2参照)。 利用者層を考慮し, 「ファイル」や「検索フィールド」 J D r e a m I I Iの開発は非常に短納期の開発であった を意識させないようにデザインした。検索対象分野 にもかかわらず,幸いなことに大きな混乱もなく, はファイルではなく,技術分野をプルダウンメニュー J D r e a m I Iの利用者を引き継ぐことができた。その一 から選択する。また,クイックサーチでは,レコー 方,搭載を見送らざるをえなかった機能も多く,サー ド全体を対象とした検索が行われるため,利用者は ビス開始以来,利用者より多数の改善・機能追加の フィールドコードを意識しなくてよい。 ご要望をいただいた。 一方,このような検索インターフェースでは,あ 比較的開発規模が小さいものについては毎月のメ りふれた用語を入力するとヒット件数が膨大になっ ンテナンスで対応を行っており,その中には全国で 開催したJDreamIII発表説明会等で多数のご要望をい ようおん ただいた「拗 音・促音の同一視検索(例:フィルム とフイルム) 」や「Internet Explorer 10への対応」が 含まれる。これまでの機能改善履歴についてはW e b サイト(http://jdream3.com/jd_room/kaizen/)でお 知らせしている。 表1 検索ファイル別検索インターフェース利用比率 検索ファイル 図2 JDreamIII クイックサーチ 24 JSTPlus JMEDPlus アドバンスドサーチ 44.9% 86.7% クイックサーチ 55.1% 13.3% JDreamIIIの紹介とサービス連携 搭載を見送った機能を含め,利用者の要望をサー 来の選択肢に追加する形にしており,操作手順の変更 ビスに反映するために,大規模な改修を行い,2013 を強いられることがないよう考慮している (図3参照) 。 年11月5日よりJ D r e a m I I I R2.0(リリース2.0,以下 4.1.1 追加条件入力ボックスの拡張と名称変更 R2.0と記載)として提供を開始した。R2.0の開発にあ たり重点をおいたのは以下の3点である。 追加条件入力ボックスを3行に拡張し,行間の論理 演算(AND,OR,NOT)も指定可能にした。個々の ・ 検索機能の強化(検索ツールとしての完成度を 上げる) 入力ボックス内での論理演算も,直接演算子を入力 することにより可能である。この強化により,追加 ・ 管理機能の強化(管理者の負担を軽減する) 条件入力ボックスだけで複雑な検索が可能になった ・ サービス連携の強化(ジー・サーチならではの ため,名称も「フィールド選択入力」と改めた。 付加価値を提供する) R2.0で追加・変更された機能の一覧を表にまとめた が,特に重要なものについて紹介したい(表2参照) 。 4.1.2 検索履歴表示エリアの視認性向上 検索表示エリアについては,表示行数を10行に拡 張するとともに,長い式は1行に収まるようにカット 4.1 検索機能の強化 して表示するように改めた。従来は,長い式を折り 主にアドバンスドサーチを中心に強化を行ってい 返して表示していたため,表示できるL番号がかなり る。サービス開始以来,JDreamIIとの比較で,多くの 少なくなってしまうことがあったが,今回の変更に 方に指摘いただいた部分を中心に,検索ツールとして より,視認性が大幅に向上した。検索履歴全体の確 の使い勝手向上を目指したものである。追加条件入力 認は,「履歴表示」リンクをクリックし,新たに開い ボックスの拡張と表示条件入力ボックスの新設により た画面に完全な検索履歴を表示する点は従来と同じ 外観が変わっているが,コマンドボックス位置などの である。 基本的なレイアウトの変更はない。また,新機能も従 表2 JDreamⅢ R2.0の変更点 対象サービス 概要 クイックサーチにダウンロード機能追加 クイックサーチのタイトル一覧表示項目設定 ダウンロード形式追加 ダウンロードファイル名変更 検索機能 追加条件ボックスのプルダウンメニュー追加 検索履歴の表示エリア拡張 回答表示条件入力ボックス新設 集合番号3桁化 ログアウト時の料金表示 複製 ・ 再配布/ネットワーク利用申込機能 管理機能 クイックサーチの検索分野初期値設定 検索IDごとの環境設定 サービス連携 連携サービス追加 内容 クイックサーチおよび科学技術文献速報Webにダウンロード機能を 追加 クイックサーチのタイトル一覧に表示する項目を管理画面で設定 可能 ダウンロード形式にWord形式, PDF形式を追加 ダウンロードファイル名を “JDDL+14桁数字” に変更。 数字部分 はダウンロード実施時刻 (年月日時分秒) となる ・ 追加条件入力ボックスを3行に拡張し, 入力ボックス間の演算 (AND, OR, NOT) の指定機能を追加 ・ 名称を 「フィールド選択入力」 に変更 アドバンスドサーチの検索履歴表示エリアを拡張し, 視認性を 向上 検索画面に回答表示条件入力ボックスを新設 集合番号の上限を999に拡張 (申し込みにより個別に設定) 検索終了 (ログアウト ・ ファイル選択に戻る) 時に料金表示を行 うように変更 ・ 複製 ・ 再配布/ネットワーク利用申込機能を追加 ・ SDI設定時, 回答表示時に同時に申込む方法と管理画面から後 日申し込む方法が利用可能 環境設定にクイックサーチの検索分野初期値を追加 1つの管理者ID配下に複数の検索IDが紐付いている場合, 検索 IDごとの環境設定が可能 翻訳サービス連携 (2013年11月),ProQuest Dialog (2014年1月), Mobile Library (2014年2月) 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 25 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management http://johokanri.jp/ April 機能を追加した。 4.2.1 検索IDごとの環境設定機能 従来,同じ管理者I D配下の検索I Dは,すべて同じ 利用環境に設定されていたが,R2.0では検索IDごとに 環境設定が可能になった。そのため,検索I Dごとに データベースの初期値(接続時に自動的に選択され る検索ファイル)や複写連携の利用可否を設定する ことができる。たとえば,機関内でJDreamIIIを開放 している場合,利用者に開放するI Dは複写機能をオ フにすることが可能である。 図3 JDreamIII R2.0 アドバンスドサーチ 4.2.2 複製・再配布/ネットワーク利用のオンライン 申し込み機能 4.1.3 回答表示条件入力ボックスを新設 JDreamIIIから出力したレコードをコピーし,社内で こちらも利用者からの要望が多かった項目で,回 配布したり,サーバーに保存し,複数人で利用する場 答表示を行う際,直接表示条件を入力できるボック 合,複製・再配布/ネットワーク利用の申し込みが必 スを新設した。検索結果を表示する際,画面を移動 要である。従来,所定の申込用紙で利用いただいてい する手間を省くことができる。もちろん,L番号をク たが,紙ベースでのやりとりの煩わしさがあった。今 リックし,表示条件指定画面へ移動する操作方法も 回,オンラインで申し込むことが可能になり,手軽に 引き続き利用可能である。 申し込みができるようになった。申し込み方法は2通 りあり,1つは,回答表示やユーザー S D Iの設定の際, 4.1.4 ダウンロード機能の強化 同時に申し込む方法である。回答表示条件を設定する ダウンロード形式にW o r d形式とP D F形式を追加し 画面に,複製・再配布/ネットワーク利用オプション た。両形式ともファイル形式の特性を活かし,ハイ の項目が追加されているので,必要部数(ネットワー ライトおよびリンクに対応している。全文へのリン ク利用の場合は利用人数) を指定する。たとえば, ユー クが提供されている場合,Word / PDFファイル上で ザー S D Iを特定のグループ全員に配布したいような場 リンクをクリックして全文へアクセスすることがで 合などを想定している(図4参照) 。 きる。また,改ページオプションを利用するとレコー 2つめは,管理者メニューから,ファイル,件数, ドごとに改ページが挿入されるため,一件一葉で印 部数を指定して,後日,申し込む方法(現行の申込 刷することができる。さらにクイックサーチにもダ 用紙を利用する方法に相当)である(図5参照) 。 ウンロード機能を追加した。利用できるファイル形 式はアドバンスドサーチと同様である。 回答表示やS D Iの結果から必要なものだけ選び,共 有することができる。実際に共有したいレコード 数分だけを申し込むことができるので便利である。 4.2 管理機能の強化 管理機能を強化し,検索I Dごとの環境設定機能と 複製・再配布/ネットワーク利用のオンライン申込 26 JDreamIIIから出力した回答を社内で配布・共有する 場合,このオプションを活用していただければ幸い である。 JDreamIIIの紹介とサービス連携 図4 複製・再配布/ネットワーク利用申し込み(同時申し込み) スである「Mobile Library」 ,そして翻訳サービスを追 加した。いずれもJDreamIIIを補完するサービスであ り,I Dの管理も簡単になるので管理者の負担も軽減 される。 JDreamIIIの検索画面に連携先へのリンクが用意さ れているので,連携サービスオプションが設定され ていれば,認証画面を経ることなく,連携先サービ スへ移動することができる。ProQuest Dialog連携の 実際の例を示す(図6参照) 。 5. 今後の機能強化について 図 5 複製・再配布/ネットワーク利用利申し込み(後日申し込み) 図5 複製・再配布/ネットワーク利用申し込み (後日申し込み) 3 R2.0によりサービス連携先を追加し,J D r e a m I I Iの 検索I Dで国内外のサービスが利用可能になったが, 4.3 サービス連携の強化 さらに密な連携を目指した強化を予定している。サー うた JDreamIIIの検索IDで,当社が提供する他のサービ ビス連携を謳 いながらも完成度としてはI D「連係」 スをシームレスに利用する「ID連携機能」は当社なら の段階であり,本来,われわれが目指している「連携」 ではの機能であり,サービス開始と同時に「G-Search」 に近づけていきたいと考えている。今後もJ S Tと緊密 データベースサービスとの連携を提供している。今 に連携し,継続的に利用者のニーズを取り入れて, 回連携先として海外のデータベースサービスである 機能追加や利便性の向上に努めていく所存である。 「ProQuest Dialog」とドキュメントデリバリーサービ 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 27 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management April http://johokanri.jp/ 図6 ProQuest Dialog連携 参考文献 1) ジー・サーチ. 日本最大級の科学技術文献情報提供サービスJDreamIIIを提供開始. http://www.g-search. jp/release/2013-02-28-000400.html, (accessed 2014-01-17). 2) ジー・サーチ. 科学技術振興機構とジー・サーチ、文献情報提供サービス移管に関する契約を締結. http://www.g-search.jp/release/2012-05-23-000399.html, (accessed 2014-01-17). 3) 内閣官房行政改革推進室. 独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針. 平成22年12月7日閣議決定. http://www.gyoukaku.go.jp/suishinnshitsu/siryou/dokuhou/101207_khoshin.pdf, (accessed 2014-01-17). Author Abstract G-Search has started JDreamIII service from April, 2013. JDreamIII has succeeded service of JDreamII, which had been provided by JST. JDreamIII has 2 types of search interface, one is high compatibility with JDreamII for existing users, and the other is simple search interface for novice users. From November 5, 2013, enhanced version "R2.0" was released. Key words JDreamIII, science and technology information, bibliographic information retrieval, information retrieval system, information service, service linking, copy, redistribution 28 日本版NIH創設に向けた新しい指標の開発(4) 日本版N I H創設に向けた新しい指標の 開発(4) パイプラインにつながる特許の判別指標 Development of new indicators for the launch of a Japanese version of the NIH (4) Refined indicators for patents linked with marketed drugs and pipelines 治部 眞里1,2,3 長部 喜幸4,5 JIBU Mari1, 2, 3; OSABE Yoshiyuki4, 5 1 経済協力開発機構(2, rue Andre-Pascal, 75775, Paris, CEDEX 16, France) Tel: 33(0) 1 45 24 93 54 E-mail: mari.jibu@oecd. org 2 独立行政法人科学技術振興機構(〒102-8666 東京都千代田区四番町5-3) Tel: 03-5214-8402 E-mail: [email protected] 3 同志社大学 技術・企業・国際競争力研究センター(〒602-8580 京都市上京区今出川烏丸東入寒梅館3階) TEL: 075-2513779 4 経済協力開発機構(2, rue Andre-Pascal, 75775, Paris, CEDEX 16, France) Tel: 33(0) 1 45 24 93 84 E-mail: yoshiyuki.osabe@ oecd.org 5 日本特許庁(〒100-8915 東京都千代田区霞が関3-4-3) Tel: 03-3581-1101 E-mail: [email protected] 1 The Organisation for Economic Co-operation and Development (OECD) (2, rue Andre-Pascal, 75775, Paris, CEDEX 16, France) 2 Institute for Technology, Enterprise and Competitiveness, Japan Science and Technology Agency (JST) (5-3 Yonbancho Chiyoda-ku, Tokyo 102-8666) 3 Doshisha University (Third Floor, Kambaikan Karasuma-Imadegawa Kamigyo-ku, Kyoto 602-8580) 4 The Organisation for Economic Co-operation and Development (OECD) (2, rue Andre-Pascal, 75775, Paris, CEDEX 16, France) 5 Japan Patent Office (3-4-3 Kasumigaseki Chiyoda-ku, Tokyo 100-8915) 原稿受理(2013-12-24) 情報管理 57(1), 029-037, doi: 10.1241/johokanri.57.29 (http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.57.29) 著者抄録 日本版 N I H や製薬企業における,政策決定・戦略立案に資するエビデンス提供のため,新しい指標に基づいた医薬品 産業の現状俯瞰・将来予測を試みた。今回は,医薬品産業における基礎研究力を特許から把握するため,製薬企業の個々 の研究開発テーマの進捗状況(【非臨床試験】→【フェーズ 1】→【フェーズ 2】→【フェーズ 3】→【承認申請】→【承認】 →【市販】)と密接に関連する特許を特定するための新しい指標の導出を試みた。指標としては,I P C コード数,被引 用特許数,特許が引用する非特許文献数が有力であることがわかった。これにより,医薬品産業の新薬創出力および 将来の新薬創出力がパイプラインだけでなく,特許においても把握可能である。 キーワード 日本版N I H,医薬品,特許,指標,研究開発,低分子化合物,バイオ医薬品,バイオテクノロジー,客観的根拠に基づ く政策,特許の質 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 29 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management http://johokanri.jp/ April 1. はじめに してきたが,今回製品につながるような特許が予測 できれば,さらに長期スパンの将来予測ができると 「日本版N I H創設に向けた新しい指標の開発(1)~ 考えられる。これにより日本版NIHや製薬企業におけ (3)」において1)~ 3),製薬企業が有する個々のパイ る政策立案・戦略立案において,基礎研究から製品 プラインや医薬品により,各国の現状および将来に までの一貫した新薬創出力を示すことが可能となる。 おける新薬創出力を把握できることが示せたが,そ なお,本稿は著者の私見であり,著者が所属する の前段階の基礎研究においては,どのようになって 機関の意見・見解を表明するものでない点に留意願 いるのだろうか。拙著(2)においては,前段階の基礎 いたい。 研究動向を把握するため,論文数および特許出願数 を用いて分析を行った。特許の数で言えば,ロケッ 2. 特許分析における指標 トやコンピューターのように1製品が何千,何万もの 特許で構成されている分野とは違い,低分子医薬品 医薬品産業において,特許戦略は非常に重要であ やバイオ医薬品は少数の特許で構成されていると言 ることは言うまでもなく,特許の取得,維持管理,他 4) われている 。しかし,拙著(2)で導出された特許出 者へのライセンス供与等,各事業主体とも多大な投 願数は,1991年から2001年および2002年から2012年 資を行って,競争力の源泉の1つとしている。特に他 の2期間において,米国で5,899件と5,323件,日本で 者へのライセンス供与の重要性については,拙著(3) 270件と1,045件である。それに対して「市販」数お で触れたとおりである。 よびパイプライン数の合計では,米国が218件,日本 は58件にしか満たない。拙著(1)の図6「創薬プロセス」 特許の数より質であることから,質を評価する指標 で示したように,市販されるまでには十数年の月日 に関しては多くの研究が行われてきている。O E C Dで が必要であり,医薬品の「基礎研究」が行われたのが, は,これまでの研究を総括し,特許の質の指標とし 7年から14年前としても,特許出願数と「市販」数お て考えられるものをまとめている。それによると, (1) よび「パイプライン」数の間の開きは大き過ぎると 特許ファミリーの構成数, (2)請求項の数, (3)IPCコー 考えられる。これは,国によっては,特許は出願だ (4)ECLAコード注2)数, (5)ICOコード注3)数, ド注1)数, けで審査請求がされずに終わることもあり,他に特 (6)前方引用数, (7)後方引用数, (8)非特許文献数, 許が取られないためにまず特許を出願するという防 (9)請求項数等があげられている5)。しかし,質を決 衛特許もあることが原因かもしれない。 30 これまで,特許戦略において問われてきたのは, める指標としては定着したものがない。 ここでわれわれの分析に必要なのは,事業主体個々 さらに質の研究を難しくしているのが,導出して のパイプラインや医薬品に直接関連した特許を抽出 きた指標によって抽出された特許群が,質を反映し することである。それには,実際の事業主体の個々 ているか否かを検証することである。この検証過程 の研究開発テーマの進捗状況につながる特許を導出 においては,すでに特許の質がわかっていなければ するための新しい指標が必要不可欠である。その新 ならない。これまで検証過程において質の高い特許 しい指標を使用すれば,製品につながるような特許 として用いられたのが,専門家が選定した特許リス を予測でき,イノベーション創出の基礎研究力を正 ト等,定性的な評価結果である。後藤らは,特許庁 確に把握することが可能となる。これまで医薬品数 が毎年公表している「技術動向調査」においてリス およびパイプライン数を用いることで,各国の新薬 ト化された「重要特許」を分析に用いている6)。この 創出力の現状把握および将来予測が可能なことを示 「重要特許」は,特許庁から委託された調査機関が専 日本版NIH創設に向けた新しい指標の開発(4) 門家の意見を踏まえて選定するものである。 本研究において開発を目指すのは,質の高い特許 を把握する指標というよりも,製薬企業が有する個々 使用されている,特許情報を取得するための代表的 なデータベースの1つである。 【IPCコード】 のパイプラインや医薬品と直接関連した特許が抽出 糖尿病:A61P 3/10 可能とする指標を特定することである。つまり,そ 細胞治療:A61K 35/12かつC12N 5/07 の特定された指標を使うことによって,低分子医薬 品およびバイオ医薬品の特許の中で,パイプライン から市販薬へと直接関連する特許を抽出することを 可能とする。 3.2 分析データ② Thomson Reuters社のCortellis for Competitive Intelligenceに収録されたDiabetes Mellitus(糖尿病治 そこで,糖尿病治療薬と細胞治療薬という2つの分 療薬)とCell Therapy(細胞治療薬)における医薬品 野に限定し,製薬企業の個々の研究開発テーマの進 (プログラム)名,開発段階,起源会社名,アブスト 捗状況( 【非臨床試験】→【フェーズ1】→【フェー ラクト,医薬品とリンクした特許情報等を抽出した。 ズ2】→【フェーズ3】→【承認申請】→【承認】→【市販】 ) 抽出日は,2012年3月21日,抽出期間は1994年から と関連した特許の抽出をThomson Reuters社の当該分 2012年3月21日を対象としている。抽出件数は,糖尿 野の専門家に同定を依頼し,その結果と,I P Cコード 病治療薬が,中止・撤退を含めて1,764件。細胞治療 を使用して抽出した糖尿病治療薬と細胞治療薬とい 薬が728件である。そのうち特許が抽出できたものは, う2つの分野の特許の比較分析を行った。 糖尿病治療薬が634件,細胞治療薬が215件である。 3. 分析 なお,同データベースは,各社の医薬品開発を横 断・統合的に俯瞰するための代表的なデータベース の1つである9)。Thomson Reuters社は複数のデータ 3.1 分析データ① ソースからの情報を審査したうえで手作業で選別し, まず,糖尿病治療薬と細胞治療薬に関連する特許 情報を更新している。同データベースには,医薬品 を以下のIPCコードを使用し,Thomson Reuters社の のパイプライン,ディール,特許,企業情報,業界 「Derwent World Patents Index(以下,DWPIとする) 」 情報などが含まれ,約5万件の医薬品・パイプライン から抽出した。さらに,(1)IPCコード数,(2)被引用 について開発状況,化学構造,作用機序,企業・国・ 特許数, (3)引用特許数,(4)特許が引用する非特許 適応症別の開発段階などが網羅されている。また, 文献数,(5)1ファミリーを構成する特許数,を集計 Thomson Reuters社の当該分野の専門家が,製薬企業 した。優先権主張年が1981年から2011年までのデー の個々の市販薬またはパイプラインと関連する特許 タを対象としている。糖尿病治療薬は,28,351特許 を同定し,市販薬またはパイプラインに用いられた ファミリー数であり,細胞治療薬は3,464特許ファミ 特許と同定された場合は,当該特許へのリンクが表 リー数である。 示される。 なお,DWPIは,Thomson Reuters社が提供する世 前回までの分析1)~ 3) においては,E v a l u a t e社の 界最大の付加価値特許データベースであり,各技術 EvaluatePharmaを用いたが,今回の特許に関連する 分野の専門家により編集された独自の英文抄録と索 分析には,Cortellisが有する医薬品とリンクした特許 引によって,必要な特許情報を包括的かつ効率的に 情報が必要であるため,データベースを変更した。 検索,把握,分析することができる7)。特許庁が毎年 実施している特許出願動向調査(マクロ調査)8)にも 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 31 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 http://johokanri.jp/ April Journal of Information Processing and Management 3.3 分析 く付与されている特許ほど,無効審判等により事後 IPCコードを使用して抽出された3.1の分析データ① に無効とされる確率も高くなるといわれている10)。 において,データ②の中ですでに上市された,また はパイプラインとして開発中の医薬品の特許を【1】, 4.2 特許が引用する非特許文献数 それ以外を【0】の二値を目的変数とし,分析データ 特許が引用する非特許としては,査読付き論文,会 ①で示した(1)~(5)を説明変数として,二値ロジ 議録,DNA構造,遺伝子,化合物等のデータベース, スティック回帰モデルにより解析を行った(二値ロ 関連論文等である。非特許文献は,科学が技術に与え ジスティック回帰モデルについては,5章を参照され た貢献度を示し,科学知識と発明がいかに近いか,つ たい) 。分析データ①からランダム抽出して,①およ まり科学の発展と技術の発展の距離を表している11)。 び②のデータ数を同数とした。 また,特許に引用されている非特許文献は,より複雑で 根源的な知識が含まれているとも考えられている12)。 4. 分析結果 さらに非特許文献を引用している特許は,していない 特許よりも質が高いという報告もある13)。 O E C D S c i e n c e,T e c h n o l o g y a n d I n d u s t r y 表1は,ロジスティック回帰分析の結果である。 I P Cコード数,被引用特許数,引用特許数,特許が S c o r e b o a r d 2013に お い て も,W I P O(W o r l d 引用する非特許文献数,1ファミリーを構成する特許 Intellectual Property Organization,世界知的所有権 数のうち,個々の研究開発テーマの進捗状況に関連 表機関)の技術分野別に,非特許文献のうち査読付き 1 ロジスティック回帰分析の結果 した特許に相関が高いのは,I P Cコード数,被引用特 論文がどのような分野から引用されているか,また 許数,特許が引用する非特許文献数,ということが 係数 切片 標準偏差 -0.055 0.0824 Z値 -0.664 有意水準 0.50638 どの技術分野が高いかが示されている。それによる IPC コード数 -0.009 0.0018 -4.89 1.01E-06 *** わかる。被引用特許数,特許が引用する非特許文献 被引用特許数 0.0204 0.0031 6.645 3.03E-11 *** と製薬分野とバイオテクノロジー分野の特許に査読 数が多いほど,またI P Cコード数が少ないほど,進捗 引用特許数 0.0037 0.0025 1.516 0.12958 0.0037 0.0014 2.626 0.00864 ** 付き論文が多いことがわかっている14)。 特許が引用する非特 状況に関連した特許と言える。上記指標は0.1%有意, 許文献数 1%有意と有意水準が高く,個々の研究開発テーマの 1ファミリーを構成 4.3 引用特許数・被引用特許数 -6E-04 0.0041 -0.153 0.87859 する特許数 特許には,前方引用(Forward Citation)と後方引 進捗状況に関連した特許の指標となる可能性が非常 (注)***:有意水準 0.001(0.1%)、 **:有意水準 0.01(1%) 、*:有意水準 に高いと解釈できる。 0.05(5%) 用(Backward Citation)がある。 図1 4.1 IPCコード数 図1の特許Aが他の特許B,特許C,文献Dを引用し 前方引用と後方引用との関係 I P Cの数が多いということは,技術的な幅の広さを 象徴しているといわれている。そしてI P Cコードが多 表1 ロジスティック回帰分析の結果 係数 切片 IPC コード数 被引用特許数 引用特許数 特許が引用する 非特許文献数 1ファミリーを構 成する特許数 標準偏差 Z値 Pr( > |z|) 有意水準 -0.05474 -0.009 0.020355 0.003728 0.0824 0.0018 0.0031 0.0025 -0.664 0.50638 -4.89 1.01E-06 *** 6.645 3.03E-11 *** 1.516 0.12958 0.003718 0.0014 2.626 0.00864 ** -0.00062 0.0041 -0.153 0.87859 (注) ** : 有意水準 0.01(1% ), *** : 有意水準 0.001(0.1% ) 32 Pr(>|z|) 図1 前方引用と後方引用との関係 日本版NIH創設に向けた新しい指標の開発(4) ていることを後方引用(Backward Citation)と呼び, 伝子を体細胞に導入してiPS細胞を得る工程とiPS細胞 特許Aが特許E,特許F,特許Gから引用されているこ を分化導入する工程を含む体細胞の製造方法を「特 とを前方引用(Forward Citation)と呼んでいる。特 願2009-056750号」に分割して,特許出願している。 許Aが特許E,特許F,特許Gから引用されている回数 これら4つおよび特願2007-550210号について,特許 が被引用特許数である。被引用回数が多いというこ 権の設定登録がなされた。 とは,その発明に続く技術の発展にいかに寄与した 米 国 に 出 願 さ れ た 特 許 も 米 国 出 願12/086,479を かを示し,その発明の経済的価値をも反映している はじめとして7つに分割出願(一部継続出願)され といわれている15)。 た(図3)。さらに欧州特許庁に出願された特許は, 一方,後方引用(Backward Citation)は,特許Aが 引用する特許B,特許C,文献Dで,審査官および出 願人により引用される。特許審査官は,その発明に 日本への特許出願 優先日:2005年12月13日 国際出願番号:PCT/JP2006/324881 ① 特願2007-550210号 新規性および進歩性等があるかどうかを判断する。 登録 特許第5098028号 (登録日:2012月10月5日) ② 特願2008-131577号 登録 特許第4183742号 (登録日:2008年9月12日) ③ 特願2009-056747号 登録 特許第4411362号 (登録日:2009年11月20日) ④ 特願2009-056748号 登録 特許第5248371号 (登録日:2013年4月19日) 明性の担保や第三者による特許査定後の情報提供等 ⑤ 特願2009-056749号 拒絶査定 に資するために必要と判断した場合には,特許メモ ⑥ 特願2009-056750号 登録 特許第4411363号 (登録日:2009年11月20日) 仮にその出願を拒絶する場合は,その根拠を明示す るために,文献を引用する。また,その出願を拒絶 しない場合においても,審査官が判断の客観性・透 特許①からの 分割出願 審判請求 が作成され,参考文献によりその根拠が示されるこ とがある16)。結果として,後方引用は,特許Aの発明 の基礎となった知識のソースとして参照される。 4.4 1ファミリ―を構成する特許数 ⑦ 特願2011-088113号 審査中 出典 : 京都大学 iPS 細胞研究所の Web サイト, 日本特許庁 IPDL (特 許電子図書館) をもとに作成。 なお, 各特許の権利範囲については, 京都大学 iPS 細胞研究所 (http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/research/special.html) を参照さ れたい。 図2 京都大学のiPS細胞関連特許(日本への特許出願) 2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞した京都 大学の山中伸弥教授の特許で特許ファミリー構成数 について見てみよう。山中教授のiPS細胞関連特許は, 2005年に日本特許庁に特許出願され,その出願を優 先権主張の基礎とし,翌年国際出願し,米国,欧州等 へと移行されている。その後,2008年に日本に国内 移行された。特願2007-550210号がその特許である。 さらにこの特許は7個に分割出願もされている (図2) 。 特 願2007-550210号 の 請 求 項 の う ち,4遺 伝 子 を 体細胞に導入するi P S細胞の製造方法を「特願2008131577号」 ,3種の遺伝子が導入された体細胞を特定 質の存在下で体細胞からi P S細胞を製造するための3 出典 : 京都大学 iPS 細胞研究所の Web サイト, 欧州特許庁 Espacenet, 米国特許商標庁 PAIR (Patent Application Information Retrieval) の情報をもとに作成。 なお, 各特許の権利範囲については, 京都大学 iPS 細胞研究所 (http://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/research/special.html) を参照さ れたい。 種の遺伝子の使用を「特願2009-056748号」,4種の遺 図3 京都大学のiPS細胞関連特許(米国および欧州への特許出願) のタンパク質の存在下で培養する工程を含むi P S細胞 の製造方法を「特願2009-056747号」,特定タンパク 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 33 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management April 1 1 p� = �� ��� = http://johokanri.jp/ �= � 1 � � �(�������� �� EP06834636.0をはじめとして4つに分割出願されてい ので,このモデルを使用した。二値ロジスティック る。その他オーストラリア,カナダ,中国,イスラエル, 回帰モデルは以下の式1で表される。 韓国,メキシコ,南アフリカ,ニュージーランド等, p� = �� ��� = � = 3/17 修 � ���� ����� ���� ) � �������� M=-0.009χ1+0.020355χ 2+0.003728χ3+0.00371 複数の国へと出願されている。このように同じ発明 を複数の国へ出願したもの,およびそれを分割して 出願したものをまとめて「特許ファミリー」と呼ん M=-0.009χ1+0.020355χ2+0.003728χ3+0.003718χ4-0.00062χ5-0.05474 � � (式1) Mこれは,製薬機関が有する個々のパイプラインや 0.009 x1 + 0.020355 x 2 + 0.003728 x 3 3/17 修正 でいる。そしてその数を特許ファミリー構成数とし + 0.003718 x 4 0.00062 x 5 0.05474 医薬品に繋がった特許の従属変数pが1, 繋がらなかっ ている。 た特許のpを0として,その発生確率を求めるもので M = -0.009χ1+0.020355χ2+0.0037 本研究で使用したD W P Iの最大の特徴は「各国に 出願された同じ発明に関する公報を一つのパテント ファミリーとして集約し、発明単位で一つのレコー ドを作成」していることである 17)。パテントファミ リーは,優先権情報を使用することによって集約す るのが一般的だが,D W P Iは,パリ条約の優先権をも ある。iは個々の特許を示し,χ1,χ2,… χ κはそれぞ +0.003718χ4-0.00062χ5-0.054 れの説明変数の値を示し,α,β1,… β κは表1の係数 を示す。4章での分析結果を式1に当てはめ両辺の対 数をとることで,式2が導出できる。 M = −0.009 x1 + 0.020355 x 2 + 0.003728 x 3 + 0.003718 x 4 − 0.00062 x 5 − 0.05474 (式2) たずファミリー関係が明白でないものについても, リーのメンバーとして収録するなど,発明の内容情 (式中χ1 ~ χ5は,それぞれ上記(1)~(5)を示す) 報から,1発明に関する技術情報を1発明,つまり1ファ 式2から導出された値(すなわち式2のMの値)を ミリーとしている。これにより,1発明→1特許→パ 横軸におき,式1を用いて計算した発生確率p iの値を イプライン→市販を連結させることが可能となる。 縦軸にプロットしたものが図4および図5である。図 D W P Iの専門家集団が調査を加えて,パテントファミ 5. 特許分析における指標 4は,製薬企業が有する個々のパイプラインや医薬品 に繋がった特許のプロット,図5は繋がらなかった特 許のプロットである。それぞれの図の縦軸の値(す 34 次に,4章での分析結果をもとに,特許分析におけ なわち式1のp iの値)が1に近づくと医薬品に繋がっ る指標の構築を試みた。(1)IPCコード数,(2)被引用 た特許であることを意味し,0に近づくと繋がらな 特許数, (3)引用特許数,(4)特許が引用する非特許 かった特許であることを意味する。 文献数,(5)1ファミリーを構成する特許数,を説明 図4と図5を比較すると,パイプラインや医薬品に 変数として,二値ロジスティック回帰モデルより解 繋がった特許(図4)はMの値が0付近より大きく, 析を行った。 繋がらなかった特許(図5)はMの値が0付近より小 二値ロジスティック回帰モデルとは,たとえば, さい傾向にある。したがって,たとえばM =0を閾値 ある商品の購入の有無(購入した/購入しなかった) として,パイプラインや医薬品に繋がる特許とそう のように,2つの値しか取りえない値(これを従属変 でない特許を大まかに選別できる。言い換えると, 数という)について,顧客が有する年齢・性別・年 I P Cコード数,被引用特許数,引用特許数,特許が引 収などの値(これを説明変数という)を用いて,そ 用する非特許文献数,1ファミリーを構成する特許数 の発生確率を予測するものである。今回の分析では, などの説明変数の値を式1および式2に代入し,個々 特許が医薬品に「繋がった」「繋がらなかった」とい の特許を図4,図5のようにプロットし,M =0を境に う2つの値しか取りえない事象の発生確率を予測する 分けることで,パイプラインや医薬品に繋がる特許 日本版NIH創設に向けた新しい指標の開発(4) 図 分析結果(パイプラインや医薬品に繋がった特許) した特許を専門家に依頼して抽出,特許の質に関係 図 分析結果(パイプラインや医薬品に繋がった特許) 1 するOECDが提唱するさまざまな指標を用い,その相 0.9 1 0.8 0.9 関の分析を試みた。分析の結果,以下の指標が,医 確率(p 確率(p i) i) 0.7 0.8 0.6 0.7 薬品まで繋がった特許を判別するための指標として 0.5 0.6 有効であることが明らかとなった。 0.4 0.5 0.3 0.4 (1)付与されているIPCコード数が少ないこと 0.2 0.3 (2)被引用特許数が多いこと 0.1 0.2 0 0.1 -5 0 -5 0 5 10 15 5 10 15 式 2 の M の値 0 式 2 の M の値 図 図4 分析結果(パイプラインや医薬品に繋がった特許) 分析結果(パイプラインや医薬品に繋がらなかった特許) (3)特許が引用する非特許文献数が多いこと 図 分析結果(パイプラインや医薬品に繋がらなかった特許) 1 れにより医薬品産業の将来図を俯瞰できる。また, 0.8 0.9 確率(p 確率(p i) i) 0.7 0.8 日本版NIHや製薬企業における政策決定・戦略立案に 0.6 0.7 資するエビデンス,つまり基礎研究から市販薬まで 0.5 0.6 0.4 0.5 が連結されたデータの提供を行うことも可能である。 0.3 0.4 0.2 0.3 これまで特許出願数や特許登録数が用いられるこ 0.1 0.2 -2 -4 -2 0 0.1 0 る新薬創出力を知ることができれば,医薬品産業の 将来予測を可能にする特許の新しい指標となり,そ 0.9 1 -4 これらの指標を使用することで,基礎研究におけ 0 0 2 4 6 8 2 4 6 8 式 2 の M の値 式 2 の M の値 とが多かったが,われわれが提示する新しい特許指 図5 分析結果(パイプラインや医薬品に繋がらなかった特許) 1 1 とそうでない特許を大まかに選別できるシステムを 構築した。 これにより,従来の指標であった特許出願数に代 標を用いることで,医薬品産業におけるイノベーショ ン創出力に対する適切な研究評価をすることも可能 と考えられる。 次回は,5章で述べた特許分析における指標に基づ き,医薬品開発の基礎研究の現状と将来予測につい て報告する。 わる,いわば「パイプラインや医薬品に繋がる特許 出願数」の提示が可能になったといえる。 6. おわりに 謝辞 なお,本研究の一部は独立行政法人科学技術振興 機構(J S T)戦略的創造研究推進事業(社会技術研究 開発) 「科学技術イノベーション政策のための科学」 本研究は,医薬品まで繋がった特許を判別する方 (プログラム総括:森田朗・学習院大学法学部教授) 法を検討することを目的としており,そのために製 における研究課題「未来産業創造にむかうイノベー 薬企業の個々の研究開発テーマの進捗状況(【非臨床 ション戦略の研究」(山口栄一・同志社大学大学院総 試験】→【フェーズ1】→【フェーズ2】→【フェー 合政策科学研究科教授,研究期間:平成23 ~ 26年度) ズ3】→【承認申請】→【承認】→【市販】)と関連 の支援を受けて行われたものである。 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 35 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management April http://johokanri.jp/ 本文の注 注1) International Patent Classification:国際特許分類 注2) European Classification:国際特許分類を細展開したEPOの内部分類。日本国特許庁のFIに相当するも ので,国際特許分類にアルファベット大文字と数字が付加されている(特許庁Webサイト「用語解説」 より)。 注3) In Computer Only:欧州特許庁では,特許の分類体系として,ECLAと併せてICO(In Computer Only) も用いられている。E C L Aは特許文献の特徴を示すのに対し,I C Oは補足的な特徴を示し,異なる技術 的特徴の組み合わせ等に対して付与される18)。http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.53.241 参考文献 1) 長部喜幸, 治部眞里. 日本版N I 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The RAND Journal of Economics. 1990, vol. 21, no. 1, p. 172-187. 16) 特許庁調整課 審査基準室. 特許・実用新案 審査ハンドブック「64特許査定」 . http://www.jpo.go.jp/ shiryou/kijun/kijun2/pdf/handbook_shinsa/all.pdf. (accessed2014-02-06). 17) 褚冲. 事業戦略に役立つ、知財総合ソリューション:THOMSON INNOVATIONによる特許情報分析. http:// www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/pdf/kigyou/tomson.pdf. (accessed 2014-02-06). 18) 武藤晃, 村野祐子, 鈴木智香. 欧州特許分類の理論と活用: 国際調和に向かって世界をリードする検索ツー ル. 情報管理. 2010, vol. 53, no. 5, p. 241-255. Abstract For the sake of providing evidences that contribute to policy making or strategy planning in a Japanese version of the NIH and pharmaceutical companies, we tried to give an overview and future prospects of pharmaceutical industry based on new indicators. Here we show new indicators for identifying patents related with pharmaceutical entities’ R&D progress ("Pre-clinical" → "Phase 1" → "Phase 2" → "Phase 3" → "Filed" → "Approved" → "Marketed"). "IPC Count", "Forward Citations", and "Citations to Non-Patent Literature" found as new indicators. Not only pipelines but also patents extracted by new indicators are considered to forecast pharmaceutical industries’ power of creating new drugs. Key Words a Japanese version of the NIH, pharmaceuticals, patents, indicator, research and development, small molecules, bio-medicine, biotechnology, evidence based policy, patent quality 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 37 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management http://johokanri.jp/ April 連載:インフォプロによるビジネス調査 -成功のカギと役立つコンテンツ 第1回 ビジネス調査とは Series: Keys to success of business research - tips and useful contents Part 1: Procedure of business research 上野 佳恵1 UENO Yoshie1 1 有限会社インフォナビ(〒113-0033 東京都文京区本郷6-20-4-5)E-mail:[email protected] 1 InfoNavi., Ltd. (6-20-4-5 Hongo Bunkyo-ku, Tokyo 113-0033) 情報管理 57(1), 038-042, doi: 10.1241/johokanri.57.38 (http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.57.38) 1. はじめに ないだろうか。 そこで,今回の連載では12回にわたって,筆者の この20年ぐらいの間に,インフォプロを取り巻く 長年にわたるビジネス調査業界での経験を踏まえ, 環境は大きく変わった。かつては,情報源に通じ, デー ビジネス調査のノウハウをお伝えし,ビジネス調査 タベースの特徴を押さえ,検索の技術をもつインフォ に役立つコンテンツを整理して紹介していくことと プロとそうでない者の間では,手に入る情報の量も したい。 質も大きく異なっていた。 しかし今では,インターネット検索でキーワード 2. ビジネス調査とは? ひとつ打ち込めば誰でも世界中の情報を手に入れる ことができるし,SNSでひと言つぶやけば誰かが教え てくれさえする。そのような中で,インフォプロに 求められることやインフォプロの役割も変化してい る。その変化の1つが,広範なビジネス調査ニーズへ の対応と言われている。 38 (1)幅の広さ まず,今回と次回は,ビジネス調査を成功に導く ためのカギを考えてみよう。 そもそも,ビジネス調査とは何なのだろうか。 「自社のもつ○○技術を応用した消費者向け製品の だが,ビジネス調査と言っても明確な定義がある 市場可能性」「次世代××発電システムの市場見通し わけではない。これまでは,研究開発のための文献 と競合状況」「研究開発部門の業績評価と最適人員配 の検索,特許情報の分析などでよかったところに, 置の他社事例」等などである。 市場動向や競合企業の動き,消費者意識までの情報 あえて定義付けるとすれば,ビジネス全般で必要 を集め,企業活動全体を見通せ,経営部門に貢献せ とされる情報を入手するための調査,ということに よと言われても,何をすればよいのか,どんな知識 なる。となればその内容には,業界動向はもちろん, をもてばよいのかわからないという方も多いのでは 企業情報,製品情報,特許情報や技術情報までが含 インフォプロによるビジネス調査 - 成功のカギと役立つコンテンツ まれ,非常に多岐にわたることになる。業界動向と れば,それも重要な情報の1つとなりうる。個人のブ いっても,自社の関連業界だけで済む話ではない。 ログはビジネスで使う情報源ではない,と断言はで 新規事業のための調査であれば,鉄鋼メーカーであっ きない世の中になっているのである。 ても外食産業の情報が必要となることもある。 会社の全部門から調査依頼がくるとすれば,自分 また,調査を依頼してくる部門や情報のユーザー にまったく知識がない分野のことを調べなくてはな も幅広い。開発部門から製造,販売,マーケティン らないケースも増えてくる。ある程度知っている分 グなど事業部門はもちろん,人事などのスタッフ部 野のことであれば,「ここまでチェックすればよいだ 門でも,新たに導入を検討している人事制度の先行 ろう」とか「これだけの情報が出てくれば十分だ」 事例調査などが必要になったりする。 という見当がつく。しかし,全体感がイメージでき 情報のユーザーも,調査の依頼者も,必要とされ なければ,「もっと適切な情報があるかもしれない」 る情報の内容も範囲も…とにかく「広い」。この「広さ」 「もっとたくさんの情報が出てくるはずだ」と不安感 が,ビジネス調査の最大の特徴なのである(図1)。 が募り,G o o g l eの検索結果を何十ページも見たりし (2)「どこまでやればよいのか?」 て,情報検索に多大な時間を使うことになる。 そして,この「広さ」ゆえに,ビジネス調査に携わ (3)見極めの難しさ るすべての者には共通の悩みが発生する。それは「ど 仕事に求められるスピードが増している中で,自 こまでやればよいかわからない」ということである。 分の気が済むまで検索を重ねることなどできうるは 前述のような,市場動向から技術情報まで,すべ ずはなく,どこかで見切りをつけなくてはならない。 ての分野についてどこにどんな情報があるかを把握 しかし,どこでどう見切りをつければよいのか,そ しているというのは事実上不可能である。これだけ の見極めの仕方がわからない。 のインターネット社会の中では,自分が考えてもい ビジネス調査というと,なんとなくとらえどころ ないところからビジネスに使えそうな情報が出てき がないように感じられたり,わかりにくい,難しい, たりもする。たとえば,マーケティングの大家と言 と思うことがあるとすれば,その原因は,この見極 われる大学教授が,ある新製品の特長や販売方法の めの難しさにある。 独創性について自身のブログにコメントを書いてい 図1 ビジネス調査の範囲 世界経済・社会情勢 日本経済・社会情勢 自社業界 競合他社 ・・・・業界 □□業界 人 事 研究開発 メンテナン ス 経 理 製品開発 自社ビジネス 販売 総 務 ○○業界 財 務 調達 製造 法 務 ××業界 △△業界 ユーザー・ 消費者 (c)InfoNavi, Ltd.㻌 2013 1 図1 ビジネス調査の範囲 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 39 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management http://johokanri.jp/ April 3. 調べごとの手順 のが手っ取り早そうであるし,メーカーの商品紹介 サイトも見た方がよいだろう。家電量販店に行って (1)「調べる」行為は共通 実際に見てみるというのも1つの手である。 確かに,情報の見極めは難しい。ひと言で「こう そして,実際にW e bサイトを見て得た情報につい いう場合にはここまでやればよい」と規定すること て「従来型の掃除機との電気代の比較は,使う頻度 はできない。しかし,何をどうやって見極めていけ も違いそうだし意味がない」「メーカーのW e bサイト ばよいかという,考え方と手順は存在する。 のユーザーの意見は,よいことしか書いていないの それを理解するために,まずは「調べる」という 行為に伴う思考と行動を追ってみよう。 何かを調べようとしたとき,それが新しくオープ ンしたレストランのことであれ,連休の旅行先選び で参考にならない」「店頭で実際の動きを見てみない と隅々のゴミまで取れるのかがよくわからない」な どと考え,決断に役立つ情報を選んで集める。 目的が, 「購入するかどうかを決める」ことなので, であれ,経営企画部から依頼があった太陽光発電市 情報をもとに決断ができれば今回の調べごとは終わ 場の現状であれ,ある技術の関連特許情報であれ, りである。しかし,購入には家族の同意を得なけれ 何らかの情報が必要になったとき,私たちは知らず ばならないとしたら,「フローリングの隙間のチリま 知らずのうちに一連の流れに沿って物事を考え,作 でかき出してくれるので家が格段にきれいになる」 業をこなしているものである。 とか,「本体価格は高いけれど,節約できる時間を考 (2)日常生活の中での調べごと えれば安い」と相手が納得できるような情報を伝え, たとえば,身近な例としてロボット掃除機の購入 を検討するというケースはどうだろう。 納得してもらう必要がある。 購入決定までのプロセスは以上だが,今回使った 「最近仕事が忙しくて,趣味の映画を見に行く時間 情報源についての評価が自分の記憶の中に残る。 「価 もあまり取れない。週末の家事の時間が減らせられ 格比較サイトの口コミは家電オタクが書いている感 れば,土日にも出かけられるのに…。そういえば, じで実はあまり参考にならなかった。今後,家電の 隣の課のAさんが昨年末ロボット掃除機を買って,す 口コミを見るときは○×のW e bサイトを最初に見て ごく助かる! と言っていた。夏のボーナスで買お みよう」というように。この記憶は,次の家電製品購 うか。 でも安いものではないし…」 こんな背景である。 入検討の際に,どの情報源にあたるのか,どのW e b まず,この場合の最終的な目的を確認しておくと, ロボット掃除機を夏のボーナスで購入するかどうか を決める,ということにある。 サイトを最初に見るのか,を決める経験値となる。 4. 調べるサイクル その決定を下すにあたって,解決すべき疑問・問 題は「実際いくらで買えるのか?」「使い勝手は本当 によいのか?」 「買っても珍しいうちだけで結局使わ なくなるのでは?」など。 インフォプロにとっては,検索依頼を受け,ヒア リングして相手の細かいニーズを探り,必要な情報 そして,これらの疑問に答えるために必要な情報 を具体的にリストアップし,どのデータベースから はというと,実売価格,電力消費量・電気代,機能・ どのような検索式で情報を入手するかと考えたうえ 仕様, 性能, 実際に購入した人の感想・使い方, 等など。 で実際の検索に入る,といった手順は当然のものだ これらの情報を手に入れるには,インターネット の価格比較サイトや口コミサイトで情報を仕入れる 40 (1)調査の手順 ろう。だが,この手順は,上記の例で見たように, どんなことを調べる際にも実は共通している。これ インフォプロによるビジネス調査 - 成功のカギと役立つコンテンツ が,「調べるサイクル」である(図2)。 をもとに何らかの提案や企画などを説明する相手が (2)検索の前段階 いる場合がほとんどだろう。伝達はプラスアルファ 何か知りたいこと,わからないこと,解決しなけ の要素と考える方もいるかもしれないが,情報の価 ればならない問題に直面したときに,まず,問題は 値は伝え方次第で倍にも半分にもなる。情報 “サービ 何なのか,何が明らかになればよいのか,どんな情 ス” という限りは, 相手の満足度を高める必要があり, 報があれば問題の解決に結び付くのかを考えている そのためにはレポートやプレゼンテーション資料の はず。これが「①知識ギャップの認識」である。 作成も重要となる。もちろん,どんなに美しいプレ 次に,①で認識した,問題を解決するために必要 ゼンテーション資料を作ることができても,中身の な情報について,どこからどうやれば入手できるか 情報に価値がなければ意味がないことは言うまでも を考える(②自分の情報源リストとのすり合わせ)。 ない。 当然「ググる」 「インターネットで調べる」といった (5)経験の蓄積 漠然とした入手方法ではない。誰が,どんな機関が 調べるサイクルの最後「⑥自分の情報源リストの 情報をもっているのか,までを具体的に考えなくて 整備」は,その後の情報収集の効率を左右する重要 はならない。 な要素となる。「②自分の情報源リストとのすり合わ (3)情報の取捨選択 せ」では「ここにありそう」「××が出していそう」 そして,実際に情報を集め(「③情報の獲得」 ) ,そ 「△△研究所なら調べているかもしれない」などと, れらを読み込みながら使えそうか,役に立ちそうか 自分のもっている知識をベースとして,情報の在り を判断し,取捨選択し,まとめていく(「④検証・判 処について想像力を働かせなくてはならないのだが, 断」)。調べるサイクルではこの2つのステップを分け そのもとになるのは,見たり聞いたり調べたりした ているが,実際には情報を手にすると同時に,それ という経験の蓄積である。W e bサイトの中に埋もれ が必要かどうか,役に立ちそうかどうかをその場で ていた情報,業界通の人にヒアリングしたこと,定 考え,要るもの・使えそうなものだけを手元に残し 義がわからなくて苦労したデータ,このような経験 ていくという,同時並行的な手順を経ていることだ を知識として蓄えるのか,使いっぱなしにしてしま ろう。 うかで,次の調査の効率は大きく変わってくる。 (4)伝え方次第 (6)調べるサイクルへの意識 さ 「⑤伝達」は,自分自身が情報のユーザーである場 ロボット掃除機購入の例でみたように,日常の些 合には不要なのだが,インフォプロの仕事の場合に 細 な調べごとにも,実は「調べるサイクル」は回っ は,誰かに頼まれた調査であったり,その調査結果 ている。ただ,普段そんなことは気になどしてもいな さい 図2 「調べる」行為の思考と行動 いだろうし,わざわざ意識する必要もまったくない。 ⑥自分の情報源 リストの整備 しかし,ビジネス調査はどうだろう。与えられる ①知識ギャップの認識 時間は限られている。その中で最大限の効果を出さ ⑤伝㻌 達 「調べるサイクル」 なくてはならない。もちろん,手にする情報が間違っ ②自分の情報源リスト とのすり合わせ ていてはならない。効率的,効果的な情報収集を行 うには,回り道に感じられるかもしれないが, 「調べ ④検証・判断 ③情報の獲得 (c)InfoNavi, Ltd.㻌 2014 図2 「調べる」行為の思考と行動 るサイクル」を常に意識し,それぞれのステップを 2 きちんと経るべきである。 これだけ大量の情報が溢れているのだから,イン 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 41 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management http://johokanri.jp/ April ターネットを探せば何か出てくるはずだと,思い立っ プの認識,にあたる。情報調査の肝となるのは,今 たらまずインターネット検索でキーワードを打ち込 も昔も,技術情報でもビジネス情報でも,実際に検 んではいないだろうか。もちろん“何か”は出てくる。 索をする前の準備段階,プランニングなのである。 だが,それが正しいものなのか,それで足りるのか, プランニングといっても,事業計画のような綿密 ほかにないのか,漫然とインターネット検索を始め なものが必要な訳ではない。ビジネス調査において てしまっては,それを判断するのは非常に難しい。 は「何をどうやって」調べるかということが明確に だが, 「調べるサイクル」の手順を踏んでいれば,目 なっていれば十分である。しかし,大量の情報が瞬 的の達成のために必要十分な情報が何なのかを見極 時に検索できてしまうがゆえに,それさえ考えなく めることも可能となるのである。 なってしまっている。 5. 情報の見極め方 しかし,プランニングがしっかりできれば,その 情報調査は半分終わったと言っても過言ではないこ とは,インフォプロの皆さんであれば理解いただけ (1)何のための情報か? るであろう。 ロボット掃除機の購入に反対している家族を説得 以上,連載のはじまりにあたって,ビジネス調査 しなければならないとき,その反対理由によって必 の特徴とそれを成功裏に進めるための考え方を述べ 要な情報は異なるだろう。掃除機に何万円も出すな てきた。ビジネス調査を成功に導くためのカギは, 「調 んて,と思っている家族に対しては,実売価格や, べるサイクル」の入り口の部分,プランニングにあ 電気代など費用に係る情報が重要だ。しかし,反対 る。このプランニングの要素のうち,「何を」は目的 の理由が「どうせすぐに使わなくなるのに」だとし が明確であれば自ずと明らかになる。では, 「どうやっ たら,今現在どんなに安く手に入るかという情報を て」を決めるものは何なのか。 集めて提示してもあまり意味はない。 ビジネス調査においても同様である。たとえば, 「A 次回はこの「どうやって」「どこから」情報を得る のか,ということについて考えてみたい。 社について調べて」と依頼してきた人の所属が,提 携先を探している経営企画部門なのか,自社製品を 売り込みたいと考えている営業部門なのか,A社の販 売戦略を学びたいと考えているマーケティング部門 なのかによって,必要となる情報,ポイントとなる 情報が異なることは明らかだろう。 その情報をもって何をしたいのか,何のための情 報なのかという目的によって,具体的にどんな情報 が必要なのか,どの程度の深さ・量の情報があれば よいのかは絞り込まれてくるはず。 どこまでやればよいのかは,情報を手にする前, 実際に検索を始める前にほぼ決まっているのである。 (2)プランニング 目的を明確にし,必要な情報を洗い出す。それは まさしく,調べるサイクルの入り口,①知識ギャッ 42 執筆者略歴 津田塾大学国際関係学科卒業後,株式会社日本能率協 会総合研究所マーケティング・データ・バンクで会員企 業向けの情報提供サービスに携わる。その後,マッキン ゼー・アンド・カンパニー・インク・ジャパンに転じ, 国内外コンサルタント・クライアントに対するリサー チ・情報提供サービス,コンサルタントに対するリサー チトレーニングなどを担当。 2001年にリサーチ関連サービス,コンサルティング を行う有限会社インフォナビを設立。現在は,各種のリ サーチ・コンサルティングプロジェクトに携わるととも に,企業の新入社員から戦略スタッフまでの情報調査力 研修,情報力スキルアップセミナー等を担当。 著書: 『情報調査力のプロフェッショナル』(ダイヤモ ンド社,2009年), 『「過情報」の整理学』(中央公論新社, 2012年) 視点 ●デジタルなら海を越えられるか デジタルなら海を 越 えられるか 海 外 の日本研 究を支 援 するために 国際日本文化研究センター 情報管理施設資料課資料利用係 江上 敏哲 情報管理 57(1), 043-046, doi: 10.1241/johokanri.57.43 (http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.57.43) 問:海外の日本研究に対して日本の図書館は何 ができるのか? 研究のもとになるのが日本の図書・資料,インター ネットの情報などです。国を越えての資料・情報へ 今年(2014年)1月30日,国立国会図書館において のアクセスにはさまざまな困難や障壁が伴います。 「日本研究支援シンポジウム」が開催されました。 「海 紙の図書に替わり容易かつ効果的なアクセスが期待 外の日本研究に対して日本の図書館は何ができるの できるのが,デジタル化・オンライン化された資料・ か」と題されたこのシンポジウムでは, 北米, ヨーロッ 情報です。しかしその日本のデジタル資料,日本製 パ,オーストラリア,韓国からそれぞれライブラリア e-resourceが深刻と言えるほど不足している,あるい ンや研究者が集まり,それぞれの国・地域での日本 は特に海外からのアクセスが進まない,という現状 研究の現状と課題が報告・議論されました。同じ趣 があります。 注1) の 北米にある東アジア図書館(中国・日本・ 図1注2)は, ですが,前年と同様,まるでコピペでもしたかのよう 韓国の各言語の資料を扱う図書館)の図書・電子書 に再び議論の中心となったのが,日本語図書・資料 籍・電子ジャーナルの所蔵数・契約タイトル数です。 のデジタル化が進まない,アクセスが改善されない, 紙の図書に比べ,特に日本の電子書籍のタイトル数 という問題です。 が中国語・韓国語に遠く及ばない,という現状がわ 旨のシンポジウムは1年前にも開催されている 海外には,日本について専門に研究する研究者や, かります。 日本とかかわる職業に就く専門家,日本に興味をも ち大学等で学ぶ学生などがいます。アメリカで日本 問:デジタルなら,容易に海を越えられるか? の社会構造について研究する研究者,ヨーロッパで 今回のシンポジウムでもそうでしたが,海外の日 日本の芸術や宗教について調べる専門家,東南アジ 本研究者・ライブラリアンと話をすると必ずと言っ アで日本の近代化の経緯と経済について学ぶ学生, ていいほど日本製e-resourceの少なさが問題としてあ などです。彼らや彼女らが日本に関する研究成果を げられます。特に人文系の学術書・大学教育向け図 生み出すなど,何らかのアウトプット・発信をして 書としての日本語の電子書籍が不足しています。雑 いくことで,世界における日本理解が深められてい 誌についてはオープン・アクセスやリポジトリでの きます。そういう意味では,その支援は日本自身に 公開も増え好評ですが,一方で各分野の基本雑誌や も影響が及ぶ問題であると言えます。私が所属する 総合誌(商業誌)が乏しく,「なぜいらないものから 国際日本文化研究センターは,主に学術・研究の面 電子化されるのか」との声もあります。 から,海外の日本研究を支援し協力するという役割 をもっています。 少ないだけでなく,研究に必須の日本製データベー ス類について,海外からのアクセスという想定外の 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 43 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management 図書 http://johokanri.jp/ April 6,157,723 1,565,890 10,685,901 1,959 195,140 電子書籍 13,852 電子ジャーナル 609 172 CHN JPN KOR 193 図1 北米・東アジア図書館での図書・電子書籍・電子ジャーナル所蔵数(2013) 各グラフとも左から中国語・日本語・韓国語の順注2) ちゅうちょ ニーズに躊躇してか,場合によっては “契約させても らえない” という問題もありました。この “壁” を解 問:そもそも日本のユーザにとって問題ではな いか? 消するため,たとえば北米の日本研究ライブラリア では国内の図書館やユーザであれば気にすること ンのグループ注3)では日本の機関・企業とともに交渉・ なくサービスを享受できるでしょうか。2014年1月 調整を続けるなど,10年近くにわたる粘り強い努力 21日にサービス開始が広報された当時,サービス実 が行われてきました。結果,近年ではいくつかの有 施館としてリストアップ注4)されていたのは約20館, 用なデータベースが海外の各地域にも普及しつつあ 申請・手続き中を含めても90館台とのことでした。 りますが,やはりそもそも数が足りない,というの この原稿が公開される頃にはもっと増えていること が実情です。 を期待したいですが,全国で大学図書館が約1,700, この問題は,契約もののe-resourceだけでなく,公 的機関のデジタル・アーカイブにも起こりえます。 都道府県および市区立の公共図書館が約2,600ある注5) という数字と比べると,積極的な参加がなされてい 2014年1月,国立国会図書館が「図書館向けデジ るとは言えないのではないでしょうか。ニュースを タル化資料送信サービス」を始めました。これは国 見たユーザから問い合わせを受けて,このサービス 立国会図書館がデジタル画像化した図書・資料約130 を初めて知ったという図書館もあったと聞きます。 万点を,公共図書館・大学図書館等の端末に配信し ユーザのニーズはともかく,そのサービスを仲介す てオンラインで見ることができるようにする,とい るべき各図書館にも越えなければならない何かがあ うサービスです。著作権は切れていないが絶版等で るように思います。 入手困難な戦前・戦後の図書が多数収録されている 国立国会図書館には「近デジ」の愛称で知られる 極めて有用なデジタル・アーカイブなのですが,残 近代デジタルライブラリーというサービスもありま 念ながら法的な理由から海外の図書館はその対象に す。こちらはユーザ自身がアクセスできるオープン なっておらず,アクセスできません。今後どのよう なデジタル・アーカイブです。2013年夏から2014年 に対応されるのかが気になるところです。 初頭にかけて,それまで公開されていた『大正新脩 大蔵経』『南伝大蔵経』(著作権保護期間満了)が出 版社等の訴えにより取り下げられるということが起 44 視点 ●デジタルなら海を越えられるか こりました。その後の検討の結果,前者は公開,後 め,現地新聞等でもかなりの高評価を得た催しです。 者は停止となっています。 しかし,同様の春画展を日本で開催することはいま のところできていません。日本での巡回展のため, 問:なぜデジタル化・オンライン化・オープン 化がなかなか進まないのか? 関係各者がいろいろな相手と調整・検討を行ってい たようですが,実現に至りませんでした。 e-resourceやデジタル・アーカイブなどの環境整備 は,海外ユーザへ届くかどうかだけでなく,学術研究, 問:なぜ日本では春画展を開催できないのか? そして社会の知的生産を支えることができるかどう この件に関し,ある春画関係者の方がこのように かの問題だと思います。それが不足している,整備 おっしゃっていました。すなわち,開催できないこ が進まない。なぜか。 とについて,どこの館がとか,どこの機関・役職が, この問題を考えるとき,個々の特定の組織・存在, というように,特定の誰か・どこかに責任や原因を 個々の案件の当事者 “のみ” にその原因や解決を求め 求めるのは適切ではないだろう。それ以前にそもそ ることには,違和感を覚えます。デジタル環境の整 もこの国の社会全体が,「春画を公開展示する」こと 備を進めることは重要ですが,同時に,必ずしもそ に何か仮想の敵,見えない恐怖をつくりあげ,その うはいかない個別の諸事情というものがあるだろう 前で躊躇してしまっている。その躊躇を払拭する空 ことも,また理解できるからです。 気づくりがなければ解決にはならないだろう,と。 デジタル環境の整備が進まないことにも,これと 話 は 少 し 変 わ り ま す が,2013年10月 か ら2014年 1月にかけて,イギリス・ロンドンの大英博物館で, 同じことが言えると思います。 誰かに訴えられるかもしれない,何かの権利を失っ 日本の春画を集めて公開するという春画展が開かれ たり損したりするかもしれない,具体的な理由は何 ました(図2) 。大英博物館やロンドン大学が所蔵す もないけれども,もしかしたら何か不都合が起こる る春画に加え,日本からも国際日本文化研究センター かもしれない。そのような見えない恐怖の前の躊躇, など複数から提供されました。約9万人の入場者を集 仮想の敵の前の萎縮。そういうもののためにわれわ 図2 春画展が開かれた大英博物館 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 45 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management http://johokanri.jp/ April れは,デジタル化・オンライン化・オープン化を推 “寄りの画” で見たときの個々の案件について,説 進していこうという社会全体での合意形成・空気づ 得力のある解決とその蓄積を積んでいくこと注6)。そ くりに,いまだに失敗したままなのではないでしょ してそれだけでなく,問題を大きく覆うようにとら うか。 えて,“引きの画” で見た社会全体での合意形成を求 それがないままで,特定の当事者――停止を訴え る権利者や公開・仲介が進まない機関・図書館・出 め築いていくこと。そういう2つの視点が必要ではな いかと思います。 版社 “のみ” に原因を求めても根本的な解決にはなら ないでしょう。同様の問題が個別に発生し続けるこ とになるかもしれません。先に紹介した北米のライ ブラリアングループの1人が,「データベースの契約 のための交渉・調整に10年かかった。電子書籍でも また同じことを繰り返さなければならないのか」と 懸念していました。電子書籍に限らず,個々の問題 の繰り返しが生じないような “引きの画” での解決が 望ましいのではないでしょうか。 執筆者略歴 江上 敏哲(えがみ としのり) 国際日本文化研究センターにて図書館司書として勤 める(情報管理施設資料課資料利用係長) 。京都大学 (1998年~),ハーバード・イェンチン図書館(在外研修・ 2007年)を経て,2008年より現職。また玉川大学,立 命館大学,同志社大学にて非常勤講師。著書に『本棚の 中のニッポン:海外の日本図書館と日本研究』(笠間書 院,2012年)。 本文の注 注1) 2013年2月20日,国立国会図書館において日本専門家ワークショップ2013シンポジウム「なぜ今、海 外日本研究支援か?」として開催された。 注2) Council on East Asian Libraries Statistics.(http://lib.ku.edu/ceal/stat/)から作成。56館対象。ただし 記入のない館は0とし,また極端に桁数の異なる館の数値は除いた。 注3) 北米日本研究資料調整協議会(North American Coordinating Council on Japanese Library Resources (NCC)) 注4) 国立国会図書館のW e bサイトには図書館向けデジタル化資料送信サービスの案内用ページに利用でき る参加館一覧が公開されており,随時更新されている。 注5) 日本図書館協会がWebサイトで公開する「日本の図書館統計」より,2012年の数字を参照。 注6) 一例として,2014年3月,京都府立総合資料館がデジタル公開した国宝「東寺百合文書」は, クリエイティ ブ・コモンズのCC-BYで提供されたことが注目されている。 46 リレーエッセー ●つながれインフォプロ Building networks among info pros ̦̾̈́ͦͼϋέίυ 齋 藤 久 実 子 (神奈川県立川崎図書館) 第7回 情報管理 57(1), 047-049, doi: 10.1241/johokanri.57.47 (http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.57.47) 毎月第3金曜日は神奈川県資料室研究会(以下,神 川崎図書館が神奈川県の2館目の県立図書館として 資研=しんしけんと略す)の例会の日である。私は 開館したのが1958年,その3年後には「京浜地区資 毎回「今日も楽しみ♪」とこの日を迎えている。「楽 料室運営研究会」が始まり,さらに2年後に神資研へ しみ」は「時代の半歩先を行く」例会の内容に啓発 と名称変更して,半世紀以上ともに歩んできた。神 されることと,参加者のみなさんと顔を合わせられ 資研の会長は川崎図書館の館長であり,事務局を川 ることの両方にある。 崎図書館が担当しているが,一方的な依存ではなく, 神資研は, 「資料室の運営向上について連絡と研修 等を行い,各資料室の充実と運営の活発化を図るこ 相互に「なくてはならないもの」という関係を保っ ている。 とにより,企業及び公共機関等の進展に寄与し,あ 「神奈川県科学技術政策大綱(h t t p : / / w w w . p r e f . わせて神奈川県産業の振興に寄与することを目的」 kanagawa.jp/uploaded/attachment/456530.pdf) 」に として,50年以上活発に活動を続けているローカル よれば,県内在住の研究者は約1.3万人で全国3位,技 ネットワークである。一方,神奈川県立川崎図書館 (以 術者は約30万人で全国2位,研究所は約540か所で全 下,川崎図書館と略す)は「科学と産業の情報ライ 国2位など,神奈川県には科学技術の原動力となる知 ブラリー」を愛称とする科学技術と産業に特化した 的資源が集積している。こうした背景のもと,神資 ユニークな県立の図書館である。 研会員数は,1963年に会則を整えて神資研となった 図1 神資研Webサイト 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 47 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management http://johokanri.jp/ April ない」のは資料室運営・担当者・広報・レファレン スなどであり,「時代を反映」のほうはドクメンテー ション・U D C・カード目録・電子ジャーナル・サー チャー・図書室の機械化(自動化)などである。近 年話題の電子ジャーナル・電子書籍であるが,神資 研では1997年「電子ジャーナルの現状と展望」以来, かなり早い時期から何度か取り上げてきている。見 図2 第597回例会(2013年3月)の「本の修理(実演・実習つき)」 学会は国立国会図書館をはじめ,企業・大学・専門 の図書館や研究所など,多岐にわたる「話題の現場」 時点で35機関,その後30年を経た1993年の162機関 を最大として,ここ数年はおおよそ100機関前後(う ここ数年の例会は,8月を夏休みとして年11回,う ち大学と公共機関がそれぞれ10機関程度,8割が企業) ち3回は見学会,残り8回は講演会・グループディス で推移している(詳細はW e bサイト参照,正会員リ カッション等を行っている。春の総会後の特別講演 スト,例会のおしらせ,年報の目次等も公開してい 会と,秋にパシフィコ横浜で開催される「図書館総 る。W e bサイトはネットコモンズを利用し,「理事の 合展」でのフォーラムも含まれる。例会は理事会で 部屋」で理事会資料を共有したり,掲示板で意見を 企画立案し,各理事が運営にあたる。12月の例会の やりとりしたり,と効率的な理事会運営に役立てて あとは場所を変えて「年末交流会」での乾杯で一年 いる)。 を締めくくる。 神資研の活動の中心となるのは毎月の例会であ 48 を見に出かけている。 今からちょうど10年前の2004年4月川崎図書館は る。1961年7月13日の第1回以来コツコツと積み重ね 「科学技術系外国語雑誌デポジット・ライブラリー」 て,2014年4月18日の例会が第609回となる。「神資 を開設した。企業資料室等で保存スペースの問題か 研年報45号」は「神資研五十年の歩み」とする創立 ら廃棄を余儀なくされている学術雑誌のバックナン 50周年記念号であるが,その中で,例会を一覧にし バーを,川崎図書館の蔵書として受け入れ,整備・ て「50年間変わらないテーマ」と「時代を反映した 保存して,広く県民の調査研究に役立てようという テーマ」の2つの観点から振り返っている。「変わら 試みである。これは全国にも例のない先駆的な共同 図3 図書館総合展ブース(2013年10月29~31日) 図4 「著作権の最新動向と図書館への影響」 福井健策氏 リレーエッセー ●つながれインフォプロ 保存の取り組みとなった。当時,雑誌の受入担当だっ る機能に特化して,K S P(川崎市高津区のかながわサ た私は,神資研のデポジット検討委員会にオブザー イエンスパーク)へ移転」という方針に転換したが, バーとして参加し,「新しいことを始める」ワクワク K S Pの「独立ラボ仕様」に高額な賃貸料を払って入居 感を共有した。その頃,企業資料室や研究所の統廃 するとなると,現状の3,500㎡の何割程度のスペース 合・閉室等が相次ぎ,ギリギリのところで廃棄を免 が確保できるのか未確定であり,現在の川崎図書館 れた雑誌も多数あり,片付けをしている図書室に雑 からどの程度の資料を持っていき,どういう形でサー 誌をもらい受けに出かけて,箱詰め・運搬も行った。 ビスできるのか,いまだ検討途上である。川崎図書 書架も送料込みで大量に寄贈していただき,統合さ 館のヘビーユーザーでもある神資研会員と手を携え れた県立高校の空き教室を活用して開設にこぎつけ て,よりよい図書館像を策定していきたい。 た。第1回の「情報プロフェッショナルシンポジウム」 「企業支援の川崎図書館」と言われるようになった でその経緯を発表できたのも,私にとっては忘れら のは,神資研と互いに切磋琢磨し協力し合ってきた れない思い出である。 連携の賜物である。最新の「神資研年報47号」の特 2012年秋には「神奈川県緊急財政対策」として, 集テーマは「図書館がつなぐ『人・場所・知識』 」だっ 県立図書館の貸出・閲覧廃止,川崎図書館の廃館の方 た。まさしく「つながる」ことにこそライブラリア 針が出された。新聞に大きく取り上げられたその日 ンの本質が潜んでいるのではないだろうか。 のうちに神資研副会長から電話があり,早速,W e b サイトの「理事の部屋」で諮り, 神資研としてアンケー ト調査を実施することを決定した。神資研のW e bサ 執筆者略歴 齋藤 久実子(さいとう くみこ) 神奈川県立川崎図書館司書。 イトにも特設ページを作成してこの問題をアピール 神奈川県資料室研究会事務局担 し,アンケート結果や要望書を県知事と県教育委員 当理事。表千家流茶道教授。好 会委員長宛に提出している。その後,県は「貸出・ きなことは歴史ある街並みを歩 くこと。 閲覧は継続」 「川崎図書館は企業活動の支援につなが 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 49 ■科学技術振興機構_中面(TOP) 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 http://johokanri.jp/ April Journal of Information Processing and Management アイデアの独占 その正当化への迷い 名和小太郎 情報管理 57(1), 050-054, doi: 10.1241/johokanri.57.50 (http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.57.50) 「独占」(monopoly)という言葉がある。ギリシャ れをまとめると表1のようになる。これを見ると,特 語の「単一の」 (monos)と「販売する」 (poleia)に 許の発行には多様な意図が込められていたことがわ 由来するという。アイデアにこの独占を認める仕掛 かる。たとえば,それは既得権益の保有者――つまり けが特許制度ということになる。なぜ,アイデアに ギルド――の保護にもその解体にも使われていた。 独占を認めるのか。それは自明ではない。諸説ある。 あるいは,それは海外技術の導入にも自国技術の保 いや,それを否定する理論もある。これを歴史的に 護にも用いられていた。 たどってみよう。蛇足になるが,「アイデア」(i d e a) の語源はギリシャ語で「理想の形」を意味する「イ デア」(idea)である。 16世紀の英国では「特許」 (patent)とは「開封特 許」 (letters patent)の省略形であり,その ‘patent’ * * まず,アリストテレス。彼はその『政治学』にター レスの挿話を紹介している。ターレスは,ある冬, 星の光の中に翌年のオリーブが豊作だという兆しを はラテン語の ‘patere’(開いている)に由来していた。 ふうかん 「開いている」とは封緘されていない,つまり公開さ れていることを意味した。 エリザベス1世はこの開封特許の発行に熱心であっ 発見し,わずかな手付金で圧搾機の利用権を独占し, た。ときの高級官僚でもあったフランシス・ベーコ これによって財をなすことができた。 ンはこれに理論的な根拠を与えた。それは『学問の ついでにプラトンにも挨拶しておこう。彼は人間の技 進歩』 (1605年)に示されている5)。 に創作性を認めなかった。まず神の創ったイデア―― 「人間の生活のための新しい技術,才芸,有用な たとえば寝椅子のイデア――があり,人間――たとえ ものの考案者と創始者は,神々そのもののなか ば職人――はそれを写すのみ,という哲学をもってい にいれて崇められる」 1) 。 ここにある「発明家に対する神格化」というレト たから * * ヨハン・ベックマン(1739‐1805年)という技術史 家が『西洋事物起原』という著作を残している2)~ 4)。 こうかん リックは,その「神格化」を「独占という報奨」に 置き換える形で,のちに英国専売法や米国憲法に取 り込まれることになる。 邦訳で全3巻,計1,400ページにわたる浩瀚なものであ 開封特許は国王の一存で発行できたので,上納金 る。出版は1839年,したがって「工業所有権に関する と引き換えに乱発された。それは塩,石炭にはじま パリ条約」 (1883年)の締結以前に刊行されたもので り,ついにはトランプの専売へと拡がった。だが, ある。つまり,著者はアイデア独占についての現代的 これとともに開封特許に対する批判が高まり,議会 理解を知らずにこの本を執筆している。 は1624年に専売法を制定した6)。それはすべての独 この本の中から「特許」という言葉を拾いだし,そ 50 * * 占を原則無効としたが,次の例外を設けていた。 情報論議 根掘り葉掘り ●アイデアの独占 表1 特許の目的:ベックマンの理解 年 国 権利の対象 権利付与の目的 いかだ 4 世紀 1272 1322 1393 1411 1458 1479 ローマ帝国 ローマ法王 ベネチア ベネチア フランス ドイツ ローマ法王 1563 1592 1609 1631 1634 1661 1662 1665 1669 ドイツ ドイツ ドイツ イギリス イギリス フランス フランス フランス イギリス 1670 1699 1706 1767 1822 1828 イギリス フランス イギリス イギリス イタリア フランス 船と筏の運用 孤児院の建設 ・ 運営 水車式製粉機の建設 風車の建設 緑青の製造 薬種商 利子の認可 公益事業 (公衆浴場用燃料の輸入) 公共政策 (福祉) 所有権の確定 海外技術の導入 地域独占 事業規制 新産業の創出 みょうばん 明礬の製造 金属線の加工 ガラスのカット法 時計の製造 壁紙の生産 富くじの発行 馬車のサービス地域 鏡の製造 靴下の製造 ・ 販売 既得権益の廃止 海外技術の導入 発明家への報奨 新産業の創出, 輸入禁止 発明家への報奨 権力による利益の独占 地域独占の確定 海外技術の導入 業界の既得権益の保護 すず 錫メッキ 携帯用ポンプの製造 保険事業 蒸気機関の製造 鉛筆の製造 染料の製造 発明家への報奨 公共政策 (防災) 不良事業者の排除 発明家への報奨 発明家への報奨 発明家への報奨 「王国内の新しい製造方法による加工または製造 ない。第3に発明は産業社会の発展に不可欠である。 に関して,その最初かつ真正の発明者に,今後 第4に技術情報の公的な公開は次世代の技術開発に役 14年間の期間をもって開封特許を与える」 立つ。 ここにはベーコンの発想が受け継がれていた。時 代はとぶが,米国は1788年に発効した憲法において ベーコンの定義をさらに洗練させた。 「著作者及び発明者に,その著作物及び発明に対 ややあとの時代の話だが,ジェレミ・ベンサムは 次のように示している。 「発明家に与えられる排他的な特権には,とがめ られるべき独占と共通するものはまったくない」 する独占的な権利を一定期間保障することによ り,学術及び有益な技芸の進歩を促進する」 * * しかし,特許による発明の独占という制度はすん ついでに1791年のフランス特許法を紹介しておこ なりと人々に受け入れられたわけではなかった。そ う。この国は英国と同時期に特許法を設けていたが, もそも独占という制度に対する反感が社会全体に 1791年,その特許法を次のように再構築した。 あった。 「すべての新しいアイデアは,その現実化と開発 くわえて,特許の付与は当の発明への海賊行為を が社会に有益であれば,それを思いついた人に 誘発することでもあった。さらに特許料をユーザー まず属する」 から徴収することも至難の業であった。このリスク ここにはアイデアの私有という概念が示されている。 * * をおそれた発明家はそのアイデアを秘匿し,最後は 墓場に持ち込んだ。 特許制度をよしとする論点は1つではなかった。第 特許の頼りなさについては,18世紀後半になって 1にアイデアは所有権の対象である。第2に社会は発 もさまざまな立場からの発言が続いた。まず米国の 明者にその発明から得た利益を還元しなければなら 初代特許庁長官でもあったトマス・ジェファソンの 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 51 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management 疑義7)。 とんどがフランス人だったためである。 「アイデアは,われわれが呼吸する空気のように, さらにスイス。ここでも1850 ~ 1907年には特許法 その密度をいかなる点においても減ずることな がなかった。特許は法のもとでの平等の原則に反す しに,全空間に拡がる。それを囲い込むことも るというのがその口実であった。だが,その真意は 排他的に占有することもできない」 ドイツからの化学薬品の輸入を阻むことにあった。 もう1つは特許の受益者であった英国の大発明家 8) 。 ジェームズ・ワットの繰り言 ドイツは統一前には公国ごとに特許法をもってい た。プロイセンは1815年に特許法を設けたが,それ 「地主はなんら労せずに地代を入手できるのに,発 は海外技術の導入を狙ったものでもあった。この国 明家はその労働の対価を受けるのが厄介である」 においては自国製品に外国商標をつけるような風潮 この時代,反独占の論者はその根拠を次々とあげ があった。くわえて,ギルドの圧力をのんだ商務大 た9)。第1に発明は自然権である。それは神聖なもの 臣が特許法を廃止すべしと発言したこともある。こ であり,財物に対する所有権とは異なる。第2にその のような環境の中で統一ドイツの特許法が制定され 権利を現実には金銭化しにくい。第3に先行者のみを たのは1877年であった。 優遇する。第4に特許のない時代にあっても発明は実 米国はどうか。1790年に制定した特許法は1836年 現していたではないか。第5に工業製品のコピーには までは外国人に特許の取得を認めなかった。だが, 長期間を要するので,書籍などのコピーと同列に扱 18世紀後半になるとプロパテントの政策をとる。同 うことはできない。 時にヨーロッパ諸国に対して外国特許への差別化撤 このような流れの中で,特許の批判派は,報奨で 廃を求めるようになる。この時代にしばしば開催さ あれば,権利の独占ではなく報奨金でもよいのでは れた万国博覧会が米国技術の海外への流出リスクを ないかと主張した。1762年,英国政府はジョン・ハ もったためであった。 リソンに5,000ポンドを与えている。その船舶用クロ ノメーターの発明に対してであった。 あれやこれやの利害が重なり,1883年,「工業所有 権の保護に関するパリ条約」が発足した。ここで各 この発想は20世紀末までソビエト連邦における発 国の特許制度について最低限の標準化が行われたこ 明者証として残った。その所有者は,賞金,よい居 とになる。なお,この条約は輸入特許を認めていた。 住環境,さらなる教育機会などを与えられた。 * * 18世紀,英国は技術の先進国となり,追われる立 場となった。それとともに,自国技術の海外への流 どこで紹介してよいのか判断に苦しむが,日本で は1942年に「皇道的発明理念」という旗印のもとで, 敵性特許の取り消しなどを図ることとなる12)。 * * 出を警戒するようになった。基幹産業の職人の海外 18世紀中期,米国で議論になったのは発明の質で 流出も,そのために不可欠な機器の輸出も禁止とし あった。その発明が新しく有用なものであっても, た。当然ながら相手国は対策をとった。この争いは それがどんな職人でも工夫できるようなものであれ 19世紀になると激しくなる10),11)。 ば特許に値しないだろう。特許に値する発明とはど まず,フランス。1791年の特許法はアイデアの私 有を認めていた(前述)。にもかかわらず,ここには 外国人は出願できないという規定が含まれていた。 52 http://johokanri.jp/ April んな条件を充たせばよいのか。 1831年,米国の法廷はこれに応えた。それは特許 ひらめ の対象となる発明には「天才の閃 き」が不可欠とい 次はオランダ。この国は1869 ~ 1912年の間に特許 う判断であった13)。その後,この判例が特許庁と法 法を廃止していた。廃止の直前,特許の取得者のほ 廷を束縛した。当然,これを巡って議論が紛糾した。 情報論議 根掘り葉掘り ●アイデアの独占 ここから批判を1つ。 エジソン(後述)は生涯に1,093件の米国特許と1,239 業の商標名であった。ということで,アイデアの独 占は,商品の独占,市場の独占へと変質した。 件の外国特許を取得した。そのエジソンは「天才と 米国社会の中には19世紀末より反独占の気風が生 は1パーセントの閃きと99パーセントの汗である」と まれていたが,1929年の大恐慌をきっかけとしてこ 語っていた。彼の膨大な数の特許に彼の汗は混じっ れがにわかに高まる。これを受けて米国政府は,ア ていなかったのだろうか。 ンチパテント政策をとる。それは20世紀半ばに最高 19世紀後半,特許に関心をもつ2人の発明家が現れ た。ドイツのヴェルネル・フォン・ジーメンスと米 国のトマス・エジソンである。いずれも電気と通信 の分野で数多くの発明を特許化し,巨大コンツェル 潮に達した。 その代表例として経済学者フリッツ・マハループ が執筆した政府報告を見よう18)。 「現行の特許システムが,社会に最終的な結果と して利益を与えているのか損失を与えているの ンを築いた。 ただし,双方の特許に対する立ち位置は異なった。 か――これは,いかなるエコノミストといえど ジーメンスは,産業界の代表として,ドイツ特許法 も,現在の知識に基づくかぎり,確信をもって の近代化を導いた 14) 。一方エジソンは特許制度を駆 主張できないことである」 使して,いや,濫用までして,自己の利益の最大化 を図った15)。 いま濫用という言葉を使ったが,エジソンの場合, * * 1980年代になると,米国は,かつてのオランダの ごとく,かつての英国のごとく,追われる立場とな それは,特許訴訟の際限ない繰り返し,リサーチ・ツー る。それは新興国日本からの工業製品輸入が増大し ル特許まがいの主張,ライバルと結託しての特許プー たためであった。ここで米国の政策はプロパテント ルの構築,それによる反トラスト法への公然たる挑 へと一転する。その後の推移は読者諸氏がすでにご 戦,などに及んだ。 存じのとおりである。特許は「太陽のもと人間の創 第1次大戦後,世界市場は巨大企業群の特許プール 造したすべてのもの」に及ぶこととなる19)。 によって分割された16)。ここで主導的な地位を占め た企業の中にゼネラル・エレクトリック社(GE)とシー メンス社とがある。 * * サイバネティックスの創始者であったノーバート・ ウィーナーはその迷いを語っている20)。 エジソンはG Eの創始者であり,20世紀に入ると 「真に基礎的なアイデアに対しては,本当の所有 AT&T,RCAなどと結んで米国市場を独占する。一方, 権はありえず,そのようなアイデアを社会のた シーメンス社はA E Gと組んでヨーロッパ市場を独占 めに保管する管理責任のみがありうる」 するが,そのA E GはG Eのドイツ子会社であった。い 彼は自分の発明――ウィーナー・リー回路――に ずれの独占も,それは特許プールを核とするカルテ 対して特許を取得し,その特許をAT & Tに譲渡した。 ルによって実現したものであった17)。年配の方は「マ だが,AT & Tはそれを使用することなく,市場の独占 ツダ・ランプ」(MAZDA Lamp)というブランド名を つまり競争者の排除を謀るために保有し続けたので ご存じかと思うが,それはG Eとカルテルを組んだ企 あった21)。 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 53 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management April http://johokanri.jp/ 参考文献 1) Peager, F.D. The Early Growth and Influence of Intellectual Property. Journal of the Patent Office Society. 1952, vol. 34, no. 2, p. 106-114. 2) ベックマン, ヨハン著; 特許庁内技術史研究会訳. 西洋事物起原(I).ダイヤモンド社, 1980. 3) ベックマン, ヨハン著; 特許庁内技術史研究会訳. 西洋事物起原(II).ダイヤモンド社, 1981. 4) ベックマン, ヨハン著; 特許庁内技術史研究会訳. 西洋事物起原(III).ダイヤモンド社, 1982. 5) ベーコン著; 服部英次郎, 多田英次訳. 学問の進歩. 岩波書店, 1974. 6) 白田秀彰. コピーライトの史的展開. 信山社, 1998. 7) Matsuura, Jeffrey H. Jefferson vs. the Patent Trolls: A Populist Vision of Intellectual Property Rights. University of Virginia Press, 2008. 8) ディッキンソン著; 原光雄訳. ジェームズ・ワット. 創元社, 1941. 9) May, Christopher; Sell, Susan K. Intellectual Property Rights: A Critical History. Lynne Rienner Publisher, 2006. 10) Machlup, Frits; Penrose, Edith. The Patent Controversy in the Nineteenth Century. The Journal of Economic History. 1950, vol. 10, no. 1, p. 1-29. 11) 大河内暁男. 発明行為と技術構想: 技術と特許の経営史的位相.東京大学出版会, 1992. 12) 中村幸八. 発明五十年史. 東京出版, 1944. 13) Fox, Harold G. Monopolies and Patents: A Study of the History and Future of the Patent Monopoly. University of Toronto Press, 1947. 14) Scott, J. D. Siemens Brothers: An Essay in the History of Industry. Weidenfeld and Nicolson, 1958. 15) 名和小太郎. 企業家エジソン:知的財産・システム・市場開発. 朝日新聞社, 2001. 16) 名和小太郎. 技術標準対知的所有権. 中央公論社, 1990. 17) 小林袈裟治. GE: 典型的世界企業の形成と発展. 東洋経済新報社, 1970. 18) Machlup, Fritz. An Economic Review of the Patent System: Study of the Subcommittee on Patents, Trademarks, and Copyrights. U.S. Government Printing Office, 1958. http://mises.org/etexts/ patentsystem.pdf, (accessed 2014-02-02). 19) 名和小太郎. 太陽のもと人間の創造したものすべて. 情報管理. 2006, vol. 49, no. 4, p. 145-146, 202-204. 20) ウィーナー , ノーバート著; 鎮目恭夫訳. 発明: アイディアをいかに育てるか. みすず書房, 1994. 21) ウィーナー , ノーバート著; 鎮目恭夫訳. サイバネティックスはいかにして生まれたか. みすず書房, 1956. 54 集会報告 ●Meeting 第21回情報活動研究会 「使いこなそう!国立国会図書館のウェブコンテンツ」 日 程 2013年 11月8日( 金 )18: 30∼ 20: 00 場 所 田辺 三 菱 製 薬 株 式 会 社 本 社ビル 主 催 情 報 活 動 研 究 会( IN FO M A TE S ) 後 援 協 力 一 般 社 団 法 人 情 報 科 学 技 術 協 会( IN FO S TA ) 独 立 行 政 法 人 科 学 技 術 振 興 機 構( JS T)情 報 企 画 部 情報知識学会関西部会 協 力 株 式 会 社サンメディア 情報管理 57(1), 055-056, doi: 10.1241/johokanri.57.55 (http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.57.55) 話題提供者:水野 翔彦 氏 国立国会図書館関西館 電子図書館課 参 加 者 数:28名(運営委員9名含む) 第21回研究会は,国立国会図書館(以下,N D L) のウェブコンテンツを取り上げた。「リサーチ・ナビ」 や「NDL-OPAC」,「レファレンス協同データベース」 は頻繁に利用するものの,新しいサービスが提供さ れる中,全体を把握するには至っていない。情報専 門家としてもっとN D Lのサービスを知り活用してい こうという趣旨である。N D L関西館の水野翔彦氏を 講師に迎え,N D Lが提供する電子情報について,俯 述のデータベースを使いこなすコツは,①そのデー 瞰的な説明,個別のウェブサービスの違い・使いこ タベースの目的が「調べる」 「探す」 「使う」のどれ なしについて講演していただいた。講師の水野氏は か,②各コンテンツの中身は何か,③データベース PORTA(デジタル情報の検索サイト),Dnavi(デー 同士のデータの流れ・リンク関係はどうなっている タベースのリンク集)をはじめとする電子図書館事 か,がポイントとなる。2012年から正式公開された 業に2010年から携っておられる。 N D Lサーチはこの3つのカテゴリーに加え,外部機関 (1)NDLが提供する電子情報・ウェブサービスの俯 瞰的な説明 N D Lが提供する電子情報は,N D Lが作成した固有 のウェブサービス情報も検索できるもので,A P Iも公 開されており外部サイトからも利用できる。 (2)個別のウェブサービスの紹介 のデータベース等と外部機関の情報があり,N D L固 「調べる」には,リサーチ・ナビ,レファレンス協 有の情報は,調べ方案内・リンク集のような参考情 同データベース(以下,レファ協),国会関連のデー 報,二次情報である目録情報,所蔵資料を電子化し タベースが含まれる。リサーチ・ナビは調べ方案内 た一次情報データからなる。N D Lが提供するウェブ など「何をどう調べたらいいか」のヒントを提供す サービスは多岐にわたるが, 「調べる」「探す」「使う」 る窓口として利用する。レファ協は,全国の図書館 の3つの切り口で理解すれば使いやすい。そして,前 の調べもの相談事例や調査の手掛かりを収録してい 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 55 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management る。レファ協は個別に具体的な事例についての情報 一方で,しばしばインターネット上の情報は保存さ を集積する点で,リサーチ・ナビと異なる。国会関 れない。その点,WARPは社会保険庁のような廃止さ 連のデータベースは,帝国議会から現在に至るまで れた政府機関や,もともと設置期間が限定されてい の会議録,法令の改廃履歴・審議過程の情報を提供 た国会の事故調査委員会などのウェブサイトのバッ している。 クアップとなりうる。公的機関については原則すべ 「探す」には,NDL-OPAC,Web NDL Authorities てのウェブサイトを収集し,民間については承諾が (以下,NDLA)が含まれる。NDL-OPACはNDL所蔵 得られたものを収集している。収集頻度は対象によっ 資料の検索・申込みのためのシステムであり,点字・ て月1回から年1回と異なり,更新ごとに自動で行わ 録音図書の全国総合目録も収録している。N D L Aは, れるわけではないことに注意する必要がある。電子 N D Lが維持管理する典拠データ(同義名の集積の根 展示会は,わかりやすい解説を加えてN D L所蔵のユ 拠)を検索・提供するシステムで,一種の人名辞書 ニークな資料を紹介するサービスで,有名人の写真 としても利用できる。 をコレクションする「近代日本人の肖像」などがあり, 「使う」には,N D Lデジタル化資料,インターネッ ト資料収集保存事業 (WARP) , 電子展示会が含まれる。 NDLデジタル化資料は,NDLのデジタルアーカイブ 各種ウェブサイトや出版物などに利用されている。 (3)おわりに 講演で紹介された「絶版等資料」の公共図書館等 で,所蔵資料をデジタル化したものに加え,もとと への配信が2014年1月21日から開始された。3月現在, なった資料が外部にあるものも収録されている。こ N D Lからデジタル画像として送信された約131万点に のデジタル化資料を種類ごとに公開するサービスに, 及ぶ資料が,全国58館の公共図書館・大学図書館等 インターネットでも閲覧可能な資料だけを公開する で閲覧等できるようになった。電子化のメリットを 近代デジタルライブラリーや,歴史的音源を公開す フルに活用した新しいサービスが,またひとつスター る歴史的音源(れきおん)がある。資料の総数は約 トした。 226万点に及び,うち約47万点がインターネットでも 講演終了後,数多くの質問・意見・要望が会場か 公開されている。歴史的音源は公共図書館へも配信 らあがったが,そのひとつひとつに丁寧に応対され されており2013年11月現在125館で利用できる。 る水野氏の姿勢は,まさに利用者の意見を前向きに WARPは,インターネット上の電子雑誌・公共機関 取り入れ,常にサービスを改善していくN D Lの取り 等のウェブサイトの情報を収集保存して提供する。 組みそのものと感じられた。N D Lのサービスの発展 日常生活にインターネットが不可欠なものとなる中, がますます楽しみになった。 インターネット上でしか流通しない情報が増加する 56 http://johokanri.jp/ April (INFOMATES運営委員 中村 文胤) 集会報告 ●Meeting データサイエンス・アドベンチャー杯 日 程 2 0 1 4 年 3月8日( 土 ) 場 所 独立行 政 法 人 科 学 技 術 振 興 機 構 東 京 本 部 別 館( K s五 番 町 )1階ホール 主 催 SAS I nst i t ut e Ja p a n株 式 会 社 独立行 政 法 人 科 学 技 術 振 興 機 構 情報管理 57(1), 057-061, doi: 10.1241/johokanri.57.57 (http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.57.57) 1. はじめに 独立行政法人科学技術振興機構(以下,J S T)は, 2. 課題と応募作品 アドベンチャー杯の課題は,「J S T科学技術データ このたびSAS Institute Japan株式会社(以下,SAS社) を使用して,柔軟な発想でテーマを自由に設定し, との共催で,分析アイデアや分析スキルを競い合う 統計・データ分析を行う」と設定した。なお,J S T科 コンテスト「All Analytics Championship Powered by 学技術データを使用していれば他のオープンデータ S A S ~データサイエンス・アドベンチャー杯~」(以 等を組み合わせた分析も歓迎するということを明記 下,アドベンチャー杯)を開催した。 した。応募作品は,分析テーマ,分析手法・プロセ このアドベンチャー杯は,データサイエンティス スならびに分析結果を①分析概要(指定書式有り) トを志向する人々が分析アイデアや分析スキルを切 および②プレゼンテーション資料(PowerPoint形式) 磋琢磨できる機会を提供することを目的に高校生以 の2点にまとめて提出することとした。なお,②のプ 上を対象に実施した。 レゼンテーション資料については,本選に進出した データサイエンティストとは,「統計解析やデータ 際にそのまま発表資料となることを想定し,15分間 分析に関する高度な知識を持ち,情報を正確かつ効 の内容にまとめることを義務付けた。ただし,分析 果的に分析することで,ビジネスに役立つ洞察や課 プロセスなどデータ手法の正当性を判断するために 題解決のための有効な知見を見出すことができる人」 必要な情報は,本選の発表では省略することも可能 を指し,Google チーフエコノミストのHal R. Varian とし,できる限り詳しく記述してもらうようにした。 氏の言葉にもあるように,“今後10年間で最もセク JST科学技術データとは,JSTが長年にわたり収集・ シーな職業” として世界中で注目されている。 整理体系化してきた科学技術分野の論文に由来する しかし,日本ではこのデータサイエンティストの データ群をいう。今回それらのデータの一部を,統 人材不足が指摘されており,アドベンチャー杯はそ 計処理がしやすいようJ S T側で一次加工を行ったデー の現状を打開する契機となることを目指した。 タ(タイプA)と応募者が最初から自由にデータを扱 今回,データサイエンティストの発掘・育成機会 えるローデータ (タイプB) という形で提供した (表1) 。 の提供という開催目的で合意した民間企業のSAS社と タッグを組み,コンテスト参加者に対してJ S Tからは 3. エントリー開始から本選までの流れ 分析のためのデータを,SAS社からは分析ツールを無 アドベンチャー杯は,2013年10月8日からエント 償で提供することにより,データ分析に関心のある リーを開始し,2014年1月31日に応募作品を締め切っ 誰もが参加できる環境を整えた。 た。応募作品は一般部門と18歳以下のチームが応募 できるU -18部門の2部門で募集を行った。その後,2 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 57 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 http://johokanri.jp/ April Journal of Information Processing and Management 表1 提供したJST科学技術データ 表 提供した -67 科学技術データ ■一次加工データ(タイプ$) ・対象年:年年(文献が収録された資料の発行年) ◎ 分野分類の年次別統計データ(国内・海外文献別) 科学技術文献データに索引された-67分類コード分野の年次別索引頻度 ◎ シソーラス用語(統制語)の年次別統計データ(国内・海外文献別) 科学技術文献データに索引されたシソーラス用語の年次別索引頻度 ◎ 化学物質の年次別統計データ(国内・海外文献別) 科学技術文献データに索引された化学物質の年次別索引頻度と最初に索引された年 ■ローデータ(タイプ%) ・対象年:年年(文献が収録された資料の発行年) ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 科学技術文献データ(書誌情報)約万件 資料名データ:約万件 分野分類データ:約件 人名名寄せデータ:約万件 機関名データ:約万件 科学技術用語シソーラス:約万件 同義語・異表記辞書データ: 約万件 化学物質データ:約万件 ※応募代表者の所属機関を集計 月17日に審査委員による予選(書類選考・非公開) ※応募代表者の所属機関を集計 ※構成比は小数点第1位未満を四捨五入 ※構成比は小数点第位未満を四捨五入 を行い,予選審査を通過した8作品が3月8日の本選に 高校チーム てプレゼンテーションを行い,各賞が決定した。 高校, 8チーム (23.5%) エントリー数は86チーム,実際に提出された応募 企業チーム 作品数は34にのぼった。 大学チーム 企業, 18チーム 企業チーム (52.9%) 大学, 8チーム 提出された34作品のセクター別内訳は,企業が18, (23.5%) 大学が8,高校が8となっている(図1) 。都道府県別で みると,東京都が多いものの北海道から徳島県まで全 企業 大学 高校 企業 国各地から作品が寄せられていることがわかる (図2) 。 図 応募作品内訳(セクター別) 次に,分析に使用されたデータについてみていく。ア 大学 高校 図1 応募作品内訳(セクター別) ドベンチャー杯のために提供したJST科学技術データの 利用状況は,表2のとおりとなっており,一次加工デー ※応募代表者の所在地により集計 タでは,分野分類とシソーラスの統計データが,ロー データでは,科学技術文献データ(書誌データ)と分 野分類のデータが多く使用されている。また,今回の アドベンチャー杯ではJS T科学技術データにオープン データを組み合わせて分析することを推奨したため, 各チームのオープンデータ利用率を見てみると,全体 として6割を超える作品が何らかのオープンデータを 使用していることがわかる(表3) 。 図 応募作品内訳(都道府県別) 4. 審査方法と審査基準 図2 応募作品内訳(都道府県別) タイプA(一次加工データ) 化学物質の統計データ(海外文献) アドベンチャー杯における審査基準は,①J S T科学 ているか,②データ分析の中心となる部分でSASのソ 技術データを使用した最良の活用アイデアが示され 分野分類の統計データ(国内文献) フトウェアが使用されているか,③データ分析手法 分野分類の統計データ(海外文献) シソーラス用語の統計データ(国内文献) 58 チーム数 化学物質の統計データ(国内文献) シソーラス用語の統計データ(海外文献) タイプB(ローデータ) 科学技術文献データ(書誌情報) チーム数 集会報告 ●Meeting 図 応募作品内訳(都道府県別) 本選の審査では,予選審査の結果と発表者のプレ 表2 使用されたJST科学技術データ タイプA(一次加工データ) 化学物質の統計データ(海外文献) 分野分類の統計データ(国内文献) 分野分類の統計データ(海外文献) シソーラス用語の統計データ(国内文献) シソーラス用語の統計データ(海外文献) タイプB(ローデータ) 協議のうえ各賞を決定した。 審査委員会は,表4に示す各界の有識者により構成 され,予選・本選ともに厳正なる審査が行われた。 チーム数 科学技術文献データ(書誌情報) 人名名寄せデータ 5. 本選の様子 分野分類データ 休日の開催にもかかわらず,本選会場には一般観 資料名データ 機関名データ 同義語・異表記辞書データ 科学技術用語シソーラス ※1つのチームが複数のデータを利用している場合もあるため延べ数 ゼンテーション内容を総合的に判断し審査委員会で チーム数 化学物質の統計データ(国内文献) 覧者と発表者・関係者を併せて200名を超える人々が 集まり,終始和やかな雰囲気で進行した(図3) 。 表 使用された -67 科学技術データ 表3 オープンデータ利用率 本選進出者は表5に示す8チームであり,それぞれ 15分間の発表の後に審査委員およびアドバイザーに セクター 企業 大学 高校 全体 チーム数 OpenData利用有り OpenData利用率 よる5分間の質疑応答が行われた。 表 オープンデータ利用率 ろ ~おカネと人と論文と~」というタイトルの作 に正当性があるか,④分析結果が明確に示され,効 審査委員会メンバー: 果的なプレゼンテーション資料としてまとめられて 最初に発表を行ったチーム “埼玉県立熊谷女子高等 学校” は,高校3年生の4人組で「大学のそこんとこ 品を鋭くユーモアに富んだ考察を交えながら発表し た。2番目のチーム “Terano Lab.” は東京工業大学の ●審査委員長 長尾 真 氏(-67科学技術情報特別主監京都大学名誉教授) ●審査委員 (音順) いるか,の4点である。これらは,エントリー開始と 大学院生のチームで,「論文の共著関係ネットワーク 大向 一輝 氏(国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系 准教授) 小野寺 夏生 氏(一般社団法人情報科学技術協会 ,1)267$会長) 鈴木 良介 氏(株式会社野村総合研究所 主任コンサルタント) 同時に公開した。 の中心性分析」をテーマにJ S Tの戦略立案等のヒント 林 雅之 氏(177コミュニケーションズ株式会社 主査,国際大学*/2&20 客員研究員) 南川 敦宣 氏(.'',株式会社 新規ビジネス推進本部 課長補佐) 予選審査では,基準①,③,④について審査委員 森川 富昭 氏(慶應義塾大学 大学院政策・メディア研究科/環境情報学部 准教授) になるような共著関係のネットワーク分析について ●アドバイザー(音順) 国友 直人 氏(日本統計学会 会長東京大学 経済学部 教授) が審査を実施した。基準②については,S A S社にて 発表した。3番目のチーム “H S E研開部” は,株式会 吉田 靖 氏 東京経済大学 経営学部 教授 SASソフトウェアの使用有無を確認したところ不適合 社日立ソリューションズ東日本のメンバーによるも 表 アドベンチャー杯審査委員会 セクター 企業 大学 高校 全体 作品はなかったため,全員が基礎点を得た。さらに, 「研究力の向上と実社会の発展の関係分析」を, チーム数 ので, 表 本選進出者一覧と作品名 基準③については審査委員による審査と並行して, OpenData利用有り 仮説設定から考察までをぶれずにかつ丁寧に行った チーム名 作品名 統計学的見地からみた正当性をアドバイザーが確認 結果について発表した。4番目のチーム “健マネ” は, OpenData利用率 埼玉県立熊谷女子高等学校 大学のそこんところ ~おカネと人と論文と~ し審査の参考情報とした。 慶應義塾大学大学院で健康マネジメント学を専攻し 7HUDQR /DE 論文の共著関係ネットワークの中心性分析 表 オープンデータ利用率 +6(研開部 研究力の向上と実社会の発展の関係分析 研究活動の年次推移および人々の生活実感への影 響に関する分析 表4 アドベンチャー杯 審査委員会 未来のデータサイエンティストを探せ! 81$*, ~研究分野遷移から見た人材マッチング~ ニュース記事と特許を利用した科学技術の重要性 審査委員会メンバー: 広島市立大学 の評価 「生物多様性を探るために」~トンボの統計解析か 北海道札幌旭丘高等学校 生物部 ●審査委員長 長尾 真 氏(-67科学技術情報特別主監京都大学名誉教授) らわかったノシメトンボと生物多様性について~ 企業に着目した共同研究ネットワーク構造の解析 技術動向観測隊 ●審査委員 (音順) と非連続的成長の予測 健マネ 大向 一輝 氏(国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系 准教授) 小野寺 夏生 氏(一般社団法人情報科学技術協会 ,1)267$会長) 鈴木 良介 氏(株式会社野村総合研究所 主任コンサルタント) 林 雅之 氏(177コミュニケーションズ株式会社 主査,国際大学*/2&20 客員研究員) 南川 敦宣 氏(.'',株式会社 新規ビジネス推進本部 課長補佐) 森川 富昭 氏(慶應義塾大学 大学院政策・メディア研究科/環境情報学部 准教授) ●アドバイザー(音順) 国友 直人 氏(日本統計学会 会長東京大学 経済学部 教授) 吉田 靖 氏 東京経済大学 経営学部 教授 表 アドベンチャー杯審査委員会 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 59 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management http://johokanri.jp/ April ものであり,「生物多様性を探るために~トンボの統 計解析からわかったノシメトンボと生物多様性につ いて~」と題して,自校で5年間にわたり集積したオ リジナルのデータを丁寧に分析・考察した後にJ S Tの データを組み合わせるというアイデアに富んだ発表 を行った。最後に発表したチーム“技術動向観測隊”は, 株式会社金融エンジニアリング・グループ,国立情 報学研究所など,3機関のメンバーから構成される チームで,「企業に着目した共同研究ネットワーク構 図3 本選会場の様子 造の解析と非連続的成長の予測」について,分析結 ている学生によるもので, 「研究活動の年次推移およ eb セクター 企業 大学 果を示すだけでなくその成果によって開発したW 高校 全体 び人々の生活実感への影響に関する分析」について, チーム数 アプリも併せて発表した。 J S Tのデータと内閣府のオープンデータをうまく組み OpenData利用有り OpenData利用率 合わせた分析結果を発表した。 6. 受賞者紹介 5番目に発表したチーム N A G I” は,東京ガス株 表 “U オープンデータ利用率 式会社で社内の業務効率化や組織改善のためにデー タ分析を行っている部署のメンバーによるもので, 審査委員会メンバー: 「未来のデータサイエンティストを探せ!~研究分野 8チームの発表が終了した後,審査委員会による審 査が行われ各賞が決定した。 アドベンチャー杯における各賞の詳細と該当する 応募区分は,表6に示すとおりである。 ●審査委員長 長尾 真 氏(-67科学技術情報特別主監京都大学名誉教授) ●審査委員 (音順) 金賞はチーム “U N A G I”,銀賞はチーム “技術動向 遷移から見た人材マッチング~」というテーマで, 大向 一輝 氏(国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系 准教授) 観測隊”, 銅賞はチーム“HSE研開部”, アイデア賞はチー 社会ニーズを意識し具体的な活用イメージを盛り込 小野寺 夏生 氏(一般社団法人情報科学技術協会 ,1)267$会長) 鈴木 良介 氏(株式会社野村総合研究所 主任コンサルタント) ム “北海道札幌旭丘高等学校生物部”,U -18賞はチー んだ発表を行った。6番目に発表したチーム “広島市 林 雅之 氏(177コミュニケーションズ株式会社 主査,国際大学*/2&20 客員研究員) 南川 敦宣 氏(.'',株式会社 新規ビジネス推進本部 課長補佐) ム “埼玉県立熊谷女子高等学校” が獲得した(図4) 。 立大学” は, 「ニュース記事と特許を利用した科学技 森川 富昭 氏(慶應義塾大学 大学院政策・メディア研究科/環境情報学部 准教授) ●アドバイザー(音順) 審査委員会では,予選同様に審査委員とアドバイ 術の重要性の評価」と題して,文書分類や情報抽出 国友 直人 氏(日本統計学会 会長東京大学 経済学部 教授) 吉田 靖 氏 東京経済大学 経営学部 教授 ザーによる活発なディスカッションが行われた。ま など今後のJ S Tにとっても非常に参考になる技術が盛 り込まれた発表を行った。7番目に発表したチーム“北 表 アドベンチャー杯審査委員会 た,今回のアドベンチャー杯でアイデアだけに留ま 海道札幌旭丘高等学校生物部” は,高校1年生による らず,各自が設定した仮説を丁寧に検証し,それを 表 本選進出者一覧と作品名 表5 本選進出者一覧と作品名 チーム名 埼玉県立熊谷女子高等学校 大学のそこんところ 7HUDQR /DE 論文の共著関係ネットワークの中心性分析 +6(研開部 研究力の向上と実社会の発展の関係分析 健マネ 81$*, 広島市立大学 北海道札幌旭丘高等学校 生物部 技術動向観測隊 60 作品名 ~おカネと人と論文と~ 研究活動の年次推移および人々の生活実感への影 響に関する分析 未来のデータサイエンティストを探せ! ~研究分野遷移から見た人材マッチング~ ニュース記事と特許を利用した科学技術の重要性 の評価 「生物多様性を探るために」~トンボの統計解析か らわかったノシメトンボと生物多様性について~ 企業に着目した共同研究ネットワーク構造の解析 と非連続的成長の予測 集会報告 ●Meeting 表6 アドベンチャー杯 表 アドベンチャー杯各賞の詳細 I C T利活用人材の育成を通じた日本のイノベーション 各賞の詳細 各賞と受賞者名 授与 副賞・記念品 対象区分 金賞 表彰状・トロフィー ・賞金万円 ・未来館チケット ・長尾委員長サイン入り著書 ・6$6バッグ 一般区分の 1チーム 表彰状・トロフィー ・賞金万円 ・未来館チケット ・長尾委員長サイン入り著書 ・6$6バッグ 一般区分の 1チーム 表彰状・トロフィー ・賞金万円 ・未来館チケット ・長尾委員長サイン入り著書 ・6$6バッグ 一般区分の 1チーム 表彰状・トロフィー ・賞金万円 ・未来館チケット ・長尾委員長サイン入り著書 ・6$6バッグ 一般8 のいずれか 1チーム 表彰状・トロフィー ・賞金万円 ・未来館チケット ・長尾委員長サイン入り著書 ・6$6バッグ 8の 1チーム 表彰状 ・未来館チケット ・長尾委員長サイン入り著書 ・6$6バッグ ・6$6水筒 本選出場者 のうち 上記以外の 3チーム ”UNAGI” 銀賞 ”技術動向観測隊” 銅賞 ”HSE研開部” アイデア賞 ”北海道札幌旭丘高等学校生物部” 8賞 ”埼玉県立熊谷女子高等学校” 入賞 ”7HUDQR Lab.” ”広島市立大学” ”健マネ” 促進への貢献につなげていきたいと考えている。 最後に,アドベンチャー杯の開催にあたって共催 者として多大なご支援・ご協力をいただいたS A S社, ならびに運営事務局として全面的なフォローをして くださった株式会社エムエム総研,この取り組みに 賛同いただき応援をしてくださった後援団体(K D D I 株式会社,株式会社ジー・サーチ,情報処理学会, 日本計算機統計学会,日本統計学会,ネイチャーイ ンサイト株式会社,株式会社マイナビ)ならびに来 しんし 提言にまとめあげたハイレベルな作品がこぞって発 賓の皆様,すべての応募作品に目を通し,真 摯に審 表されたことを喜ぶ声,受賞者たちへの未来のデー 査を行ってくださった審査委員・アドバイザーの先 タサイエンティストとしての活躍を期待する声が聞 生方,エントリーをしてくださった全国の皆様,本 かれた。 選会場にお越しいただいたすべての皆様に心より御 礼申し上げます。 7. おわりに 今回のアドベンチャー杯の開催を通じて,ビッグ データ,オープンデータ時代において活躍するデー アドベンチャー杯公式W e bサイト:h t t p : / / w w w . sascom.jp/AAC/ ( (独)科学技術振興機構 伊藤 祥) タサイエンティストの発掘・育成機会を提供すると いう目的を達成することができた。また,J S T情報事 業にとっては,J S Tの情報資産である科学技術データ の認知度向上やJ S T科学技術データとオープンデータ の親和性を知る機会,J S T科学技術データのオープン 化に向けた課題の抽出・整理,J S T科学技術データの 活用に関する外部の知の取り込み,今後事業を推進 するにあたって強力なサポーターとなりうる機関・ 人物とのネットワーク強化など,さまざまな良い効 果を得ることができた。 今後もこのような機会を継続することにより,科 学技術分野のデータから新たな価値の創造と,高度 図4 受賞者と審査委員の皆様 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 61 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management http://johokanri.jp/ April 坂 下 鈴 鹿( 文 部 科 学 省 科 学 技 術・学 術 政 策 局企 画 評 価 課 政 策 科 学 推 進 室 ) 科学×文学 情報管理 57(1), 062-064, doi: 10.1241/johokanri.57.62 (http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.57.62) <お断り> 本稿は著者の個人的な見解を述べたものであり, 著者の所属組織の見解とは一切関係ありません。 ると考えていたが,詩人になるための教育を受けて おらず,また,書いた詩の有用性を立証することも できないとして,旧ソビエトでの裁判では有罪となっ ている。 自然科学分野の研究者,技術者の中にも,文学が 好きな人がいるかもしれないが,なぜ文学者が,科 『私人:ノーベル賞受賞講演』 学者と同様に,人類に貢献した者に贈られるノーベ ヨシフ・ブロツキイ著;沼野充義訳 ル賞の栄に浴すのかを疑問に思っている人もいるの 群像社,1996年,800円(税別) ではないだろうか。 ノーベルの遺言書には,文学賞を受賞すべき者に ついて次のように記されている。“person who shall have produced in the field of literature the most outstanding work in an ideal direction.” 筆者は,ノー ベル文学賞は,娯楽作品や疲れた心に癒しを与える ような作品ではなく,まったく新しい視点や概念, 人間の異様さや多様性などを読者に「発見」させ, そのことによって人類をより理想に近づけた作品に 対して贈られるのだろうと勝手に解釈している。 ソビエトから亡命し,アメリカ人として1987年に ノーベル文学賞を受賞した詩人ヨシフ・ブロツキイ は,ノーベル賞受賞講演(『私人』沼野充義訳,群像 社)において,詩を含む芸術の価値は,すべての人 62 http://gunzosha.com/books/ISBN4-905821-75-4.html 最先端の科学の描く人類の未来と,文学の描く世 間が他者とは異なることを示すことにより,また, 界には共通点があると感じることが多い。2008年の 常に同語反復を避けようとすることにより,歴史や フランス人ノーベル文学賞受賞者ル・クレジオの『無 過去のために生きる運命から人類を解き放ち,未来 限に中ぐらいのもの』(『物質的恍惚』岩波文庫ほか を描くことができる点にあると述べている。ちなみ 所収)では,人間は,電気的な,化学的な,物質と に,ブロツキイは,自らの詩人としての天賦の才と しての生命であることを除けばすべてについて謙虚 詩の有用性を信じ,詩を書くことが自分の職業であ であるべきと書かれているが,近年の分子生物学や この本!おすすめします ●科学×文学 認知神経科学の進展などをみれば,現代文学がこの など,日本語で読んだときにのみ現れる価値は痛切 ような地点に立っているのはごく自然なことに見え に存在するが,工夫された翻訳によってその価値の る。一般に,文学の「発見」は早いが,断片的な啓 何分の1かでも日本語の外の世界に伝えることができ 示しかもたらさないことが多く,科学は,これまで れば,それは何も発信しないことよりも意味がある 気づかなかったか,気づいていても証明できなかっ のではないだろうか。 たことを客観的かつ普遍的な手法に基づき説明する 昨年出版された『日本語に生まれて』 (中村和恵著, 手法なのかもしれない。人類の未来を先導する手法 岩波書店)は,日本が置かれている言語的環境とそ としては,両者は相補う関係にあるのではないだろ の将来について考えるうえでいくつものユニークな うか。したがって,同じ問題について,科学者と文 視点を与えてくれる。西洋語をより多く取り入れて 学者の立場に大きな対立が生じることがあれば,互 いこうとすることは,負担の多い困難な挑戦であり, いに相手の主張に耳を傾け,必要に応じて自らの進 また,短期的には効率性や安全性,愛着ある過去 む方向性を再考する態度が望まれると思う。 が失われることへの痛みなどを伴うであろう。しか 科学と文学をこのように並べて考えてみると,日 し,今後,科学や文学などの価値創出分野において 本には言語的な制約がある点に思いを致さざるをえ 西洋語と日本語を高度に使いこなせる層を社会の中 ない。現代において,自然科学のフロンティアが英 で分厚く育成する努力は避けがたいのではないだろ 語の世界で展開されているとすれば,最先端の日本 うか。また,その困難や違和感を通じて,日本人は, 文学の一部は,英語で書かれ(あるいは,多くの国 西洋語以外の言語・文化をもつ世界の人びとの理解 の読者に理解できるように翻訳され),英語で読まれ 者,代弁者となれる可能性をもっているし,そこか るようになるべきなのだろうか。文体や文化的背景 ら日本語をもっとよいものにしていこうという気概 『物質的恍惚』 『日本語に生まれて 世界の本屋さんで考えた ル・クレジオ著;豊崎光一訳 こと』 岩波文庫,2010年,945円(税別) 中村和恵 (新潮社 1970年刊の文庫化) 岩波書店,2013年,1,900円(税別) https://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/7/0242990.html 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 63 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management http://johokanri.jp/ April も生まれうるのではないか。この問題については, 『科学技術の戦後史』 さらに幅広い観点から考え続けなければならないと 中山茂 思う。 岩波新書,1995年,品切重版未定 ここまで,主として未来について述べてきたが, 最後に過去,すなわち近現代の科学技術政策史に関 する本を紹介する。 『科学技術政策』(鈴木淳著,山川出版社)は,歴 史教科書を作っている山川出版社のリブレットだけ あって,112ページという薄さにもかかわらず内容は 濃く,江戸末期から戦後に至るまでの科学技術政策 を一望させてくれる手堅い教科書である。歴史学者 による科学技術政策史ということで,政治学者,社 会学者,行政実務者などとは異なる視点を提供して くれるという点も重要である。あわせて,『科学技術 の戦後史』(中山茂著,岩波新書)も勧めたい。 歴史を学ぶことは,今 生きている時 代の成り立 れ た1996年 の 翌 年 で あ る が,こ れ ら の 本 は,基 本 ちと現在自分たちが立っている場所について正し 計画や総合科学技術会議の意味を,わが国の科学技 く理 解するうえで 重要である。たとえば,筆 者が 術政策統合の仕組みとして,江戸時代から続く科学 働き始めたのは第一期科学技術基本計画が策定さ 技術政策史の中で捉え直すきっかけを作ってくれる。 ただし,歴史に学ぶ際にも,未来は過去の単純な 『日本史リブレット100 科学技術政策』 延長線上にあるのではなく,科学と文学が先頭に立っ 鈴木淳 て新しく切り開いていくものであることを忘れては 山川出版社,2010年,800円(税別) ならないと思う。未来がよりよいものとなるために, 科学と文学にはやらなければならないことがたくさ ん残されている。 執筆者略歴 坂下 鈴鹿(さかした すずか) 1997年早稲田大学第一文学部(社 会学専修)卒業,科学技術庁入庁。 長崎大学学術国際課長,文部科学 省研究振興局ライフサイエンス課, ユネスコ日本政府代表部,文部科 学省高等教育局高等教育企画課国 際企画室,同 科学技術・学術政策 研究所などを経て,現職。研究・ 技術計画学会所属。 http://www.yamakawa.co.jp/product/detail/1847/ 64 情報界のトピックス ●Topics of the information community 情報管理 57(1), 065-067, doi: 10.1241/johokanri.57.65 (http://dx.doi.org/10.1241/johokanri.57.65) 英国公共図書館で研究論文を提供 この企画は,政府の委託を受けたWorking Group on Expanding Access to Published Research Findings 英国の公共図書館で,研究論文を無料提供するた (発表された研究成果へのアクセス拡大に関するワー めのパイロットプログラム “Access to Research” が, キ ン グ グ ル ー プ ) が,2012年6月 に 発 表 し た 報 告 2月3日に開始された。これに先立ち,昨年9月から12 書「Accessibility, sustainability, excellence: how to 月にかけて約3か月間,250図書館を対象にしたテス expand access to research publications」 ,いわゆる トが行われた。“Access to Research” に参加する図書 F i n c hレポート(v o l .55, n o .5の本欄にて既報)で示 館の来館者は,世界の学術ジャーナル8,400誌に掲載 した勧告の1つを実行したものである。ワーキング された150万以上の論文に,無料でオンラインアクセ グループは,英国中の公共図書館内での,大多数の スすることができるようになった。分野は,健康・ ジャーナルへのウォークイン・アクセスと論文の提 生物科学(20%),社会科学(18%),工学(14%) 供を勧告していた。 のほか,芸術・建築,ビジネス,環境科学,歴史,ジャー (http://www.accesstoresearch.org.uk/) (http://www. ナリズム,言語,政治,映画,哲学・宗教,数学, prnewswire.com/news-releases/walk-in-access-to- 物理学など多岐にわたる。利用者は1つの論文につき, high-quality-academic-research-available-in-uk-public- 1部コピーすることができるが,CDやUSBメモリーな libraries-243299941.html) (accessed 2014-03-10). どのポータブルデバイス上にダウンロードすること は許されない。 米国防総省がDARPAデータを公開 論文を提供するのは,Elsevier,Wiley-Blackwell, Springer,Taylor & Francis,Nature Publishing 米 国 防 総 省 の 国 防 高 等 研 究 計 画 局(D e f e n s e Group,SAGE Publications,Bloomsbury Publishing, Advanced Research Projects Agency: DARPA)は,コ Cambridge University Press,Oxford University ンピューターサイエンスのさまざまな分野で,多く Press,Emeraldを含む17の出版社で,ProQuest社は の基礎および応用研究に資金を提供してきたが,そ 検索・配布ソフトウェアS u m m o nを無料提供した。 の多くは世間の目から隠されたままであった。しか また,Publishers Licensing Society,Association of し,研究開発コミュニティーの要望に応えて,“DARPA Learned & Professional Society Publishers(ALPSP) , Open Catalog” を, 2月初めにWebサイトで公開した。 Publishers Association(PA)が支援している。2月初 CatalogにはDARPAの資金提供を受けたソフトウェア 旬の段階で,地方自治体の半数以上に当たる75自治 と査読出版物が含まれる。まず公開されたのは,情 体が,すでにこの計画への参加に署名済みである。2 報イノベーション室(Information Innovation Office: 年間の試行期間中,将来どのようにサービスを発展 I2O)が遂行中の, ビッグデータのためのオープンソー させたらよいかを知るために,“Access to Research” スソフトウェア・ライブラリーを開発するX D ATAプ への関心や理解を詳しく観察することになっている。 ログラムである。D A R P Aは,政府投資の効果を増す 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 65 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management http://johokanri.jp/ April ために,XDATAやI2Oの他のプログラムを使ったオー マンガ200点を無料で読めるサービス プンソース戦略をもっている。 D A R P AプログラムマネージャーのC h r i s t o p h e r KADOKAWAは3月3日,マンガ200作品を無料で読 W h i t e氏は,声明の中で次のように語った。「オープ めるウェブコミックサービス「ComicWalker」を3月 ンソース・カタログを公開することが,政府のため 22日にスタートすると発表した。KADOKAWAが発行 に適切なソフトウェアの迅速な開発を助ける専門家 する23のマンガ雑誌に連載中の作品などを,スマー の数を増加させる。コンピューターサイエンスのコ トフォン,タブレット,パソコンなどさまざまなデ ミュニティーが,ソフトウェアの要素をテスト評価 バイスから読むことができる。連載中の作品は初回 し,その後それを採用することを期待する」。コミュ 数話と最新話を無料で読むことができる。また過去 ニティーが十分な関心を示すようであれば,他のソ の作品の一部は最新の技術でフルカラー化する。さ フトウェア,出版物,データ,実験結果などの情報 らに掲載マンガを英語・中国語に翻訳するとしてい も公開していくことが予定されている。 る。連載中の作品は一部しか読めなくすることで, (http://www.darpa.mil/OpenCatalog/index.html) 既存の単行本や電子書籍へ誘導する狙いがあるとみ (accessed 2014-03-10). られる。また多言語化することで,海賊版の抑止に CHORUSへの署名が100件を超す もつながる。 (http://ir.kadokawa.co.jp/topics/20140303_kcwk.pdf) (accessed 2014-03-10). 米国で,公的助成研究成果のパブリックアクセス 拡大化のための官民連携イニシアチブ“Clearinghouse 自治体の特性を可視化する評価ツールを開発 for the Open Research of the United States: CHORUS” を支持する署名が100件に達したことが,2月19日に 富士通研究所と富士通総研は2月28日,自治体の特 発表された。CHORUSは,連邦政府の助成を受けた研 性を可視化する評価ツールを発表した。政府統計な 究の成果を報告する査読論文への,パブリックアク ど1,200項目以上の公開データを活用し,環境,経済, セスを提供するための解決策として,出版界から提 社会の3つのカテゴリーで,「耕作放棄地」「ごみ排出 案され(vol.56, no.4の本欄にて既報),そのパイロッ 量」「財政力指数」「完全失業率」「人口変化率」など トプログラムが2013年秋に開始された。2014年後半 の50項目を選定。全国1,742の自治体について,その には,新しく統合されたパブリックアクセスのシス 特徴を簡単に定量評価し,自治体間の相対評価もで テム開始が予定されている。3月6日現在の署名件数 きる評価ツールを開発した。本ツールは,行政評価 は,大学,N P O,学会,商業出版社が92,サービス や,総合計画,環境・観光分野の基本計画の策定など, プロバイダーと,Association of American Publishers 地域活性化に向けたコンサルテーションに活用でき (米国出版社協会)を含む団体が10で,総数102に 達している。学術出版社グループは,連邦助成機 (http://pr.fujitsu.com/jp/news/2014/02/28.html) 関のパブリックアクセス・ニーズに応えるために, (accessed 2014-03-10). NPOの “CHOR” を2013年に設立した。CHORUSは, CHORが提供する最初のサービスである。 (http://chorusaccess.org/chorus-signs-its-100thsignatory/) (accessed 2014-03-10). 66 るとしている。 情報界のトピックス ●Topics of the information community 青空文庫をプリント・オンデマンドで紙書籍化 東日本大震災でも同様の取り組みを行っている。 この豪雪災害では,気象情報会社のウェザーニュー インプレスR & Dは2月27日,「青空文庫」の紙書籍 ズも2月20日に,支援が必要なエリアや通行実績のあ 版「青空文庫P O D」の販売を開始すると発表した。 るルートを掲載した「関東・甲信豪雪減災リポート 青空文庫は,著作権が消滅した1万2,000点以上の作 マップ」の開設を発表。トヨタ自動車のテレマティ 品をボランティアが電子化して登録しているイン クスサービス対応ナビゲーション「G-BOOK」搭載車 ターネット図書館。「青空文庫P O D」では,青空文庫 両の情報提供を受けている。 の登録作品のうち,まず100タイトルを対象に,注 ( h t t p : / / g o o g l e j a p a n . b l o g s p o t . j p /2014/02/ 文に応じて1冊ずつ印刷・製本する「プリント・オン google.html) (http://weathernews.com/ja/nc/ デマンド(P O D)」方式を利用して書籍化する。書籍 press/2014/140220.html) (accessed 2014-03-10). は,弱視の方や高齢者などのアクセシビリティを考 慮して, 「ポケット版」(文字サイズ9ポイント,A6変 報道の自由度ランキング,日本は59位 形判) , 「シニア版」(文字サイズ10.5ポイント,四六 判) , 「大活字版」(文字サイズ22ポイント,B5判)と 国際ジャーナリスト団体「国境なき記者団」は2 いう3種類の文字サイズと判型で提供される。インプ 月12日, 「世界各国の報道の自由度ランキング2014 レスR & Dでは,青空P O D制作にあたり,青空文庫形 (World Press Freedom Index 2014) 」を発表した。世 式のテキストファイルからE P U B3ファイルを自動生 界180か国・地域を対象とした同ランキングで,日本 成するシステムなどを開発。また,制作の過程で判 は59位となり,前年の53位から順位を下げた。理由 明した誤植などは青空文庫にフィードバックするほ としては,2013年末の特定秘密保護法成立があげら か,「青空文庫P O D」の売り上げの一部は青空文庫に れており,同法成立によって,原子力や米国との関 還元するとしている。 係といった重要な問題に関する政府の透明性が低下 (http://www.impressrd.jp/news/140227/AOZORA) するほか,調査報道,公共の利益,情報源の秘匿性 (accessed 2014-03-10). がすべて犠牲になると指摘している。また福島原発 自動車メーカーと協力,豪雪災害情報を提供 をめぐる報道で,原子力関連報道の検閲や「記者ク ラブ」の問題も従来から指摘されている。同指標は 報道の自由度を,検閲の状況,法的枠組み,透明性, 甲信地方が豪雪被害に見舞われた2月17日,Google インフラなどの項目で評価。上位はフィンランド, は豪雪災害エリア内での道路通行実績情報をG o o g l e オランダ,ノルウェーなど北ヨーロッパ諸国が占め 災害情報マップでの提供を開始したと発表した。こ ている。日本も2010年には11位だったが,東日本大 のマップでは,本田技研工業独自の交通情報サービ 震災・福島原発事故後の2011−2012年が22位,2013 ス「インターナビ」搭載車両で収集した走行実績デー 年が53位と急激に順位を下げている。 タの提供を受け,過去4時間に通行実績のあった道路 ( h t t p : / / r s f . o r g / i n d e x2014/ e n - i n d e x2014. p h p ) を青色で表示。Googleと本田技研工業は,2011年の (accessed 2014-03-10). 情報管理 vol. 57 no. 1 2014 67 情報管理 JOHO KANRI 2014 vol.57 no.1 Journal of Information Processing and Management http://johokanri.jp/ April 新年度が始まり,「情報管理」誌も無事に57巻を 数えました。今号の機械翻訳記事に,初めての機械 翻訳実験が行われたのは1954年とあります。人工 知能研究の本格的な開始は1956年(本誌55巻7号 参照)ですから,本誌の創刊からこれまでの歩みと 機械翻訳や人工知能の歩みは,ほぼ重なることにな ります。情報技術の進歩は,一般市民の生活にもさ まざまな変化をもたらすようになりました。 今号で紹介した医療・健康情報の管理は,誰もが 自分のこととして考えなければならない問題となっ てきました。人由来の情報と資料には公共性がある のか,それともあくまでその本人のものなのか。自 分自身の個人情報がどのように取得され,利用され るかを自らコントロールするために,この記事が役 立てばうれしく思います。 J S Tによる文献データベースサービスJ D r e a mが 民間に移行して,この4月で1年が経ちました。今 号ではJDreamIIIの開発担当者に,開発の経緯とコ ンセプト,特徴,その後の機能追加について紹介し ていただきました。 集会報告にありますように,3月8日にデータ分 析コンテスト本選が開催され,高校生や若い世代の 発表を聴くことができました。自分の高校時代を思 い返すと,テーマを決めてデータを集め,グラフに したら終わりだったように思います。いまはデータ を解析し,新たな知見を得るところまで高校生が取 り組んでいます。若い力を感じて,これからが楽し みになりました。 予想では,東京の桜の見頃は3月下旬から4月上 旬ですから,予想が当たれば,今号が公開される頃 には桜は満開となっていることでしょう。新年度を 迎え,さらに充実した記事をお届けできるよう心新 たに力を入れて取り組みます。ご愛読をよろしくお (KM) 願いいたします。 □次号予定 ●レジリエントな社会を実現する情報技術 ●オープンサイエンスと科学データの可能性 ●インターネット上の名前・アイデンティティ・プライバシー ●佛教大学図書館におけるウェブスケールディスカバリー Summonの導入効果と課題 ●インフォプロによるビジネス調査-成功のカギと役立つコンテンツ:第2回 プランニングの実際 情報 管理 JOHO KANRI Journal of Information Processing and Management 科学技術振興機構 vol.57 no.1 April 2014 ●編集委員会 <委員長>加藤治(科学技術振興機構) <編集委員> 江草由佳(国立教育政策研究所)・岡安渉子(富士通㈱) ・ 小河邦雄(大正製薬㈱)・気谷陽子(放送大学)・ 志賀智行(旭化成㈱)・青山幸太・伊藤祥・植松利晃・ 木村美実子・佐藤恵子・土屋江里・野田口真也・火口正芳・ 余頃祐介(以上 科学技術振興機構) ●編集事務局 木村美実子(事務局長) 藤井昭子・本橋野枝・及川優子(以上 科学技術振興機構) 2014年4月1日発行(月刊) 年間購読定価 本体¥12,960(税込) 1部定価 本体 ¥1,296(税込) ●版下作成・印刷 昭和情報プロセス株式会社 発行 独立行政法人 科学技術振興機構 〒102-8666 東京都千代田区四番町5番地3 「情報管理」編集事務局 Tel. 03(5214)8406 Fax. 03(5214)8420 E-mail: [email protected] http://johokanri.jp/ Published monthly by Japan Science and Technology Agency (JST) JOHO KANRI Editorial Office, JST, P.O.Box 2, Kojimachi Tokyo 102-8666 JAPAN ・本誌に落丁・乱丁がありました節は,まことに恐れ入りますが,編集事務局宛に現品をご返送ください。送料は当機構 の負担で,お取り替えいたします。勝手ながら現品送付のない場合は,お取り替えいたしかねます。 ・未着事故などのご連絡は発行後2か月以内にお願いします。以後は原則としてお受けできません。 © Japan Science and Technology Agency 2014 無断転載を禁ず 68 2014 年 4 月 1 日 「情報管理」誌 投稿規定 独立行政法人 科学技術振興機構 「情報管理」誌編集委員会 当機構で編集・発行する月刊誌「情報管理」(Web 版,冊子体)への投稿はこの規定に従ってください。 1. 編集方針 1.1 本誌の目的 本誌は,情報の整備・流通・活用の各段階に関わる方々が経験と知識や知恵を出し合い,共有し,話し合うた めのステージを提供し,情報の生産から利用の「情報のサイクル」を活性化させることによって,日本の情報科 学技術や情報リテラシーの普及・向上を通じて科学技術振興の基盤整備に寄与することを目的としています。 1.2 発行形態 本誌は,Web 版「情報管理」(PDF および HTML)と,冊子体「情報管理」によって発行します。 1.3 主題範囲と掲載記事の種類 情報の整備・流通・活用に関する幅広い主題範囲を扱います。例としては, 学術情報流通,データベース,デジタルコンテンツ,情報加工,情報提供・利用,情報技術, 規格・標準,人材育成,知的財産,情報生活,図書館・情報センター,情報政策・制度 等 が挙げられます。 記事は,総説・解説,事例報告,原著論文,対談・座談会,講演,集会報告,図書・ニュースの紹介,エッセー・ オピニオンなど多岐にわたります。 1.4 対象読者 本誌は以下のような読者を対象としています。 *企業・大学・図書館などで,情報を扱う業務に日ごろ従事している方々 *研究・企画や営業などの専門業務にあたって情報を発信・利用している方々 *オピニオンリーダー,組織の意思決定に携わる方々 *情報に関心を持つ一般の方々 2. 投稿にあたって 国の内外から広く,投稿原稿を受け付けています。 2.1 原稿の種類 総説・解説,事例報告,原著論文のいずれかに該当し,媒体を問わず他の出版物に発表されていない原稿を 受け付けます。原稿は原則として日本語とします。主題は,1.3 に示した本誌の主題範囲を対象とします。 2.2 査読と受理 投稿原稿は編集委員会で査読し,受理の可否を決定します。原稿の評価は,内容の質と独創性,読者にとっ て幅広い関心主題であるか否かに重点をおきます。また,査読の結果をもとに著者に対し原稿内容の改善,な いし修正をお願いすることがあります。なお,査読の後,受理を決定した日をもって原稿の受理日とします。 2.3 著作権 本誌に受理され,掲載された記事の著作権は科学技術振興機構に帰属します。記事の利用にあたっては 「『情報管理』誌著作権規定」に示した手続きに従ってください。 3. 執筆要項 別紙「『情報管理』誌 原稿の書き方」に従って執筆してください。 3.1 原稿の文字数と使用文字 本文の文字数は,1 記事 6,000~8,000 字(図表込みで刷り上がり 6~8 ページ)を目安とします。 原則として常用漢字を用います。使用可能文字種は JIS 第二水準です。英数字は半角を用います。 3.2 提出方法 電子化したものを提出してください。本文は MS Word 形式とします。図表の形式については,「原稿の書き 方」の 4 に従ってください。 本文,写真,図,表は,それぞれ別ファイルとして用意し,原稿提出票とともにメール添付で下記編集 事務局宛てにお送りください。 〒102-8666 東京都千代田区四番町 5 番地 3 独立行政法人 科学技術振興機構 「情報管理」編集事務局 Tel. 03 (5214) 8406 Fax. 03 (5214) 8420 E-mail: [email protected] 4. 掲載にあたって 受理が決定した原稿は,以下のように取り扱います。 4.1 著者校正 初校時に 1 回のみ著者校正をお願いします。 4.2 別刷りの提供 掲載記事 1 件につき,本誌 1 部と別刷り 10 部(表紙なし)を贈呈します。さらに別刷り(表紙あり,有料)を希望 される場合は,受理後に事務局からお尋ねしますので,印刷手配前にお申し込みください。最低 50 部,以降 10 部単位の印刷部数(60 部,70 部,80 部…)としてください。 4.3 原稿料 掲載した原稿については,当機構の規定に基づき,所得税法に定める源泉徴収を行ったうえ,原稿料をお支 払いします。 2014 年 4 月 1 日 「情報管理」誌 原稿の書き方 1 記述項目 以下の項目を順に記述してください。 (1) 標題(和文および英文) (2) 著者名(日本語およびローマ字) (3) 著者の所属機関名および部署名(和文および英文) (4) 著者の所属機関の住所(和文および英文),電話番号,E-mail アドレス ※著者が複数の場合,(2)~(4)をそれぞれ記述してください。 (5) 著者抄録( 和文お よ び 英文) : 抄録は 「 科学技術情報流通技術基準 抄録作成( SIST 01 ) <http://sti.jst.go.jp/sist/pdf/SIST01.pdf>」を参考にして作成してください。なお,抄録の長さは,和文抄録 が 200~400 字,英文抄録が 100~200 語程度です。抄録は和文,英文両方を提出してください。 (6) 著者付与キーワード(和文および英文):和文キーワードに対応する英文キーワードを記載してください。 キーワードの数は 5~10 個までです。 (7) 本文 (8) 注記 (9) 参考文献:参考文献としては,必ず本文に引用個所のある文献を挙げてください。 2 章,節などの見出し 章,節などの見出しには,ポイントシステムを使用してください。 → 1. はじめに 例 第1章 第 2 章,第 1 節 → 2.1 「情報管理 Web」とは 第 2 章,第 1 節,第 1 項 → 2.1.1 「情報管理」誌の電子化 項以下の細分 → (2) XML 化 3 文章と句読点 文章は「である」調とし,簡潔で明確に表現してください。句読点は(,)および(。)を使用します。 4 図・写真および表 (1) 図・写真および表には一連番号を付与し,簡潔なタイトルを付けてください。写真は図として扱います。 例 「図 1 システム構成」,「図 2 サーバ構成」…,「表 1 システム仕様」,「表 2 コンテンツ一覧」 (2) 図・写真および表の挿入個所は,本文原稿内に,「←図 1」,「←表 2」のように指定してください。 (3) 図・写真および表の刷り上がりの大きさは,特に執筆者の指定がない限り当編集委員会に一任するものと します。 (4) 画像の解像度は 300dpi 以上にしてください。 (5) 図および表データは MS Word,Excel,PowerPoint で作成したものを提出してください。 (6) カラーの図表は,冊子体ではモノクロ印刷になることを想定して,配色等にご注意ください。なお,Web 版お よび html 版ではそのままカラーで表示されます。 5 動画 (1) 各動画には一連番号を付与し,簡単なタイトルを付けてください。 (2) PDF および冊子用に,特徴的な静止画像を添えてください。解像度は 300dpi 以上としてください。 6 参考文献と注記 (1) 参考文献と注記は分けて記載してください。 (2) 参考文献については,本文の引用個所の右肩に引用ないし参照した順に,1),2),3)…のように一連番号を 付けてください。 例 …については,1995 年の調査 2)があるが,… (3) 本文の後に,参考文献の書誌事項を上記の番号順に記載します。上記のように,参考文献欄には本文に引 用参考個所のある文献のみを記載してください。 (4) 参考文献の記載は「科学技術情報流通技術基準 参照文献の書き方(SIST 02)」 <http://sti.jst.go.jp/sist/pdf/SIST02-2007.pdf> に従います。7 に記載例を示します。 (5) 注記を使用する場合は,本文の該当個所の右肩に,注 1),注 2)…のように注番号を入れます。 (6) 注記の内容は,本文の後,参考文献の前に,上記の番号順に記載してください。 7 参考文献の記載例 (SIST 02 参照文献の書き方 からの抜粋) (1) 雑誌記事を引用する場合 雑誌 連番) 著者名.論文名.雑誌名.出版年,巻,号,p.始めのページ-終わりのページ. 例 1 西潔,石原和弘.火山地域における震源計算についての提案.火山.2003,vol.48,no.5, p.407-413. 例 2 Pisciella, Paola; Pelino, Mario. FTIR spectroscopy investigation of the crystallisation process in an iron rich glass. Journal of the European Ceramic Society. 2005, vol. 25, no.11,p.1855-1861. 例 3 下山昌彦.セキュリティスキャナを用いた偽札の新しい検査手法の開発.CICSJ Bulletin.2005, vol.23,no.3,p.95-98.http://www.jstage.jst.go.jp/article/cicsj/23/3/23_95/_article/-char/ja/, (accessed 2006-03-07). (電子ジャーナルの場合-入手先,(入手日付).を加える。) (2) 図書を引用する場合 図書 連番) 著者名.書名.版表示,出版者,出版年,総ページ数 p. 例 4 照明学会編.照明ハンドブック.第 2 版,オーム社,2003,573p. 例 5 Frenkel, D.; Smit, B. Understanding Molecular Simulation: From Algorithms to Applications. 2nd ed., Academic Press, 2002, 664p. 例 6 鵜飼保雄.“遺伝率の相対性”.量的形質の遺伝解析.医学出版,2002,p.109-110. (図書の一部を参照した場合) (3) Web ページ,Web サイトを引用する場合 Web ページ 連番) 著者名.“Web ページの題名”.Web サイトの名称.入手先,(入手日付). Web サイト 例 7 坂本和夫編.“パルスレーザーアブレーションにおけるドロップレットフリー薄膜の作製技術” J-STORE.http://jstore.jst.go.jp/cgi-bin/techeye/detail.cgi?techeye_id=32,(accessed 2006-0623). 2010 年 4 月 1 日制定 「情報管理」誌著作権規定 (目的) 第 1 条 本規定は,「情報管理」誌(Web 版,冊子版を含む。以下,本誌)に掲載される著作物に関する著 作権の取り扱いに関する基本事項を定める。 (定義) 第 2 条 本規定において,次の各号に掲げる用語は,当該各号に定める意義を有する。 (1)本著作物 著作権法第 2 条第 1 項第 1 号に規定するものであって,以下のいずれかに該当するもの をいう。 ① 本誌に掲載される論文,解説記事等(本編集委員会の依頼に基づくものを含む) ② 本誌に掲載される活動報告,エッセー等(本編集委員会の依頼に基づくものを含む) ③ その他前記①および②に類するものであって本編集委員会が指定するもの (2)本著作者 著作権法第 2 条第 1 項第 2 号に規定するものをいう。 (3)本著作財産権 本著作物の著作財産権をいい,著作権法第 21 条(複製権),第 22 条(上演権及び演 奏権),第 22 条の 2(上映権),第 23 条(公衆送信権等),第 24 条(口述権),第 25 条(展示権),第 26 条(頒布権),第 26 条の 2(譲渡権),第 26 条の 3(貸与権),第 27 条(翻訳権,翻案権等)及び第 28 条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)に定めるすべての権利を含む。 (4)本著作者人格権 本著作物に関する著作者人格権をいい,著作権法第 18 条(公表権),第 19 条(氏 名表示権)及び第 20 条(同一性保持権)に定めるすべての権利をいう。 (著作権の帰属) 第 3 条 本著作財産権は,すべて独立行政法人科学技術振興機構(以下,当機構)に帰属する。 2 本著作財産権は,投稿後,本編集委員会により本著作物の受理が決定された時点をもって 当機構に譲渡されたものとする。 3 特別な理由により前二項に定める取り扱いが不可能である場合,本著作者は投稿を行う際 にその旨を当機構に対して書面で申し出るものとし,かかる場合の取り扱いについては,本 編集委員会及び本著作者の協議によって定める。 4 前項に定める場合であっても,本著作者は,法令及び前項に定める特別な理由の許容する 範囲において,当機構に対し,本著作財産権について国内外で無償で独占的に利用する (複製,公開,送信,頒布,譲渡,貸与,翻訳,翻案及び二次的著作物の利用を含む)権利を 許諾(有償無償を問わず,当機構がサブライセンスを行う権利を含む)するものとする。 5 投稿された本著作物が本誌に掲載されないことが決定された場合,当機構は,本著作財産 権を本著作者に対して返還する。 (著作者人格権の不行使) 第 4 条 本著作者は,当機構及び当機構が本著作物の利用を許諾した第三者に対し,本著作者人格権 を行使しない。 2 前項の規定は,当機構及び当機構が本著作物の利用を許諾した第三者が,本著作物を原著 作物として二次的著作物を作成した場合においても適用される。 3 当機構は,当機構が二次的著作物を創作する場合及び第三者に本著作物の利用を許諾する 場合には,本著作者にその旨を通知する。 (著作者による著作物の利用) 第 5 条 本著作者は,当該本著作者が創作した本著作物を利用する場合(第三者に利用を許諾する場合 を含む),その利用目的等を当機構が別途定める事項を記載した書面により当機構に申請し, その許諾を得るものとする。 2 当機構は,当該本著作物の利用が,本誌の発行目的又は活動の趣旨に反しない限り,前項 に定める本著作者からの申請を許諾する。 3 第 1 項の規定にかかわらず,本著作者は,次の各号に定める場合には,当機構の許諾を得 ることなく本著作物を利用できるものとする。なお,利用にあたっては出典(本誌誌名,掲載 巻号,ページ,DOI等)を明記する。 (1)本著作者個人又は本著作者が所属する法人若しくは団体のWebサイトにおいて,当該本著 作者が創作した本著作物を掲載する場合(機関リポジトリへの保存及び公開を含む) (2)著作権法第 30 条から第 50 条(著作権の制限)において許容された利用 (著作者による保証等) 第 6 条 本著作者は,本著作物が,①第三者の権利を侵害していないこと,②本著作物が二重投稿では ないこと,及び③本著作物が共同著作物である場合には,当機構への投稿を行うにあたり,当 該共同著作物の他の著作者全員の同意を取得していることを保証する。なお,本著作者は,本 著作物において第三者の著作物を引用する場合には,出典を明記する。 (二重譲渡の禁止) 第 7 条 本著作者は,当機構以外の第三者に対し,本著作物に係る一切の著作財産権の譲渡及びその 利用許諾(出版権の設定を含む)をしてはならない。 (紛争解決に関する協力) 第 8 条 本著作物に関する第三者からの権利侵害又は本著作物による第三者に対する権利侵害等,本 著作物に関して紛争が発生した場合又は発生するおそれがある場合,本著作者及び当機構は 相互に協力してこれに対処する。 (協議) 第 9 条 本規定に定めなき事項及び本規定の各条項の解釈に疑義が生じた場合,本著作者及び当機構 は,信義誠実の原則に従って協議し,これを解決するものとする。
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