PEN July - 長野県テクノ財団

PEN July
PEN
ISSN 2185 - 3231
Public Engagement with Nanobased Emerging Technologies
N E W S L E T T E R
July 2011
Volume 2, Number 4
1
PEN July
Table of Contents
海外動向 ………………………………………………………………………… 3
短期集中連載 李仁植氏語る ①……………………………………………… 8
研究人材募集のお知らせ………………………………………………………… 11
寄稿 欧米における " ナノ材料規制 " の現状と雑感…………………………… 12
国内動向 ………………………………………………………………………… 16
特集 IT バブルはなぜ起き、 何をもたらしたのか……………………………… 23
Cutting-Edge Technologies
プレスリリースより…………………………………………………………… 28
豊蔵レポートより…………………………………………………………… 41
台湾 ITRI " 奈米快訊 " より………………………………………………… 53
イベント案内……………………………………………………………………… 57
編集後記………………………………………………………………………… 59
Column 草原の宝石 ミドリシジミ………………………………………………………………………………… 22
Cover:霞ヶ浦の朝
霞ヶ浦は西浦と北浦からなる、茨城県の面積の三分の一近くを占め
る日本で 2 番目に広い湖面と、日本一の湖岸の長さを誇る湖です。
魚介類が豊富で縄文の昔から周辺に住む人々の暮らしを支えてきま
した。湖岸や隣接する市町村には古墳や貝塚など多くの遺跡が残っ
ています。今でも、朝もやをかき分けて湖岸近くの仕掛けを見回る
姿は珍しいものではありません。霞ヶ浦では、ウナギ、ワカサギ、
シラウオなどが採れ、つくだ煮や甘露煮などの加工業も盛んです。
霞ヶ浦には、日本に 2 カ所しかない、海と同じ法律が適用される「海
区」が設定されています。
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海外動向
【政策】
JRC-IHCP は調査結果を分析し、吸入、繰り返しの皮膚接触、
EC、2012 年のナノテクノロジー研究で取り組むべき優先
損傷のある皮膚からの吸収に関する毒性データの収集、職
課題を公表(2011.7.4)
場や消費者の吸入ばく露データの収集に重点を置くべき、
欧州委員会(EC)は、
「ナノサイエンス・ナノテクノロジー、
と述べている。
材料、新製造技術(NMP)
」研究において 2012 年に優先
http://ihcp.jrc.ec.europa.eu/our_activities/nanotechnology/nano-titanium-dioxide-
して取り組むべき課題をまとめた。EC の提案では、持続
可能性と社会的課題に重点が置かれ、エネルギーとエネル
human-health-risk-assessment
http://informahealthcare.com/doi/abs/10.3109/17435390.2010.504899
ギー効率、環境問題と持続可能な発展、原材料、健康と安
全、未来型の工場、エネルギー効率の良い建築、環境に優
しい車(グリーンカー)を優先課題としている。
http://ec.europa.eu/research/industrial_technologies/pdf/nmp-2012-orientationpaper_en.pdf
【EHS】
米国 IATP、ナノテクノロジー規制の欠如は健康・環境に
悪影響(2011.6.29)
米国の農業・貿易政策研究所(IATP)は、農業分野での
ナノテクノロジー応用に対する規制の欠如についてまとめ
【EHS、規制策】
オランダ、EU にナノ材料規制法の策定を促す(2011.6.30)
オランダは、6 月 21 日に開催された欧州連合(EU)の環
境審議会で報告書「Risks associated with nanomaterials」
を提出し、ナノ材料の定義、登録の義務化、リスク評価を
盛り込んだ包括的な規制策の策定を EU に要請した。
http://www.nanotech-now.com/columns/?article=552
た報告書「Racing Ahead- U.S Agri-Nanotechnology in the
Absence of Regulation」を公表した。IATP は、食品と農
業へのナノテクノロジーの応用は、健康・環境への影響を
防ぐために、規制策を定め、製品化の前にテストしなけれ
ばならないと主張。
http://www.tradeobservatory.org/library.cfm?refID=108034
http://www.iatp.org/iatp/press.cfm?refid=108035
http://register.consilium.europa.eu/pdf/en/11/st11/st11626.en11.pdf
【政策】
【EHS】
二酸化チタンの健康リスク評価の可能性と課題に関する論
文(2011.6.30)
欧州共同研究センターの健康・消費者保護研究所(JRCIHCP)は、公開された文献を基に、ナノサイズの二酸化
チタンの健康リスク評価の可能性と課題を調査し、論文
「Nano-TiO2 – feasibility and challenges for human health
risk assessment based on open literature」
として公表した。
EC の高度専門家グループ、未来産業技術の促進に関する
報告書を公表(2011.6.28)
欧州委員会(EC)は、高度専門家グループがまとめた未
来産業技術(KET)と欧州市場に関する最終報告書を公表
した。高度専門家グループは、ナノテクノロジー、マイクロ・
ナノエレクトロニクス、先端材料、フォトニクス、工業用
バイオテクノロジー、先端的製造システムの 6 つの技術を
重要な KET として、欧州の競争力を維持、向上させるた
めに戦略的に取り組むべきとしている。高度専門家グルー
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プは、技術開発、製品化、競争力のある生産方法の 3 つの
【EHS】
ステージに分けて KET の育成に取り組むことも提言した。
製品形状の工夫で環境中への意図しないナノ材料の排出を
http://europa.eu/rapid/pressReleasesAction.do?reference=IP/11/796&format=HTM
防ぐ(2011.6.24)
L&aged=0&language=EN&guiLanguage=en
最終報告書
http://ec.europa.eu/enterprise/sectors/ict/files/kets/hlg_kets_report_en.pdf
欧州連合の研究プロジェクト NanoHouse の支援を受けた
スイス連邦材料試験研究所の研究グループが、新製品の開
発や政策の検討材料として参照可能な繊維・建築資材向け
のナノ材料の健康・環境影響のリスク評価基準を公開した。
【医療応用】
金属酸化物ナノ粒子で腫瘍の破壊に成功(2011.6.27)
韓国延世大学の研究グループは、金属酸化物ナノ粒子を用
いてマウスの腫瘍のみを破壊することに成功した。2 種類
の異なる磁性材料から金属酸化物ナノ粒子を作製すること
文献調査と数学モデリングを組み合わせた研究から、デザ
インが非意図的なナノ材料の排出に影響すると指摘し、製
品形状の工夫とライフサイクルのデータを活用することで
製品開発の過程で適切な選択が可能になると分析してい
る。
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21858.php
で、高周波の熱変換効率を十分に高めることができた。
http://www.natureasia.com/en/highlights/details.php?id=1322
【リスク管理、EHS】
【医療応用】
多種類のがん治療に応用可能な治療方法の開発に成功
(2011.6.27)
DNA を修復するタンパク質 PARP を薬剤で阻害すると、
がん細胞の増殖を抑えることができる。ただし、この治療
法は BRCA 遺伝子が変異するタイプの乳がんや卵巣がんに
しか効果がない。しかし、ハーバード大学医学部とダナ・
ファーバー癌研究所の共同研究チームが開発した BRCA 遺
伝子の活性を調節する酵素を阻害する治療法は、BRCA 遺
伝子の変異がないがんの治療も可能とのこと。
ノルウェーで EHS 関連の新しい情報共有の試み始まる
(2011.6.24)
ナノ粒子の海洋生物への影響を研究する化学者である
Andy Booth 氏は、ナノ材料の健康・環境影響に取り組む
ためのサイト SafeNano Norway を立ち上げた。ナノテク
ノロジー研究と健康・環境影響の研究の橋渡しの役割を担
うことを目指している。Booth 氏は企業と研究者の連携を
進めることが、市民の信頼を育むことにもつながると期待
している。
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21863.php
http://www.sintef.no/Projectweb/SafeNanoNorway/
http://www.nature.com/nm/journal/vaop/ncurrent/full/nm.2377.html
*以上 2 件はシャープ(株)山根秀信様より情報を提をい
ただきました。
【EHS、政策】
EC、労働衛生関連法規の見直しに着手(2011.6.24)
欧州委員会(EC)は、作業環境におけるナノ材料とナノ
【EHS、化粧品】
環境 NGO、FDA のナノテクノロジー製品ガイドラインを
批判(2011.6.24)
環境 NGO の Friends of the Earth(FoE)は、米国食品医
薬品局(FDA)が公開したナノテクノロジー製品に関する
テクノロジーの影響を明らかにし、関連の欧州連合の労働
衛生法規の改訂の必要性、改訂の内容や範囲について検討
するためのデータを収集すべく調査研究の公募を行ってい
る。公募の締め切りは 2011 年 7 月 19 日である。
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21864.php
ガイドラインについてコメントを公表した。FoE は、FDA
のガイドラインを、日焼け止め等の化粧品に使われている
ナノサイズの成分についてきちんとした検討がされていな
い、と批判している。FoE と共にコメントを出した国際技
術評価センターは、5 年前に FDA に申し立てた事項のい
ずれも対応がなされいないことに、失望したと述べている。
http://www.foe.org/new-fda-sunscreen-rules-called-blind-nanotechnology
【政策、産学連携】
米国政府、先端的な製造技術の研究開発で米国の復権を目
指すプロジェクトを開始(2011.6.24)
オバマ大統領は、先端的製造技術パートナーシップ(AMP)
プログラムを立ち上げ、米国がバイオテクノロジー、ナノ
テクノロジー、ロボット技術など先端的な製造技術の研究
開発で主導的な地位を取り戻すために、企業、大学、連邦
政府の 3 者が積極的に連携するように要請した。本プログ
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サス大学のグループが開発したろ過装置によって汚染物質
る。AMP への初期投資は 5 億ドルの予定で、既存のプロ
を除去したきれいな CNT では細胞に有害な影響は現れな
グラムや研究計画を最大限に活用して実施される予定。
かった。
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21861.php
http://www.eetimes.com/electronics-news/4217099/Carbon-nanotubes-not-toxic-researchers-say
【リスク管理、政策】
適切な管理手法がナノテクノロジー製品化に必要
(2011.6.23)
ノースカロライナ州北部の 3 都市では、地域内の複数の
大学に跨る研究機関の設置やスタートアップ企業の誘致な
ど、研究開発と支援が盛んに行われている。連携研究機関
に所属する研究者らは、規制策の行方が将来の米国の基礎
研究の競争力にも大きな影響を及ぼす可能性があると考え
ている。また、同地域に拠点を置く QuarTek 社の代表は、
規制当局が消費者に対する説明を避けていることが製品化
の妨げとなっていると指摘する。大学共同研究センターの
PEN July
ラムにより高度な技術職の雇用機会の増加も期待されてい
【食品、政策】
食 品 へ の ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー の 応 用、 情 報 共 有 さ れ ず
(2011.6.21)
食品関連企業や研究機関は熱心にナノテクノロジーの製品
応用を研究しているが、その事実についてはあまり積極的
に語りたがらない。この傾向には米国の食品医薬品局が明
確なナノテクノロジーの食品応用についての指針を示して
いないことが影響している指摘されている。
http://www.foodsafetynews.com/2011/06/many-eager-to-use-nano-in-food-butwont-admit-it/
James Ryan 氏は、リスクを明らかにし、低減する手順を
開発するといった常識的な取り組みが、ナノテクノロジー
の製品化に道を開くだろうと述べている。
h t t p : / / w w w. i n d u s t r y w e e k . c o m / a r t i c l e s / n a n o t e c h n o l o g y _ f a c e s _ n e w _
challenges_24850.aspx
【製品化、政策】
ロシアの小売業界、ナノテクノロジーで市場を活性化する
プロジェクトに着手(2011.6.20)
ロシアの小売最大手 X5 Retail Group は、投資ファンドの
RUSNANO、通信大手 SITRONICS と共同でナノテクノロ
【政策、医薬品】
FDA、 ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー の 医 薬 品 応 用 の 規 制 に 苦 慮
(2011.6.22)
ジーを用いて小売業界を活性化させるプロジェクト「Store
of the Future」を立ち上げた。プロジェクトは、無線 IC
タグ(RFID)開発とロシアの小売業界への導入を計画して
米国食品医薬品局(FDA)は、医薬品や医療機器へのナノ
いる。2013 年までの 2 年間で 3 億 5 千万ルーブルを投じ
テクノロジーの応用の研究開発の進展が著しいことに鑑み
る予定。
て、規制を強めると決定した。また、FDA が規制する製品
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21794.php
分野にナノテクノロジーがどのような影響を及ぼすのか早
急にデータを収集するとしている。FDA の規制策の中核
は、ナノテクノロジーの医薬品・医療機器分野への応用の
安全ガイドラインになると予想される。医薬品の開発に従
事する研究者は、FDA の動きを実際に医療の現場でナノテ
【EHS、リスク管理】
効 率 的 に CNT か ら 不 純 物 を 除 去 す る 方 法 を 開 発
(2011.6.20)
クノロジーを応用するための重要な第一歩として歓迎して
米国の半導体研究コンソーシアム SRC は、SEMATECH、
いる。
テキサス大学ダラス校と共同で有害な有機系不純物を単層
http://www.webmd.com/healthy-aging/news/20110621/fda-prepares-for-
カーボンナノチューブ(CNT)から除去する方法を開発し
nanomedicine-revolution
た。本手法はシンプルで、かつコストも低く抑えることが
できる。
http://dallas.citybizlist.com/16/2011/6/20/Semiconductor-Research-Corporation-
【EHS】
テキサス大学の研究グループ、CNT を精製するろ過装置の
and-UT-Dallas-Identify-CostEffective-Method-for-Eliminating-Contaminants-FromCarbon-Nanotubes.aspx
開発に成功(2011.6.21)
テキサス大学の研究グループは、カーボンナノチューブ
(CNT)の毒性の発現は製造プロセスでの汚染によるもの、
との研究成果を公表した。カルボキシル化された CNT が
哺乳類の細胞に有害な影響を与えるとされているが、テキ
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【EHS、製品化】
ら積極的に進めている化学物質管理策改革の一環である。
BASF 社、ナノサイズの粒子を含む製品から発生する塵に
ToxCastDB は、300 種以上の環境化学物質に関するデー
特有の有害性はない(2011.6.20)
タのダウンロードが可能で、今後も収載される化学物質
ドイツの化学品メーカー BASF 社の研究グループが、ナノ
の種類は増える予定。ExpoCastDB は、家庭や保育所の計
粒子あるいはナノチューブを含有する材料を様々な方法
測データを統合したデータベースで、食品、飲料水、空気、
で破砕し、発生した塵を計測したところ、ナノサイズの
塵、室内表面、尿に含まれる化学物質量の計測データも
成分を含まない材料から発生する塵よりも細かいサイズ
含まれている。
ではないことが明らかになった。ラットを用いた暴露試
ToxCastDB: http://actor.epa.gov/actor/faces/ToxCastDB/Home.jsp
験でもナノ材料を含む製品から発生した塵による特別な
ExpoCastDB: http://actor.epa.gov/actor/faces/ExpoCastDB/Home.jsp
影響は見られなかった。
http://www.rsc.org/chemistryworld/News/2011/June/16061102.asp
【研究開発動向、コミュニケーション】
【国際協力】
韓国・ロシア・シンガポール、ナノテクノロジー基金創
設へ(2011.6.16)
韓国知識経済部所管の産業技術振興院(KIAT)とロシア
のナノテクノロジー投資ファンド RUSNANO は、ナノテ
クノロジー分野で有望な技術開発を行う企業の育成およ
び製品化を支援するため、共同基金を設立する覚書を締
結した。両国は 50% ずつ出資し、ナノテクノロジー融合
Observatory NANO、水浄化へのナノテクノロジー応用に
関するレポート公開(2011.6.15)
欧州連合の第 7 次フレームワークプログラム(FP7)の研
究プロジェクト Observatory NANO は、ナノテクノロジー
を用いた新しい水浄化技術の研究開発動向、社会への影
響の分析、欧州とその他の地域との現状の比較、につい
てまとめたレポートを公開した。
http://www.nanoforum.org/nf06~modul~showmore~folder~99999~scc~news~sc
id~4222~.html?action=longview&
分野に 1 億ドルを投じる予定。ロシアの基礎研究と韓国
の製品化力に、シンガポールのネットワーク力を加えて、
ナノテクノロジー分野のグローバル企業の育成を目指す。
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21763.php
【医薬品、研究開発】
ナノ粒子によって神経性疾患が抑えられる可能性
(2011.6.14)
ミシガン大学の研究グループが、適切な形状を持たせた
【EHS】
ECHA、要許可取得リストへの移管候補 13 物質に対する
パブリックコメント募集(2011.6.15)
欧州化学品庁(ECHA)は、欧州の化学物質管理のための
枠組みである REACH 規則に基づき、高懸念物質(SVHC)
ナノ粒子によってアルツハイマー症などの神経性疾患を
引き起こす神経細胞を破壊することに成功した。アルツ
ハイマー症を予防する医薬品の開発に弾みがつくと期待
される。
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21736.php
リストに掲載されていた 13 物質を新たに認可対象物質と
して要許可取得リストに移した。本決定に関して 9 月 14
日までパブリックコメントの募集が行われる。
【保険リスク】
http://echa.europa.eu/news/na/201106/na_11_26_public_cons_inclusion_of_
ISO、ナノテクノロジーと代替エネルギーに対する新たな
susb_in_auth_list_en.asp
標準約款を公表(2011.6.13)
http://blogs.edf.org/nanotechnology/2011/06/20/more-progress-under-reach-13more-chemicals-en-route-to-the-authorization-list/
米国の損保情報サービス機関 ISO は、新たにナノテクノ
ロジーと代替エネルギー資源に関する標準約款を発表し
た。ナノテクノロジーの標準約款は、販売代理業者向け
【化学物質管理策】
EPA、化学物質データへのアクセスを容易に(2011.6.15)
米国環境保護庁(EPA)は、2 種類の化学物質データベー
スを公開した。毒性予測データベース(ToxCastDB)とば
く露データベース(ExpoCastDB)である。誰でも化学物
質の毒性やばく露に関するデータを入手することが可能
となる。データベースの整備は EPA が新体制になってか
6
と製造事業者向けの 2 種類。第 3 者への販売と製造・加
工リスクが加味されている。代替エネルギーの標準約款
には、バイオ燃料、太陽エネルギー、風力エネルギーの
リスクが含まれている。新たな標準約款は 2011 年 9 月
から適用される。
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21729.php
欧 州 労 働 組 合 連 合、EC に ナ ノ 材 料 情 報 の 収 集 を 要 求
(2011.6.13)
【アウトリーチ、科学リテラシー】
NSF、 科 学 と 親 し む iPad 向 け の ア プ リ の 提 供 を 開 始
(2011.6.9)
欧州労働組合連合付属研究所(ETUI)は、
欧州委員会(EC)
米国科学財団(NSF)は、iPad 向けのアプリ「Science360
に対して、ナノ材料を構成成分とする製品についての情
for iPad」の提供を開始した。より多くの人が科学に親し
報を提示するようにメーカー側に要求すべきだと述べた。
むことができるように、最新の科学技術に関連する様々
ETUI の調査チームは、製品化の進展に比べて健康・環境
な情報を、映像資料を活用した丁寧な解説を加えて提供
影響についての研究は遅れ気味であると指摘し、市場に
する。
ある製品に関する総合的なデータを早急に揃える必要が
http://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=119789
あるとしている。
PEN July
【政策、リスク管理、製品表示】
http://itunes.apple.com/us/app/science360-for-ipad/id439928181?mt=8
http://www.foodproductiondaily.com/Quality-Safety/EU-wide-nanotech-registervital-to-ensure-safety-says-body/?c=0Flk0DMKh%2FNqxz0gCmMq%2BQ%3D%3D&
undefined
【EHS、政策】
米国、ナノテクノロジー・ナノ材料の応用の規制に関す
【コミュニケーション、食品】
る政策大綱を公表(2011.6.9)
大統領府科学技術政策局、行政管理予算局、通商代表部
食品企業はメディアと積極的に建設的な関係を構築する
の 3 者で構成される新興技術に関する省庁間調整委員会
ことが肝要(2011.6.13)
は、ナノテクノロジーとナノ材料の応用の規制策を連邦
食品素材見本市で講演を行ったジャーナリストの Michael
Specter 氏は「食品や農業に関する議論を行うための科学
的リテラシーの欠如が建設的な議論を妨げている。食品
科学の専門家はメディアや無関心な市民を批判するので
はなく積極的に議論に加わるべき」と語った。
政府の各組織が決定する際の判断の基礎となる指針「ナ
ノテクノロジーとナノ材料の応用に関する規制・監督に
かかわる政策の原則」を公表した。
http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/omb/inforeg/for-agencies/
nanotechnology-regulation-and-oversight-principles.pdf
http://www.foodnavigator-usa.com/Financial-Industry/IFT-keynote-Galileo-isturning-in-his-grave.-But-is-Matt-Damon-the-answer
【EHS、規制策】
【EHS】
FDA、ナノ材料・ナノテクノロジーの規制についてガイ
ドラインを公開(2011.6.9)
米国食品医薬品局(FDA)は、企業向けのガイドライン
を公開し、パブリックコメント意見を募集している。本
ガイドラインは、FDA の規制対象となる製品類で用いら
れるナノ材料やナノテクノロジーについての FDA の考え
EPA、殺虫剤に用いられているナノスケール材料に関して
情報提供の要請を検討(2011.6.9)
米国環境保護庁(EPA)は、殺虫剤に用いられているナノ
スケール材料に関する情報の収集方法を検討しており、7
月 18 日までパブリックコメントを募集している。
http://www.epa.gov/pesticides/regulating/nanotechnology.html
http://yosemite.epa.gov/opa/admpress.nsf/0/05ff063e9205eb3c852578aa005aa
0f8?OpenDocument
方を示したもの。
http://news.yahoo.com/s/usnw/20110609/pl_usnw/DC17426_1
http://www.fda.gov/RegulatoryInformation/Guidances/ucm257698.htm
http://www.fda.gov/ScienceResearch/SpecialTopics/Nanotechnology/ucm258391.
htm
【製品化、食品】
Stora Enso 社、ナノ包装材製造プラント建設計画を公開
(2011.6.8)
フィンランドの Stora Enso 社は、同社が開発したナノ材
【政策、標準化】
料を用いた超軽量素材を製造するプラント建設について
NANOTEC、タイの工業規格にナノテクノロジーが及ぼす
明らかにした。新プラントでは、段ボールなどの包装材
影響について調査(2011.6.9)
の軽量化を可能にするマイクロファイバー化セルロース
タイ国立ナノテクノロジーセンター(NANOTEC)は、タ
用いた材料を製造する。新プラントはフィンランド東部
イ工業規格協会と共同でナノテクノロジーがタイの国内
の都市 Imatra に建設予定で、2012 年には乳製品やジュー
工業規格に及ぼす影響について調査を開始した。
ス等の液体用包装材の製造に入ることを目指している。
http://www.nanotec.or.th/en/?p=2607
http://www.foodproductiondaily.com/Packaging/Stora-Enso-hails-packaging-stepchange-as-plans-for-pre-commercial-nano-plant-unveiled/?c=0Flk0DMKh%2FPQPv
0DDkujHg%3D%3D&undefined
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PEN July
短期集中連載 李仁植氏語る ①
分子アセンブラを考える
知識融合研究所所長 / 韓国科学技術院兼任教授 / サイエンスライター 李仁植
今月から韓国のサイエンスライター李仁植(イ・インシク)
氏によるコラムの短期集中連載を始めます。韓国の研究
開発の動向、政策、国内での科学技術の認識など、科学
技術を取り巻く韓国の現状を数回に分けてお届けします。
李仁植氏は、ソウル大学電子工学科卒業後に国家科学技術
諮問会議の委員等を歴任し、現在は知識融合研究所の所
長を、また韓国科学技術院(KAIST)の兼任教授を務めて
います。韓国の新聞や雑誌などに約 600 編のコラムを寄
稿し、韓国の科学コラムニスト第 1 号と呼ばれています。
「知識の大融合」、「ナノテクノロジーが世の中を変える」
など約 30 冊の著書があります。
ナノテクノロジーの究極の目標は何だろう。ナノテクノ
べての製品を生産する未来の製造プロセスを分子製造
ロジーの理論家である米国の K. Eric Drexler は、1986 年
(Molecular Manufacturing)技術と名付けた。分子製造技
に出版した「創造する機械-ナノテクノロジー(Engines
術が産業に与える影響は少なくないだろう。アセンブラ
of Creation-The Coming Era of Nanotechnology)
」のなか
で製品の生産プロセスから原子一つ一つが完全にコント
で、分子アセンブラを開発することを主張した。アセン
ロールできるので、我々の想像つかないほど、様々な製
ブラは原子を少しずつ大きい分子の表面に付着させ、ほ
品の登場が期待される。
ぼ安定な形態で原子を再結合させるナノマシンである。
8
Drexler は、1991 年に妻と共同執筆した二番目の著書「未
Drexler は、2012 年 初 頭 に 出 版 予 定 の 新 著「Radical
来を解き放つ(Unbounding the Future)
」において、初
Abundance」の初稿で、このような製造プロセスを「原
めてのアセンブラの姿が見られる時こそ、ナノテクノロ
子 精 密 製 造(Atomically Precise Manufacturing; APM)
」
ジーの時代が幕を開けると前提しながら、特にナノテク
と名付けた。ナノテクノロジーの進展により、生産プロ
ノロジーによりインパクトが与えられる分野として製造
セスが APM に変わっていくと、物質文明に革命的変化が
と医療分野を挙げた。
起こり、人類が豊かになると主張している。
アセンブラが普及すると、製造分野に革命的な変化が起
ナノテクノロジーの活用により期待される、もう一つの
こる可能性が高い。今日我々のものづくりの方法は、原
分野はナノ医療(Nanomedicine)である。病気は大抵ナ
子を集団で動かすことである。しかしながら、アセンブ
ノメートルレベルで発生する。ウイルスは加工するに値
ラは原子一つ一つまで設計マニュアルに基づき積み上げ
するナノマシンである。このような自然のナノマシンに
ることができるので、物質の構造が完璧にコントロール
人工のナノマシンで対抗する方法以外に、効果的な戦略
できる。Drexler は多数のアセンブラが共同作業し、す
はないということがナノ医療の基本的な考え方である。
るだろう。しかし、いくら速いスピードだといってもこ
ロボットである。血流にのって航海するナノロボットは、
の程度のスピードは分子製造工場の運営には実質的に無
ナノセンサーから情報を得て、ナノコンピューターに保
意味なものである。一つのナノロボットが非常に少量の
存されている病原菌のデータと比較し、病原菌と判断す
生産品一つを作り出すのに数百万年がかかるからであ
ると直ちに撃退する。人体の免疫システムと変わらぬ装
る。
」
PEN July
ウイルスと戦うナノマシンは、潜水艦のように行動する
置である。
Smalley は Drexler のアセンブラが機能を果たすためには、
一方、細胞修復マシン(Cell Repair Machine)と呼ばれ
原子を一つずつ掴みあげ、ほしい位置に置く指(操作装置)
るナノロボットは、細胞の中まで入り、まるで車の整備
が付いていると仮定し、指にかかわる問題も指摘した。
士のように、損傷された細胞を修理する。このように、
理論的にナノ医療により治療できない病気はほとんどな
「ナノロボットによりコントロールされる空間の一面は 1
さそうに見える。もしかしたら人間の運命である老いと
ナノメートル程度しかない、非常に小さい場所というの
死まで予め防ぐことができるかもしれない。
を覚えておいてほしい。この空間の制約で、少なくとも
二つの難題が生じる。私はこれらを、一つは「太い指(fat
Drexler は、この文脈からナノテクノロジーが我々の物質
fingers)」問題、もう一つは「くっつきやすい指(sticky
を扱う方法を変えることに留まらず、社会のすべてのと
fingers)」問題と呼びたい。」
ころで革命的変化をもたらすと予測した。ナノテクノロ
ジーが Drexler の想像したとおりの進展を遂げなくても、
Smalley は、アセンブラに 5 ~ 10 本程度の指が付いてい
彼の業績は決して低く評価されることはない。なぜなら、
なければ、その機能が果たされないとし、同様の数の指
彼は、科学者たちがナノテクノロジーに目もくれなかっ
を密集して付けられるか疑問であると反駁した。原子を
た時代に、ナノテクノロジーの大切さを粘り強く訴え続
つまみあげたり、掴んだりする操作装置(指)は原子で
け、ナノテクノロジー時代の幕開けを早めるという大き
作らなければならないので、これ以上小さくすることは
な役割を果たしたからである。
不可能である。しかし、アセンブラが働く 1 ナノメート
ル程度の空間は 5 ~ 10 本の指を全部収容できるほど広く
しかしながら、Drexler のナノテクノロジー理論がすべて
はない。太い指で小さい部品を一つずつ運んで腕時計を
の科学者から全面的な支持を得ているわけではない。特
組み立てるのが容易ではないように、アセンブラが働く
に、分子アセンブラの概念とその実現の可能性について
空間の大きさに比べ、指はあまりも太くて分子組立が不
は批判もある。Drexler によると、一番目のアセンブラの
可能となるからである。Smalley はアセンブラの指がくっ
最初の仕事はまさに自分と全く同じのもう一つのアセン
つきやすいのも問題であると述べた。原子は一度指にくっ
ブラを作り出すことである。アセンブラはいわゆる自己
つくと取れにくいから、原子を目的の場所に置くのも容
複製能力をもつ分子マシンなのである。
易ではないだろう。アメがついた指で腕時計を組み立て
るのは不可能であるように、アセンブラの指で原子を運
アセンブラの概念に深刻な間違いがあると反論を提示し
ぶことも不可能であると主張する。
た、代表的な研究者は Richard Smalley である。1985 年
のフラーレン発見の功績で、1996 年にノーベル化学賞
Smalley は「指」の二つの問題は、根本的かつ避けられな
を授賞した。2001 年に米国の月刊科学雑誌「Scientific
い問題であると強調する。彼の批判に対し、Drexler も黙っ
American」9 月号への寄稿で、Drexler のアセンブラを批
ていたわけではない。2003 年、Drexler はアセンブラに
判した。まず、アセンブラでモノを組み立てるときにか
対する Smalley の批判について、公開討論の形式で反論
かる時間を問題視した。
を繰り広げた。彼は自然に存在する分子組立マシンであ
るリボソームの例を挙げ、分子アセンブラが不可能では
「ここ最近、原子単位でモノを調整したり構成したり、時
ないと主張した。その後、二人は 3 回にわたって公開の
にはアセンブラと呼ばれる非常に小さいロボットが想像
書簡を交わした。しかしながら二人はそれ以上の議論は
されるようになった。一つのアセンブラを想像してみよ
続けられなかった。2005 年 Smalley が亡くなったからで
う。この仮想のナノロボットは猛烈に作業しながら多く
ある。二人が交わした議論の内容は、2006 年に Drexler
の原子結合を新しく作り出すだろう。このナノロボット
の「創造する機械」の出版 20 周年を記念して発行された
は割り当てられた仕事をしながらおそらく一秒ごとに 10
電子版の「創造する機械 2.0」に付録として収録されてい
億個の新しい原子を願いどおりに構造物のなかに配置す
る。Drexler は、この電子版で分子アセンブラがまだ開発
9
PEN July
されていないことから、ナノテクノロジーが存在すると
は言えないと述べたこともある。
Book, 2005
[7]Michio Kaku, Physics of the Future, Doubleday, 2011
Drexler のアセンブラの概念を公に支持した科学者も少な
くない。代表的な人物は米国のコンピューター理論家で
ある Bill Joy である。Joy は 2000 年 4 月に、世界的な反
響を呼んだ「何故未来は我々を必要としないのか(Why
the future doesn’t need us)
」で、分子アセンブラの概念
への全面的な支持を表明し、自己複製するナノロボット
が地球全体を覆うグレイ・グー(grey goo)状態となると、
人類は最後の日を迎えるかもしれないと主張した。
米国のコンピューター理論家であり未来学者である Ray
Kurzweil も Drexler を 支 持 し た。Kurzweil は 2005 年 出
版した「特異点は近い(The Singularity Is Near)
」では、
次のようにアセンブラに対する期待を表明した。「2020
年代になると、分子アセンブラが現実に現れ、貧困を一
掃し、環境を浄化し、疾病を乗り越え、寿命を延長する
など数多くの有益な活動に効果的な手段と位置づけられ
るだろう。
」
米国の物理学者でありサイエンスライターでもある
Michio Kaku も、アセンブラ実現の可能性に重きを置い
た。2011 年 3 月出版の「未来の物理学(Physics of the
Future)」では、分子アセンブラはどの物理学法則にも矛
盾しないので、作ることはできると思うが、その実現時
期は予測しにくいと述べた。同時に 2070 年から 2100
年頃には、アセンブラが現れるかもしれないと多少消極
的な見通しを示している。
いずれにせよ Drexler と Smalley の論争は時間が経てば
結着がつくだろう。私はどちらかというと、Smalley より
Drexler を支持したい。なぜならば夢と想像が実現される
ことより素晴らしいことはないからである。
References
[1]K. Eric Drexler, Engines of Creation, Anchor Press,
1986
[2]K. Eric Drexler, Unbounding the Future, William
Morrow and Company, 1991
[3]K. Eric Drexler, Engines of Creation 2.0, ebook, 2006
K. Eric Drexler, Radical Abundance(2012 年出版予定)
[4]Rudy Baum, The Drexler-Smally Debate Introduction,
Chemical & Engineering News, 2003.12.1, 81(48), 37-42
[5] 李 仁 植、 ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー が 世 の 中 を 変 え る、
10
[6]Ray Kurzweil, The Singularity Is Near, Loretta Barrett
Godswin、2010
PEN July
Nanotechnology Research Center of the Industrial Technology Research Institute
(ITRI-NTRC), working under guidelines of “National Program for Nanoscience and
Nanotechnology, phase2”, aims to bring about new technology and their early
commercialization. In 2011 we support the development of various new products
in computing, communication, electronic, and optical-electronic industry. We will
expand the nanotechnology development based on what we have built in the past
years. We are confident that we will continue to be a global leader and make
important contribution to the society.
Nano Researcher
We are seeking a researcher who is doctorate and has experiences on piezoelectric
device or photonic crystal device to join our team at Nano Technology Research
Center, ITRI. This is a one-year position but may be extended if necessary. We
welcome any Japanese researcher who is interested in ITRI to apply for this
position.
For detailed job descriptions http://www.itri.org.tw Please send your CV to Pi-Fen Chang/ [email protected]
11
PEN July
寄稿
欧米における " ナノ材料規制 " の現況と雑感
JFE テクノリサーチ株式会社 主幹研究員 大塚研一
はじめに
社が受託した経済産業省の委託調査において、環境保護庁
(EPA)の責任者である Jim Willis 氏に直接インタビュー
昨年の欧州におけるナノ材料規制をめぐる動きは、最大の
し、EPA のナノ材料の定義をはじめ、
「試験規則」の考え
トピックスであった RoHS 指令改定案に銀ナノ粒子と「長
方などの詳細を聞くことができ、2011 年 2 月にパブリッ
い」カーボンナノチューブ(CNT)の事実上の使用禁止が
クコメントを求めるとの予定であるとされた。この案は行
含まれていたことを始め、欧州委員会(EC)における「規
政管理予算局(OMB)に上げられている状態であったが、
制のためのナノ材料の定義」論議、化粧品と食品における
公表されなかったので問い合わせたところ、「延びてい
ナノ材料規制の動き、ナノラベリング標準化にかかわる動
る」との返事であった。その状態のまま、4 月に、Willis
きなどめまぐるしいまでであった。
「規制のためのナノ材
氏 は EPA を 転 出 さ れ て し ま っ た。5 月 に EPA は、Swan
料の定義」については、私も PEN10 月号に寄稿させてい
Chemical Inc. とは別の MWCNT の SNUR の最終規則適用
ただいた。「ナノ材料の定義」は、2010 年 11 月 19 日に
を発表 [2] し、さらに次期 IUR 提出(6 月 1 日~ 9 月 30
パブリックコメントが締め切られて以降、現在に至るまで
日まで)を今回に限り必要ないものとし、その間に IUR の
そのまとめは発表されていない。約 200 の意見が寄せら
EPA 最終版に対する OMB のチェックを進めるとの発表 [3]
れたが、多くのステークホルダーによって意見が異なるた
があった。これらのことは、EPA は、従来の進め方でナノ
め、絶対的な科学的定義は決められない状態となっている
材料を管理していくということであり、Willis 氏が語った
[1]。
ナノ材料規制案は宙に浮いたままであることを意味する。
委託調査においては、ナノ材料の規制動向に詳しい米国の
12
米国においては、Swan Chemical Inc. の単層及び多層カー
法律事務所にもインタビューしたが、一般的に、
「オバマ
ボンナノチューブ(SWCNT、MWCNT)に重要新規利用
政権を支える民主党は環境保護団体の意見を反映させるよ
規則(SNUR)が適用されることが決まり、今年の PEN1
う努力していて、有害物質規制法(TSCA)修正案もその
月号にまとめられたように、①新しく製造されるナノ材料
一環であるが、中間選挙において共和党が多数派になった
(既存のナノサイズのものを含む)の全てに SNUR を適用
ため、厳しい規制は好まれない」という見方があるとして
する、②既存の全てのナノ材料について、標準化した方法
おり、従来の路線でいくということは、中間選挙の影響が
による報告を求める、③年間 2 万 5 千ポンド以上生産さ
及んできたためとも考えられる。では、オバマ政権はナノ
れる全てのナノ材料について、4 年ごとの報告義務(IUR)
テクノロジー規制について方針転換したのだろうか、この
を求めるという方針が発表された。この点については、弊
ことを考える ‘ 材料 ’ がここにきて発表された。
の EHS における論客 Andrew Maynard 氏(労働安全衛生
研究所(NIOSH)、ウッドロー・ウィルソン国際学術セン
大統領府科学技術政策局(OSTP)は 6 月 9 日、各省庁の
ターを経て、現在ミシガン大学)は「連邦政府のナノテ
トップにメモランダムを送付し、
「ナノテクノロジーとナ
クノロジー規制のハットトリック」だと揶揄し、ナノテ
ノ材料の応用に関する規制・監督にかかわる政策の原則」
クテクノロジーの規制にとって、忙しい 1 週間だったと
[4] について指示した。具体的・定量的な規制に関する原
述べている [7]。EPA と FDA の動きは、従来からの延長路
則は記載していないが、
「ナノ材料の規制は、サイズだけ
線であり、ここでは詳述しない。このメモランダムの内
でなく、これまでにない性質及び現象(novel properties
容と、それに関連した Maynard 氏の主張を紹介するのが
and phenomena)を機軸に策定するように」
、
「規制は、
本稿の主題である。
PEN July
ナノ材料規制にかかわる政策の原則-メモランダム
科学に基づくべきもので、支持されない一般化に基づい
てはならない」という点が重要と思われる。なお、この
メモランダムはまず、その経緯と目的について述べてい
指示は、OSTP だけでなく、OMB、通商代表部(USTR)、
る。ナノテクノロジーが我々の生活と経済のあらゆる面
国家経済会議(NEC)などが省庁横断的に話し合い、コ
で大きな便益をもたらすこと、国家ナノテクノロジー戦
ンセンサスを形成した結果である。OSTP、OMB 、USTR
略(NNI)はその便益を最大にするためだけでなく、この
それぞれの代表の署名入りという物々しい文書で、冒頭
新興技術に伴うリスクがどんなものかを理解し、そのリ
に、年初に出されたオバマ大統領の行政命令(Executive
スクをどのように管理していくかについての研究に投資
Order 13563)から取った、
「我々の規制システムは、公
してきたこと、などに触れた後、このほど NEC、OMB、
衆の健康、福祉、安全と我々の環境を守るものでなけれ
OSTP、USTR がリードして、多くの関連当局と合意して、
ばならないが、同時に経済成長、イノベーション、競争
ナノテクノロジーとナノ材料の応用に関する規制・監督
力と雇用の創造を促進するものでなければならない。そ
にかかわる政策の原則を提示するに至った。その目的は、
れは、利用可能な最高の科学に基づいていなければなら
新しい技術に早まった判断を下したり、通商に無用な障
ない」が掲げられている。2007 年にブッシュ政権が同様
害を設けたり、イノベーションを阻害したりしないやり
のメモを発表しており、今回オバマ政権がこうしたメモ
方で、バランスのとれた、科学に基づいたアプローチに
ランダムを発表したことで「これまでのナノテクノロジー
よって、ナノ材料とその他のナノテクノロジーの応用を
の EHS に対する考え方を再度支持した」
、
「オバマ政権が
規制することである、としている。また、これらの原則は、
ナノテクノロジーの EHS の重要性について認識している
現行の規制法に基礎を置くものであって、EPA、FDA、労
ことを示している」と考えられる。
働安全保健局(OSHA)などの規制当局の現行の法に基づ
さらに、EPA は、連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法(FIFRA)
く活動を超えるものではない。
の下、殺虫剤に含まれるナノ材料のデータを収集し、環
境への影響の有無を評価する方向で政策を検討している
次に規制の目的でナノ材料をどう記述するかという点に
ことを明らかにした [5]。この方針については、近日中に
ついては、NNI の表現を参考として、ナノ材料が示す、
公報に掲載され、パブリックコメントを経て決まる予定
これまでになかった性質や現象が最も重要なのであって、
である。
サイズのみに基づいたカテゴリー的な定義よりも有用で
あるとし、この性質や現象が、リスク、安全、便益など
また、食品医薬品局(FDA)は以下の 2 点に基づいて、
にどうかかわっているかを焦点とすべきだとしている。
管轄対象にナノテクノロジーが使われているかどうかを
規制政策の原則は、科学に基づくべきで、支持されない
判断するとの考えを示した [6]。規制策の策定よりもも
一般化に基づいてはならないとし、10 項目挙げている。
う 1 段階前のステップであり、
「FDA はナノテクノロジー
基本的には既に述べた点を繰り返したものだが、いくつ
使用かどうかをどのように判断するのか」についての考
か付け加えるべき点がある。ナノ材料の特定の使用につ
え方を示したものである。その基準とは、工業材料また
いてはその便益とリスクについて、市民への情報コミュ
は製品が少なくとも 1 つの次元でナノスケール(約 1 ~
ニケーションを良くすること、連邦当局は、ナノ材料に
100nm)であること又は、それらが、その大きさ故に、
関わる健康、安全、経済、環境、倫理を含む広い分野で、
物理的 / 化学的 / 生物学的な特性 / 現象が現れるかどうか
ステークホルダー、当局同士の共同を求めること、国際
(例え 1 μ m までというように、ナノスケールの大きさ
コミュニティとの協力、共同研究を奨励すること、など
から外れていても)である。
である。結論として、当局は、それぞれの分野で、現行
の法的根拠と科学に基づいたアプローチを続けていくべ
この 3 つは、同じ日に発表されており、ナノテクノロジー
きであり、規制は、単にハザードではなく、リスクに基
13
PEN July
づいたものでなければならない。これらの原則を適用す
Maynard 氏の定義不要論
るにあたって、規制担当者は、柔軟で、アダプティブで、
根拠に基づいたアプローチを取るべきで、公衆の健康と
この件でのウェブ調査で、ミシガン大学リスク科学セン
環境を守るという連邦政府の責任をはたしつつ、可能な
ターのブログに行き当たり、Maynard 氏の「なぜ我々は
限りにおいてイノベーションと通商の阻害を避けるよう
規制のためのナノ材料の定義を必要としないか」という
にしなければならないとしている。
主張 [9] に触れることができた。大変参考になると思われ
るので紹介したい。
メモランダムの評価
この題名をみて、Maynard は方向転換したのか、正気を失ったか
と考える読者が多いだろう。そういう方々が思っているように、私
このメモランダムについて、ナノテクノロジーを法律的
は工業ナノ材料について、健康影響や労働衛生について安全を確保
な側面からみている Nanotechnology Law Report におい
する明確で、合理的なルールを定めることは、大いなる挑戦の対象
て [8]、J.C.Monica 氏は、
「最高の科学」に基づくアプロー
であると考えてきた。一方で、ルールやガイドラインが適切で遵守
チは、これまでいろいろな連邦当局から個別にいわれて
されるためには、根拠に基づいた、最小限のものであるべきだと考
きたことだが、連邦政府全体で、最高レベルから再確認
えている。悲しむべきことに、我々は現在、規制を支えるナノ材料
されたこと、ナノテクノロジーの連邦経済にとっての重
の定義が、科学ではなく、政策によって定められそうな方向に向
要性と反射的な規制(RoHS 指令改定案などを指すと考
かっている。科学的根拠の代わりに人々が考える仮定や推測によっ
えられる)の反経済効果の可能性を認めたことに意味が
て決められるとしたら、安全にとってそして恐らくビジネスにとっ
あると言っている。ナノテクノロジーに関連したリスク
ても良くないであろう。工業ナノ材料は規制担当者にとって難問で
は現状の規制で十分対処できると繰り返し述べているこ
ある。これらの材料は、規制にとって新しい挑戦であると感じられ
とは、最も興味がある点で、オバマ大統領がナノテクノ
ているが、つかみどころがない。しかし議論は続けられて、それが
ロジーに特定した規制を行うと期待した向きもあったが、
被害(harm、hazard ではない)を及ぼすかどうかという科学では
メモランダムの主旨からみてそれは疑わしく、産業界は
なく、政治の混乱と不確かさによって決められようとしている。現
その点で安心できる、としている。
在のジレンマははっきりしている。研究が進むにつれて、工業ナノ
材料と生体との相互作用は、材料により、サイズにより様々であ
Maynard 氏は [7]、これは、科学に基礎を置き、推論的な
り、それが明らかになるにつれ、ナノ材料の境界が明確でなくなっ
気まぐれに左右されない規制の実行の根拠となる強力な
てきているのである。従って、工業ナノ材料のリスクは、材料ごと
一連の政策原則であり、新しい挑戦に責任をもち、アダ
にスケールに依存して決まり、リスクはそれぞれに異なるので、規
プティブなものであるとしている。氏はかねてから根拠
制はそれぞれに行われるべきであろう。EC の環境部門のナノチー
に基づかないように見えるナノ材料規制へのアプローチ
ムの H. Laursen 氏は、規制のためのナノ材料の定義は、最終的に
に懸念を表明していたが、そのことに触れ始めているの
は政策的な決定であると言明している。これは科学界への警鐘であ
で、満足しているようである。
「工業ナノ材料は、新しい
る。EC におけるナノ材料の定義の論議は行き詰まっている。これ
が故に、別途規制されるべきである」というドグマから、
は、規制のためのナノ材料の定義が必要であるという仮定が誤って
複雑さを増しているナノ材料の安全な使用を確保する、
いる証拠である。5 年前にはそれが可能であるように思われた。し
より細やかな、根拠に基づいたアプローチへと移行する
かし今日では、希望はだんだん少なくなっていくように見える。サ
のを助ける合理的な機会となるものである。科学に加え
イズは確かに問題であるが、物理的な形や化学的性質も重要であ
て、効果的な規制を作り上げることと意思決定において
る。サイズは器官に浸透可能な数十ミクロンからナノメートルサイ
不確実性を取り扱うという点の重要性の認識に欠けては
ズまで関係してくる。長さのスケールが違えば、生体との相互作用
いるが、疑いなく正しい方向への一手である、と評価し
も違ってきて、有害性の様子も異なってくる。しかし、ナノスケー
ている。
ル特有の一般的な規則はない。さらには、精巧に材料を配列した
構造が開発されている。これら Sophisticated material についての
これらのコメントから見ると、このメモランダムが出さ
Nanotoxicology[10] も必要になっている。
れたことによって、Willis 氏の示した案は公表されないと
14
考えられる。オーストラリアやカナダでも同様な動きが
これを読むと、
「定義」にとらわれていたことは、科学的
あったが、規制は CNT にとどまっており、米国同様に既
ではなかったと反省させられる。現実的であることが重要
存物質のナノサイズの材料への規制は、始められていな
なのであろう。なお、Maynard 氏は、すでに編著者として、
い。
「International Handbook on Regulating Nanotechnology」
おわりに
Maynard 氏はナノテクノロジーの EHS 活動で常に先駆的
欧州における動きをどうみるか
な役割を演じてきており、今回の「定義不要論」には感
銘を受けた。彼の論陣が「メモランダムの発出」に影響
再び欧州の動向に戻ろう。RoHS 指令へのナノ材料の追加
を及ぼしたと考えるのは持ち上げすぎであろうか。600
は、PEN で詳細に分析されているように、いわゆる環境
ページを超える「ナノ材料規制ハンドブック」が既に刊行
派が後押ししており、再燃する可能性は十分にある。昨
されていたのも一驚であったが、内容は抽象的で、読む
年話題となった EC の共同研究センター(EC-JRC)と新規
のに苦労する。隔年開催される International Conference
の及び新たに特定された健康リスクに関する科学委員会
on Nanotechnology – Occupational and Environmental
による「規制に関連したナノマテリアルの定義」は、流
Health は 2011 年 8 月 に 第 5 回 が ボ ス ト ン で 開 催 さ れ
れの中で見ると、
2012 年を目標にした REACH のレビュー
る。Maynard 氏は毎回最終講演に登場する人気者である。
過程の中に位置づけられる。
今回は何を話されるのか楽しみにしている。EPA による
PEN July
を本年初頭に刊行している。
TSCA での規制は、1件ごとの処理で、規制当局の手間が
すなわち、REACH の実施や修正提案に関わる機関である
大変であろうと想像して、インタビューでその点につい
EC 環 境 総 局 は、2009 年、REACH ガ イ ダ ン ス 文 書 を 将
て質問したのだが、新しい材料を知ることができるのは
来的に改訂するための助言をまとめる 3 つのプロジェク
楽しみであるとの答えが返ってきた。担当者の意気を感
トを EC-JRC に依頼した。EC-JRC はナノ材料として扱う
じた一瞬であった。
物質の特定(Substance Identification: RIP-oN1)
、届出に
必要な情報要件(Information Requirements、RIP-oN2)、
お よ び 安 全 性 評 価(Safety Assessment、RIP-oN3) の 3
つのプロジェクトを調整して実施し、REACH ガイダンス
References
文書改訂に向けた助言をまとめる。このうち、物質を特
[1] http://ec.europa.eu/environment/consultations/nanomaterials.htm
定するプロジェクトは 2009 年 10 月に開始され、2010
http://www.euractiv.com/en/innovation/commissions-nano-policy-lost-definition-
年末に完了が予定されていた。その他の 2 つのプロジェ
news-503665
クトは、2010 年 1 月に開始され、12 カ月から 15 カ月
後に完了予定となっており、
期限は 2011 年春であったが、
まだ公表されてはいない。
EC 内
部
に Competent Authorities Sub-Group on
nanomaterials(CASG nano)があり、
定義の答申を含めて、
[2] http://www.nanolawreport.com/uploads/file/2011-11127_PI.pdf
[3] http://www.gpo.gov/fdsys/pkg/FR-2011-05-11/html/2011-11562.htm
[4] http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/omb/inforeg/for-agencies/
nanotechnology-regulation-and-oversight-principles.pdf
[5] http://yosemite.epa.gov/opa/admpress.nsf/0/05ff063e9205eb3c852578aa0
05aa0f8?OpenDocument
http://www.epa.gov/pesticides/regulating/prepub-nanopest.pdf
RIP-oN プロジェクトについて継続的に検討を行ってきて
[6] http://www.fda.gov/RegulatoryInformation/Guidances/ucm257698.htm
おり、定義やプロジェクトについてのパブリックコメン
[7] http://2020science.org/2011/06/10/a-nanotechnology-regulation-hat-trick-
トを募った後、2012 年にはレビューが出され、REACH
におけるナノ材料の取扱いについて決着がつくと思われ
る。そもそも「RoHS 指令と REACH は対象が重複してい
るが、それはよいのか、REACH が規制しているものは、
RoHS 指令は対象とするべきではないのではないか」とい
う点は以前から議論の対象であった。REACH で有害物質
としていない物質を RoHS 指令で有害物質とすることは
from-the-us-federal-government/
[8] http://www.nanolawreport.com/2011/06/articles/white-house-issuesnanotechnology-ehs-policy-statement/#axzz1R5jsy3At
[9] http://2020science.org/2011/04/15/why-we-don%E2%80%99t-need-aregulatory-definition-for-nanomaterials/
http://umrscblogs.org/2011/04/15/why-we-don%E2%80%99t-need-a-regulatorydefinition-for-nanomaterials/
[10] http://2020science.org/2011/02/09/the-new-toxicology-of-sophisticatedmaterials-nanotoxicology-and-beyond/
ありえないことであり、この当然の論理が貫かれること
[11] http://2020science.org/2010/11/04/international-handbook-on-regulating-
が望まれる。本年においては、この REACH レビューを軸
nanotechnologies-sneak-peak-of-contents/
として、いろいろな動きが予想される。
15
PEN July
国内動向
論 文「Deep-sea mud in the Pacific Ocean as a potential
日本の年間レアアース消費量の 0.5 ~ 1.5 年分を供給する
resource for rare-earth Elements」
ことができる。
7 月 4 日、東京大学は表記学術論文をネイチャー ジオサ
http://www.u-tokyo.ac.jp/public/pdf/20110704.pdf
イエンス電子版に掲載した。東京大学は 1968 年~ 1984
年に古地磁気の研究のために太平洋全域から 27 本のピス
16
トンコア試料 ( 海底堆積物 ; 総コア長= 206 m、
平均 7.6m)
理化学研究所北京事務所開所式を開催 併せて理研と中
を採取、海洋研に保管していた。今回これらのコア試料を
国科学技術部国際合作司との間で研究協力に関する覚書を
ICP-MS と呼ばれる誘導結合プラズマ質量分析装置により
締結
成分分析した。その結果、太平洋の広範囲に南中国のイオ
6 月 24 日(金)
、理研北京事務所の開所式が北京において
ン吸着型鉱床に匹敵する高品位の海底堆積物が分布してい
行われた。式典には、中国全土と日本からおよそ 250 名
ることを発見したもの。総数 2,037 試料の全岩化学分析の
の出席者があった。式典の中で、野依理事長は「未来世代
結果、南東太平洋において平均層厚 8.0 m、平均総レアアー
への科学技術」という演題で講演を行い、日本と中国がエ
ス濃度 1,054 ppm、中央太平洋において平均層厚 23.6 m、
ネルギー、食糧、健康、環境等の人類が抱える問題を解決
平均総レアアース濃度 625 ppm のレアアース資源泥が存
するために科学技術の分野で協力する必要性を訴えた。ま
在していることが明らかとなった。この海域において、平
た併せて、理研と中国科学技術部との間で、研究協力覚書
方キロメートルの範囲でレアアース資源泥を開発すると、
に調印した。この覚書の調印は、今後の理研と中国の研究
と、小学校の学級担任として理科を教える教員の約 5 割が
ことになる。
理科全般の内容の指導を「苦手・やや苦手」( 中学校理科
http://www.riken.go.jp/r-world/topics/110629/index.html
教員・地学分野では約 4 割 ) と感じ、約 7 割 ( 中学校理科
教員では約 3 割 ) が理科の実験や観察についての知識・技
能を「低い・やや低い」と感じている。このような状況を
KRIBB-RIKEN ケミカルバイオロジー連携研究センター開所
踏まえ、本事業は小・中学校教員の理数教育における指導
式
力向上を図ることを目的とし、大学と教育委員会の連携に
6 月 22 日、 理 研 の 基 幹 研 究 所 と 韓 国 生 命 工 学 研 究
よる、養成プログラムの開発・実施や地域の理数教育にお
院(KRIBB: Korea Research Institute of Bioscience and
ける拠点の構築・活用などを通じて、優れた教育実践を行
Biotechnology)の連携研究センターの開所式が、KRIBB
い、地域の理数教育において中核的な役割を担う小・中学
の梧倉(オチャン)キャンパスにおいて開催された。式で
校教員、CST の養成を支援している。今年度は 3~5 月に
は、連携センター設置に関する覚書の締結がなされ、連携
募集を行い、7 件の選考を行い、2 件の採択を決定した。
センターの研究内容・経緯の紹介、来賓の祝辞、看板除幕
平成 27 年 3 月 31 日までの 4 ヵ年度にわたって、1 企画
式、ラボツアーなどが行われた。理研と KRIBB は、2006
あたり年間 3000 万円を上限として支援が行われる。
年に締結した包括協定のもとに様々な共同研究を実施して
http://www.jst.go.jp/pr/info/info811/index.html
PEN July
機関、大学等との協力を推進するのに大きな役割を果たす
きた。また、昨年の 9 月には、基幹研究所ケミカルバイ
オロジー研究領域と KRIBB のケミカルバイオロジー研究
センターとの間で研究協力に関する覚書が締結され、研
被ばく低減へ知識還元したい 福島の高校生が独自研究
究者交流や連携研究等を通じて関係強化をさらに図って
6 月 27 日付毎日新聞によると、福島県立福島高校生徒 9
きた。このような実績が評価され、KRIBB に設置した連
人が身近な場所の放射線量を測定したり、放射性物質の特
携 ラ ボ が、Global R&D center program (GRDC) に 選 定 さ
性を研究する活動を行っている。公表された放射線量の結
れ、「KRIBB-RIKEN ケミカルバイオロジー連携研究セン
果に一喜一憂するのではなく、自分たちの手で現状を知り、
ター」へと改組される運びとなった。両機関の協力関係を
正確な知識を身につけることで、被ばくリスクの低減など
より強固なものとし、当該分野において世界をリードして
に役立てようとしている。活動のきっかけは 4 月中旬、県
いくため、基幹研でも 6 月 22 日、ケミカルバイオロジー
が学校など県内全域で実施したモニタリング調査だった。
研究領域のケミカルバイオロジー研究基盤施設内に「理研
同校は屋外活動制限値を下回ったが、いつ誰がどのよう
-KRIBB 連携研究チーム」を設置した。本連携研究センター
に測ったのか分からないまま安全だとされたことに疑問を
と理研 -KRIBB 連携研究チームでは、ケミカルバイオロ
持った生徒たちが、自ら測ることを希望したという。
ジー分野の共同研究を行う。具体的には、天然生理活性物
http://mainichi.jp/life/edu/news/20110627ddm041040095000c.html
質あるいはその誘導体から、新規の医薬農薬の候補になる
化合物の探索に取り組む予定で、この探索効率を高めるた
め、理研と KRIBB の互いのリソースが活用できる。さら
最先端研究開発支援プログラムの公開活動
に、人的交流に関しても、すでに理研の浅見行弘研究員が
6 月 27 日、内閣府総合科学技術会議は最先端研究開発支
KRIBB に長期滞在しながら共同研究を行っており、今年度
援プログラムの公開活動、その進め方に関する基本方針等
は、KRIBB からの研究員の受け入れなども計画されている。
を明らかにした。平成 22 年 4 月 27 日の第 90 回総合科
KRIBB-RIKEN ケミカルバイオロジー連携研究センターは、
学技術会議において、最先端研究開発支援プログラムを加
理研 - マックスプランク連携研究センターに続き、基幹研
速・強化することを目的とした「最先端研究開発戦略的強
のケミカルバイオロジー分野では 2 番目の連携センターと
化事業」が創設された。この中で、同事業における取組の
なる。
一つとして、国際シンポジウム等によるプログラム全般及
http://www.riken.go.jp/r-world/topics/110624_2/index.html
びプログラムの中心研究者・研究課題の研究内容を広く公
開する活動を実施することが決定され、これに基づき、平
成 22 年度は国際シンポジウム 16 件、一般シンポジウム
理数系教員(コア・サイエンス・ティーチャー)養成拠点
1件を採択し、取組を進めてきた。今年 5 月 13 日の第
構築事業、平成 23 度採択企画の決定
94 回総合科学技術会議において、平成 23 年度も引き続
科学技術振興機構(JST)は、理数系教員コア・サイエン
き公開活動を実施することが決定された。
ス・ティーチャー(CST)養成拠点構築事業において、平
http://www8.cao.go.jp/cstp/sentan/kyouka_koukai.html
成 23 年度の採択企画を決定した。近年の調査報告による
17
PEN July
福島県川俣町現地ほ場における土壌浄化作物の現地栽培
どにいる子どもたちや大人たちが科学技術への興味・関
試験
心を深め楽しむ活動を支援する。
(独)農業・食品産業技術総合研究機構作物研究所は、東
http://www.jst.go.jp/pr/info/info810/index.html
日本大震災に伴う東京電力福島第一原発事故により放射
性物質に汚染された農地土壌の除染技術開発に関する実
証試験の一連の試験として、計画的避難区域に指定され
人工知能につながる技術を開発 不要な情報は “ 忘却 ”
ている福島県川俣町山木屋地区の水田及び畑において、
物質・材料研究機構の研究チームは、大切なことは記憶し、
土壌浄化作物として有望と考えられるケナフ、キノア及
ささいな情報は “ 忘れて ” しまうコンピューターの開発に
びアマランサスの現地栽培試験を行う。維作物であるケ
役立つ次世代素子を開発し、科学誌ネイチャーマテリア
ナフ、並びに雑穀であるキノア及びアマランサスは、近
ルズに発表した。詳細は Cutting-Edge Technologies に掲
年新用途開発を目的として導入された作物で、土壌中の
載。
セシウムや重金属の吸収能力が高いこと等が報告されて
http://www.47news.jp/CN/201106/CN2011062601000610.html
いる。今回の試験では、6 月 29 日に川俣町山木屋地区の
水田と畑それぞれ約 1 アールの区画に3種類の作物を播
種し、その後の生育状況を調査すると共に、植物体に吸
収された放射性セシウムの量を測定する。この結果から、
同地域における栽培に適した作物を選定するとともに、
土壌浄化に対する効果を検討することにより、計画的避
難区域における農業復興への貢献を目指した土壌浄化対
策の選定に役立てる。
http://nics.naro.affrc.go.jp/press/press-53.html
科学コミュニケーション連携推進事業 「草の根型プログ
ラム(2 次募集)~東日本大震災の被災者を対象とした科
学コミュニケーション活動支援~」
科学技術振興機構(JST)は、科学コミュニケーション連
携推進事業「草の根型プログラム」の 2 次募集として、
平成 23 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災の被災者
を対象として、被災地や避難場所などで実施する科学コ
ミュニケーション活動に関する企画の募集を、平成 23 年
6 月 27 日(月)から 11 月 28 日(月)までの期間で行
う。科学コミュニケーション連携推進事業では、国民が
科学技術や理科に触れる機会を充実させ、国民の科学技
術についての興味・関心を深めることを目的としている。
本事業の一環として実施する「草の根型プログラム」は、
小笠原諸島、UNESCO の世界遺産に
国連教育科学文化機関(UNESCO)世界遺産委員会は 24
日、日本政府が推薦した自然遺産「小笠原諸島」を世界
自然遺産に登録することを決めた。大陸から隔絶された
環境で、独自の進化を遂げた豊かな生態系を保っている
点が高く評価されたもの。25 日には「平泉の文化遺産」
も世界遺産に登録された。
提言日本の未来のエネルギー政策の選択に向けて―電力
供給源に係る6つのシナリオ―
日本学術会議東日本大震災対策委員会エネルギー政策の
選択肢分科会は 6 月 24 日、表記提言を発表した。その結
びで、
「エネルギーの選択肢をめぐる国民的な議論が、世
界の状況及び技術レベルが急速に変化している中、最新
で正確な国内外の情報を踏まえ、定量的なデータに基づ
いて供給の安定性、環境への影響、経済性などの多面的
な観点から、総合的に、開かれた形で進められるべきこと」
を提言し、この提言の実現のために、引き続き調査検討
を進め、国民に必要なデータを提供することとする、と
して提言の目的と今後の対応について言及している。
http://www.scj.go.jp/ja/member/iinkai/shinsai/pdf/110624t.pdf
科学ボランティアなどの個人が、その特徴や実績を生か
し、地域の児童生徒や住民を対象として実施する身近な
場で行われる体験型・対話型の科学コミュニケーション
活動を支援するもの。活動実施日 1 日につき 2 万円を支
援し、1 企画について 5 活動までを支援対象とする。今
回は、東日本大震災の被災者を対象として、被災地や避
難場所などで実施する科学コミュニケーション活動に関
する企画を募集する。被災地や被災者のニーズに合わせ、
科学コミュニケーションを通じて、被災地や避難場所な
18
IAEA 天野事務局長が原発事故の尺度見直し言及 共同通信によると、国際原子力機関(IAEA)の天野之弥
事務局長は IAEA 閣僚級会合で、原子力事故の規模や深刻
度を表す国際評価尺度の見直しに言及した。
「レベル8」
など新尺度が設定される可能性もある。
http://www.47news.jp/CN/201106/CN2011062201000197.html
放射線防護の対策を正しく理解するために
20 日付西日本新聞は、北九州学術研究都市の環境ベン
6 月 17 日、日本学術会議は日本学術会議会長談話「放
チャー「K2R」が、植物の生育スピードや免疫力を向上さ
射線防護の対策を正しく理解するために」を公開した。
せる効果がある活性酸素を安定的に含んだ水を、光触媒
この中で金澤会長は、放射線医学、放射線影響科学、放
反応によって生成する装置を開発した。この水を植物の
射線防護学等の専門家によって組織されている国際的な
種子に与えると、発芽率が約6割向上したという。
NPO である ICRP の防護基準を参照する必要を述べてい
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/247960
る。
PEN July
活性酸素水の生成装置開発 http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-d11.pdf
大学間連携による光・赤外線天文学研究教育拠点ネット
ワーク構築 最先端天文学課題の解決に向けた大学間連
国連環境計画(UNEP)の「サステナブル・ライフスタイ
携共同研究
ルに関するグローバル調査報告書 ~変化へのビジョン~」
6 月 22 日、北海道大学、東京大学、東京工業大学、名古
和訳版公開
屋大学、京都大学、広島大学、鹿児島大学の7大学と大
6 月 16 日、国立環境研究所と株式会社電通は、2008 年
学共同利用機関である自然科学研究機構・国立天文台は、
より参画していた国連環境計画「サステナブル・ライフ
日本の大学が国内外に持つ中小口径の望遠鏡を有機的に
スタイルに関するグローバル調査」が完了し、5 月 12 日
結びつけて、突発天体等の即時および連続観測により、
に調査報告書を発表したことを受けて、その和訳版であ
その物理現象の解明をメインテーマとした最先端共同研
る「変化へのビジョン」をリリースした。この調査は、
究の推進と大学における天文学教育を促進するための事
世界 20 カ国、8000 人以上の若者を対象としたもので、
業を平成23年度から6年間共同で実施すると発表した。
調査からは、彼らが貧困と環境の悪化を世界の 2 大課題
http://www.nao.ac.jp/releaselist/archive/20110622-cooperation/
と考えており、その解決のための情報や、環境、社会、
経済の 3 課題の包括的理解のための手掛かりを求めてい
ること、
「持続可能な発展」に向けた変革の力となりたい
ノーベル賞受賞者根岸英一氏が JST の総括研究主監に就
任
と考えていること等が明らかになった。この調査報告書
は、自由回答で得られた若者のリアルな声をそのまま収
科学技術振興機構(JST)は、2010 年のノーベル化学賞
録していることが特徴で、今後の各国の国や地域づくり
を受賞した米国・パデュー大学の根岸英一特別教授を、
への活用が期待される。 また、調査結果については、更
平成 23 年 6 月 15 日付けで JST の「総括研究主監」とし
なる持続可能なライフスタイル研究の推進と、マーケティ
て迎えることを決定した。総括研究主監は新たに設けた
ング・コミュニケーションを通じたサステナブルな社会
役職で、根岸教授には今後、JST が進めている課題達成
づくりに活用していく。
型基礎研究などに対して、海外での豊富な研究経験や幅
http://www.nies.go.jp/whatsnew/2011/20110615/20110615.html
広い見識をもとにアドバイスをいただくとともに、日本
の科学技術を世界に発信するための「科学技術大使」の
役目を担っていただくとのこと。これに対して根岸氏は、
「今回の未曾有の災害に立ち向かうために、これまで以上
に『低コスト、
低エネルギーでサステナブルなものづくり』
を実現する基盤技術の研究に取り組むことが求められて
います。資源も含めて根本的な変革が求められている今、
サイエンティストとエンジニアの役割は非常に重要です。
将来に向けて研究者一人一人の力量が試されており、そ
の集積である研究成果を1つでも多く出せるように科学
技術を推進していきたいと思います。また、
若い世代には、
大きなディスカバリーをした時の感動を追いかけて欲し
い。あの感動を経験すると研究者という仕事はやめられ
ません。そのことを皆さんに伝えていきたいと思います。」
と語った
http://www.jst.go.jp/pr/info/info805/index.html
19
PEN July
レプソルド子午儀、国の重要文化財に
○ 答申「科学技術に関する基本政策について」
自然科学研究機構 国立天文台はレプソルド子午儀が重要
http://www8.cao.go.jp/cstp/output/toushin11.pdf
文化財に指定されたことを明らかにした。これは 1880
○「東北地方太平洋沖地震」を踏まえた当面の対応につい
年ドイツの A REPSOLD & SOHNE 社で製作され 1881 年
て
に当時の価格 15,200 マルクで明治政府の海軍省海軍観象
http://www8.cao.go.jp/cstp/output/20110331release.pdf
台が購入した近代天文学黎明期の有効口径 135mm、焦点
距離 2120mm の本格的な観測装置。
経産相、原発政策堅持
福島第一原発の事故は、様々な形で国民の原発に対する
意識に影響を与えつつある。管首相は、原子力政策の白
紙からの見直し、今後省エネと再生可能エネルギーの拡
大方針を示したが、代替エネルギー確保のめどが立たな
い。今のところ再生可能エネルギーの割合を増やすこと
を課題としつつも、7 日に首相官邸で開かれた新成長戦略
実現会議で、海江田万里経済産業相は原発の存続を明確
な方針として打ち出した。
http://www.47news.jp/CN/201106/CN2011061401001282.html
原発再開せず、イタリアの選択
1986 年に起きた旧ソ連のチェルノブイリ原発事故以降、
http://www.nao.ac.jp/releaselist/archive/20110615-repsold/
国民投票により原発による発電を停止してきたイタリア
では、6 月 12、13 の両日、ベルルスコーニ首相の原発
再開の方針の是非を問う国民投票が行われた。イタリア
第 4 期科学技術基本計画見直しへ向けたパブリックコン
では 1987 年の国民投票で国内4カ所にあった原発を 90
サルテーション
年までに稼働を停止したが、実際には国内エネルギー需
6 月 14 日、内閣府総合科学技術会議は科学技術政策・イ
要の 8 割以上をフランス原発等からの輸入に頼っている。
ノベーション担当政策統括官名で、
『答申「科学技術に
このような状況から、ベルルスコーニ首相は停止してい
関する基本政策について」見直し案に関するご意見募集』
る原発の再稼働と新規の建設の方針を打ちだしていた。
をプレスリリースした。4 月 1 日に施行される予定であっ
ANSA 通信によると 13 日に即日開票が行われ、投票率は
た第 4 期科学技術基本計画は、3 月 11 日の大震災を受け
57% で投票成立条件を満たし、反原発票が 95% に達した
て、施行直前の 3 月 31 日にその見直しが発表された。現在、
模様。首相は直ちに記者会見を行い、
「イタリアは原発に
総合科学技術会議において検討が進められており、見直
さよならを言わなければならないだろう」と敗北宣言し
し案が作成され、これに対するパブリックコメントを求
た。
めるもの。意見募集期間は 6 月 14 日~ 6 月 26 日なので、
なお、日経エコロジーによると、現在世界全体で 439 基
もうすでに終了しているが、意見募集文書のみ参考資料
の原子炉があり、その発電量は 13.8% となっている。ア
として添付する。
メリカが 104 基、フランスが 58 基で、日本はこれに次
○ 答申「科学技術に関する基本政策について」見直し案(見
ぎ 51 基(福島原発をのぞく)である。
え消し版)
http://www.47news.jp/news/2011/06/post_20110614072547.html
http://www8.cao.go.jp/cstp/pubcomme/kihon4_shinsai/honbun1.pdf
○ 答申「科学技術に関する基本政策について」見直し案(溶
20
け込み版)
東北大と NEC、待機電力ゼロにする技術開発、超節電に
http://www8.cao.go.jp/cstp/pubcomme/kihon4_shinsai/honbun2.pdf
道
参考資料
LSI によるデータの記憶には電気の出し入れが必要で、記
○ 答申「科学技術に関する基本政策について」に関する
憶したデータの保持にも電気を流し続ける必要がある。
意見具申案
これが待機電力である。6 月 13 日付の朝日新聞によると、
http://www8.cao.go.jp/cstp/pubcomme/kihon4_shinsai/sanko.pdf
東北大と NEC は電子のスピンを用いて集積回路の待機電
フィリン」が、n 型有機半導体として「フラーレン誘導体」
省電力が期待できるという。
が採用されている。
http://www.asahi.com/science/update/0613/TKY201106130018.html
PEN July
力をゼロにする技術を開発した。製品化されれば大幅な
2011 年春季半導体市場予測
6 月 7 日、世界半導体市場統計(WSTS)日本協議会は、
5 月 24 日~ 27 日の 4 日間香港で開催された 2011 年春
季市場予測会議の結果を公表した。WSTS は 1984 年に設
立された。世界の主要半導体メーカの大多数が加盟して
いる半導体市場に関する世界的統計機関で、加盟してい
る半導体メーカは現在 63 社。
このなかで、2010 年の円ベースでの日本の半導体市場
伸び率は前年比 +14.1%となったが、これは世界金融危
機の影響で低迷した 2009 年からの回復による。2011 年
は 3 月 11 日に起きた東日本大震災の影響等もあり前年
比 -12.0%と予測されているが、2012 年は再び回復傾向
になると予測している。2010 年には約 4 兆 8 百億円で
あった日本の半導体市場規模は、2011 年は約 3 兆 5 千
9 百億円、2012 年は約 3 兆 9 千 5 百億円、さらに 2013
年は約 4 兆 1 千 3 百億円となり、2010 年から 2013 年
までの年平均成長率は +0.3%となると予測している。
http://semicon.jeita.or.jp/statistics/docs/20110607WSTS.pdf
iPS 細胞の量産へ「魔法の遺伝子」を発見
京都大学の山中伸弥教授らは、マウスやヒトの人工多能
性幹細胞(iPS 細胞)の作成効率を大幅に上げる遺伝子
を発見した。6 月 9 日付毎日新聞によると、この遺伝子
Glis1 には、がん化しやすい不完全な iPS 細胞の増殖を抑
える効果がある。この魔法の遺伝子 Glis1 の発見には、総
研が蓄積した遺伝子のうち約 1400 種が用いられた。
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2011/06/09/20110609ddm0010
40063000c.html
注目される有機薄膜太陽電池の研究動向
3 月 11 日の大震災により発生した福島第一原発事故以
降、エコエネルギーに関する研究開発が注目されている
が、そのなかで三菱化学が取り組んでいる有機薄膜太陽
電池の研究開発動向が高い関心を集めている。同社は「有
機薄膜太陽電池」において、世界最高値となる 9.2%のエ
ネルギー変換効率を達成したと発表、
米国の「サイエンス」
でも取り上げられた。有機薄膜太陽電池の基本構造は有
機 EL と同じで、一般にはp型とn型の有機半導体材料の
積層構造である。この薄膜に電子とホールを注入して発
光させるのが有機 EL、光を入れて電子とホールにわける
のが有機太陽電池である。三菱化学が開発した有機薄膜
太陽電池では、p 型有機半導体として「テトラベンゾポル
21
PEN July
Column
草原の宝石 ミドリシジミ
シジミチョウは翅を開くとおおよそ 3 センチメート
ル程度と小さいけれど、とても美しい翅を持つチョ
ウです。世界で約 6000 種が確認されており、全世
界のチョウの仲間の 40%をシジミチョウが占めてい
ます。そのなかに、ギリシャ神話の西風の神ゼピュ
ロスをラテン語で表したゼフィルスと呼ばれる一群
があり、いずれも美しい金属光沢の翅をもっていま
す。ゼピュロスは、春と初夏のそよ風を運ぶとされ
ていたことから、6 ~ 7 月の西風が吹く季節に生ま
れてくるシジミチョウが特にこのように名づけられ
たのです。ちなみにゼピュロスはボッティチェリの
「ヴィーナスの誕生」に頬を膨らませて風を送る少
年として描かれています。ゼフィルスは、かつては
正式な属名でしたが、分類が見直されたため、今で
は特に美しい翅のシジミチョウの仲間を指す愛称と
なっています。日本では 25 種が確認されています。
ミドリシジミは、ゼフィルスの一種です。今の時期、
ハンノキが生えているところで見つけることができ
ます。その金属的な緑色の翅は自然の造形物とは思
えないほど美しく、魅惑的です。なかなか翅を開い
てはくれませんが、運が良ければ夕方にその金属的
な緑色を見せてくれます。
ミドリシジミの翅に緑の色素はありません。金属光
沢の緑色は、層状に階層的に配列された鱗片が作り
だすのです。鱗片の断面を拡大すると、葉を広げた
シダのような複雑な構造になっていることが分かり
ます。鱗片のこのような複雑な構造が翅にあたる光
に様々な干渉をし、波長の変化を生み出すことで色
が作り出されています。このような色を「構造色」
といいます。構造色を研究対象としている研究室も
あり、周期的な階層構造と構造色の関係などの研究
が行われています。
(注 1)ここに掲載した写真は、身近な自然の写真を
趣味にしておられる “里山のとっとこ” さんから頂
きました。お礼を申し上げます。
(注 2)構造色に関しては大阪大学の研究室をご覧く
ださい。http://mph.fbs.osaka-u.ac.jp/~syoshi/
22
PEN July
特集
IT バブルはなぜ起き、何をもたらしたのか
先月の特集で、IT とナノテクノロジーのハイプサイクル
出企業は、現地生産への切り替えを進め、財務管理を強め、
とイノベーションの関係について述べた。今月は、2000
海外からの部品調達を増やして、経営を立て直していっ
~ 2001 年頃の IT バブルとその崩壊はなぜ起きたのか、
た。当時の日本には、円高不況の懸念さえ吹き飛ばすほ
そのような経済的な混乱がその後の科学技術にどのよう
どの底力があったということだろう。さらに政府がとっ
な影響を与えたのかを解析しながら、この四半世紀の経
た公定歩合の引き下げや法人税の引き下げが、結果的に
済と科学技術の展開を俯瞰することを試みる。このよう
「金余り」と呼ばれる現象を生み、その資金が向かった株
な解析を行うために、日本や世界経済に大きな変動が起
式や土地が異常に高騰した。特に土地に関しては未来永
きた 1990 年頃、2000 年頃、そして 2009 年頃を統計の
劫地価は下がらないという土地神話がうまれ、東京 23 区
3 つのポイントとして捉えることからはじめる。
の地価がアメリカ全土の地価に匹敵するという状況にま
で達した。
1 三つの経済の転換点 1990 年、2000 年そして 2009 年
状況が大きく変わり始めるのは 1991 年の 1 月に勃発し
1-1 1990 年頃のバブル経済とその崩壊
り始める。途端に下がらないはずの地価が下がり始め、
まずに図1に、日経平均株価を示す [1-3]。注目していた
詰ってバブルは一挙に崩壊する。これが日本経済の長い
だきたいのは、1990 年頃の日本経済のバブルと、1991
デフレ型停滞の始点となる。バブルが崩壊したこの頃か
~ 92 年にかけてそのバブルが崩壊して以降の平均株価の
ら 2000 年代初め頃までの日本の景気の後退期は、のち
プロフィールである。日本にバブル景気とその崩壊をも
に「失われた 10 年」と呼ばれるようになった。経済の
たらした直接の原因は、1985 年当時いわゆる双子の赤字
専門家はその後の 2002 ~ 07 年頃は比較的長い景気の回
に悩んでいたアメリカ政府の意向で取り決められたプラ
復期であり、これを「いざなみ景気」と呼んでいる。た
ザ合意と言われる。特に、著しかった日米の貿易不均衡
だ、その景気の回復は雇用と結びつかず、雇用環境がま
解消を目的とした G5 の協調介入による円高ドル安の誘導
すます悪化したことから、好景気の実感は薄かった。実
は、プラザ合意前の為替レート 260 円 /1 ドルを、合意後
際、そのいざなみ景気は日本経済の元気さ指標に表れて
の 1988 年には 120 円 /1 ドルへと、大きく円高へシフト
こない。たとえば財務省の統計を見ると、国の一般会計
させた。アメリカの思惑は功を奏したように見える。た
税収は 1990 ~ 91 年をピークとして以降今日まで低下
だ、円高不景気への懸念に対して、日本の企業、特に輸
傾向にあるし、一般家庭の家計可処分所得も 1998 年を
た湾岸戦争からで、景気の先行きに悲観的な見方が広が
土地を担保に貸付けを行っていた金融機関の経営が行き
23
PEN July
ピークにして以降ずっと低下してきている。また、好
景気の時には世界のトップレベルにあった「国民 1 人
あたりの GDP」や、スイスの International Institute for
Management Development が公開している「国際競争力」
といった指標は、いずれも現在 20 位以下まで低下して
きている。したがって、中長期的に見れば 1990 年以降、
日本の経済はずっとデフレ傾向から脱却できていない。
最近では失われた 20 年という表現も使われるようになっ
てきた。
図 2 NASDAQ 総合指数の推移
1-3 2009 年頃の世界金融危機
3 番目のポイントは、図 3 に示す 2008 年末の世界金融
危機前後の NASDAQ 総合指数の大きな変動である [5]。
2008 年 9 月 15 日、当時米国第 4 位の証券・投資銀行
LEHMAN BROTHERS(以下リーマン)の経営が破綻した。
図 1 日経平均株価の推移
負債総額は 6130 億ドル、当時のレートで 64 兆円に上る。
その破綻劇の背景には、住宅市場が崩壊しないことを前
提にした「住宅ローンの金融商品化」の仕組みと、その
1-2 2000 年頃の IT バブルとその崩壊
高リスクをとって経営拡大してきたリーマンの経営があ
る。2007 年頃から住宅バブルの崩壊でサブプライムロー
次に、図 2 に全米証券業協会(NASD)のベンチャー向
ンの焦げ付きが目立ち始めた。アメリカ政府は経営危機
け 株 式 市 場 National Association of Securities Dealers
に陥った他の金融機関は公的資金で救済したものの、リー
Automated Quotations (NASDAQ) 総合指数の推移を示す
マンには経営の自己責任を求めた。政府から見放された
[4]。アメリカでは IT の発達に伴って 1990 年代後半か
格好のリーマンに対して、韓国産業銀行がリーマン株の
ら .com 企業と呼ばれる IT 産業が急速に発展した。この
25% 取得を条件とする救済策を提示、他の金融機関に対
ような IT 産業の急速な発展の背景には、1980 年代後半
して救済策の調停に手をこまねいていたアメリカ政府も
から 90 年代前半までのアメリカの経済停滞が大きく影
この提案を歓迎した。結局この救済策が実行されること
響しているが、そのことについては後で述べる。この急
はなく、この決定がリーマンの経営にとどめを刺したと
速な IT 産業の発展を背景に、1990 年代末から 2000 年
言われる。
にかけてインターネット企業への投資が過熱、2000 年
には NASDAQ 総合指数が 6000 をうかがうところまで達
リーマン倒産直後に企業倒産保険 CDS を扱っていた大手
した。シリコンバレーのような先端企業の集積地で急増
保険 AIG が経営破綻したことで、マーケットがリスク資
したインターネット企業への投資の過熱は、アメリカで
産売却に走った。このことが株価の下落につながった。
は一般に .com bubble と呼ばれているが、日本では IT バ
この流れを加速させたのが、6 月 29 日の公的資金によ
ブルと呼ばれることが多い。その後 2001 年にかけてバ
る金融機関の救済策を盛り込んだ緊急の金融安定化法案
ブルの崩壊が起き、アメリカの経済に大きな影響を与え
の米下院での否決である。大方の株式市場関係者の予想
ることになる。インターネット関連企業の株価指標であ
を裏切るこの下院の否決により、ダウ平均は 777 ドルの
る Bloomberg US Internet Index などは、この時期より大
史上最大の下げ幅を記録している。日経平均株価は 1 万
きく変動し、アメリカ経済が如何に強く IT 産業と結びつ
2 千円から 7 千円へと急落し、アメリカより大きな影響
き支えられていたのかを如実に示した。
を受けたとも言われる。この 100 年に一度とも評された
経済危機を、日本では一般にリーマンショックと呼んで
いるが、以上簡潔にまとめたとおり、リーマンの倒産は
2008 年末の経済危機の理由ではなくその契機でしかな
い。従ってここでは 2008 年末の世界金融危機と表す。
24
することから、インフレリスク含みで急速に成長する産
業やエリアに流れるようになる。
一方アメリカは、1987 年 10 月のブラックマンデーで株
PEN July
れを加速させる。投資マネーはそれ自体の増殖を目的と
式市場が崩壊、1991 年には GDP 成長がマイナスに落ち
込むなど、厳しい状況が続いていた。企業は大規模なレ
イオフで企業規模を縮小しながら、必要なものをアウト
ソーシングする経営スタイルへと変わっていった。大量
のレイオフで失業した技術者が、SOHO 型の会社を興し
ていく。これがその後のアメリカにおける e- コマースの
発展の原動力となる。実際に 1990 年代の後半になると、
図 3 2008 年末の世界金融危機前後の NASDAQ 総合指数
それまでの経済体制やビジネスモデルと大きく異なり、
の推移
インターネットを通した電子商取引が発展してくる。ドッ
トコム企業と呼ばれた無数の IT 関連ベンチャー企業が増
え続けていった。連邦準備金制度 (FRB) の低金利政策は、
2 三つの転換点は互いにどう関連しているのか
IT 関連企業の資金調達を容易にし、投機マネーが IT 関連
企業に流れるのを助けた。2000 年には株価が急上昇する、
上で述べたとおり、1990 年前後の日本のバブル経済とそ
いわゆる IT バブルが起きる。
の崩壊は 1985 年のプラザ合意に起因するというのは今
日一般的な見方である。ではその当時の経済動向とそれ
ここまで、すなわち 1980 年代後半から 1990 年代前半
に対してとられた様々な政策が、その後の IT 産業を下支
のアメリカの不況と 1990 年代後半の IT バブルに至るま
える半導体市場にどのような影響を与えていたのかを見
での経緯を見ていると、経済的ストレスが e- コマースと
てみよう。プラザ合意と同じ年の 1985 年 6 月、アメリ
いう新しい産業の萌芽の契機になっていることは否定で
カ半導体工業会 (SIA) は、日本の半導体市場が閉鎖的であ
きない。不況から新しい産業が萌芽し、そこに投資が行
るとしてアメリカ通商代表部へ提訴した。いわゆる日米
われて大きく展開していく、そういった肯定的側面は確
半導体交渉のはじまりである。今その内容を精査してそ
かにある。
の詳細をここに述べることはしない。注目すべきことは、
日米の半導体国際シェアが逆転することが確実になった
ところが同年 FRB が一転金利の引き上げをおこなったこ
時点でこの提訴が行われたことである。さらに、87 年の
とから、IT バブルは一挙に崩壊に向かう。もともと資金
日本製パソコンやカラーテレビなどに対して 100%の関
力基盤の弱い IT 関連企業のなかには業績の悪化が増え、
税をしたアメリカの処置は実質的な輸入禁止措置であり、
株価は暴落していく。先行きの混乱を見越して IT 産業か
当時起きていたことを理解するには象徴的な出来事であ
らの投機マネーの引き上げが始まると、バブルの崩壊は
る。ちょうど図 1 の日本のバブル経済に重なる時期、日
決定的になってくる。折しも 2001 年 9 月 11 日には同時
本の半導体国際シェアはアメリカを抜く。しかし日米半
多発テロが起き、以降アメリカは深刻な不況に見舞われ
導体協議の結果、アメリカ企業のロジック回路に対して、
る。図 2 の NASDAQ 指標のプロフィールには、2002~3
DRAM に特化した日本の半導体産業は、その後韓国や台
年にかけてその不況がよく反映されている。この不況は
湾企業とのし烈な価格競争に晒されることになる。
日本にも大きな影響を与え、図 1 の日経平均株価にも同
時期に株価の低迷が表れている。
もう一つ、1990 年のバブル経済の前後に起き、後のアメ
リカにおける IT バブルとその崩壊に影響を与える大きな
アメリカの IT バブルの崩壊がもたらした一番の問題は投
出来事がある。1985 年にソビエト共産党書記長に就任し
機マネーが行き場を失ったこと、すなわち 90 年前後の日
たミハイル・ゴルバチョフ氏が提唱・実践した政治体制
本でも問題になった「金余り」現象という新しい問題の
の改革ペレストロイカと情報公開グラスノスチは、後の
原因をつくったことである。自己増殖を最大の目的とす
1989 年のベルリンの壁崩壊や 1991 年のソビエト連邦の
る投機マネーは、必然的にハイリスク・ハイリターンの
崩壊へと展開、長く続いた東西冷戦構造が終結する。こ
金融商品に流れる。住宅金融ローンを担保にした金融商
の東西冷戦構造の終結が、投資マネーのグローバルな流
品に流れ込んだ投機マネーが、サブプライムローンの焦
25
PEN July
げ付きによってその後どのような顛末を辿ったのか、図 3
えた、あるいは IT バブル崩壊による IT 産業の低迷が間接
の説明で述べたとおりである。
的に影響を与えたと見てよい。また、図 3 に示した 2008
年末の世界金融危機の影響を受けている。ただ、100 年
に一度と称された経済危機だったにもかかわらず、その
3 そのとき半導体産業はどのような影響を受けたのか
危機は順調に回復していることがわかる。もう一つの注
目される点は、図のなかで Asia-Pacific と表されている韓
以上、三つの経済の転換点、すなわち 1990 年、2000 年
国や台湾の、IT バブル崩壊後の国際半導体市場における
そして 2008 年に何が起きていたのか、それぞれの点は
躍進である。Woldwide で表される市場総額の増加分は、
どのように関連していたのかを簡潔に振り返ってきた。
ほぼ韓国と台湾の分と見てよい。
ここではそれぞれの転換点で IT 産業を下支えした半導体
産業がどのような影響を受けていたのかを解析しようと
思う。
図 4 にデータクエストによる世界市場における地域別企
業のシェア推移を示す [6]。客観的事実としては、S I A が
日本の半導体市場が閉鎖的であるとしてアメリカ通商代
表部へ提訴した 1985 年、日本企業のシェアがアメリカ
のそれを上回っている。その後 1990 年頃を境に、日本
のシェアは以降ずっと低下してきている。図 1 に示した
日経平均株価のプロフィールと重ねると、そのピークが
ほぼ同期していることがわかる。日本は、アメリカのロッ
クフェラーセンタービルや主要な映画会社などを次々に
買収するほどの好景気に沸いた。ただ、バブル崩壊後、
図 5 世界の半導体市場(2011 年以降は予測値)
日米半導体協定の枠組みのなかで日本の半導体産業は一
貫して国際競争力を低下させてきた。
ところで、今年 1 月下旬、オバマ大政権は一般教書演説
のなかで、アメリカを創りなおす 4 段階のシナリオを明
らかにした。大きな財政負担を伴う金融危機対応の財政
出動や医療保険改革には財政再建が必須であり、それを
支える国際競争力の向上が主要な課題となっている。具
体的には先端技術で主導権を回復することがシナリオの
第一番目に明記され、そのための教育制度の充実、社会
インフラの整備といった各課題が続いている。注目すべ
きことは、一般教書演説のなかでオバマ大統領が、韓国、
中国、台湾といったアジアの新興国の経済成長の成功を
図 4 世界市場における地域別企業のシェア推移
数回にわたって引き合いに出したことである。これらア
ジア新興国の成長は、その勤勉さや教育の充実によって
もたらされたことを強調しながら、アメリカも見習おう
次に 2000 年以降の半導体産業の世界市場動向を把握す
とアメリカ国民に呼びかけた。
るために、世界半導体統計、World Semiconductor Trade
Statistics(WSTS)のデータ [7] を過去にさかのぼって集
今回の一般教書演説で日本への言及はなかった。ただ、
計し直し、マーケットの変化を視認しやすくする目的で
興味深いのは、ちょうど 4 半世紀前、同じことが日本
折れ線グラフとした。その結果を図 5 に示す。こちらは%
に向けられていたことである。当時日本が成し遂げた成
シェアではなく、百万ドル単位のマーケットで、2011 年
功は、アメリカにとって見習うべき対象であり、アメリ
以降は推測値である。
カを象徴するビルや文化まで買いに来る日本は脅威でも
あった [8]。
2001 ~ 02 年にかけて半導体市場は急速に縮小している
26
が、これは図 2 に示した IT バブル崩壊が直接の影響を与
PEN July
4 投機マネーに翻弄された IT 産業
以上、1990 年頃の日本のバブル経済以降の IT 産業と、
それを支えた半導体産業の市場の動向を見てきた。上述
したとおり、日本がバブル景気に沸いていたころ、東西
冷戦構造が崩壊し、それ以降今日までの社会は新自由主
義が台頭し、席巻した社会だったといえる。資金を社会
に供給すれば景気が良くなるという単純明快な論理が支
配し、世界全体の GDP の何倍もの投機マネーが利ざやを
求めて駆け巡った。ただ、巨大な投機マネーが投入され
ることにより、経済が質的変化をきたし、経済や金融に
大きな混乱をもたらしてきた。その混乱が引き起こす経
図6 国内のメディアが IT に関する報道を行った回数の年推移
済的ストレスは、時として新しい産業を萌芽させるプラ
スの側面も持つ。しかしその新しい産業が発展しての経
そのようにして始まった日本の IT ビジネスでは拝金主義
済がそれに大きく依存するようになると、また巨大な投
がもてはやされ、ネットビジネスの寵児が生まれた。た
機マネーが投入されて大きなひずみが生まれ、その混乱
だそのような成功者は全体から見ればほんの一部の人で
は社会を支える先端産業の市場にも負の影響を与えてき
しかない。ビジネスも我々の社会を基盤から支えて QOL
た。この 20 年間で大きく成長してきた IT を用いたビジ
の向上に結び付くようなものではなく、巨大な資本を盾
ネスやそれを支えた半導体産業も、新自由主義の風潮が
にさらに異なる分野のビジネスを取り込もうとする、基
強まった社会のなかで駆け巡った投機マネーに翻弄され
本的には投資ビジネスの域を出ないものだったような気
た 20 年だったとは言い過ぎだろうか。
がする。その善悪を論じる資格はないが、上述したよう
に今日アメリカで生き残っている巨大 IT 産業が、1980
ここでもう一度、先月号に掲載した、日本のメディアが
年代後半から 90 年代前半の厳しい経済状況のなかから萌
IT を取り上げた頻度の年推移をみてみよう。図6に示し
芽し、バブルの崩壊を経て生き残ってきた経緯との大き
た統計が、日本国内の IT 技術やビジネスに関する関心を
な差異があるように思えてならない。
反映しているとするなら、これを図 2 に示した NASDAQ
総合指数の推移と比較すると、以下のようなことが明ら
かになる。
References
図 2 から、アメリカの IT ビジネスは 1995 年以降短期間
[1]
で大きく成長し、2000 年初めにはバブルの頂点にあった。
052011000000&n_cid=DSTPCS008&n_cid=DSTPCS008&df=2
そのバブルの崩壊が始まったのは、2000 年 4 月頃からで
ある。その IT バブルの崩壊過程のなかで、巨大 IT 産業の
いくつかが生き残り、今でもアメリカ経済の重要な存在
として経営展開していることは、よく知られた事実であ
る。
一方図 6 からは、日本がアメリカの e- コマースの成功を
みて IT に対して関心を払い始めたのが 2000 年であるこ
とが一瞥のもとにわかる。すなわち、日本が産業構造の
http://www.nikkei.com/money/column/teiryu.aspx?g=DGXNMSDB20003_20
[2] http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5075.html
[3]
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/6/6d/
Nikkei_225%281970-%29.svg
[4] http://itpedia.sfilar.com/it/NASDAQ
[5] http://dynamic.nasdaq.com/dynamic/nasdaq100_activity.stm
[6] http://www.nedo.go.jp/content/100085014.pdf
[7] http://semicon.jeita.or.jp/statistics/docs/20110607WSTS.pdf
[8] Japan As Number One: Lessons for America, by Ezra F.
Vogel, 1979
なかでの IT ビジネスの重要性に関心を払い始めた時、ア
メリカではすでに IT バブルの崩壊が始まっていた。
(ナノテクノロジー戦略室 阿多、関谷、安)
27
PEN July
CUTTING-EDGE TECHNOLOGIES
プレスリリースより
【レアアース】
【NMR 量子コンピュータ】
ネオジム系レアアース磁石用合金工場の生産能力を増強 固体核磁気共鳴(NMR)量子コンピュータの新しい操作原
中国江西省の生産子会社の能力を 50% 増の年産 3000 ト
理を発見-大規模な NMR 量子コンピュータの実現に一歩
ンへ(2011.7.6)
(2011.7.6)
昭和電工(株)
物質・材料研究機構(NIMS)、科学技術振興機構
同社は、ハイブリッド自動車等の駆動モーター、自動車の
NIMS は強磁場共用ステーションの設備および独自に開発
電動パワーステアリング、ハードディスクドライブのボイ
した装置を用い、未来のコンピュータと期待される「量子
スコイルモーター等に使用されるネオジム系レアアース磁
コンピュータ」の有力候補の一つである固体核磁気共鳴(N
石の原料である磁石用合金の生産能力を増強する。中国江
MR)量子コンピュータの新しい操作原理を発見した。量
西省贛州の合弁子会社の現行生産能力を月内に年産 2000
子コンピュータとは、「量子力学」の原理を利用した新し
トンから 3000 トンに引き上げることにより、同社の中国
い計算機の概念で、その実現により、現在の計算機では極
における磁石合金の生産能力は、内モンゴル自治区包頭の
めて長時間の計算が必要なため事実上解けないような問題
合弁子会社の年産 1000 トンと合わせて、年間 4000 トン
を解くことが可能になると期待されている。固体 NMR 量
となる。
子コンピュータは、固体中の原子核スピンで量子ビットを
http://www.sdk.co.jp/news/2011/12358.html
構成する方式で、現在、最も有望な「大規模」量子コンピュー
タ方式の1つと見なされているが、その実現にあたっては、
28
【グリーンビジネス】
操作する手法の開発が課題となっていた。本成果は、半導
2010 年度「グリーンイノベーション製品」売上高は過去
体中の核スピン間相互作用が、光のオン・オフという単純
最高の 3,780 億円を達成(2011.7.5)
な方法で操作できることを見出したもので、固体 NMR 量
東レ(株)
子コンピュータの実現に貢献するものと期待される。
同社は、
「グリーンイノベーション製品」の 2010 年度売
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20110706/index.html
上高を集計した結果、前年度比 31%増の 3,780 億円と過
PEN July
量子ビット間の情報伝達を担う「核スピン間相互作用」を
去最高を更新した。今後も、同分野での積極的な事業拡
【電池正極材料】
グローバル特許ライセンス取得 オリビン系リチウムイオ
ン電池正極材料の強固な特許体制を構築(2011.7.5)
住友大阪セメント(株)
同社は、オリビン系リチウムイオン電池正極材料を全世界
で製造販売できる特許ライセンスを取得した。今回取得し
た特許ライセンスは、オリビン系リチウムイオン電池正極
材料に関する基本特許と改良特許が含まれ、アメリカ、ヨー
ロッパ、アジアなどの各国に出願された全特許をパッケー
大を行う方針で、新たにスタートした中期経営課題では、
2013 年度に売上高 5,000 億円超を目指す、としている。
グリーンイノベーション製品とは、2004 年から展開して
いる「環境配慮型製品」を、より広義な視点で地球環境に
貢献する製品・技術群へと見直したもので、具体的には、
省エネルギー、新エネルギー、バイオマス由来、水処理、
空気浄化、環境低負荷、リサイクル、プロセス革新といっ
た地球環境問題や資源・エネルギー問題の解決に貢献する
分野で重要な役割を果たす製品をさす。
http://www.toray.co.jp/news/eco/nr110705.html
ジとしてまとめたものであり、リン酸鉄リチウムだけでな
く次期正極材料として注目されているリン酸マンガンリチ
ウムにも不可欠な特許。同社はリチウムイオン電池正極材
料の本格的事業拡大に向け、ベトナムで年産 2000 トン能
力のリン酸鉄リチウム新工場建設を既に決めているが、本
特許ライセンスの取得により全世界で正極材料の製造販売
が可能となり、またユーザー各社も同社正極材料を使用し
全世界で電池を製造販売することが可能となる。
http://www.soc.co.jp/news/pdf/110705news.pdf
【肥満と疾患】
肥満から糖尿病や動脈硬化への橋渡しメカニズムを解
明 脂肪融解タンパク質 AIM の阻害による、肥満から生
活習慣病への進行を阻止する画期的な薬剤開発の可能性
(2011.7.5)
東京大学
東大は今回、研究者自身が発見したタンパク質 Apoptosis
Inhibitor of Macrophage(AIM)の機能を抑制すると、肥
【水素吸蔵材料】
希土類金属水素化物の結晶構造の一般則を確立 水素吸蔵
材料の設計指針に重要な知見を提供(2011.7.5)
満が亢進してもその先の糖尿病や動脈硬化に進行しないこ
とを明らかにし、生活習慣病の根本的な治療法開発への扉
を開いた。
http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_230705_j.html
高輝度光科学研究センター、産総研、日本原子力研究開発
機構、大阪大学、新エネルギー・産業技術総合開発機構
共同研究グループは、SPring-8 での X 線回折および放射
光メスバウアー吸収スペクトル測定によって、1万気圧を
超える高い水素圧力に晒されたユウロピウム水素化物の結
【レアアース】
全く新しいタイプのレアアースの大鉱床を太平洋で発見
(2011.7.4)
晶構造と原子の価数状態を観測し、それらの変化を捉える
東京大学
ことに成功した。その結果、従来知られている二水素化物
東京大学は、南東太平洋や中央太平洋に、見た目は普通の
よりも水素濃度が高く、ユウロピウムの価数が +3 価で、
泥にも拘らず、高品位のレアアースを含有した「レアアー
面心立方金属格子をもつ結晶構造相が出現すること、すな
ス資源泥」が膨大な量分布していることを発見した。従来
わちユウロピウム水素化物も従来の水素化物の構造則に従
海底鉱物資源としては、熱水性硫化物鉱床、マンガンクラ
うことが確認された。これによって、すべての希土類金属
スト鉱床、マンガンノジュール鉱床の 3 種類が知られてい
水素化物に共通する、水素濃度によって取りうる結晶構造
たが、レアアースを豊富に含有した全く新しいタイプの第
の一般則が確立された。
4 の海底鉱物資源が発見された。この「レアアース資源泥」
http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=285430&lindID=4
は、レアアース含有量が高いこと、資源量が膨大(陸上埋
蔵量の約 1000 倍)かつ探査が容易なこと、開発の障害と
なるウランやトリウムなどの放射性元素の含有量が少ない
29
PEN July
こと、レアアースの回収が極めて容易なこと(薄い酸で容
【アルツハイマー病原因物質】
易に抽出可能)など、夢のような海底鉱物資源と言える。
アルツハイマー病の重要な原因物質として A β 43 が浮上
この成果は、科学研究費補助金・基盤研究(S)
「画期的な
見過ごされていたアミロイドβ亜種が強力な病態促進因子
海底鉱物資源としての含金属堆積物の包括的研究」の成果
(2011.7.4)
の一部。
理化学研究所
http://www.u-tokyo.ac.jp/public/pdf/20110704.pdf
理研は、アルツハイマー病患者を免疫組織化学的に検討し
たところ、これまで見過ごされてきたアミノ酸残基が 43
個からなる A β亜種「A β 43」が、A β 40 よりも高頻度
【サイトカイニンの機能】
で存在していることを突き止め、アルツハイマー病の強力
植物ホルモン「サイトカイニン」に新たな機能を発見 乾
な病態促進因子であることを発見した。 A β 43 を特異的
燥・塩ストレス応答を制御する植物ホルモンの相互メカニ
に検出する ELISA システムを構築し、駆使した結果、A β
ズムが存在(2011.7.4)
43 が A β 42 よりも強力な神経毒や凝集性を発揮し、A
理化学研究所
β 40 よりも広範囲で存在すること、家族性アルツハイマー
理研の研究グループは、相反する応答を引き起こすこの 2
病患者の遺伝子解析から、A β 43 の存在比率が高いほど
つの植物ホルモンの相互作用が、植物の乾燥・塩ストレス
早期に発症していること、が分かった。さらに、A β 40
応答を制御するというメカニズムを解明した。多種ある成
や A β 42 は生まれつき一定割合で脳内で産生されるが、
長ホルモン「サイトカイニン(CK)
」のタイプを別々に測
A β 43 は加齢に伴い出現することも分かった。このため、
定することができる質量分析装置を使って、乾燥・塩スト
A β 43 がアルツハイマー病の発症に極めて重要な促進因
レスにさらされたモデル植物のシロイヌナズナの CK 量を
子であり、加齢性変化を示すことから、新たな治療法や診
測定した結果、ストレス応答の遺伝子発現を阻害する CK
断法の開発につながると期待できる。
は、ストレスを受けるとその量を減少させて、ストレス応
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2011/110704/index.html
答を促進させることが分かった。さらにホルモン「アブシ
ジン酸(ABA)
」との関係を調べたところ、CK 量を減少さ
せた遺伝子変異体(低 CK 植物)は、ABA に対する感受性
【IDEA 賞】
が高まり、低 CK 植物に過剰な ABA を与えると、野生型よ
くり返し使うライフスタイルを提案する充電池「eneloop
りも生育や発芽率が悪くなることが分かった。
stick booster」が、米「IDEA 賞」を受賞(2011.7.4)
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press/2011/110704_3/index.html
三洋電機(株)
同社の USB 出力付ハンディ電源「eneloop stick booster(エ
ネループ スティックブースター)
」が、アメリカのデザイ
【素材事業提携】
ン賞「IDEA 賞」の銅賞を受賞した。
「IDEA 賞」は、アメ
光学フィルムの事業提携と合弁会社設立(2011.7.4)
リカで権威のあるデザイン賞で、外観デザインだけではな
パナソニック電工(株)
、凸版印刷(株)
、
(株)巴川製紙
く、ユーザーメリットや環境への適合性など複数の基準で
所
選出される。
3 社はスマートフォンなどのモバイル機器や液晶ディスプ
http://panasonic.co.jp/sanyo/news/2011/07/04-1.html
レイなどに使用される光学フィルムにおける事業提携に合
意し、反射防止フィルムなどの製造を行う合弁会社設立に
関する契約を締結した。それぞれの強みを戦略的に融合さ
せることによる新たな高機能製品の創出や市場競争力の強
化という点で、シナジー効果が図れると判断し、光学フィ
ルムに関する事業提携に合意し、反射防止フィルムなどの
製造を行う合弁会社の設立に関する契約を締結するに至っ
たもの。
http://www.toppan.co.jp/news/newsrelease1247.htm
【ポリシリコン表面処理】
多結晶シリコン太陽電池の新しい作製方法 定砥粒方式で
スライスした基板を用いた低コスト表面テクスチャー形成
技術(2011.7.4)
産総研、
(株)ノリタケカンパニーリミテド、
(株)不二製
作所、和光純薬工業(株)
4 者は共同で、固定砥粒方式でスライスした多結晶シリコ
ン基板の表面テクスチャー形成技術を開発した。固定砥粒
方式でスライスした多結晶シリコン基板に、サンドブラス
ト処理と酸エッチング液による処理を組み合わせることで
表面テクスチャー構造を形成して表面反射率を低減するも
30
ト出力のジャイアントパルスが望めるまでになった 。一
面テクスチャー構造を形成した基板を用いることで、より
方で,従来のパルスレーザーでは発生が困難であったピコ
低価格で多結晶シリコン太陽電池が作製できると期待され
秒からナノ秒に至るパルスギャップ領域が点火に有効であ
る
ることを見出した。分子研のマイクロチップ Q スイッチ
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/pr20110704/pr20110704.html
レーザーはモードロックと従来 Q スイッチのギャップを
PEN July
のであり、量産に適した方法である。この技術によって表
埋めるもので、従来報告値より遙かに低い投入エネルギー
で点火を可能とできた。エンジン動作実験でも、スパーク
【大規模太陽光発電所】
プラグの 1/10 程度の投入エネルギー(2mJ 程度)での効
HIT 太陽電池モジュール搭載システムとして世界最大 イ
率的な動作を検証でき、低燃費化・低エミッション化を可
タリア南東部に大規模太陽光発電所が完成(2011.7.1)
能とする希薄燃焼での優位性を実証できた。
三洋電機(株)
http://www.ims.ac.jp/topics/2011/110704.html
同社の太陽電池が採用された、イタリア南東部プーリア州
ブリンディジ県の大規模太陽光発電所が完成した。本大規
模太陽光発電所は、高い発電効率を持つ HIT 太陽電池モ
【肝細胞】
ジュールが 32,202 枚搭載された、HIT 太陽電池の納入案
マウスの皮膚細胞から肝細胞を直接作製する方法の開発に
件としては、世界最大のシステム。また、発電量を増大さ
成功(2011.6.30)
せるためにトラッキングが設置されており、トラッキング
九州大学、科学技術振興機構
システムの太陽光発電所としては、欧州最大規模を誇る。
九州大学は、マウスの皮膚細胞に遺伝子導入と適切な培養
環境を提供することで、皮膚細胞から機能的な肝細胞を直
接作製することに成功した。具体的にはマウス胎仔及び成
体マウスの繊維芽細胞に Hnf4 αと Foxa という肝細胞分
化に関連した二つの転写因子を導入し、コラーゲンや肝細
胞増殖因子を含む肝細胞分化に適した培養環境を提供する
ことで、繊維芽細胞を肝細胞に非常によく似た細胞へと直
接変化させることに成功したもの。作製した細胞は肝細胞
の形態的特徴や遺伝子・タンパク質発現を有し、肝細胞特
有の機能をもったまま培養下での増殖・維持が可能。また、
肝機能不全で死に至る高チロシン血症モデルマウスの肝臓
完成した大規模太陽光発電所
http://panasonic.co.jp/sanyo/news/2011/07/01-1.html
へ iHep 細胞を移植すると、肝細胞として障害を受けた肝
臓組織を機能的に再構築し、マウスの致死率を大幅に低減
させることが可能。本成果は、ヒト皮膚細胞からの肝細胞
作製とその臨床応用や創薬研究への展開に繋がる成果であ
【スパークプラグをレーザー点火】
ジャイアントマイクロフォトニクスの創成とレーザー点火
る。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20110630/index.html
(2011.7.1)
分子科学研究所
マイクロチップレーザーは小型化を図ることでコヒーレン
ス、輝度を高めることができるが、その代償として高出力
化や高効率化は諦めざるを得ず、このことが新レーザーの
探索活性化に繋がった。最近になりレーザーセラミックス
や分極反転素子など、物質・材料の光に対する性質をマイ
クロメートルの桁で制御することにより、その特性の強調
や新機能の発現が可能となることが示され、状況は大きく
変わった。これに物性研究に則った新たな Q スイッチ動作
法の提案が融合し、固体レーザーのダウンサイジングに端
を発したマイクロチップレーザーは、これらマイクロ固体
フォトニクスに至り、従来不可能と思われてきたメガワッ
【ゼーベック・スピントンネル効果】
ゼーベック・スピントンネル効果を発見 温度差だけで電
子スピン情報がシリコンに伝わる新現象(2011.6.30)
産総研、オランダ基礎科学財団
両者は、熱エネルギーをスピンに変換する新現象「ゼーベッ
ク・スピントンネル効果」を発見した。磁性体中のスピン
を用いた不揮発性メモリーにデジタル情報を記憶し、その
デジタル情報を半導体中に入力して演算できれば、省電力
化が可能となる。これまでの研究では、磁性体から半導体
シリコン中にスピン情報を入力するのに電流が用いられて
きたが、多くの電気エネルギーが熱になって浪費されてし
31
PEN July
まう。抜本的な省電力化のために、廃熱を再利用する方
コロラド州で開催された。
法の開発が望まれてきた。今回、ゼーベック・スピントン
http://www.yrc-pressroom.jp/html/201162915tr002.html
ネル効果を利用することにより、電流を使わず、熱エネル
http://www.yrc-pressroom.jp/html/201162717ms001.html
ギーによって磁性体の電子スピンが持つデジタル情報をシ
リコン中に入力することに成功した。この発見により、廃
熱を再利用する新しいグリーン情報技術実現への道が拓か
【LCD ドライバ】
れた。
タブレットなどの LCD バックライトに最適な LED ドライ
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/pr20110630/pr20110630.html
バを発売(2011.6.29)
Intersil Corp.
同社は米国時間 28 日、需要が急増しているスマートフォ
【鳥の情報処理】
鳥類の音声シーケンス情報処理能力の解明(2011.6.29)
京都大学
鳥類の多くを占める鳴禽類は、
「歌」と呼ばれる複雑な音
声シーケンスを用いて他個体とコミュニケーションをと
ン、タブレット、サブノートパソコンなどで使われる小型
から中型の LCD バックライト向けに、業界トップレベル
の電流精度とチャネル間電流整合を実現した LED ドライ
バの新製品群の販売を開始した。
http://www.intersil.com/about/
る。さらに、
鳴禽類の一部の種は生後にそのような音声シー
ケンスの使い方を学習して獲得するなど、鳴禽類の音声コ
ミュニケーションとヒトの言語コミュニケーションとはい
【アンモニア】
くつかの似た特性を持つことが知られていた。研究グルー
エレクトロニクス分野向け高純度アンモニア事業を強化 プは、鳴禽類の一種ジュウシマツが発する音声シーケンス
日本・台湾・中国各拠点の生産能力を引き上げて合計年
「歌」に人為的に音素の並びの改変を施し、そのような改
変「歌」を判別できるかを行動学的に解析した。その結果、
ジュウシマツは些細なシーケンス改変も敏感に識別するこ
とができることを明らかにした。また、その際、識別でき
るシーケンス改変と識別できないシーケンス改変が飼育し
ている複数個体に共通することを見出した。
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/110627_1.htm
5000 トン体制へ(2011.6.29)
昭和電工(株)
同社は、エレクトロニクス分野向けに需要が伸びる高純度
アンモニアの生産能力を、日本・台湾・中国の 3 拠点にお
いて引き上げる。現状、日本、台湾、中国で年 3000 トン
の年産能力を、充填や貯蔵設備の増強、生産工程の効率化
等の工事を行うことで、2011 年末までに、年 5000 トン
体制とする。
http://www.sdk.co.jp/news/2011/12406.html
【環境技術】
低燃費タイヤのサイズラインアップを拡大(2011.6.29)
横浜ゴム(株)
同社は低燃費タイヤのラインアップ拡大の一環として、環
境タイヤのフラッグシップ「BluEarth-1」の新サイズを7
月から追加発売する。追加サイズは 185/65R15 88H で、
オープンプライス。
「BluEarth-1」は国内タイヤラベリン
グ制度で、最高の低燃費性能グレードである、ころがり抵
抗性能:AAA を獲得し、ウェットグリップ性能は c にグ
レードされる。また、最高峰コンフォートタイヤ「ADVAN
dB」のラベリング表示を開示。全 48 サイズのうち、65
と 60 偏平の 11 サイズが、ころがり抵抗性能:A、ウェッ
トグリップ性能:b の低燃費タイヤにグレードされる。
なお、同社は 27 日、電気自動車で参戦した「2011 パイ
クスピーク・インターナショナル・ヒルクライムレース」
において、同社タイヤ装着車が 2 年連続で電気自動車の最
速記録更新を成し遂げた。記録は昨年のタイムを 57 秒短
32
縮した 12 分 20 秒 084。レースは 6 月 26 日にアメリカ・
【産学連携】
3 年間の包括協定契約を締結(2011.6.29)
東北大学、サノフィ ・ アベンティス(株)
両者は 3 年間の包括協定契約を締結した。協定は、サノ
フィ ・ アベンティスが東北大学における数多くの創造的か
つ革新的な研究の紹介を受け、その中から将来サノフィグ
ループにとって有益な研究テーマを見出し、共同開発につ
なげるもの。この協定契約によりサノフィ・アベンティス
は、東北大学のライフサイエンス領域研究における革新的
なシーズ・研究を包括的に模索する初の産業パートナーと
なり、優れた地域・技術・科学領域間にまたがる創造的ネッ
トワークを中心とした構造を構築するというアプローチが
強化される。
http://www.sanofi-aventis.co.jp/l/jp/ja/index.jsp
トロニクスが次世代の省エネルギー電子情報技術として
数式処理の世界記録を達成 16 次方程式の判別式計算の
期待されている。量子コンピュータや超低消費電力情報
成功により、
「ものづくり」の品質向上に期待(2011.6.27)
処理デバイスといった、スピンを利用した次世代電子デ
富士通(株)
、
(株)富士通研究所
バイスを実現するためには、あらゆる物質に利用できる
京都大学は、数式処理による 16 次方程式の判別式計算に
汎用的なスピン流の注入方法を確立することが最重要課
世界で初めて成功した。これは、京都大学に対して富士
題である。しかしスピン流を作り出すことは容易ではな
通が納入したサーバ「SPARC Enterprise M9000」とミド
く、これまで物理的な制限から非常に限定された物質に
ルウェア「Parallelnavi」
、および、富士通研究所の数式
しかスピン流を注入することができなかった。
処理技術を用い、京都大学が開発した新たな高速計算ア
今回両者は、磁気のダイナミクスを利用することで、上
ルゴリズムにより、従来は 15 次方程式までだった判別式
記制限を一切受けない極めて汎用的なスピン流注入手法
計算の世界記録を更新したもの。方程式の判別式計算は、
を発見した。さらにこの方法は電界により制御可能であ
より高い次数で計算すればするほど、建築物から半導体
ることを明らかにし、これにより従来用いられてきた方
にいたる「ものづくり」に関して、品質の向上や部材の
法の 1000 倍以上のスピン流を作り出すことに成功した。
削除、歩留まりの改善など、さまざまな課題を解決する
本研究成果によって、金属だけでなく半導体・有機物・
ことができる。
高温超伝導体といったあらゆる物質への高効率なスピン
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2011/06/27-2.html
流注入が容易に可能となり、スピントロニクスデバイス
PEN July
【判別式計算】
設計の自由度が大きく拡大されることで、環境負荷の極
めて小さい次世代省エネルギー電子技術への貢献が期待
【有害物質酸化分解技術】
過酸化水素添加多段式オゾン処理技術が日本オゾン協会
される。
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2011/06/press20110627-01.html
技術賞を受賞(2011.6.27)
帝人(株)
同社が展開している過酸化水素添加多段式オゾン処理技
【B 細胞活性化メカニズム】
術「HiPOx」が「日本オゾン協会 技術賞」を受賞した。
B 細胞が肺炎球菌などに反応して活性化する仕組みを解明
HiPOx は、 米 国 APTwater 社 に よ り 開 発 さ れ た も の で、
シグナル伝達を担うアダプター分子 CIN85 の機能が明ら
オゾンと過酸化水素を効率的に混合し、強力な酸化力を
かに(2011.6.27)
持つ OH ラジカルを発生させる促進酸化処理技術。オゾ
理化学研究所、大阪大学
ン注入量の低減や、反応副生成物の抑制などを特徴とし、
共同研究グループは 1998 年に、B 細胞の表面に存在する
オゾンを上回る酸化力により、難分解有機化合物などの
B 細胞抗原受容体(BCR)が抗原を認識すると、その情
有害・汚濁物質を分解することができる。このたびの受
報を「BLNK」と呼ぶアダプター分子が伝達することを突
賞は、シンガポール公益事業庁と取り組んでいる「HiPOx」
き止めていた。しかし、その後 BLNK がどんな分子の修
を使用した排水処理技術の共同開発の成果が評価された
飾を受けて B 細胞を活性化させるかについては謎のまま
もの。
だった。同研究グループは今回、B 細胞が肺炎球菌などの
http://www.teijin.co.jp/news/2011/jbd110627.html
抗原に反応して抗体を産生するためには、別のアダプター
なお、本技術と装置を用いた難分解性有機溶媒 1,4- ジオ
分子「CIN85」が必須であることを解明した。まず酵母を
キサンの処理については、6 月 14 日に別途プレスリリー
使った研究により、BLNK に CIN85 が結合することを発
スが行われている。
見した研究グループは、CIN85 欠損マウスを作製して野
http://www.teijin.co.jp/news/2011/jbd110614.html
生型マウスと詳細に比較した。 その結果、CIN85 が免疫・
炎症反応の制御に重要な「NF- κ B」という転写因子の活
性化に欠かせず、CIN85 が存在しない場合には、病原体
【汎用スピン流注入技術】
成分の一種であるⅡ型 T 細胞非依存的抗原を投与されて
あらゆる物質で利用可能な新たなスピン流注入手法を発
も、抗体を産生することができなくなることを発見した。
見 次世代の省エネルギーデバイス開発に向けて大きな進
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2011/110627/index.html
展(2011.6.27)
東北大学、日本原子力研究開発機構
近年、電子の電気的性質の流れである電流の代わりに、
電子の磁気的性質の流れ「スピン流」を利用するスピン
33
PEN July
【シナプス素子】
エピジェネティクスが議論されているが、ストレスがヒ
人間のように記憶も忘却もする新しい脳型素子 世界
ストンの化学修飾にどのように影響するのかは分かって
初、 た っ た 1 つ の 素 子 で 複 雑 な シ ナ プ ス 活 動 を 実 現
いない。理研は、ストレスによる遺伝子発現の変化が、
(2011.6.27)
DNA 配列の変化を伴わずに親から子供に遺伝する、とい
物質・材料研究機構(NIMS)
う新たなメカニズムを発見した。DNA がヒストンに巻き
NIMS の国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の研究グ
ついて形成しているクロマチンには、メチル化ヒストン
ループは、カリフォルニア大学 ロサンゼルス校と共同で、
が多く、転写が不活発なヘテロクロマチン領域がある。
脳の神経活動の特徴である二つの現象「必要な情報の記
研究チームは、ショウジョウバエの転写因子 dATF-2 が、
憶」と「不要な情報の忘却」を1つの素子で自律的に再
ヘテロクロマチン構造の形成に不可欠である一方、熱ス
現する新しい素子「シナプス素子」の開発に世界で初め
トレスや浸透圧ストレスでリン酸化されると、ヘテロク
て成功した。現在のコンピュータシステムは高性能化の
ロマチン構造を弛緩して転写を活発にし、その状態が子
限界が近付いているとされ、さらなる高性能化には脳型
供に遺伝することを突き止めた。さらに、親が受けたス
回路・脳型コンピュータの開発が必要とみられている。
トレスの影響は子供にだけ遺伝し、孫には遺伝しないも
その実現に不可欠なのが今回の素子で、いわば1つ1つ
のの、二世代にわたってストレスを受けると子供だけで
の神経細胞に相当する。人間の脳は、情報の入力頻度が
なく孫にまで伝わり、その後何世代にも遺伝する可能性
高いほど確実に記憶し、逆に入力頻度が低ければ曖昧な
があることが分かった。ストレスが影響する非メンデル
記憶しか形成されずに忘却する。これらの仕組みは脳の
遺伝学のメカニズムを初めて解明したもので、親の受け
神経回路におけるシナプスの結合強度の変化によって実
たストレスが子供の疾患発症頻度にも影響する可能性を
現されていると考えられている。本研究で実現したシナ
示す成果と注目される。
プス素子は、電気信号の入力頻度によって自身の結合強
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2011/110624/index.html
度を調節することができる。信号強度とその入力回数が
同じであっても、入力頻度の高い信号は長時間持続する
高い結合強度を誘発し、入力頻度の低い信号は一時的に
のみ結合強度を増大させる。このようなシナプス素子の
水 を 入 れ る だ け で 発 電 す る「 水 電 池 NOPOPO(TM)」 動作は脳内におけるシナプスの結合強度の変化とよく一
軽 量 で 取 り 扱 い や す く、 災 害 用 な ど の 備 蓄 に 最 適 致することが分かった。シナプス素子は、金属電極とイ
(2011.6.24)
オン・電子混合伝導体電極で構成され、電気信号の入力
ナカバヤシ(株)
頻度に依存したイオンの動きを利用し、電極間に形成さ
同社は、水を入れると発電する電池「水電池 NOPOPO」
れる金属原子架橋の状態(シナプスの結合強度)を制御
を 8 月上旬より販売する。この電池は、付属のスポイト
することに成功した。シナプス素子は事前の動作設計な
を使って本体の穴に水を入れるだけで発電する単三電池、
しに多様な動作が可能であることから、将来人間のよう
災害時や非常用の備蓄として有用で、水を入れなければ
に経験によって賢くなる人工知能の構築に大きく寄与す
長期間保存が可能。LED ライトの場合、電池 1 本でおよ
ることが期待される。
そ 5 時間使うことができる。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20110627-2/index.html
http://www.nakabayashi.co.jp/service/news/detail.html?news_id=368&mode=view
【非メンデル型遺伝メカニズム】
34
【水電池】
【創薬】
親の受けたストレスは、DNA 配列の変化を伴わずに子供
プロファイリングで、抗がん剤候補物質の作用機序を解
に遺伝 ストレスが影響する非メンデル遺伝学のメカニ
明独自のプロテオームプロファイリングシステムで薬剤
ズムを世界で初めて発見(2011.6.24)
標的を迅速同定(2011.6.24)
理化学研究所
理化学研究所
近年、温度や日照ストレスにより変化した親の形質が次
理研の研究グループは、独自に開発した、薬剤の作用に
世代に受け継がれるトウモロコシの例で知られるように、
応じて細胞が固有のタンパク質変動を誘導する性質を利
DNA 配列の変化を伴わない遺伝が注目されている。この
用したプロテオームプロファイリングシステムを駆使し、
メンデルの法則に従わない遺伝現象のメカニズムとして、
新規抗がん剤候補の作用を解明することに成功した。こ
DNA やヒストンの化学修飾で制御される遺伝現象である
れはまず、作用既知の多種の薬剤についてタンパク質変
【二次電池負極材料】
する。次に、解析対象である作用未知の候補物質のタン
中国煙台にリチウムイオン電池用カーボン負極材の生産
パク質変動データを取得し、それをデータベースと統合
拠点を新設(2011.6.23)
しプロファイリング解析し作用標的・作用機序を予測す
日立化成工業(株)
る。研究グループはこのシステムを用い、ブラジルに自
同社は、中国におけるリチウムイオン電池用カーボン負
生するオトギリ草の茎から抽出した成分を基にした、強
極材のさらなる事業拡大を図るため、2012 年 3 月から中
力な抗がん効果が見込める誘導体 BNS-22 の作用機序を解
国煙台で生産を開始する。すでに煙台では日立化成工業
明した。その結果、DNA トポイソメラーゼ II と呼ぶ酵素
(煙台)有限公司がプリント配線板用感光性フィルムのス
を標的にするという予測を得るとともに、試験管や細胞
リット加工を行っており、今般約5億円を投じて同社内
レベルで実験的に、この酵素を特異的に阻害しているこ
に新工場を建設する。
とを明らかにした。
http://www.hitachi-chem.co.jp/japanese/index.html
PEN July
動を網羅的に解析したデータを取得し、データベース化
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2011/110624_3/index.html
【2 型糖尿病】
【花粉アレルギー発症因子】
2 型糖尿病に高頻度に認められるゲノム構造異常を発見 花粉症・アレルギーの発症因子の立体構造を世界で初め
新たな診断法・治療薬開発に期待(2011.6.23)
て解明 副作用を抑えた治療薬の探索・設計が可能に 東北大学
(2011.6.23)
同 大 学 の 研 究 グ ル ー プ は、DNA チ ッ プ 研 究 所 と の 共
科学技術振興機構(JST)
、京都大学、九州大学
同研究により、2 型糖尿病に高頻度に認められるゲノ
JST 課題解決型基礎研究の一環として、共同研究グループ
ム構造異常を発見した。この研究成果は、国際専門誌
は、花粉症の薬の標的である
「ヒスタミン H1 受容体」(H1R)
Experimental Diabetes Research に掲載された。糖尿病は
の立体構造をX線結晶構造解析によって解明した。花粉
日本の国民病とも呼ばれ、患者は 800 万人以上、その予
症をはじめとするアレルギー疾患は、花粉などの異物に
備軍まで入れると 2000 万にも及ぶが、2 型糖尿病はその
免疫機能が過剰に反応することが原因。アレルギー症状
大部分を占める。生活習慣要素に加え、家族内での発症
が起こるメカニズムは複雑だが、花粉症やアレルギー症
が多いことから遺伝因子も大きく関わることが知られて
状は、花粉などの刺激で体内にあるヒスタミンなどの炎
いる。しかし、これまでの数多くの研究では、発症リス
症物質が飛び出し、それらが受容体と呼ばれる膜たんぱ
クが最大でも 1.4 倍程度と非常に低い一塩基遺伝子多型
く質 G たんぱく質共役型受容体に結合することで引き起
しか発見されず、「糖尿病体質」を説明する決め手に欠け
こされる。花粉症の薬として知られている抗ヒスタミン
ていた。
薬は、ヒスタミンが受容体 H1R に結合するのをブロック
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2011/06/press20110623-01.html
することで花粉症の症状を抑制する。しかし、抗ヒスタ
ミン薬は、H1R 以外の受容体にも結合しやすいため、眠
気や口渇、不整脈などの副作用を引き起こす場合がある。
そのため、副作用を抑えたより効果的な抗ヒスタミン薬
の開発に向けて、H1R の立体構造の解明が有効な手段と
して期待されていた。本研究では、H1R の立体構造を世
界で初めて明らかにした。また、H1R と抗ヒスタミン薬
の複合体の立体構造から、抗ヒスタミン薬の結合様式や、
H1R に特有なアミノ酸に囲まれた薬剤結合部位の存在も
明らかにした。本研究により、分子レベルで薬の標的の
「形」が明らかになったことで、今後、その立体構造情報
をもとに、より効果的で副作用の少ない花粉症・アレル
ギー疾患の治療薬の探索・設計が可能となるものと期待
される。
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20110623/index.html
【重粒子線がん治療】
世界最高速 3 次元スキャニング照射法を用いた治療を開
始 日本発の次世代型重粒子線がん治療、新たな展開へ
(2011.6.22)
放射線医学総合研究所
同研究所の重粒子医科学センターでは、新治療研究棟に
おいて、高速 3 次元スキャニング照射法による新しい治
療システムを完成させた。1 例目の患者への重粒子線がん
治療を、2011 年 5 月 17 日より開始し、6 月 10 日に終
了した。なお、2 例目以降の患者への治療も既に開始して
おり、半年間程度 10 数名の患者に対して臨床試験を実施
した後に、先進医療に移行する予定。今回の臨床試験に
用いた治療システムは、複雑な形の病巣にも高速(最高
で従来の 100 倍の速度)に照射可能で、さらなる線量の
集中性および副作用の低減を実現できることから、日帰
35
PEN July
り治療の実現に向けた治療期間のさらなる短期化につな
を提案していく、としている。
がる。これらの成果は、日本発の重粒子線がん治療技術
http://www.takenaka.co.jp/news/pr1106/m1106_03.html
が世界に展開するうえで、重要なステップになる。
http://www.nirs.go.jp/information/press/2011/06_22.shtml
【ものづくり支援、クラウド環境】
【炭素繊維】
欧州テン・カーテとの間で航空機用途向けの炭素繊維に
関する長期供給基本契約を締結(2011.6.21)
東レ(株)
同社はオランダのテン・カーテ・アドバンスト・コンポジッ
ツと、同社が航空機用途向けに製造する熱可塑性樹脂複
合材料「TenCate Cetex®」に使用する炭素繊維について、
2011 年から 5 年にわたる長期供給基本契約を締結した。
この長期契約に基づき、東レはテン・カーテに高性能炭
素繊維を供給し、同社の航空機用熱可塑性プリプレグの
需要拡大をサポートする。
次世代ものづくり環境「エンジニアリングクラウド」 も
のづくりを支援するソフトウェア群をクラウドサービス
で利用可能に(2011.6.21)
富士通(株)
同社は、CAD や解析ソフト、部品データベースなど、も
のづくりを支援するソフトウェア群、ならびにものづく
りを革新する新しいサービス群を、同社データセンター
からクラウドサービスとして提供する次世代ものづくり
環境「エンジニアリングクラウド」のコンセプトを確立
した。これに基づき、2011 年 10 月より順次、サービス
を提供開始する。
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2011/06/21.html
http://www.toray.co.jp/news/carbon/nr110621.html
【環境計測、カーボンナノチューブ】
カーボンナノチューブ飛散量を定量的に評価できるシス
テムを開発 半日で正確な飛散量算出、検査結果から最
適な対策プランを提案(2011.6.21)
(株)竹中工務店
同社は、東芝ナノアナリシスと共同でカーボンナノチュー
ブ飛散量を算出できるシステムを開発した。本システ
ムでは特殊な処理を施すことにより、従来の作業環境測
定方法では難しかった、空気中に飛散するカーボンナノ
チューブを炭素量として定量的に評価することが可能。
また本システムを使うことにより、通常 2 ~ 3 日かかっ
ていた分析作業を最短半日で実施することができる。通
常カーボンナノチューブについて暴露量の評価をする場
合には、①捕集したフィルターの重さと本来のフィルター
の重さの差により算出する方法と、②電子顕微鏡による
形状観察を行うという 2 つの方法がある。①の場合には
付着した重量をすぐに算出することはできるが、同時に
捕集された他の成分の重量も含まれていることから、カー
ボンナノチューブ飛散量を高めの値として評価してしま
う恐れがある。②の場合には専門機関に検体を送付して
精密検査を行うため、
結果がでるまでに約 2 ~ 3 日かかる。
本システムでは、半日という短時間で作業環境中におけ
るカーボンナノチューブの飛散量を評価し、作業環境管
理の良否を判断することが可能。今後は、カーボンナノ
チューブを使用している半導体や各種電池などの研究所・
工場で本システムを活用し、検査結果に基づいて、気圧
や気流などを活用した最も効率的な暴露・飛散防止対策
36
【CIGS 太陽電池】
太陽電池の軽量化・高効率化を実現可能に! 高い耐熱
性・絶縁性を両立した「フレキシブル CIGS 太陽電池用基
板」を新開発 フレキシブル CIGS 太陽電池サブモジュー
ルで 15%の光電変換効率を達成(2011.6.20)
富士フイルム(株)、産総研
同社は、CIGS 太陽電池の製造工程で要求される 500℃以
上の耐熱性と高い絶縁性を両立した独自のフレキシブル
太陽電池用基板を開発した。産業技術総合研究所との共
同研究により、新開発のフレキシブル基板を用いた小面
積の CIGS 太陽電池において光電変換効率 18.1%、複数
の太陽電池を 1 枚の基板上で直列に接続した CIGS 太陽電
池サブモジュールにおいて光電変換効率 15.0%を達成し
た。今回開発したフレキシブル基板を用いた CIGS 太陽電
池は、ガラス基板を使った場合と比較して、面積当たり
の重量を 1/2 以下に軽量化可能で、かつ結晶系シリコン
太陽電池並の高効率を実現できることが特長。軽量な特
長を生かし、車や人工衛星への搭載、建材との貼り合せ
など、新たな用途への応用が期待される。
http://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_0520.html
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/pr20110620/pr20110620.
html
おいては、非一様性と自己無撞着性の二つが大きな鍵と
アクティバスファーマと岐阜薬科大学の共同研究契約締
なるが、分子研は光の空間的非一様性を取りこんだ光学
結(2011.6.20)
応答理論の開発を行なった。
そーせいグループ(株)
http://www.ims.ac.jp/topics/2011/110620.html
同社の 100% 子会社である(株)アクティバスファーマは、
PEN July
【創薬、ナノ粒子】
同社が開発した医薬品のナノ粉砕化技術 Activus Pure
Nano-particle Technology(APNT)を応用した医薬品開
【スピントロ二クス】
発に関して、岐阜薬科大学との共同研究契約を締結した。
大きなスピン偏極をもった電子材料を開発 新しいスピ
APNT は、難溶性の医薬品原料を 200nm レベル以下の微
ントロニクス材料開発に大きな前進(2011.6.20)
細な結晶粒子径へ効率的に粉砕しつつ、不純物の混入を
東京大学
極めて低く抑えることが可能は技術。
最先端研究開発支援プログラム「強相関量子科学」の研
http://www.sosei.com/pdf/press_jp_20110620_326.pdf
究の一環として、東京大学大学院工学系研究科の研究グ
ループは、大きなスピン偏極を有する電子材料を開発し、
スピントロニクス材料開発に向けて大きく前進した。 ス
【京(けい)
】
ピントロニクスデバイス開発分野では電気によって伝導
京速コンピュータ
「京」
が世界 1 位に 世界最高性能 8.162
電子のスピンの向き(偏極)を制御することは重要な開
ペタフロップスを達成し、TOP500 リストで首位獲得 発課題の一つ。これまでも伝導電子のスピンの向きを制
(2011.6.20)
御するための素子や材料が盛んに開発されてきたが、主
理化学研究所、富士通(株)
として結晶表面や界面構造の非対称性を利用したもので
両者は、文部科学省が推進する「革新的ハイパフォーマ
あった。今回、結晶構造に極性を持つ半導体 BiTeI の電
ンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)の構築」
子構造と磁気構造をスピン・角度分解光電子分光により
計画のもと共同で開発中の京速コンピュータ「京(け
直接観測することにより、結晶表面の伝導電子に限定さ
い)
」の性能で、ドイツ・ハンブルク開催の第 26 回国際
れることなく、物質中における多数の伝導電子が、その
スーパーコンピューティング会議にて発表された第 37
運動量に依存した大きなスピン偏極を有することを明ら
回 TOP500 リストにおいて、第 1 位を獲得した。今回、
かにした。このような性質は電流や電場によってスピン
TOP500 リストに登録した「京」のシステムは、現在整
と磁性を制御する機能を生み出すために大変重要であり、
備途中段階のもので、672 筐体の構成。LINPACK(リン
新しいスピントロニクス材料としての応用が期待される。
パック)ベンチマークでは、世界最高性能の 8.162 ペタ
http://www.t.u-tokyo.ac.jp/pdf/2011/110620_ishizaka.pdf
フロップス(毎秒 8,162 兆回の浮動小数点演算数)を達
成し、TOP500 リストの首位を獲得した。また、実行効
率は 93.0%と高水準の記録を達成した。日本のスーパー
【多層カーボンナノチューブ】
コ ン ピ ュ ー タ が TOP500 リ ス ト で 第 1 位 と な る の は、
多層カーボンナノチューブを事業化(2011.6.20)
2004 年 6 月以来のこと。
宇部興産(株)
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2011/110620/index.html
同社は、Artificial Micro Carbon(AMC)と呼ぶ多層カー
ボンナノチューブを事業化する。現在、宇部ケミカル工
場内に生産能力 20t/ 年の AMC 製造設備の建設を進めて
【光学応答理論】
ナ ノ 構 造 体 に お け る 光 と 物 質 の 非 一 様 な 相 互 作 用 (2011.6.20)
おり、2011 年 10 月に稼働を開始する予定。同社は CO
ガスを原料として、炭酸ジメチルなど C1 ケミカルと呼ば
れるファインケミカル製品を製造しているが、2005 年よ
分子科学研究所
り同じ CO ガスを原料として AMC の研究開発に着手し、
数十ナノメートルオーダー以下の極めて精巧な物質が作
ポリマー・電池分野を中心に試作を重ねてきた。 AMC は、
られるようになり、またそのような物質に新たな機能を
独自開発の触媒と製法により、繊維構造の中に釣鐘構造
持たせる試みが盛んに行われているが、このような状況
を持たせ、分散性及び導電性に最適な性能を実現してい
下ではもはや光と物質の相互作用の非一様性や自己無撞
る。また、飛散しにくくハンドリング性が高い点が特徴
着性が無視できなくなり、双極子近似の妥当性は脆くも
で、生産効率改善への貢献も期待できる。パウダー・溶媒・
崩れ去る。それ故に双極子近似を超えた光学応答理論の
ペレットの 3 つの形状で提供する予定。 同社はこの AMC
開発が必要になってきた。光と物質の相互作用の理解に
37
PEN July
を電池分野における新しい機能材料として、リチウムイ
1,000kW で、移動が容易なことから非常用など幅広い
オン電池の正極・負極の導電助剤としての需要拡大を見
用途に対応できるのが特長。実証機を長崎造船所内に設
込んでいる。 また、AMC は、ナイロン、ABS やポリカー
置し、商品化に向けた電力安定化実証試験を 7 月初旬に
ボネートなど熱可塑性樹脂に配合することで導電性を発
開始する。このコンテナ型「メガワット級大型蓄電シス
現させ、樹脂に帯電・静電防止機能を付与することがで
テム」は、同社のリチウムイオン二次電池を 2,000 個以
きるので、半導体搬送容器、OA 機器部材や静電気除去シー
上収めた 40 フィートコンテナと、電力の貯蔵および取
トなど向けにも拡販を検討している。この AMC® 事業に
り出しを行うために直流/交流変換機能を果たすパワー
より、2015 年度に 50 ~ 100 億円の売上を計画している。
コンディショナーを搭載した 20 フィートコンテナで構
http://www.ube-ind.co.jp/japanese/news/2011/2011_08.htm
成。それぞれトレーラーで目的地まで運べる。蓄電容量
は 408kWh。
http://www.mhi.co.jp/news/story/1106165083.html
【JST 大学特許価値向上支援】
「知財活用促進ハイウェイ」における「大学特許価値向上
支援」
平成 23 年度新規採択課題の決定(2011.6.16)
科学技術振興機構(JST)
JST は、知的財産戦略センターで平成 23 年度より開始し
た「知財活用促進ハイウェイ」における「大学特許価値
向上支援」の支援対象となる新規採択課題 106 件を決定
し公表した。
「知財活用促進ハイウェイ」は、投資機関などと連携しつ
つ、大学や公的研究機関などが保有する未利用特許の活
用を推進するための制度。大学などの研究成果の実用化・
社会への還元を促進し、これにより社会経済、科学技術
の発展や国民生活の向上を図ることを目的とする。具体
的には「大学特許価値向上支援」
、
「投資機関などとの連
携」、
「特許マップ・特許群の提供」
、
「特許に阻害されな
い研究環境(科学技術コモンズ)との連携」を4つの柱
としている。このうち「大学特許価値向上支援」は、大
学などの試験研究および技術移転調査を合わせて支援す
るもので、試験研究費は 200 万から 300 万円、技術移転
調査費は 50 万円程度。本年度は平成 23 年 2 月 21 日か
ら 4 月 22 日まで課題を募集し、339 件の応募があった。
募集締切り後、外部専門家の協力のもと、評価委員会に
て課題の基本技術の優位性、技術移転の可能性および開
【有機薄膜太陽電池】
有機薄膜太陽電池の光電流を向上できる手法を開発 真
空蒸着法の改良によるドナー:アクセプター混合膜の結
晶化(2011.6.15)
分子科学研究所
分子研は、有機薄膜太陽電池に光を照射することで得ら
れる電流を飛躍的に向上できる新手法を開発した。従来
の真空蒸着法では低分子有機半導体のドナー:アクセプ
ター混合膜はうまく結晶化できず電気伝導度が低かった
ため通常、混合膜は 100nm 以下の膜厚で作製されてきた。
今回、低分子有機半導体を真空蒸着して混合膜を作製す
るときに、真空中で簡単に扱え、かつ、素子基板には付
着しない液体分子を選び、同時に蒸発させた。この結果、
通常より 4 倍以上の厚さの混合膜の結晶化に成功し、同
じ厚さの混合膜を従来の方法で作製した場合より、光電
流を最高で 3 千倍まで、例外なく向上できた。この手法
は高品質な薄膜の作製が可能なため、高効率の有機薄膜
太陽電池の実現が期待されるばかりでなく、有機トラン
ジスタのような他の高性能な有機半導体素子への応用も
期待される。
http://www.ims.ac.jp/topics/2011/110615.html
発技術の市場性などの観点から審査し、その結果をもと
に 106 件の課題を決定した。
http://www.jst.go.jp/pr/info/info806/index.html
【電子型ニュートリノ】
世界初、電子型ニュートリノ出現現象の兆候を捉える
(2011.6.15)
【移動可能な大容量エネルギーストレージシステム】
リチウムイオン二次電池搭載のコンテナ型大容量蓄電シ
ステムを開発 出力 1,000kW で移動が容易、長崎造船所
で電力安定化実証試験を開始(2011.6.16)
三菱重工業(株)
同社は、リチウムイオン二次電池を搭載した国内初のコ
ンテナ型大容量蓄電システムを開発した。最大出力は
38
T2K 実験国際コラボレーション、高エネルギー加速器研
究機構、東京大学宇宙線研究所、J-PARC センター
ミュー型ニュートリノが飛行中に電子型ニュートリノへ
変化する電子型ニュートリノ出現現象の発見を最大の目
的とする T2K 実験(東海 - 神岡間長基線ニュートリノ振
動実験)で、震災前までに取得した全データを解析した
ところ、電子型ニュートリノに起因すると考えられる事
象を6事象発見し、世界で初めて電子型ニュートリノ出
子を作製し、効率よくスピンを銀の中に注入・蓄積する
強度陽子加速器施設 J-PARC のニュートリノ実験施設にお
ことに成功、従来の 100 倍以上という世界最高性能の出
いて人工的に発生させたミュー型ニュートリノを 295km
力電圧(磁気蓄積量)を達成した。スピントロニクスでは、
離れた岐阜県飛騨市神岡町の検出器スーパーカミオカン
エネルギー損失の少ない電子素子を実現するために、素
デで検出することにより、ニュートリノが別の種類の
子の一部に電流を流すことで、強磁性体から非磁性体に
ニュートリノに変わる「ニュートリノ振動」と呼ばれる
スピンを注入し、スピン流を利用して出力電圧を得る技
現象を世界最高感度で測定し、ニュートリノの質量や世
術が開発されているが、強磁性体と非磁性体間でスピン
代間(種類間)の関係など未知の性質の解明を目指す実験。
の緩和に対するスピン抵抗値の不整合があり、効率よく
なかでも、ミュー型ニュートリノから電子型ニュートリ
スピンを注入することができなかった。研究グループは、
ノへの振動(電子型ニュートリノ出現現象)の検出が最
このスピン抵抗の不整合を解消するために、強磁性体で
大の目的である。
あるパーマロイと非磁性体である銀との間に、厚さ数 nm
http://www.kek.jp/ja/news/press/2011/J-PARC_T2Kneutrino.html
の低抵抗の酸化マグネシウム層を挟んだ接合を持つ磁気
PEN July
現現象の兆候を捉えた。 T2K 実験は、茨城県東海村の大
蓄積素子を作製し、熱処理を施すことで、強磁性体から
非磁性体中への高効率なスピン注入・蓄積を実現した。
【テラヘルツ波技術】
実際に磁気蓄積素子の特性を測定した結果、数百μ V と
研究成果展開事業(産学共創基礎基盤研究プログラム)
いう出力信号を実現するとともに、スピンが銀の中を 6
技術テーマ「テラヘルツ波新時代を切り拓く革新的基盤
μ m 以上も拡散する様子を観測した。また、出力信号の
技術の創出」新規研究課題の決定(2011.6.14)
解析方法も確立することができた。今後は、スピン流や
科学技術振興機構(JST)
スピン蓄積を用いた超高感度磁気センサ、大容量不揮発
JST は、研究成果展開事業(産学共創基礎基盤研究プログ
性メモリー素子、スピン演算素子などへの応用開発が加
ラム)の技術テーマ「テラヘルツ波新時代を切り拓く革
速すると期待できる。
新的基盤技術の創出」における新規研究課題を決定した。
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2011/06/press20110613-04.html
本制度では、大学などによる基礎的な研究を推進し、産
業界に共通する技術的課題「技術テーマ」の解決に資す
る成果を得ることを目指す。また、産と学の対話の場で
【遺伝子型解析システム】
ある「産学共創の場」を構築し、産業界の視点や知見を
世界初、大腸がん組織から全自動でがん遺伝子の変異型
基礎的な研究での取り組みにフィードバックすることで、
を検出 分子標的治療薬の奏効性を予測、
「オーダーメイ
「技術テーマ」の解決を加速する。
http://www.jst.go.jp/pr/info/info801/index.html
ド医療」の実現に貢献(2011.6.13)
凸版印刷(株)、理化学研究所、(株)理研ジェネシス
3 者は共同研究により、全自動小型遺伝子型解析システム
を開発した。シカゴ大学との共同研究として、この全自
【公的研究機関海外事務所】
動小型遺伝子型解析システムを用いて、約 140 例の大腸
北京事務所の開所(2011.6.14)
がん患者から採取したがん組織内の遺伝子変異の解析を
理化学研究所
試みた結果、大腸がんの遺伝子変異を全自動で一時間以
理研は、6 月 24 日、中国・北京市で日中の科学技術関係
内に高感度かつ高精度に検出できることが明らかになっ
者を招き、
「理研北京事務所」の開所式を開催した。
た。現在、遺伝子解析手法として一般的な「ダイレクト
http://www.riken.jp/r-world/info/info/2011/110614_2/index.html
シークエンス法」では、採取したがん組織中に存在する
30%以下の遺伝子変異を検出することは困難とされてい
る。この全自動小型遺伝子型解析システムでは高感度な
【スピントロ二クス】
インベーダープラス(R) 法を解析手法に採用し、専用の
非磁性体(銀)に巨大な磁気を持たせることに成功 超高
自動装置と組み合わせることで、大腸がん組織中の 5% の
感度磁気センサや大容量不揮発性メモリーの開発に道筋
変異を安定的に検出できる。さらに、本装置は検査(解析)
(2011.6.13)
を行う際に、凍結組織を簡易的に破砕するだけで、その
東北大学、理化学研究所、東京大学物性研究所、日本原
後の DNA 抽出を含む動作を全自動で行うことができ、専
子力研究開発機構
門家でなくても簡単に操作可能。
共同研究グループは、酸化マグネシウム層を磁石である
http://www.toppan.co.jp/news/newsrelease1232.html
強磁性体と非磁性体の銀で挟んだ接合を持つ磁気蓄積素
39
PEN July
【TCAM チップ】
採用することによりその不揮発性を高めることに成功し
スピントロニクス技術を用いた世界最小の待機電力フ
た。垂直磁化 MTJ 素子は 2 つの磁性層を有しており、磁
リー 汎用検索集積回路(TCAM)の実現 磁石と半導体
石の向きが互いに反対の状態では反発力がはたらく。そ
を組み合わせて回路の超高密度化に世界で初めて成功 の結果、磁石の向きは不安定となり、不揮発性の指標で
(2011.6.13)
ある熱安定性Δが減少する。そこで、新たにステップ構
東北大学、日本電気(株)
造を MTJ 素子に採用することにより、磁石間の反発力が
東北大学は NEC との産学連携研究により、スピントロニ
抑制できるためΔが向上し、集積化時の不揮発性を満足
クス技術であるスピン注入磁化反転型磁気トンネル接合
できることを実証した。この MTJ 素子の不揮発性の向上
(Magnetic Tunnel Junction; MTJ)デバイスとシリコンデ
により、機器を制御し省エネルギー動作をさせる頭脳で
バイスを組み合わせ、不揮発記憶機能と演算機能をコン
あるシステム LSI の超低消費電力実現へ大きく前進した。
パクトに一体化させることで、世界最小素子数の完全並
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/new img/pressimg/tohokuuniv-
列型不揮発 Ternary Content-Addressable Memory
(TCAM)
press20110608_4.pdf
チップを開発した。本回路は、標準シリコン CMOS 回路
上にプロジェクト参加機関である NEC において、スピン
トロニクスデバイス部分を作製し、原理動作実証に成功
したもの。TCAM チップは、現在、ネットワークルータ
のウィルスチェッカーやデータベースマシンの高速デー
タ検索ハードウェアなどとして利用されており、この実
現方法の成功は、頭脳として電子機器全般に組み込まれ
ているシステム LSI の超低省電力化への道を大きく推進さ
せた。 http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2011/06/press20110613-02.html
【MOS トランジスタ、接合】
トランジスタの接合位置をサブナノメートルの精度で制
御 16 nm 世代以降の MOS トランジスタの新たな接合技
術として期待(2011.6.12)
産総研
産総研は、16 nm 世代以降のトランジスタに適用できる、
新しい金属ソース・ドレイン接合技術を開発した。16
nm 世代以降の極微細 MOS トランジスタでは、ソース・
ドレイン接合領域の寄生抵抗が顕在化するため微細化に
伴う特性向上の頭打ちや、10nm 程度のゲート長に対し
【IR MEMS 温度センサ】
ワンチップ IR MEMS 温度センサ(2011.6.13)
日本テキサス・インスツルメンツ(株)
同社は、ポータブルのコンシューマ・エレクトロニクス
製品向けに、業界初の非接触温度計測機能を提供する、
ワンチップの受動型赤外線 MEMS 温度センサを発表した。
超小型、低消費電力、および低コストの受動型赤外線温
度センサ新製品群の最初の製品。既存のソリューション
に比べて消費電力を 90% 以上削減し、95% の小型化を実
現したこの製品は、非接触温度計測が可能になり、新規
アプリケーションや市場の開拓ができる。
精度よくソース・ドレイン接合を形成することが最大の
懸念事項となっている。今回開発した技術により、極低
抵抗の金属ソース・ドレイン接合の位置をサブナノメー
トルレベルで制御できる。また、これによってトランジ
スタ性能が大幅に向上することを確認した。今回の制御
技術によって、16nm 世代以降の MOS トランジスタにお
ける接合位置制御の課題を解決することにつながる。な
お、この研究開発は、
(独)新エネルギー・産業技術総合
開発機構(NEDO)の「次世代半導体材料・プロセス基盤
(MIRAI)プロジェクト」の委託を受けて行われた。この
技術の詳細は、2011 年 6 月 14 ~ 16 日に京都市で開催
http://focus.tij.co.jp/jp/analog/docs/analogsplash.
される国際会議 2011 Symposium on VLSI Technology で
tsp?contentId=123942&DCMP=hpa-tmp-tmp006-jp&HQS=Other+OT+tmp006
発表された。
h t t p : / / w w w. a i s t . g o . j p / a i s t _ j / p r e s s _ r e l e a s e / p r 2 0 1 1 / p r 2 0 1 1 0 6 1 2 _ 2 /
pr20110612_2.html
【磁気トンネル接合素子】
不揮発性を高めた新構造 MTJ 素子を世界で初めて実現 超
低消費電力システム LSI の実現へ向けた不揮発性スピント
ロニクス素子の性能向上(2011.6.12)
東北大学、
(株)日立製作所
東北大学は日立との産学連携研究により、システム LSI の
待機電力をゼロにするために記録素子として利用する垂
直磁化磁気トンネル接合(MTJ)素子において、新構造を
40
【III-V/Ge CMOS トランジスタ】
世界初の次世代高性能 III-V/Ge CMOS トランジスタの実
現 従来のシリコントランジスタの性能向上限界 200%
を突破(2011.6.12)
東京大学、産総研、住友化学(株)、物質・材料研究機構
共同研究グループは高い移動度を有する III-V 族化合物半
評価技術を活用、従来では難しかった実際の実験に匹敵
高性能 III-V/Ge CMOS トランジスタを世界で初めて実現
するほど高い精度で、医薬品の候補となる低分子化合物
した。従来のシリコン(Si)トランジスタでは性能向上に
の設計、および設計された化合物が疾患の原因となるタ
限界があり、200% 以上の性能向上は困難だったが、今
ンパク質と、どのように作用するかのシミュレーション
回の III-V/Ge CMOS トランジスタの実現により、従来の
評価が可能となる。両者は今後 3 年間で富士通の技術と
200% の限界を超越した次世代高性能 III-V/Ge CMOS トラ
東大が研究している「疾患を引き起こす原因と考えられ
ンジスタの実用化が期待される。
るタンパク質の情報」などのバイオ情報、化学実験技術
http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/pr20110612/pr20110612.
やノウハウを組み合わせた新しい IT 創薬の技術を確立さ
html
せる。それにより、全く新しい化学構造を持ち、さまざ
PEN July
導体とゲルマニウム(Ge)をチャネルに採用した次世代
まな疾患の原因となるタンパク質に選択的に作用する低
【電池材料】
リチウムイオン電池材料製造・販売の合弁会社設立と営
業開始(2011.6.10)
(株)クレハ、伊藤忠商事(株)
分子化合物を効率良く創出することが可能となる。本共
同研究の結果、薬効が高い画期的な新薬の開発研究が進
展し、医療の質の向上と費用対効果の高い医療の実現が
期待される。
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2011/06/10.html?nw=pr
両社は、リチウムイオン電池用負極材の販売および関連
製造子会社の統括、ならびにバインダーの販売を行う合
弁会社「株式会社クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャ
パン」を設立し、2015 年度には年商 200 億円を目指し、
10 月 1 日から営業を開始することとした。
http://www.kureha.co.jp/topics/h230610.html
【太陽光発電】
高 速 道 路 で 国 内 最 大 規 模 太 陽 電 池 モ ジ ュ ー ル (2011.6.10)
京セラ(株)
同社の国内販売子会社である(株)京セラソーラーコー
ポレーションは、中日本高速道路(株)が管理する「名
二環」の植田地区、有松地区、鳴海地区の 3 カ所合計で
太陽電池モジュール約 2MW、約 9,500 枚を供給した。
国内の高速道路に設置された太陽光発電システムにおい
て容量で最大規模となり、一般家庭約 460 世帯分に相当
する。
http://www.kyocera.co.jp/news/2011/0603_uegy.html
【IT 創薬】
世界に先駆けて実用化を目指す、新しい IT 創薬技術の共
同研究を開始 抗がん剤などの候補となる低分子化合物
を、効率良く創出するための技術確立を 3 年間で目指す
(2011.6.10)
東京大学、富士通(株)
両者は、このほど抗がん剤などの候補となる低分子化合
物を効率良く創出できる新しい IT 創薬技術の共同研究を
開始した。本共同研究では、富士通が開発してきた、コ
ンピュータ上で薬効の予測・選別が可能な低分子設計・
41
PEN July
豊蔵レポートより
太陽光発電システム価格:スポット価格、c-Si modules、、
SEMATECH の成果:ショーケース、次世代技術と製造方
価 格 低 下、1 ド ル / ワ ッ ト(2012 年 第 一 四 半 期 )
、IHS
法
iSuppli 予測
SEMATECH to Showcase Advanced Technologies and
Crystalline silicon cost per-watt to hit US$1 in first
Manufacturing Methods at SEMICON West 2011:
quarter of 2012, predicts IHS iSuppli
Presentations and public workshops will share data,
http://www.pv-tech.org/news/crystalline_silicon_cost_per_watt_to_hit_us1_first_
strategies, and best practices in advanced materials, lean
quarter_of_2012_predicts
manufacturing methods, and 3D interconnects
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=42803
ナノ物質の毒性:カルボキシル化単層 CNT、細胞毒性ス
クリーニング、SRC、SEMATECH
SRC and SEMATECH remove toxic nano contaminant from
CNTs
SEMATECH 新メンバー:KLA-Tencor 社、リソグラフィの
欠陥低減プログラム
http://www.electroiq.com/articles/stm/2011/06/src-sematech-remove-toxic-nano-
KLA joins Sematech's EUV research program
contaminant-from-cnts.html
http://www.eetimes.com/electronics-news/4217182/KLA-joins-Sematech-s-EUVresearch-program
安全な原発への取り組み:国際原子力機関閣僚会議、国
際協力と情報共有
単層 MoS2:平面波第一原理計算、二硫化モリブデン構造
Deputy Secretary Poneman Discusses Nuclear Safety at
の機能化、空孔欠陥
the IAEA
Functionalization of Single-Layer MoS2 Honeycomb
http://www.energy.gov/news/10386.htm
Structures
http://www.topix.net/tech/nanotech/2011/06/functionalization-of-single-layermos2-honeycomb-structures
有機 EL:青色発光、高効率化、長寿命化、材料と構造の
最適化
True blue light emission could make OLED displays the
next big thing in consumer electronics
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21841.php
グラフェン:高収率製造法、二酸化炭素を変換、ドライ
アイス、金属マグネシウム、燃焼
Scientists Find Simple Way to Produce Graphene
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/06/110620161308.htm
メンブレン:有機ブリッジ操作、汎用膜、分子混合物の
分離、省エネと低コスト化
Versatile membrane makes large-scale energy-efficient
separation possible
ナノ医療の規制:薬と医療機器の規制、FDA の認可
FDA Prepares for Nanomedicine Revolution
http://www.topix.net/tech/nanotech/2011/06/fda-prepares-for-nanomedicinerevolution
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21831.php
電力革命をもたらした注目技術:トランジスタ、固体照明、
研究協力:CEA-Leti と NEOLUX、次世代 LED モジュール、
超電導体ケーブル、SiC
3 年プロジェクト(MODULED)
Electronics and the environment: Five technologies to
CEA-Leti and NEOLUX Partner to Industrialize Third-
watch
generation Intelligent LED Systems
http://www.eetimes.com/electronics-news/4217106/Electronics-and-the-
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21848.php
42
environment--Five-technologies-to-watch
R&D 100 Awards: ロ ス ア ラ モ ス 国 立 研 究 所、
サイクル
NanoCluster Beacons( ラ イ フ サ イ エ ン ス )、Trapped
Nanotubes not toxic, researchers say
Annular Pressure Shrinking Spacer ( エ ネ ル ギ ー デ バ イ
http://www.eetimes.com/electronics-news/4217099/Carbon-nanotubes-not-toxic--
ス )、Thorium Is Now Green ( エネルギーデバイス )
researchers-say
Los Alamos National Laboratory Earns Three R&D 100
PEN July
安全性:カルボキシル化 CNT、汚染物質、濾過、ライフ
Awards: Innovations could mean breakthroughs for
自己組織化:ナノエレクトロニクスへの応用、合成接着
energy and medical industries
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=42814
剤、ソフトマテリアル(carbon nanotubes や molecules
など)
、テルビウム
Nano-electronics built with self assembly
R&D 100 Awards: ロ ー レ ン ス・ バ ー ク レ ー 国 立 研 究
http://www.rdmag.com/News/2011/06/Manufacturing-Electrical-Engineering-
所、Magnetic Resonance Microarray Imaging (MRMI)、
Nanotechnology-Nano-electronics-built-with-self-assembly/
Imaging Technologies、Nanostructured Antifogging
Coatings(材料科学)
2011 R&D 100 Awards:ハイテク製品、試験装置、新素材、
Berkeley Lab Wins Two R&D 100 Awards for 2011
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=42810
化学、生物医学、消費財
2011 R&D 100 Awards: Winners Announced!
http://www.rdmag.com/Awards/RD-100-Awards/R-D-
ナノスケールサイエンス:細孔中の水の挙動、単層 CNT
100-Awards/
Researchers clarify properties of 'confined' water within
single-walled carbon nanotube pores
http://www.physorg.com/news/2011-06-properties-confined-single-walled-carbon-
R&D 100 Awards:DOE の受賞、36 件
nanotube.html
Department of Energy Projects Win 36 R&D 100 Awards
for 2011
http://www.energy.gov/news/10392.htm
PV 政策:DOE、融資プログラム、投資効果
Funding secured for 733MW of rooftop projects in 28 US
States
R&D 100 Awards:NREL、Innovalight Silicon Ink for
http://www.pv-tech.org/news/funding_secured_for_733mw_of_rooftop_projects_
in_28_us_states
High-Efficiency Solar Cells、Optical Cavity Furnace
NREL receives three awards for its solar advancements
from R&D Magazine
企業戦略:Solar Frontier 社、中東市場、サウジアラビア
http://www.pv-tech.org/news/nrel_receives_three_awards_for_its_solar_
Solar Frontier to open new office in Saudi Arabia
advancements_from_rd_magazine
R&D 100 Awards: ブ ル ッ ク ヘ ブ ン 研 究 所、Maia x-ray
microprobe detector system( 分 析 機 器 ) 、multimodal
optical nanoprobe(画像工学)
Brookhaven Lab Wins Two R&D 100 Awards for Imaging
Devices Used in Scientific Research
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=42815
http://www.pv-tech.org/news/solar_frontier_to_open_new_office_in_saudi_arabia
諮問委員会レビュー:連邦高エネルギー物理諮問委員会、
素粒子物理学、研究予算
Underground Physics Lab to Cost U.S. Energy Department
at Least $1.2 Billion
http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2011/06/underground-physics-lab-tocost.html?ref=hp
43
PEN July
高分子電解質膜:選択的浸透、イオン、極性分子、形状
EU 製造業強化政策:FP7、Self-Learning Control of Tool
記憶効果、材料設計
Temperature in Cutting Processes' (ConTemp) project
Linear coupling of alignment with transport in a polymer
EU-funded research helping out the European
electrolyte membrane
manufacturing industry
http://www.nature.com/nmat/journal/v10/n7/full/nmat3048.html
http://cordis.europa.eu/fetch?CALLER=EN_NEWS&ACTION=D&SESSION=&R
CN=33543
水分解:二酸化チタン、耐腐食性、保護層、イリジウム、
超薄層(2nm)
A Better Solar-Powered Water Splitter Devised
http://www.photonics.com/Article.aspx?AID=47471
米製造業強化政策:オバマ大統領、先端製造業パートナ
シップ、5 億ドル支援、国内生産重視、安全保障技術分野
(情報技術、生命科学など)
Obama: US must invest in high-tech manufacturing
http://www.elpasotimes.com/politics/ci_18344758
http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/microsites/ostp/adv_man_press_
太陽電池市場:Solarbuzz 社調査、
「メガソーラー発電」
release_final.pdf
計画、米国大規模計画
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20110621/192758/?ST=PV
米、製造業強化政策:先端製造業パートナシップ、DOE、
変革的材料技術、革新的材料、エネルギー効率
カプセル内視鏡:カプセル内視鏡の父、開発秘話、日本
Department of Energy Announces $120 Million to
製部品使用、Given Imaging 社
Support Development of Innovative Manufacturing
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20110623/192823/
Processes
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20110623/192863/
水精製浸透膜:ナノコンポジット膜、支持層、多孔性
nanofiber マトリクス、エレクトロスピニング法、ファイ
バー形状のコントロール、相互貫通細孔
Nanotechnology gives a push to more effective clean
water production through forward osmosis
http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=21857.php
ナノデバイス製造:トップダウン式、大量生産、化学合
成法
A new top-down nanofabrication scheme produces
indefinitely long nanostructures
http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=21844.php
グラフェン:スケーラビリティ、CVD グラフェン、トラ
ンジスタ、誘電泳動アセンブリアプローチ
UCLA Team Reports Scalable Fabrication Of Self-Aligned
Graphene Transistors, Circuits
http://www.rfglobalnet.com/article.mvc/UCLA-Team-Reports-Scalable-FabricationOf-0001
44
http://www.energy.gov/news/10397.htm
米、製造業強化政策:先端製造業パートナシップ、米国
企業強化、新コンソーシアム、外部レポート、省庁間ロボッ
ト工学イニシアティブ、連邦政府白書
White House Retools Advanced Manufacturing Efforts
http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2011/06/white-house-retoolsadvanced-man.html?ref=hp
2011 京都賞:John Werner Cahn、NIST 名誉上級研究員、
アロイ材料工学、歪みエネルギー、スピノーダル分解理
論
NIST materials scientist awarded Kyoto Prize
http://www.eetimes.com/electronics-news/4217232/NIST-materials-scientistawarded-Kyoto-Prize
グラフェン:CVD グラフェン、結晶粒界制御、核生成制御、
単結晶化、量産化
STM of individual grains in CVD-grown graphene
http://www.physorg.com/news/2011-06-stm-individual-grains-cvd-growngraphene.html
熱電材料:PbTe(クロム、ヨウ素ドープ)
、熱電特性、
(0.5fl)、有機トランジスタ
135% 増
Breakthrough reported in transconductance in ink-jet
Dramatic enhancement of thermoelectric power factor in
printing
PbTe:Cr co-doped with iodine
http://www.physorg.com/news/2011-06-breakthrough-transconductance-ink-jet.
http://apl.aip.org/resource/1/applab/v98/i26/p262101_s1?view=fulltext
PEN July
微細化技術:インクジェット、印刷方式、subfemtoliter
html
英国の原発政策:新規に 8 基予定
UK to build 8 new nuclear plants
http://www.presstv.ir/detail/186101.html
PV 市場:政府の政策調整、固定価格買取制度料金引き下
げの影響、需要シェア
European Solar Incentive Cuts Initiate Global Photovoltaic
Market Shift
http://www.solarbuzz.com/our-research/recent-findings/european-solar-incentivecuts-initiate-global-photovoltaic-market-shift
企 業 戦 略: 中 国、China Sunergy 社( 香 港、 南 京 )、
Quasar セル、投資(2 億 7700 万ドル )
China Sunergy to invest US$277 million in 1GW cell
東電株主総会:脱原発の声届かず
manufacturing expansion
Japanese Utility at Heart of Nuclear Crisis Survives
http://www.pv-tech.org/news/china_sunergy_to_invest_us277_million_in_1gw_
Shareholder Revolt
cell_manufacturing_expansion
ナ ノ ス ケ ー ル サ イ エ ン ス: ナ ノ サ イ ズ 水 滴、firstprinciples quantum simulations、二電子水素発生反応
Scientists Discover Dielectron Charging of Water NanoDroplet
http://english.chosun.com/site/data/html_dir/2011/06/29/2011062900358.html
材料設計:superatoms、原子クラスタ、鉄、マグネシュー
ム、電子磁気特性、スピントロニクス
Researchers discover superatoms with magnetic shells
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21683.php
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/06/110627143833.htm
高密度エネルギー電池:Mg 合金(カルシウム、亜鉛、イッ
トリウムドープ)、溶解鋳造、ナノ構造遷移金属、可逆置
換反応
表面科学:水分子、大気・水界面、界面化学反応、単一
分子空間
Water's surface not all wet
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21680.php
High-energy density magnesium batteries for smart
electrical grids
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=42838
量子物理:量子シュミレータ、artificial graphene(AG)、
人工半導体構造
Innovative Device For Quantum Simulations
R&D 政策:ENIAC Joint Undertaking、ナノエレクトロニ
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=42687
クス、投資額倍増
Europe doubles the investments in semiconductor
research within the ENIAC nanoelectronics undertaking
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21888.php
原発政策:スイス、国会審議、段階的廃止、2034 年
Swiss lawmakers approve government backed proposal to
phase out use of nuclear power (EU-Switzerland-Nuclea)
h t t p : / / w w w. s i l o b r e a k e r. c o m / s w i s s - l a w m a k e r s - a p p r o v e - g o v e r n m e n t backed-proposal-to-phase-out-use-of-nuclear-power-euswitzerlandnucl
ea-5_2264626071016046943
45
PEN July
英国の PV 政策:固定価格買取制度、見直し、大規模発電
グ ラ フ ェ ン: メ タ マ テ リ ア ル シ ー ト、 特 性 設 計、
支援、小規模発電支援
transformation optics、EM waves
UK feed-in tariff slashed for systems over 50kW
Eng ineers Envision 'Two-Dimensional' Graphene
http://www.pv-tech.org/news/uk_feed_in_tariff_slashed_for_systems_over_50kw
Metamaterials and One-Atom-Thick Optical Devices
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/06/110609141552.htm
DOE 支援成功事例:SunPower 社、ソーラパネル販売、
変換効率 20% 以上、Solar America Initiative
廃 熱 利 用: 冷 却、thermally activated cooling system、
SunPower Panel Sets New World Record for Efficiency
マイクロチャネル熱交換機
http://news.enf.cn/en/news/news_19329.html
Prototype demonstrates success of advanced new energy
technology
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21710.php
グラフェン:高品質化作製法、イリジウム結晶表面触媒、
エチレンガス、
デュースブルク - エッセン大学、
LEED 評価)
UDE Researchers produce high-quality graphene
量子スピン液体:酸化銅、超薄層スラブ、La2-xSrxCuO4
http://www.nanoforum.org/nf06~modul~showmore~folder~99999~scc~news~sc
Superlattices、高温超電導への期待
id~4221~.html?action=longview&
Ultrathin copper-oxide layers behave like quantum spin
liquid
グラフェン:SiC 熱分解法、ウェハサイズ、集積回路、超
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21706.php
広帯域ミキサ、10 ギガヘルツ、IBM TJ ワトソン研究所
IBM researchers demo graphene IC on SiC wafer
http://www.eetimes.com/electronics-news/4216803/IBM-researchers-demographene-IC-on-SiC-wafer
ワークショップ:ENPRA Workshop 2011、EC、ナノ粒子
リスク評価
Presentations now online for "Challenges of Regulation
and Risk Assessment of Nanomaterials" event
FDA ドラフトガイダンス:ナノテクノロジー製品、上市
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21704.php
前評価、透明性、規制、安全性、有効性、健康への影響
FDA Issue Nanotechnology Draft Guidance
http://www.naturalproductsinsider.com/news/2011/06/fda-issue-nanotechnology-
グラント:NSF、固体酸化物型燃料電池
draft-guidance.aspx
New grant to study ways of building nanoscale solid oxide
fuel cells
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21705.php
市場調査:水素エネルギー、世界市場規模予測、BCC 調
査報告、年成長率 6.3%
Global for hydrogen as a chemical constituent and as an
プラズモニックナノサイエンス:表面プラズモン、有機
energy source to be worth $163 Billion in 2015
格子、有機発光分子、プラズモニックレーザ
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=42692
A scanning electron microscope image of an organic
grating used to excite surface plasmons
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=42689
人工葉:太陽光、水分解、水素・酸素生成、触媒、Co-Pi
Artificial leaf’moves closer to reality
http://web.mit.edu/newsoffice/2011/water-splitting-0609.html
研究投資のバランス:iPSCs 研究、hESCs 研究、研究のバ
ランス、相乗効果
Research on Induced Pluripotent and Embryonic Stem
Cells 'Inextricably Intertwined'
http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2011/06/research-on-inducedpluripotent.html?ref=hp
46
CVD グラフェン:高電子移動度、28 800cm2/V s(at 4.2 K)
、
(SEPA)、公益事業、市場急拡大
剥離 BN 基板、キャリア散乱
Top US utilities added 561MW of new solar capacity in
Boron nitride substrates for high mobility chemical vapor
2010
deposited graphene
http://www.pv-tech.org/news/top_us_utilities_added_561mw_of_new_solar_
http://apl.aip.org/resource/1/applab/v98/i24/p242105_s1
PEN July
PV 市場:2010 Utility Solar Rankings、太陽光発電協会
capacity_in_2010
http://www.solarelectricpower.org/media/191593/2010-utility-solar-rankingsexecutive-summary.pdf
グラフェン:local electrical stressing、ドーピング、P-N
接合、修飾表面化学、熱活性化電荷移動
原子力発電:イタリア、エネルギー政策、国民投票、反
Local electrical stress-induced doping and formation of
核運動
monolayer graphene P-N junction
Italy Says No to Reintroduction of Nuclear Energy
http://apl.aip.org/resource/1/applab/v98/i24/p243105_s1
http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2011/06/italy-says-no-toreintroduction.html?ref=hp
アモルファスシリコン表面:高分解能走査型顕微鏡、不
スマートグリッド:DOE、スマートメーター、グリッド
近代化加速政策、データマップ
Energy Secretary Chu Announces Five Million
Smart Meters Installed Nationwide as Part of Grid
規則な表面運動、two-state hopping、表面ガラスモデル、
水素化
Researchers record two-state dynamics in glassy silicon
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/06/110614141503.htm
Modernization Effort
http://www.energy.gov/news/10362.htm
リスク:CNT、長さ依存性、潜在的危険性、肺癌、中皮腫
Carbon nanotubes could pose health risk to production
ナノテクノロジーの社会的合意:IoN、公開対話、EC、
NANOCHANNELS project
line staff, study suggests
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21739.php
Institute of Nanotechnology creates lines of
communication for public dialogue in the NanoChannels
Project
触媒:金属ナノ粒子、製造方法、配位子
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21724.php
Improving catalysis
http://www.physorg.com/news/2011-06-catalysis.html
保険リスク分類:新分類、ナノテクノロジー、次世代エ
ネルギー
太陽電池用シリコン生産:Timminco 社、企業戦略、製造
ISO announces new general liability classifications for
再開
nanotechnology and alternative energy
Timminco shifting solar grade silicon again
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21729.php
触媒探索:MIT、系統的な解析、酸素還元、金属酸化物
http://www.pv-tech.org/news/timminco_shifting_solar_grade_silicon_again
ナノ複合材料:軽量素材、自動車、航空機、超音波法、
A new way to choose catalysts for oxygen reduction
ナノ粒子分散、セラミック粒子
http://web.mit.edu/newsoffice/2011/battery-principle-0613.html
When size matters: Nanotechnology for energy efficiency
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21750.php
47
PEN July
サイズ効果:ポラリトン、励起子、500 nm 以下、光と物
刊行物:NanoImpactNet
質の相互作用、一次元光ナノ共振器、半導体ナノワイヤ
NanoImpactNet publishes latest newsletter
Researchers break light-matter coupling strength limit in
http://www.nanoforum.org/nf06~modul~showmore~folder~99999~scc~news~sc
nanoscale semiconductors
id~4223~.html?action=longview&
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21756.php
ニュートリノ:ニュートリノ振動、
「ミュー型」から「電
ナノ粒子:生分解性金属インプラント、マグネシウム、
腐食性、ナノ複合材料、フッ素アパタイト
Iranian Scientists Solve Problem of High Corrosion in
Magnesium Implants
子型」に変化する兆候を観測、KEK
First Results From Japanese Neutrino Experiment Hint at
Big Things to Come
http://news.sciencemag.org/sciencenow/2011/06/first-results-from-japanese-neut.
html?ref=hp
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=42732
セルフパワーナノデバイス:長距離無線データ通信、セ
ンサ、ZnO ナノワイヤ
First self-powered device with wireless data transmission
http://www.physorg.com/news/2011-06-self-powered-device-wirelesstransmission.html
メタマテリアル:印刷技術、多層アセンブリ、大面積化、
イリノイ大学
Research team develops method to produce large sheets
of metamaterials
太陽電池用シリコン製造:DOE、条件付融資、Calisolar
Inc.、コスト低減
DOE Offers Support for Innovative Manufacturing Plant
That Will Produce High Quality Solar Silicon at Low Cost
http://www.energy.gov/news/10376.htm
センサ:IMEC、大気汚染モニタ、電子鼻、無線センサネッ
トワーク、低消費電力
Pioneering miniaturized e-nose technology
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21758.php
http://www.physorg.com/news/2011-06-team-method-large-sheets-metamaterials.
html
量子ドットレーザ:シリコン基板への直接エピ成長、シ
リコンフォトニクス、シリコンベース IT
安全性:日焼け止め、FDA
Telecom-Wavelength QD Laser Grown on Si
F.D.A. Unveils New Rules About Sunscreen Claims
http://www.photonics.com/Article.aspx?AID=47422
http://www.nytimes.com/2011/06/15/science/15sun.html?_r=1&ref=science
グラント:NSF、Nano EHS program
固定価格買取制度:ドイツ、再生可能エネルギー、助成
$4.9 Million Funding Available for Nanotechnology
金縮小
Research
Germany set to avoid July 1 tariff cut
http://www.nsf.gov/funding/pgm_summ.jsp?pims_id=501030
http://www.pv-tech.org/news/germany_set_to_avoid_july_1_tariff_cut
ムーアの法則:研究・生産コスト急騰、シリコンチップ、
原発政策:論評、各国の取り組み
三次元集積
Nuclear Power after Fukushima
Moore's Law, the bifurcation of the semiconductor
http://csis.org/publication/nuclear-power-after-fukushima
industry and 3-D integration
http://www.eetimes.com/electronics-news/4217038/Moore-s-Law--thebifurcation-of-the-semiconductor-industry-and-3-D-integration
48
生体適合高機能材料:新材料創生、遺伝子工学、クロー
世界最高効率の集光型太陽電池を開発へ
ン技術応用、silk–silver protein films
http://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100018.html
A silver dagger in a silken sheath: A new hybrid
biomaterial
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21549.php
PEN July
日欧共同プロジェクト:集光型太陽電池、NEDO、EU
企業戦略:Samsung Electronics、Samsung SDI、太陽電
池ビジネス、事業部門売却
Samsung SDI Gets Solar Unit
企業戦略:BASF、リチウムイオン電池、電解質材料、有
http://news.enf.cn/en/news/news_19264.html
機炭酸塩
BASF to Enter Lithium-ion Electrolyte Business
http://www.electroiq.com/index/blogs/energy-storage-trends/blogs/electroiq-
ドイツの原発政策:2021 年完全停止、信頼性と経済性、
blogs/energy-storage-trends/post987_7586025813687324470.html
太陽光発電、風力発電、低コスト化
Germany sets timeline for all nuclear plant shutdowns:
puts pressure on PV to cut costs
http://www.pv-tech.org/news/germany_sets_timeline_for_all_nuclear_plant_
shutdowns_puts_pressure_on_pv_t
グラフェン:真性特性に及ぼす基板の影響、窒化ホウ素
(BN)、ダングリングボンド
Does boron nitride let graphene be itself? Berkeley
researchers investigate
http://www.electroiq.com/index/display/nanotech-article-display/0781611554/
カンファレンス:26th EU PVSEC、プログラム概要
articles/small-times/nanotechmems/materials/graphene/2011/5/does-boron_
EU PVSEC program released with over 1,500
nitride.html
presentations scheduled at the conference
http://www.pv-tech.org/news/eu_pvsec_program_released_with_over_1500_
presentations_scheduled_at_the_con
界面制御技術:BeO、MgZnO/BeO/Si、n-MgZnO(0001)/
p-Si(111) ヘテロ接合、光検出器
ナノデバイス製造法:ナノポーラス材料、インプリント法、
direct imprinting of porous substrates(DIPS)
、バイオ
センサ、バンダービルト大学
Stamping out Low Cost Nanodevices
Interface engineering of high-Mg-content MgZnO/
BeO/Si for p-n heterojunction solar-blind ultraviolet
photodetectors
http://apl.aip.org/resource/1/applab/v98/i22/p221902_s1
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/05/110531155359.htm
ナショナルイノベーション戦略:AAAS Forum、地域・
グラント:NSF、熱輸送理論、熱伝導率、第一原理計算、
熱電素子、材料設計
NSF grant to fund theoretical models of thermal
conductivity
大学・政府の役割、研究への長期投資
Experts at AAAS Forum Detail Critical Need for National
Innovation Strategy
http://www.aaas.org/news/releases/2011/0531stpf_innovation.shtml
h t t p : / / w w w. n a n o t e c h - n o w. c o m / n e w s . c g i ? s t o r y _
id=42616
生体機能応用圧電素子:自己発電型ナノデバイス、ZnO
ナノワイヤ
研究ネットワーク:カルノー研究所(仏独共同研究機関、
材料科学)
、カルノー・アルザス材料研究所(MICA)
First self-powered nanosystem with wireless data
transmission
http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=21563.php
French-German Materials Research Institute (ISL) labelled
CARNOT Institute
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21557.php
49
PEN July
無機ナノ結晶:量子ドット、分子金属カルコゲニド錯体、
ポリシリコン:生産能力向上、プラント、デボトルネッ
無機表面配位子、コロイド状インキ、大量生産
ク
New inorganic semiconductor layers hold promise for
Wacker Chemie using debottlenecking measures to add
solar energy
10,000MT more polysilicon capacity
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21578.php
http://www.pv-tech.org/news/wacker_chemie_using_debottlenecking_measures_
to_add_10000mt_more_polysilico
ネットワーク:E!nnoVest、EUREKA 投資ショップ、ウェ
ブベースのオンラインツール、投資機会提供、資金調達
EUREKA, launches E!nnoVest: an online 'search and
match' virtual tool for investors and innovators
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21572.php
多 国 籍 協 力 事 業: サ ウ ジ 電 力 会 社、 昭 和 シ ェ ル 石 油、
500kW PV plant、CIS 技術
SEC, Showa Shell Sekiyu bring solar power to Saudi
Arabian island
http://www.pv-tech.org/news/sec_showa_shell_sekiyu_bring_solar_power_to_
saudi_arabian_island
グラフェンペーパー:粉砕グラファイト、精製濾過、機
械的特性、軽量、柔軟
Iranian Researcher Finds Novel Method to Produce
Graphene Paper
http://english.farsnews.com/newstext.php?nn=9003110157
PV コ ス ト 削 減: 自 動 化、Astronergy 社、tandemjunction production 、75 セント / ワット
Astronergy exclusive, Part II: Process and toolset evolve,
with 75¢ per watt cost within reach
http://www.pv-tech.org/chip_shots_blog/astronergy_exclusive_part_ii_process_
and_toolset_evolve_with_75_per_watt_co
自己組織化:高分子自己組織化誘導技術、ブロック共重
合体、電子レンジ、生産性
Canadian breakthrough paves way for self-assembled
太 陽 電 池 変 換 効 率: 多 結 晶 PV、Q-Cells SE、 変 換 効 率
transistors
19.5%、生産性
http://www.nrc-cnrc.gc.ca/eng/news/nrc/2011/06/01/microwave-transistors.html
Q-Cells Develops Record-Setting Solar Cell with 19.5%
Efficiency
http://news.enf.cn/en/news/news_19283.html
フォトニクス:ナノスケール導波路、金属 / 絶縁体界面、
hybrid plasmon polariton、quasi-particle
Researchers Create Nanoscale Waveguide for Future
グラフェン:単結晶アレイ、粒界制御、CVD、銅基板
Photonics
Single-Crystal Arrays of Graphene: Advance in Efforts to
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/05/110531115310.htm
Develop a Replacement for Silicon in High-Performance
Electronics
http://www.nature.com/nmat/journal/v10/n6/full/nmat3010.html
ナノリスク:食用作物中のナノ粒子、遺伝毒性、毒性効
果
Safety of nanoparticles in food crops is still unclear
相変化メモリ:データストレージ―技術、高速ストレー
http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/jf104517j
ジデバイス、カリフォルニア大学
Phase-change memory solid state device points to future
of computer storage
ビジネスツール:価格情報提供サービス、solar-grade
polysilicon、ICIS
ICIS launches weekly Asia region solar-grade polysilicon
price watch
http://www.pv-tech.org/news/icis_launches_weekly_asia_region_solar_grade_
polysilicon_price_watch
50
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21599.php
ナノ粒子:感光性分子、光力学治療
有溶媒 / 水滴の界面で形成
Nanoparticles perfectly formed to tackle cancer)
Hopper-Like Single Crystals of Sodium Chloride Grown at
h t t p : / / w w w. r d m a g . c o m / N e w s / 2 0 1 1 / 0 6 / L i f e - S c i e n c e s - N a n o p a r t i c l e s -
the Interface of Metastable Water Droplets
Nanoparticles-Perfectly-Formed-To-Tackle-Cancer/
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/anie.201101704/abstract;jsessionid=
48575AE0A78D17945C82B53AE99337FE.d02t02?systemMessage=Wiley+Online
+Library+will+be+disrupted+4+June+from+10-12+BST+for+monthly+maintenance
PEN July
自己組織化:結晶成長、単結晶、水滴、NaCl、KCl、塩含
新型電池:充放電機能分離型、高性能化、小型化、低コ
スト化、半固体フロー電池
New battery design could give electric vehicles a jolt
サイズ効果:単分子層液体、摩擦力、粘性、潤滑性
http://web.mit.edu/newsoffice/2011/flow-batteries-0606.html
In very narrow spaces, liquids behave more like gels
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21606.php
ナノ材料毒性:ナノ粒子、毒性試験、暴露許容範囲、リ
スク情報公開
対露技術戦略:米国 DOE 長官、革新的クリーンエネルギー
The dose makes the poison
技術、原子力発電、核拡散防止、投資とクリーンテクノ
http://www.nature.com/nnano/journal/v6/n6/full/nnano.2011.87.html
ロジー輸出
Secretary Chu to Travel to Russia Next Week
http://www.energy.gov/news/10352.htm
酸 化 物 高 温 強 磁 性 半 導 体: イ ル メ ナ イ ト 赤 鉄 鉱、
Fe1.5Ti0.5O3 薄膜、エピタキシャル成長、カチオン秩序、
多結晶シリコン工場:10,000MT 、Hankook Silicon 社(韓
国)、Isofoton 社(スペイン)
Isofoton, Hankook Silicon plan to build 10,000MT
polysilicon factory in Spain
磁気特性、スピントロニクス材料
Epitaxial growth of the high temperature ferromagnetic
semiconductor Fe1.5Ti0.5O3 on silicon-compatible
substrate
http://apl.aip.org/resource/1/applab/v98/i23/p232501_s1
http://www.pv-tech.org/news/isofoton_hankook_silicon_plan_to_build_10000mt_
polysilicon_factory_in_spain
ナノリスク管理:オーストラリア、ガイドライン
触媒:ナノ構造酸化チタン、細孔、金ナノ粒子、ブロッ
ク共重合体、官能基構造
Patterning nanostructures etched silicon
Risikomanagement Leitfaden zum Umgang mit
Nanomaterialien am Arbeitsplatz
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21672.php
http://nanotechweb.org/cws/article/tech/46190
ナノ粒子操作方法:細胞培養、金ナノ粒子、毒性試験
ナノコーティング:導電性ナノコーティング、原子層堆積、
繊維材料、電導率測定法
Research Examines How To Apply Conductive
'Catch and release' program could improve nanoparticle
safety assessment
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21670.php
Nanocoatings To Textiles
http://news.ncsu.edu/uncategorized/cbjurnanocoatings/
太 陽 熱 発 電: ポ リ マ ー、 変 換 効 率 30%、Wake Forest
University
材料物性解析:熱電材料、中性子散乱解析、テルル化鉛、
格子振動、フォノンの異常な振動モード
Neutron analysis explains dynamics behind best
First Polymer Solar-Thermal Device Heats Home, Saves
Money
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2011-04/wfu-fps040411.php
thermoelectric materials
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21642.php
51
PEN July
技術開発グラント:DOE、高効率固体照明技術、次世代
照明技術、LED、省エネ
Secretary Chu Announces Nearly $15 Million for Next
Generation Energy-Efficient Lighting
http://www.energy.gov/news/10353.htm
スーパーキャパシタ:ナノ構造電極、NiO/Ni 複合材料 、
多孔質、水酸化カリウム
New production process for NiO/Ni nanocomposite
electrodes for supercapacitors
http://www.physorg.com/news/2011-06-production-nioni-nanocompositeelectrodes-supercapacitors.html
イベント:Intersolar Europe、ミュンヘン
Intersolar EU: The world’s largest exhibition for the solar
industry kicks off in Munich
http://www.pv-tech.org/news/intersolar_eu_the_worlds_largest_exhibition_for_
the_solar_industry_kicks_of
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PEN は原則月 1 回配信します。これまでに発行した PEN と、
【AIST-TOKYO ナノテク情報】
(PEN の前身)は、産総研ナノシステム研究部門ホームページにて公開しています。
http://unit.aist.go.jp/nri/nano-plan/index.html
PEN は皆さまとの情報共有を目的としています。お持ちの情報で共有すべきものがあれば、
[email protected] までお寄せ下さい。
*いただいた個人情報は産総研 個人情報保護方針(プライバシーポリシー)に基づき大切に管理し、情報誌 PEN
の運営と私達のイベントのご案内のみに使用させていただきます。
52
台湾工業技術研究院(ITRI)と情報共有を行っています。” 奈米快訊 ” No.98 の内容を PEN 読者の皆様にも配信します。
ナノ材料
PEN July
台湾 ITRI ” 奈米快訊 ” より
8. メリーランド大学の研究者、セレン化ビスマス表面上
でトポロジカル絶縁状態の観察に成功
1. ノースカロライナ州立大学の研究グループ、グラフェ
http://nanotechweb.org/cws/article/tech/45864
ンの導電率低下の原因の一つは、二層以上になることと
特定
http://www.physorg.com/news/2011-04-graphene-varying.html
9. 京都大学の研究グループ、フラスコで簡単に合成でき
るナノチューブの作製に世界初めて成功
http://www.nature.com/nmat/journal/v10/n4/full/nmat2963.html
2. シドニー工科大学の研究グループ、鋼より強いグラフェ
ンペーパーの開発へ大きく進展
http://www.physorg.com/news/2011-04-breakthrough-paper-stronger-steel.html
10. オランダのアイントホーフェン工科大学の研究者グ
ループ、導電性のある CNT とプラスチックナノ粒子から
酸化インジウムスズの代替物質を開発
3. 米国国立標準技術研究所(NIST)とジョージア工科大
http://www.physorg.com/news/2011-04-rare-material-indium-tin-oxide.html
学の共同研究グループ、グラフェンの花弁型の欠陥が材
料の電気的・機械的特性に影響を与える可能性を指摘
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=42542
ナノバイオ・アグリ
1. ワシントン大学の研究グループ、試験方法の設計がデー
4. アリゾナ大学とレンセラー工科大学の共同研究グルー
タ解析を誤らせる可能性を指摘
プ、グラフェンを添加してセラミック複合材料の靱性の
http://www.physorg.com/news/2011-04-overlooked-invalidate-results-prior-
向上に成功
nanoparticles.html
http://www.physorg.com/news/2011-04-fracture-resistance-mechanismsgraphene.html
2. マサチューセッツ工科大学の研究グループ、多様な腫
瘍の治療が可能なナノ粒子の設計に成功
5. イラン人研究者、鋼より 6 倍軽く、2 倍の固さのフレ
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=42595
キシブルグラフェンペーパーの製造に成功
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=42618
3. 脊椎損傷や麻痺の治療にナノテクノロジーが貢献
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=42528
6. イタリアの MDM 研究所、ナノスケールでブロック共
重合体を精密制御する手法を開発
http://nanotechweb.org/cws/article/lab/46072
4. ヨーク大学の研究グループ、血液から抗凝結剤ヘパリ
ンを回収することに成功
http://www.physorg.com/news/2011-04-nanoscience-key-surgical-recovery.html
7. 米国ローレンスバークレー国立研究所の共同研究グ
ループ、グラフェンナノリボンのエッジ状態の精密測定
に初めて成功
5. CT スキャンの造影剤に用いられる酸化タンタルナノ粒
http://nanotechweb.org/cws/article/tech/45979
子の大量生産方法の開発に成功
http://www.physorg.com/news/2011-04-imaging-agent-heart-disease-breast.html
53
PEN July
6. 人の視覚に近い 127 メガピクセルの網膜インプラント
7. 量子ビットが重ね合わせ状態に留まる時間を延ばす新
の実現に近づく
たな手法を開発
http://physicsworld.com/cws/article/indepth/45840
http://web.mit.edu/newsoffice/2011/qubit-practical-0602.html
7. ナノワクチン、牛疫に苦しむオーストラリアの牧畜業
8. ペンシルバニア大学の研究チーム、セレン化鉛ナノワ
を救済
イヤーの導電性制御に成功
http://www.nanowerk.com/news/newsid%3D21239.php
http://www.physorg.com/news/2011-04-advances-selenide-nanowires.html
8. ミシガン大学歯学部の研究グループ、外傷治療用の生
9. NIST の研究者、磁性体にある小さな歪みが磁性に大き
分解性の高い中空のナノファイバーの開発に成功
な変化を起こすことを立証
http://www.physorg.com/news/2011-04-nanofiber-spheres-cells-wounds-tissue.
http://www.physorg.com/news/2011-04-nanomagnets-food-thought-memories.
html
html
ナノエレクトロニクス・オプトエレクトロニクス
10. グラフェンを用いて広帯域、超高速の光変調器の開発
に成功
1. 量子アニーリングを用いて人工イジングスピンシステ
http://www.nature.com/nature/journal/v474/n7349/full/nature10067.html
ムの基底状態を発見
http://www.nature.com/nature/journal/v473/n7346/full/nature10012.html
エネルギーと環境
2. 収束電子ビームとガス圧入システムを組み合わせて、
分極の安定化に成功
http://www.physorg.com/news/2011-04-electron-chemical-reactions.html
1. 米国オークリッジ国立研究所の研究グループ、ナノコー
ンを利用し高エネルギー変換効率の太陽電池基盤の開発
に成功
http://www.physorg.com/news/2011-04-d-nanocone-solar-cell-technology.html
3.マックスプランク研究所の研究グループ、球状のナノ
スペースで高加速度電子の制御と観察に成功
http://www.nature.com/nphys/journal/vaop/ncurrent/full/nphys1983.html
2. ミシガン工科大学の研究グループ、カーボンナノチュー
ブを塗布した高効率な水浄化フィルタの開発に成功
http://www.physorg.com/news/2011-04-nanotech-filter-oil.html
4. 韓国の KAIST と機械・材料研究所は共同研究で、スズ
ナノ粒子を用いたインクでプリント基板の性能向上に成
功
http://www.physorg.com/news/2011-04-ink-tin-nanoparticles-future-circuit.html
5. フロリダ大学の研究グループ、大規模化も可能な有機
発光トランジスタのディスプレイ画素を作製
http://nanotechweb.org/cws/article/tech/45915
54
3. コーネル大学の研究グループ、安価で効率のよい有機
材料を用いた太陽電池の実現に向けた材料開発に成功
http://www.physorg.com/news/2011-04-d-solar-cells.html
4. インドのティルチラパッリ大学の研究グループ、アル
ミナナノ粒子でバイオ燃料の燃費向上に成功
http://www.physorg.com/news/2011-04-nanoparticles-biofuel.html
6. 米国ライス大学の研究者、電流に変換する前の光を捕
5. スタンフォード大学の研究グループ、二硫化モリブデ
集し、焦点を合わせるナノアンテナを開発
ンナノ粒子の触媒開発に成功
http://nanotechweb.org/cws/article/tech/45922
http://nanotechweb.org/cws/article/tech/45887
5. HS - LEIS 分光計の開発者 Brongersma 氏による講演
能な水素燃料電池用の触媒開発に成功
http://www.physorg.com/news/2011-04-pool-atoms.html
http://www.physorg.com/news/2011-04-fuel-cell-pocket.html
6. ライス大学の研究者、少量の亜鉛がグラフェンに大き
7. Empa、ITO に代わる薄膜太陽電池用の透明導電材料の
開発に成功
http://www.physorg.com/news/2011-04-sun-energy-electrode-flexible-thin-film.
な損傷を与えることを利用し、グラフェン層から 1 層の
PEN July
6. オックスフォード大学の研究グループ、常温で発電可
み取り除くことに成功
http://nanotechwire.com/news.asp?nid=11656&ntid=&pg=19
html
7. シンガポール製造技術研究所の研究者、2 種類の共鳴
8. カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究グループ、
を利用して AFM の解像度を向上
太陽電池の発電効率向上に貢献するバイメタルナノ粒子
http://www.physorg.com/news/2011-04-resonance-atomic-microscopy-resolution.
の開発に成功
html
http://www.physorg.com/news/2011-04-efficient-fuel-cell-applicationsnanotechnology.html
ナノリスク
9. 米国ブルックヘブン国立研究所の研究グループ、量子
1. ドイツの BfR、製品中の銀ナノ粒子の安全性に関して
ドットとフラーレンをペアにした新しい材料の開発に成
コメントを発表
功
http://nanotech.lawbc.com/2011/04/articles/international/bfr-cautions-against-
http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=42425
ナノデバイス・計測
1. スペインとチェコの研究者、STM では原子は観察でき
broad-use-of-nanosilver-in-consumer-products/
2. Samsung Electronics Co. の研究者ら、ナノサイズの二
酸化チタンと銀の吸入試験の結果を公開
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21107.php
ていないことを立証
http://nanotechweb.org/cws/article/tech/45911
3. 米国の NanoSafety Consortium、EPA に多層 CNT 等を
共同で試験することを申請
http://nanotech.lawbc.com/2011/04/articles/united-states/federal/nanosafety-
2. デンマーク、中国、米国の共同研究でナノ材料の内部
consortium-submits-proposed-testing-agreement-to-epa/
構造を立体映像化する手法開発に成功
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/05/110516080306.htm
4. スタンフォード大学の研究グループ、生体影響のない
金ナノ粒子の開発でナノ医薬実現に貢献
3. ナノスケールでも観測可能なフーリエ変換赤外分光法
http://med.stanford.edu/ism/2011/april/raman.html
の開発に成功
http://www.nature.com/nmat/journal/v10/n5/full/nmat3006.html
5. ノースカロライナ大学の研究グループ、消費者は日焼
け止めに使われるナノ粒子のリスクは低いと見なしてい
4. オレゴン州立大学の研究者、磁性ナノビーズを化学物
るとの調査結果を公開
質や微生物の検出に使用する方法を開発
http://www.physorg.com/news/2011-04-unconcerned-nanotechnology.html
http://www.physorg.com/news/2011-04-nanobead-approach-revolutionize-sensortechnology.html
55
PEN July
6. EU と中国、ナノテクノロジー製品に関するシンポジウ
ム初共催
http://ihcp.jrc.ec.europa.eu/our_activities/nanotechnology/first-sino-eusymposium-nanotech-consumer-products
7. オランダのパブリックダイアローグの責任者 Nijkamp
氏、対話の継続の重要性を強調
http://www.nanoforum.org/nf06~modul~showmore~folder~99999~scc~news~sc
id~4206~.html?action=longview&
国際動向
1. Altera 社、Imec の CMOS 微細化加工プロジェクトに参
画
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21499.php
2. EC の行動規範の実施に関するプロジェクト NanoCode、
ガイドラインやツールの開発を予定
http://www.nano.org.uk/news/1321/
3. RUSNANO、米国 SiTime Corp. との MEMS 共同研究へ
2200 万ドルを投資
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21567.php
4. イリノイ大学の Gholam Ali Mansouri 氏、イラン主催
のシンポジウム Nanotechnology, a Window to Future で
講演
http://en.nano.ir/index.php/news/show/2172
5. Asylum Research 社、英国で SPM/AFM のユーザー向
けワークショップを開催
http://www.nanowerk.com/news/newsid=21322.php
56
イベント案内へ掲載を希望される方は [email protected] までご一報ください。
PEN July
イベント案内
Editor's Pick
シミュレーション・予測と情報公開に求められること
シンポジウム 太陽光を主要エネルギー源とした文明の
‐ これまで・今・これから ‐
構築は可能か?
日時:2011 年 7 月 14 日(水)13:30 ~ 18:00
日時:2011 年 7 月 11 日(月)13:00 ~ 17:45
場所:日本学術会議講堂
場所:東京大学本郷キャンパス 安田講堂
主催:日本学術会議総合工学委員会計算科学シミュレー
主催:東京大学 GS+I
ションと工学設計分科会
概要:太陽光等の再生可能エネルギーへの転換に必要な
概要:セッション 1 は「福島問題と情報公開」
、セッショ
技術開発、制度設計について産学官の識者を招いて検討
ン 2 は「科学技術とアウトリーチ活動」をトピックに講
します。参加費は無料です。
演を行い、パネルディスカッションで情報公開のあり方
http://www.gsi.u-tokyo.ac.jp/project/symposium201107.html
について参加者とともに考えます。参加費は無料です。
http://www.scj.go.jp/ja/event/pdf/125-s-3-1.pdf
筑波大学市民講座「基礎からわかる地震・津波・放射能
~よく知り正しく怖がる~」
産総研つくばセンター 一般公開
日時:2011 年 7 月 23 日(土)9:30 ~ 16:00
場所:産総研つくばセンター
主催:産総研
概要:講演会、地質標本館特別展示、産総研の研究の紹介、
工作コーナーなど、子供から大人まで楽しめる催し物が
盛りだくさんです。
http://www.aist.go.jp/aist_j/event/ev2011/ev20110723/ev20110723.html
日時:7月 10 日(日)13:00 ~ 16:50
場所:つくば国際会議場 2 階中ホール
(茨城県つくば市竹園 2-20-3)
主催:筑波大学
概要:正しい知識とリスクの考え方で、新聞やテレビに
あふれる震災や原子力発電所事故関連の情報を消化する
ことで漠然とした不安に向き合えると考え、地震、津波、
放射線・放射能、被ばくの問題について平易に解説する
市民講座を開催いたします。
http://www.tsukuba.ac.jp/event/20110614180857.html
報告会 東日本大震災の復興支援 ‐ 図書館支援に求めら
れていること ‐
日時:2011 年 7 月 13 日(水)
場所:国立国会図書館 東京本館(新館講堂)
、関西館(第
一研修室)
主催:国立国会図書館
概要:被災図書館の現状、具体的支援活動について報告
し、今後の被災地支援について考えます。定員は東京会
場 250 名、関西会場 50 名です。参加費は無料です。
http://www.ndl.go.jp/jp/event/events/1191804_1368.html
インドと日本の科学技術コラボレーション:現在、過去、
未来
日時:2011 年 7 月 8 日(金)18:45 ~ 20:00
場所:筑波大学総合研究棟 D 116 室
主催:筑波大学人間総合科学研究科・若手イニシアティ
ブ
概要:インドと日本の科学技術分野での協力の歴史を振
り返り、今後の両国の協力関係のあり方について、タダ
ティル・パンカジャクサン氏に講演いただきます。
http://wakate.biol.tsukuba.ac.jp/seminar/55th.pdf
57
PEN July
大阪大学ナノ理工学人材育成産学コンソーシアム
平成 23 年度 第 2 回ナノ理工学情報交流会(一般公開)
ナノ理工学情報交流会は、企業会員 28 社、学術会員として阪大教員 20 名などが参加する(社)大阪大学ナノ理工学人
材育成産学コンソーシアムが、年に 4 回開催しています。ナノテクノロジーに関する最新の話題について産学双方からト
ピックスを紹介・議論するとともに、産学および産産の広範な連携・協力を支援するための場を提供するものです。講師
が出席する大阪大学内の会場以外に、東京、三重、京都など全国 7 ~ 8 カ所のサテライト教室にも、TV 会議システムを
用いてライブ配信を行い、毎回 100 名程度の参加者が熱い議論を交わしています。
日時:2011 年 8 月 3 日(水)13:30 ~ 19:00 頃
オーガナイザー:
場所:
コンソーシアム企画運営委員 前田和幸 大阪大学・基礎工学研究科 G 棟 508 号室(講師来訪)
住友電気工業(株)
大阪大学東京オフィスサテライト教室(遠隔配信)
コンソーシアム企画運営委員 柳生博之 四日市商工会議所内サテライト教室(遠隔配信)
(予定)
パナソニック電工(株)
*上記以外に、現在ナノテク社会人教育プログラムのサ
コンソーシアム企画運営委員 森田清三 大阪大学
テライト教室を開講されている企業様は(遠隔配信)に
コンソーシアム企画運営委員 宮坂博 大阪大学
よる受講が可能です。配信をご希望の場合には、下記の
コンソーシアム事務局までご通知下さい。
参加費:
主催:大阪大学ナノ理工学人材育成産学コンソーシアム
コンソーシアム会員、学生及び大阪大学教職員は無料(コ
共催:大阪大学ナノサイエンスデザイン教育研究センター
ンソーシアム企業会員の場合、社内から何名でも無料
で参加が可能です)
。上記以外の方は資料作成費として
プログラム
1000 円/人が必要となります。
13:30 ~ 13:45 イントロダクション
森田清三 氏(大阪大学 工学研究科電気
参加登録:
電子情報工学専攻教授)
氏名、所属、連絡先、受講会場、懇談会(無料)への出
13:45 ~ 14:35 講演 1「界面原子制御に基づいた次世代
欠を記載の上、メールにて大阪大学ナノ理工学人材育成
MOS デバイス開発」
産学コンソーシアム事務局へお申込み下さい。
渡部平司氏(大阪大学 工学研究科生命
E-mail:[email protected]
先端工学専攻教授)
HP:http://www.nanoscience.or.jp/
14:35 ~ 15:25 講演 2「自己集合を利用したナノ空間材
登録締切:
料の合成と機能発現」
2011 年 7 月 19 日(火)
西山憲和氏(大阪大学 基礎工学研究科
化学工学領域教授)
問い合わせ先:
15:25 ~ 15:40 休憩
大阪大学ナノ理工学人材育成産学コンソーシアム事務局
15:40 ~ 16:30 講演 3「ナノ構造制御によるエコマテリ
TEL:06-6853-6859(FAX と共通)
アルの創成と新規機能探索:光触媒・
ナノ触媒・光機能薄膜への応用」
山下弘巳氏 ( 大阪大学 工学研究科マテ
リアル生産科学専攻教授 )
16:30 ~ 17:20 講演 4「抵抗変化型不揮発メモリ (ReRAM)の動作と界面状態」
高木 剛 氏(パナソニック(株)先行デ
バイス開発センター)
17:30 ~ 19:00 懇談会
大阪大学基礎工学研究科 G 棟 508 号室
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PEN July
編集後記
本日は七夕、関東地方は梅雨空で、天の川を見ることは
難しいようです。とはいえ、今年の夏は「省エネ」がキー
ワードですから、気温を抑えてくれる雨は、織姫と牽牛
からの贈り物とも言えます。
何かを決めるとき、判断すべき事柄が重要であればある
ほど、二者択一で決められないのが今の時代、社会では
ないでしょうか。今日の梅雨空のように、はっきりとし
ない環境で、多くの人が苦労して議論を重ね、進むべき
方向を模索しています。科学技術に関わる様々な課題も
例外ではなく、簡単には着地点の見つからない議論を重
ね、実践し、また議論して修正することの繰り返しです。
このような不確実性に満ちた環境において、今後も PEN
が議論と実践の場を提供できればと思っています。
PEN 編集室 一同
2011 年 7 月 7 日
PEN 編集室
編集長 関谷瑞木
安順花
外部編集委員 安宅龍明
伊藤正
亀井信一
李精一
宋清潭
豊蔵信夫
ウェブ担当 木村美紀
発行責任者 阿多誠文
(独)産業技術総合研究所 ナノシステム研究部門
ナノテクノロジー戦略室
〒 305-8565 つくば市東 1-1-1 産総研つくばセンター中央第 5 1 号館 3106 室
Email:[email protected]
Tel:029-860-5108、Fax : 029-861-4433
http://unit.aist.go.jp/nri/nano-plan/index.html
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