草雲雀

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毎朝その籍へ差し入れてやらなければならぬ新しい茄子か胡瓜かの薄片に取り付いて居る聞を
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t紛麗にして、そして食物-一を十分にして,
除いて、彼は日のうちは陸るか冥想するかして居るO
角をそなへた、尋常の蚊の大いさ位の聡蜂を想つ℃見給へ。グサ・ヒパリ邸ち﹃草雲雀﹄といふの
が彼の日本の名である・そして彼は市場で正に十二銭の値ひを有って居る・邸ち、自分の重さの・
賃金よりか遥かに高償である・こんな蚊のやうな物が十二銭!・・・・
自分の射官よりか透か長い、そして日に透かして見なければ見分けられぬ程に細い、一艶の絹
│ l紗張。の己が天井に、身を惑か様に、抱き付いて1lぢっとして居るのが分る・
その籍は正しく高さが二寸で摘が一寸五分。軸があってそれで廻る小さな木戸は自分の小指の
持離がやっと入る位。だが、彼には此稽の中に十分の絵地が1l歩んだり跳ねたり飛んだりする
品開地があるのである。といふのは、彼を一瞥せん矯めには、この組問色紗張。の横耐を透して、非
常に注意して見なければならぬ程、彼は小さいからである。自分は其居場慮を見つけるまでに
は、十分な明かりで、何時もその鰭を幾度も廻して見なければならぬ。するといつも上の片隅に
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草
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小泉八曇 f
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k国倒である。彼一一宮諸君が見得るなら、.こんな可笑しい程小さな動物の矯め
に、少しでも骨を折るなど馬鹿馬鹿しいと思ふであらう。
飼って置くことは少
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だが、日が暮れるといつも、彼の無限小な蜜が眼究める。すると、言ふに言はれぬ美はしい葵
妙な蜜的な音楽で││非常に小さな電鈴の音のやうな、微かな微かな臥側なすリリリリ uJと震ふ
ゃ h
聖且日で
部屋が一杯になり始める。暗黒の深くなるに漣れて、実菅は麿一層美はし︿な0・
11
時には家中がその仙楽に振動するかと起へるまで高まり││時には想ひも得及ばぬ微かた極はみ
の紛の如き雄官に細まる。が、高からうが低からうが、-斗を貫く不可制仙議な音色を続ける。.
夜もすがらこの微鹿はそんな夙に欧って、寺の鎖が明けの時刻を告げる時やっと時き止む。
さて、この小さな欧は織の││見もせず知りもせぬものを癒する漠たる織の││歌である。彼
の此世での生涯の中に、いつか見又は知った欝は更に無いのである。泌去幾代のその組先すらも、
野原での夜の生活も、また、織に於ける欽の僚組も、少しも知り得た謬は無いのである。彼等は
姦商人の脂で、土の査の中で勝った卵から生れ出たもので、その後舗胞の中だけに懐んで居たもの
である。だが、彼は幾滋年の古背、欧はれた泊。に、しかもその敬の一間一釈の確況な意味を了
解してでも居るやうに少しの間違ひも無く、欧ふのである。同よりのこと、叫献を鍬ふことを場び
はしなかった。それは有機的記憶の!ーその魂が夜毎小山の露けき草陰から、高官を響かせた時
の、幾千草代の生涯の深い健気な記憶の││軟なのである。その時はその歌が同柳川を 1 1そしてf
翁
童
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た死をーーもたらした。彼は死に就いては全︿忘れてしまって居る。が‘その時間は-記憶して居る。
だからこそ彼は││決して来ては呉れない新郎を求めてll今、欲ふのである。
だからして、彼の時限慕は無意識的に懐古のものである。彼は過去の塵土に叫んで居るのである││沈黙と紳とに時の飾り来たらんことを呼ぱはって賠るのである。:::人の世の鍛人も、自分
ではそれと知らずに、政るこれに似たことをして目的る。人の世の轡人は其迷ひを開想と呼んで居
る。ところが、彼等の混想なるものは、用車寛するに種族経験のただの影であり、有機的記憶のま
ぼろしである。生きて居る現在は、それには殆んど無交渉である。:::この微塵の小動物もまた
現想を有って居るか、叉は少くとも現想の痕跡を有って居ょう。が然し、兎も角、其小さな願謬
は、其哀求を徒らに述べざるを得ぬのである。
その各は全く自分だけのものでは無い。この者に配加酬を奥へると、怖かなくなり、且つ底戸、に
死ぬるといふ警戒を、自分は興へられて居たからである。ところが、夜毎夜毎、その際答の無い
美しい哀求の脚部は、非難の擦のやうに自分の胸を衝いたl ーしまひには苦痛となり.苦悩となり・
良心の問責となった。そこで雌を買はよ Jと試みた。季節が遅かったので震って居る・クサヒバリは
││雄も雌もーーもう一匹も無かった。議商人は笑って﹃九月の二十日頃には死んだ筈ですが﹄
と雪一同った。(此時はもう十月の二日であった)然し鼠商人は自分の欝粛には上等の燦趨があって.
いつも温度を華氏七十五度以上にして居ることを知らなかったのである。だから、自分の草雲雀
闘は十一月の米にもなほ附いて居るので、自分は大寒の頃まで生かして躍かラと忠りて居る。が然
草'
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1集
小泉八
旭凶
L、彼の代の他の者共は、多分、死んで居ょう。金づくにも何づ︿にも自分は、彼に今、間偶を
求めることは出来なからう・それからまた、自分で捜せるやうに、放ってやれば、日の中は庭に
居るその多勢な自然の敵 1 1蟻や百足識や恐ろしい土蜘妹 1 1の手を幸運にも完がれ了せても、
ただの一と夜も明けまで到底も生き℃居ることは出来なからう。
り
昨夜││十一月の二十九日 111
机に鈎って居ると妙な感じがl │部屋か容な感じが自分を襲づ
た。やがて、自分の草雲雀が.いつもと具って、黙って居ることに気が付いたじ無言なその縫へ行門戸
て見たら、彼は小石のやうに友色に竪︿なった乾からびた茄子の薄片の横で、死んで居た。確かに
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が、ついその死ぬる前の晩.彼は驚く許り歌って居
三四日の問、食べ物を貰はなかったのである だ
たのであったーーだから、愚かにも同分は、彼はいつもよりかも締具して跨るものと凪って居た。
自分の家の書生の‘アキといって.議を好いて居るのがいつも彼に食物を興へてゐた u践が‘アキ
ヨと u
は一週間の休眠一を貰って田舎へ行ワたので、草雲雀の世話をする義滋は下女のハナに委ねられた
のである。同情深い女では無い.下文のハナは.その小さな物のことは忘れはしませんでしたが、
も4茄子がありませんでしたと云ふ。そしてその代りに懇か胡瓜の小片を興へることを考へなか
ったのであるli--自分は下女のハナを叱った。そして彼女は恭しく悔悟の意を述べた。だが、
仙郷の音繁はやまってしまりた。寂莫が自分の心を責める。部屋は媛胞があるに拘らず冷たい e
省
書
草
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おもひ
馬鹿な l・t・--姿粒の大いさの牛分も無い血酬の矯めに、善良なる少女を自分は不幸ならしめたの
だ!あの無限小な生の消滅がこんなにもあらうと信じ得られなかった程に、自分の心を悩ます。
・::固よりの事、ある動物のll総鮮のでもil英欲求について考へるといふただの期間慣が‘知ら
ず識らず次第に、一種想像的関心を卜 l関係が和えてから始めて気の付く一種の愛著の念・?7l
集むのかも知れぬ。その上また、その夜がひっそふりして居たので、その徴妙な盤の妙味をーーそ
の微小の生は、帥の慈みに頗るやうに、余の意志に、余の利己的快楽に、新ワて居るのであると
器開
hy--その小さな縫の中なる微塵の霊と、余が艦内なる徴盛の蜜とは.寅在の大潟に在って永遠
に同一不二の物であると誇伊ーーその微妙な撃の妙味を特に身に泌みて感じたのであった。 ..
それからまた、彼の保護紳の思想が夢を織り成すことに向けられて居る問、日目、夜夜、食に飢
i---鳴呼、それにも拘らず、最後の最後に
ゑ水に渇して居たその小生物のことを思ふといふとl
至るまでllしかも惨信たる最期であった、自分の脚を隅咽んで辰たからll如何に雄雄しく歌ひ
績けて居たことかl
i---紳ょ、我等凡てをl l殊に下女のハナを││赦し給はん事を!
だが、裂するところ一部慌の矯めに自分で自分の脚を噌むといふ事は、駄の天票を有つといふ
呪租を蒙って居る者に出来し得る最大凶事では無い。世には欧はんが篤めに自分で自分の心臓や守
食はねばならぬ入閣の燃鮮が居るのである。(大谷疋信課﹀
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