IFJ 短信 2016 年 10 月 5 日 国連人権委が、ジャーナリストの自由な取材と 安全確保を求める決議 国連人権委員会は 2016 年 9 月 29 日、多くの国でジャーナリストらに対する 暴力行為や脅迫が罰せられない現実を踏まえ、表現の自由は民主主義社会の基 本であり、ジャーナリストに対する暴力をやめ、ジャーナリストを自己規制に追 い込むようなことはやめるべきだとの決議を採択した。 決議は、加盟国に対して、 ① 不当に拘束しているジャーナリストを直ちに釈放すること、 ② ジャーナリストが自由な取材ができるよう、法的保障も含めた環境を整備す ること、 ③ ジャーナリストへの暴力を罰する手段を法的枠組みを含め整えること、 ④ 選挙報道の自由を尊重すること、 ⑤ テロ防止法がジャーナリストの権利を侵害しないよう留意すること、 ⑥ ジャーナリストの情報源を追及しないこと、 などを求めている。 IFJ は、この決議は、ジャーナリストの安全確保に向けて、広範な運動を展開 するきっかけになるとして、歓迎している。 ドイツで難民向け無料放送 非営利局が衛星と CATV で配信 IFJ によれば、ドイツで難民向けのチャンネル Handshake2 Deutschland (H2 D)が 2016 年 9 月 6 日から放送を開始した。 H2D は、ドイツ語と英語、それにアラビア語で、ドイツでの生活情報やドイ ツ語教育番組、世界のニュースなどを、衛星と CATV で配信している。 H2D は非営利の放送局で、経費は寄付金で賄い、無料で受信できる。 難民向け放送は、国際放送のドイチェ・ベレがヨーロッパ向けにアラビア語で 番組を配信しているほか、ギリシャの公共放送が国内向けにアラビア語放送を している。 村民デモ取材の香港記者 5 人が強制送還 中国では外国特派員の取材制限も強化の一方 IFJ に加盟している Hong Kong Journalists Association(HKJA)などによ れば、中国広東省の小さな村の村民抗議デモ参加者の取材をしていた香港の明 報やチャイナ・モーニング・ポストの記者やカメラマン 5 人が 2016 年 9 月 14 日、現地で逮捕され、翌日香港に強制送還された。 この村は、2011 年に土地の強制収用に村民が抗議して大規模なデモを繰り返 し、中国では異例の村長の選出を村民ができる制度をかちとり、特派員によって、 外国に配信された。ところが、2016 年になって、村民選出の村長が収賄容疑で 逮捕され、村民は再び抗議デモを繰り返した。 中国当局は 9 月 13 日に取材を禁止したが、14 日に取材した香港の 5 人が強 制送還された。 最近中国では、国内や香港のジャーナリストに対する締め付けが厳しくなっ ているが、外国人ジャーナリストへの規制も強化されているという。2016 年 9 月 4 日~5 日に中国で開催された G20 サミットでも、中国に批判的な報道を続 けているドイツの国際放送ドイチェ・ベレの取材班が取材許可証の交付を中国 当局から拒否されている。 アメリカの「Pen America」が 2016 年 9 月 22 日に公表した「Darkened Screen-Constraints on Foreign Journalists in China」 によれば、中国に滞在 する外国特派員の取材に関しては、2008 年の北京オリンピックのころは、あま り規制されなかったが、2012 年に習近平体制になってからは、規制が強化され る一方で、取材地域やイベントの取材も厳しく制限されるという。また、当局に よる情報源調査が一段と厳しくなったため、経済指標などの入手も困難になっ ている。 ブラジル現地雇員に長時間労働 オリンピックのホスト放送機構に労働法違反 ブラジルの裁判所は 2016 年 9 月 17 日、国際オリンピック委員会(IOC)の オリンピック放送機構が、リオ大会の放送制作にあたって、現地で雇用した労働 者を長時間働かせたり、不規則な勤務を命じたりした労働法違反があったとの 判決を言い渡した。同時に、現地雇員 2000 人への補償や罰金を確保するために、 同機構の放送機材などを押収し、同機構のブラジルでの資産を凍結した。 オリンピック放送機構は、オリンピックとパラリンピックのホスト放送制作 局として IOC が 2001 年に設立したスペインの会社である。 半世紀にわたる内戦終結合意 コロンビア和平、国民投票で反対が過半数 南米コロンビアで半世紀以上にわたって政府軍とコロンビア革命軍の間で続 いていた内戦について、政府と革命勢力の間で和平の合意が 2016 年 9 月 26 日 に成立した。これを受けて政府は和平案の是非を問う国民投票を実施したが、10 月 2 日の投票の結果、反対が 50.21%で、賛成を上回った。 当初は賛成が過半数の世論だったが、反対多数は和平案が革命軍に譲歩しす ぎているとの感覚が国民に拡がった結果だと見られている。 政府、革命軍とも和平の枠組みは維持したい意向で、今後和平案の内容につい て再交渉が行われる。 戦後和解は、19 世紀までは戦争の指導者間で合意し、残虐行為も含めて戦争 中の出来事については「水に流す」ことで実現されてきた。しかし、20 世紀に なって、特に第一次世界大戦以降は、兵器技術の進歩で軍人だけでなく一般住民 の被害が大幅に増えたこと、マスコミの発達で被害内容が多くの住民に知られ るようになったこと、戦争中の出来事を忘れるのではなく記憶して再発防止に 努めることが世界の趨勢になっていることから、指導者は民意を問わなければ ならなくなっている。 コロンビア和平の是非を問う国民投票も、メディアによって伝えられた内戦 中の被害を住民が忘れなかったが故の結果だと見られる。 海外在住ライターによるウェブ言論メディア Speak Up Oversea’s 10 月 1 日にスタート ベルギー在住のふじを潤氏の呼びかけで、海外に在住するライターによる日 本語のウェブ言論メディア、Speak Up Oversea’s が 2016 年 10 月 1 日にスタ ートした. Speak Up Oversea’s は、既存の日本メディアだけしか読んだり、見たりして いない日本の人たちに、海外に在住するからこそ感じられる情報を発信しよう と企画されたもの。第 1 号には、IFJ 会員のベルギー在住の栗田路子氏、フラン ス在住のプラド夏樹氏、ドイツ在住の田中聖香氏らが、寄稿している。 http://www.speakupoverseas.net/ 福島原発事故被災地写真で 高木忠智氏が上野彦馬賞、受賞 毎日新聞社と九州産業大学が主催する日本の写真コンテスト・第 17 回上野彦 馬賞で、IFJ・Japan フリーランスユニオンの会員である高木忠智氏が最高賞の 上野彦馬賞を受賞した。 受賞した作品は、東京電力の福島第 1 原発の事故で住めなくなった廃墟を追 い続けた 5 枚 1 組の写真。 授賞式は 2016 年 11 月 5 日に福岡で行われる。 以上
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