IFJ 短信 2013 年 1 月 28 日 イギリスの公共放送 BBC 報道番組部長と報道番組編集長を公募 イギリスの公共放送 BBC が、報道番組部長とニュース番組「ニューズナイト」 の編集長の公募をウェブサイトで開始した。締め切りは 2013 年 2 月上旬である。 BBC は、名物司会者だったジミー・サビル氏(故人)の連続少女暴行疑惑が 明るみにでたり、誤報したりするなど最近世論の厳しい批判にさらされている。 こうしたことから、BBC は、視聴者の信頼を回復するためには適材を広く募る 必要があるとして公募に踏み切ったもので、健全な編集責任能力があり、力強 く革新的で、創造力のある人物を求めている。 「ニューズナイト」は BBC の看板報道番組で、BBC 生え抜きのベテランが 編集長を務めていたが、サビル氏の疑惑に関する報道番組の放送を見送ったこ となどから、2012 年 10 月に編集長を辞任している。 報道番組部長は、 「ニューズナイト」などのテレビ報道番組のほか、海外も含 めラジオの報道番組を統括するポストで、これまで生え抜きの職員が務めてい たが、「ニューズナイト」問題で 2012 年 12 月に辞任し、退社している。 アルジェリアのプラント襲撃事件 強硬策にメディアは賛否両論 アルジェリア東部のイナメナスの天然ガスプラントが、2013 年 1 月 16 日イ スラム武装勢力に襲撃され、多くの作業員が人質となった。アルジェリア軍の 鎮圧作戦にともない日本人を含め多くの犠牲者が出た。 日本のメディアは、日本人の犠牲者が多かったこともあって、アルジェリア 政府の強硬手段に批判的な論調が多い。しかし、IFJ によれば欧米のメディアは、 テロには妥協せずに戦う必要を強調しているものの、強硬策については賛否が 分かれているという。イギリスの「タイムズ」は、アルジェリア政府が事前に 関係国と調整しなかったことを批判し、政府の怠慢だと批判した。アメリカの 「ニューヨーク・タイムズ」も、アルジェリア政府の対応を批判している。 一方フランスの「ル・モンド」は、リビアのカダフィ政権が崩壊した後、西 アフリカには武装勢力が跋扈し、麻薬の密輸や誘拐事件が続発していることか ら、テロの巣窟にしないために、軍事介入は必要だったと指摘している。 また、イギリスの「ファイナンシャル・タイムズ」は、現実を見て見ぬふり をしてきた国際社会にはアルジェリア政府を責める資格はない、と主張してい る。 IFJ ジャパンのメンバーでフランス在住の高橋真美氏は、「アルジェリア軍に よるテロ組織への最終作戦終了直後の 1 月 19 日、フランスのオランド大統領が アルジェリア政府の対応を明確に支持したあと、フランスのメディアは軍事鎮 圧を支持する外相やテロ対策専門家のコメントを積極的に報道した。さらに、 今回の人質事件を契機にフランスが軍事介入をしているマリにアルジェリアの 関与が強まるだろうと分析するなど、軍事鎮圧への批判はほとんどなかった」 と IFJ 東京事務所へコメントを寄せてくれた。 高橋氏によれば、アルジェリアで事件が発生し人質の救出ができるかが注目 されていたころ、パリは大雪に見舞われ、トップニュースは雪の話題だったと いう。 また、ベルギー在住の栗田路子さんによれば、ベルギー人被害者にいるとの 情報で初めは大きく報道されたが、ベルギー人はいないと確認され扱いは小さ くなった、テロとは交渉せずという断固とした態度が正しいとの感覚が強いよ うだ、とのコメントを送ってくれた。 IFJ は、報道内容の違いは事件に関する各国の当事者感覚の差によるもので、 テロが国内の現実問題であるところと、比較的テロとは遠い国の感覚の差によ るものだとしている。 「南方週末問題」、強硬弾圧には至らず 習政権、沈静化をはかる 2013 年 1 月 10 日の IFJ 短信でお伝えした中国広東省の週刊誌「南方週末」 の記事の検閲改ざん事件は、その後、表面的には検閲実態を暴露した記者たち への強硬弾圧はなく、事態は沈静化に向かっている。 しかし、記者たちが要求した編集責任者ら幹部の更迭もなく、痛み分けのよ うなかたちになっている。 この事件では 2013 年 1 月 13 日に、記事改ざん事件を批判する自由派の言論 人が北京で開催したサイン会で改革開放反対派に暴行を受けたりしている。 IFJ では、習政権が事態の鎮静化をはかるために当分様子を見るのではないか、 としている。 ソマリアでジャーナリストまた殺害される 2013 年も多難な取材続くか IFJ によれば、2013 年 1 月 18 日にアフリカ・ソマリアの首都モガディシオ で、テレビキャスターが何者かに銃撃された。彼は、ソマリア・ジャーナリス ト協会の積極的なメンバーで、仕事にでかける途中に襲われ病院に運ばれたが、 手術中に死亡した。 また、今年に入って、兵士に暴行された女性にインタビューした記者が脅さ れ、女性も軍の嫌がらせを受けて、取材を拒否するようになった、という。 ソマリアは 2012 年に 18 人が殺害され、シリアに次いで犠牲者の多かった地 域だが、政府には報道陣の安全に配慮する気配はなく、2013 年も現地取材者は 安全確保に万全の配慮をする必要があると、IFJ は警告している。 以上
© Copyright 2024 Paperzz