スタンプを押すように狙った細胞に導入する遺伝子導入の新手法 「スタンポレーション法」と「スタンポユニットSU100」の紹介 オリンパス株式会社 MEMS 開発本部 MEMS 開発部 館山 清彦 オリンパスでは理化学研究所と共同で、顕微鏡で観察しながら、スタンプを押すように 狙った細胞に遺伝子やタンパク質などの分子を導入する新手法「スタンポレーション法」 を開発した1)。 本手法では、遺伝子やタンパク質が入った培養液中で、細胞を観察しながら、微細な針 を上下し、狙った細胞に孔を空けることで導入する。この微細な針は、原子間力顕微鏡(A FM)で用いられるカンチレバー製造技術を応用して製作される。極微細な針であるため、 細胞へのダメージが小さく高い生存率が得られる。また物理的な方法で確実に孔を空ける ことができるため高い導入効率が得られる。 このスタンポレーション法は、オリンパス製倒立型顕微鏡IXシリーズに「スタンポユ ニットSU100」を取り付けることで可能となる。本ユニットでは、ハンドルを回して 針を上下動するだけの簡単な操作で狙った細胞への導入が可能であり、難しい手技を必要 としない。 これまで HeLa 細胞における蛍光色素の導入効率は 100%,GFP の蛍光で判定した遺伝子発 現効率は 75%が得られている。また,隣合わせの細胞に異なる遺伝子や蛋白質を任意に導 入できることも確認されている。 本手法は、狙った細胞や局所への導入、タイミングを見計らっての導入、複数種類の分 子の共導入など、既存の導入手法では難しかった様々な応用も考えられ、今後、生細胞イ メージング研究で有効な手段として活用が期待できる。 1)Hara, C. et al. A practical device for pinpoint delivery of molecules into multiple neurons in culture. Brain Cell Biol. (Epub 2008)
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