財団法人福岡 県産業・科学 技術振興財団 産 学 官 共 同 研 究 開 発 事 業 研究成果報告書 次世代自動車用エアバッグシステムの開発 (平成23年 度~平成 24 年度) 目 次 【研 究 総 括 】 次 世 代 自 動 車 用 エ ア バ ッ グ シ ス テ ム の 開 発 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 研究総括責任者 福岡大学 加藤勝美 【研究報告】 1. サ ブ テ ー マ 1 新 規 ガ ス 発 生 剤 の 開 発 (ス プ レ ー ド ラ イ 微 粒 子 の 調 製 と 物 性 評 価 ) ・・4 福岡大学安全システム医工学研究所, (独 )産 業 技 術 総 合 研 究 所 安 全 科 学 研 究 部 門 2. サブテーマ 1 新 規 ガ ス 発 生 剤 の 開 発 (吸 湿 性 お よ び 潮 解 性 ) ••••••・・・・・・・・・・・・11 福岡大学安全システム医工学研究所 3. サブテーマ 1 新 規 ガ ス 発 生 剤 の 開 発 (相 安 定 性 ) •••・・・•••••••••••••••••••・・・16 福岡大学安全システム医工学研究所 4. サブテーマ 1 新 規 ガ ス 発 生 剤 の 開 発 (燃 焼 性 ) ••••••••••••••••••••••••・・・・・・21 福岡大学安全システム医工学研究所 旭 化 成 ケ ミ カ ル ズ (株 )大 分 工 場 (独 )産 業 技 術 総 合 研 究 所 安 全 科 学 研 究 部 門 5. サブテーマ 1 新 規 ガ ス 発 生 剤 の 開 発 (熱 安 定 性 お よ び 振 動 耐 性 ) ••••••••・・・・・・27 福岡大学安全システム医工学研究所 旭 化 成 ケ ミ カ ル ズ (株 )大 分 工 場 6. サブテーマ 2 新規エアバッグ形状の開発 (タ ン デ ム エ ア バ ッ グ お よ び 加 害 性 評 価 装 置 の 設 計 と 試 作 ) •••••••••・・・・・・・・・・33 福岡大学安全システム医工学研究所 (有 )沖 本 縫 製 奥 谷 工 場 7. サブテーマ 2 新 規 エ ア バ ッ グ 形 状 の 開 発 (加 害 性 評 価 試 験 装 置 に よ る 評 価 )•・••・39 福岡大学安全システム医工学研究所 (有 )沖 本 縫 製 奥 谷 工 場 (独 )産 業 技 術 総 合 研 究 所 安 全 科 学 研 究 部 門 8. サブテーマ 2 新 規 エ ア バ ッ グ 形 状 の 開 発 (静的展開試験およびリニアインパクタ試験)•47 福岡大学安全システム医工学研究所 (有 )沖 本 縫 製 奥 谷 工 場 9. サブテーマ 2 新 規 エ ア バ ッ グ 形 状 の 開 発 (豚 眼 の 損 傷 に 関 す る 検 討 ) ••••・・・・・・57 福岡大学安全システム医工学研究所 福岡大学医学部,福岡大学病院 日本赤十字社福岡赤十字病院救急科 【成 果 実 績 】 ••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••••• ・・・・・・61 研究総括 福岡大学安全システム医工学研究所 助教 1 加藤 勝美 研究開発の背景および目的 エアバッグは,自動車の衝突時にガス発生剤と呼ばれる固体燃料が燃焼し,その燃焼ガ ス に よ り 展 開 す る 。 コ ス ト 等 の 観 点 か ら ガ ス 発 生 剤 組 成 物 と し て , 硝 酸 ア ン モ ニ ウ ム (AN) が 注 目 さ れ て い る が ,AN は ,吸 湿 性 が 高 く ,様 々 な 温 度 帯 で 結 晶 構 造 変 化 (固 相 間 相 転 移 ) が起こる等,実用化に際し解決すべき課題がある。また,エアバッグには,搭乗者とバッ グが衝突する際に,眼等に重篤な外傷を負うという 加害性の問題もある。本研究では,こ れ ら 2 つ の 問 題 を 解 決 す る こ と を 目 的 と し , 物 性 改 善 し た 新 規 AN 系 ガ ス 発 生 剤 の 開 発 (サ ブ テ ー マ 1), お よ び , 加 害 性 を 軽 減 す る バ ッ グ 形 状 の 設 計 (サ ブ テ ー マ 2)を 試 み た 。 2 研究開発体制 福 岡 大 学 加 藤 勝 美 を 研 究 統 括 責 任 者 と し て 、 下 記 「 産 」「 学 」「 官 」 の 研 究 体 制 (下 記 )で 本研究開発事業を実施した。また,東京大学環境安全研究センターの新井充教授には,ア ドバイザーとしてご参画頂いた。 研究総括責任者 〈産〉 福岡大学 加藤勝美 (有 )沖 本 縫 製 奥 谷 工 場 旭 化 成 ケ ミ カ ル ズ (株 )大 分 工 場 〈学〉 研 究 代 表 者 : 専務取締役 沖本雄紀 担 者:研究員 立花博隆 研究代表者:研究員 熊谷恒佑 担 塚原祐介 当 当 者:研究員 福岡大学安全システム医工学研究所 研 究 代 表 者 : 助 教 担 当 者 : 講師 内田俊毅 助教 東英子 助教 入江豊 客員教授 三好仁 福岡大学医学部,福岡大学病院 〈官〉 加藤勝美 教授 中野勝之 PD 土屋潤 学生 永山清一郎 研究代表者:教授 内尾英一 担 尾崎弘明 当 者:診療教授 (独 )産 業 技 術 総 合 研 究 所 安 全 科 学 研 究 部 門 研究代表者:統括研究主幹 緒方雄二 担 和田有司 当 者:研究グループ長 日本赤十字社福岡赤十字病院救急科 研 究 代 表 者 : 部 長 1 友尻茂樹 3 研究成果の概要 3ー1 サブテーマ 1 新規ガス発生剤の開発 硝酸アンモニウムの物性改質を目的として,スプレードライ処理により,硝酸アンモニ ウ ム , 硝 酸 カ リ ウ ム (相 安 定 化 剤 )お よ び ポ リ マ ー (防 湿 化 剤 )が 一 体 化 し た 微 粒 子 を 調 製 し た。評価の結果,本方法により硝酸アンモニウム問題点である防湿性および相安定性を改 善できることが明らかになった。一方,調製した微粒子を主成分とするガス発生剤を試作 し,各種物性を評価したところ,圧力指数が高い等,燃焼性に問題があることが分かり, 今後改善する必要がある。 3ー2 サブテーマ 2 新規エアバッグ形状の開発 加 害 性 を 軽 減 す る エ ア バ ッ グ と し て ,タ ン デ ム エ ア バ ッ グ (2 つ の バ ッ グ が 連 結 し た エ ア バ ッ グ )が 考 案 さ れ て い る 。 本 研 究 で は , 衝 撃 吸 収 効 果 お よ び バ ッ グ 展 開 速 度 の 観 点 か ら , タ ン デ ム エ ア バ ッ グ の 最 適 構 造 (容 量 , 脱 気 孔 径 , 通 気 孔 径 , 体 積 調 整 ベ ル ト 長 等 )を 検 討 した。その結果,従来のシングルエアバックと同程度の時間で展開し,かつ,衝突時の 衝 撃をより軽減できる形状を明らかにした。 4 研究成果の市場性・優位性 4 -1 新 規 ガ ス 発 生 剤 の 開 発 (サ ブ テ ー マ 1) 現在,自動車エアバッグ用ガス発生剤の成分として塩基性硝酸銅が主に用いられている が , こ の 物 質 は 他 の 応 用 用 途 に 乏 し く , 近 年 , そ の 原 料 と な る 硝 酸 銅 (II)の 価 格 は 特 に 高 騰 し て お り ,1kg あ た り 10,000 円 を 超 え る こ と も あ る 。一 方 ,本 研 究 で 着 目 す る 硝 酸 ア ン モ ニ ウ ム は , 産 業 用 爆 薬 な ど の 原 料 と し て 広 く 流 通 し て い る こ と か ら 安 価 (約 100 円 /kg) であり,原料価格の大きな削減が見込める。 4 -2 新 規 エ ア バ ッ グ 形 状 の 開 発 (サ ブ テ ー マ 2) エアバッグの加害性を軽減する技術として,衝突する速度に応じてガスの噴出量を調節 するなどの方法が提案され,一部実用化されている。しかしながら,この方法 は,インフ レ ー タ (ガ ス を 噴 出 さ せ る 燃 焼 室 )の 構 造 が 複 雑 と な り 高 価 で あ る こ と か ら , 一 部 の 高 級 車 のみに搭載されるに留まっている。一方,本研究で提案した加害性の軽減方法は,バッグ の形状を変えるのみであり,現行のインフレータを流用できることから ,普及車,低価格 車への搭載が可能となる。 5 今後の具体的な計画 5 -1 新 規 ガ ス 発 生 剤 の 開 発 (サ ブ テ ー マ 1) 本研究にて調製した微粒子を主とするガス発生剤の燃焼性を評価したところ,圧力指数 が高い等,燃焼性に問題があることが分かった。今後は,この問題を解決するため,ガス 発生剤組成を変える等して目標とする燃焼性が得られるよう,研究を継続する。 2 5 -2 新 規 エ ア バ ッ グ 形 状 の 開 発 (サ ブ テ ー マ 2) タンデムエアバッグを試作し,バッグ部位に改良を重ねた結果,従来のシングルエアバ ックと同程度の時間で展開し,かつ,衝突時の加害性を軽減でき得るバッグ形状を明らか にできた。しかしながら,実用化するためには,本技術を適用することによって,どの程 度,外傷発生率を下げることができるのか,と言った医学的な定量的検証が必要である。 福岡大学医学部と引き続き連携し,また,自動車メーカ等の意見も取り入れながら,こう した研究を継続する。 6 研究成果の波及効果 6 -1 新 規 ガ ス 発 生 剤 の 開 発 (サ ブ テ ー マ 1) 近年の自動車のデザイン上の要求,および自動車1台あたりのエアバッグ搭載数増加な どの事情から,インフレータの小型軽量化への要求 が高まっている。本研究で開発したガ ス発生剤は,金属含有量が少ないため,インフレータ中の残渣除去フィルタ部分の容積削 減に大きく寄与でき,自動車業界の要求に答えることができる。また,前述のようにコス ト面でも有利であるため,今後改良を加えれば,急速に普及するポテンシャルはあると考 えられる。また,当該技術は,エアバッグの用途だけでなく,ロケット推進薬への応用も 期待でき,次世代の宇宙開発にも画期的に貢献できる可能性がある。 6 -2 新 規 エ ア バ ッ グ 形 状 の 開 発 (サ ブ テ ー マ 2) エ ア バ ッ グ の 加 害 性 を 軽 減 す る 技 術 と し て ,ガ ス 発 生 剤 の 着 火 方 法 を 変 え る ,あ る い は , 2 つのインフレータを用いて,衝突する速度に応じてガスの噴出量を調節するなど,イン フレータ自体の構造を高度化してガス発生剤の燃焼速度を制御する方法が主流である。 一 方,本研究で開発する加害性軽減技術は,バッグの形状を変えるのみであるため,エアバ ッグモジュールの低コスト化を図ることができ,低価格車への搭載が可能となる。開発国 等も含め多くの人々の安全に貢献できると考えられる。 7 今後の課題と取り組み サ ブ テ ー マ 1 に 関 し て は ,平 成 25 年 度 よ り 企 業 と の 共 同 研 究 を 開 始 し て お り ,燃 焼 性 の 改善等,実用化に向けた開発研究を継続している。サブテーマ 2 に関しては,本研究を通 じて構築した自動車メーカおよび医師らとの協力関係を維持しながら,エアバッグ加害に 関する研究を継続する予定である。 3 1 サブテーマ 1 新 規 ガ ス 発生 剤 の 開 発 ( ス プ レ ー ド ライ 微 粒 子 の 調 製と 物 性 評 価 ) 福岡大学安全システム医工学研究所 助教 加藤勝美 教授 中野勝之 助教 東英子 学生 永山清一郎 (独)産業技術総合研究所安全科学研究部門 統 括 研 究 主 幹 緒方雄二 研究グループ長 和田有司 1―1 はじめに スプレードライは,溶媒中に試料を溶解または分散させ,それを高速で高温雰囲気中に 噴 霧 し 乾 燥 さ せ る こ と で 微 粒 子 を 得 る 方 法 で あ る [1]。手 順 が 非 常 に 簡 便 で あ る た め ,イ ン スタントコーヒーや調味料の粉末化から汚泥の乾燥に至るまで広く用いられている。 本 研 究 で は , ス プ レ ー ド ラ イ に よ り , 硝 酸 ア ン モ ニ ウ ム (AN), 相 安 定 化 剤 [2][3]で あ る 硝 酸 カ リ ウ ム (KN)お よ び 各 種 ポ リ マ ー が 溶 解 ま た は 分 散 し た 水 溶 液 に 対 し て ス プ レ ー ド ラ イ 処 理 を 行 い , 3 成 分 が 一 体 化 し た 微 粒 子 (ポ リ マ ー 含 有 PSAN)の 調 製 を 試 み た 。 AN と KN が一体化し,さらにポリマーが粒子の表面に,あるいは粒子全体に均一に分布する微粒子 を 調 製 す る こ と が で き れ ば ,AN の 問 題 点 で あ る 相 転 移 と 吸 湿 性 を 共 に 解 決 で き る こ と が 期 待 で き , AN 系 ガ ス 発 生 剤 の 組 成 物 と し て の 利 用 が 可 能 と な る 。 1―2 プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づけ 本 プ ロ ジ ェ ク ト は ,新 規 AN 系 ガ ス 発 生 剤 の 開 発 (サ ブ テ ー マ 1),お よ び ,加 害 性 を 軽 減 す る バ ッ グ 形 状 の 設 計 (サ ブ テ ー マ 2)か ら な る 。 サ ブ テ ー マ 1 で は , 以 下 の 方 針 に 沿 っ て 研 究 を 実 施 す る 。 こ こ で は , (1)の 研 究 に つ い て 報 告 す る 。 (1) ス プ レ ー ド ラ イ に よ る ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 調 製 (2) ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 吸 湿 お よ び 潮 解 性 評 価 (3) ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 相 安 定 性 評 価 (4) ポ リ マ ー 含 有 PSAN を 主 剤 と す る ガ ス 発 生 剤 の 燃 焼 性 評 価 (5) ポ リ マ ー 含 有 PSAN を 主 剤 と す る ガ ス 発 生 剤 の 熱 安 定 性 お よ び 振 動 耐 性 評 価 1―3 目的と目標 ス プ レ ー ド ラ イ に よ り ,AN,相 安 定 化 剤 で あ る KN,お よ び 各 種 ポ リ マ ー が 一 体 化 し た 微 粒 子 (ポ リ マ ー 含 有 PSAN)の 調 製 を 目 的 と す る 。 具 体 的 目 標 は , 含 水 率 1wt%以 下 で , か つ , 圧 縮 成 型 等 が 容 易 な 粒 径 50μ m 以 下 微 粒 子 を 得 る こ と で あ る 。 4 1―4 実験方法及び実験条件 1―4―1 試料 AN(和 光 純 薬 工 業 (株 )社 製 ),お よ び ,相 安 定 化 剤 と し て KN(和 光 純 薬 工 業 (株 )社 製 )を 用 い ,防 湿 化 剤 (ポ リ マ ー )と し て ,ポ リ ビ ニ ル ア ル コ ー ル (PVA,和 光 純 薬 工 業 (株 )社 製 ),カ ル ボ キ シ メ チ ル セ ル ロ ー ス ア ン モ ニ ウ ム (CMCA, 和 光 純 薬 工 業 (株 )社 製 ), カ ル ボ キ シ メ チ ル セ ル ロ ー ス ナ ト リ ウ ム (CMCNa,和 光 純 薬 工 業 (株 )社 製 ),ラ テ ッ ク ス (Latex,旭 化 成 ケ ミ カ ル ズ ( 株 ) 提 供 ) を そ れ ぞ れ 用 い た 。 PVA は 重 合 度 400 の 試 料 (PVA400) と 2000 の 試 料 (PVA2000)を 用 い た 。 AN, KN お よ び ポ リ マ ー (各 1 種 類 )の 3 成 分 を 4 倍 量 の milli-Q 水 に 溶 解 (あ る い は 分 散 )さ せ た 。AN/KN/ポ リ マ ー の 重 量 比 は , 9:1:0.3(PSAN:ポ リ マ ー =10:0.3) あ る い は 9:1:1(PSAN:ポ リ マ ー =10:1)と し た 。 ま た , ブ ラ ン ク と し て ポ リ マ ー を 含 ま な い 試料も調製した。 1―4―2 スプレードライ処理 中 部 熱 工 業 (株 )社 製 の ス プ レ ー ド ラ イ ヤ ー (図 1-1)を 用 い ,1-4-1 で 調 製 し た 水 溶 液 に 対 し て ス プ レ ー ド ラ イ 処 理 を 施 し た 。 熱 風 温 度 は 170℃ , 装 置 内 部 温 度 は 90℃ 一 定 と し , デ ィ ス ク 回 転 数 は 主 と し て 18000rpm, 溶 液 の 粘 度 が 高 い 場 合 (CMCNa 系 )は 24000rpm と し た 。 調製した水溶液を装置上部から投入すると,内部の噴霧ディスクからチャンバー内に高 速 で 噴 霧 さ れ る 。装 置 内 部 で は 熱 風 で 高 温 と な っ て お り ,噴 霧 さ れ た 溶 液 は 一 瞬 で 乾 燥 し , 装置下部から微粒子が回収される。 図 1-1 スプレードライヤー模式図 1―4―3 物性評価 1―4―3―1 含水率の測定 赤 外 線 水 分 計 (ケ ッ ト 科 学 研 究 所 (株 )製 , FD-230)を 用 い , ス プ レ ー ド ラ イ で 調 製 し た 微 粒子の回収直後の含水率を測定した。 1―4―3―2 表面観察 走 査 型 電 子 顕 微 鏡 (SEM (JEOL DATUM Ltd. 社 製 , 加 速 電 圧 10k~ 15kV))お よ び 低 加 速 電 圧 5 SEM(ZEISS 社 製 ULV-SEM ULTRA55, 加 速 電 圧 0.7kV))に よ り 微 粒 子 の 表 面 状 態 を 観 察 し た 。 ま た , SEM 画 像 か ら 微 粒 子 500 個 の 直 径 を 計 測 し , モ ー ド 径 と メ ジ ア ン 径 を 算 出 し た 。 1―4―3―3 元素組成分析 エ ネ ル ギ ー 分 散 型 X 線 分 析 (SEM/EDX, SEM 部 分 :FEI 社 製 , EDX 部 分 :EDAX 社 製 )を 用 い て 微 粒 子 の 元 素 分 布 を 観 察 し た 。加 速 電 圧 は 10kV と し ,炭 素 ,窒 素 ,酸 素 ,ナ ト リ ウ ム ,カ リ ウ ム の 5 元 素 に つ い て 分 析 を 行 っ た 。 ま た , 低 加 速 電 圧 SEM/EDX(ZEISS 社 製 ULV-SEM ULTRA55, 加 速 電 圧 0.7kV)を 用 い て 粒 子 表 面 近 傍 の 元 素 分 布 を 観 察 し た 。 1―5 実験結果 1―5―1 目視観察および収率,含水率の測定 スプレードライの結果,ポリマーの種類,有無によらずサラサラとした白色の微粒子を 造 粒 す る こ と が で き た 。 一 方 で , ポ リ マ ー を 含 ま な い ス プ レ ー ド ラ イ 試 料 (PSAN)の 場 合 , 時 間 の 経 過 (概 ね 7 日 )と と も に PSAN は 固 化 し た が ,ポ リ マ ー を 含 む ス プ レ ー ド ラ イ 試 料 (ポ リ マ ー 含 有 PSAN)で は , こ の よ う な 固 化 は 観 察 さ れ な か っ た (図 1-2)。 図 1-2 調製したスプレードライ試料の外観(約 7 日間放置後) 左:PSAN, 右:ポリマー含有 PSAN (PSAN:CMCA=10:0.3) PSAN お よ び ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 収 率 ,ス プ レ ー ド ラ イ 直 後 の 含 水 率 の 測 定 結 果 を 表 1-1 に 示 し た 。 測 定 の 結 果 , 何 れ の 試 料 も 収 率 は 50-60%で あ っ た 。 表 中 の 収 率 は 本 体 下 部 (図 1-1)か ら 得 ら れ た 試 料 の 重 量 か ら 計 算 さ れ た も の で あ り , サ イ ク ロ ン 側 か ら 回 収 さ れ た 試 料 を 含 め る と 何 れ も 概 ね 70%の 収 率 と な る 。 含 水 率 は す べ て の 試 料 で 1wt%未 満 で あ っ た 。 表 1-1 収率およびスプレードライ直後の含水率 6 1―5―2 表面観察 ス プ レ ー ド ラ イ で 調 製 し た PSAN お よ び ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 表 面 状 態 を SEM(JEOL DATUM Ltd.社 製 ,加 速 電 圧 10−15kV)を 用 い て 観 察 し た 。結 果 の 数 例 を 図 1-3 に 示 し た 。PSAN お よ び ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 粒 子 形 状 は ,ポ リ マ ー の 有 無 や ポ リ マ ー の 種 類 に よ ら ず 球 状 で あ り (図 1-3 b-d),乳 棒 に て 粉 砕 し た 試 薬 の AN(図 1-3 a)と は 形 状 が 異 な っ て い た 。ま た ,PSAN(図 1-3b)で は ,粒 子 同 士 が 凝 集 し ,塊 と な っ て い る 部 分 が 数 多 く 観 察 さ れ た が ,ポ リ マ ー 含 有 PSAN(図 1-3c, d)で は , こ の よ う な 凝 集 は 観 察 さ れ な か っ た 。 a b 図 1-3 c d 調 製 し た 微 粒 子 の SEM 画 像 (x100) a:試 薬 AN(乳 棒 で 粉 砕 ), b: PSAN, c:PSAN/CMCNa (10:0.3), d: PSAN/CMCA (10:0.3) 低 加 速 電 圧 SEM(ZEISS 社 製 ULV-SEM ULTRA55, 加 速 電 圧 0.7kV)を 用 い て , 調 製 し た PSAN お よ び PSAN/CMCA(10:0.3)の 粒 子 表 面 を よ り 詳 細 に 観 察 し た 。 PSAN は ほ と ん ど が 球 状 の 微 粒 子 で あ る が , 表 面 が 凝 着 し 塊 を 形 成 し て い る 部 分 が 観 察 さ れ た (図 1-4 a)。 PSAN は ポ リ マーが含まれておらず高い吸湿性を有することから,粒子の表面がわずかに吸湿した後に 潮 解 し ,粒 子 同 士 が 凝 着 す る こ と で こ の よ う な 塊 を 形 成 し た と 予 想 さ れ る 。一 方 ,PSAN/CMCA (図 1-4 b)で は , 粒 子 同 士 が 一 体 化 し た 部 分 や , 大 き な 塊 を 形 成 し て い る 部 分 は 全 く 観 察 されなかった。 a 図 1-4 b 低 加 速 電 圧 SEM に よ る 粒 子 表 面 の 画 像 (x1000) a: PSAN, b: PSAN/CMCA (10:0.3) 7 ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 表 面 状 態 を , SEM(JEOL DATUM Ltd.社 製 , 加 速 電 圧 10k~ 15kV)に よ り 観 察 し ,含 ま れ る ポ リ マ ー の 種 類 毎 に 比 較 し た 。前 述 の よ う に ,何 れ の ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 場 合 で も 大 部 分 は 球 状 の 粒 子 が 得 ら れ る が , 詳 細 に 観 察 す る と , PVA お よ び CMCNa を 含 む PSAN で は 表 面 に 破 れ が あ る 粒 子 が あ り ,ま た 内 部 が 中 空 で あ る 粒 子 や ,内 部 に さ ら に 細 か な 粒 子 が 充 填 さ れ て い る 粒 子 等 も 存 在 す る こ と が 分 か っ た (図 1-5 a, b)。 一 方 , CMCA や Latex を 含 む PSAN で は ,表 面 に 破 れ は 観 察 さ れ ず ,ま た 内 部 は 中 空 で は な く 密 な 断 面 を 有 し て い る こ と が 分 か っ た (図 1-5 c, d)。 ポ リ マ ー の 物 性 が 粒 子 形 状 に 影 響 を 及 ぼ し て い る可能性がある。 a b 図 1-5 c d 含有ポリマーの異なる微粒子の表面状態の比較 a:PSAN/CMCNa(10:0.3) , b: PSAN/PVA2000(10:0.3), c: PSAN/CMCA(10:0.3) , d: PSAN/Latex(10:0.3) 1―5―3 粒度分布 表 面 観 察 で 得 ら れ た SEM 画 像 を 元 に 粒 度 分 布 を 算 出 し た 。計 測 の 結 果 ,PSAN お よ び ポ リ マ ー 含 有 PSAN は ,概 ね 粒 径 20−40μ m の 微 粒 子 が 最 も 多 く 存 在 す る こ と が 分 か っ た (表 1-2)。 PSAN は ,ポ リ マ ー 含 有 PSAN と 比 較 し て 粒 径 が 大 き い 傾 向 が あ っ た 。ま た ,ポ リ マ ー に CMCNa を 用 い た 場 合 , 他 の 試 料 よ り も 粒 径 が 小 さ い 傾 向 が あ る が , こ れ は CMCNa 水 溶 液 の 粘 度 が 高 く , 他 の 試 料 と 同 じ デ ィ ス ク の 回 転 数 (18000rpm)で は 造 粒 で き な か っ た た め , 回 転 数 を 24000rpm に 上 げ た こ と に よ り 噴 霧 時 の 液 滴 が 小 さ く な っ た こ と に よ る も の と 考 え ら れ る 。 その他については,ポリマーの種類や添加量の違いによる粒径の明確な差はなかった。 表 1-2 PSAN およびポリマー含有 PSAN の粒径 Median diameter Modal diameter Sample(Weight ratio) [μm] [μm] PSAN 38 40 PSAN/PVA400(10:0.3) 29 29 PSAN/PVA400(10:1) 23 20 PSAN/PVA2000(10:0.3) 34 24 PSAN/PVA2000(10:1) 42 38 PSAN/CMCA(10:0.3) 29 21 PSAN/CMCA(10:1) 33 33 PSAN/CMCNa(10:0.3) 25 16 PSAN/CMCNa(10:1) 19 11 PSAN/Latex(10:0.3) 30 38 PSAN/Latex(10:1) 29 27 8 1―5―4 元素組成分析 SEM/EDX(SEM 部 分 :FEI 社 製 , EDX 部 分 :EDAX 社 製 )を 用 い て 粒 子 表 面 の 元 素 分 布 を 観 察 し た (表 1-3)。 表 中 の 理 論 値 は , 各 組 成 物 の 分 子 式 と 組 成 比 か ら 推 算 し た 値 で あ る 。 Latex の み 分 子 式 が 不 明 で あ っ た た め , Latex 単 独 の 元 素 分 布 を EDX に よ り 分 析 し , そ の 値 を 元 に 推 算 し た 値 と な っ て い る 。こ の 表 か ら ,ポ リ マ ー が 含 ま れ て い な い PSAN で も 炭 素 が 検 出 さ れ ,ま た ,ポ リ マ ー 含 有 PSAN で は 炭 素 の 割 合 が 理 論 値 よ り も 高 い こ と が 分 か る 。こ れ は , 測定時のビームが試料を一部貫通しており,台座のカーボンテープ由来の炭素が検出され たことが原因と予想される。 表 1-3 に 示 し た 各 ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 炭 素 量 (mol%)か ら PSAN で 観 察 さ れ た 炭 素 量 (mol%) を 差 し 引 く と , 全 て の 試 料 で 概 ね 理 論 値 と 近 い 値 を 示 す こ と か ら , ポ リ マ ー 含 有 PSAN は AN, KN お よ び ポ リ マ ー が 一 体 化 し た 微 粒 子 で あ る と 考 え ら れ る 。 表 1-3 EDX 測定結果 Sample(Weight ratio) PSAN Experimental Theoretical PSAN/PVA400(10:0.3) Experimental Theoretical PSAN/PVA2000(10:0.3) Experimental Theoretical PSAN/CMCA(10:0.3) Experimental Theoretical PSAN/CMCNa(10:0.3) Experimental Theoretical PSAN/Latex(10:0.3) Experimental Estimated 1―6 C [mol%] 8.2 0.0 11.8 2.2 11.9 2.2 11.7 1.6 8.5 1.6 9.1 3.2 N [mol%] 39.3 38.4 38.3 37.1 39.2 37.1 34.0 37.4 42.1 37.2 42.1 37.3 O [mol%] 49.4 60.0 47.4 59.1 46.8 59.1 47.6 59.5 47.0 59.5 46.8 58.0 Na [mol%] 0.1 0.0 0.1 0.0 0.2 0.0 0.1 0.0 0.3 0.2 0.1 0.0 K [mol%] 2.9 1.6 2.3 1.6 1.9 1.6 6.5 1.6 2.1 1.6 1.9 1.6 研究成果 (1) ス プ レ ー ド ラ イ の 結 果 ,サ ラ サ ラ と し た 粒 径 20−40μ m の 白 色 の 微 粒 子 を 造 粒 す る こ と が で き た 。 試 料 調 製 直 後 の 含 水 率 は ポ リ マ ー の 種 類 に 依 ら ず 1wt%未 満 で あ っ た 。 (2) SEM 観 察 の 結 果 ,PSAN で は 粒 子 同 士 の 凝 集 が 散 見 さ れ た の に 対 し て ,ポ リ マ ー 含 有 PSAN では凝集がほとんど観察されなかった。 (3) 含 ま れ る ポ リ マ ー の 種 類 に よ り 粒 子 の 状 態 に 違 い が 観 察 さ れ た 。 PVA お よ び CMCNa を それぞれ含む試料では粒子の表面に破れ等が観察され,内部が中空であった。一方, CMCA お よ び Latex を 含 む 試 料 で は 破 れ 等 は 観 察 さ れ ず , 密 な 断 面 を 有 し て い た 。 (4) 粒 子 表 面 の 元 素 分 析 か ら , AN, KN, ポ リ マ ー の 3 成 分 が 均 一 に 分 散 し た 粒 子 で あ る こ とが確認された。 以上の結果から,目標とする微粒子を調製することができたと言える。 9 参考文献・引用文献 [1] 中 部 熱 工 業 ホ ー ム ペ ー ジ (左 記 URL か ら 閲 覧 可 能 ), http://hp.nagoya-cci.or.jp/cnk/ [2] Jun-Hyung kim, Preparation of phase stabilized ammonium nitrate (PSAN) by a salting out process, Journal of Chemical Engineering of Japan, 30(2), 336 (1997). [3] I. B. Mishra, Potassium Fluoride Stabilized Ammonium Nitrate, United Sates Patent 4,552,736, Olin Corporation, S tamford, CT, USA (1983). [4] A. O. Remya Sudhakar, Suresh Math ew,Thermal behavior of CuO doped phase -stabilized ammonium nitrate, Thermochimica Acta, 451(1 -2), 5 (2005). 10 2 サブテーマ 1 新 規 ガ ス 発生 剤 の 開 発 ( 吸 湿 性 お よ び潮 解 性 ) 福岡大学安全システム医工学研究所 2―1 助教 加藤勝美 教授 中野勝之 助教 東英子 学生 永山清一郎 はじめに 前 章 の 研 究 に お い て , ス プ レ ー ド ラ イ に よ り PSAN と ポ リ マ ー が 一 体 化 し た 微 粒 子 (ポ リ マ ー 含 有 PSAN)の 調 製 に 成 功 し た 。 ま た , 調 製 し た 微 粒 子 は , ポ リ マ ー を 含 有 し て い る こ と に よ り ,時 間 が 経 過 し て も 粒 子 同 士 が 凝 集 し 難 く ,AN の 取 扱 上 の 問 題 で あ る 吸 湿 性 が 改 善されている可能性が示唆された。 本 章 で は ,調 製 し た ポ リ マ ー 含 有 PSAN を 一 定 湿 度 条 件 下 に 貯 蔵 し ,貯 蔵 中 の 吸 湿 量 や 潮 解 過 程 の SEM 画 像 か ら , 吸 湿 性 を よ り 定 量 的 に 評 価 し た 。 2―2 プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づけ 本 プ ロ ジ ェ ク ト は ,新 規 AN 系 ガ ス 発 生 剤 の 開 発 (サ ブ テ ー マ 1),お よ び ,加 害 性 を 軽 減 す る バ ッ グ 形 状 の 設 計 (サ ブ テ ー マ 2)か ら な る 。 サ ブ テ ー マ 1 で は , 以 下 の 方 針 に 沿 っ て 研 究 を 実 施 す る 。 こ こ で は , (2)の 研 究 に つ い て 報 告 す る 。 (1) ス プ レ ー ド ラ イ に よ る ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 調 製 (2) ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 吸 湿 お よ び 潮 解 性 評 価 (3) ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 相 安 定 性 評 価 (4) ポ リ マ ー 含 有 PSAN を 主 剤 と す る ガ ス 発 生 剤 の 燃 焼 性 評 価 (5) ポ リ マ ー 含 有 PSAN を 主 剤 と す る ガ ス 発 生 剤 の 熱 安 定 性 お よ び 振 動 耐 性 評 価 2―3 目的と目標 本 研 究 で は ,調 製 し た ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 吸 湿 お よ び 潮 解 性 を 評 価 し た 。目 標 と す る 防 湿 性 は , ポ リ マ ー を 含 有 し な い ブ ラ ン ク 試 料 (PSAN)よ り も 吸 湿 し な い こ と と 設 定 し た 。 2―4 実験方法及び実験条件 2―4―1 試料 前 章 記 載 の ポ リ マ ー 含 有 PSAN お よ び PSAN を 使 用 し た 。同 試 料 を 90℃ の 恒 温 槽 内 に て 一 昼夜放置し,充分に乾燥させた後,以下の試験に用いた。 11 2―4―2 吸湿量の観察 一 定 湿 度 に 保 持 し た デ シ ケ ー タ 内 に ポ リ マ ー 含 有 PSAN お よ び PSAN を 貯 蔵 し , 貯 蔵 前 後 の重量変化から吸湿性を評価した。塩飽和水溶液の存在する密閉空間では,一定の相対湿 度 を 取 る [1]こ と が 知 ら れ る こ と か ら ,本 研 究 で は 炭 酸 カ リ ウ ム お よ び 塩 化 ナ ト リ ウ ム を そ れ ぞ れ 用 い て デ シ ケ ー タ 内 を 湿 度 40%rh お よ び 70%rh に 調 整 し た 。 2―4―3 潮解過程の観察 高 湿 度 下 に お い て 試 料 が 潮 解 す る 過 程 を 環 境 制 御 型 電 子 顕 微 鏡 (ESEM,FEI 社 製 ,Quanta FEG-200F)を 用 い て 視 覚 的 に 観 察 し た 。同 実 験 は ,装 置 内 の 雰 囲 気 圧 力 を 400Pa,装 置 内 温 度 を −3.3℃ に 調 整 し , 湿 度 84%rh の 条 件 下 で 行 っ た 。 2―5 実験結果 2―5―1 ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 吸 湿 性 (40%rh) 湿 度 40% rh 下 に お け る 重 量 (吸 湿 量 )の 経 時 変 化 を 図 2-1 に 示 し た 。40%rh の 条 件 下 で は , 全ての試料で実験開始 2 時間までに吸湿による重量増加が見られ,それ以降はほとんどの 試 料 が 吸 湿 し な か っ た 。PSAN/CMCNa(10:0.3) は 2 時 間 以 降 も わ ず か な が ら 重 量 が 増 加 し た 。 ま た , 全 て の ポ リ マ ー 含 有 PSAN は , PSAN よ り 吸 湿 量 が 小 さ く , ポ リ マ ー の 添 加 に よ り AN の 防 湿 性 を 向 上 で き る こ と が 確 認 さ れ た 。 特 に PSAN/Latex の 場 合 に お い て , PSAN の 1/10 程度まで吸湿量が低下しており,高い防湿効果が確認された。今回使用したポリマーのう ち , PVA, CMCA, CMCNa は 水 溶 性 ポ リ マ ー で あ る の に 対 し , Latex の み 不 溶 性 で あ る た め , 防湿効果が特に高かったものと考えている。 図 2-1 2―5―2 吸 湿 量 の 経 時 変 化 (40%rh) ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 吸 湿 性 (70%rh) よ り 相 対 湿 度 が 高 い 70%rh の 条 件 下 で 吸 湿 量 を 観 察 し た 。 湿 度 70%rh の 条 件 下 で は , 湿 度 40%rh の 条 件 下 と 比 較 し て ,ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 優 位 性 は 小 さ い 結 果 と な っ た (図 2-2)。 また,吸湿速度が非常に速く,吸湿量が平衡に達することもなかったため,吸湿量の差を 明確に比較することができなかった。 12 図 2-2 2―5―3 吸 湿 量 の 経 時 変 化 (70%rh) 潮解過程の観察 前 節 の 検 討 に お い て ,高 湿 度 条 件 下 に お け る 防 湿 性 を 比 較 す る こ と が 出 来 な か っ た た め , ESEM(FEI 社 製 , Quanta FEG-200F)を 用 い て 高 湿 度 条 件 下 (84%rh)に お け る 潮 解 過 程 を 視 覚 的 に 観 察 し ,ポ リ マ ー の 有 無 に よ る 比 較 を 行 っ た 。図 2-3 に 潮 解 過 程 の SEM 画 像 を 示 し た 。 PSAN で は , 実 験 開 始 直 後 に 潮 解 を 開 始 し , 5 分 後 に は 液 滴 と な っ た 。 ポ リ マ ー 含 有 PSAN の う ち ,PVA400,CMCA お よ び CMCNa を 含 む 試 料 で は ,10 分 経 過 後 も 粒 子 形 状 に 変 化 が な か っ た 。 一 方 , Latex を 含 む 試 料 で は , 時 間 の 経 過 に 伴 い , 粒 子 表 面 が わ ず か に 変 化 し , 粒 子 同 士 が 凝 集 す る 様 子 が 観 察 さ れ た 。CMCA 等 の ポ リ マ ー は 吸 湿 す る と 糊 状 と な る た め ,粒 子 形 状 を 保 持 で き る の に 対 し , Latex は 他 の ポ リ マ ー と 異 な り 吸 湿 性 が 低 い こ と か ら , 潮 解 し た PSAN を 保 持 す る 能 力 が 低 く , 表 面 の 形 状 が 変 化 し た と 考 え ら れ る 。 し か し な が ら , 粒 子 形 状 は 留 め て お り , PSAN と は 明 ら か に 異 な る 結 果 と 言 え る 。 PSAN/CMCA(10:0.3)に つ い て は , よ り 長 時 間 の 撮 影 を 実 施 し た 。 そ の 結 果 , 実 験 開 始 60 分 後 も 粒 子 の 表 面 に ほ と ん ど 変 化 は 観 察 さ れ な い こ と が 分 か っ た (図 2-4)。 実 験 開 始 120 分後では一部試料が潮解するものの,高湿度の条件下でも長時間,試料の防湿性が保持さ れることが確認された。 13 図 2-3 潮 解 過 程 の SEM 画 像 14 図 2-4 2―6 潮 解 過 程 の SEM 画 像 (長 時 間 撮 影 , PSAN/CMCA(10:0.3)) 研究成果 (1) 湿 度 40%rh の 条 件 下 , ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 吸 湿 量 は , PSAN よ り も 低 か っ た 。 特 に ポ リ マ ー 成 分 と し て Latex を 用 い た 場 合 に 防 湿 性 が 優 れ て い た 。 (2) 84%rh の 雰 囲 気 中 に 貯 蔵 し ,試 料 の 潮 解 過 程 を SEM に よ り 観 察 し た 。PSAN の 場 合 で は , 貯 蔵 直 後 に 潮 解 し た 。一 方 ,ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 場 合 は ,潮 解 が 開 始 す る ま で の 時 間 が 延 長 し , ポ リ マ ー 成 分 と し て CMCA を 用 い た 場 合 は , 貯 蔵 開 始 か ら 60 分 後 も 粒 子 形 状に変化がなかった。 以 上 の 結 果 は ,目 標 の 防 湿 性 (AN の 微 粒 子 よ り も 吸 湿 し な い こ と )を 満 足 す る 結 果 で あ る と 言える。 参考文献・引用文献 [1] 日 本 工 業 規 格 , 湿 度 計 −試 験 方 法 , JIS B7920 (2000) 15 3 サブテーマ 1 新 規 ガ ス 発生 剤 の 開 発 (相安定性) 福岡大学安全システム医工学研究所 3―1 助教 加藤勝美 教授 中野勝之 助教 東英子 学生 永山清一郎 はじめに AN は , 30, 80, 125℃ 付 近 で 固 相 間 相 転 移 を 起 こ す こ と が 知 ら れ て お り , そ れ ぞ れ の 温 度 領 域 で 結 晶 構 造 が 組 み 代 わ り , 体 積 が 変 化 す る [1]。 AN を ガ ス 発 生 剤 等 の 用 途 と し て 利 用する際にはこの体積変化が課題となる。例えば,自動車のエアバッグに用いられるガス 発 生 剤 は ペ レ ッ ト 状 に 成 型 さ れ る が ,含 ま れ る AN が 体 積 変 化 す る と ,ペ レ ッ ト に ひ び が 入 り ,最 終 的 に は 粉 状 化 し て し ま う 。ペ レ ッ ト が 粉 状 化 す る と 表 面 積 が 大 幅 に 変 化 す る た め , 燃焼速度が変化し,異常燃焼を引き起こす可能性がある。これはエアバッグ装置全体の破 損 に も 繋 が り か ね な い た め , AN の 利 用 に は 相 安 定 化 が 必 要 で あ る 。 AN の 相 転 移 は ,カ リ ウ ム 塩 や 銅 塩 等 の 添 加 に よ り 抑 制 で き る こ と が 知 ら れ て い る [2][3] た め ,本 研 究 (1 章 )で 調 製 し た 微 粒 子 (ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 相 安 定 性 )に も 相 安 定 化 を 目 的 と し て 硝 酸 カ リ ウ ム を 配 合 し て い る 。本 章 で は ,調 製 し た ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 相 安 定 性 を 熱分析により調査した。 3―2 プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づけ 本 プ ロ ジ ェ ク ト は ,新 規 AN 系 ガ ス 発 生 剤 の 開 発 (サ ブ テ ー マ 1),お よ び ,加 害 性 を 軽 減 す る バ ッ グ 形 状 の 設 計 (サ ブ テ ー マ 2)か ら な る 。 サ ブ テ ー マ 1 で は , 以 下 の 方 針 に 沿 っ て 研 究 を 実 施 す る 。 こ こ で は , (3)の 研 究 に つ い て 報 告 す る 。 (1) ス プ レ ー ド ラ イ に よ る ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 調 製 (2) ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 吸 湿 お よ び 潮 解 性 評 価 (3) ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 相 安 定 性 評 価 (4) ポ リ マ ー 含 有 PSAN を 主 剤 と す る ガ ス 発 生 剤 の 燃 焼 性 評 価 (5) ポ リ マ ー 含 有 PSAN を 主 剤 と す る ガ ス 発 生 剤 の 熱 安 定 性 お よ び 振 動 耐 性 評 価 3―3 目的と目標 本 研 究 で は ,調 製 し た ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 相 安 定 性 の 評 価 を 目 的 と し ,熱 分 析 を 実 施 し た 。 相 安 定 性 の 目 標 は , 室 温 −100℃ の 範 囲 で 固 相 間 相 転 移 が 起 こ ら な い こ と で あ る 。 16 3―4 実験方法及び実験条件 3―4―1 試料 1 章 記 載 の ポ リ マ ー 含 有 PSAN お よ び PSAN を 実 験 試 料 と し て 用 い た 。 当 該 試 料 を 90℃ の 恒温槽内にて一昼夜放置し,充分に乾燥させた後,以下の試験に用いた。 3―4―2 示差走査熱量測定 ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 昇 温 加 熱 下 (2K/min)に お け る 熱 的 挙 動 を 観 察 し ,試 料 の 吸 熱 ピ ー ク から固相間相転移の有無を観察した。また,スプレードライにより調製した試料の他に, ブ ラ ン ク 試 料 と し て 和 光 純 薬 工 業 (株 )社 製 の AN(AN 単 独 )に 対 し て も 同 様 の 実 験 を 行 っ た 。 実 験 に は , セ イ コ ー イ ン ス ツ ル (株 )製 示 差 走 査 型 熱 量 計 DSC200(DSC)を 用 い , 試 料 容 器 に は , 同 社 製 の ス テ ン レ ス 製 密 閉 型 試 料 容 器 (容 量 15μ L)を 用 い た 。 3―5 実験結果 DSC 測 定 結 果 を 図 3-1 に 示 し た 。 AN 単 独 で は 35, 80, 125℃ に 固 相 間 相 転 移 に よ る も の と 考 え ら れ る 吸 熱 ピ ー ク が 観 察 さ れ た 一 方 ,PSAN お よ び ポ リ マ ー 含 有 PSAN で は ,100℃ 以 下に吸熱ピークは観察されず,首尾よく相安定化できていることが確認された。 相 安 定 化 の メ カ ニ ズ ム を 検 討 す る た め ,KN 量 の 異 な る PSAN(AN/KN 共 晶 )を 調 製 し ,同 試 料 の 熱 的 挙 動 を 観 察 し た 。 同 共 晶 は , AN お よ び KN 水 溶 液 を 恒 温 槽 内 で 蒸 発 乾 固 さ せ る こ と で 得 た も の で あ る 。KN 量 の 異 な る AN/KN 共 晶 の DSC 測 定 結 果 を 図 3-2 に 示 し た 。こ の 図 よ り , AN 単 独 で 観 察 さ れ る 30℃ の 吸 熱 ピ ー ク は , KN の 添 加 に よ り 消 滅 し た 。 80℃ の 吸 熱 ピ ー ク は KN の 添 加 量 が 増 加 す る ご と に 高 温 側 に シ フ ト す る 傾 向 が あ っ た 。 ま た , 125℃ の 吸 熱 ピ ー ク は ,KN を 10wt%添 加 し て も 変 化 が な く ,AN と 同 様 の 相 転 移 が 起 き て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。一 方 ,ス プ レ ー ド ラ イ に よ り 調 製 し た ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 熱 挙 動 (図 3-1)を 見 る と ,概 ね AN/KN 共 晶 (重 量 比 9:1,図 3-2)と 同 様 の 熱 挙 動 を 示 し て い る こ と か ら ,ポ リ マ ー 含 有 PSAN に お い て も AN/KN が 共 晶 を 形 成 す る こ と に よ り 相 安 定 化 し て い る 可 能 性 が あ る。 一 方 , PSAN/CMCA(10:0.3)で は , KN の 添 加 に よ り 高 温 側 へ シ フ ト す る 80℃ の 吸 熱 ピ ー ク お よ び KN を 添 加 し て も 抑 制 で き な い 125℃ の 吸 熱 ピ ー ク が 観 察 さ れ な か っ た (図 3-1)。 こ の こ と か ら ,CMCA 自 体 が AN に 対 す る 相 安 定 化 効 果 を 有 す る も の と 推 定 し た 。確 認 の た め , KN 未 添 加 の ス プ レ ー ド ラ イ 試 料 (AN/CMCA(9:0.3))を 新 た に 調 製 し ,相 安 定 化 効 果 の 確 認 を 行 っ た 。 そ の 結 果 , 図 3-3 に 示 す よ う に , 30℃ お よ び 80℃ の 吸 熱 ピ ー ク が 観 察 さ れ な い な ど AN 単 独 と は 異 な る 挙 動 が 観 察 さ れ た 。し た が っ て ,CMCA は AN の 相 転 移 を 抑 制 す る 効 果を有する可能性がある。 CMCA の 相 安 定 化 効 果 に つ い て よ り 詳 し く 検 討 す る た め ,AN/CMCA(9:0.3)水 溶 液 を 恒 温 槽 に て 乾 燥 さ せ , 蒸 発 乾 固 物 の 熱 的 挙 動 を 観 察 し た 。 測 定 結 果 を 図 3-4 に 示 し た 。 蒸 発 乾 固 物 の 測 定 の 結 果 で は , AN 単 独 の 場 合 と 同 様 に , 30, 80, 125℃ 付 近 に 吸 熱 ピ ー ク が 観 察 さ れ た こ と か ら , AN に 対 す る CMCA の 相 安 定 化 効 果 は , ス プ レ ー ド ラ イ の よ う な 方 法 を 用 い て均一に混合した場合のみ発揮されるものと考えられる。 17 図 3-1 AN, PSAN, お よ び ポ リ マ ー 含 有 PSAN の DSC 測 定 結 果 図 3-2 KN 添 加 量 の 異 な る AN/KN 共 晶 の DSC 測 定 結 果 18 図 3-3 AN, AN/CMCA, お よ び PSAN/CMCA の DSC 測 定 結 果 図 3-4 調 製 方 法 の 異 な る AN/CMCA の DSC 測 定 結 果 19 3―6 研究成果 (1) ポ リ マ ー 含 有 PSAN で は , 含 ま れ る KN 等 の 効 果 に よ り , 室 温 −100℃ の 範 囲 内 の AN の 相転移が抑制され,目標とする相安定性を有することが確認された。 (2) ポ リ マ ー 成 分 と し て CMCA を 用 い た 場 合 ,KN 添 加 で は 抑 制 で き な い 80,125°C 付 近 の 相 転 移 が 観 察 さ れ な か っ た こ と 等 か ら , CMCA 自 体 に AN の 相 転 移 を 抑 制 す る 効 果 が あ る可能性が示唆された。 以 上 の 結 果 は , 目 標 の 相 安 定 性 (室 温 −100℃ の 範 囲 内 で 相 転 移 し な い こ と )を 満 足 す る 結 果である。 参考文献・引用文献 [1] R. V. Coates, G. D. Woodard, X-Ray Powder Diffraction Data for Solid Solutions and Double Salts Occurring in Granular Compound Fertilisers, Journal of the science of food and Agriculture, 14(16), 398 (1963). [2] I. B. Mishra, Potassium Fluoride Stabilized Ammonium Nitrate, United Sates Patent 4,552,736, Olin Corporation, Stamford, CT, USA (1983). [3] A. O. Remya Sudhakar, Suresh Mathew , Thermal behavior of CuO doped phase-stabilized ammonium nitrate, Thermochimica Acta, 451(1 -2), 5 (2005). 20 4 サブテーマ 1 新 規 ガ ス 発生 剤 の 開 発 (燃焼性) 福岡大学安全システム医工学研究所 旭化成ケミカルズ株式会社大分工場 助教 加藤勝美 教授 中野勝之 助教 東英子 学生 永山清一郎 研究員 熊谷恒佑 研究員 塚原祐介 (独)産業技術総合研究所安全科学研究部門 統 括 研 究 主 幹 研究グループ長 4―1 緒方雄二 和田有司 はじめに 前 節 ま で の 検 討 で ,ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 防 湿 化 と 相 安 定 化 が 確 認 さ れ た 。こ こ で は ,硝 酸 グ ア ニ ジ ン (GN), 塩 基 性 硝 酸 銅 (BCN)と ポ リ マ ー 含 有 PSAN を 混 合 し て ガ ス 発 生 剤 の 模 擬 試料を調製し燃焼性を評価した。 4―2 プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づけ 本 プ ロ ジ ェ ク ト は ,新 規 AN 系 ガ ス 発 生 剤 の 開 発 (サ ブ テ ー マ 1),お よ び ,加 害 性 を 軽 減 す る バ ッ グ 形 状 の 設 計 (サ ブ テ ー マ 2)か ら な る 。 サ ブ テ ー マ 1 で は , 以 下 の 方 針 に 沿 っ て 研 究 を 実 施 す る 。 こ こ で は , (4)の 研 究 に つ い て 報 告 す る 。 (1) ス プ レ ー ド ラ イ に よ る ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 調 製 (2) ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 吸 湿 お よ び 潮 解 性 評 価 (3) ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 相 安 定 性 評 価 (4) ポ リ マ ー 含 有 PSAN を 主 剤 と す る ガ ス 発 生 剤 の 燃 焼 性 評 価 (5) ポ リ マ ー 含 有 PSAN を 主 剤 と す る ガ ス 発 生 剤 の 熱 安 定 性 お よ び 振 動 耐 性 評 価 4―3 目的と目標 本 研 究 で は ,調 製 し た ポ リ マ ー 含 有 PSAN を 主 成 分 と す る ガ ス 発 生 剤 を 調 製 し ,燃 焼 性 を 評 価 す る こ と を 目 的 と し た 。 こ こ で の 目 標 は , Vieille の 式 [1]に お け る 圧 力 指 数 が 概 ね n ≤0.4 と な る ガ ス 発 生 剤 組 成 を 明 ら か に す る こ と で あ る 。 4―4 実験方法及び実験条件 4―4ー1 試料 1 章 記 載 の ポ リ マ ー 含 有 PSAN (PSAN:Polymer=10:0.3,ポ リ マ ー 成 分:PVA,CMCA)お よ び PSAN の そ れ ぞ れ に 塩 基 性 硝 酸 銅 (BCN)お よ び 硝 酸 グ ア ニ ジ ン (GN)を 混 合 ,15MPa で 圧 縮 成 形 21 し ,ガ ス 発 生 剤 ペ レ ッ ト を 調 製 し た 。各 成 分 の 重 量 組 成 は ,既 往 の 研 究 [2],[3]を 参 考 に し て , 表 4-1 に 示 す 組 成 と し た 。 ペ レ ッ ト 成 型 後 , ガ ス 発 生 剤 に レ ス ト 剤 と し て エ ポ キ シ 系 接着剤を塗布し燃焼試験に供した。 表 4-1 Sample PSAN-70 PSAN-80 PVA400-50 PVA400-60 PVA400-70 PVA400-80 PVA400-90 PVA2000-70 CMCA-50 CMCA-60 CMCA-70 CMCA-80 CMCA-90 4―4ー2 GN 30 20 50 40 30 20 10 30 50 40 30 20 10 ガス発生剤の重量組成 PSAN 70 80 − − − − − − − − − − − PSAN/Polymer − − 50 60 70 80 90 70 50 60 70 80 90 BCN 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 20 燃焼試験装置 実 験 装 置 に は チ ム ニ 型 燃 焼 器 (図 4-1)を 用 い た 。 こ の 装 置 は , 装 置 下 部 か ら 窒 素 ガ ス を 流すことで装置内部を加圧し,加圧下における燃焼挙動を観察することができる。実験試 料は装置下部のサンプルスタンドにセットし,試料上部からニクロム線で着火した。燃焼 面 が 進 行 す る 様 子 を 高 速 度 カ メ ラ (30−500fps)で 撮 影 す る こ と に よ り ,試 料 の 燃 焼 速 度 を 算 出 し た 。 加 圧 圧 力 は (1−9MPa(窒 素 ))と し た 。 図 4−1 チムニ型燃焼器概略図 22 4―5 実験結果 4―5―1 ポ リ マ ー 含 有 PSAN を 主 剤 と す る ガ ス 発 生 剤 の 燃 焼 速 度 ポ リ マ ー 含 有 PSAN を 主 剤 と す る ガ ス 発 生 剤 (PSAN-80 お よ び PSAN-70)の 燃 焼 速 度 を 観 察 し た 。PSAN-80 で は 1MPa 付 近 で 燃 焼 が 中 断 し ,燃 焼 速 度 を 計 測 す る こ と が で き な か っ た が , PSAN-70 は 1MPa 程 度 で も 燃 焼 は 中 断 せ ず , 1−9MPa で 燃 焼 が 継 続 す る こ と が 確 認 さ れ た 。 一 方 , ポ リ マ ー 含 有 PSAN を 主 剤 と す る ガ ス 発 生 剤 で は PSAN の 場 合 よ り も 燃 焼 速 度 が 増 加 す る 傾 向 が あ り (図 4−2), 燃 焼 の 中 断 等 は 確 認 さ れ な か っ た 。 表 1-2 よ り , ポ リ マ ー 含 有 PSAN は PSAN よ り も 粒 径 が 細 か い こ と か ら , ポ リ マ ー 含 有 PSAN と GN お よ び BCN と の 接 触面積が増加し燃焼速度が増加したことが要因の一つと考えられる。また,融解したポリ マ ー や ポ リ マ ー 分 解 生 成 物 と PSAN と の 反 応 が 起 こ り ,燃 焼 速 度 が 増 加 し た 可 能 性 も 考 え ら れる。 4—5—2 燃焼速度に及ぼす組成比の影響 組成比が異なるガス発生剤を調製し燃焼速度を観察したところ,ガス発生剤中のポリマ ー 含 有 PSAN の 量 に よ っ て 燃 焼 速 度 が 変 化 し た (図 4-3)。CMCA 系 の ガ ス 発 生 剤 で は CMCA-70 が 最 も 高 い 燃 焼 速 度 と な り ,ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 含 有 量 が 増 加 ,ま た は 減 少 す る に 従 い 燃 焼 速 度 が 低 下 し た 。 一 方 , PVA400 系 の ガ ス 発 生 剤 は PSAN 量 と 燃 焼 速 度 の 明 確 な 関 係 性 は 見られなかった。 図 4−2 PSAN 系 お よ び ポ リ マ ー 含 有 PSAN 系 ガ ス 発 生 剤 の 燃 焼 速 度 23 図 4-3 ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 添 加 量 と 燃 焼 速 度 の 関 係 (左 : CMCA 系 , 右 : PVA 系 ) 4—5—3 圧力指数低下方法の検討 一 般 に 燃 焼 速 度 と 雰 囲 気 圧 力 と の 関 係 は , Vieille の 式 (式 1)[1]で 表 さ れ る こ と が 知 ら れている。 r aPn (式 1) r: 燃 焼 速 度 , P: 雰 囲 気 圧 力 , n: 圧 力 指 数 こ の 式 か ら , log r vs. log P の グ ラ フ の 傾 き は 圧 力 指 数 (n)に 対 応 し , 圧 力 指 数 は 低 い ほ ど (概 ね n≤0.4), 燃 焼 速 度 の 制 御 が 容 易 と な り 工 業 的 に 有 用 な 燃 焼 組 成 と 言 え る 。 前 節 ま で の 結 果 か ら 圧 力 指 数 を 算 出 し た と こ ろ ,ポ リ マ ー 含 有 PSAN を 主 剤 と す る ガ ス 発 生 剤 は , n=0.8-1 程 度 と な り , 目 標 値 n≤0.4 よ り も 圧 力 指 数 が 高 い こ と が 分 か っ た 。 既 往 の 研 究 [2]で は ,AN/KN/GN/BCN 系 の 燃 焼 速 度 が 検 討 さ れ て い る 。こ の 研 究 に よ る と , ガ ス 発 生 剤 中 の KN の 割 合 が 低 い 場 合 に 圧 力 指 数 が 低 下 す る 結 果 が 得 ら れ て い る 。 そ こ で , KN を 含 ま な い ス プ レ ー ド ラ イ 試 料 (AN:CMCA=10:0.3)を 主 剤 と す る ガ ス 発 生 剤 (表 4-2)を 調 製 し ,燃 焼 性 を 観 察 し た 。実 験 の 結 果 ,KN を 含 ま な い ガ ス 発 生 剤 の 圧 力 指 数 は ,最 も 小 さ い CMCA-70(KN 非 添 加 )の 場 合 で ,n=0.65 程 度 が 得 ら れ て お り ,KN を 添 加 し た 場 合 よ り も 圧 力 指 数 を 低 下 さ せ る こ と が で き た (図 4-4)。 KN を 添 加 し な い 場 合 , 相 安 定 性 の 観 点 か ら 問 題 と な る が ,CMCA は ,そ れ 自 体 に 相 安 定 化 効 果 が あ る こ と か ら ,本 節 に て 検 討 し た 組 成 に より,相安定性および燃焼性の双方を改善できる可能性がある。 次に,オキサミドを添加することにより,さらに圧力指数を低下させることを試みた。 オ キ サ ミ ド は 化 学 式 H 2 NCOCO 2 H の 化 合 物 で あ り , 発 射 薬 の 分 野 等 で 圧 力 指 数 を 低 下 さ せ る た め に 添 加 さ れ る 物 質 で あ る 。こ の 物 質 を 表 4-2 の 組 成 に 約 3%添 加 し 燃 焼 速 度 を 観 察 し た 。 実験の結果,オキサミドを添加することによる圧力指数の低下は観察されず,また,燃焼 速 度 も ほ と ん ど 変 化 し な か っ た (図 4–5)。 こ の こ と か ら , オ キ サ ミ ド が 本 研 究 で 調 製 し た ガス発生剤の圧力指数および燃焼速度に与える影響は小さいと考えられる。 24 表 4-2 Sample ガ ス 発 生 剤 (KN 非 添 加 )の 重 量 組 成 比 GN AN/CMCA* BCN CMCA-70 KN Free CMCA-80 KN Free CMCA-90 KN Free 図 4−4 図 4−5 30 70 20 80 10 90 *AN:CMCA=9:0.3(重量比) 20 20 20 KN の 有 無 に よ る 圧 力 指 数 の 比 較 オキサミドの有無による圧力指数の比較 25 4―6 研究成果 (1) 硝 酸 グ ア ニ ジ ン (GN)お よ び 塩 基 性 硝 酸 銅 (BCN)と ポ リ マ ー 含 有 PSAN を 混 合 し た ガ ス 発 生 剤 (ポ リ マ ー 含 有 PSAN 系 ガ ス 発 生 剤 )を 調 製 し 燃 焼 速 度 の 観 察 を 行 っ た と こ ろ ,ポ リ マ ー 含 有 PSAN 系 ガ ス 発 生 剤 は PSAN 系 と 比 較 し て 燃 焼 速 度 が 向 上 し た 。 (2) ポ リ マ ー 含 有 PSAN を 主 剤 と す る ガ ス 発 生 剤 の 圧 力 指 数 (n)を 算 出 し た と こ ろ ,n=0.8−1 程 度 と な り , 目 標 値 n≤0.4 よ り も 圧 力 指 数 が 高 い こ と が 分 か っ た 。 圧 力 指 数 は KN 量 に 関 係 す る と 考 え , KN 非 添 加 系 ガ ス 発 生 剤 の 燃 焼 性 を 観 察 し た 。 そ の 結 果 , n=0.65 程 度 にまで圧力指数を減少させることができた。 (3) 圧 力 指 数 を さ ら に 低 下 さ せ る た め , オ キ サ ミ ド を 添 加 し た ガ ス 発 生 剤 を 調 製 し 燃 焼 性 を観察したが,オキサミド添加による圧力指数の低下は観察されなかった。 4―7 今後の課題と取組み 本 研 究 で は ,調 製 し た ポ リ マ ー 含 有 PSAN を 主 成 分 と す る ガ ス 発 生 剤 を 調 製 し ,燃 焼 性 を 観 察 し た と こ ろ ,Vieille の 式 [1]に お け る 圧 力 指 数 が ,最 も 低 い 試 料 で も 0.6 程 度 で あ り , 目 標 と し て い た 0.4 以 下 を 達 成 で き な か っ た 。 こ の 問 題 を 解 決 す る た め , ガ ス 発 生 剤 組 成 を変える等して目標とする燃焼性が得られるよう,今後も研究を継続する 。 参考文献・引用文献 [1] 久 保 田 浪 之 介 ら , プ ロ ペ ラ ン ト ・ ハ ン ド ブ ッ ク , 一 般 社 団 法 人 火 薬 学 会 , p.129 (2009). [2] Yusuke Wada, M.Arai, A study on ammonium nitrate -metal nitrate double salts as oxidizers for gas generation agent,Science and Technology of Energetic Materials , 71(2), 39 (2010). [3] Yusuke Wada, K.Hori, M.Arai, Combustion mechanism of mixtures of guanidine nitrate, ammonium nitrate, and basic copper nitrate, Science and Technology of Energetic Materials, 71(4), 83 (2010). 26 5 サブテーマ 1 新 規 ガ ス 発生 剤 の 開 発 ( 熱 安 定 性 お よび 振 動 耐 性 ) 福岡大学安全システム医工学研究所 旭化成ケミカルズ株式会社大分工場 5―1 助教 加藤勝美 教授 中野勝之 助教 東英子 学生 永山清一郎 研究員 熊谷恒佑 研究員 塚原祐介 はじめに ガス発生剤には,自動車の長期間の使用を想定し,貯蔵中に化学変化が起こらない等の 高 い 熱 安 定 性 が 求 め ら れ る 。例 え ば ,米 国 自 動 車 技 術 会 規 格 (SAE/USCAR-24)[1]で は ,ガ ス 発 生 剤 の 熱 安 定 性 と し て , 貯 蔵 (107±3℃ , 400 時 間 )前 後 の 試 料 重 量 お よ び 燃 焼 速 度 の 変 化 が 5% 以 下 と 規 定 さ れ て い る 。こ れ は 常 温 で ガ ス 発 生 剤 を 貯 蔵 し た 場 合 に 約 15 年 使 用 出 来るという指標である。また,貯蔵中に化学変化は起こらなくとも車両運行時の振動によ りガス発生剤が粉状化する可能性も否定できないため,振動耐性の確認も必要であろう。 そ こ で ,本 研 究 で は 調 製 し た ガ ス 発 生 剤 (前 章 記 載 )の 熱 安 定 性 お よ び 振 動 耐 性 を 調 査 し た 。 5―2 プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づけ 本 プ ロ ジ ェ ク ト は ,新 規 AN 系 ガ ス 発 生 剤 の 開 発 (サ ブ テ ー マ 1),お よ び ,加 害 性 を 軽 減 す る バ ッ グ 形 状 の 設 計 (サ ブ テ ー マ 2)か ら な る 。 サ ブ テ ー マ 1 で は , 以 下 の 方 針 に 沿 っ て 研 究 を 実 施 す る 。 こ こ で は , (5)の 研 究 に つ い て 報 告 す る 。 (1) ス プ レ ー ド ラ イ に よ る ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 調 製 (2) ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 吸 湿 お よ び 潮 解 性 評 価 (3) ポ リ マ ー 含 有 PSAN の 相 安 定 性 評 価 (4) ポ リ マ ー 含 有 PSAN を 主 剤 と す る ガ ス 発 生 剤 の 燃 焼 性 評 価 (5) ポ リ マ ー 含 有 PSAN を 主 剤 と す る ガ ス 発 生 剤 の 熱 安 定 性 お よ び 振 動 耐 性 評 価 5―3 目的と目標 米 国 自 動 車 技 術 会 の 規 格 (SAE/USCAR-24)[1]で は , ガ ス 発 生 剤 の 基 本 性 能 と し て , 107± 3℃ ,400 時 間 貯 蔵 前 後 の 試 料 重 量 お よ び 燃 焼 速 度 の 変 化 が 5wt%以 下 と な る 熱 安 定 性 を 求 め て い る 。本 研 究 で は ,当 該 規 格 に 準 拠 し た 試 験 を 実 施 し ,こ の 熱 安 定 性 を 満 足 す る AN 系 ガ ス 発 生 剤 組 成 を 明 ら か に す る こ と を 目 標 と す る 。 ま た , JIS D1601(自 動 車 部 品 振 動 試 験 方 法 ) [2]に 従 っ た 振 動 試 験 を 実 施 し , 試 験 前 後 の 試 料 に つ い て , ペ レ ッ ト 強 度 を 観 察 す る 。 目標は,粉状化せず,かつ強度が変化しないこととした。 27 5―4 実験方法及び実験条件 5―4ー1 熱安定性試験 5ー4ー1ー1 試料 前 章 記 載 の CMCA-70 お よ び PSAN-70 と 同 じ 重 量 組 成 の 試 料 を ハ ン ド プ レ ス に て ペ レ ッ ト 状に圧縮成型し,実験試料とした。 5ー4ー1ー2 重量変化 調 製 し た ガ ス 発 生 剤 の ペ レ ッ ト (200mg,圧 縮 圧 力 10MPa)を サ ン プ ル 管 (容 量 2.2ml:胴 径 12.0mm, 全 長 35mm, 口 内 径 10.3mm)に 装 填 し , 約 107℃ に 調 温 し た 恒 温 槽 内 に 貯 蔵 し た 。 一 定 時 間 ご と に サ ン プ ル 瓶 を 取 り 出 し , 貯 蔵 開 始 か ら 400 時 間 の 重 量 変 化 を 観 察 し た 。 5ー4ー1ー3 燃焼速度の変化 調 製 し た ガ ス 発 生 剤 の ペ レ ッ ト (3g, 圧 縮 圧 力 15MPa)を 約 107℃ に 調 温 し た 恒 温 槽 内 に 400 時 間 貯 蔵 し た 。 貯 蔵 前 後 の 燃 焼 速 度 を 旭 化 成 ケ ミ カ ル ズ (株 )所 有 の 燃 焼 試 験 装 置 を 用 いて観察した。試料上部にニクロム線を設置し通電することで着火した。燃焼速度はワイ ヤーブレイク法により測定した。 5―4ー2 振動耐性試験 5ー4ー2ー1 試料 前 章 記 載 の CMCA-70,PVA400-70 お よ び PSAN-70 と 同 じ 重 量 組 成 の 試 料 を ハ ン ド プ レ ス に て 圧 縮 成 型 し , ペ レ ッ ト (200mg, 圧 縮 圧 力 10MPa)を 作 製 し た 。 ペ レ ッ ト を 3 つ あ る い は 1 つ ず つ サ ン プ ル 管 (容 量 2.2ml: 胴 径 12.0mm, 全 長 35mm, 口 内 径 10.3mm)に 装 填 し た 。 5ー4ー2ー2 振動耐性試験 ガ ス 発 生 剤 を 装 填 し た サ ン プ ル 管 を 図 5-1 の よ う に 振 盪 器 の 台 座 ( ア ル ミ 板 ) の 上 に 瞬 間 接 着 剤 で 固 定 し た 。 そ の 後 , JIS D 1601(自 動 車 部 品 の 振 動 試 験 方 法 )[2]に 基 づ き , 振 動 試 験 器 (IMV 社 製 , i230/SA2M/H6)に よ り , 上 下 4 時 間 , 左 右 2 時 間 , 前 後 2 時 間 の 計 8 時 間 , 振 動 負 荷 (正 弦 波 , 振 動 数 67Hz, 振 動 加 速 度 45m/s 2 )を 与 え た 。 2 時 間 お き に そ れ ぞ れ 実 験 試 料 を 1 本 取 り 出 し ,実 験 試 料 の 粉 状 化 の 有 無 を 目 視 観 察 し た 。ま た ,硬 度 計 (富 士 薬 品 機 械 社 製 ,FY-KD2-500)を 用 い て ,ガ ス 発 生 剤 に 荷 重 を か け ,ペ レ ッ ト が 破 断 す る 荷 重 (ペ レ ッ ト 強 度 )を 観 察 し た 。 図 5-1 ガ ス 発 生 剤 の 設 置 状 況 (振 盪 器 台 座 部 分 ) 28 5―5 実験結果 5ー5ー1 熱安定性試験 5ー5ー1ー1 重量変化 CMCA-70 お よ び PSAN-70 を 107℃ で 400 時 間 貯 蔵 し ,貯 蔵 中 の 重 量 変 化 を 観 察 し た 。実 験 の 結 果 ,図 5-2 に 示 す よ う に ,双 方 の 試 料 共 に 重 量 変 化 は 約 2−3%と な り ,規 格 (5%以 内 )を 満足する結果が得られた。 図 5-2 5ー5ー1ー2 熱 安 定 性 試 験 結 果 (重 量 変 化 ) 燃焼性 CMCA-70 お よ び PSAN-70 を 107±3℃ で 400 時 間 貯 蔵 し , 貯 蔵 前 後 の 燃 焼 性 を 観 察 し た 。 実 験 の 結 果 , PSAN-70 お よ び CMCA-70 共 に 貯 蔵 後 に は 燃 焼 速 度 が 増 加 す る 傾 向 が 得 ら れ た (図 5-3)。 燃 焼 速 度 は , ポ リ マ ー の 有 無 に よ ら ず 変 化 し て い る こ と か ら , 貯 蔵 に よ り 組 成 中 の AN と GN や BCN と が 反 応 し 燃 焼 速 度 が 変 化 し た 可 能 性 が あ る 。 ま た , 図 5-3 に 示 し た 結 果 (燃 焼 速 度 )は , 4 章 の 結 果 と 異 な っ て い る が , こ れ は , 実 験 装 置 お よ び 燃 焼 速 度 の 測 定方法等の違いによるものである可能性があり,今後,実験装置および実験条件を統一し て検討する必要がある。 図 5-3 熱 安 定 性 試 験 前 後 に お け る ガ ス 発 生 剤 の 燃 焼 速 度 (左 : PSAN-70, 右 : CMCA-70) 29 5ー5ー2 振動耐性試験 5ー5ー2ー1 ガス発生剤のペレット強度 振動耐性試験に先立って,ガス発生剤ペレットを作製し,その強度を,含まれるポリマ ー の 種 類 ,お よ び 添 加 量 の 違 い に よ り 比 較 し た 。結 果 を 図 5-4 に 示 し た 。こ の 図 か ら ,PSAN 系 よ り も ポ リ マ ー 含 有 PSAN 系 ガ ス 発 生 剤 の ほ う が 高 い 強 度 を 示 す こ と が 分 か る 。ま た ,ポ リマーを多く含む方がより強度が向上する傾向が見られ,ポリマーが糊のような働きをし て,ガス発生剤ペレットの強度が上昇したものと考えられる。 図 5-4 ガ ス 発 生 剤 中 の ポ リ マ ー 量 の 違 い に よ る ペ レ ッ ト 強 度 の 比 較 左 : PSAN/Polymer(10:0.3)を 使 用 し た ガ ス 発 生 剤 右 : PSAN/Polymer(10:1)を 使 用 し た ガ ス 発 生 剤 5ー5ー2ー2 振動によるペレット強度の変化 ガ ス 発 生 剤 に JIS D 1601[2]に 基 づ く 振 動 負 荷 を 加 え た 際 の 強 度 の 推 移 を 観 察 し た 。 実 験の結果,実験開始 8 時間後も実験試料に粉状化は観察されず,また実験試料の強度の低 下 も ほ と ん ど 観 察 さ れ な か っ た (図 5-5)。こ の た め ,振 動 加 速 度 を 2 倍 の 90m/s 2 に 調 整 し , ガ ス 発 生 剤 の ペ レ ッ ト 強 度 の 変 化 を 観 察 し た 。 実 験 の 結 果 , 図 5-6 に 示 す よ う に , 実 験 し た全ての試料において,実験開始 2 時間目まで強度が低下し,その後,強度がほぼ一定と な っ た 。 ま た , CMCA-70 は 常 に PSAN-70 よ り 高 い 強 度 を 維 持 し て い た 。 こ の た め , CMCA は 特にペレット強度を向上させる効果を有するものと考えられる。 30 図 5-5 振 動 試 験 時 に お け る ガ ス 発 生 剤 ペ レ ッ ト 強 度 の 推 移 左 : PSAN お よ び PSAN/Polymer(10:0.3)を 使 用 し た ガ ス 発 生 剤 右 : PSAN お よ び PSAN/Polymer(10:1)を 使 用 し た ガ ス 発 生 剤 図 5-6 高 加 速 度 の 振 動 試 験 時 に お け る ガ ス 発 生 剤 ペ レ ッ ト 強 度 の 推 移 5―6 研究成果 (1) 熱 安 定 性 評 価 を 目 的 と し て ,ポ リ マ ー 含 有 PSAN 系 ガ ス 発 生 剤 (ポ リ マ ー 成 分:CMCA) を 107±3℃ で 400 時 間 貯 蔵 し ,重 量 変 化 を 観 察 し た と こ ろ ,貯 蔵 前 後 の 重 量 変 化 は 5%以 内 で あ り , SAE 規 格 を 満 足 す る 結 果 が 得 ら れ た 。 (2) 貯 蔵 前 後 の 燃 焼 速 度 を 観 察 し た 結 果 ,貯 蔵 後 に 燃 焼 速 度 が 上 昇 し た 。ポ リ マ ー 含 有 PSAN を 含 ま な い PSAN 系 ガ ス 発 生 剤 で も 燃 焼 速 度 が 変 化 し た こ と か ら , 貯 蔵 中 に AN/GN/BCN が 反 応 し た こ と が 予 想 さ れ る 。 (3) 圧 縮 成 型 後 の ポ リ マ ー 含 有 PSAN 系 ガ ス 発 生 剤 の ペ レ ッ ト 強 度 は ,PSAN 系 よ り も 高 か っ た 。 ま た , 振 動 負 荷 (JIS D1601)を か け て も 強 度 に 変 化 は 観 察 さ れ ず , PSAN 系 よりも高い強度を維持した。 31 5―7 今後の課題と取組み 本 研 究 で は ,ポ リ マ ー 含 有 PSAN を 主 成 分 と す る ガ ス 発 生 剤 の 熱 安 定 性 お よ び 振 動 耐 性 を 調 査 し た 。熱 安 定 性 の 結 果 で は ,貯 蔵 前 後 の 重 量 変 化 は SAE 規 格 を 満 足 す る 5wt%以 下 で あ り目標を達成する結果が得られた。しかしながら,燃焼速度は,貯蔵後に上昇する傾向が 見 ら れ , 組 成 物 (GN や BNC)を 変 更 し , 今 後 再 試 験 す る 必 要 が あ る 。 参考文献・引用文献 [1] SAE Standard, USCAR inflator technical requirements and validation, SAE USCAR 24 (2004). [2] 日 本 工 業 規 格 , 自 動 車 部 品 振 動 試 験 方 法 , JIS D1601 (1995). 32 6 サブテーマ 2 新 規 エ ア バッ グ 形 状 の 開 発 ( タ ン デ ム エ アバ ッ グ お よ び 加害 性 評 価 試 験 装置 の 設 計 と 試 作 ) 福岡大学安全システム医工学研究所 有限会社沖本縫製奥谷工場 6―1 助教 加藤勝美 講師 内田俊毅 助教 東英子 PD 土屋潤 客員教授 三好仁 専務取締役 沖本雄紀 研究員 立花博隆 はじめに エアバッグの普及により,従来であれば救命できなかった自動車衝突事故から多くの人 命が救われるようになった。一方で,近年,エアバッグの展開が引き起こす搭乗者への加 害性の問題がクローズアップされるようになった。例えば,エアバッグと搭乗者との衝突 による頸椎損傷,胸部への外力による心臓挫傷や心臓破裂,エアバッグが顔面に衝突した 際 に 発 生 し た と 考 え ら れ る 眼 球 破 裂 や 角 膜 損 傷 ,鼻 骨 骨 折 ,顔 面 打 撲 等 が あ る [1]-[5]。こ の よ う に ,エ ア バ ッ グ の 加 害 性 が 報 告 さ れ る 中 ,米 国 で は 2006 年 に 先 進 エ ア バ ッ グ の 搭 載 を義務づけることを決定し,各国の自動車メーカは米国の安全規制への対応を視野に入れ た開発を進めている。 こ れ に 対 し て 筆 者 (内 田 )は , バ ッ グ 形 状 を 変 更 す る こ と に よ り 加 害 を 軽 減 で き れ ば , 低 コストかつ,広く一般車への普及も可能であるとの着想の下,2 つのバッグを連結させ, 衝 撃 吸 収 効 果 を 向 上 さ せ た エ ア バ ッ グ (タ ン デ ム エ ア バ ッ グ )を 考 案 し た [6][7]。 本 研 究 で は , 当 該 エ ア バ ッ グ の 最 適 形 状 を 明 ら か に す る 研 究 の 初 手 と し て , 形 状 (容 量 , 脱 気 孔 径 , 通 気 孔 径 , 体 積 調 整 ベ ル ト 長 等 )の 異 な る タ ン デ ム エ ア バ ッ グ お よ び そ の 加 害 性 (衝 撃 吸 収 効 果 )を 検 証 す る 試 験 装 置 を 試 作 し た 。 6―2 プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づけ 本 プ ロ ジ ェ ク ト は ,新 規 AN 系 ガ ス 発 生 剤 の 開 発 (サ ブ テ ー マ 1),お よ び ,加 害 性 を 軽 減 す る バ ッ グ 形 状 の 設 計 (サ ブ テ ー マ 2)か ら な る 。 サ ブ テ ー マ 2 で は , 以 下 の 方 針 に 沿 っ て 研 究 を 実 施 す る 。 こ こ で は , (1)の 研 究 に つ い て 報 告 す る 。 (1) タ ン デ ム エ ア バ ッ グ お よ び 加 害 性 評 価 試 験 装 置 の 設 計 と 試 作 (2) 加 害 性 評 価 試 験 装 置 に よ る 評 価 (3) 静 的 展 開 試 験 お よ び リ ニ ア イ ン パ ク タ 試 験 (4) 豚 眼 の 損 傷 に 関 す る 検 討 33 6―3 目的と目標 形状の異なるタンデムエアバッグおよびその加害性を検証する試験装置を試作すること を目的とした。以下に試作品の概要について記述する。 6―4 実験結果 6ー4ー1 タンデムエアバッグ タ ン デ ム エ ア バ ッ グ は (図 6-1b),従 来 の シ ン グ ル エ ア バ ッ グ (図 6-1a)と 異 な り ,バ ッ グ が 2 段 と な っ て い る 。 1 段 目 (ハ ン ド ル 側 )の バ ッ グ と 2 段 目 (搭 乗 者 側 )の バ ッ グ と は 通 気 孔で繋がっており,ガス発生剤から発生したガスは 1 段目のバッグから 2 段目に流入し, バッグが展開する。タンデムエアバッグのそれぞれのバッグ容量は従来型のエアバッグよ りも小さいため脱気がスムーズであり,柔らかい 2 段目のバッグで頭部をソフトに受け止 め,その後,脱気孔がない 1 段目のバッグで頭部を完全に静止させることができる設計と なっている。 図 6-1b は , 最 初 に 試 作 し た タ ン デ ム エ ア バ ッ グ (T0)で あ る 。 図 6-1a は , 比 較 用 に 試 作 し た シ ン グ ル エ ア バ ッ グ (S0)で あ り , そ れ ぞ れ の 仕 様 は , 表 6-1 に 示 す 通 り で あ る 。 その後,各種評価試験や自動車メーカ等への聞き取り調査等により試行錯誤を行い,最 終 的 に 14 種 類 の 改 良 モ デ ル (図 6-2,表 6-2),お よ び ,よ り 実 際 の シ ン グ ル エ ア バ ッ グ (S1) を 試 作 し た 。初 期 モ デ ル T0 と 改 良 型 タ ン デ ム エ ア バ ッ グ の 違 い は ,エ ア バ ッ グ 展 開 時 間 を 短 縮 す る た め に バ ッ グ 全 体 の 容 量 を 約 67L か ら 約 52L に 縮 小 し て い る 点 で あ る 。 ま た , さ らに展開時間の短縮を目的として,通気孔および脱気孔面積の変更および容量調節用ベル トの設置等を行っている。なお,各エアバッグ作製には実際のエアバッグに仕様される 470d, ナ イ ロ ン 66, シ リ コ ン コ ー ト 35g の 基 布 を 用 い た 。 図 6-1 シングルエアバッグと開発初期型タンデムエアバッグ 34 図 6-2 表 6-1 試験体* エアバッグ直径 [mm] S0 T0 改良型タンデムエアバッグ 開発初期型エアバッグ試作品水準 通気孔 脱気孔** ベルト長 [mm] 直径 [mm] 数 [−] 面積 [mm2] 直径 [mm] 面積 [mm2] 680 ㎜(シングル) ― ― ― 30 1413 ― 610(上) 20 4 1256 40 2512 ― 580(下) *「 S0」 は 従 来 型 の シ ン グ ル エ ア バ ッ グ を 想 定 し て 作 製 し た 試 験 体 「 T0」 は 初 期 型 の タ ン デ ム エ ア バ ッ グ **脱 気 孔 数 は 全 て 2 つ 35 表 6-2 試験体* エアバッグ直径 [mm] S1 改良型エアバッグ試作品水準 通気孔 脱気孔** ベルト長 [mm] 直径 [mm] 数 [−] 面積 [mm2] 直径 [mm] 面積 [mm2] 680 ㎜(シングル) ― ― ― 40 2512 ― Ta 590(上) 540(下) 20 4 1256 40 2512 220 Tb 590(上) 540(下) 22 4 1519.8 40 2512 220 Tc 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 40 2512 220 Td 590(上) 540(下) 24.5 8 3769.6 40 2512 220 Te 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 20 628 220 Tf 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 30 1413 220 Tg 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 50 3925 220 Th 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 40 2512 160 Ti 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 50 2512 160 Tj 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 40 2512 60 Tk 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 50 2512 60 Tl 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 40 2512 100 Tm 590(上) 540(下) 24.5 8 3769.6 40 2512 100 Tn 590(上) 540(下) 24.5 8 3769.6 40 2512 20 *「 S1」 は 従 来 型 シ ン グ ル エ ア バ ッ グ ,「 T」 シ リ ー ズ は 改 良 型 タ ン デ ム エ ア バ ッ グ **脱 気 孔 数 は 全 て 2 つ 6―4ー2 加害性評価試験装置 図 6-3 に , 本 研 究 に て 設 計 , 試 作 し た 加 害 性 評 価 試 験 装 置 の 概 要 を 示 す 。 本 装 置 は , 頭 部ダミー人形を,圧縮ガスにより展開したエアバッグ上に落下させ,頭部ダミー人形にか かる衝撃加速度を計測するシステムである。以下,本装置の仕様を機構毎に概説する。 6―4ー2ー1 落下機構 本装置は,頭部ダミー人形とエアバッグとを自由落下により衝突させるため,頭部ダミ ーには,ジュラルミン製の支持棒を設置し,ガイドワイヤに沿ってバッグに落 下するよう に設計した。また,頭部ダミー人形と吊り上げ用のワイヤは,電磁石で連結されており, 所定の高さまで引き上げられた頭部ダミー人形は,電磁石を切ると同時にエアバッグに向 かって落下する。エアバッグへ落下後は,頭部ダミー人形の破損を防止するため,ストッ パーによりエアバッグ台座の直上で強制的に停止する。ガイドワイヤと支持棒の摩擦によ り,自由落下しない可能性も懸念されたが,カメラ画像から落下速度を算出したところ, 理論値に一致する速度が得られることが確認された。 6―4ー2ー2 エアバッグ展開機構 エ ア バ ッ グ の 展 開 に は ,圧 縮 窒 素 ガ ス ボ ン ベ (2 本 )を 使 用 す る 。ガ ス 噴 出 の 入 /切 は ,電 36 磁弁で制御され,頭部ダミー人形引き上げ用の電磁石と連動している。即ち,電磁石の通 電 停 止 (頭 部 ダ ミ ー 人 形 の 落 下 開 始 )か ら , 設 定 時 間 経 過 後 に 自 動 的 に ガ ス 流 入 を 止 め る こ とができる。これにより頭部がバッグに衝突すると同時にバッグが収縮するよう制御でき る等,実際の衝突を模擬できるシステムとなっている。 6―4ー2ー3 頭部ダミー人形 試 作 し た 頭 部 ダ ミ ー 人 形 の 外 観 を 図 6-4 に 示 す 。同 ダ ミ ー 人 形 は ,Jasti 社 製 Hybrid-III 50th を カ ス タ マ イ ズ し た も の で あ る 。頭 部 お よ び 図 6-3 に 示 し た 支 持 棒 部 分 の 合 計 重 量 が 4.5kg に な る よ う 設 計 さ れ て お り , 成 人 男 性 の 頭 部 と ほ ぼ 同 じ 重 量 で あ る 。 ま た , 眼 部 分 に 人 工 眼 窩 を 設 け ,眼 球 (豚 眼 )を 取 り 付 け る こ と が で き る 。頭 部 内 部 は 空 洞 に な っ て お り , 重心位置に加速度センサを取り付けることができる。このため,頭部ダミー人形とエアバ ッグとの衝突時の衝撃加速度および豚眼の損傷を観察することができる。 図 6-3 試作した加害性試験装置の概要と写真 図 6-4 試作した頭部ダミー人形 37 6―6 研究成果 (1) タ ン デ ム エ ア バ ッ グ を 試 作 し , そ の 後 , 各 種 評 価 試 験 や 自 動 車 メ ー カ 等 へ の 聞 き 取 り 調 査 等 に よ り 試 行 錯 誤 を 行 い ,最 終 的 に 容 量 ,脱 気 孔 径 ,通 気 孔 径 ,体 積 調 整 ベ ル ト 長 が 異 な る 14 種 類 の 改 良 モ デ ル を 試 作 し た 。 (2) 頭 部 ダ ミ ー 人 形 を , 圧 縮 ガ ス に よ り 展 開 し た エ ア バ ッ グ 上 に 落 下 さ せ , 頭 部 ダ ミ ー 人 形 に か か る 衝 撃 加 速 度 を 計 測 す る 装 置 (加 害 性 評 価 装 置 )を 設 計 , 試 作 し た 。 参考文献・引用文献 [1] 一 杉 正 仁 , 木 戸 雅 人 , 横 山 朊 子 , 本 澤 養 樹 , 黒 須 明 , 長 井 敏 明 , 影 山 幾 男 , 徳 留 省 悟, エアバッグ展開車両乗員にみられる交通事故死の特徴, 日本職業・災害医学会会 誌 , 53(6), 305 (2005). [2] 笹 元 威 宏 , 稲 富 誠 , 小 出 良 平 , エ ア ー バ ッ グ 外 傷 に よ り Purtscher 網 膜 症 を き た し た 1 例 , 日 本 職 業 ・ 災 害 医 学 会 会 誌 , 52(4), 250 (2004). [3] 米 川 力 , 中 永 士 師 明 , エ ア バ ッ グ に よ る 顔 面 外 傷 の 3 例 , 日 本 職 業・災 害 医 学 会 会 誌 , 49(6), 600 (2001). [4] 松 田 憲 明 , 高 村 佳 弘 , 久 保 江 里 , 眼 部 エ ア バ ッ グ 外 傷 の 1 例 , 眼 科 臨 床 医 報 , 101(10), 1010 (2007). [5] 清 水 麻 衣 子 , 菅 澤 淳 , 江 富 朊 彦 , 臨 床 報 告 エ ア バ ッ グ 展 開 に よ る 片 眼 外 傷 性 内 側 縦 束 症 候 群 の 1 例 ,臨 床 眼 科 , 61(13), 2153 (2007). [6] 内 田 俊 毅 ,エ ア バ ッ グ 装 置 ,特 許 4129758,福 岡 大 学 (2008). [7] Toshiki Uchida, Airbag system, United States Patent 6,554,313 B2, Fukuoka University, Fukuoka, Japan (2003). 38 7 サブテーマ 2 新 規 エ ア バッ グ 形 状 の 開 発 ( 加 害 性 評 価 試験 装 置 に よ る 評価 ) 福岡大学安全システム医工学研究所 有限会社沖本縫製奥谷工場 助教 加藤勝美 講師 内田俊毅 助教 東英子 PD 土屋潤 専務取締役 沖本雄紀 研究員 立花博隆 (独)産業技術総合研究所安全科学研究部門 統 括 研 究 主 幹 研究グループ長 7―1 緒方雄二 和田有司 はじめに 近 年 ,エ ア バ ッ グ の 展 開 が 引 き 起 こ す 搭 乗 者 へ の 加 害 性 (エ ア バ ッ グ と 搭 乗 者 と の 衝 突 に よる頸椎損傷,胸部への外力による心臓挫傷や心臓破裂,エアバッグが顔面に衝突した際 に 発 生 し た と 考 え ら れ る 眼 球 破 裂 や 角 膜 損 傷 , 鼻 骨 骨 折 , 顔 面 打 撲 等 [1]-[5])の 問 題 が ク ロ ー ズ ア ッ プ さ れ る よ う に な っ た 。こ の 問 題 に 対 し て 筆 者 ら は , 2 つ の バ ッ グ を 連 結 さ せ , 衝 撃 吸 収 効 果 を 向 上 さ せ た エ ア バ ッ グ (タ ン デ ム エ ア バ ッ グ )を 考 案 [6][7]し , 前 章 に お い て 容 量 ,脱 気 孔 径 ,通 気 孔 径 ,体 積 調 整 ベ ル ト 長 が 異 な る タ ン デ ム エ ア バ ッ グ を 試 作 し た 。 ま た , エ ア バ ッ グ の 加 害 性 (衝 撃 吸 収 効 果 )を 検 証 す る 試 験 装 置 (加 害 性 評 価 装 置 )も 同 時 に 試作した。 本研究では,当該加害性評価装置を用いて,試作したタンデムエアバッグの容量,脱気 孔径,通気孔径および体積調整ベルト長の違いが衝撃吸収効果に及ぼす影響を調査した。 7―2 プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づけ 本 プ ロ ジ ェ ク ト は ,新 規 AN 系 ガ ス 発 生 剤 の 開 発 (サ ブ テ ー マ 1),お よ び ,加 害 性 を 軽 減 す る バ ッ グ 形 状 の 設 計 (サ ブ テ ー マ 2)か ら な る 。 サ ブ テ ー マ 2 で は , 以 下 の 方 針 に 沿 っ て 研 究 を 実 施 す る 。 こ こ で は , (2)の 研 究 に つ い て 報 告 す る 。 (1) タ ン デ ム エ ア バ ッ グ お よ び 加 害 性 評 価 試 験 装 置 の 設 計 と 試 作 (2) 加 害 性 評 価 試 験 装 置 に よ る 評 価 (3) 静 的 展 開 試 験 お よ び リ ニ ア イ ン パ ク タ 試 験 (4) 豚 眼 の 損 傷 に 関 す る 検 討 7―3 目的と目標 本研究では,試作したタンデムエアバッグの容量,脱気孔径,通気孔径および体積調整 ベルト長と衝撃吸収効果の関係を明らかにすることを目的とした。 39 7ー4 実験方法及び実験条件 前 章 記 載 の エ ア バ ッ グ (表 6-1 お よ び 表 6-2)を 加 害 性 評 価 試 験 装 置 (図 6-3)に 設 置 し ,頭 部 ダ ミ ー 人 形 と 各 エ ア バ ッ グ の 衝 突 時 の 加 速 度 を 計 測 し た 。 加 速 度 セ ン サ は , Endevco 社 製 7246B を 使 用 し , サ ン プ リ ン グ 周 波 数 は 10kHz と し た 。 ま た , 衝 突 時 の 様 子 を ビ デ オ カ メラにて撮影し,従来型のシングルエアバッグとタンデムエアバッグとを比較した。頭部 ダ ミ ー 人 形 の 落 下 高 は , 既 往 の 研 究 [9][10]を 参 考 に し て 35km/h と な る よ う 約 5m と し た 。 エ ア バ ッ グ は ,窒 素 ボ ン ベ 2 本 か ら 各 2MPa の 圧 縮 ガ ス 流 入 さ せ る こ と に よ り 展 開 さ せ た 。 頭 部 ダ ミ ー 人 形 の 落 下 開 始 (電 磁 石 の 通 電 停 止 )か ら 0.9 秒 後 に 電 磁 弁 が 閉 止 す る よ う 設 定 し,頭部ダミー人形とバッグが衝突すると同時にバッグが収縮するようにした。 7ー5 実験結果 7ー5ー1 初期型タンデムエアバッグの評価 タ ン デ ム エ ア バ ッ グ T0 と 実 際 の エ ア バ ッ グ を 模 し て 作 製 し た 従 来 型 の シ ン グ ル エ ア バ ッ グ S0(表 6-1)と の 比 較 か ら 研 究 を 開 始 し た 。 そ れ ぞ れ の エ ア バ ッ グ 上 に 頭 部 ダ ミ ー 人 形 を 落 下 さ せ た 際 の 写 真 を 図 7-1 お よ び 図 7-2 に 示 し た 。こ の 写 真 か ら ,S0 の 場 合 ,バ ッ グ と頭部ダミー人形が衝突した際の衝撃により支持棒が凸状に変形していることがわかる (図 7-1,4 コ マ 目 お よ び 5 コ マ 目 の 写 真 )。そ の 後 ,支 持 棒 は ス ト ッ パ ー に 引 っ 掛 り さ ら に 変形が進んでいる。また,頭部ダミー人形は衝突時の衝撃により上方向に押し返され大き く 振 動 し た (図 7-1, 6 コ マ 目 以 降 の 写 真 )。 一 方 , タ ン デ ム エ ア バ ッ グ T0 の 場 合 に は , 頭 部 ダ ミ ー 人 形 は , 2 段 目 の バ ッ グ に 包 み こ ま れ る よ う に し て 衝 撃 が 吸 収 さ れ (図 7-2, 2−5 コ マ 目 ), そ の 後 , 頭 部 ダ ミ ー 人 形 は 振 動 す る こ と な く 静 止 し た (図 7-2, 6 コ マ 目 以 降 )。 また,支持棒の変形等も観察されなかった。 当 該 実 験 時 に お け る 加 速 度 測 定 の 結 果 を 図 7-3 に 示 し た 。 シ ン グ ル エ ア バ ッ グ の 場 合 , 衝 突 時 の 最 大 加 速 度 は 25G 程 度 で あ る 一 方 , タ ン デ ム エ ア バ ッ グ の 場 合 は , 14G 程 度 で あ り , 3−4 割 程 度 衝 撃 が 軽 減 で き る こ と が 分 か っ た 。 40 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 図 7-1 頭 部 ダ ミ ー 人 形 と シ ン グ ル エ ア バ ッ グ S0 の 衝 突 時 の 状 況 (11.9ms 間 隔 ) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 図 7-2 頭 部 ダ ミ ー 人 形 と タ ン デ ム エ ア バ ッ グ T0 の 衝 突 時 の 状 況 (11.9ms 間 隔 ) 41 図 7-3 7ー5ー2 シ ン グ ル エ ア バ ッ グ S0 と タ ン デ ム エ ア バ ッ グ T0 の 加 速 度 測 定 結 果 バッグ容量の縮小 前 節 の 検 討 に お い て ,タ ン デ ム エ ア バ ッ グ に よ り 加 害 性 を 軽 減 で き る 可 能 性 が 示 さ れ た 。 し か し な が ら ,タ ン デ ム エ ア バ ッ グ T0 は ,容 積 が 67L で あ り ,シ ン グ ル エ ア バ ッ グ (約 50L) よりも大きく,通常のインフレータにより展開できない可能性がある。このため,容積を 従 来 エ ア バ ッ グ と ほ ぼ 同 じ 52L に 縮 小 し , さ ら に 展 開 時 間 の 短 縮 を 目 的 と し て , 通 気 孔 お よび脱気孔面積の変更および容量調節用ベルトの設置等を行った,改良型のタンデムエア バ ッ グ (表 6-2)を 試 作 し , 加 害 性 評 価 試 験 装 置 に よ り 評 価 し た 。 測 定 結 果 の 一 例 と し て , タ ン デ ム エ ア バ ッ グ Tc と シ ン グ ル エ ア バ ッ グ S1 の 測 定 結 果 を 図 7-4 に 示 し た 。S1 の 場 合 の 最 大 加 速 度 は 25G 程 度 で あ る 一 方 ,Tc の 場 合 は ,15G 程 度 で あ っ た 。こ の 結 果 は ,容 量 が 大 き い T0 の 結 果 と ほ ぼ 同 じ 値 で あ り ,少 な く と も 本 研 究 で 実 施した範囲において,容積は衝撃加速度にほとんど影響しないものと考えられる。 図 7-4 シ ン グ ル エ ア バ ッ グ S1 と タ ン デ ム エ ア バ ッ グ Tc の 加 速 度 測 定 結 果 42 7ー5ー3 通気孔面積と加速度との関係 前述のように,改良型のタンデムエアバッグでは,バッグ容積を変更した他に,通気孔 および脱気孔面積の変更および容量調節用ベルトの設置等を行っている。本節では,タン デムエアバッグの詳細設計を目的として,通気孔径および孔数の異なるタンデムエアバッ グ (表 7-1)に 対 し て 加 害 性 評 価 試 験 を 実 施 し , 通 気 孔 面 積 と 衝 撃 加 速 度 と の 関 係 に つ い て 検討した。 実験の結果,図 7-5 に示すように,通気孔数が 4 つの Ta,Tb および Tc の場合では,通気孔面積が大 きくなるほど,1G 程度最大加速度が大きくなった。しかしながら,通気孔数が 8 つあり,最も通気孔面 積が大きい Td の場合では,Tc と同程度の値であり,また,実験誤差を考えると,この差は有意差とは 言えず,通気孔面積は衝撃加速度にほとんど影響しないものと判断した。 表 7-1 比較に用いた通気孔面積が異なるタンデムエアバッグ(表 6-2 より抜粋) エアバッグ直径 [mm] 試験体 通気孔 脱気孔* 直径 [mm] 数 [−] 面積 [mm2] 直径 [mm] 面積 [mm2] ベルト長 [mm] Ta 590(上) 540(下) 20 4 1256 40 2512 220 Tb 590(上) 540(下) 22 4 1519.8 40 2512 220 Tc 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 40 2512 220 Td 590(上) 540(下) 24.5 8 3769.6 40 2512 220 *脱 気 孔 数 は 全 て 2 つ 20 ave.±SD 18 最大加速度[G] 16 14 12 Ta Tb Tc Td 10 8 6 4 2 0 1000 2000 3000 通気孔面積[mm2] 図 7-5 通気孔面積と加速度との関係 43 4000 7ー5ー4 脱気孔面積と加速度との関係 脱 気 孔 径 の 異 な る タ ン デ ム エ ア バ ッ グ (表 7-2)に 対 し て 加 害 性 評 価 試 験 を 実 施 し , 通 気 孔面積と衝撃加速度との関係について検討した。 実 験 結 果 を 図 7-6 に 示 す 。こ の 図 か ら ,ベ ル ト 長 が 比 較 的 長 い 場 合 (160-220mm)は ,脱 気 孔 面積が大きくなるほど衝突時の最大加速度が小さくなる傾向が示された。脱気孔面積が大 きい場合,ガスの脱出が速やかでバッグが柔らかいため,衝突時の衝撃が緩和されたもの と 考 え ら れ る 。 一 方 , ベ ル ト 長 が 比 較 的 短 い 場 合 (60mm)は , 脱 気 孔 径 の 影 響 が 見 ら れ な か った。ベルト長が短い場合,2 段目のバッグが薄くなるため,脱気孔の有無によらず衝撃 が吸収され難くなり,脱気孔がない 1 段目のバッグとの衝突が支配的になっている可能性 がある。 表 7-2 試験体 比 較 に 用 い た 脱 気 孔 面 積 が 異 な る タ ン デ ム エ ア バ ッ グ (表 6-2 よ り 抜 粋 ) エアバッグ直径 [mm] 通気孔 脱気孔* 直径 [mm] 数 [−] 面積 [mm2] 直径 [mm] 面積 [mm2] ベルト長 [mm] Te 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 20 628 220 Tf 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 30 1413 220 Tc 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 40 2512 220 Tg 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 50 3925 220 Th 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 40 2512 160 Ti 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 50 2512 160 Tj 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 40 2512 60 Tk 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 50 2512 60 *脱 気 孔 数 は 全 て 2 つ 図 7-6 脱気孔面積と加速度との関係 44 7ー5ー5 ベルト長と加速度との関係 ベ ル ト 長 の 異 な る タ ン デ ム エ ア バ ッ グ (表 7-3)に 対 し て 加 害 性 評 価 試 験 を 実 施 し , ベ ル ト長と衝撃加速度との関係について検討した。 実 験 結 果 を 図 7-7 に 示 す 。 ベ ル ト 長 が 100mm 以 上 で は , 衝 撃 加 速 度 に 大 き な 差 が 見 ら れ な か っ た が ,ベ ル ト 長 が 短 い 60mm の 場 合 に 衝 撃 加 速 度 が 高 く な る 傾 向 が 見 ら れ た 。し か し な が ら ,ベ ル ト 長 が 短 い 60mm の 場 合 は ,デ ー タ の ば ら つ き が 大 き く ,シ ン グ ル エ ア バ ッ グ と 同程度の加速度を示す場合もあれば,その他のタンデムエアバッグと同程度の低い加速度 を示す場合もあった。これは,ベルト長が短く 2 段目のバッグが薄くなると,頭部ダミー 人形の僅かな衝突の仕方の違いでも加速度に大きく影響することを示す結果であると考え られる。 表 7-3 試験体 比 較 に 用 い た ベ ル ト 長 が 異 な る タ ン デ ム エ ア バ ッ グ (表 6-2 よ り 抜 粋 ) エアバッグ直径 [mm] 通気孔 脱気孔* 直径 [mm] 数 [−] 面積 [mm2] 直径 [mm] 面積 [mm2] ベルト長 [mm] Tj 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 40 2512 60 Tl 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 40 2512 100 Th 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 40 2512 160 Tc 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 40 2512 220 Tk 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 50 2512 60 Ti 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 50 2512 160 Tg 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 50 3925 220 *脱 気 孔 数 は 全 て 2 つ 図 7-7 ベルト長と加速度の関係 45 7―6 研究成果 (1) 加 害 性 評 価 試 験 装 置 を 用 い て 試 作 し た タ ン デ ム エ ア バ ッ グ を 評 価 し た 。 エ ア バ ッ グ と 頭 部 ダ ミ ー 人 形 の 衝 突 時 の ビ デ オ 画 像 か ら ,タ ン デ ム エ ア バ ッ グ は ,安 定 し て 頭 部 を 受 け 止 め ,衝 突 時 の 衝 撃 を 低 減 で き る こ と が 明 ら か と な っ た 。ま た ,タ ン デ ム エ ア バ ッ グ の 場 合 ,シ ン グ ル エ ア バ ッ グ よ り も 3−4 割 程 度 衝 撃 (最 大 加 速 度 )が 軽 減 で き る こ と が 分 かった。 (2) 衝 突 時 の 最 大 加 速 度 は , 脱 気 孔 径 が 大 き く , ベ ル ト 長 が 長 い 程 低 下 し た 。 ベ ル ト 長 が 短 い 場 合 (60mm 以 下 ), デ ー タ の ば ら つ き が 大 き く な り , シ ン グ ル エ ア バ ッ グ と 同 程 度 の 高 い 加 速 度 を 示 す 場 合 も あ っ た 。一 方 ,加 速 度 は ,実 験 し た 範 囲 内 で 通 気 孔 径 お よ び 通気孔数に依存しないことが分かった。 参考文献・引用文献 [1] 一 杉 正 仁 , 木 戸 雅 人 , 横 山 朊 子 , 本 澤 養 樹 , 黒 須 明 , 長 井 敏 明 , 影 山 幾 男 , 徳 留 省 悟, エアバッグ展開車両乗員にみられる交通事故死の特徴, 日本職業・災害医学会会 誌 , 53(6), 305 (2005). [2] 笹 元 威 宏 , 稲 富 誠 , 小 出 良 平 , エ ア ー バ ッ グ 外 傷 に よ り Purtscher 網 膜 症 を き た し た 1 例 , 日 本 職 業 ・ 災 害 医 学 会 会 誌 , 52(4), 250 (2004). [3] 米 川 力 , 中 永 士 師 明 , エ ア バ ッ グ に よ る 顔 面 外 傷 の 3 例 , 日 本 職 業・災 害 医 学 会 会 誌 , 49(6), 600 (2001). [4] 松 田 憲 明 , 高 村 佳 弘 , 久 保 江 里 , 眼 部 エ ア バ ッ グ 外 傷 の 1 例 , 眼 科 臨 床 医 報 , 101(10), 1010 (2007). [5] 清 水 麻 衣 子 , 菅 澤 淳 , 江 富 朊 彦 , 臨 床 報 告 エ ア バ ッ グ 展 開 に よ る 片 眼 外 傷 性 内 側 縦 束 症 候 群 の 1 例 ,臨 床 眼 科 , 61(13), 2153 (2007). [6] 内 田 俊 毅 ,エ ア バ ッ グ 装 置 ,特 許 4129758,福 岡 大 学 (2008). [7] Toshiki Uchida, Airbag system, United States Patent 6,554,313 B2, Fukuoka University, Fukuoka, Japan (2003). 46 8 サブテーマ 2 新 規 エ ア バッ グ 形 状 の 開 発 ( 静 的 展 開 試 験お よ び リ ニ ア イン パ ク タ 試 験 ) 福岡大学安全システム医工学研究所 有限会社沖本縫製奥谷工場 8―1 助教 加藤勝美 講師 内田俊毅 助教 東英子 PD 土屋潤 専務取締役 沖本雄紀 研究員 立花博隆 はじめに 前章では,試作したタンデムエアバッグの容量,脱気孔径,通気孔径および体積調整ベ ル ト 長 の 違 い が 衝 撃 吸 収 効 果 に 及 ぼ す 影 響 を 調 査 し た と こ ろ , 衝 突 時 の 最 大 加 速 度 は ,脱 気孔径が大きく,ベルト長が長い程低下した。一方,加速度は,実験した範囲内で通気孔 径および通気孔数に依存しなかった。 本研究では,これまでの検討で衝撃吸収効果が高いことが確認されたタンデムエアバッ グ 等 に 対 し て ,静 的 展 開 試 験 お よ び リ ニ ア イ ン パ ク タ 試 験 (実 際 の イ ン フ レ ー タ を 使 用 し て バ ッ グ を 展 開 さ せ る 試 験 )を 実 施 し , バ ッ グ の 展 開 時 間 も 考 慮 し た 形 状 の 評 価 を 実 施 し た 。 8―2 プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づけ 本 プ ロ ジ ェ ク ト は ,新 規 AN 系 ガ ス 発 生 剤 の 開 発 (サ ブ テ ー マ 1),お よ び ,加 害 性 を 軽 減 す る バ ッ グ 形 状 の 設 計 (サ ブ テ ー マ 2)か ら な る 。 サ ブ テ ー マ 2 で は , 以 下 の 方 針 に 沿 っ て 研 究 を 実 施 す る 。 こ こ で は , (3)の 研 究 に つ い て 報 告 す る 。 (1) タ ン デ ム エ ア バ ッ グ お よ び 加 害 性 評 価 試 験 装 置 の 設 計 と 試 作 (2) 加 害 性 評 価 試 験 装 置 に よ る 評 価 (3) 静 的 展 開 試 験 お よ び リ ニ ア イ ン パ ク タ 試 験 (4) 豚 眼 の 損 傷 に 関 す る 検 討 8―3 目的と目標 本研究では,これまでの検討で衝撃吸収効果が高いことが確認されたタンデムエアバッ グを実際のインフレータにより展開させ,展開時間とバッグ形状との関係について 検討す ることを目的とした。目標は,従来のシングルエアバッグと同程度の時間で展開するバッ ク形状を明らかにすることとした。 47 8ー4 実験方法及び実験条件 8ー4ー1 静的展開試験 表 8-1 に 静 的 展 開 試 験 に 使 用 し た エ ア バ ッ グ の 一 覧 を 示 し た 。表 中 の Tb,Tc,Td は ,前 章の検討で使用したタンデムエアバッグであり,何れも衝撃加速度の軽減効果が高いバッ グ で あ る 。 Tm お よ び Tn は , 通 気 孔 数 を 8 つ と し , ベ ル ト 長 を さ ら に 短 く し た タ ン デ ム エ ア バ ッ グ で あ り ,展 開 速 度 を 高 め る た め に 新 た に 試 作 し た も の で あ る 。ま た , S1 は ,比 較 に用いたシングルエアバッグである。 静的展開試験は,実際のインフレータを用いてエアバッグを展開させる試験である。本 研究では,高速度カメラにより展開状況を確認し,高速度カメラ画像から展開時間を概算 した。インフレータは,株式会社本田技術研究所殿より提供されたインフレータを用い, 日本プラスト株式会社殿への委託試験により実施した。 表 8-1 静 的 展 開 試 験 を 実 施 し た エ ア バ ッ グ の 仕 様 (表 6-2 よ り 抜 粋 ) 試験体 エアバッグ直径 [mm] S1 通気孔 脱気孔* ベルト長 [mm] 直径 [mm] 数 [−] 面積 [mm2] 直径 [mm] 面積 [mm2] 680 ㎜(シングル) ― ― ― 40 2512 ― Tb 590(上) 540(下) 22 4 1519.8 40 2512 220 Tc 590(上) 540(下) 24.5 4 1884.8 40 2512 220 Td 590(上) 540(下) 24.5 8 3769.6 40 2512 220 Tm 590(上) 540(下) 24.5 8 3769.6 40 2512 100 Tn 590(上) 540(下) 24.5 8 3769.6 40 2512 20 *脱 気 孔 数 は 全 て 2 つ 8ー4ー2 リニアインパクタ試験 前 章 の 検 討 お よ び 上 記 し た 静 的 展 開 試 験 結 果 か ら ,衝 撃 加 速 度 の 軽 減 効 果 が 高 く ,か つ , 展開時間も良好なタンデムエアバッグに対してリニアインパクタ試験を実施した。 リ ニ ア イ ン パ ク タ 試 験 は , 頭 部 に 見 立 て た 負 荷 子 (加 速 度 セ ン サ 設 置 )を , イ ン フ レ ー タ により展開したエアバッグに衝突させて,その際の衝撃加速度等を計測する試験である。 本 研 究 で は ,負 荷 子 の 速 度 は 20km/h と し ,バ ッ グ の 展 開 終 了 と 同 時 に 負 荷 子 が 衝 突 す る よ う 設 定 し 試 験 を 実 施 し た 。 ま た , 加 速 度 セ ン サ の サ ン プ リ ン グ 周 波 数 は , 10kHz と し た 。 静的展開試験と同様,インフレータは,株式会社本田技術研究所殿より提供されたインフ レータを用い,日本プラスト株式会社殿への委託試験により実施した。 8ー5 実験結果 8ー5ー1 静的展開試験 図 8-1-図 8-3 に 静 的 展 開 試 験 よ り 得 ら れ た 各 タ ン デ ム エ ア バ ッ グ の 展 開 時 の 高 速 度 カ メ ラ 画 像 を 示 す 。 ま た , 高 速 度 カ メ ラ 画 像 か ら 概 算 し た 展 開 時 間 を 表 8-2 に ま と め た 。 比 較 に 用 い た シ ン グ ル エ ア バ ッ グ S1 は ,約 0.034 秒 で 展 開 が 終 了 す る が ,タ ン デ ム エ ア バ ッ グ Tb は 展 開 時 間 が 0.073 秒 で あ り ,通 常 エ ア バ ッ グ の 2 倍 の 時 間 を 要 す る こ と が 明 ら か 48 と な っ た 。 Tb よ り も 通 気 孔 径 が 大 き い Tc の 場 合 は , 展 開 終 了 時 の 時 間 が 約 0.061 秒 に ま で 短 縮 し た 。 さ ら に 展 開 時 間 を 短 縮 す る た め , 通 気 孔 数 を 増 や し (Td), 内 部 の 調 整 ベ ル ト 長 を 短 く す る (Tm, Tn)等 の 改 良 を 加 え た 。 そ の 結 果 , Tm お よ び Tn で は , シ ン グ ル エ ア バ ッ グ と ほ ぼ 同 程 度 の 約 0.04 秒 に ま で 展 開 時 間 が 短 縮 し た 。但 し ,Tn の ベ ル ト 長 は 20mm と 短 い た め , バ ッ グ の 展 開 に 耐 え ら れ ず ベ ル ト が 破 断 す る 結 果 と な っ た 。 ま た , 7-5-5 に 示 すようにベルト長が短い場合,加害性軽減の観点から不利であるため,本研究にて実施し た タ ン デ ム エ ア バ ッ グ の 中 で は Tm が 最 適 な 構 造 で あ る と 判 断 し た 。 表 8-2 静的展開試験における各試験体の展開時間 試験体名 展開時間[s] S1 0.034 Tb 0.073 Tc 0.061 Td 0.055 Tm 0.042 Tn* 0.041 *展 開 後 に ベ ル ト が 破 断 49 時間[s] 試験体名 試験体名 S1 Tb 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 図 8-1 静 的 展 開 試 験 時 の 高 速 度 カ メ ラ 画 像 (1) 50 時間[s] 試験体名 試験体名 Tc Td 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 図 8-2 静 的 展 開 試 験 時 の 高 速 度 カ メ ラ 画 像 (2) 51 時間[s] 試験体名 試験体名 Tm Tn 0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 図 8-3 静 的 展 開 試 験 時 の 高 速 度 カ メ ラ 画 像 (3) 52 8ー5ー2 リニアインパクタ試験 前 章 の 検 討 お よ び 静 的 展 開 試 験 結 果 か ら ,衝 撃 加 速 度 の 軽 減 効 果 が 高 い こ と が 予 想 さ れ , か つ , 展 開 時 間 も 良 好 な タ ン デ ム エ ア バ ッ グ Tm に 対 し て リ ニ ア イ ン パ ク タ 試 験 を 実 施 し , シ ン グ ル エ ア バ ッ グ S1 と 比 較 し た 。 リ ニ ア イ ン パ ク タ 試 験 時 の 負 荷 子 に 係 る 衝 突 加 速 度 の 時 間 変 化 を 図 8-4 に , 試 験 実 施 時 の 高 速 度 カ メ ラ 画 像 を 図 8-5 お よ び 図 8-6 に 示 し た 。 加 速 度 の 測 定 結 果 か ら , シ ン グ ル エ ア バ ッ グ の 最 大 加 速 度 は 約 10G で あ っ た の に 対 し , タ ン デ ム エ ア バ ッ グ は 約 4.5G で あ り , 5 割程度低減できることが示された。 図 8-4 リニアインパクタ試験時の加速度の時間変化 53 時間[s] 時間[s] 0.00 0.06 0.01 0.07 0.02 0.08 0.03 0.09 0.04 0.10 0.05 図 8-5 リ ニ ア イ ン パ ク タ 試 験 画 像 (シ ン グ ル エ ア バ ッ グ S1 54 0−0.1s, 10ms 間 隔 ) 時間[s] 時間[s] 0.00 0.06 0.01 0.07 0.02 0.08 0.03 0.09 0.04 0.10 0.05 図 8-6 リ ニ ア イ ン パ ク タ 試 験 画 像 ( タ ン デ ム エ ア バ ッ グ Tm 55 0−0.1s, 10ms 間 隔 ) 8―6 研究成果 (1) 実 際 の イ ン フ レ ー タ を 用 い て タ ン デ ム エ ア バ ッ グ を 展 開 さ せ , 展 開 ま で の 時 間 を 計 測 した。タンデムエアバッグは,シングルエアバッグよりも展開までの時間が遅かった ため,加害性に影響しない範囲でベルト長を短縮する等の改良を加え,再度試験を実 施 し た 。そ の 結 果 ,目 標 と し て い た シ ン グ ル エ ア バ ッ グ と 同 程 度 の 展 開 時 間 (約 0.04s) を達成することができた。 (2) 加 害 性 お よ び 展 開 時 間 の 観 点 か ら 良 好 と 判 断 さ れ た タ ン デ ム エ ア バ ッ グ に 対 し て , リ ニアインパクタ試験による最終評価を行った。その結果,タンデムエアバッグの衝撃 加 速 度 は 約 4.5G で あ り ,シ ン グ ル エ ア バ ッ グ の 1/2 程 度 ま で 低 減 で き る こ と が 明 ら か となった。 56 9 サブテーマ 2 新 規 エ ア バッ グ 形 状 の 開 発 ( 豚 眼 の 損 傷 に関 す る 検 討 ) 福岡大学安全システム医工学研究所 福岡大学医学部,福岡大学病院 日本赤十字社福岡赤十字病院救急科 9―1 助教 加藤勝美 講師 内田俊毅 助教 東英子 助教 入江豊 PD 土屋潤 教授 内尾英一 診療教授 尾崎弘明 部長 友尻茂樹 はじめに 前章まで検討では,加害性およびバッグ展開時間の観点から最適なタンデムエアバッグ の構造を明らかにすることを目標として検討を行い ,概ねこの目標を達成できたと考えら れる。一方,どの程度,実際の加害性を軽減できるかについては明らかでないことから, 本章では,人間の眼球と構造・大きさが酷似している豚眼の破損確率と衝撃加速度との関 係について検討した。 9―2 プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づけ 本 プ ロ ジ ェ ク ト は ,新 規 AN 系 ガ ス 発 生 剤 の 開 発 (サ ブ テ ー マ 1),お よ び ,加 害 性 を 軽 減 す る バ ッ グ 形 状 の 設 計 (サ ブ テ ー マ 2)か ら な る 。 サ ブ テ ー マ 2 で は , 以 下 の 方 針 に 沿 っ て 研 究 を 実 施 す る 。 こ こ で は , (4)の 研 究 に つ い て 報 告 す る 。 (1) タ ン デ ム エ ア バ ッ グ お よ び 加 害 性 評 価 試 験 装 置 の 設 計 と 試 作 (2) 加 害 性 評 価 試 験 装 置 に よ る 評 価 (3) 静 的 展 開 試 験 お よ び リ ニ ア イ ン パ ク タ 試 験 (4) 豚 眼 の 損 傷 に 関 す る 検 討 9―3 目的と目標 本章では,人間の眼球と構造・大きさが酷似している豚眼の破損確率と衝撃加速度との 関係について検討し,試作したタンデムエアバッグの加害性軽減効果に関する検討を加え ることを目的とした。 9ー4 実験方法及び実験条件 開 発 初 期 の 予 定 で は , 豚 眼 を 取 り 付 け た 頭 部 ダ ミ ー 人 形 を , 図 6-3 に 示 し た 加 害 性 評 価 試験装置を用いてエアバッグ上に落下させ豚眼の損傷を観察することを計画していた。し 57 かしながら,この方法は,実験上の操作性が著しく悪く,実験を実施できなかったため, 図 9-1 の よ う に 装 置 を 改 造 し 評 価 試 験 を 実 施 し た 。こ れ は ,直 径 2mm の 鉛 の 粒 10kg が 入 っ た ナ イ ロ ン 製 の 袋 (お も り )を 4.0−6.0m の 高 さ か ら 床 面 の 豚 眼 を 設 置 し た 頭 部 ダ ミ ー 人 形 に 落 下 さ せ る 装 置 で あ る 。 落 下 機 構 , 頭 部 ダ ミ ー 人 形 , 加 速 度 セ ン サ 等 の 仕 様 は , 図 6-3 の場合と全く同じであるが,バッグと頭部ダミー人形の位置が異なる。 頭部ダミー人形に取付ける豚眼は,福岡大学医学部の協力を得て福岡市内の食肉業者か ら 購 入 し た 。 豚 眼 の 眼 圧 は , 個 体 差 が あ る た め , ヒ ア ル ロ ン 酸 を 注 入 し て 眼 圧 を 50mHg に 調 整 し た 。 そ の 後 , 図 9-2 の よ う に 頭 部 ダ ミ ー 人 形 に 設 置 し た 。 試 験 実 施 後 は , 眼 科 医 等 が破損状況の観察を行った。また,ホルマリンに一昼夜浸漬させた後,豚眼を切開して豚 眼内部を観察した。 電磁石 おもり(10kg) ワイヤ 衝突時の加速度・ 眼球の損傷度合い 頭部ダミー 加速度センサ 豚眼 図 9-1 図 9-2 改良型加害性評価試験装置 豚眼を設置した頭部ダミー人形 58 9ー5 実験結果 図 9-3 お よ び 図 9-4 に 試 験 後 の 豚 眼 を 示 す 。 図 9-3 は , 損 傷 が 確 認 さ れ な か っ た 豚 眼 で あ る 。 一 方 , 図 9-4 は , 損 傷 が 確 認 さ れ た 豚 眼 で あ り , 強 膜 (眼 球 の 外 側 の 膜 )が 破 れ , 水 晶体が脱出する水晶体脱臼が観察された。 同 様 の 実 験 を ,お も り の 落 高 を 変 え て 合 計 60 個 の 豚 眼 に 対 し て 実 施 し ,図 9-4 の よ う な 豚 眼 の 損 傷 が 起 き る 数 (損 傷 数 )を カ ウ ン ト し た 。ま た ,損 傷 数 か ら 損 傷 率 (下 式 )を 算 出 し た 。 損 傷 率 (%) = ( 損 傷 数 / 各 加 速 度 範 囲 で の 供 試 豚 眼 数 ) × 100 図 9-5 に 頭 部 ダ ミ ー 人 形 に 係 る 最 大 加 速 度 と 豚 眼 の 損 傷 率 と の 関 係 を 示 す 。 図 か ら , 加 速 度が大きくなると,損傷率も増加する傾向が見られた。また,両者の間には,シグモイド 型の関係があるように見える。 リ ニ ア イ ン パ ク タ 試 験 で 得 ら れ た タ ン デ ム エ ア バ ッ グ の 加 速 度 (4.5G)を こ の グ ラ フ に 適 用 す る と , 損 傷 確 率 は 20%以 下 と な り , タ ン デ ム エ ア バ ッ グ は 眼 外 傷 軽 減 に 有 効 で あ る と 考 え ら れ る 。 し か し な が ら , 本 研 究 で は , 直 径 2mm の 鉛 の 粒 が 入 っ た 袋 を 落 下 さ せ て い る ため,衝突時に局所的に豚眼に圧力がかかることが予想され,実際のエアバッグの衝突時 よりも加害性を過大評価している可能性がある。このため,本研究結果とリニアインパク タ試験結果等とは厳密には比較的できず,今後詳細に検討する必要がある。 図 9-3 図 9-4 実 験 後 の 豚 眼 の 様 子 (損 傷 が 認 め ら れ な い 豚 眼 ) 実 験 後 の 豚 眼 の 様 子 (破 裂 し て 水 晶 体 脱 臼 し た 豚 眼 ) 59 図 9-5 9ー6 加速度と豚眼の損傷率の関係 研究成果 (1) 4-6m の 高 さ か ら 鉛 粒 10kg が 入 っ た お も り を ,豚 眼 を 設 置 し た 頭 部 ダ ミ ー 人 形 の 上 に 落 下させたところ,豚眼に眼球破裂および水晶体脱臼等の損傷が確認された。 (2) 落 下 に よ り 損 傷 が 起 き る 確 率 は , 頭 部 ダ ミ ー 人 形 に 係 る 衝 撃 加 速 度 に 依 存 し た 。 こ の 実 験 で は ,30G 程 度 の 衝 撃 で ,全 て の 豚 眼 が 損 傷 す る 結 果 が 得 ら れ た が ,実 際 の エ ア バ ッ グ の 衝 突 時 よ り も 加 害 性 を 過 大 評 価 し て い る 可 能 性 が あ る た め ,今 後 詳 細 に 検 討 す る 必要がある。 9ー7 今後の課題と取組み 本研究では,鉛粒の入った袋を頭部ダミー人形へ落下させているため,豚眼に局所的に 力が加えられる等,実際のエアバッグの衝突時よりも加害性を過大評価している可能性が ある。このため,計測装置の改良等を行い,今後詳細に検討する必要がある。また,豚眼 の損傷率と人間の眼の損傷率の関係等も明らかにする必要があり,医学的見地からの検討 も不可欠と考えられる。 60 成果実績 (1) 口頭発表 ・ 第 2 回 中 東 欧 熱 測 定 国 際 会 議 (CEEC-TAC 2 )( 2013.8.27 ヴィリニュス, リトアニ ア) Investigation of the crystal transformation of spray dried particles comprising ammonium nitrate, potassium nitrate and polymer ( 発 表 者 永山清一郎,加藤勝美, 東英子,中野勝之, 熊谷恒佑, 羽生宏人, 和田有司,新井充) ・ 第 2 回 中 東 欧 熱 測 定 国 際 会 議 (CEEC-TAC 2 )( 2013.8.27 ヴィリニュス, リトアニ ア) Thermal decomposition behavior of spray dried particles comprising of ammonium nitrate, potassium nitrate and polymer ( 発 表 者 永山清一郎, 加藤勝美, 東英子, 中野勝之, 羽生宏人) ・ 火 薬 学 会 2013年 度 年 会 ( 2013.5.16 横浜市) ポ リ マ ー 含 有 硝 酸 ア ン モ ニ ウ ム 微 粒 子 の 熱 分 解 挙 動( 発 表 者 永 山 清 一 郎 ,加 藤 勝 美 , 東英子,中野勝之,熊谷恒佑,羽生宏人,和田有司,新井充) ・ 火 薬 学 会 2012年 度 秋 季 研 究 発 表 講 演 会 ( 2012.11.15 鹿 児 島 市 ) ポ リ マ ー を 含 有 し た 硝 酸 ア ン モ ニ ウ ム /硝 酸 カ リ ウ ム 微 粒 子 の 打 撃 感 度 お よ び 潮 解 過 程 の 観 察 (発 表 者 永 山 清 一 郎 ,加 藤 勝 美 , 東 英 子 , 中 野 勝 之 ,林 政 彦 ,熊 谷 恒 佑 ,羽 生宏人,和田有司,新井充) (2) 論文発表 ・ 永 山 清 一 郎 ,加 藤 勝 美 , 東 英 子 ,中 野 勝 之 , 熊 谷 恒 佑 , 羽 生 宏 人 , 和 田 有 司 ,新 井 充 : Investigation of the crystal transformation of spray dried particles comprising ammonium nitrate, potassium nitrate and polymer , J. Therm. Anal.Cal.(投 稿 中 ) ・ 永 山 清 一 郎 , 加 藤 勝 美 , 東 英 子 , 中 野 勝 之 , 羽 生 宏 人 : Thermal decomposition behavior of spray dried particles comprising of ammonium nitrate, potassium nitrate and polymer, J. Therm. Anal.Cal., (投 稿 中 ) ・ 永 山 清 一 郎 ,加 藤 勝 美 ,東 英 子 ,林 政 彦 ,熊 谷 恒 佑 ,羽 生 宏 人 ,和 田 有 司 ,中 野 勝 之 , 新 井 充 : Preparation of spray dried particles comprising ammonium ni trate/ potassium nitrate/polymer, Propel . Explos. Pyrotech., (投 稿 中 ) 61 ・ 土 屋 潤 , 加 藤 勝 美 , 内 田 俊 毅 , 東 英 子 , 中 野 勝 之 , 立 花 博 隆 , 新 井 充 : Performance evaluation of the tandem-type airbag system,Proceedings of 11th International Symposium and Exhibition on Sophisticated Car Occupant Safety Systems (Airbag 2012) pp.29-1-29-7 (2012) (3) 雑誌掲載 なし (4) 特許出願 ・ ガス発生剤用硝酸アンモニウム粒状物の製造方法およびその製造方法並びにガス発 生 剤 ペ レ ッ ト ,特 開 2014-001128,出 願 人:日 本 化 薬 (株 ),旭 化 成 ケ ミ カ ル ズ (株 ),(独 ) 産 業 技 術 総 合 研 究 所 ,出 願 日 : 2013年 5月 22日 (5) 商品化 なし (6) 受賞 ・ 永 山 清 一 郎 , 平 成 25 年 度 火 薬 学 会 秋 季 研 究 発 表 会 優 秀 講 演 賞 , ( 一 社 ) 火 薬 学 会 , 2013.12.12 62
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