報告書(概要版)

九州地方知事会
育児費用の社会的支援等に関する研究会
~ 報告書(概要版)~
~九州・山口のこどもの未来のために~
* 本報告は、研究会において、昨年11月以来、これまで12回にわたって検討した内容を、整
理したものであり、現在の深刻な少子化の状況を打開するためのこの提案に理解をしていただ
くことを切に願うものである。 平成16年10月
(福岡県・佐賀県・長崎県・熊本県・大分県・宮崎県・鹿児島県・沖縄県・山口県)
<事務局 佐賀県>
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九州・山口における少子化への新たな取組
○少子化の現状
九州・山口各県においては、全国より合計特殊出生率は高水準とはいえ、こども数の減少など少
子化の現状は深刻。
いずれの県も平成14年に比べ、合計特殊出生率、出生数ともに減少、また、平均初婚年齢は上昇。
→ 少子化に歯止めがかかっていない。
○少子化に歯止めをかけるための対策が急務
少子化対策は長期的・継続的な取組が必要となることから、少子化に歯止めをかけるためには本格
的な少子化対策を講じることが急務である。
○しかし、現下の情勢では、
○しかし、現下の情勢では、少子化対策施策
の情勢では、少子化対策施策の大幅な拡充は困難
少子化対策施策の大幅な拡充は困難
現下の厳しい財政状況の中、税を中心とする仕組みだけでは、少子化対策施策を大幅に拡充する
ことは困難。 このため
「九州地方知事会
月~ )
「九州地方知事会・育児費用の社会的支援等に関する研究会」の設置 (平成
地方知事会・育児費用の社会的支援等に関する研究会」の設置 (平成15年
・育児費用の社会的支援等に関する研究会」の設置 (平成 年11月
○ 育児費用を社会的にみんなで支援していく仕組みを研究 ○ さらに、少子化の流れを変える有効策も検討
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研究会における検討内容
研究を進めていく上での理念は
育児費用の社会的支援の理念
育児費用の社会的支援の理念
① すべてのこどもを等しく対象に ~親の働き方などにかかわらず子育てを支援
② 社会全体で支える仕組みに ~すべての人や事業所が費用をみんなで支援
③ 利用者重視・地域重視の仕組みに ~地域の実情に応じた多様なサービスの選択肢を提供 何が少子化の要因なのか。
○ 考えられる少子化の主な要因
①未婚化・晩婚化
<背景> 結婚に対して、あらゆるデメリットを払拭するだけの魅力・必要性を感じない
<背景> 結婚に対して、あらゆるデメリットを払拭するだけの魅力・必要性を感じない
自分のための時間が減少し、拘束されることへの不安感
家族ができることによる責任感の増加
結婚平均年齢の上昇による、未婚化・晩婚化のさらなる進行
②夫婦の出生力の低下
<背景> 出産に対する障壁、またそれを乗り越えるだけのメリットの希薄化
<背景> 出産に対する障壁、またそれを乗り越えるだけのメリットの希薄化
出産・子育てに対する心理的・身体的な負担、不安感
子育てと仕事の両立に対する負担、不安感
扶養家族が増えることによる経済的な負担、不安感
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何が問題なのか。
○ 解消すべき問題点
「こどもが生まれると生活(人生)の負担が大きくなるという社会の在り方の問題」
出産・育児費用及び教育費など子育てにかかる経済的な負担
結婚・出産・子育てに対する心理的・身体的な負担、不安感
子育てと仕事の両立に対する負担、不安感
問題点を解消するためには・・・
「こどもが生まれると生活(人生)が楽しくなるという社会」に変える必要がある。
変えるために今、何が必要か。
○ 子育てにかかる負担・不安感を解消するための具体的な戦略が必要
「九州・山口ストップ少子化総合戦略」(仮称)
Ⅰ 九州・山口『意識改革』戦略 ~ 九州・山口での取組~
Ⅱ 九州・山口『チャレンジ』戦略 ~ 九州・山口での取組~
Ⅲ 九州・山口『改革提案』戦略 ~ 九州・山口から発信する国への提案~
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九州・山口ストップ少子化総合戦略に関する体系図
解消すべき少子化の要因・現状
施策
財源
~九州・山口での取組~
『
意識改革 』
戦略
①子育てと仕事の両立に対する負担、不安
感
②結婚・出産・子育てに対する心理的・身
体的な負担、不安感
子育て応援事業所への支援
育児休業制度等に対する意識改革
結婚や子育てについて社会全体で応援してい
く環境づくり活動
(九州縦断結婚・子育てフォーラムの開催)
地域子育て宝くじ
里帰り出産等のための情報提供など子育て環
境の支援
『
チャレンジ』
戦略
③出産・子育てにかかる経済的な負担
子育て支援サービスの提供(九州・山口版)
育児費用支援基
金(県民税均等割
超過課税)
~九州・山口から発信する国への提案~
『
改革提案』
戦略
子育て支援サービスの提供(全国版)
④教育費など、子育てにかかる経済的な
負担
社会保障給付費
の配分の在り方
の抜本的な検討
児童手当の充実
育児費用支援基
金(育児保険)
奨学金の充実
税、社会保険料
既存財源
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Ⅰ 九州・山口『意識改革』戦略 ~次世代を社会全体ではぐくむ意識づくり~
九州・山口『意識改革』戦略
① 子育てと仕事の両立に対する負担、不安感の解消のために
○子育て応援事業所への支援
○子育て応援事業所への支援
子育てと仕事の両立支援に積極的な事業所を各県のホームページ、新聞等で広報するなど子
育て応援事業所を支援する。
○育児休業制度等に対する意識改革
○育児休業制度等に対する意識改革
就労者や就職前の学生に対し、育児休業等の制度を周知するとともに、事業主の意識改革に
よる子育てにやさしい職場環境づくりを促進し、積極的に制度を利用出来るような社会全体の意
識づくりを行う。
② 結婚・出産・子育てに対する心理的・身体的な負担、不安感の解消のために
○結婚や子育てについて社会全体で応援していく環境づくり活動
(九州縦断結婚・子育てフォーラムの開催)
九州地方知事会が主体となり、九州・山口各県において結婚しやすい環境や子育てを社会全体
で応援する環境をつくるためのフォーラム等を企画・開催する。
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○里帰り出産等のための情報提供など子育て環境の支援
○里帰り出産等のための情報提供など子育て環境の支援
里帰り出産にかかる児童の保育所入所について円滑化を図るため、全市町村が広域入所へ取
り組めるように、必要に応じて広域入所支援窓口を明示し支援する。 保育所・幼稚園の一覧、医療機関の一覧、母子保健推進員の問い合わせ窓口の一覧等、里帰
り出産等を応援する情報を一元化してホームページに掲載する。 ①~②などを実施するための財源として
地域子育て宝くじの発売
主にフォーラム・子育て応援事業所の広報にかかる費用など、子育てに対する意識啓発などを行
う財源を確保するために宝くじを発売。
こどもの絵柄の宝くじを発売
(例えば西日本宝くじの一般的な発売額で試算した場合、一回4,500万円程度の収益が見込まれる。) <利 点> 宝くじの発売は、県民自らが当選金という魅力から自ら欲して宝くじを購入するもので
あるため、比較的県民の理解を得やすい。
<問題点> 西日本宝くじ事務協議会と協議を行うとともに、協議会に属する九州・山口以外の県の
合意を得ることが必要である。
また、宝くじの売上げも年々減少する中、新たな宝くじを発行した場合、既存のパイの
奪い合いにならないよう、購買力を高める仕掛け(新規購買層の開拓)が必要である。 17年度の発売総額が全国ベースで既に決定されており、今回の宝くじを17年度中
に発売することは、現実的には厳しい。 7
Ⅱ 九州・山口『チャレンジ』戦略 ~九州・山口での先駆的取組~
九州・山口『チャレンジ』戦略 ~
①出産・子育てにかかる経済的な負担を解消するために
○子育て支援サービスの提供(九州・山口版)
子育てしている人や子育てをしていない人の区別なく、全ての大人に一定額支援していただいて
得た財源を活用し、九州・山口各県で育児費用支援基金を創設する。
育児費用支援基金は出産・育児に対する経済的負担の解消のための施策に活用する。
サービス内容としては、ニーズ調査等を行い、実情に応じたメニューを作成する。
(例 安心して出産するための妊婦健診へ助成) <問題点> 現行の子育て支援の各施策の整理・見直しを行うとともに、サービス内容の検討を
十分行うことが必要である。
①を実施するための財源として
育児費用支援基金 ~ワンコイン未来への投資~(県民税均等割超過課税)
県民税(個人・法人)の均等割に超過課税を行う。
<利 点> 超過課税は国の同意を必要としない。
既存の徴収システムを利用できる。
<問題点> 恩恵を直接受けない県民の理解を得る必要がある。 8
Ⅲ 九州・山口『改革提案』戦略 ~国への提案~
九州・山口『改革提案』戦略 ①教育費など、子育てにかかる経済的な負担を解消するために
○子育て支援サービスの提供(全国版)
○子育て支援サービスの提供(全国版)
子育てしている人や子育てをしていない人の区別なく、全ての大人に一定額支援していただいて
得た財源を活用し、子育てにかかる経済的負担の解消のためのサービス等を提供する。
サービス内容については、ニーズ調査等を行い、実情に応じたメニューを作成する。
(例 幼稚園・保育園の保育料の保護者負担軽減)
○児童手当の充実
○児童手当の充実
現行の児童手当制度の対象年齢、金額を拡大する。
(試算)仮に月2万円給付した場合 月額2万円×12月×18才未満の全国児童数=5兆2,200億円
○奨学金の充実
○奨学金の充実 ○奨学金の充実
・年金積立金200兆円を活用した貸与型の奨学金の創設
年金積立金を原資とし、大学や金融機関に預託して貸与を行った場合に発生する利子につい
て、補填を行う。
(試算)仮に月10万円貸与した場合(年利3%)
月額10万円×12月×全国の大学生、院生数×3%=1,009億円
・給付型の奨学金の創設 (試算)仮に月7万円給付した場合 月額7万円×12月×全国の大学生、院生数=2兆3500億円
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そこで
財源を確保するために
国への提案として
○社会保障給付費の配分の在り方の抜本的な検討
社会保障給付費の配分の在り方の抜本的な検討
2002年の社会保障給付費83兆5,666億円の構成割合について、高齢者関係給付金が
58兆4,379億円(69.9%)に対し、児童・家族関係給付費は3兆1,513億円(3.8%)と大き
な格差が生じている。
このような現行の社会保障給付費の配分の在り方について抜本的な検討がなされるべきである
と考えられる。
○育児費用支援基金(育児保険)の創設
税により確保された財源と、社会保険の仕組みを利用した新たな社会保険料の徴収により
確保された財源を統合し、社会全体で子育て支援に係る費用を支援するための育児費用支援
基金を創設する。
保険料については、社会保険システムを活用し、20歳以上のすべてを対象として徴収す
ることが考えられる。
また、上記の制度に、既存の子育て支援のための財源を統合することも考えられる。
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具体策の実現に必要な検討課題
県民に対して新たな負担を求めるワンコイン制度の導入や、九州・山口以外の県の同意が必要
な宝くじの発売については、特に慎重な議論・検討が必要であり、さらに長期的な視点から下記のよ
うな点に基いた、研究調査が必要。
(1) 具体的なニーズの把握及びサービス内容の整理
(2) サービス内容等と財源との整合性を検討
(3) 必要財源の詳細な算定
(4) 具体的な財源確保の検討
(5) 各県の財政当局と実現の可否についての調整
(6) 県民等の理解が得られるかの調査
(7) 理解が得られた場合、実施に向けた具体的なスケジュール
今後の展開
○「意識改革」戦略として、各県のホームページの活用など実現可能な取組を実施し、次世代を社会
全体ではぐくむ意識づくりを行いたい。
○「チャレンジ」戦略の各施策については、今後も引き続き実現の可能性を各県で検討していきたい。
○「改革提案」戦略の一部(育児費用支援基金【育児保険】の創設)については、国の制度の根幹に関
わる問題であり、九州・山口各県の同意を得るには至らなかった。
○1年間という期間ですべてを取りまとめることは困難であったが、引き続き九州・山口が共同して戦
略の具現化のためにできるところから取り組むことができれば幸いである。
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