小信号トランジスタ・ダイオードの品質保証

Ⅱ.ハイブリッドIC,
小信号トランジスタ・ダイオードの品質保証
1. 半導体デバイスの品質保証システム
2. 開発段階での品質保証
3. 量産段階での品質保証
4. 出荷後の異常と是正措置
5. 材料、部品の品質保証
6. 設備、計測器の管理と環境の管理
7. 標準類の管理、小集団活動、教育訓練
7.1
標準化と標準類の管理
7.2
小集団活動
7.3
教育訓練
Ⅱ.ハイブリッドIC,小信号トランジスタ・ダイオードの品質保証
1.半導体デバイスの品質保証システム
開発・設計から量産・出荷及び顧客での実使用に至るライフサイクルでの品質保証システムを、
図Ⅱ―1に示します。
品質情報の活用による総合的品質保証
品質管理診断
品質管理教育
設計の品質管理
マスク
図面・標準類管理
環境管理
購入部材管理
材料
回路
設備・計測器管理
パッケージ
プロセス
SPC
シミュレーション
開発
製造ロット管理
材料・部品
品質データ解析
組立工程
検査工程
インプロセス管理
品質・信頼性の改良
データ収集
信頼性評価
故障解析
特性評価
環境・機械的
故障物理
材料評価
耐久性寿命
限界・加速寿命
是正措置
顧客
出庫
信頼性試験(社内認定)
物理/化学分析
保管・出荷管理
入庫
保管
受入管理
品質保証の基礎 技術
良品解析
変更管理
設計
試作
SPC設計
品質保証検査
品質・歩留向上
自動化推
設計審査
市場調査
製品の品質保証
製造の品質管理
信頼性設計
構造
小集団活動
故障解析
改良活動
顧客サポート
苦情処理
品質会議
故障解析
物の流れ
図Ⅱ−1
情報の流れ
アクション
半導体デバイスの品質保証システム
設計の品質管理は、製品の仕様、品質を作り込む活動であり、デバイス構造、使用材料、回路設計、
パッケージ、製造プロセス等の最適化と設計審査に重点を置いております。品種ごとに試作品の特性
と信頼性を検証した後、量産に移行されます。
製造の品質管理は製造工程で品質を作り込む活動であり、設備・冶工具・塵埃・純水・ガスや製造
条件の品質管理と、製品のでき映えの品質管理、さらに、これらの品質情報を融合させた品質管理体
制を確立しております。
製品の品質保証は、完成品が規定の機能と信頼性を有しているかを、デバイスごと、ロットごと、
又は定期的に確認する社内での試験・検査と、クレーム処理、品質情報サービス等を通しての顧客サ
ポート活動です。
このように開発・設計から、量産、出荷、実使用まで全ての段階での品質情報をフィードバック、
フィードフォワードし、品質を一層向上させる品質保証活動を実現しております。開発、設計から、
出荷、実使用に至る品質保証系統図を、図Ⅱ−2に示します。
イ サ ハ ヤ 電 子
段階
市場
営業部門
(特約店)
設計技術部門
製造部門
品質保証部門
製造管理部門
資材部門
総務部門
市場調査
開発・設計
開発計画
開発、設計、設計審査
材料・部品認定
形式試験
試作、特性評価
プリプロダクション
製造標準制定
プリプロダクション
初期流動管理
量産移行
顧客
受注
材料・部品購入
製造計画
製造指示
材料・部品受入
量
アセンブリ
出
製品保管
出荷管理
荷
受注、出荷指示
顧
梱包・発送
客
品質クレーム、品質情報
調査、解析、対策
実使用
報告、処理
情報の流れ
製品、材料、部品の流れ
図Ⅱ−2 品質保証系統図
教育・研修
品質情報・歩留向上・故障解析・品質改善・不具合処置
規格・図面・仕様書の管理
品質保証検査
環境の管理
工程内
品質管理
設備・計測機の管理
産
最終検査
2.開発段階での品質保証
目標とする品質・信頼性を確保するため製品開発を次の手順により実施しております。
市場調査に基づく新製品の需要予測から、新製品の要求品質レベル・機能・信頼性、製造上の
問題、コスト等に関する問題を検討して開発計画を立案します。
開発計画を基に新製品の開発においては、新理論や技術、着想などを積極的に取り入れて設計
や技術開発を行いますが、新技術のレベルに応じ、以下の三つの開発レベルを設定しております。
レベルⅠ:
新設計基準、新材料、新プロセスによる新規開発品。
レベルⅡ:
既存量産品からの設計変更あるいは既存プロセス、パッケージ、材料、装置の一部変更。
レベルⅢ: プロセス・パッケージが既存あるいは品質的にほぼ同等とみなせ、設計的な変更も軽微であるもの。
これらの設計の妥当性を確認のため、設計審査を実施し、次に新製品を試作します。この段階
において、特性、定格、信頼度が設計目標を満たしているかどうかを確認するため、形式試験を
行います。形式試験で得られた結果をもとに、設計・技術部門、品質保証部門が十分検討し、不
具合を発見した場合には、その不具合状況の調査、故障解析を行って不具合発生の原因を明確に
し、試作品の改善を行います。形式試験に合格するとプリプロ移行会議にて、設計、製造、品質
に関する問題点を検討し、問題のないことを確認した上で、次のステップであるプリプロダクシ
ョンに移行します。
プリプロダクションの段階で製造された製品の品質を確認するため初期流動管理を実施しま
す。初期流動管理とは製造開始直後の一定期間、特別の管理体制をとり、収集する品質情報の密
度をあげ、そこで検出された不具合に対する是正措置とその確認を迅速に行うことです。また、
この段階において量産を行うために必要な標準類を整備し、作業者に対する教育・訓練を実施す
ると共に、材料・部品の調達体制や製造に必要な設備・冶工具の整備を行い、量産段階に移行し
ます。
3.量産段階での品質保証
量産段階では、生産計画に基づき、製造ラインにおいて連続生産を行います。材料・部品、製
造工程、環境、設備等に対する管理を行うとともに、半製品や完成品に対して中間検査や最終検
査、品質保証検査を実施して品質の確認を行っております。量産品の品質保証体制を図Ⅱ−3に
示します。
高品質の製品を経済的に製造するためには、製造工程で品質を作り込むことが必要です。こ
のために、製造部門は作業標準を定め、主要な製造条件について管理項目を決めております。
作業標準に基づいて作業を行い、品質に重要な影響を与える製造条件についてはチェックシー
トによる点検や、必要な特性値管理により、品質の維持・向上を行っております。
また、製造設備・装置の日常点検や定期的な精度管理を実施して、異常の早期発見や予防保
全に努め、均一かつ高品質な製品の製造に努めております。
製造工程においては、インプロセス品質管理として作業部門でのでき映え管理と品質管理部
門での品質の計量値管理を実施しております。それにより得られた品質情報を前工程にフィー
ドバックし、品質の向上を図っております。
最終検査では、電気的特性を全数について行っております。また、製品品質の安定化を計り、
設定品質に達していないものの検出、除去を目的としてスクリーニングを実施し、これらのデ
ータを品質改善に役立てております。
最終検査を終了した完成品について、品質保証検査を実施し、製品を使用する立場に立って
総合的に品質を確認します。品質保証検査は、ロットごとの検査と定期管理試験があり、ロッ
トごと検査ではロットごとに合否の判定を行います。この検査は外観、電気的特性、熱的・機
械的環境、耐久性等の試験からなります。定期管理試験では一定期間ごとに抜き取りにより信
頼性を確認しております。この試験は、電気的特性、熱的環境・機械的、長時間の耐久性試験
からなります。品質保証検査の結果得られた品質情報は、品質の維持・改善のため関連部門に
迅速にフィードバックされるとともに、市場での品質を予測するためにも用いられます。
材料・部品の品質管理
製造の品質管理
製品の品質保証
受入検査
図面・標準類管理
環境管理
品質モニタ検査
設備・計測器管理
製造ロット管理
品質保証検査
定期管理試験
良品解析
良品納入協定
SPC
組立
購入部品・材料
工程
品質・歩留向上
変更管理
最終
品質データ解析
保管・出荷管理
倉入
品質保証検査
検査
顧 客
保管
インプロセス品質管理
品質、信頼性の改善
データ収集
故障解析
顧客サポート
是正処置
図Ⅱ−3 量産段階での品質保証体制
苦情処理
品質会議
材料・部品の購入から製品の製造・検査、出荷、顧客における実使用までの品質に関する必要な
情報は、品質管理システムに収集されます。
これらの情報は、統計的品質管理の手法を用いて解析され、その結果は製造部門をはじめ関係部
門へフィードバックされ、品質の維持・向上、歩留り向上に活用しております。
製造工程または製品に異常が発生した場合、異常発見部門が工程異常報告書を発行し、関係部門
で異常原因を調査、検討して対策をとります。工程異常と是正措置の系統図を図Ⅱ−4に示しま
す。
設計、材料・部品、製造方法、設備等を変更する場合は試作品を作り、設定品質の確認、信頼性
の評価を行って問題点がないことを確認するとともに顧客の承認を得て変更を実施します。
また、設計・技術部門、製造部門、営業部門、管理部門、資材部門等のすべての部門に対して定
期的に幹部による品質管理診断を実施し、問題点を指摘して改善するとともに、各部門の品質管
理に対する意識を向上し、品質管理の体制をより完全なものにするための活動をしております。
処置の手順及び内容
担当部門
工程異常発生
発見部門
工程異常報告書発行
品質保証、設計・技術、製造部門
不良解析の実施
工程履歴の調査
不良対策会議
設計・技術、製造部門
他
品質保証、設計・技術、製造部門
再発防止対策及び既製品の処置
設計・技術、製造部門
対策・処置効果の確認
品質保証部門
図Ⅱ−4 工程異常と是正措置の系統図
4.出荷後の異常と是正措置
顧客へ出荷した製品が顧客の受入段階、組立・調整段階、フィールド稼動段階で不具合が生じ
た場合、その原因の追求と必要な是正措置について、品質保証部門が中心となって実施します。
品質保証部門では、営業部門が発行した苦情通知処理票に基づいて、顧客での不具合状況を把握
するとともに、不具合品を各種の測定・解析装置を用いて故障解析を行います。
これらの調査で判明した結果に基づいて技術部門、製造技術部門などの関連部門が協議し、
必要な是正措置をとるとともに、顧客に調査結果を報告します。苦情処理ルートと是正措置の体
系図を次頁の図Ⅱ−5に示します。
顧客
特約店
イサハヤ電子
営業部門
品質保証部門
設計
技術
製造
部材メーカ
受付登録
故障解析
苦情通知処理発行
外観検査
(特急対応)
↓
電気的特性検査
部材不良
↓
不良・故障モード分類
↓不具合品
内部検査
良
調査・解析
↓
品
↓
チップ解析
是正処置
↓
不具合再現試験
報告書作成
↓
良
電気的特性検査
品
原
不
良
因
対
調
策
査
工
程
会
議
解
析
是 正 処 置
NG
内容確認
GO
効 果 確 認
NG
回答
報告書作成
GO
品質情報(月報等)
図Ⅱ−5 苦情処理ルートと是正措置の体系図
5.材料、部品の品質保証
半導体デバイスの高性能、高集積、高密度化に対応し、半導体デバイスの製造に使用する材料、
部品に対する高純度化、高精度化等の要求も年々高まっております。
半導体デバイスのアセンブリ及びパッケージングに必要な、リードフレーム、金属細線、ダイ
ボンド材、パッケージ、成形樹脂等多岐にわたっており、それぞれに最高レベルの仕様、品質が
要求されております。
当社は、新製品開発に対応し、個々の材料、部品ごとに、購入仕様書、図面を設定し、それぞ
れの専門メーカから購入しております。半導体デバイスの要求に合致するよう材料、部品の品質
を確保・向上させるために、以下に重点をおいた品質保証活動を行っております。
・購入仕様を満足する材料、部品の選定又は、専門メーカとの共同開発。
・材料、部品メーカの工場調査とメーカ、工場認定。
・材料、部品品目ごとの認定検査、評価。
・材料、部品の受入検査、又はメーカとの良品納入協定の締結。
・材料、部品の保管、取り扱いにおける劣化防止。
・材料、部品の品質データ収集と異常処置、対策。
・材料、部品の変更管理。
・材料、部品メーカの定期品質保証状況調査と品質会議。
これらの活動の関連を、図Ⅱ−6に示します。
新製品開発計画
購入仕様書、図面の作成
材料、部品の選定、開発
材料、部品の選定検査、評価
材料、部品メーカの工場調査
材料部品の発注
材料、部品の認定
受入検査/良品納入協定の締結
製造工程投入、品質データ収集
変更管理
異常処置、対策と品質向上活動
図Ⅱ−6 材料、部品の品質保証活動
6.設備、計測器の管理と環境の管理
半導体工業は、装置産業といわれるように、装置、設備、計測器等が、常に正常な状態で、必
要な精度内で作動することにより、初めて半導体デバイスの性能や品質の確保と向上が実現しま
す。
設備の管理においては、性能、品質への影響度から、設備ごとに管理基準を設定し、設備と管
理基準に応じて、実施内容や定期点検、日常点検等の頻度を決め、異常の有無、機能、制度の低
下等の調査による予防保全体制を確立しております。点検、検査は、社内、専門メーカ、検査機
関等で実施します。
計測器の精度管理については、購入時の受入検査、使用時の定期検査等により、精度を確認、
校正し、故障や制度の低下等を未然に防止する予防保全体制を確立しております。図Ⅱ−7に計
測器の品質管理体制を示します。
環境が半導体デバイスの品質、信頼性に与える影響は著しいものがあります。製造プロセスレ
ベルに対応し、温度・湿度・塵埃等について管理項目、管理方法、管理基準等を設定し、環境を
維持、管理しております。また製造ラインで使用している純水・ガス・化学薬品等も、比抵抗、
純度等を監視することにより、その品質を維持、管理しております。
国家標準
公立機関
機
電子技術総合研究所・計量研究所
関
法人検査
日本電気製器検定所
機
機械電子検査検定協会他
関
その他の
検査機関
民間検査機関
計測器メーカ
基準器・準基準器
基準器・準基準器
イ
サ
ハ
ヤ
基準サンプル
計
電
子
量
機
汎用小型計測器
基準サンプル
器
自己診断用
テストプログラム
専用又は大型計測器(周辺回路含む)
顧
製
客
品
図Ⅱ−7
計測器の品質管理体制
7.標準類の管理、小集団活動、教育訓練
7.1標準化と標準類の管理
品質管理の仕組み作りは、標準化にあるとの観点に立ち適正な標準の制定を促進し、
当社の標準体系に基づき、標準の遵守の徹底を図っております。
・会社/社内規定・規則・細則
組織、人事、管理、業務を遂行するにあたっての規則を定め、組織的展開をしており
ます。
・社内標準
製品、設計、材料、検査、設備管理、包装規格、作業、検査、設備保全要領、製作
図等を定め、一元的管理をし、且つ標準の遵守を図っております。
・社内設計要覧/執務要項
設計基準類・手配事項等をマニュアル化し設計での品質の作り込みを促進し、また
業務手続き等を定め、自主チェック、うっかりミスの防止を図っております。
7.2小集団活動
総合的品質管理の一環として、同じ職場又は関連職場での自己啓発と相互啓発の場を作り、
職場の問題解決・生産性の向上・安全の確保・売上高の増大などをめざして、互いの英知を
集め、協力して生きがいのある明るい職場作りを狙いとした全員参加の自主的かつ継続的な
活動として行っております。
7.3教育訓練
社員の教育として、社員全員に社内業務に必要な諸事項及び品質に関する一般教育を行っ
ております。また中級コースとして社内で「能力開発講座」を行っております。更に上級コ
ースとして社外の各種セミナー、品質管理講座にも参加し組織的な教育・研修展開を行って
おります。
併せて、定期的な会社行事である品質月間、日常の小集団活動等の機会を利用して品質意
識の高揚も図っております。