デンタルインプラント周囲顎骨における生体ア パタイト

Title
№14:デンタルインプラント周囲顎骨における生体ア
パタイト(BAp)結晶配向性
Author(s)
小髙, 研人; 笠原, 正彰; 木下, 英明; 松永, 智; 吉成,
正雄; 井出, 吉信; 阿部, 伸一
Journal
URL
歯科学報, 113(4): 429-429
http://hdl.handle.net/10130/3148
Right
Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College,
Available from http://ir.tdc.ac.jp/
歯科学報
Vol.113,No.4(2013)
429
№13:わが国における切歯・第一大臼歯に限局したエナメル質形成不全(MIH)の実態
田代紋子,櫻井敦朗,今井裕樹,永井宜子,大澤枝里,川上響子,宮島美樹,新居由紀,
中内彩乃,江木勝彦,米倉智子,石岡みずき,本間宏実,荒野泰子,熊澤海道,山下治人,
泉水祥江,米津卓郎,新谷誠康(東歯大・小児歯)
目的:Molar Incisor Hypomineralization(MIH)は
第一大臼歯と切歯に限局して発症する原因不明のエ
ナメル質減形成である。単なる白濁から重篤な場合
には著しい知覚過敏や歯質の実質欠損を呈するとし
て近年報告が散見されるようになった。MIH の発
症率について海外ではいくつかの実態調査が報告さ
れているが,わが国では大規模な調査が行われたこ
とがなく,その実態は不明である。本研究では,小
学生を対象に大規模な MIH の実態調査を行い,発
症率やその重症度を検討した。
方法:千葉県の小学校4校に通学する児童のうち,
121名に対
保護者から本研究に関する同意を得た2,
し,小児歯科専門医が MIH の有無,程度に関する
評価を行った。評価は第一大臼歯と切歯の最大12本
に対し,各々の歯について,0(形成不全なし)
,
1(少なくとも1歯面に,1/3以下の白濁・着色を
認める)
,2(少なくとも1歯面に,1/3以上の白
濁・着色を認める)
,3(実質欠損を認める)
,とい
う基準でスコアを記録した。得られたスコアのう
ち,1本以上の第一大臼歯に形成不全を認める児童
について MIH 有りとし,各児童の歯のうち最大の
スコアを MIH レベルとした。また,各児童の保護
者に対して妊娠中,出産時,乳幼児期に罹った疾患
や生活習慣に関するアンケート調査を行い,MIH
の原因因子について解析を行った。本研究の手法に
ついては,東京歯科大学倫理委員会の承認を受けて
いる(承認番号317)
。
92%につい
成績および考察:対象児童のうち,11.
08%,1
て MIH を認め た。MIH レ ベ ル は0が88.
が9.
13%,2が1.
08%,3が1.
71%であり,30名の
児童に歯の実質欠損を認めた。MIH の性差につい
85%,女児で13.
00%であり,有意差
ては男児で10.
はないものの女児の 方 が 多 い 傾 向 が 見 ら れ た。
MIH 発症に影響する因子について,本研究で行っ
たアンケートから明らかな要因は得られなかった。
しかし,3歳未満よりフッ化物含有ジェルを使用し
ていた児童に MIH レベル2以上を呈する割合が高
く,今後詳細な調査が必要であると考えられた。
MIH は単なる齲蝕と混 同 さ れ や す い が,コ ン ポ
ジットレジンなどによる部分的な修復では良好な予
後が得られにくい。また単なる白濁であっても後に
実質欠損を生じることもある。今後,歯科医師の間
で MIH についての理解と MIH を見極める力を向
上させることが望まれる。
№14:デンタルインプラント周囲顎骨における生体アパタイト(BAp)結晶配向性
小髙研人1),笠原正彰1),木下英明1),松永 智1),吉成正雄2),井出吉信1),阿部伸一1)
1)
2)
(東歯大・解剖)
(東歯大・口科研)
目的:骨を構成するアパタイトはナノ・イオン結晶
子として存在し,その結晶構造は力学的,化学的,
生物学的異方性の極めて強い六方晶をベースとして
いる。近年この生体アパタイト(BAp)結晶の c 軸
配向性が骨の力学機能を支配していることがみいだ
されたことから,骨質解析の重要性に注目が集まっ
ている。我々は大阪大学工学部との共同研究として
有歯顎骨の BAp 結晶配向性解析を行い,有歯顎骨
の皮質骨がナノレベルで歯槽部と基底部の二重構造
を呈することを解明した。一方無歯顎骨では,歯周
囲に特徴的な BAp 配向性が失われ,長管骨に類似
した一軸優先配向性を有することを第294回東京歯
科学会で報告しており,歯を介して加わる機能圧の
喪失にともなう変化であることを考察している。こ
れに対し,歯科インプラントは顎骨に直接埋入さ
れ,荷重は皮質骨および海綿骨に直接伝達,分散さ
れることから,顎骨に与える生体力学的影響は極め
て大きいと考えられる。しかし,いまだインプラン
ト周囲骨の精細な骨質解析と力学機能の評価はほと
んど行われていない。
そこで今回我々は,インプラント周囲顎骨におけ
る荷重支持機能の評価を行うことを目的として,
デンタルインプラントを有する顎骨と無歯顎骨の
BAp 結晶配向性計測を行った。
方法:本実験では,ビーグル犬の上顎骨第4前臼歯
部および第1・第2後臼歯部の無歯顎骨,デンタル
イ ン プ ラ ン ト 埋 入 後9ヶ 月 の 顎 骨 を 試 料 と し,
BAp 結晶配向性の測定を行った。試料の作製にあ
たり,ビーグル犬上顎骨をレジン樹脂にて包埋後,
イ ン プ ラ ン ト 体 を 含 ん で 切 断,研 磨 を 行 っ た。
BAp 結晶配向性の計測には微小領域 X 線回折装置
を使用し,(002)と(310)の X 線回折ピークを用
いて回折強度比を求めることにより算出した。
結果および考察:インプラントを有する顎骨と無歯
顎骨の双方において,近遠心方向に対する比較的強
い配向性が認められた。一方インプラントに近接す
る皮質骨は,無歯顎骨と比較して軸方向に対する優
先配向性が認められた。インプラント周囲顎骨の配
向性分布は,比較的有歯顎骨の配列に近似している
ことから,デンタルインプラントを介して加わる機
能圧が顎骨内部に分散する荷重伝達経路が構築され
ており,これを支持する BAp 優先配向性を獲得し
たと考えられる。
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