Global Aquaculture Alliance(世界水産養殖同盟)

世界水産養殖同盟
Global Aquaculture Alliance(GAA)
(仮訳)鹿児島大学名誉教授 岡本嘉六
世界水産養殖同盟のホームページには、世界各国語の翻訳があり、日本語も選択できる。し
たがって改めて翻訳しないが、外注翻訳のためカタカナ語が多く、解釈に苦しむ部分は「誤
訳」と考えて英文を参照すべきである。
指針となる原則
Guiding Principles
世界養殖連盟(GAA)は、養殖製品の飼育、処理および流通を通して環境・社会責任を
推進するために存在している。GAA は、したがってその加盟員と関連会社が以下のことを
実行することを期待する。
責任ある水産養殖のための指針となる原則
単独または集団で養殖に従事する企業や個人は、
1. 養殖事業の環境、経済、社会的な持続可能性を達成するために必要かつ実用的な方
針、規則および手順の開発と実施において、国、地域および地元の当局と協力、連携しなけ
ればならない。
2. 許容可能な生態学的影響、とくにマングローブやその他の環境上重要な動植物の不
必要な破壊を避ける長期的に持続可能な事業に適合する特性がある養殖施設の場所のみを
利用しなければならない。
3. 新鮮な地下水源を含め水源を保全する方法で養殖施設を設計し、運営しなければな
らない。
4. 表流水と地下水の水質に対する排水の影響を最小限に抑え、生態学的な多様性を支
える方法で養殖施設を設計し、運営しなければならない。
5. 餌の使用において継続的改善に努めなければならず、治療薬の使用は適切な規則に
従い、必要な時だけ一般常識と最高の科学的判断に基づいて慎重に使用しなければならない。
6. 養殖種の間、地元の養殖施設間および地理的領域にわたる病気の発生を避けるため、
必要なあらゆる合理的な措置を講じなければならない。
7. 外来種の許される導入が合理的かつ許容可能な方法で、適切な規則に従って行われ
ていることを確認するため、あらゆる合理的な手順を講じなければならない。
8. 養殖と環境の両立性を改善するため、研究・技術・教育活動において業界内の他の
人々と協力しなければならない。
9. 地域経済の多様化、雇用の促進、税収と社会基盤への貢献、ならびに漁業、林業お
よび農業の技能のために、地域の経済と地域社会の生活の利益に貢献しなければならない。
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主なプログラム
Key Programs
世界養殖連盟(GAA)は、養殖魚介類のための指導的規格設定機関である。主な活動に
は、養殖業最善慣行(Best Aquaculture Practices)規格の開発、養殖業リーダーシップに
関する世界的展望(GOAL)会議の組織化、および世界水産振興誌(Global Aquaculture
Advocate)の発行とウェブサイトの維持を含む。
養殖業最善慣行認証(BAP)
BAP 規格は、多様な利害関係者の規格監督委員会の下の技術委員会によって開発され、
養殖施設における持続可能性と食品の安全性を定める定量的規格を提供している。BAP 規
格は、様々な魚種と甲殻類を飼育するために、飼料工場、加工施設、孵化場および養殖場に
対して現在利用されている。
世界的展望(GOAL)年次会議
世界養殖連盟(GAA)の養殖業リーダーシップに関する世界的展望(GOAL)マーケテ
ィング会議は、養殖魚介類の世界的供給と需要に関して指導的な魚介類の購入業者、生産者
および供給者が専門的情報更新のため集まる戦略的イベントである。このイベントは、世界
的活動家が問題を率直に議論し、解決策の合意を図るフォーラムが行われる。
水産養殖のコミュニケーション
世界養殖連盟(GAA)は世界水産振興誌(Global Aquaculture Advocate)を発行し、
過去の記事を保存保管するウェブサイトの維持を行っている。ウェブサイトや GAA
eUpdate ニュースレターは、水産養殖における GAA のプログラム、方針および重要な役割
を加盟員とその他の人々に送り続けている。
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BAP への資金提供者
BAP Founding Supporters
養殖業最善慣行(BAP)の初期の進歩の大半は、プログラム立案者、理事会および関連
する支持者の多大な努力によって達成された。さらなるプログラムの拡大に伴う開発コスト
を支援するために追加資金が必要となった。これらの過渡的資金を調達するため、BAP は
先見の明がある業界のリーダーを対象に資金調達プログラムに着手した。以下の養殖や魚介
類の企業は、それぞれ、1 万ドルの寄付を通じて BAP の不可欠な活動の拡大の寛大な後援
者となった。
訳注:基本的に米国の養殖業界を中心としているが、アジアや南米との企業統合を進め
ており、さらに、生鮮物流通業界や飲食店チェーンを巻き込んで全部で 12 社が当初出資者
に名前を連ねている。認証規格体系を開発・維持するために、生産部門だけでなく、流通業
および食品サービス業を巻き込んで客観性、透明性を高めようとしたものと考えられる。
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餌市場と生鮮市場の両方への養殖エビを提供している。当社の
1
Scientific Associates, LLC
ブランド、PROformance Shrimp と PureShrimp は、環境に優
Indiantown, Florida, USA
しく、持続可能で、化学物質を使っていない
2
H & N Foods /
Expack Seafood Inc. ,
USA
顧客に最高品質、持続可能で、遡及追跡可能な水産物を提供す
る一方で、経済的整合性と最高水準の顧客サービスと忠誠心を
維持する一つの展望を持つ 2 つの会社
当社は垂直統合型のタイ連合グループの一部であり、現地の品
3
Chicken of the Sea Frozen
質管理技術者の監督を通して責任を持って生産された高品質の
Foods
魚介類の世界的供給の強化に努めている。あらゆるレベルでの
California, USA
日々の卓越性が目標である。
6
10
12
当社は米国市場に高級食料品を供給する垂直統合型食品企業ル
Rubicon Resources
California, USA
ビコングループの本部である。北アメリカにおける主要な輸
入・流通業者である。
Darden Restaurants
Florida, USA
Seajoy
Honduras/Ecuador
当社は世界最大のカジュアルなレストラン企業である。Red
Lobster、Olive Garden、Bahama Breeze および Smokey Bones
Barbeque & Grill 名の店舗が世界に展開している。
当社は、高品質の養殖エビや魚を年間を通して提供することを
約束する統合された、地理的に多様な養殖グループである。
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BAP 規格の開発
BAP Standards Development
水産養殖産業の責任ある慣行を促進するため、世界養殖連盟(GAA)は養殖施設のため
の養殖業最善慣行(BAP)規格の開発を調整している。BAP 規格は、幅広い利害関係者の
委員から成る規格監督委員会(SOC)の指導の下で動物種別技術委員会を通して開発・更
新されている。
規格に着手するため、 一連の規格草案を正しく記述する技術委員会を設置するため、
SOC は GAA の規格取りまとめ役と一緒に活動する。SOC による吟味の後、必要があれば
規格は修正され、パブリックコメントのため 60 日間掲示される。最終草案にするため委員
会はコメントを検討し、実施する前に、SOC および GAA 理事会の承認を受けなければなら
ない。
規格開発過程と BAP 委員会の校正と選定に関する詳細情報。
BAP 規格開発過程(BAP Standards Development Process)
規格監督委員会(SOC)
委員は、業界、環境保全と社会正義の非政府組織、学術および規制当局がそれぞれ 3 分
の 1 を占めるものとする。SOC は、BAP 技術委員会による全ての規格起草を指示し、最終
的規格承認のため GAA 理事会にその勧告を報告する。
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技術委員会
技術委員会は、技術専門家および規格に関心があるか影響を受けるグループの代表者で
構成される。
規格取りまとめ役
SOC およびその他の関係者からの推薦に基づいて世界養殖連盟(GAA)理事会によって
任命された GAA の雇用者である取りまとめ役は、指針委員会の委員長を助け、一般的な規
格の方針および委員の間を調整する。BAP 規格取りまとめ役は、必要に応じて、委員会が
規格草案を準備するのを手伝う。
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BAP 規格
BAP Standards
養殖業最善慣行(BAP)規格は、養殖施設のための自主的認証プログラムにおける環境
と社会に対する責任、動物福祉、食品の安全性ならびにトレーサビリティと取組んでいる。
BAP 認証は、責任ある養殖の最も重要な要素を定め、それらの慣行の遵守を評価する定量
的な指針を提供する。
BAP プログラムは孵化場と飼料工場から養殖場と加工工場までの施設の種類毎の規格
について説明している。鰓魚と甲殻類の生産のための複数種の孵化場の規格の最近の追加は、
4 つ星認定のための追加の機会をプログラムに開いた。
BAP 複数種養殖場の規格は、別の BAP 規格が適用されるケージ飼育サケ科魚類を除い
て、鰓魚と甲殻類のための全ての種類の生産システム適用できる。複数種の規格は養殖シス
テムに焦点を当てるが、該当する場合には種に関連する固有の側面を維持している。
海老、サーモン、ティラピア、バサ、アフリカナマズ、ムール貝の範囲に加えて、BAP
認証は、シーバス、タイ科、スギ、ブリ属、マス、マハタ、バラマンディ、アカイサキ、コ
イ、ヒラメ、ターボット、シマスズキ、カニ、淡水エビおよびザリガニを含めそれだけに限
定されない種の生産設備に利用できる。
広範な利害関係者の意見と規格監督員会(Standards Oversight Committee)の監督を
受けた技術委員会による起草後、BAP 規格はその他の認証システムのものよりも包括的と
なる。個々の規格は施設の種類によって異なるけれども、全ての BAP 規格は、地域社会と
従業員の関係、生物多様性の保全、土壌および水の管理、ならびに薬物と化学物質の管理と
取組んでいる。
現在の BAP 規格と指針をみるには、下記をクリックして下さい。これらの文書は、情
報提供目的のみのため提供されている。BAP 認証を申請するには、認証手順のページ
(Certification Process )の情報を確認してください。
BAP 業界類加工・包装施設の規格(BAP Seafood Processing/Repacking Plant
Standards)(PDF)
鰓魚と甲殻類の生産のための BAP 規格(BAP Finfish and Crustacean Farm
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Standards )(PDF)
免責条項: 以下の翻訳文書は、英語が流暢ではない顧客の便宜のために提供されてい
る。これらの翻訳は、規格の英語原文に由来する。解釈に関する英語原文と翻訳版との間の
不一致が発生した場合、英語原文は監査と適格性が準拠する公式版である。
(以下省略)
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BAP 認証施設
4 つ星生産グループ(4 Star Production Group)
BAP 施設
動物種
Nhatrang Seaproducts Co. - F17 Group - Vietnam
エビ
National Aquaculture Group - Kingdom of Saudi Arabia
エビ
Trang Corp Group - Vietnam
エビ
Northern Harvest Sea Farms Group - Canada
サケ
Saota Foods JSC (Fimex VN) Group - Vietnam
エビ
C.P. Vietnam Corporation Group - Vietnam
エビ
Seafresh Industries Public Group - Thailand
エビ
Pakfood Group - Thailand
エビ
Thuan Phuoc Seafood & Trading Group - Vietnam
エビ
Charoen Pokphand Foods Group - Thailand
エビ
UTXI Aquatic Products Processing Group - Vietnam
エビ
Stapimex Group - Vietnam
Zhanjiang Guolian Aquatic Products Group - China
エビ
エビ
Minh Phu Seafood Group - Vietnam
エビ
Thai Union Frozen Group - Thailand
エビ
3 つ星生産グループ(3 Star Production)
2 つ星生産グループ(2Star Production)
認証された加工施設(CERTIFIED PROCESSING PLANTS)
認証された包装施設(CERTIFIED REPACKING PLANTS)
認証された養殖施設(CERTIFIED FARMS)
認証された孵化場(CERTIFIED HATCHERIES)
認証された飼料原料(CERTIFIED FEED MILLS)
認証施設の検索
訳注:東南アジアから大量の養殖エビが日本に輸入されているが、米国が中心となって
推進している BAP 認証を受けている可能性が大きい。日本の食卓がここでも米国の御利益
に預かっている訳で、こうした状況で、日本が新たに GAP 認証システムを立ち上げて東南
アジアへ普及しようとすることは可能なのか?
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FAO:
アジア太平洋地域における水産養殖に適用可能な規格と認証の体系の定量的査定
A QUALITATIVE ASSESSMENT OF STANDARDS AND CERTIFICATION SCHEMES
APPLICABLE TO AQUACULTURE IN THE ASIA–PACIFIC REGION
附属文書 3.業界によって推進された認証規格体系
Annex 3. Schemes promoted by industry
世界水産養殖同盟(GAA: GLOBAL AQUACULTURE ALLIANCE)と水産養殖認証委員会
(AQUACULTURE CERTIFICATION COUNCIL)
世界水産養殖同盟(GAA)は、大半が米国に基盤を持つ水産養殖業者や一般的食品事業
の広範な会社(設立業者 59 社)によって 1997 年に設立された国際的な非営利貿易協会で
ある。GAA の使命は、世界の食料需要を満たすための環境に責任を持つ水産養殖を推進す
ることである。GAA の展望は、環境と地域社会の必要性に適した水産養殖システムを開発
して奨励し、システムの効率を改善し、効果的かつ調和のとれた政府の規制と貿易政策を推
進し、持続可能な水産養殖の重要性を広く普及することである。その目標を達成するため、
GAA は、「環境にとって安全で健全な水産物を社会的に責任ある方法での栽培を奨励し」、
「水産養殖業界の効率的かつ長期的持続可能性」のため、「責任ある水産養殖プログラム
(Responsible Aquaculture Program)」を策定した。責任ある水産養殖プログラムは、水
産養殖に従事する会社と個人が環境、経済および社会的な持続可能性の達成に向けて採るべ
き活動の方向性を述べた「責任ある水産養殖の指針となる原則」の策定とともに始まった。
このプログラムの一部として、GAA は「責任あるエビ養殖のための慣行規範」も公開し、
それは慣行規範 10 ヶ条とともに、エビ養殖の基本的事項、環境と社会的問題および管理を
カバーする「責任あるエビ養殖の検討」も含んでいた。慣行規範の公表に続いて、GAA は、
責任あるエビ養殖のための一連の定量的な BAP 規格も開発した。
慣行規範は、技術委員会の Claude Boyd 博士とその他の委員によって準備された(GAA
ウェブサイト)。技術委員会は、各 BAP 規格について一つあり、技術的専門家および規格
に関連または影響される利害関係者代表によって構成される。技術委員会に含まれる個人と
組織は、GAA によって直接招聘され、各技術委員会について、国の業界(4 名)、供給業界
協会(2 名)、学術・規制・金融グループ(2 名)、自然保全 NGO(2 名)、および GAA 職
員(2 名)の代表者で構成される。技術委員会の役割は、規格を作成して吟味し、委員以外
の利害関係者による意見を考慮に入れることである。委員会への参加費用は、委員自身が負
担している。GAA 規格開発調整者は、委員会活動を調整するため委員長と協力している。
BAP 規格に対する適合性査定は、社会的および環境上の責任、食品の安全性およびト
レーサビリティーを確保する慣行を適用する水産養殖業を認証する使命を課せられた組織
である水産養殖認証委員会(ACC)によって全面的に実施されている。最近まで、GAA と
ACC の結びつきは非常に強く、GAA 委員長が ACC 委員長を兼務していたが、両組織の独
立性を高める方向に向けてそれは解消している。ACC は、全世界で ACC 認証員の訓練と「認
定」を行っている。認証員は、自営業者、会社、協会あるいは機関の代表である。ACC 認
証員は、認証活動において利益相反があってはならないとされている。認証員の訓練課程は
5 日間続き、GAA BAP 規格の 3 セット全て、エビの孵化、養殖場および処理工程について
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参加する。栽培者グループの認証許可には面談が行われるが、認証は一般的に個々の事業者
に対して発行され、したがって、小規模生産者による認証体系取得が促進される。BAP 登
録票は GAA に属し、BAP 認証施設での利用は ACC の許可による。登録票は、小売りの包
装に示すことができ、BAP 認証施設は消費者に認知される。
GAA/ACC 認証規格体系は供給網を通した(すなわち、孵化場から、栽培施設、処理場)
認証を求められないが、3 つ星認証は、GAA 規格を満たす施設における孵化、育成および
処理を経た製品のみに利用できる。
ACC ウェブサイトによると、現在の BAP 認証施設には以下が含まれている。
● 3 つ星認証は 6 ヶ所(4 ヶ所はラテンアメリカ、ベトナムとマダガスカルが各 1
ヶ所)
● 処理施設 52 ヶ所(アジア 46 ヶ所、アメリカ 5 ヶ所、マダガスカル 1 ヵ所)
● 栽培施設 38 ヵ所(アジア 3 ヶ所、アメリカ 33 ヶ所、マダガスカル 2 ヵ所)
● 孵化場 20 ヵ所(アジア 3 ヶ所、アメリカ 15 ヶ所、マダガスカル 2 ヵ所)
エビの規格に加えて、GAA は、テラピア、アメリカナマズ、パンガシウスについての
規格の開発に向けても活動を始めている。規格は 2007 年 9 月に発行され、2007 年内に ACC
はテラピアとナマズの認証を始め、そしてパンガシウスも可能性がある。GAA は、エビの
処理規格の範囲をその他の水産物に広げようとしており、規格は意見を求めて草案が公表さ
れている。GAA は、飼料原料の規格も作成中であり、それができれば、4 つ星ラベルも可
能になる(すなわち、ACC 認証事業所における孵化、栽培、餌付け、処理)。
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