第28号

北⼤病院薬剤部 NEWS
薬剤部
広報誌担当(内線5683)
Vol. 28 (2012年08月27日発行)
点眼薬の保存剤について
◆点眼薬の保存剤とは
点眼薬は、有効成分を主薬として溶解または懸濁し、無菌の状態で製造され
たもので、結膜嚢に適用されます。開封するまでは無菌状態ですが、開封する
と細菌汚染の可能性にさらされます。そこで、使用中の細菌感染を防ぐために
保存剤を添加している場合が多くみられます。一般的に、保存剤の多くは細胞
毒性を有するものが多く、角膜上皮障害などの副作用が報告されているものも
あります。主薬や他の添加剤との適合性や滅菌操作での安定性などを考慮した
上で、保存剤は検討されております。さらに、点眼薬の緩衝液のpH、あるいは
対象となる細菌や真菌の種類により保存剤の濃度が決められております。
◆保存剤の種類
1) ベンザルコニウム塩化物
現在日本で市販されている点眼薬の約60%に用いられています。水によく
溶け、室温で長時間安定、熱にも強く、芽胞のない細菌、真菌類に対して広い
抗菌作用があります。しかし、アルカリ性溶液には使用できず、各種陰イオン
とは複合体を形成して沈殿を生じる場合があります。その場合は、パラベン類
(2参照)を保存剤として用いる事が一般的です。したがって、パラベン類
含有の点眼薬とベンザルコニウム塩化物含有の点眼薬を同時に点眼すると、沈
殿を生じる可能性があります。
2) パラオキシ安息香酸エステル(パラベン)類
約30%の点眼薬に用いられています。水に溶けにくく、アルコールに溶け
やすく、化学的に安定で加熱滅菌にも耐えます。広範囲の微生物に対して
殺菌、発育阻止作用があります。
3) その他
クロロブタノール、クロルヘキシジングルコン酸塩、ポリドロニウム等
◆保存剤の影響
点眼薬中の保存剤が角膜上皮に傷害を与えることについての研究報告は
数多くあります。臨床的にはびまん性表皮層角膜炎といった軽度のもの
から、角膜びらん、遷延性角膜上皮欠損など重篤なものもあります。正常
な涙液動態を示す場合、通常の用法・用量の範囲ではほとんど影響を与え
北大病院薬剤部ホームページ
http://www2.huhp.hokudai.ac.jp/~pharm-w/
な い と の 報 告 も あ り ま す が、頻 回・長 期 使 用 に よ り、角 膜・結 膜 へ の
ダメージや涙液動態の悪化を生じる可能性が指摘されています。また、
ベンザルコニウム塩化物過敏症などの保存剤によるアレルギー症状の報告も
知られており、適宜、保存剤無添加の目薬を選択する必要があります(表1
参照 )。コンタ クトユーザ ーにおいては、ソフト コンタクト レンズや酸素
透過性ハードコンタクトレンズを装着したまま点眼すると、保存剤がレンズに
吸着してレンズが変色または、角膜上皮障害を起こすことがあります。保存剤
は角膜に影響を与えない濃度で添加されてはいるものの、レンズに吸着し
蓄積・濃縮され、レンズ自体が変性したり、接触時間が長くなるために角膜
上皮障害が懸念されます。
◆保存剤無添加の点眼薬 -製剤的工夫-
ユニットドーズ点眼液
1回分の薬液が封入された点眼薬。通常の点眼に比べコストが高く
なりますが、1回ごとの使い切りにて衛生的に使用できます。指先
が不自由な患者さんには使用が困難な場合もあります。
マルチドーズ点眼液
点眼容器にメンブランフルターを組み込んだもの。特殊な弁と二重容器を組み
合わせた複雑な構造。防腐剤を含まずに反復使用を可能とし、ユニットドーズ
のコストの問題を解決するものとして開発されました。
表1. 院内採用のベンザルコニウム塩化物、パラベン類 無添加の点眼薬
パピロックミニ点眼液0.1%(免疫抑制薬)
ユニットドーズ点眼液
ヒアレインミニ点眼液0.3%(角膜治療薬)
ガチフロ点眼液0.3%、クラビット点眼液、
無添加
0.5%トスフロ点眼液0.3%(抗菌薬)
デュオトラバ配合点眼液(プロスタグランジンF2α関連薬)
ポリドロニウム含有
コンドロン点眼液1%(角膜治療薬)、
ネオシネジンコーワ5%点眼液(交感神経刺激薬)、
クロロブタノール含有
鍵山
Staff Interview
明子
午前は調剤室業務、午後からは11-1病棟(眼科・腫瘍内科)
で薬剤管理指導業務(病棟業務)を行っています。眼科は手術
中心で入院日数も短い病棟のため、薬剤師としてどう関わって
いけるか、試行錯誤しながら模索しています。少しでも患者
さん、医療スタッフの助けになれるよう、精進していきたいと
思います。
ご意見、ご感想をお待ちしています
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