2016(平成 28)年 4 月 1 日発行 Ver.6.0 発⾏:北海道⼤学 環境健康科学 研究教育センター 研究代表者:岸 玲⼦ みなさん、こんにちは!いつも研究にご協⼒いただき、ありがとうございます! 今回は、⾝近なものに使われている有機フッ素化合物と、⼦どもの発達への影響についてご紹介します。 胎児期の有機フッ素化合物と発達の関係 有機フッ素化合物 (PFOS,PFOA など)とは? ⻭みがきのフッ素は⼤丈夫? 有機フッ素化合物とは、フッ素と炭素を含む化学物質で、 はっ すい ⻭科で使われるフッ素は「無機フッ化物 はつ ゆ (フッ化ナトリウム)」で、有機フッ素 強い撥水(防水)性・撥油性があります。水・油・汚れを 防止するコーティング剤として便利なので、 家庭用品や産業分野で大量に使われています。 ⽇⽤品に使われている有機フッ素化合物 はっ すい ざい 化合物とは構造も性質も異なり、安全性 が確かめられています。 はつ ゆ ざ い 撥水剤・撥油剤として、食品の包み紙や箱のコーティング、調理器具の焦げ付防止コー ティング剤、防水スプレーにも使われています。食品や水などを通じて体の中に取り込 まれた有機フッ素化合物は体の外に排出されにくいので、少しずつ蓄積されていきます。 健康への影響 本来自然界には存在しなかった有機フッ素化合物が、世界の 様々な地域の河川や海、動物や人の血液から確認されました。高い残留性を懸 念して、2009 年に PFOS の製造が禁止されるなど、対策がなされてきましたが、 規制以前に排出されたものは残っています。有機フッ素化合物が健康に与える 影響についての研究はまだ少なく、わかっていないことが多くあります。 フッ素系撥⽔剤 フッ素系ウレタン樹脂 などと成分表⽰されています。 調 べ た こ と *ベイリー発達検査とは、⼦どもの運動・⾔語・社会性などについて総合的に発達を確認する⽅法です。 北海道スタディでは、胎児の体や脳が作られている期間(妊娠中)の 有 機 フ ッ 素 化 合 物 が 、 生 後 6 か 月 の 子 ど も の 発 達 に 与 え る 影 響 に つ い て 調 べ ま し た 。 方法:①妊娠中に採取した血液に含まれる有機フッ素化合物の濃度を調べました。 ②ベイリー発達検査*という方法を用いて6か月の幼児の発達について調べました。 わ か っ た こ と 最も濃度が高いグループは、発達の得点が他よりも低い結果に ①札幌は世界的にも汚染レベルが低い結果でした。 ②有機フッ素化合物濃度が高いほど、生後6ヶ月の女の子の 発達に影響を与える傾向がみられました。 しかし、今回調査できた人数(約 170 人)は、発達に与える影響を 詳細に確認できるほどの規模ではありませんでした。 Goudarzi et al., Science of the Total Environment .(2016) ◆今後の研究 日常生活で取り込むわずかな量でも、 有機フッ素化合物は子どもの成長を遅らせる可能 性が示されました。有機フッ素化合物は規制されて いる PFOS,PFOA 以外にも多くの種類があります。 様ざまな有機フッ素化合物が健康に与える影響を 明らかにするためには、乳幼児期から学童期まで 発達に関する調査を続けていく必要があります。 ベ イ リ 発 達 検 査 の 得 点 高い 血液中の有機フッ素化合物の濃度 ◆ 日常 生活 で 気を 付け る こと フッ素加工のフライパン ⇒ 空焚 きや 強 火調 理を 避 ける 。 食品のレンジで温め ⇒ 陶器 の器 に 移し てか ら 温め る。 今回の有機フッ素化合物と健康の研究を行ったホウマヌ・グウダルジ先生はイ ランの首都、テヘラン出身の外国人特別研究員です。イランでは内科医でしたが、 北海道大学に留学し博士号を取得後、2013年4月から当センターで研究して います。「医師として科学者として子どもの健康に関わる仕事ができてとても嬉 しい」とホウマヌ先生は流暢な日本語で話されました。 学術交流・セミナー WHO CC(世界保健機関研究協力機関)認証式開催 当センターは「環境と健康分野における化学物質による 健康被害の予防に関する世界保健機関研究協力機関」に 指定されました。 平成 27 年 11 月 16 日に WHO 西太平洋地 域事務局より事業統括部長の葛西健氏と医療環境地域コ ーディネーターの Nasir Bin Hassan 氏が来学され、北海 道大学百年記念会館で認証式を開催しました。 (写真右上) 認証式に続き北海道大学サステナビリティ―ウィーク 2015 の企画の一つとして国際シンポジウム『環境化学物 質のハザードと人の健康障害の予防』 が開催されました。 多くの市民の皆さまにご参加頂きまして、ありがとうご ざいました。 翌日には、今後の連携活動について打合わせ会議を行い ました。皆さまにご協力頂いた研究の成果をアジアの 人々の健康向上に向けて活かしていきます。 (写真右中) 第 18 回ソウル大学校-北海道大学ジョイントシンポジウム 「化学物質ばく露による健康影響」に関する分科会開催 北海道大学はソウル大学校とのジョイントシンポジウ ムを毎年開催しています。当センターは昨年度より、 ソウル大学校公衆衛生大学院と、化学物質曝露による 健康影響についての分科会を企画しています。今年度 は平成 27 年 11 月 27 日にジョイントシンポジウム及び 分科会がソウル大学校で開催され、当センターからは 岸玲子他 2 名が参加して情報交換を行いました。 (写真右下) お知らせ お子様向けの小冊子を作成し ました。 『謎解き Book』と題し、名探 偵が、からだと健康の謎を解い ていきます。 9歳以上の方に順次お送りし ていますので、お子様と一緒に 楽しんでください。 第2次性徴の調査が始まります 環境中の化学物質が健康に及 ぼす影響は、成長に応じて続け て調べていくことで解ってく ることが多くあります。 身長と体重および第二次性徴 に関する調査票をお送り しますので、ご協力を お願いします。 環境健康科学研究教育センター:http://www.cehs.hokudai.ac.jp/ 北海道スタディ:http://www.cehs.hokudai.ac.jp/hokkaidostudy/ 研究成果「ひろば」 :http://www.cehs.hokudai.ac.jp/hiroba/ リニューアル しました!
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