頭痛薬

頭痛薬
A.最初の情報提示
25歳女性。職業は新聞記者。毎日、昼間は警察や市役所を廻って記事にする内容を取
材し、午後7時ごろから朝刊に間に合うように最終の午後10時過ぎまでコンピュータの
前に座って記事の内容を考えている。その為、普段から、肩こりに悩まされていた。本日、
肩こりに加えて、頭に輪っかをはめられ、ギューッと締めつけられるような鈍い痛みの頭
痛がしてきたので良い薬を求めて来局で良い頭痛薬を求めて来局。
B.症状に関する最初のSGD
この患者について、討論してみよう。また、上記に加えてどのような患者情報を聞き取
る必要があるだろうか。重要と思われる項目を 5 項目あげてみよう。
例:1) 併用薬 (病院/OTC) とその使用状況、
2)医療機関受診の有無/基礎疾患、
3)頭痛の状況(種類、程度、部位)、
4)飲酒・喫煙・嗜好品などの具体的な状況、
5)既往歴(過去の類似症状の有無)
<患者のより詳細なシナリオ>(最初から学生には提示せず、上記の最初のSGDで提出
された項目についてのみ、以下から学生に提示する。)
喫煙:なし
飲酒:お酒は弱いほうだが、スタッフとの付き合いで週 3〜4 回程度。一回チューハイ1
杯程度
嗜好品:コーヒー(ブラックで一日平均 5〜6 杯)。味の濃い食べ物が好き。
身長 153 cm 体重 42 kg。一昨年に、新聞社の健診で血圧が低いと言われている。典型
的な夜型タイプ。朝食はとらず出社、夜食は必ず食べる。健康食品は特に使用していない
が、時々疲れを感じた時に家にある総合ビタミン剤を服用する。
アレルギー歴、副作用歴で特筆すべきものはない。
また、肝機能、腎機能もいずれも正常である。
症状としては、上記以外の症状は特にない。これまでにも、肩こりを感じたことはあっ
たが、1〜2 日で治っていたので特に気にしていなかった。今回は、3〜4 日程度たっても
症状が改善せず、頭痛まで出たのでちょっと気にしている。
(疾患としては、ストレスおよび コンピュータ操作による肩こりから発した緊張性頭痛を
想定している。)
C.Advisory Questions (または途中で出す課題)
1) 頭痛を訴える疾患にはどのようなものがあるだろうか。その症状、鑑別法は?また、
中でも、特にすみやかに受診勧奨を行うべき疾患にはどのようなものがあるだろうか。
2) 適切な OTC を選択する以外に、患者さんに薬物治療や生活習慣の観点からアドバイ
スすべきことはないだろうか。
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3) 患者さんが訴えている症状以外に関して、症状の有無を確認すべきものはないだろ
うか。
4) 本症例では、受診勧奨の必要性についてはどう考えたらよいだろうか。
5) OTC の頭痛薬で注意すべき薬物相互作用について、考えてみよう。
6) 選択した OTC で特に注意すべき副作用は?
D.医師への受診勧奨を行う必要のある症例
・
こめかみ付近の痛み、発作的で強い痛み、音、光、騒音などの刺激にも敏感となり
ズキンズキンと脈打つような痛み(片頭痛)
・ ドリルで抉られる様な目の奥の激しい痛み。1~2ヶ月の間、毎日2時間ほど定期
的な痛みが出るケース(群発頭痛)
・ 頭痛の前にふらつき、意識障害、視覚・聴覚の異常、マヒ、嘔吐(脳腫瘍)
・ 脈拍にあわせてズキズキするような痛み、体動により悪化する腹痛(高血圧による
頭痛、原発性高アルドステロン症や褐色細胞腫)
・ ハンマーで殴られたような激しい痛みの後、ガンガンする強い頭痛。意識障害が出
たり、昏倒(クモ膜下出血による頭痛)
・ 前頭部、顔面に痛みがあり眉間やほお骨を叩くと痛い場合も。鼻みず、鼻づまりも
併発(副鼻腔炎による頭痛)
E.A の症例に対する模範的回答例(医薬品の選択、服薬指導など)
症例からの診断:本症例は、緊張性頭痛と考えられる。
薬物療法で用いられる薬としては、解熱鎮痛薬、抗炎症薬、筋弛緩薬、抗不安薬、抗う
つ薬などがあげられる。
1)OTCの選択
「参考:頭痛に使用する薬のリスト」に示す解熱鎮痛薬と、緊張、興奮、イライラ感
への鎮静作用があるブロムワレリル尿素やアリルイソプロピルアセチル尿素を配合し
た薬がベストであろう。
第一選択薬
①ナロンエース(大正製薬):成分;イブプロフェン(432mg),エテンザミド(252mg),
ブロムワレリル尿素(600mg),
無水カフェイン(150mg)
②新セデス錠(塩野義)
:成分;アセトアミノフェン(480mg),エテンザミド(1200mg),
アリルイソプロピルアセチル尿素 8180mg),
無水カフェイン(240mg)
③グレランエース錠(武田):成分;アセトアミノフェン(600mg),
エテンザミド(1000mg),
ブロムワレリルル尿素(400mg),
無水カフェイン(52mg)
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④サリドンエース錠(第一三共):成分;アセトアミノフェン(440mg),
エテンザミド(1000mg),
ブロムワレリルル尿素(400mg),
無水カフェイン(100mg)
2)服薬指導
張性頭痛に対して・・・
筋肉の緊張をほぐすために軽い運動、ストレッチ、マッサージを行う。
入浴や十分の睡眠でリラックスして疲労回復を図る。クーラーなどによる筋肉の冷え
を予防する。
薬服用に際して・・・
必ず、一緒に、添付文書を読んで、重篤な副作用の初期症状説明。
(アナフィラキシー
ショック、スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死症、肝障害、腎障害、
血液障害の初期症)を説明し、初期症状が見られた場合には服用を中止して速やかに受
診するよう指導。
服用の目安・・・・
頓服として服用。ただし2-3日服用しても症状改善が認められない場合、痛みが増
す場合、痛みの部位が変わる、増えるような場合には受診するように指導。
ワルファリンの併用がある場合には上記OTCの販売不可。
服用時期・・・・食後
「参考:頭痛に使用する薬のリスト」
①解熱鎮痛剤
アニリン系・・・・アセトアミノフェン
成分 :サリチル酸系・・・アスピリン、アスピリンアルミニウム、サリチルアド、
サザピリン、サリチル酸ナトリウム
ピラゾロン系・・・イソプロピルアンチピリン
プロピオン酸系・・イブプロフェン
サリチル酸アミド系・・エテンザミド
②催眠鎮静剤成分・・ブロムワレリル尿素
不安緊張状態を沈静させるから鎮痛剤の補助薬として使用される。
アリルイソプロピルアセチル尿素
緊張、興奮、いらいら感への鎮静作用がある。
③鎮痛補助成分・・・無水カフェイン
血管緊張(収縮)作用を発現し、頭痛を除く。
④制酸剤・・・・・・メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
アスピリンなどによる胃炎に対する制酸作用、炭酸ガスを生成
しないし、便秘も起こさない。
炭酸マグネシウム
制酸作用は緩和。胃酸を中和する際に炭酸ガスを発生し、
大量では下痢
⑤漢方成分・・・・・地竜湯
熱を下げ、悪寒をとめる作用。小児にも使用できる。
⑥ビタミン剤・・・・ビタミンB,C
消耗によるビタミンの補給
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