東北オープンアカデミー 2015年度 第一期 開催報告書 2 015 . 9 最 終 版 く に 故 郷 づ くりを はじ めよう 「故郷」という言葉は、自分が生まれ育った場所、 あるいは日本の原風景のような田舎を連想させます。 しかし、これからは自分たちの手で あたらしい『故郷』を つくっていく時 代 で す。 新天地を求め動く人、生まれ育った場所を再構築する人、 都市と地方で複数の居場所を持つ人。 多様な形で故郷を持つ時代に、誰と、どこで、何をしていくのか。 動きはもうはじまっています。 く に さあ、あたらしい故郷づくりをはじめませんか。 東北オープンアカデミーとは 東北オー プ ン ア カ デ ミ ー は 、 地 域から日本の未来をつく る 社 会 実 験 プ ロ ジ ェ ク ト で す 。 所属や立場の垣根を越 え た 人 々 が 東 北 に 集 結 し 、 より豊かな未来のかたちを 探 り 、 そ れ を 実 現 し て い き ま す 。 カンファレンス 未 来 の 可 能 性を 持ち帰る 各 地で 2 泊 3日のフィー ルドワークを 終 えた 参 加 者 や オーガナイザ ー が 、一 同 に 集 結します。そ れ ぞ れ の アイデ ア や 提 案を持ち寄り、次 なるアクションを共 フィールドワーク 未 来 を つくる 現 場 に 行く 東 北 オープンアカデミー にメンバ ー 登 録し た 1 , 0 0 0 人 が 未 来 を つくる 現 場 で 活 躍 す るリー ダ ー( オ ー ガ ナ イ ザ ー )のもとに 集まります。ともに 現 場 を 巡り、議 論し、学 ぶ 、地 方 から日 本 の 未 来 を 探 る 2 泊 3 日 の フィー ルドワ ー クを 実 施します。 有 する場であり、近 い 将 来 、行 動をとも にする仲 間と出 会う機 会をつくります。 ラボ ラトリー 未 来 の か た ち を 考 え、実 践 する フィー ルドワーク、カンファレンス に 参 加し たメン バ ー が 優 先 的 に 参 加 で き るイベントや セミナ ー の 定 期 開 催( 主 ファンド な 会 場:東 京 、東 北 )など 、地 域との 関 わり方 を 考 える 機 会 や そ れ を 実 践 す るため の 仲 間さがしを 応 援します。 み んなのファンドを つくる フィー ルドワ ーク参 加 料 の 収 益 で 、新 し い マッチング ファンドを つくります。 東 北 オ ー プ ン ア カ デ ミ ー メン バ ー や フィー ルドワークの オ ーガ ナイザ ー な どを 対 象 に 、東 北で 新 たな 活 動 を 始 め る 人 材 へ の 奨 学 金 、東 北 に 限 ら ず 地 域で起 業を志す人 材 への起 業 支 援 金 として運 用します。 ここまでの主な取り組み ・2014年9月 東の食の実行会議(7/18,19開催) 「 人材育成」分科会有志により構想スタート ・2014年12月27日 東北オープンアカデミー第1回実行委員会合宿開催 ・2015年2月2日 「地方創生リーダーシップセミナー」開催、東北オープンアカデミーを発表 (主催:日経Bizアカデミー / 特別協力:東北オープンアカデミー実行委員会) ・2015年2月27日∼ フィールドワーク開始(第一弾: 「漁師達の革命」) ・2015年3月29日∼ 4月1日 東北オープンアカデミー開校記念イベント「Open Dialog Week」開催 ・2015年5月31日 フィールドワーク第1期 終了 フィ ー ルドワ ー ク 開 催 地 の 一 覧 14 市町村にて合計 20 本のフィールドワークを開催しました ① ② 岩手県紫波町 ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑩ ⑪ ⑬ ⑨ 岩手県洋野町 岩手県釡石市 岩手県陸前高田市 宮城県気仙沼市 宮城県南三陸町 宮城県女川町 宮城県石巻市 宮城県名取市山元町 宮城県仙台市蔵王町 福島県福島市 ⑫ 福島県南相馬市 福島県会津若松市 ⑭ 福島県いわき市 開 催 し た フィ ー ルドワ ー ク 一 覧 ① 岩手県洋野町 ⑧ 「世界ブランドをつくる」 「漁師達の革命」 宮城県石巻市 過疎地の未来を変える。世界ブランド戦略 地域や業種を超えろ!フィッシャーマン、漁師たちの革命 オーガナイザー : 下苧坪之典(ひろの屋) オーガナイザー : 阿部勝太 / 長谷川琢也(一般社団法人フィッシャーマンジャパン) ② 岩手県紫波町 「稼ぐインフラ」 官と民がつくる新しいまちのかたち『オガール』 オーガナイザー : 鎌田千市 / 宮崎道名(特定非営利活動法人点空社) ③ 岩手県釡石市 「ローカルキャリア」 ビジネスパーソンのためのローカルキャリア入門 オーガナイザー : 石井重成 / 伊藤聡(釜石市役所 / 三陸ひとつなぎ自然学 校代表理事) ④ 岩手県陸前高田市 「熱エネルギー 100%」 日本初。熱エネルギー 100% 地域内自給に挑戦 オーガナイザー : 長谷川順一 / 溝渕康三郎(長谷川建設) 「ローカルベンチャー」 日本を代表するメーカーを地方から生みだす オーガナイザー : 及川武宏(Three Peaks Winery / 東日本大震災復興 支援財団) ⑤ 宮城県気仙沼市 「グローカルリーダー」 気仙沼の仕事論 オ ー ガ ナ イ ザ ー : 小 野 寺 靖 忠 ( 株 式 会 社 オノデラコーポレーション) ⑥ 宮城県南三陸町 「地域おこしを志す」 「地域おこし」を志すなら、復興の担い手から学べ オーガナイザー : 佐野哲史(一般社団法人復興応援団) ⑦ 宮城県女川町 「1000 年に一度のまちづくり」 東北の松下村塾から日本を変える。人口減少率日本一の町の挑戦 オーガナイザー : 桑原光平(NPO 法人 アスヘノキボウ) 「グローバル水産業」 日本のグローカル産業、水産業の今と未来のあり方を考える! オーガナイザー : 小松洋介 / 岡明彦(NPO 法人アスヘノキボウ / 株式会社岡清) 「女性が輝くまちづくり」 「漁村の未来」 漁師がはじめた漁師学校。海と山と生きる半島の暮らしから学ぶ オーガナイザー : 桃浦浜づくり実行委員会、筑波大学貝島桃代研究室、 一般社団法人 AP バンク 「グローバルな限界集落」(宮城県石巻市雄勝町) 世界中が注目する、グローバルな限界集落 オーガナイザー : 立花貴 / 油井元太郎(公益社団法人 sweet treat 311) ⑨ 宮城県名取市山元町 「世界基準の地方創生」 食と農で実現する世界基準の地方創生 オーガナイザー : 岩佐大輝 / 島田昌幸 / 渡辺一馬(GRA / ファミリア / ワカツク) ⑩ 宮城県仙台市蔵王町 「東北発・地方再生モデル」 「農業 × 福祉」課題を同時に解決する地域再生モデル オーガナイザー : 渡部哲也(株式会社アップルファーム) ⑪ 福島県福島市 「地元高校生が主役」 高校生が社会課題を解決。子どもが地元に戻ってくる教育のかたち オーガナイザー : 山崎美登里 / 伴場賢一(Bridge for Fukushima) 「コミュニティ・シンクタンク」 超高齢化団地の未来。新健康長寿産業の作り方 オーガナイザー : 高荒弘志 / 伴場賢一(NPO 法人ほうらい / Bridge for Fukushima) ⑫ 福島県南相馬市 「地域の起業家を育てる」 20 年後の日本。 「憧れの連鎖」で地域から起業家を育てる方法 オーガナイザー : 半谷栄寿 福島復興ソーラー・アグリ体験交流の会 ⑬ 福島県会津若松市 「伝統工芸のマーケット」 作る人・使う人がもう一度繋がる、伝統工芸の未来 オーガナイザー : 貝沼航(株式会社明天) ⑭ 福島県いわき市 「日本人らしい暮らし方」 地方で働く女子の幸福論 取り戻したい、日本人の美しい暮らし オーガナイザー : 久保田歌織(NPO 法人アスヘノキボウ) オーガナイザー : 鈴木康人 / 鈴木智子(omoto) 主な実 績( 2 015 年 2月∼ 5月末 ) 参加者数 13 4 名 フィールドワーク数 (参加費 50, 0 0 0 円) 2 0プログラム イベ ント動員数 メディア掲載数 72 9名 ファンド組成 額 134万円 (参加費からみんなで 捻出 ) 8件 開催したフィールドワークの様子 「漁師たちの革 命 」〈 宮 城 県 石 巻 市 〉 オーガナイザー (漁師) から漁業の厳しい現状 2日間を振り返りで、 それぞれの熱い想いや今 これから起こるイノベーションの予感に笑顔 や今後挑戦したいことなどを説明 後のアイデアを共有した がこぼれる参加メンバー 「熱エネルギー 100%」〈 岩 手 県 陸 前 高田市 〉 数々の現場を回り、 林業・バイオマスエネル 木質バイオマスのガス化発電について、 事業 ギーについて学びを深めました。 の現状や今後の展望についての説明 「川上から川下までの現場を知る」 ために、 実 際に山に入り、 林業の課題に伺った 「グローバルな 限 界 集 落 」〈 宮 城 県 石巻市雄勝町 〉 2015年夏にOPENしたこどもの複合体験施設 「モリウミアス」 を訪問 オーガナイザー自身のライフストーリーか 漁師・飲食店主、 企業・官僚の方を交えた大懇 ら、 事業に対する思いについて理解を深める 親会で、 雄勝の魅力を様々な切り口で感じた フィールドワーク参 加 者 ア ン ケ ー ト 〈 参加者年代 〉 5% 5% 〈 参加動機 〉 フィールドワークの 13% テーマに関心 東北に関心があり 継続的な関わりを模索 20% 25% 地域(東北以外)に関心があり 関わり方を模索 東北での起業計画 ヒントやネットワークづくり 32% 地域(東北以外)での起業計画 ヒントやネットワークづくり 10代 20代 30代 40代 50代 60代以上 0% 20% 40% 60% 80% 参 加 者 の 中心 は 2 0 代 ∼ 4 0 代 。ビ ジ ネ ス パーソン(自生業含む)が49%、学生27%、NP O 職員14%。 参 加 動 機( 複 数 回 答 )で は「 フ ィ ールドワークのテーマに関心」が81%と最も高い。 〈 フィールドワークでの学び 〉 なかった 3% 〈 獲得できたこと 〉 今後の働き方を 考えるきっかけになった 企業やプロジェクトの アイデアやヒントを得た 東北との新しい あった 97% ネットワークができた 新しい 仲間ができた 0% 20% 40% 60% 80% 参 加 者 の 9 7 % が フ ィ ー ル ドワークを通じて「学びがあった」と回答。 〈 東北との関わり方の変化 〉 〈 東北オープンアカデミーを友人に勧めるか 〉 35% 30% 25% わからない 28% 20% 変わる (変わった) 62% 変わらない 10 % 15% 10% 5% 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 まったく どちら 大いに 奨めない でもない 奨める 参 加 者 の 6 2 % が フ ィ ー ル ド ワ ー クを通じて「東北との関わり方に変化がある」と回答。 0% フィールドワーク参 加 者 の 声(一部抜 粋 ) 〈 学 び 〉 ○ ポテンシャルの高い東北は、世界基準でも戦える。 ○まだ知られていない資源が山のようにある。 ○「よそもの」 として地域に入って行く際にどのように動けば良いのか。 まずは黒子に徹しつつ、徐々に自らの提案をしていくこと。 ○ 漁業というテーマを通じて地域に関わることで、より具体的な復興への課題を知ることができた。 ○ 新しい事業や取り組みを始める際に必要なものは、完璧なプランや、誰もが認める商品ではなく、大志ある一人の人間と、そ れに巻き込まれていく多くの人材であるということ。 ○ 人口減少・高齢化時代における農山漁村地域の持続可能性。 ○ 地域の賑わいを語る上で人口は1つの指標に過ぎず、それ以上にそこに暮らす人や仕事そしてそこに訪れる人の過ごし方な どの中身の方がもっと重要な観点であること。 ○SNSの活用や消費者、旅行者としての行動など、色々な関わり方で現地の人や状況をサポートすることができること。 ○何度も地域に来てもらうための方法は、観光などだけではなく、地域に住む魅力的な人と出会う場の提供であること。 ○今までの自分の経験や仕事でのスキルを活かした関わり方。 ○人と人との「つながり」 と、サプライチェーンにおける人の顔が見える「つながり」の重要性。 ○「志を明確にする」 「カタチにする」 「継続的な仕組みにする」ことの大切さ。 ○今後、自分の取組みを考える際、東北の地のイメージを持てるようになったこと。 〈 東 北 オー プ ン ア カ デ ミ ー とはどんな場でしたか? 〉 ○15年後の日本社会にタイムスリップできる機会。 ○いろんな人との出会いの中で、その人の人生、考え方に触れることにより、自分の生き方を考えるいい機会になる。 ○その地域のキーパーソンと出会い、繋がりを持つことができる絶好の機会。 ○「東北」をフィールドワークすることで、自分の地域や日本が抱える問題について考えることのできる機会。 ○実践者の思いや悩みや仕組みを学べる、正直で面白い人たちが集まる場。 ○社会に貢献する意義をリアルで感じられる。 ○社会人として蓄積してきたネットワークや知見が活かせる機会。 ○人生で取り組むテーマを考える機会。 ○地域を地域としてとらえるだけでなく、 「人」でとらえられる視点を養える場。 〈 今 後 具体 的 に や り た い こ と 〉 ○自社のリソースを活用出来ないか、もう一度考えてみたいと思います。 ○今回参加した石巻市と桃浦の再生/新生に、今回のメンバーでチームを組んで取り組みを始めること。 ○東北での複数拠点起業。 ○新商品開発や新店舗開発、新業態開発の提案、支援。 ○小高区や双葉郡の現状を見て、その復興に役立ちたいと感じた。 ○今年度をもって現職を辞して地方で働くことを計画していたので、今回のフィールドワークで知り合った現地の方々と今後も 連絡をとり、自分にできることが何かを突き詰め、実行に移していきたい。 ○東北での課題解決への取り組みを報道の仕事を通じて広く知らせていきたい。 ○出身地で子供たち向けの食と農に関わる体感ツアーを開催したい。 ○東北に関連するNPO 法人等に携わりたい。 オ ー ガ ナ イ ザ ーの 声(フィールドワーク受 入先 ) 東 北オープンアカデミーを 他の 団 体や地 域に薦 めるか 30% 25% 20% 15% 10% 5% 3 4 5 6 7 8 9 10 0% おおいに 奨める 2 どちら でもない まったく 奨めない 1 〈上記理由(9以上)〉 ○ ふだん接点のないような人たちとも思いがけなく出会える場となる。 参加者も傍観者ではなく、真剣に取り組もうという思いの 強い人たちなので、双方に学びや手ごたえを感じられると思う。準備の手間はなかなか大変だが、フィールドワークを企画するの は、ふだん自分たちが行っている活動を改めて整理し見直す機会ともなるので、それも意味のあることだと感じた。 ○ 強く薦める:意識、 知識レベルの高い参加者が集まってくるので、東北人では気づかない着眼点や発想を共有できるので解決 策が見えてきます。また継続的な交流も図れるのでボランティアやアドバイスなども受けられることが大きいと思います。 ○ 志が高い方が参加されるので、 地域の活力になり、現場も刺激を受けることはとても有益である。一方、予想以上に人的・費用 的負担がかかるため、その部分の理解も必要である。事前準備の段階で、自らの価値についてかなり議論した。その結果を参加 者に提供することで、自分たちの気付きや成長につながると思う。 また、終了後の継続的なつながりが期待される。 ○ 自分たちのコンテンツを一度パッケージ化する体験そのものに価値があると感じます。 言葉にしたり、表現を磨いたり。オープンア カデミー事務局の方々も柔軟で親身な対応をして下さり、気持ち良く準備から実施することが出来た。ありがとうございます。 ○ 参加者のみなさんは、 それぞれ「東北」 「地域」での起業や活動に関心をもっている方々であり、現地のリーダーとの交流はお互い の志やアイディアを高めあう場につながる。 〈上記理由(6以下)〉 ○ 目的を持っている人でオープンアカデミーを活用したいという方がいれば薦める。 ○ 自分たちの活動をアピールしたい団体で、 ツアーを自主運営する団体であれば受入れのメリットもあるかもしれません が、かなり団体としては負担が大きい仕組みと感じます。 ○ コンテンツの魅力が不足していたことも影響するかもしれませんが、 参加者にとって非常に良い体験にはなったもの の、個人で集客をするのと特に変わらない結果となってしまった。 ○ 事業のブラシュアップの機会には最適だと思う。 フィールドワー ク から生 ま れ た N EX T A C T IO N 東京牡鹿会 フィールドワーク:漁師がはじめた漁師学校。海と山と生きる半島の暮らしから学ぶ(宮城県石巻市) 今回フィールドワークで訪問した宮城県石巻市桃浦地区では震災前 145 人いた住民が 15 人に減少しました。様々な 人が桃浦に触れる機会を通じて、新規移住を含めた定住世帯を 20 戸程度増やし、コミュニティを存続させていきた いという思いを持って、これまで地元の漁師の皆さんが「漁師学校」を企画・運営していました。そんな地元の方の 思いを聞き、フィールドワークでは参加者が夜を徹して議論しましたが、「盛り上がっておしまいではなく、参加メ ンバーで活動を継続したい!」というメンバーの意思により「東京牡鹿会」が発足しました。8月には次回漁師学校 の開催も決定し、現在は桃浦浜の漁師の皆さん・支援している筑波大学貝島研究所・フィールドワーク参加者による 定期的なミーティングを実施し、次回の企画や集客戦略についての議論をしています。今後はフィールドワークで共 有した桃浦地区のビジョン実現に向けたシナリオの継続検討を行っていく予定です。 フィールドワークでのワークショップ風景 東京牡鹿会メンバー message 1 『企業から見る東北オープンアカデミー』 奥 本 英 宏 (株式会社リクルートマネージメントソリューションズ 代表取締役社長) 「いつもとは違った視点で社会を捉えてみたい」そんな期待から、震災をきっかけに時計の針が 10 年以上進 んだと言われる、東北石巻市桃浦で開催された「牡鹿漁師学校」ワークショップに参加をしてきました。 震災をきっかけに住民の 80%が地区外に流出。戻ってくる目処もなかなか立たない桃浦地区ですが、そうし た厳しい状況の中、87 歳の区長さんが真剣に地区復興の想いを語り、大学研修室を巻き込んで漁師学校を立 上げ、新しいコミュニティのあり方を模索している姿に強く心を打たれました。 今、多くの企業では成熟社会の構造的な変化を前提に、様々な 不 (不便・不足・不満・不安)を解消する ための手立てや、新事業・新サービスの開発に真剣に取り組んでいると思います。東北は、日本の将来を先 取りした地域社会の現実と、それを何とかしようと奮闘している多くの人々、そして従来の枠組みを越える 様々な試行に溢れています。 東北オープンアカデミーの講座内容は多岐にわたりますが、そこでの様々な体験は、ビジネスパーソンの事 業視界を広げ、ソーシャルな気づきと可能性を発見する素晴らしい機会になると思います。事業トップ自ら、 そして事業開発担当者や次世代リーダー候補の方々など、多くの方の参加をお奨めします。 北 三 陸ファクトリー フィールドワーク:過疎地の未来を変える。世界ブランド戦略(岩手県洋野町) 「北三陸ファクトリー東京支部」は東北オープンアカデミー洋野町のフィールドワーク参加メンバーで立ちあげた、新 しいチームです。フィールドワークを通して、 「私たちに何が出来ること」を考えた際、 「私たちが当事者となって、 北三陸の魅力を発信していこう」と立ち上がりました。現在の主な活動として SNS やイベント等を通して、 「北三陸 の地域を発信し、魅力を伝えていく」ことを行っています。 具体的には、北三陸の食材や人を通して、「北三陸を感じる事を楽しむ」場、 「北三陸 bar」を企画中です(9 月上旬開 催予定)。地域の人たちが命がけで獲った食材を、心を込めて首都圏はじめ他の地域の人たちに届け、味わってもらう。 私たちが当事者になって発信し、「地方と都市」「人と人」を結ぶことによって、関わる人みんなが、それぞれの地域 や産業をつくる当事者になる。「北三陸ファクトリー東京支部」がその起点のひとつであれたらと思っています。 フィールドワークでウニについて学ぶ フィールドワーク参加メンバー 『東北オープンアカデミー × 次世代』 木 村 拓 哉 (東京大学 message 2 / 岩手出身) 東 北 オ ー プ ン ア カ デ ミ ー と い う 場 で、私 と い う 人 間 が ど う 社 会 に 働 き か け て い け る の か と い う こ と を 改 め て 考えることができたと感じています。オーガナイザーの方々は職業としてだけではなく、自分自身のミッショ ン と し て 熱 い 想 い を 持 ち な が ら、地 域 に 働 き か け を 行 っ て い る、私 た ち の 先 輩 の よ う な 存 在 で す。大 学 の 中 で は 就 活 と い う 目 先 の ゴ ー ル に 注 目 し て し ま う 空 気 感 も 強 い で す が、フ ィ ー ル ド ワ ー ク を 通 じ て、ま ず「自 分 と 社 会」の 関 係 性 を 見 つ め な お し た こ と は、社 会 に 出 て も 目 標 を 見 失 わ ず に い る た め の 重 要 な 機 会 だ っ た と 思 い ま す。現 在 私 は、岩 手 県 洋 野 町 で 出 会 っ た 社 会 人 の 皆 さ ん と、北 三 陸 フ ァ ク ト リ ー の サ ポ ー タ ー と し て 活 動 し て い ま す。北 三 陸 の 海 男 児 が 岩 手 を 変 え る 伴 走 と し て、メ ン バ ー そ れ ぞ れ が 義 務 感 で は な く 心 地 よ い 焦 燥 感 を も っ て い ら れ る こ と に、こ れ か ら の 日 本 を 創 る メ ン バ ー が 生 ま れ る 予 感 を 感 じ ずに は い ら れ ま せ んし、自分もまた、岩手や東北を変えていく一人として、主体的にアクションを起こしていきます。 ※東北オープンアカデミーでは、東北出身の学生たちに、今の東北で起こっていること、その課題や可能性に触れていただくために、 スポンサー企業様のご協力により、参加費 5 万円を免除する「無料招待枠」を用意しています。 今後の取り組み オープンラボがスタート コミュニティメンバーが毎月集まり、それぞれのプロジェクトプランを発表、参加者全員で アイデアのブラッシュアップを行う「アクションを生み出す場」を継続的に開催します。 リサーチラボを設立 立教大学社会デザイン研究所と共同で「リサーチラボ」を開設。社会や地域に横たわる課 題を深堀りし、議論を重ねながら社会ニーズの本質と思考プロセスを学ぶ場となります。 ファンドをスタート コミュニティメンバーの参加費を原資に組成されたファンドを活用し、メンバーの多様な 活動に対して支援を行っていきます。 message 3 『東北オープンアカデミーへの期待』 須 田 善 明 (宮城県女川町長 / 東北オープンアカデミー アドバイザリー・ボード) 震 災 半 年 後 か ら 町 長 職 に 就 か せ て 頂 い て い ま す が、や は り 震 災 が き っ か け だ っ た と 思 う こ と が あ り ま す。今 被 災 地 と 言 わ れ て い る 地 域 は、こ れ ま で あ っ た し が ら み の な い 中 で、チ ャ レ ン ジ が 許 さ れ る 状 況 に あ り ま す。地 域 や 皆 さ ん と の 繋 が り を 作 ら せ て 頂 い て い る 我 々 自 身 が、こ れ か ら は 生 き 方 や 関 わ り 方 が 自 由 に な っ て い く 時 代 で あ る と 感 じ ま す し、そのフィールドの1つになりたいと思っています。 東 北 オ ー プ ン ア カ デ ミ ー に 参 加 し て 頂 い た 皆 さ ん に は「何 か や っ て や る ぞ 感」が そ れ ぞ れ の 地 域 に あ る こ と は 感 じ て 頂 け た の で は な い で し ょ う か。そ れ は 小 さ い な が ら も 一 歩 を 踏 み 出 し た か ら こ そ 感 じ ら れ る 地 域 の 動 き で す。今 回 各 地 の 話 を 伺 っ て い て、そ れ ぞ れ 面 白 い こ と を や っ て い る な と 私 自 身 が 勉 強 に な り ま し た し、刺 激 を 受 け ま し た。こ こ に 参 加 し た 皆 さ ん が 何 か を 動 か し て い く 最 初 の 一 歩、東 北 オ ー プ ン ア カ デ ミ ー の 取 り 組 み が そ の き っ か け に な っ て い ければ、こんなに良いことはないだろうと思います。 『未来のリーダー育成を東北から』 半 谷 栄 寿 (南相馬ソーラーアグリパーク代表 message 4 / 東北オープンアカデミー フィールドワーク・オーガナイザー) 福島県南相馬市でこの 5 月、復興を担う人材の育成をテーマとした東北オープンアカデミーのフィールドワークを開 催し、12 名もの方々が参加してくれた。4 名は UI ターン志望を明確にした社会人であり、8 名は東北復興に真剣に向 き合おうとする社会人と学生である。12 名の参加者との間で、原子力事故の被災地を体感した上で、その復興の最前 線である南相馬にいかに UI ターン人材を招くかについて講義と議論、そして発表を重ねた。 考える前に行動して来た、いわば復興リーダー第一世代の私にとっては、この 12 名から、第二世代の人材が東北復興 の現場に飛び込もうとする際の最後のハードルが何であるかを教えてもらう貴重な場ともなった。「志はある。しかし、 自分のスキルが役に立つかどうかが不安で踏み出せない」そんな誠実さが、実は UI ターンの最後のハードルだったのだ。 次回の東北オープンアカデミーも進んで開催しようと思う。そして、第二世代の UI ターン人材が自信を持って東北復 興の現場で活躍してもらえるよう、私の志と、志望者のスキルが生かせる具体的なプロジェクトを直に伝えたい。 ファンドに つ い て 東北からはじまる社会実験に参加しませんか? 東北オープンアカデミーの参加費を初期原資として、新たなマッチングファンドをつくっています(現在組成 額 134 万円 ※1 万円 ×134 名)。ファンドは、フィールドワークの参加者、フィールドワークの受入をした東 北のプレイヤーの方(オーガナイザー)など東北オープンアカデミーのコミュニティメンバーを対象に、東北 で新たな活動を始める人材への奨学金、東北に限らず地域で起業を志す人材への起業支援金として運用します。 東 京 に い な が ら プロジェクトを 推 進 東 北 の 現 場 で 働く 新 規ビジネスの 発 掘 、成 長 の 機 会 東 北( 地 方 )で 起 業 NEXT ACTIONとそのサポート 東北オープン アカデミー 参加費収入 人材 ファンド 企業スポンサー 企業で働く ビジネスパーソン (自社の人材育成の機会に) 一般参加者 (第一期フィールドワーク では 134 名が参加) 事業タイアップ 東北で活躍する人材 東北オープンアカデミー 『企業が東北オープンアカデミーに期待すること』 河 崎 保 徳 (ロート製薬株式会社 message 5 経営企画本部広報 CSV 推進部) 私は東北の復興、今後の日本の隆盛には若い人を中心とする人々の創造力が大切だと考えています。今、東北、特に被 災地には多くの創造力をもった人たちがリーダーシップを発揮し、新しい価値の創造が始まっています。その人たちは、 不思議なことにみんな魅力的な「熱」を放っています。東北オープンアカデミーは、意志ある者が集い、みなぎる「気・ パワー」を持った人々に触れることで、波動を感じる機会を与えてくれます。それは、人間のおごり高ぶりを戒め、自 然への尊厳と畏怖の念をもち、正しい価値観の下に、何のためにそれをするのかという使命感をも感じ取れる機会にな ります。戦後の日本は右肩上がりの拡大成長路線を駆け上がってきましたが、そんな夢のような時代は通り過ぎました。 これからは、企業もそれぞれの存在意義がより重く、大切な時代になるとおもいます。言い換えればロート製薬が人々 の為に役に立つ新しい価値を創造していくことが大切なのです。そのヒントは、社内ではなく、社外にあると考えてい ます。その学びの場の一つは東北です。復興に向かう創造的エネルギーの集まるところに、学びの機会があるはずです。 企業としてオープンアカデミーの活動に関わることは、実は私たち自身が学ぶことなのです。その学びを通して自社の 価値を再発見することにつながるのです。これからも東北オープンアカデミーの活動に関わることで、私達の学びを深 めてゆきたいと思います。 東北オ ー プ ン ア カデ ミ ー 第 一 期 運 営 体 制 主 催 : 東 北 オープンアカデミー 実 行 委 員 会 特 別 協 力 : 日 経 B i zアカデミー 立 教 大 学 社 会 デ ザイン 研 究 所 協 賛 : ゴ ー ルドマン・サックス ジャパ ン・ソサ エ ティー( N Y ) ロート製 薬 株 式 会 社 株 式 会 社 デジ サ ー チ・アンド・アドバタイジング 協 力 : グ ロービス 経 営 大 学 院 事 務 局 : 東北事務局 公 益 財 団 法 人 地 域 創 造 基 金さな ぶり 一 般 社 団 法 人ワカツク 東京事務局 NPO法人ETIC. 東北オープンアカデミー実行委員会 〈 アドバイザリー・ボード 〉 石 川 治 江(NPO法人ケアセンターやわらぎ 代表理事 / 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科 客員教授)東京都 大 南 伸 也(NPO法人グリーンバレー 理事長)徳島県・神山町 須 田 善 明(女川町長)宮城県・女川町 〈運営委員〉 岩 佐 大 輝(株式会社GRA 代表取締役CEO)宮城県・山元町 小野寺 靖忠(株式会社オノデラコーポレーション 専務取締役)宮城県・気仙沼市 貝 沼 航(株式会社明天 代表取締役)福島県・会津若松市 梶 屋 拓 朗(一般財団法人KIBOW 事務局長)宮城県・仙台市 鎌田 千瑛美(NPO法人蓮笑庵くらしの学校 古民家再生プロジェクト代表)福島県・田村市 葛 巻 徹(NPO法人いわて連携復興センター 事務局長)岩手県・北上市 小 松 洋 介(NPO法人アスヘノキボウ 代表理事)宮城県・女川町 柴 田 亮(岩手大学 特任准教授)岩手県・盛岡市 鈴 木 祐 司(公益財団法人地域創造基金さなぶり 専務理事)宮城県・仙台市 高 橋 大 就(一般社団法人東の食の会 事務局代表)東京都 高 橋 博 之(NPO法人東北開墾 代表理事)岩手県・花巻市 林 篤 志(合同会社paramita 代表 / 土佐山アカデミー Co-Founder)東京都 伴 場 賢 一(一般社団法人Bridge for Fukushima 代表理事)福島県・福島市 臂 徹(株式会社Next Cabinet Iwate 取締役)岩手県・盛岡市 藤 沢 烈(一般社団法人RCF復興支援チーム 代表理事)東京都 山 内 幸 治(NPO法人ETIC. 理事・事業統括ディレクター)東京都 渡 辺 一 馬(一般社団法人ワカツク 代表理事)宮城県・仙台市 [お問い合わせ]東北オープンアカデミー実行委員会東京事務局(NPO法人ETIC.内) [email protected] / TEL 03 - 5784 - 2115
© Copyright 2024 Paperzz