報告書

 岡 山 大 学 −ジ ョ モ ケ ニ ア ッ タ 農 業 工 業 大 学 ( JKUAT)
交換留学プログラム報告書
岡山大院環境生命科学科 鵜木悠治郎
◇はじめに
今回、私は岡山大学と JKUAT 間の交換留学生として 2015 年 11 月 1 日から 12 月 5 日までの約 5
週間、ケニアに滞在した。初めての海外ということでフライトの時点から不安だったが、
「地球の歩
き方〜東アフリカ版〜」とつたない英語を駆使し無事にケニアに到着することができた。
「地球の歩
き方」がなかったらケニアに到着していなかったかもしれない。ケニア到着後、空港まで迎えに来
てくれていた JICA の塩見先生の車で JKUAT に向かった。その道中に見た、ケニアの雄大な自然と
相反した交通量の多さに驚いた。ケニアは車社会であり、鉄道や地下鉄などは発達していない。そ
のため交通手段が分散されず、毎日朝方と夕方は交通渋滞になるらしい。実際に渋滞に巻き込まれ
たが、交通事故が起きないのが不思議なくらいの交通量であった。下の写真のように交通渋滞の中
を人が普通に歩いている。非常に興味深い光景だった。
この 5 週間、JKUAT 内にある AICAD(AFRICAN INSTITUTE FOR CAPACITY DEVELOPMENT)
という施設に宿泊した。蚊帳付きベッドやシャワー、トイレなど設備もしっかりしており、安心し
て生活を送ることが出来た。この施設に付属しているカフェの料理もなかなか美味しかった。
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◇JKUAT 見学、CORE 研修
1 週目は、JKUAT 内の見学と NGO 団体「CORE
(Community Road Empowerment)」での研修を
受けた。JKUAT の農場は大きく、バナナやパパイ
ヤ、アフリカ特有の野菜など日本では珍しい農産物
が多く見られた。バナナは組織培養技術によるウイ
ルスフリー苗の作出に成功しており、
「JKUAT のバ
ナナ」として社会的に有名である。このバナナは実
際に農家で利用されている。また JKUAT は日本の
「日清フード」とケニア仕様ヌードルを共同開発し
ており、2013 年から市場で販売している。このよう
に大学での研究をそのまま社会で利用することが
JKUAT の特徴のようだ。
CORE での研修では大使館訪問や「土のう工法」
による道路補修現場確認など貴重な経験ができた。
CORE では日本の「土のう」を基盤として利用し道
路を舗装する活動を行っている。さらにこの技術の
講習をケニアの若者たちに開いており、若者の雇用
創出にも貢献している。またこの技術はケニアだけ
でなく、ウガンダやパプアニューギニア、フィリピ
ンなど様々な国に広まっているみたいだ。日本の技
術が世界で利用されていることは日本人として誇ら
しく思った。
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◇The 10 th JKUAT Conference、Flower farm と The Real IPM 見学
滞在 2 週目には、今回の交換留学のメインイベン
トである「The 10th JKUAT Scientific,
Technological and Industrialisation Conference
and Exhibitions」に出席し、ポスター発表を行った。
この Conference は 1 年に 1 度、JKUAT 主催で行わ
れている。JKUAT の教授や学生はもちろん、
JKUAT 以外からの参加者や海外からの参加者も見
られ、国際的にも認知度の高い Conference であるよ
うに思えた。自身のポスター発表を含め、国外の大
学での研究内容を知る事もでき、非常に貴重な経験
になったと思う。余談であるが、この Conference
のオープニングセレモニーの開始時間が 1 時間遅れ
たことに驚いた。これはアフリカンタイムであり、
一般的に 1 時間程度遅れることが普通らしい。時間
を厳守することが当たり前の日本人としては驚愕の
出来事だったが、ケニアで生活していると最終的に
時間をあまり気にしなくなっていった気がする。慣
れとは怖いものである。
また、この週に JKUAT の隣町、ティカにある
「Flower Farm」と IPM(総合的病害虫管理)関連
の会社「The Real IPM」の見学に行った。まず、
「Flower Farm」の農場の広さに驚いた。どこまで
も続く軒高のビニールハウス、その中には数え切れ
ない程のバラが生産されていた。ケニアのように日
照時間が長く、朝晩の寒暖差が大きい環境は、バラ
の生産に適しているらしい。確かにケニアのバラは
輪が大きく、色鮮やかなものが多かった。IPM の会
社では、生物農薬の生産過程など珍しいものを見る
ことが出来た。今回の見学からケニアの農業は日本
に比べて大規模なものが多いと感じた。車での移動
中に規模の大きなパイナップル園やコーヒー畑など
もよく見かけたことからもそう感じた。
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◇ JKU AT 院 生 の 実 験 補 助
3、4 週目は JKUAT 院生の実験の補助を主に行っ
た。JKUAT 院生、Mr. Singombe の「ケニアにおけ
るトマト青枯れ病の研究」と Mr. Martin の「ヒモ栽
培を用いたトマト、メロン栽培実験」を手伝った。ケ
ニアではトマト青枯れ病菌の類別が明らかになって
いないため、Mr. Singombe の実験補助ではトマト青
枯れ病菌の phylotype の同定を行った。また青枯れ病
菌の培養など、今まで経験したことのない実験もやら
せてくれた。JKUAT には日本のように実験器具が豊
富にあるわけではないため(ボルテックスがない、チ
ビタンがない、あるいは壊れている)、PCR の際、手
で弾いて反応液を混合していた。また、PCR 中に停
電が起きることもあった。このように実験環境は良い
とは言えないが JKUAT の学生は根気強く実験をし
ていた。Mr. Martin は、トマトとメロンのケニア式
ヒモ栽培を確立する実験を行っている。ケニアでは日
本と同じ資材や肥料が手に入らない。ケニアにあるも
ので代替する必要がある。培養土を砂に変える(右
図:土と砂の実験区)など上手に工夫を凝らし実験を
行っていた。今回の実験補助から、そういった環境の
中で工夫して状況を改善しながら実験する難しさと
楽しさを学べたと思う。
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◇交換留学プログラム報告会
最後の週には、今回の交換留学プログラムの報
告会を行った。初めて英語で発表をしたのです
ごく緊張した。報告のためのスライド作りも
かなり時間がかかり、また、発表後の質問に
対しても適切に英語で答えられなかった。今
回の報告会と日常生活でのコミュニケーショ
ンから、自身の英語力の低さを再認識させら
れた。しかし、英語を話す抵抗はなくなった
気がする。英語を間違えることを恥ずかしが
らずに話すことが重要であると感じた。一生懸命に伝えようとすれば、相手も理解しようと
してくれる。英語の勉強ではライティングも重要だと思うが、実際にコミュニケーションを
取ることが一番効果的であると、今回の交換留学で気づかされた。私の研究室にはケニア人
の留学生がいるので、今後、積極的に英語でコミュニケーションを取っていきたいと思う。
◇終わりに
以上が研修の内容だが、手持ち無沙汰な日も数
日あった。こういった時間を無くすために、研修
が始まる前に久保先生や JKUAT の教授らと計
画を立てておくべきだったと感じた。また、あら
かじめ、どのような実験を補助するのか理解して
おくために JKUAT の大学院生ともコンタクト
を取っておくべきだと思った。来年このプログラ
ムを続ける場合は改善すべきポイントだと思う。
この 5 週間の生活で、日本とは異なるケニアの文化に戸惑うこともあった。しかし私はケ
ニアという国が好きになった。ケニア人の人柄の良さや壮大で美しい自然が特に好きだ。週
末を利用してグレートリーフバレー(右上図)を観に行ったが、あの壮観な景色は一生忘れ
ないだろう。また、今回の交換留学で学んだことを大切にしていきたいと思う。異国文化と
の交流により日本の文化や社会を異なる視点から見ることができるようになった。簡単な英
語でのコミュニケーションもできるようになり、英語への関心も高くなった。今回の交換留
学はかなり貴重な体験だったと思う。
最後に今回の交換留学プログラムのサポートをしていただいた JICA の角田先生、塩見先
生、田中さん、JKUAT 大学教授のロセンゲ先生、院生の皆様、またこのような機会を設け
てくれた久保先生、岡山大学資源植科学研究所の皆様に感謝申し上げたい。
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