2010欧州ツアー報告② - 日本フローラルマーケティング協会(JFMA)

2010年欧州研修トレンドツアー
2010年欧州研修トレンドツアー報告
2010年1月23日(土)から30日(土)の8日間、JFMA欧州研修トレンドツアーに
行ってきました。参加者は、18名。今回のツアーは、一日おきに国を移動すると
いうハードスケジュールの中、展示会を2か所、講義を2回、市場を1か所、スー
パーを含む花屋を17か所視察しました。ヨーロッパを中心とする世界の花き産業
の様子をご報告致します。
ツアーの視察訪問先
■フランス-パリ
「メゾンエオブジェ(展示会)」、「merci(花屋)」、「AQUARELLE(花屋)」、「BOUQUETS DE SAISON(花屋)」、
「LACHAUME(花屋)」、「ランジス市場」、「カルフール(スーパーマーケットの花売り場)」
■スイス-チューリッヒ
ミグロについて講義、「Florrisimo(ミグロの花売り場)」(計4店舗視察)、「BLUMEN OERTIG(花屋)」、
「コープの花売り場(ミグロのライバル)」、「MARSANO(花屋)」
■ドイツ-ハンブルグ
ブルーメ2000について講義、「ブルーメ2000(物流センター)」、「ブルーメ2000」(計2店舗視察)、
「ALDI(ディスカウントスーパーの花売り場)」
■ドイツ-デュッセルドルフ
「IPM(展示会)」、「FUSS(花屋)」、「Blumenreich(花屋)」
メゾン・エ・オブジェ
世界のインテリア業界にトレンドを発信する「メゾン・エ・オブジェ」。2010年春夏コレクショ
ンは、2010年1月22日~26日の5日間、パリノール見本市会場にて開催されました。
展示面積は129000㎡。出展者数は3000ブランドあり、その内40%はフランス国外よ
り出展しています。(ツアー団の訪問日は1月24日。)
今回のメゾン・エ・オブジェは近年にない盛況ぶりを見せていました。
テーマは、「COHABITATION - 共存」。一人の力でなく、みんなの力で不景気を乗り
越えようという気持ちが込められています。テーマ展示では、「違う文化を越えること、
協力すること、他人と共に生活することを学ぶこと、新しく広大な時代が到来する」という
イメージが表現されていました。新たなライフスタイルが、新たな文化を作るのです。
「H5-A」のホームアクセサリー展示のホールで目立った色は、「淡いパープルやピンク、
ブルー」。例年の白・黒・グリーンに加えて、少し明るい色味が使われ始めました。また、
「花器とキャンドル」の組み合わせも多く展示され、そこにさらに食器が加わり、「生活の
中にある花」を提案していく流れが強く感じられました。また、デザイン性の高い台所用
品や、食器をそのまま大きくして花器にしたようなものもありました。その他、水のオー
ナメント、フレグランスやお香のブースも多く、今後はランドリーやリネン系などもっと生
活に近いものに提案が広がっていく予感がしました。使われている植物ではミニサイズ
のラン(特にファレノ)や芽出し球根(スイセン、ヒヤシンス)が多く見受けられました。
IPM
ドイツで開催される花き専門見本市の「IPM」。IPM2010は、ドイツ西部のエッセンで2010
年1月26日~29日の4日間にわたり開催されました。主に鉢物関係の種苗や資材、植木な
どの展示が中心で、切花展示も伸びています。また、花卉関係のトレードショーの中では最
も成約率が高いことで知られています。 会場の展示面積は43575㎡。2010年は世界43カ
国から1511社が出展しました。(ツアー団の訪問日は1月28日。)
種苗エリアでは、鉢物用種苗と共に資材(ポットやラベル)を一緒に提案しているブースや
実際にガーデンを作成展示しているブースが目立ちました。野菜苗の展示も一部ありました。
技術エリアでは、環境配慮型の資材や省力型の機材、天敵農薬の展示が目立ちました。植
木苗は今年もツバキ・モクレン・ハナモモなどアジアンテイストのものが多くありました。また、
各国のブースでは、オランダ・イタリア・スペイン・デンマークが大きくブースを構え、花壇苗・
植木苗を多く展示していました。日本も農水省の支援でブースを持っており、特にブース内で
のアレンジメントショーは多くのお客様が関心を寄せていました。
JFMA欧州研修トレンドツアー
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2010年欧州研修トレンドツアー
ミグロ
スイスで最も大きな会社である「MIGROS(ミグロ)生活協同組合連合」。世界のスーパー
マーケットランキング100位以内に入っています。そのミグロの切花・鉢物マーケティング部
門シニアプロダクトマネージャーのニコル氏にお会いしお話を伺いました。
■スイスの特徴:
人口700万人。4つの言語圏がある。生活水準が高く、高い品質を求められる。
■ミグロの形態:
ミグロは生活協同組合。経営者はおらず、スイスに住んでいる人が運営している。
200万人が株を保持。基本概念として、害になるタバコや酒類は扱わなかった。
スイスの会社では最も大きい84096人を雇用。店舗は現在601店舗。
売場総面積は100万㎡を超える。
■ミグロ全体の売上:245億ドル(約2兆5千億円)。利益は前年比2.4%ダウン。
(その内、スーパーマーケット部門:145億ドル(花はその中の2%))
■ミグロの一番の戦略:心の戦略。ミグロの売るものは、「●喜び ●愛 ●哀悼 ●謝る気持ち ●感謝する気持ち」。
■長期戦略:
●企業戦略:幅広い客層にそれぞれ合わせた商品の提供(低価格から、高付加価値商品まで。)
フェアトレード、自社オリジナルブランドなど。
●店舗デザイン:雰囲気を大切にするコンセプト作り(新店舗や改装も重視)。
●POPまたはPOS:ポイントオブセールス。店のスペース取りや配置(店の一番前にその時一番売りたいものを置く)。
●ミグロカード(M-Cumulus):顧客の購入行動分析。ポイント制度で顧客つなぎ止め。3カ月ごとに商品券に換えられる。
●「ミグロの花は新鮮である」と感じてもらう:花の品目ごとに、販売日数何日以内と日数を指示。
たとえば、5日間日持ち保証の商品は、その花が店に着いてから2日以内で売り切るルール。売れ残ったら、廃棄。
■中期戦略:
●品揃え:基本的な商品を揃える(切花・鉢物・花壇苗)。80%の商品は全店舗共通。20%はその地域ごとに調達。
●In and Out:顧客の目線を変える。鉢の色でイメージを作り、中に入る鉢物の組み合わせを2週間ごとに変える。
●「旬」を感じてもらう商品:店頭にポスターを用意し、広告にも載せ、売りであることを伝える。
●ギフト商品:家庭用だけでなく、ギフト用に購入してもらうため、生産者とタイアップして新商品を提案。
●新商品の開発:切花で提供するファレノ。下部に水が入った、そのまま飾れる花束など。さらに、購入するとポイントが
20倍になるようにし関心を引く。
●物日:バレンタイン、母の日、イースターなど。特別な商品を揃え、最愛の人に届けてもらう。
■短期戦略:
●販売促進キャンペーン:アマリリスを1日だけ50%オフで売るなど。
新商品提案
ブランド→
■2010年の展望:
●スタッフの教育充実 ●鮮度に関するマニュアル作成 ●エコロジカルな商品の開発 ●フェアトレード
※講義の後、ミグロの店舗を4店舗視察しました。
高級ブランド「Selection」
広告掲載された目玉商品
新しいスタイルの店舗
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フェアトレード商品
5日間の日持ち保証
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ブルーメ2000
ドイツに拠点を置く花の小売チェーン「ブルーメ2000」。1974年にドイツのハンブルグに本
社を置き、現在ではドイツ国内で200店舗にまで成長しました。ヨーロッパにおける花の小売
で業界No.2、ネット販売ではNo.1の秘訣を、代表取締役のエリック氏に伺いました。
■小売について
■特徴:
●一番大きな町の大きなスーパーのど真ん中にお店を構えること。
今までは花が大都市の中心部に飾られていることはなかった。
●鮮度、価格を重視。特に価格はドイツの市場にて大きな魅力となっている。
●大量に花を買ってもらい、価格は大きく表示することが重要。
●ドイツに200店舗あり、全て同じシステムで動いている。(これはブルーメ2000のみ)
●現在ドイツの人口の1/3がブルーメ2000へ行くことができる。
●売上は1億2000万ユーロで、購買回数は年間2000万回。
●売上構成は、切花40%、鉢物45%、その他15%。
●花は5~15ユーロ。平均10ユーロ以下で販売。
●ドイツのフラワーマーケットは80%が個人で、20%がビジネス用。
●オランダに仕入れの会社を持ち、ポーランドに花束加工会社を持つ。
●4つの物流センターのハブがある。ここからアクセスできる範囲に店舗を展開。
●もっとも売上効率が良いのは、お店の外に陳列しているもの。店内の商品では、ブーケが良く売れる。
●ドイツは一番ディスカウントが進んでいる国だが、これからの時代は安い値段でいかに質の良いものを作れるかが大切。
スマート・ベーシック。生活必需花。ちょっと良い品質のものを手ごろな価格で。
●一つのコンセプト→鉢物は片手で運べるサイズにすること。購入者は50~60歳の女性だから。
●フラワー・デポ:新しい花売りシステム。スーパーマーケットの中の商品提案。委託販売。ブルーメ2000で商品提案し、
物流はそのスーパーのものに載せて、店頭で販売してもらう。
■インターネット販売について
■特徴:
●ネット販売を始めて、10年目になる。 ●花束加工場が商品を作って、デリバリーに乗せて売るシステム。
●オランダの契約農家→ベルリン・ポーランドの花束加工場→DHL→家庭の花瓶 「農場から家庭の花瓶まで48時間!」
●注文の内の70%が締切直前に来るので、予測をして商品をあらかじめ作っておく。実際の注文との誤差は5%。
●ドイツで、1999年での花のデリバリーサービスは1%がネット販売だったのが、2010年には60%がネット販売によるもの。
●ホームデリバリーの宣伝は、店頭・クーポン(店頭配布、アマゾン)・テレビCM・ネットCM・提携スーパーの広告で広報。
●お客様は最初、検索サイトで検索する。どうやったらひっかかるかを考えることも大切。
●信頼を得るため、7日間の品質保証と無条件の金額の返金システムを作っている。(クレーム返金率2%)
■10年間の成長のキー:
●「今あるものを競争で勝ち取るのではなく、お客様の要望に答え、今育っているところを少しずつ変えていくことである。」
●「次の10年後、今のブルーメとは全く違うことをしているでしょう。」
■ブルーメ2000の物流センター視察:
●ハンブルグの物流センターを視察。その他に、ベルリン、フランクフルト、ワイマールと計4センターある。
●ここ(ハンブルグ)からは74か所の店舗に花を送っている。
●切花は5~8℃で管理。
●1週間に3回、配送。
■ブルーメ2000の店舗視察:
●お店のスタッフは、商品を販売するのみ。
●店舗に入った人は皆買っていく。
大量の商品陳列
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はっきりとした価格表示
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ランジス市場
‘全ての生鮮物を扱う’市場として世界一であるフランスのランジス市場を視察しました。
■ランジス市場について
●年間取扱高一兆円。取引は全て相対(セリ無)。
●市場の面積は世界一で、販売している面積230ha、倉庫の面積420ha。
●ここで仕事をしている会社数も世界一で1300社。12000人を雇用し、バイヤー25000人。
●年間140万tの商品をさばく(90万t野菜。30万t肉。15万t魚。6万5千t乳製品。
その他レストラン用・花)。
■ランジス市場-園芸部門について
●2008年の入荷量は、切花197,896,000本、鉢物16,609,000鉢。
●187社、約500人が勤務。
●ヨーロッパで売られている花の85%がアルースメア市場で販売。
ここで1年かかって売れる花は、アルースメアで1週間で売れる。
ピンクのエリアが園芸部門
←バケツを見ると、ほとんどが
アールスメアから来ていること
が分かる。
バレンタイン用のポスター
花屋
■「AQUARELLE」
セルフスタイルのお店。パリに
10店舗。ブーケがとても安く、
「ネット販売」もやっている。
■「merci」
今パリで最も話題となっている「本・カフェ・花」を扱うショップ。
フランスの高級子供服ブランドのメンバーが立ち上げた。廃墟となった繊維工場を買
い取り、そこに作ったお店。花屋、カフェ、雑貨などのコンセプトショップが集まっており、
家具、洋服なども購入できる。財団法人経営で、利潤は後進国の子供たちへ。
まとめ
■「LACHAUME」
18世紀中頃にできた、パリの
老舗の花屋。
19世紀の新聞で花屋の番付
けで1位になっている。1902年
に現在の場所に移り、今も当
初のクラシックな内装をそのま
ま残してある。
パリで生活する人は、「生命感を生活の中に取り入れるために花を買う」との話を聞きまし
た。元々農業国だったフランス人。庭もなく、石で造られた部屋の中で過ごすには、植物の持
つ生命感が欲しくなると。
ツアー中、日本人の「花のある生活」とはどんなものか、何が変わってしまったのかを考え
ていました。日本人の花のある生活とは、庭にある、自然にある花を部屋の中で生かすこと。
しかし、現代では庭にある花を簡単に手に入れられなくなりました。値段・商品知識・維持管
理等を含め、花を「簡単」に手に入れる方法を考える必要がありそうです。
スイスとドイツを訪問して、物流コストを調整することが利益へ繋がることを学びました。そ
の国々の特性を生かしたシステムを構築することがカギのようです。(JFMA事務局 和田)
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