仮定断面は あくまで

Scene12
仮定断面は
仮定断面の設定
なのでしょうか
顧客
構造
意匠
設備
仮定断面
・階高、
総高さ
・梁下、
天井高
・使用性、機能性
・設備機器重量
・配管経路、
径
(梁貫通の有無など)
・配筋情報
・鋼材板厚
・使用材料
・変更有でも他分野へ
の影響がない項目
・外形寸法変更により
再検討が必要な項目
PS納まり
梁配管の適否
仮定断面は、顧客・各設計分野の要
求条件を満たすものとして構造設計
者が設定する。仮定断面のうち断面
外形寸法の変更は意匠・設備分野へ
の影響があるので仮定断面修正が必
要な場合は迅速な調整機会をもつこ
とが必要
その他
仮定断面の算定フロー
耐震壁の
負担割合
規模、形状
壁量のチェック
鉄筋コンクリート造
︵ 決定 ︶
仮定断面の整理
構造設計ルートの確認
仮定断面の修正
スラブの検討
小梁︑
耐力壁・筋かいの検討
架構断面の検討
基礎の検討
地震荷重時応力検討
層間変形角︑偏心︑剛性率
D値算定
剛比︑
︵概算︶
柱軸力
︵概算︶
建物重量
外力条件の設定
︵ 推定 ︶
仮定断面
構造設計ルートの設定
使用材料など
構造種別・架構形式
荷重条件・耐震グレード
建築意匠図・建物概要
仮定断面の確認
仮定断面は「根拠ある数値」
仮定断面は、その時点で共有化された設計条件のもとで、構
意匠・設備設計者にとっては外形寸法のみ重要視されそうで
すが、概算を出す場合は歩掛かり(鉄筋量、配筋、鉄骨板の厚
共有で使用する仮定断面の変更は極力避けるべきですが、修正
って顧客と各設計分野に提示するものです。設計条件の確実性
が必要な場合は迅速な調整機会をもつことが大切になります。
わります。
柱脚の形式、
幅厚比、
横補剛仕口部納まり
筋かいの
負担割合
さ)や、材料強度も必要となります。実施設計スタート後は、
造設計者が構造計画に基づき、“根拠ある数値”として責任をも
と構造設計者の構造計画能力によって、仮定断面の確実度は変
鉄骨造
仮定断面の求め方
仮定断面を決定する作業のフローは、建物の構
造種別・架構形式・荷重条件などを想定して
設計ルートを設定する。その次に仮定断面を推
定し、その断面により概略的な応力計算などを
行い、その結果により断面を修正して決定する
れる積載重量と耐震グレードや常時の性能(遮音等級など)
、意
されるスラブ厚を設定しておくことも大切です。近年は、分譲
匠設計者からは重量に関係する仕上げ仕様や、必要な梁下の高
マンションなどに要求される遮音等級が 10 数年前から比べる
さ、階高案、設備設計者からは機器重量や設備方式、配管経路
と一段と高まっており、応力のみで決定されるスラブ厚は 15
設計の初期段階で意匠設計者と打ち合わせをすると、彼らは
仮定断面を設定する際は、その構造・形式を耐震壁やブレー
方針です。このとき仮定断面を設定する方法には特定の手法が
㎝程度でも、遮音性能を要求するために必要とされる厚さは
打ち合わせ用として、柱・梁の形状や寸法を記入した基本設計
ス付きとするか、純ラーメンとするか、また柱をどのように配
あるわけでなく、構造設計者各人の経験と知識をもとに工夫を
22㎝程度以上となるのが現状です。スラブ厚は建物重量のなか
図を提示してくることがあります。拝見すると、わりとほどよ
置するかが重要になりますので、意匠・構造・設備の各設計者
こらして設定していきます。
でも大きな比率を占めるため、柱・梁断面を設定する際の影響
いサイズになっていて感心させられることが少なくありませ
間で協議しながら構造計画を練っていく必要があります。柱間
ん。
すでに多くの建物で経験を積んでいることで、
部材断面が彼
隔を大きくとれば、梁断面も大きくなり柱断面も大きくなりま
現状では実建物のような複雑なものへの適用には不十分です。
また、耐震グレードの確認も重要です。品確法が求める耐震
らなりに整理され、データベース化されているのかもしれませ
すが、逆に柱間隔が細かすぎると、空間の快適性を阻害すると
仮定断面の設定方法には、経験データに基づく方法と、略算に
等級のレベルをどこに設定するかで地震力が変わり、断面にも
ん。ときには、
「この梁せい、もう少し小さくできませんか」と
ともに、不経済な構造躯体となってしまいます。
よる方法の 2 種類があり、さらに略算法には許容応力度計算
影響します。
迫ってくることもあります。
さて、仮定断面ですが、これは構造設計者が構造計画にもと
づき、
「根拠ある数値」として責任をもって示す各分野共有の情
は計りしれません。
によるものと、必要保有耐力から求める方法があります。仮定
なお、鉄骨純ラーメン構造のような比較的柔らかい構造の場
断面せいの比など、構造設計者が過去に蓄積しているデータ情
断面の精度を高めるためには略算による手法が望ましいと考え
合は、部材耐力からではなく、一次設計時の層間変形角規定か
報から断面設定がなされることも多いでしょう。
ます。
ら断面が決定されることが多いので、変形の確認が必要になり
実施設計の段階になると、仮定断面は建築主からの要求事項
な検討を進めたり、構造躯体費の概算を出すために必要となり
と意匠・設備設計者からの情報をもとに、より詳細に設定して
ます。
いきます(図2)
。建築主からの要望としては、用途から決定さ
036
最近は「最適断面設定の理論・手法」も発表されていますが、
また、この段階では、柱の長期軸力の大きさや梁のスパンと
報です。それをもとに、意匠、構造、設備などの各分野が詳細
スラブ厚、耐震グレードも重要
ます。
(高山正春)
柱、大梁の仮定断面を設定する前には、常時の性能から決定
本 PDF はエクスナレッジ刊「スパッとわかる建築構造」からの抜粋です。個人で利用される以外は、著作権者に無断で複製、印刷、配布は出来ません。
(株)
エクスナレッジ
実施設計
外形寸法
柱梁、壁の決定は位置
仕上げ仕様
(重量)
必要梁下高
(階高)
構造計算
図2
・用途
(積載荷重)
・耐震グレード
(耐震等級など)
・居住性能グレード
(遮音等級など)
基本設計
あくまで「仮定」の数値
構造計画
︵スパン・柱梁配置︑壁配置︶
プラン
仮定断面設定のための情報の流れ
構造計画
図1
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