小田原鋳物 『赤ひげのロケで使用した・風鈴』 世界の巨匠・黒沢明監督の名画『赤ひげ』のロケの中で使われた風鈴を紹介します。 鋳物で作られた小田原風鈴は,砂張り材(平安時代は,余韻が長く続くため,響銅とも言った)を主に使 い、清澄にして、風雅な音色の鳴り物と雅味豊な茶道・書道等の小間物品として使われている。 その音のす ばらしさから、コンサートでも ファンから絶大な人気がある小田原風鈴。 ここではその小田原風鈴をご紹介いたしま す。 小田原風鈴は小田原鋳物(おだわらいもの)から生まれた。 小田原鋳物は、北条時代からはじまった小田原の伝統工芸のひとつ です。 鎌倉時代より盛んだった相模鋳物は、北条氏 2 代目当主氏綱により、 その本拠地を毛利荘飯山(現在の厚木市、私の住んでいるところ)か ら移動させられました。そのうちの1箇所が小田原であり、これが小 田原鋳物の始まりです。 近代になると故柏木晴光氏により、砂張りといわれる銅と錫の合金を用いた鳴り物や、圧搾鋳造術を導 入し、小田原の鳴り物メーカーとして有名になりました。 しかし、経営者の高齢化や後継者不足に見舞われ、現在では小田原に残された鋳物の生産業者は一 カ所だけです。 ↓故柏木氏は功績が称えられて、日本キワニ賞をとりました。 黒澤明監督の「赤ひげ」にも登場した小田原風鈴 当時「赤ひげ」ほど音に凝った映画は無いでしょう。 その一つが浅草寺境内の風鈴の音です。 黒澤監督の「最高の風鈴を持ってこい」という指示の元、探し出さ れたのが小田原風鈴です。 小田原の鋳物業者が「赤ひげ」のために特に入念に製造したの です。 ↑若き日の黒澤明監督。小田原風鈴を見ています。 ↓映画「赤ひげ」の一場面。上に吊された小田原風鈴見えますか? 現在、小田原でも小田原風鈴を製造している業者は1カ所のみです。 とても希少価値の高い風鈴なのです。 小田原城からほど近い城下町の小さな製造工場で一つ一つ手作業で作られています。 砂張を加工するときに利用する釜です。(歴史を感じます。) 火柱が上がったときは、もの凄い高音になります。 こんな製造工場で3名の職人が手際よく働いています。 ←写真をクリックすると動画を見ることができます。(mp4 形式) 小田原風鈴は、普通の鉄製のものではなく、砂張(さはり)という材質でできています。 砂張は佐波理などとも書く銅合金の一種で銅に錫を20%以上含ませたものです。 古くは、正倉院の御物の中に佐波理製の水瓶・皿など数多くの僧具や食器が見うけら れます。安土桃山時代以後、茶の湯の隆盛にともない茶入・水差・建水などに用いら れ、茶人は砂張と書くようになりました。 本来、砂張は黄白色であり、錫を多く含むものほど地肌が白色となります。小田原風 鈴は銀を軽く燻した様な砂張独特な上品な着色を施しています。 砂張は響銅とも書かれ、板鐘、仏鈴などを作れば、優れた音色となり、「真鍮は長年す ると音が悪くなってくるけど砂張は『鳴り上がる』といって音が良くなる。」と言われ古来 より珍重されています。 錫を多く含む砂張ほど、鋳造、加工、色上げ等が非常に困難な為に技術者が少なく、 極上品と言われています。 金属の種類ではとても、もろく、落としたり、ぶつけただけで割れてしまうほど繊細な材 質です。 そんな砂張でできた小田原風鈴だからこそ、その余韻の美しさは素晴らしく人々を魅了してやみません。 ←音の鳴る部分です。 十字の先端は丸く仕上げています。とても良いお仕事をされています。 小田原風鈴を試聴する(MP3) インターネット用に圧縮していますので音質は低下していますが、余韻や雰囲気はわかる と思います。
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