◆ 骨・骨折 人間の骨格は、206 個の硬いカルシウムから成る有機組織によって作られています。それが骨です。 骨は、筋肉とともにテコの作用をしたり体の内部を保護する役割を担っています。また、骨は赤血球 をつくり、カルシウム、燐、塩分の貯蔵庫である骨髄が含まれています。人間の体重の１５％は骨から 成り、骨の重量の４０％はコラ−ゲンで、これは骨の支持組織として働きます。また３０％は無機質（主 にカルシウム、燐、塩分）であり、残り３０％は純粋な水分です。骨格は体重を支え、体に柔軟性を持 たせるとともに、外部からの衝撃に耐えられるような構造を持っています。骨は、その形によって便 宜上 4 つに分類されています。 ① 長い骨（長管骨） ：四肢の骨がこれに該当します。管状の骨幹と両骨端部から出来ていて、骨端部 は関節を形作っていて筋肉の付着部となっています。 ② 短い骨：手と足の骨がこれに該当します。短い骨は強度と同時に一定の運動が要求される部分に 見られます。 ③ 扁平骨：肩甲骨、骨盤がこれに該当します。これらの骨には筋肉が付着する広いスペ―スがあり、 内臓を保護しています。 ④ その他の骨：頭蓋骨、背柱がこれに該当します。骨の形、長さ、密度、強度は遺伝や骨と筋肉の 使われ方によって決まります。骨細胞は両親から遺伝し、それによって骨の長さ、幅、形状が決ま ります。父か母が O 脚であればその子供も O 脚になる確率が高いし、両親が長身であれば子供の 骨も長い場合が多い。だから、スカンジナビア人の子孫は一般的に背が高いし、ヒグミｰ-族の子孫 は逆に背が低い。運動、運動不足が骨のサイズにどのような影響を及ぼすかということを「小児麻 痺」で調べてみると、小児麻痺は背髄の神経細胞が冒される病気ですが、神経は腕と脚の筋肉に適 切な運動情報を伝えることができなくなる。 筋肉は痩せ衰えていき、 腕と脚が麻痺してくるのです。 いずれか一方の脚だけが小児麻痺に冒されると、両脚の差はハッキリとしたものになります。正常 な筋肉に囲まれた骨は強く大きさも正常ですが、 麻痺した筋肉に囲まれたほうの骨は薄く、 もろく、 変形しています。 骨折 どの骨でも、強い力が加えられると、砕けたり折れたりします。激しいタックルを受けたり道路 で転倒したり、足に繰り返しショックが加わると、骨折することがあります。直接的な力によっても、 また間接的な力によっても骨折は起きます。 直接的な力の例は、 ボクシング試合でパンチを受けた時や、 ホッケ−のステッキによる強打、野球のビ−ン・ボ−ルなどがあります。間接的な力によるものとして は、手が伸び切った状態で転倒して、手首を骨折したり、ボ−ルに脚が絡んで下腿骨を骨折するスキ− の事故などです。骨折には次の 2 種類があります。 Ⅰ 疲労骨折：骨にヒビが入るが分断されない。 Ⅱ 完全骨折：骨が分断されます。 骨にはいろいろな種類があるために部位によって強度に差があり、 骨折するのは殆ど次の３部位です。 つまり、上腕骨頭の直下、骨幹の中央部及び、肘のすぐ上で、他の部位に骨折が起こるのは極めて稀で す。ただし、骨に癌や腫瘍のような疾患がある場合は、勿論弱くなった骨のどの部分でも折れたり、砕 けたりします。 - 15 - Ⅰ 疲労骨折 疲労骨折は骨の表面にできるわずかなひびで、最もよく見られる部位は下肢の骨です。疲労 骨折は、単独では骨を破損させるにはいたらない小さい力が繰り返してかかることによって生 じます。 私も高校陸上部の多くの選手を治療しましたが、彼等の疲労骨折の原因を考えてみると、中学 時代に比べ高校の練習は激しくなり、抵抗力のない骨に対して激しいトレ−ニングが作用した 結果、生じたものなのです。彼等の下腿の骨（脛骨）に何が起こったのか考えてみると、高校 入学後、今迄より強い運動を強いられ、抵抗力のない骨が毎日地面に打ち付けられ、その結果、 骨の周囲筋肉により骨に繰り返してストレスがかかるためである。こういう場合、何が起こる のか？ 骨は強くなる以外ないが、この強くなる方法というのは、ストレスのかかった部分に 新しい骨を作ることなのです。假骨が集まり、この細胞は強いストレスにさらされている部位 に移動して、古い骨を取り除き、それで骨がその部分を置き換えるようにします。しかし、骨 芽細胞がゆっくりと新しい骨を作っている最中に、新人高校生は毎日何千、何万キロメ−トル の走行を続け、結局のところ骨にひびが入ってしまうと想像されるのです。このひびを疲労骨 折と呼びます。骨芽細胞は新しい骨を作るため休みなく骨形成を続けるが、疲労骨折が治るに は約６週間かかります。 ① 疲労骨折してしまったか、どうか、どうしたらわかるのか？ これはひどく痛むものはありません。普通この痛みは過大なストレスがかかってから約２週 間後に始まるが、それは身体反応が出てくるのに２週間かかるということです。運動すること も可能であるが、痛みは再発し、それも以前より強くなるのが普通であります。多くの場合、 痛みのために夜も眠れない。 ② どの骨が骨折しやすいのだろうか？ 疲労骨折の９５％までは下肢の骨に起きますが、上肢には全然ないという訳ではありません。 ③ 痛みのほかに疲労骨折をしたかどうかを判断する方法はないのだろうか？ 触診すればよいのである。疲労骨折なら、その上をじかに指で押した時、上方から押しても 下方から押しても痛むのが普通ですが、例えば腱や靭帯の損傷では、普通片側から押した時に しか痛まない。疲労骨折の痛みは局所性がはっきりした圧痛である。レントゲンでは最初、骨 の小さなひびを見つけるのは大変難しく、２∼３週間経ってから造骨細胞によって新しい仮骨 がひびをおおってからです。もし、疲労骨折してしまったら、その部分を安静に保ち、ひびを 大きくしないで済む他のスポ−ツに一時的に転向することである。例えば、足に疲労骨折が生 じたランナ−は一時的にサイクリングや水泳に種目を変えてみてはどうか。 もう一度疲労骨折の概要について説明すると、 A 疲労骨折の進行 ① 原因が必ずある ② 運動後のみに痛みがあり、安静で軽快する。 （運動後に痛みがあり、安静により速や かに回復する） ③ 進行すると、運動中にも痛みがあり運動後強くなる。回復はより長い安静を要する ことになる。 - 16 - ④ 進行すると、運動していなくとも特続する痛み B 疲労骨折の症状 ① 骨の局所的な圧痛（厚く覆われている大腿骨の場合は除く） ② 軟部組織の腫脹 ③ （時間の経過につれて現れる）仮骨の触知 ④ 歩行の変化 ⑤ 筋萎縮、特に前脛骨筋及び下腿三頭筋、ヒラメ筋の萎縮 ⑥ 病変を示すテクネチウム９９のジイソシアン酸ジフェニルメタン化合物の取り組み の増加 ⑦ 隣接関節に運動制限無く、痛みのないこと。 ⑧ 関節の抵抗運動で痛みの無いこと。 ⑨ レントゲンによる毛髪状の透過線と仮骨の確認 これは軟部組織の腫れと関係がある。 C 疲労骨折の治療 ① ランニング休むこと。 ② 微候である炎症を水と消炎剤で和らげる。 ③ 筋力の維持（特に足背伸筋及び足底屈筋） ④ 水泳ないし、サイクリングによって心肺機能を維持すること。 ⑤ 必要に応じた装具 ⑥ 症状とともに、徐々にランニングを再開する。 D 疲労骨折の治療に要する期間 最もよく骨折の見られる部分 回復期 間 上腕部の中央部 ６ 週 間 肩甲骨の鳥口突起 ６週 間 骨盤の恥骨枝 ３週 間 大 腿 骨 頚 部 １２ 週 間 大 腿 骨 骨 幹 １２ 週 間 大 腿 骨 下 端 ６週 間 脛 骨 上 端 ３週 間 脛 骨 骨 幹 ６週 間 脛 骨 下 端 ３週 間 踵 骨 中 央 部 ６週 間 中 足 骨 下 端 ４週 間 Ⅱ 完全骨折 完全骨折は、普通あらゆるスポ−ツ外傷の中でも痛みが最も強いものです。骨折端には沢山 の神経が分布しています。この端が互いに擦れ合ったり、他の組織と擦られると激しい痛みが 生じるのです。この痛みと腫れは、何週間も、時には何ヶ月も続くことがあります。完全骨折 は、稀に一人で治るものもあるが、合併症を起こしたり、副木、テ−ピング、ギブス、牽引が - 17 - 必要で、開放性（皮膚が破れて骨がそこから突き出ている骨折）と閉鎖性（折れた骨が外に露 出していない骨折）と２種類があり、完全骨折は殆ど医師の治療を必要としている。開放及び 閉鎖完全骨折のほかに、完全骨折には骨折線の形状によって５種類の完全骨折がある。 ① 横骨折 骨が真横に折れ、骨折線は骨の長軸に対して直角なもの 成人のすべての骨折の６０％は曲げるような直達外力によって生じる骨折 ② 粉砕骨折 この骨折はきれいに２つには折れない、バラバラの骨折、成人のすべての骨折の２６％ ③ 斜骨折 骨折線斜めに走り、直接的な外力及びねじれ外力によって起こる。骨端線は互いに滑って転 位し、骨そのものが短くなって医師にとってもとり扱いにくい。骨折全体の約１５％が斜骨折 である。 ③ らせん骨折 これは、長い、曲がったコイル状の骨折で、こうした骨端線の形状は骨に加えられるねじ れによって生じます。この骨折は足が固定されたまま体が回転して転倒したスキ−ヤ−によく 見られる骨折全体の５％を占める。 ④ 若木骨折 この骨折は主に骨が柔軟である小児に起こります。小児の骨は実際に折れてしまうまで大 きく曲がるので、レントゲンでみると骨が曲がっているのがよく分かる。皆さんも小さな若 木を取って曲げてみるといい。最後に折れてしまうまでに大きく曲がるのが分かるだろう。 そして曲げた方向と反対の側にひびが入り、曲げた側はそっくりそのまま残っている。これ と同じことが、小児の骨の場合にも起こるのである。若木骨折は部分的な骨折なので、治療 が早い。 - 18 -
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