ひとり親家庭対策について ∼ひとり親家庭の自立に向けて∼ (中間報告) 平成 17 年(2005)年 11 月 22 日 鎌倉市児童福祉審議会 ひ と り 親 家 庭 対 策 に つ い て ∼ ひとり親家庭の自立に向けて ∼ (中間報告) 目 次 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 1 ひとり親家庭の現状 (1) ひとり親家庭の世帯数 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 (2) 児童扶養手当受給世帯から見た母子世帯の状況 ・・・・・・・・ 2 (3) 父子世帯の状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 (4) 母子自立支援員の相談状況 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 (5) セルフヘルプ(相互援助)グループの状況 ・・・・・・・・・・ 4 2 ひとり親家庭等への支援施策の現状 ・・・・・・・・・・・・・・・ 5 3 母子及び寡婦福祉法等の改正による国の政策転換 ・・・・・・・・ 6 4 今後の施策の展開 (1) 就労支援の充実 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 (2) 子育て・生活支援の充実 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8 (3) セルフヘルプグループの活性化 ・・・・・・・・・・・・・・ 9 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9 ア 鎌倉市母子寡婦福祉会の活性化 イ 集いの場づくり ウ 父子家庭を中心としたひとり親家庭のセルフヘルプグループ立ち上げ支援 ・・・ 10 (4) 相談体制の強化 ア ひとり親家庭の子どものケア ・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 イ 母子自立支援員による相談事業の強化・充実 (5) ・・・・・・・・ 10 社会への広報・啓発 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10 おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12 委員名簿 1 はじめに 平成 14 年 8 月の鎌倉市児童福祉審議会の答申、 「地域における子育て支援のあり方 について」の中で、子育てに係わる残された課題として、 「放課後児童対策」 、 「ひとり 親家庭対策」 、 「児童虐待対策」の3つがあげられました。 当審議会では、社会状況や法改正などを勘案する中で、 「放課後児童対策」 、 「児童虐 待対策」については、既に中間報告を行いました。 そして今回、最後とはなりましたが、子育て支援施策として重要な柱の一つである「ひ とり親家庭対策」についての議論を進めてきました。審議経過は下表のとおりです。 「ひとり親家庭対策」については、平成 15 年 4 月に「母子及び寡婦福祉法等の一部 を改正する法律」が施行され、厳しい社会経済環境の中、年々離婚件数が増加する状況 を背景として、国は母子家庭への政策を給付から自立促進へと大きく転換させました。 また、これを受けて、神奈川県では「神奈川県母子家庭等自立促進計画」を策定し、 県、市町村それぞれの役割と取り組むべき施策を明示したところです。 このようにひとり親家庭への様々な施策が検討されている中で、鎌倉市独自の取り組 みも視野に入れながら、今後のひとり親家庭対策とその方向性について、ここに中間報 告をします。 【表 審議経過】 回 第 10 回 開 催 日 審 議 概 要 平成 17(2005)年 ひとり親家庭対策について 5 月 21 日 鎌倉市におけるひとり親家庭の現状 ひとり親家庭対策について 第 11 回 同上 就労支援、セルフヘルプサポート、相談体制、父子家 7月 14 日 庭へのサポート、社会への啓発などの意見交換 ひとり親家庭対策について 第 12 回 (1) 父子家庭、母子家庭、母子自立支援員からの意見聴取 同上 9 月 24 日 (非公開) (2) ひとり親への支援の意見交換 第 13 回 同上 ひとり親家庭対策について 11 月 22 日 中間報告のまとめ、報告 1 1 ひとり親家庭の現状 (1) ひとり親家庭の世帯数 ひとり親家庭はその性格から実態を把握することが非常に困難です。そこで、 厚生労働省が 5 年ごとに実施している全国母子世帯等調査(以下全国調査という) の世帯割合から鎌倉市のひとり親家庭の世帯数を推計してみると、平成 16 年度の 母子家庭世帯数は 1,863 世帯で、平成 11 年度と比較すると、件数で 500 件、率 で 36.7%増加しています。 一方、父子家庭世帯数は平成 16 年度 276 世帯で、平成 6 年度以降世帯数の変 化はほとんど見られません。 【鎌倉市の母子家庭・父子家庭数】 年 度 人 口 (人) 世帯数 (世帯) H16 H15 H14 H13 H12 H11 H6 169,866 168,724 167,630 167,435 167,583 167,627 171,815 68,984 67,075 66,918 66,060 65,344 64,928 63,526 離婚率(人口1 全 国 (%) **** 2.25 2.30 2.27 2.10 2.00 1.57 千人につき) 鎌倉市 (%) **** 1.64 1.72 1.53 1.65 1.56 1.40 離婚数 鎌倉市 277 288 257 277 262 260 246 世帯数 1,863 1,409 1,405 1,387 1,372 1,363 1,207 児童数 (人) 2,943 2,352 2,347 2,317 2,292 2,277 2,040 世帯割合(%) 2.7% 2.1% 2.1% 2.1% 2.1% 2.1% 1.9% 世帯数 (人) 276 281 284 283 283 283 273 児童数 (人) 433 488 490 495 495 495 478 世帯割合(%) 0.4% 0.4% 0.4% 0.4% 0.4% 0.4% 0.4% 母子家庭 (推計) 父子家庭 (推計) *世帯数…各年 10 月 1 日現在の数値 *離婚率…離婚件数( 「人口動態統計年報」の数値)÷10 月 1 日現在の人口×1,000 *離婚数…「人口動態年報」 (厚生労働省) *母子・父子家庭世帯数、母子・父子家庭児童数…「全国母子家庭世帯等調査」の割合を基準にして算出 (2) 児童扶養手当受給世帯から見た母子世帯の状況 母子世帯の状況を把握する方法のひとつとして、児童扶養手当の受給状況があ ります。 平成 16 年度の鎌倉市における児童扶養手当受給世帯は 531 世帯で、母子世帯 の 28.5%(平成 16 年度世帯推計値比較)が児童扶養手当を受給しています。 2 また、受給世帯の状況を見てみますと、 ① 母子家庭となった原因の約 90%が「離婚」 ② 1 世帯当たりの年間平均所得は約 135 万円 ③ 就労率は常勤、パート就労合わせて約 75% 養育費を受け取っている世帯は全体の約 32%で、1 ヵ月の養育費の額 ④ は平均約 5 万 5 千円 ⑤ 持ち家(家族所有を含む)率が 48.9%と借家とほぼ同率 上記のような状況がみられます。 鎌倉市の児童扶養手当受給世帯の特徴としては、持ち家率が全国調査結果の約 35%(平成 15 年調査結果)と比較して、非常に高いことがあげられます。 (3) 父子世帯の状況 父子世帯については、児童扶養手当のような制度を通じての実態把握が困難で す。因みに、平成 15 年の全国調査の結果からみますと、父子世帯における年間平 均収入額は 320 万円、持ち家率は約 58%、就労率は 91.2%(うち常勤は 75.9%) と、母子世帯と比較して、いずれも高い値となっています。 (4) 母子自立支援員の相談状況 ひとり親家庭の相談は、こども福祉課家庭福祉担当に配置されている1名の母子 自立支援員が中心となって対応をしています。 相談内容は母子寡婦福祉資金の貸付や児童扶養手当などの経済的支援・生活援護 に関するものが全体の約6割を占めています。 【鎌倉市母子自立支援員の相談状況】 (単位:件) 平成 16 年度 平成 15 年度 平成 14 年度 平成 13 年度 生活一般 (医療・健康、家庭紛争、就労、 結婚、養育費等) 児 童 (養育、教育、非行、就職等) 229 (26.4%) 272 (30.1%) 154 (22.9%) 416 (33.6%) 85 (9.8%) 124 (13.7%) 80 (11.9%) 185 (15.0%) 経済的支援・生活援護 (貸付、公的年金、児童扶養手 当、生活保護、税等) その他 (公営住宅、生活支援施設、売 店設置等) 545 (62.9%) 497 (55.1%) 420 (62.4%) 607 (49.1%) 8 (0.9%) 10 (1.1%) 18 (2.7%) 29 (2.3%) 867 903 672 1,237 区 合 分 計 3 (5) セルフヘルプ(相互援助)グループの状況 鎌倉市には、母子及び寡婦の方々が、親睦と生活の向上を図ることを目的とし て組織された「鎌倉市母子寡婦福祉会」 (セルフヘルプグループ)があります。 現在の会員数は 220 名(母子 38 名、寡婦 182 名)で、寡婦会員の方が母子の方 からの相談に応じる母子相談事業や緊急時の資金貸付事業、母子のふれあい事業な ど、母子家庭の自立に向けての様々な活動を行っています。 4 2 ひとり親家庭等への支援施策の現状 現在、鎌倉市が導入しているひとり親家庭等への支援施策を「経済的支援(家計) 」 、 「生活支援(住居) 」 、 「生活支援(家事) 」 、 「就労・自立支援(仕事) 」の4つに分類す ると、下記の表のようになります。 ひとり親家庭への支援施策の中には、父子家庭を対象としていない制度、あるいは対 象としていても何らかの制限を設けている制度がいくつかあります。 法令等の規定はあるものの社会環境の変化を考慮し、父子家庭を対象とした独自の制 度を制定している自治体も見受けられます。 また、利用者の少ない事業については、利用者の立場に立った、利用しやすい制度へ の見直しを検討する必要があると思われます。 (こども福祉課所管事業) 分類 事 業 対 名 母子 象 父子 平成 16 年度利用者数等 ひとり親家庭支援施策 児童扶養手当 ● 531 人 (受給者数) 母子寡婦福祉資金貸付制度(県) ● 母子 18 件・寡婦 0 件 母子寡婦及び父子福祉資金貸付制度(市) ● ● 0件 ひとり親家庭等児童の大学進学支度金 ● ● 14 件 遺児卒業祝金贈呈 ● ● 12 件 住居 母子家庭等家賃助成事業 ● ● 256 世帯 家事 ひとり親家庭等日常生活支援事業 ● ● 2 件(延 11 日) 自立支援教育訓練給付金支給事業 ● 母子自立支援員 ● 家計 平成 17 年度実施 (17 年 5 月現在 1 件) 仕事 867 件 (相談件数) 子育て家庭全般支援施策 (ひとり親家庭を含む) 児童手当 ● ● 延 78,382 人・427,150,000 円 特別児童扶養手当 ● ● 135 人 (受給者数) 短期入所生活援助(ショートステイ)事業 ● ● 1 件 (7 日間) 育児支援家庭訪問事業 ● ● 平成 17 年度実施 家計 家事 5 3 母子及び寡婦福祉法等の改正による国の政策転換 平成 15 年 4 月に「母子及び寡婦福祉法等の一部を改正する法律」が施行され、経 済支援から・生活・就労支援へと国の母子施策が大きく転換しました。 その内容は、子どものしあわせを第一に考えて、ひとり親家庭に対する「きめ細か な福祉サービスの展開」と母子家庭の母に対する「自立の支援」に主眼を置いたもの で、離婚後等の生活の激変を緩和するために、母子家庭となった直後の支援を重点的 に実施するとともに、就労による自立、子を監護しない親からの養育費の支払いの確 保を重視しようとするものです。 具体的には、 「福祉事務所を設置する自治体(都道府県・市等)において相談、情 報提供体制を整備しつつ、(1)子育てや生活支援策、(2)就労支援策、(3)養育費の確保 策、(4)経済的支援策を総合的、計画的に展開する。」といった内容となっています。 また、平成 15 年 7 月には、就業支援に重点を置いた「母子家庭の母の就業の支援 に関する特別措置法」が5年間の時限立法として成立し、地方自治体は国の施策に準 じて、母子家庭の母の就業の促進を図るために必要な施策を講ずるよう努めることと 定められました。 神奈川県においても、このような法律の改正や制定の趣旨を踏まえ、新しい母子家 庭、父子家庭及び寡婦に対する福祉対策を展開するために「神奈川県母子家庭等自立 促進計画」を策定し、市町村や福祉団体等との連携を図りながら、計画目標の達成に 努めています。 6 4 今後の施策の展開 少子高齢化が進む現在、女性の社会進出や核家族化の進行など子どもとその家庭を取 り巻く環境も大きく変化してきています。このような状況においては、全ての家庭にお いて、安心して安全にこどもを育てることができるよう社会全体で子育てを支援してい くとともに、とりわけ行政においては、子育て支援諸施策のより一層の充実に努めてい かなければなりません。 特にひとり親家庭に対しては、公営住宅の優先入居による居所の確保、就労にあたっ ての保育所の確保など、生活基盤の整備を最優先で取り組む必要があります。 当審議会としては、このような考えを念頭に置いた上で、今後の鎌倉市におけるひと り親家庭への施策について検討を重ねてきました。 また、審議を進めていく上で、ひとり親家庭の実情等を把握・理解する必要があるこ とから、母子家庭の母親、父子家庭の父親、そして実際に現場で相談に携わっている母 子自立支援員の方々に審議会の席にお越しいただき、ヒアリングを実施しました。 これらの経過を踏まえ、次のとおり提案をします。 (1) 就労支援の充実 鎌倉市における母子家庭については、小さな子どもを抱えながらパート就労してい る人が約3割いますが、収入、雇用条件が不安定であることから、より安定的な収入 を得るための支援を求める意見が多くあります。また、未就業の人が約2割おり、半 数以上の人が就業を希望しています。 このため、母子家庭に対しては、これまでの児童扶養手当等の経済的支援に加え、 安定的な収入を得て、自立した生活ができるよう、就労情報の提供をすることや、資 格取得、職業訓練など、就業に向けた職業能力開発のための支援を行っていく必要が あります。 神奈川県では、既に母子家庭等就業・自立支援センター事業、公共職業安定所(ハ ローワーク)等と連携した就業支援、またキャリア・コンサルティングなども実施し ており、母子自立支援員などが、窓口等を通じて情報の提供を行っています。 今後もひとり親が、より積極的にこのような事業を活用できるように、関係機関と の連携強化を図りながら、求人情報と求職者を結びつけるための支援に努めていかな ければなりません。 また、国では母子家庭の母の主体的な能力開発の取り組みを支援することによって、 母子家庭の自立を促進するため、母子家庭自立支援給付金事業として、 「自立支援教 育訓練給付金事業」と「母子家庭高等技能訓練促進費事業」 「常用雇用転換奨励金」 を制定しました。 7 鎌倉市では、平成 17 年度から自立支援教育訓練給付金事業を導入しましたが、母 子家庭の就業支援策を着実かつ効果的に推進するため、母子家庭高等技能訓練促進費 事業、常用雇用転換奨励金事業を早期に導入する必要があります。 (2) 子育て・生活支援の充実 ひとり親家庭に限りませんが、働く家庭にとって保育は大きな課題です。特にひと り親家庭になって、子育てと生計の担い手という二つの役割を一人で担わなくてはな らない状況において、保育の場の確保は切実な問題となってきます。 現在、鎌倉市では待機児対策を進めていますが、必要なときに、いつでも利用でき る入所定員を備えた保育施設の整備が望まれます。 また保護者の急な残業や出張、子どもの病気など緊急時に受け入れのできる施設・ 体制の整備は、ひとり親家庭が最も望んでいることで、早期に取り組むべき課題です。 鎌倉市では、子育て・生活支援のための施策として、ひとり親家庭等日常生活支援 事業や短期入所生活援助(ショートステイ)事業、ひとり親家庭の保育所への優先入 所、一時保育や延長保育などの特別保育に取り組んでいますが、必ずしも利用希望者 のニーズに十分応える機能を果たしているとは言えません。 特に短期入所生活援助(ショートステイ)事業については、受け入れ対象としてい る子どもの年齢や受け入れ体制などについての課題があり、利用希望者のニーズに十 分対応できる状況にないことから、課題の解決と事業の拡充を求めます。 父子家庭においては、育児や家事支援を必要としているにもかかわらず、所得制限 などにより、一部の制度が利用できない状況にあります。 一般的に父子家庭の父親は、母子家庭の母親と比較して常用雇用者(正社員)が多 く、安定的・継続的な収入は確保されているものの、裏を返すと勤務時間が長いこと から、子どもの養育上の課題を多く抱えていると言えます。 法令上の制限や財政事情など、多くの問題はあることと思いますが、父子家庭の利 用も視野に入れながら、利用者の使い勝手を十分に考慮した事業の充実や見直し、さ らには新たな子育て・生活支援事業の実施に取り組んでいく必要があります。 特に、鎌倉市次世代育成きらきらプランに登載されている休日保育事業、夜間養護 等(トワイライト)事業、乳幼児健康支援一時預かり事業(病後児保育)については、 早期の導入を望みます。 これら既存の施策、将来導入されるであろう施策については、ひとり親家庭である ことも考慮に入れた利便性の確保を図ることが重要です。 当面、各窓口間での連携を充実させ、迅速な対応に努めるとともに、将来的には、 相談とサービス提供の窓口が一本化されることが望ましいと考えます。 8 (3) セルフヘルプグループの活性化 ア 鎌倉市母子寡婦福祉会の活性化 鎌倉市には、母子及び寡婦家庭の生活の安定と地位の向上を図ることを目的とし て組織されたセルフヘルプ(相互援助)グループ、 「鎌倉市母子寡婦福祉会」があ ります。 このような既存の組織を有効に活用し、同じ悩みや問題を持つ人たちが対等な立 場で集い、体験を分かち合うことで、力を得ていくことが必要です。 一方、会自体の活性化も大きな課題です。 鎌倉市母子寡婦福祉会は、昭和 28 年の設立で、戦後の混乱期の中で築き上げら れてきた経緯から、高齢の寡婦会員が多くを占めています。近年、会員の世代交代 が進んでいますが、新たな会員の加入を促進し、活性化を図っていく必要がありま す。 また、鎌倉市母子寡婦福祉会の事業運営においては、行政からの支援に頼らざる を得ない状況にありますが、会を活性化することにより、組織運営面での強化を図 り、積極的な事業の受託に努めるとともに、将来的には会が自ら、 “職”をつくり 出し、会員に雇用の場を提供するような仕組みづくりも必要です。 鎌倉市においても、鎌倉市母子寡婦福祉会との協議に基づく支援を実施していく ことが求められます。 イ 集いの場づくり 母子家庭、父子家庭の方に対するヒアリングの中で、同じような環境にある仲間 に相談し、互いの体験を語り合い、気持ちを分かちあうことで、とても気持ちが楽 になったという発言がありました。 この発言からもうかがえるように、同じような環境にあり、同じ悩みを抱える方 たちが集い、話し合える場の確保と気軽に参加できるようなきっかけづくりが求め られています。 ひとり親家庭の方、特に父子家庭の方にとっては、仕事の関係等から参加できる 時間帯も夜遅く、あるいは休日に限られてしまいます。このような点に配慮をし、 地域資源の活用や公共施設の開館時間の検討など、集いの場づくりに努めていく必 要があります。 そして、その場に集う人たちの心のつなぎ役として、また必要に応じてひとり一 人が持つ力の引き出し役として、ファシリテーター(促進者)の存在が必要です。 自然発生的に生まれてくることが期待されますが、当初は関連業務を担当する保健 師などが担うことも考えられます。 9 ウ 父子家庭を中心としたひとり親家庭のセルフヘルプグループ立ち上げ支援 現在、鎌倉市には、父子家庭及びひとり親家庭全体を対象としたセルフヘルプ グループが存在しません。 今後、個々の父子家庭やひとり親家庭のセルフヘルプグループに関するニーズ を確認しながら、その立ち上げや運営について、必要に応じて市も支援していく ことが望まれます。 (4) 相談体制の強化 ア ひとり親家庭の子どものケア ひとり親家庭の子どもには、独自の悩みがあります。特に母子家庭における男 の子、父子家庭における女の子は、親に相談しにくい悩みもあることから、ひと り親家庭に理解のある相談員が、子どもからの様々な相談に応じる機会を創出し ていくことが必要です。 将来的には、ひとり親家庭の子どものセルプヘルプグループも展望できます。 今年度から鎌倉市では、不登校児童生徒への対策として、大学生・院生による 訪問活動(メンタルフレンド)を実施していますが、今後このような活動をひと り親家庭に拡充することも必要です。 子どもの心のケアにも配慮するため、現在子育てしている母子家庭などによる 援助グループを組織することも具体的な例として挙げられます。 イ 母子自立支援員による相談事業の強化・充実 ひとり親家庭については、精神的支援・就業支援・子育て支援等自立に向けて のトータルな支援が必要です。このため鎌倉市では、ひとり親家庭に対する総合 的な相談窓口として、現在、福祉事務所に 1 名の母子自立支援員を配置し、自立 のために必要な情報提供を行うとともに、様々な相談に応じています。 しかし、近年、ひとり親家庭の抱える問題は複雑多岐にわたり、また関係機関 との緊密な連携も必要になってきています。 このような状況の中で、ひとり親家庭の心理的負担を軽減し、その家庭に必要 な施策を効果的に活用することにより、速やかな自立ができるようきめ細かな支 援をするためには、休日・夜間に相談を実施するなど、相談体制の強化について 検討をする必要があります。 (5) 社会への広報・啓発 ひとり親家庭の子どもに限らず、心身ともに健康な子どもを育てるためには、行 政の支援に加えて、地域の人々や企業の理解と協力が必要不可欠です。 そのためには、広報や啓発活動を充実させ、子育てが社会全体で取り組まなけれ ばならない課題であることを認識してもらわなければなりません。同時に、ひとり 親家庭に関する諸施策について、理解と利用を勧めるための広報が必要です。 10 企業・地域と連携した子育て支援の取り組みを積極的に展開するとともに、看護 休暇や育児休暇などを取得しやすい職場環境づくりについて、企業に理解を求めて いくことも必要です。 11 おわりに ひとり親家庭に対する支援は、生活全般に関するもの、子育てに関するものに区分で きます。当審議会ではこれらについて審議し、鎌倉市で子育てをする家庭全体の支援の 充実と、ひとり親家庭固有のニーズに対応する支援の充実という二つの側面から、いく つかの提言を行いました。今後、これらの提言が鎌倉市のなかで活かされていくことを 望みます。 審議の過程では、当事者の「声」を施策に反映していくことの重要性が改めて認識さ れました。今後施策の実現と実施にあたっては、 「鎌倉市母子寡婦福祉会」との連携を 深めるとともに、父子家庭の意見を聞く機会を設けることも必要です。また、鎌倉市は、 意見を述べる機会を得られない家庭や、意見を述べる力が弱体化している家庭の存在に も留意し、関係機関とも連携しながら、意見や希望を聞く機会を設けるとともに、必要 に応じて意見を代弁する配慮をする必要もあります。 家庭のあり方が多様化する現代社会のなかで、ひとり親家庭が地域社会の一員として、 子育て家庭や全ての家庭とともに生活をし、子育てをしていけるように鎌倉市及び地域 社会が協働していく過程におけるひとつのステップを中間報告によって刻むことがで きれば幸いです。 12 鎌倉市児童福祉審議会委員名簿 (五十音順) 職 平成 17 年 11 月 22 日現在 氏 名 あ き た ちょうじろう 委 員 秋田 長二郎 委 員 石井 孝子 委 員 加藤 邦子 委 員 新保 幸男 副委員長 冨田 英雄 委 員 長 委 員 いしい かとう しんぼ とみた たかこ くにこ ゆきお ひでお まつばら やすお 松原 康雄 よ も ようこ 四方 燿子 所 属 神奈川県中央児童相談所 副所長 横浜市教育総合相談センター 学校カウンセラー 財団法人小平記念日立教育振興財団 日立家庭教育研究所 研究員 神奈川県立保健福祉大学 助教授 (保健福祉学部社会福祉学科) 社会福祉法人つきかげ会岩瀬保育園園長 (鎌倉市保育会会長) 明治学院大学 教授 (社会学部社会福祉学科) 子どもの虹情報研修センター 顧問 (日本虐待・思春期問題情報研修センター) 選出区分 事業に従事する者 事業に従事する者 学識経験のある者 学識経験のある者 事業に従事する者 学識経験のある者 学識経験のある者 任期;平成 15(2003)年 11 月 27 日∼平成 17(2005)年 11 月 26 日(2 年間) 選出区分;児童福祉法第 9 条第 3 項 児童福祉審議会の委員及び臨時委員は、児童又は知的障害者の福祉に関する 事業に従事する者及び学識経験のある者のうちから、都道府県知事又は市町 村長が、それぞれこれを任命する。 13
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