ウェストミンスタ－小教理問答 23 問「キリストの職務」三職二状態１、23 問～28 問は、救い主としてのキリストのお働き（職務）についての問答です。２、23 問は、その「キリストの職務」についての総説です。キリストは、三つの職務（預言者、祭司、王）を二つの状態（へりくだりの状態、高挙の状態）で果たされます。これをキリスト教の用語で、「キリストの三職二状態」と言い表します。３、キリストの三職については、24 問～26 問で教えられます。キリストの二状態については、27 問～28 問で教えられます。旧約時代の三職とキリスト１、「キリスト」という言葉は、新約聖書の原語ギリシャ語で「油注がれた者」という意味です。これは、旧約聖書の原語ヘブライ語の「メシア」（油注がれた者）のギリシャ語訳です。２、旧約聖書の時代、神様は、神の民に必要な恵みを与える仲立ちとして、三つの職務を立てられました。それは、預言者（神の御心を民に伝える役目）、祭司（神の宮に仕えて、民のために犠牲を捧げ、祈る役目）、王（神のしもべとして、民を守り、治める役目）でした。この三つの職務につく人は、就職式の時に頭から香油が注がれました。これが｢メシア｣(油注がれた者)という言葉の由来です。３、この三つの職務が完全に行なわれて、イスラエルの国に神様の恵みが余すところなく現れた時代は一度もありませんでした。民の側の罪と弱さ、預言者・王・祭司の側の罪と弱さによって、これらの職務から注がれる神様の恵みの素晴らしさは曇らされ続けました。また、イスラエルの国が衰えるにつれて、王はいなくなり、預言者は途絶え、祭司の系統は乱れました。４、それでもイスラエルの人々は、この三つの職務を完全に果たして下さる救い主を待望しました。メシア(キリスト)とはそのような期待を満たす方のことです。５、イエス様は、人々が思い描いた以上の仕方でこのような期待を成就する方として、この世に来られ、今も、天にあってこの三つの職務を果たして、救い主のお働きをしていらっしゃいます。罪と悲惨からの救いと三職私たちが罪と悲惨からの救われるためには、この三つのお働きをして下さる救い主が必要です。１、人は堕落して神の御心が分からない者となりました。神様がどれほどに私たちを愛しておられるかを悟ることができず、神様が招いておられる救いの道を知ることができず、神様が望んでおられる正しい生き方を知ることができません。このような私たちには、神様の御心を心に刻むようにして教えて下さる預言者的救い主が必要です。２、人は堕落して罪人となり、神に近づく資格を失い、神の恵みを受けることの出来ない者となりました。このような私たちには、完全に罪を償う働きをしてくださり、また、人のために神様に有効に執り成して下さる祭司的救い主が必要です｡３、人は堕落して罪人となり、罪と悲惨をもたらす悪魔の力に対抗できない者となりました。罪の力に逆らえず、｢自分の望む善は行なわず、望まない悪を行なう｣者となり(ローマ 7:20)、命の道ではなく死の道を歩く者になりました。このような私たちには、私たちを縛り付けている罪と悲惨の力（悪魔の力）を打ち破り、私たちを恵みの内に守り続けて下さる王的救い主が必要です。