ココがすごい!日本の建設機械

ココがすごい!日本の建設機械
トラクタ
(ブルドーザ)
Tractors "Bulldozers"
建設機械の代表格の一つでもあるブルドーザは、
トラクタに
ドーザという土工装置を取り付けたもの。なお、
トラクタとは物
を押し、けん引する機械で、建設工事に広く使われています。
トラクタはクローラ(無限軌道)式、ゴムタイヤのホイール式と
キャタピラージャパンD10T
に分けられますが、ホイール式はわが国では生産台数が少な
いため、ブルドーザといえばクローラ式が一般的です。
代表的なアタッチメント
ブルドーザのあけぼのは?
●パワーアングルチルトドーザ:ブレードが進
行方向に対し左右に向きを変えられるので、
押
●牛の代わり:ブルドーザは1923(大正12)年、米国で発明さ
した土を機械の左右どちらにも流すことができ
ます。
れましたが、
それまで整地は牛を使って行われていました。
その
●ストレートドーザ:ブレードが進行方向に対
牛
(bull)
が居眠り
(doze)
するほどになったことから、
ブルドーザ
し直角に固定されています。アングルチルト
の名が付いたといわれています。
ドーザに比べて1回で押し出せる量(ブレード
容量)が大きく、頑丈でハードな作業に向いて
●その後の発展:ブルドーザは、1923年に米国のカミングス、
います。
●Uドーザ:ブレード容量
マックロードという二人によってつくられたといわれていますが、
を大きくするため上から
これはクローラ式ではなく、
タイヤのある車の前方にブレードを
見てU字型にしたもので
付けたものでした。
クローラを装着した機械は、米国・キャタピ
す。
ラー社によって開発され、普及しました。現在では車輪を用いた
●レーキドーザ:大きめの岩石だけを押
しやすいように前面がスケルトンになっ
ています。
抜根にも使われます。
機械をホイールドーザ、
クローラを用いた機械をブルドーザと分
類しています。
●国産第1号は?:わが国では、戦前からブルドーザの研究が
●トーイングウインチ:
チメント。比較的柔らか
多く用いられます。
掘り起こすための大きな爪を持ったアタッ
行われていましたが、実用化を本格的に目指したのは太平洋戦
林業など特殊な作業に
い岩石や発破後の岩石
争 初 期 のことです 。
を、発破ほど周辺に影響
1942(昭和17)年に
を及ぼさずに掘削できる
ので、大型ブルドーザに
海軍が小松製作所に
多く用いられます。
製 作を発 注 、翌 年に
可変式
マルチシャンクリッパ
出典:社団法人日本建設機械化協会「日本建設機械要覧 2010」
完成したのがG40ブ
ルドーザです。
●リッパ:トラクタ後部に装着して、岩石を
小松製作所
G40
日本製ブルドーザの特徴は?
わが国のような多雨地帯では、軟弱な地盤でも走行できる機械
ブルドーザの用途は?
が必要とされたことから、広い設置面積を持たせて接地圧を下
土を削る、押す、
ならす作業に使用され、
アタッチメントによって
げ、特殊な三角断面履板(シュー)
を用いた湿地ブルドーザが多
さまざまな作業を行うことができます。
また、浚渫船が出入りで
く使用されています。
これは標準の履板に比べて軟弱地での適
きない場所で無線遠隔操縦により作業できる水陸両用、ダイ
応性に優れていることはもちろん、横方向の滑り特性や転圧効
バーによる有線遠隔操縦で海底を走行できる水中用、雲仙普賢
果にも長けている点が特徴です。
岳の水無川除石工事で無人化施工の主要機械として活躍した
中型機、小型機における湿地ブルドーザの稼働率は全体の80
ラジコンブルドーザなども開発されています。
∼90%、30t以下の大型機でも約50%を占めていることから
も、
その特徴が重宝されていることが分かります。
56
ブルドーザの変遷
代表的なシュー
●標準型:平らな板に短い突起が付いて
1904(明治37) 米国・ホルト社(キャタピラー社
の前身)がクローラ
(無限軌道)
を開発
います。
●フラットシュー:舗装面を傷めないよう
に接地面が平らです。
またゴムを貼り付
1923(大正12) 米国で車輪式のブルドーザが開
発される
けたものもあります。
●湿地シュー:軟弱地に強い幅広で三角
1943(昭和18) 小松製作所、海軍の発注によりG40を
開発、納品
断面。
小松製作所G40
初のディーゼル
1954(昭和29) 米国・キャタピラー社、
トラックタイプトラクタを開発
キャタピラー社、
ブルドーザにターボチャージャを初めて装
備し、40%の小型化を実現。翌年D9Dが販売開始
三角シューが考案され、湿地ブルドーザを開発 ●岩盤用シュー:岩盤上で作業するときに
使用するために強化されたシューです。
●雪上シュー:横滑りしないようになって
います。
D50をベースに
1959(昭和34) 小松製作所、
ドーザショベルD50S開発
出典:社団法人日本建設機械化協会「日本建設機械要覧 2010」
小松製作所D50S
安全対策はどうなっている?
1963(昭和38) 小松製作所、D80-Aスーパー車開発。キャタピラー三菱
(現・キャタピラージャパン)が日本に設立され、同社のブル
ドーザの品質を凌駕することを目指し、徹底的な品質管理の
もとモデルチェンジ
建設機械の中でも、
ブルドーザは最も過酷な条件で使用される
機械であることから、
オペレータや第三者に対する事故防止に
はさまざまな安全対策が講じられています。
湿地ブルドーザD60Pを開発
1965(昭和40) 小松製作所、
例えば、落下物や転倒などの事故からオペレータを保護する対
策としては、
次のようなものがあります。
●ヘッドガード:支柱式ヘッドガード、
ヘッドガードキャビンなど
を採用して、
落下物からオペレータを保護します。
小松製作所D60P
●FOPS(Folling-Object Protective Structure)
:土工
小松製作所D65E
水陸両用ブルドーザD125W開発
1969(昭和44) 小松製作所、
機械に取り付ける、
ヘッドガードよりさらに強化された落下物保
護構造。
D455A開発。
当時開発不可能といわれていた
1975(昭和50) 小松製作所、
出力500HP以上を実現した620HPの大型ブルドーザ
●ROPS(Roll-Over Protective Structure)
:土工機械
に取り付ける転倒時保護装置。走行速度16km/h以下で傾斜
1992(平成4) コマツ、世界最大のD575A開発。生産3台目が国内第1号
機として納入
角30 以上の硬い粘土質の斜面を転がって前後360 転倒する
という条件でも、オペレータが押しつぶされないほどの性能を
2002(平成14) コマツ、
D275AX GALEOを開発。初めて油圧駆動ファンを
採用、徹底した低騒音化を図る
持っています。
また、居住性、操作性の改善については、
サスペンション付シー
2005(平成17) 新キャタピラー三菱(現・キャタピラージャパン)、新世代環
TM
境対応型エンジン
「ACERT 」搭載ブルドーザD8T/D9T
発売
トの採用、
レバーやペダルの油圧操作化、配置や操作力の適正
化、
レバーの複合操作化による本数の減少、電子制御化による
2006(平成18) 新 キ ャタピ ラ ー 三 菱 、新 世 代 環 境 対 応 型 エ ン ジ ン
TM
「ACERT 」搭載ブルドーザD10T発売
運動量の低減などがあります。
新世代環境
2008(平成20) キャタピラージャパン、
TM
対応型エンジン
「ACERT 」搭載
ブルドーザD11T発売
キャタピラージャパン
D11T
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ココがすごい!日本の建設機械
トラクタ
(ホイールローダ)
Tractors "Wheel Loaders"
土木工事に伴う掘削で発生する土砂や鉱山、採石場で採
掘した原石を運搬機械に積込む建設機械がトラクタです。
走行方式によってホイール式とクローラ式に大別されま
す。
このうち、ホイール式のものをホイールローダと呼び
ます。農業用トラクタやフォークリフトから派生したものと
建設用トラクタをベースに専用機として開発されたものと
コマツWA600マグナムローダ
に分かれます。
すれば除雪作業に使えます。
日本でのホイールローダのあけぼのは?
ホイールローダの長所は?
●米国で誕生:1939(昭和14)年に二輪駆動のショベルロー
ダが、1947(昭和22)年には四輪駆動のホイールローダ(リ
●適用範囲が広い:アーティキュレート式の車体はバケットとリ
ジッド式=フレーム固定型)が米国で誕生しました。1954(昭
ンク機構を備えた前部とエンジンを搭載した後部をピン連結し
和29)年にはアーティキュレート式が米国で開発されました。
た屈折構造です。
ブルドーザに比べると掘削力は劣るものの、地
●国産第1号は?:わが国に
ならしや整地は可能。骨材の積込みやのり面整形、除雪作業な
おけるホイールローダは土
ど適用範囲が広いのが特徴です。
木工事用トラクタの足回りを
●多様なアタッチメント:油圧ショベルのショベル幅を広げたよ
タイヤに変えて発展。1949
うなゼネラルパーパスバケットをはじめ、作業用途に応じたア
(昭和24)年日本輸送機が
タッチメントが用意されています。
ブレード、グレーダ、
アース
国産初の二輪駆動機
オーガなどを取り付けることもあります。
東洋運搬機85A
SDA25を試作しました。1960(昭和35)年には東洋運搬機(現・
TCM)
が国産第1号の四輪駆動機(リジッド式)85Aを開発。砕石
▼ロックバケットは、
原石の掘削、積込
みなどの重作業用
現場における軽作業用として使われました。
●その後のホイールローダ:ホイール
ローダは1960年代以降の高度経済
▲ゼネラルパーパ
スバケットは土
砂、砂利、採石
など各種原材料
の積込み用
成長期政策で需要が急増。1962(昭
和37)年に川崎車輛(現・川崎重工
業)が国内初のアーティキュレート式
川崎車輛KLD5P
KLD5Pを開発。1965(昭和40)年に小松製作所がJH30B、
1966(昭和41)年にキャタピラー三菱(現・キャタピラージャパ
▲ マルチ パーパスバ
ケットは掘削、積込み
作業のほか、排土、
整地、
くわえ作業など
多目的に使用できる
出典:社団法人日本建設機械化協会
「日本建設機械要覧 2010」
ン)
がCAT922を発売し、市場形成に弾みをつけました。
●「一気通貫」
の作業に対応:一般的な現場作業では、
ダンプト
ホイールローダの用途は?
ラックと連携し、土砂の掘削、積込み、運搬作業を行いますが、
主として土砂、砂利、岩石
最近は土砂の掘削から運搬作業までをホイールローダ単独で
などの積込みに使用されま
行う
「ロード&キャリー」工法が採用されるケースもあります。
す。バケットの代わりにロ
●機動性が高い:クローラ式に比べると掘削能力は劣るもの
グフォークを装着すれば木
の、走行速度が高いため、作業時の機動性に富んでいます。交
材の選別や運搬作業が可
通の障害にならない速度で走行できるのは大きな利点です。
能。ロータリ除雪機を装着
コマツ505ペイローダ 58
ホイールローダの変遷
ホイールローダが登場するまで
どうしていたのか?
1939(昭和14) 米国で二輪駆動のショベルローダ誕生
トラクタは牛、馬などの畜力に代わる農業用機械としてスタート
1947(昭和22) 米国で四輪駆動のリジット式=フレーム固定型ホイール
ローダが誕生
しました。高度成長期にはショベル系掘削機で積込み作業を
行っていましたが、積込量が少ない上、掘削作業に専念できな
二輪駆動のSDA25を試作
1949(昭和24) 日本輸送機、
いため専用機化が図られました。
1954(昭和29) 米国でアーティキュレート式
(屈折式)
のホイールローダ誕生
(現・TCM)、
四輪駆動の85Aを開発
1960(昭和35) 東洋運搬機
海外での活躍ぶりは?
(現・川崎重工業)
、
日本初のアーティキュレート式
1962(昭和37) 川崎車輌
ホイールローダKLD5Pを開発
ホイールローダは新品、
中古機とも90カ国前後に輸出されてい
JH30Bペイローダを発売
1965(昭和40) 小松製作所、
ます。主な用途は米作や麦作などの農耕作業に伴う掘削や積込
(現・キャタピラージャパン)
、
CAT922発売
1966(昭和41) キャタピラー三菱
みなど。基本的な使われ方は同じです。欧州、北米、中国など世
アーティキュレートステアリング式ホイール
1967(昭和42) 小松製作所、
ローダJH65Cペイローダ発売
神戸製鋼所(現・コベルコ建機)、米
国のアリス・チャーマーズ社とホイー
ルローダの技術提携開始。翌1968
年に545Hと645を完成、
さらに
神戸製鋼所645
1969年に745を完成
界各地で活躍しています。
ホイールローダには、どのような技術が
生かされているのか?
●電子制御による自動変速:オペレータの神経を積込み作業に
(現・ヤンマー建
1972(昭和47) ヤンマーディーゼル
機)、国産初のスキッドステア式ミニ
ホイールローダY30Wを発売
集中させる一方、変速操作を容易にするため、電子制御のパ
ワーシフトトランスミッションが採用されています。
これにより、
ヤンマーディーゼル
Y30W
1973(昭和48) 神戸製鋼所、
LK1500開発
作業性が向上しました。
●バケット機構に多用されるZリンク:バケットを作動させるリ
KLD85Z開発
1974(昭和49) 川崎重工業、
ンク機構には掘削力を高めるZリンクが多用されています。
510ペイローダ発売
1976(昭和51) 小松製作所、
神戸製鋼所、LK700開発
●ネガティブブレーキを装着:ブレーキ系の空気圧が低下した
り、
エンジンが停止して油圧が低下したりした場合に備えて、緊
1979(昭和54) 神戸製鋼所、
LK300開発
急ブレーキを利かせるネガティブブレーキが装着されています。
ミニホイールローダ
1981(昭和56) 小松製作所、
WA30-1発売
大きな制動力を要する機械ならではの安全対策です。
小松製作所WA30-1
アーティキュ
1983(昭和58) ヤンマーディーゼル、
レート式ミニホイールローダY31WA発売
ホイールローダの将来展望は?
1984(昭和59) 東洋運搬機、
850・860・870発売
久保田鉄工(現・クボタ)
、
R350発売
小松製作所、WA350-1発売
●さまざまな省エネ対策:地球環境保全対策の一環として、省
エネに着目した機種開発やシステム構成が一段と進むと思われ
ミニホイール
1987(昭和62) ヤンマーディーゼル、
ローダY11WA発売
ます。
とりわけ、電気・電子機器やハイブリッド技術を応用した
開発が進むでしょう。
1988(昭和63) ヤンマーディーゼル、
ドイツ・クラマー社
と提携し4WS式
「カニローダ」
V34発売
日立建機、LX70発売
●無人化装置の活用:ホイールローダは運搬機械であるダンプ
トラックとともに過酷な作業環境で使われることの多い建設機
械です。
このため、オペレータの安全確保や生産効率の向上を
久保田鉄工
TOUGH-BOY R350
日立建機
LX70
WA470-3アバンセローダ発売
1993(平成5) コマツ、
川崎重工業、AUTHENTシリーズ発売開始
日立建機、
TCM
ZW310
WA470-5 GALEO発売
2001(平成13) コマツ、
狙いとする無人化装置の活用は大きなテーマです。
●海外に照準:海外でも使われることが多いため、気温や高度
といった自然条件、安全基準、多様な規制など、各国の実情に応
じたきめ細かな対応は不可欠。
日本製のホイールローダは厳し
WA600マグナムローダ発売
2006(平成18) コマツ、
日立建機・TCM、
ZW220・250・310発売
新キャタピラー三菱(現・キャタピラージャパン)、
950H・962H・966H・972H・980H発売 新キャタピラー三菱
950H
い海外ユーザの評価を得ています。
V-2シリーズ発売開始
2007(平成19) 川崎重工業、
川崎重工業V-2シリーズ
59
ココがすごい!日本の建設機械
油圧ショベル
Hydraulic Excavators
油圧ショベルとは掘削機械の一種で、日本の建設機械
を代表する機種といえます。掘る・運ぶ・吊るといった
作業を1台で、さらにアタッチメントを交換することで
多様な作業を行うことができる万能機械です。その技
術の高さにより日本製の油圧ショベルは世界中で活
躍しています。
ヤンマー建機ViO50-5B
が特徴です。
アタッチメントの交換により各種アプリケーション
日本での油圧ショベルのあけぼのは?
にも対応できるという、幅広い用途に利用可能な点が、
ユーザに
● 海 外 か ら 技 術 導 入:
好まれたといえます。
1961(昭和36)年、新三菱
●適合性:小型化により、狭い日本の工事現場での使用が容易
重工業(現・三菱重工業)
が
に。
また、掘削作業においては比較的土質の硬いわが国(火山
フランスのシカム社からの
帯)
では掘削専用機として油圧ショベルが適していること、特に
技術導入によりユンボY35
高度成長期に進展した都市化によって油圧ショベルでなければ
を発売。
これが日本で製造
対応できない工事が増えたことも背景にあります。
された最初の油圧ショベル
です。
新三菱重工業ユンボY35
油圧ショベルの用途は?
●純国産の油圧ショベルも登場:1965(昭和40)年、
日立製作
所(現・日立建機)
が、海外からの技術導入に頼らない純国産品
主に整地、運搬、積込み、掘削作業ですが、アタッチメントな
UH03を発売。
その前後から各社が参入して市場が活性化、技
どの交換によりさまざまな用途への対応が可能です。スク
術レベルが向上し、
日本の油圧ショベルは現在世界で最も活躍
ラップ処理、林業、砕石、鉱山、道路整備・管理、ブロック運搬、
している建機となっています。
草刈りなど多岐にわたります。油圧ショベルがいかに時代に
●ミニショベルのあけぼの:1967(昭和42)年、東京建機が英
求められ、
それに応えてきたか、その変遷は次のとおりです。
国のスマレー360を輸入したのが始まりです。
●1.基本作業(掘削・旋回・積込み)
:原野の開拓段階から建物
をつくる時代になり、
土を平面に移動させることから立体移動へ
と変わったことで、
油圧ショベルの得意とする掘削・旋回・積込み
油圧ショベルの長所は?
を必要とする工事が増加。
●利便性:整地、運搬、積込み、掘削と幅広い用途で活用可能。
●2.地面より下の作業(深掘り)
:建物が建ち住人が増えたこと
ホイールローダ、
ブルドーザなどの水平型掘削機に比べて、
垂直
から、
人が暮らすために必要な上下水道、
ガスなどの本管の敷設
掘削ができ、
かつ自由度が高いことも特徴です。
が始まり、
深掘りのできる油圧ショベルが活躍。
●汎用性:多種多様の作業装置が開発され、汎用性が高いこと
●3.地面より上の作業(解体)
:都市が成熟すると老朽化した既
加藤製作所HD820V
キャタピラージャパン
CAT320D
60
日立建機ZX200-3
存の建物を壊して新しい建物を建築するようになり、
その解体作
油圧ショベルの変遷①
業を行う機械としても油圧ショベルが活躍。
●4.狭い場所での工事(オールマイティの機械)
:狭い場所で
(現・コベルコ建機)、電気ショベル50Kを発売
1930(昭和5) 神戸製鋼所
の工事が増加。
しかし狭い現場には何台もの専用機が入れない
1953(昭和28) 石川島コーリング
(現・IHI建機)
、
機械式ショベル205を発売
ため、
さまざまな用途に対応し、
吊り作業までできる油圧ショベ
ルのニーズが一層増加。
1956(昭和31) 神戸製鋼所、
機械式ショベル255Aを発売
1961(昭和36) 新三菱重工業
(現・三菱重工業)、国産初の油圧ショベル
ミニショベルの用途は?
ユンボY35を発売
昭和40年代後半に埋戻し作業が容易なブレードと壁際を掘削
1962(昭和37) 日立製作所
(現・日立建機)、電気ショベルU23を発売
できるブームスライド機構を持った機械が登場しました。
さら
1963(昭和38) 油谷重工
(現・コベルコ建機)、
ホイール式油圧ショベル
に、全旋回式とブームスイング機構を備えた機種が開発され、
TY45を発売
現在のミニショベルの原型が生まれました。1983(昭和58)
年、
いわゆる超小旋回機の出現により車両幅内での作業が可能
1964(昭和39) 小松製作所、
機械式ショベル22Bを発売
となり、都市型土木に大きく貢献。
また、1993(平成5)年には
住友機械工業(現・住友建機)、機械式ショベルLS78を
発売
超小旋回機と標準機の長所を完備した後方超小旋回機が発売
され、
脚光を浴びました。
油圧ショベルUH03を発売
1965(昭和40) 日立製作所、
1967(昭和42) 神戸製鋼所、
油圧ショベルH208を発売
油圧ショベルの普及によって
実現できたことは?
加藤製作所、油圧ショベルHD-350を発売
竹内製作所、
ホイール式ミニショベルTB300を発売
久保田鉄工(現・クボタ)、油圧ショベルKB30Rを発売
作業の効率化、工期の短縮化、作業の専門化、小型による機械
小松製作所、油圧ショベル15Hを発売
化(人力作業から機械作業へ)、
コストの縮減、現場の安全性向
日本製鋼所、油圧ショベルMH3を発売
ヤンマーディーゼル
(現・ヤンマー建機)、
ミニショベル
上、
省人化、
工事の大規模化などが挙げられます。
YNB-300を発売
クローラ式ミニショベルTB400を発売
1969(昭和44) 竹内製作所、
油圧ショベルが登場するまで、
どうしていたのか?
(現・イワフジ工業)、
ミニショベルを発売
1970(昭和45) 岩手富士産業
土木工事や砕石関係ではホイールローダが、住宅工事・管工事
ミニショベルHKB-007を発売
1971(昭和46) ハニックス工業、
は人力が、建物解体・スクラップ処理ではクレーンが現在の油圧
石川島コーリング、油圧ショベル375を発売
ショベルの役割を担っていました。
さらに古くは鋤・鍬・シャベ
竹内製作所、
全旋回式ミニショベルTB1000を発売
長野工業、全旋回式ミニショベルDAIDOを発売
ル・もっこなどと牛馬・人力による作業、1800年代は動力源に
1970年代から、
ミニショベルの需要が増大
蒸気機関を利用した機械式トラクタやショベル、1930年以降
はディーゼルエンジン搭載の機械式トラクタやショベルなどを
1974(昭和49) 久保田鉄工、
ミニショベルKH-1を発売
使用していました。
IHI建機10VZ
クボタRX306
61
コマツPC30MR-3
ココがすごい!日本の建設機械
油圧ショベル
Hydraulic Excavators
ントの車幅内寸法への折り畳みと側溝掘り作業を可能にするな
油圧ショベルにおける技術革新のポイントは?
どの工夫が施されました。
1990年代、
政府主導による下水道工事の急増や、
いわゆる都市
ミニショベルにおいては、
ミニ用可変油圧ポンプ、軽量小型エン
型土木―狭所・夜間の作業および住宅街での騒音対策など、狭
ジンの採用により小型化が実現しました。
い日本国土の有効開発の必要性を背景に、施工方法が工夫さ
れ、
技術革新が進みました。
低騒音に寄与した技術とは?
●操作性の容易化:当初、油圧ショベルは熟練オペレータしか
操ることができませんでしたが、誰でも簡単に操作ができるよ
騒音の発生源であるエンジンと冷却装置を囲い込み、騒音が外
う、パイロット操作系の「油圧化」が図られました。また、昔の
部に漏れないように配慮しています。
エンジンについてはゴムマ
ショベルはアクチュエータごとに作業機レバーがありましたが、
ウントによる制振化も施されています。
また、油圧ポンプから発
誰もが操作できるようレバーを2本に減らすなどの工夫がなさ
生する高音ノイズの除去も図られています。
その他、
ボディ剛性
れました。
の向上、高性能マフラー採用、ポンプでは油圧脈動の低減、
カ
●作業性能の向上への要求:エンジン出力を最大限に油圧ポン
バーや吸気・排気ダクトなどによる吸音遮音、
フロントアタッチメ
プに伝達できるよう、
エンジンと油圧ポンプの電子制御化が図ら
ントのガタ低減や走行音の低減、
キャブ剛性アップ、内張り、防
れました。
振マウントなどによるキャブ内騒音の低減、
低騒音作業モードの
●超小旋回機能への期待:都市部の工事が増えたことにより
設定など、
さまざまな対策が講じられています。
ニーズが高まりました。1980年代後半に第一世代が販売され
重宝がられましたが、第二世代ではコンピュータを搭載すること
油圧ショベル発展の背景は?
により第一世代の問題点を解決、超小旋回機が油圧ショベルの
中で地位を獲得しました。
油圧ショベルの技術進展そのものもさることながら、
高度経済成
●電子制御:コントローラの搭載で電子制御が可能となり、
エン
長期の高速道路網、住宅建設・下水道整備など急速に進んだイ
ジンと油圧ポンプを制御することで馬力を効率的に使用できる
ンフラ整備が大きなきっかけであったといえます。
その後オイル
ようになりました。
ショックや公害問題から環境保全や公害防止、
省資源・省エネル
●デザイン面での進歩:デザイナによる外観デザインが施され
ギーが意識され、
さらにコスト縮減、一層の環境保全、災害防止
るようになったことも進歩の一つです。
の需要を経て、
インテリジェント化、
クリーンで豊かな生活環境、
人間尊重・安全社会、
スクラップ&ビルドといった社会資本の高
機能化が、
油圧ショベル発展の背景として挙げられます。
油圧ショベルのターニングポイントである
小型化に寄与した技術とは?
海外でも活躍?
エンジン、油圧機器の小型化・効率化です。
また複数の機能・装
置の一体化・集約化技術。例えば、燃料タンクと作動油タンクの
中古車の流通を含めれば、
ほぼ全世界で使われているといえる
一体化、
油圧ポンプの1ポンプ化です。
でしょう。
ちなみに2008(平成20)年の輸出実績を見ると、油圧
小旋回化技術も小型化に寄与しています。小旋回を実現するた
ショベルの新車が126カ国、
中古が94カ国、
ミニショベルの新車
めに平行リンク式オフセットブームを採用したことによりブーム
が62カ国、
中古が99カ国と報告されています。
少なくとも126カ
取り付け位置を運転席横に配置、主要コンポを限られた場所に
国以上で活躍しているということになります。
配置、
ラウンドタイプのキャブの開発(スライドドアの採用)、
フロ
長野工業NS55R-7221
日立建機ZX30UR-3
62
北越工業AX35u
油圧ショベルの変遷②
油圧ショベルの将来展望は?
●環境への対応力:主要な三要素は、燃費の低減・CO2の排出
(現・IHI建機)、
ミニショベルIS010を発売
1975(昭和50) 石川島コーリング
抑制・騒音の軽減です。
コスト面で課題は残されているものの、
ミニショベルPC02-1を発売
1976(昭和51) 小松製作所、
油圧ショベルが生産額でブルドーザを抜き、
首位へ
1970年代の後半から、
海外メーカとの技術提携解消へ
電気油圧ショベル、
ハイブリッドの油圧ショベルの開発も進んで
います。
ミニショベルHS8S/12Sを発売
1981(昭和56) 北越工業、
●新興国への進出:日欧米市
超小旋回式ミニショベルS&B22を発売
1983(昭和58) ハニックス工業、
建設省(現・国土交通省)
の低騒音型建設機械指定制度が
発足
場は成熟しており、BRICsに続
き、新たな新興国で、油圧ショ
1984(昭和59) 三菱重工業、
ミニショベルMS030を発売
ベルの需要をつくり出していく
ことが重要です。
そのためにも、
新興国にマッチした価格(コス
(現・キャタピラージャパン)、
ミニショベ
1987(昭和62) 新キャタピラー三菱
ルMXR55を発売
コベルコ建機SK80H-2
ハイブリッド
超小旋回式油圧ショベルPC75UU-1を発売
1988(昭和63) 小松製作所、
神戸製鋼所
(現・コベルコ建機)
、
ミニショベルSK042を発売
ト)
・仕様の油圧ショベルを開
発・生産していくことが今後の
1989(昭和64) 建設省の超低騒音型建設機械指定制度が発足
課題となります。
(現・日立建機ティエラ)、
ミニショベルEX35を発売
1991(平成3) 東洋社
●多機能化:電子制御化・自動
化・ロボット化・インテリジェン
1992(平成4) 建設省の排出ガス対策型建設機械指定制度が発足
ト化・フロント多関節化など自
(現・ヤンマー建機)、世界初の後方超小
1993(平成5) ヤンマーディーゼル
旋回式ミニショベルViO40を発売
由 度 追 加 による多 機 能 化 を
図っています。
●サービス性の向上:画期的な
コマツPC200-8
ハイブリッド
1996(平成8) 建設省の低振動型建設機械指定制度が発足
ヤンマーディーゼル、
世界初の後方超小旋回式油圧ショベ
ルViO70を発売
省エネ、低コスト化、
メンテナン
GPS搭載の世界初の油圧ショベルZAXIS200
2000(平成12) 日立建機、
を発売
建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律「建設リサ
イクル法」
(国土交通省所管)
施行
スフリー化などニーズに応じた
開発・対応が講じられています。
その他、壊れない機械、居住性
2001(平成13) 国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律
「グ
リーン購入法」
(環境省所管)施行
向上、開発効率向上、生産シス
テムの効率向上、
そして情報化
2005(平成17) コベルコ建機、
世界最大の建物解体機SK3500Dを発売
施工対応などが、今後の油圧
2006(平成18) 日立建機、
国内最大の油圧ショベルEX8000を発売
コベルコ建機、世界初のハイブリッド油圧ショベルSK70H
を製作
竹内製作所、
リチウムイオンバッテリ式ミニショベル
TB016Eを製作
特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律「オフロー
ド法」
(環境省・経済産業省・国土交通省所管)施行
ショベルの展望を占うキーワー
ドとなります。
竹内製作所TB117E
リチウムイオンバッテリ式
2008(平成20) コマツ、
ハイブリッド油圧ショベルPC200-8ハイブリッドを
世界で初めて発売
世界初のマグネット仕様ハイブリッド油圧ショベ
2009(平成21) 住友建機、
ルSH200LC-5LMを発売
住友建機SH200LC-5LM
マグネット仕様ハイブリッド
63
ココがすごい!日本の建設機械
キャリア
Carriers
ダンプトラックやトラックが容易に入ることが
できない軟弱地盤、不整地の作業場で建設資材や
土砂などを運ぶのに使われる機械です。走行方式
にはゴム製または鉄製のクローラ式とホイール
式とがありますが、現在は走破性に富むクローラ
式が主流です。
ヤンマー建機C50R-A
に選べるようになりました。また、これまで油圧ショベルが
日本でのキャリアのあけぼのは?
補助的に担っていた現場での機材運搬作業を主体的に行う
ミニキャリアも登場しています。
●コンバインから進化:欧米からの技術導入が多いほかの建
設機械と違い、キャリアは日本生まれ。母体は農業機械のコ
●荷台部分に拡張性がある:必要に応じて、荷台部分にさま
ンバインです。開発者が「コンバインの足回りを応用して荷
ざまな装置を取り付けられるので、人工降雪機、土壌安定処
箱を付ければ、軟弱地での資材運搬に役立つのではないか」
理機、ボーリングマシン、林業用ウインチなどとしても使え
と提案したことが開発のきっかけとなりました。
1971
(昭和
ます。
46)
年のことです。
●国産第1号は?:国産初というより世界初の実用機は1971
キャリアの用途は?
(昭和46)
年にヤンマーディーゼル
(現・ヤンマー建機)
が発売
したYF500Dです。
欧州にはホイールタイプのダンパがあり
軟弱地や山間部、畑、林道、地下、建物内など、トラックやダン
ましたが、
キャリアとは異なるものです。
プ車が進入できない現場で活躍。圃場整備、河川改修、土地・
●その後のキャリア:HST
(油圧式)
システムの採用による作
林道造成などに広く使用されています。
軟弱地での走破性に
業性能の向上やエンジン搭載方向の改良による視認性の向
勝るクローラ式がホイール式より普及しています。
上など改良が進みました。また、機動性を高めることを狙い
として、
走行車両用ゴムクローラが発達しました。
キャリアが登場するまで、どうしていたのか?
ベルトコンベヤ、人力、馬そりなどに頼っていました。建機を
キャリアの長所は?
用いる場合は、ダンプトラックが走行できる仮設道路をつく
●不整地などに強い:凹凸の多い地盤や軟弱な地盤、狭い場
るか、ブルドーザ、トラクタショベル、スクレープドーザ、
所、
急勾配の場所など、
足場の悪い不整地での走行性に優れて
モータスクレーパなどで施工していました。
いる点が最も大きな特徴です。現場での機動性の鍵を握る高
速用ゴムクローラの技術開発も進んでいます。
海外での活躍ぶりは?
●作業効率が高い:初期のキャリアは小型であったため、運
搬以外には使われていませんでしたが、中・大型化に伴い荷
欧州の山間部や軟弱地で小型機が普及しています。
英国では
台にクレーンが付きました。これにより、U字溝などの積込
日本からの中古機を改造して、軟弱地用の運搬機として使っ
み、
運搬、
据付けが容易にできるようになりました。
ているケースもあります。大型機は採石場、小型機は保養地
●作業の幅が広い:荷台部分が360 旋回できるようになる
の運搬などで使用されています。建柱車、ボーリングマシン
と、余計なステアリングを切ることなく、ダンプ場所を自由
の台車としての用途もあります。
IHI建機IC30
クボタRG-15Y-5
キャタピラージャパンLD1000E
64
コマツCD60R
キャリアの変遷
キャリアには、どのような技術が
生かされているのか?
1971(昭和46) ヤンマーディーゼル
(現・ヤンマー建機)
、
世界初のゴムク
ローラ式キャリアYF500Dを発売
●油圧駆動技術:動力伝達方式の主力である油圧駆動は、走
鉄クローラ式キャリアYFW1000D・
1973(昭和48) ヤンマーディーゼル、
2000Dを発売
行、停止、加減速、前後進などの切り替えがスムーズに無段変
1977(昭和52) 日立建機、
2tクレーン付鉄クローラ式キャリアCH40を発売
ヤンマーディーゼル、
ホイール式キャリアYFW15Dを発売
速できるのが特徴。頻繁に発進・停止を繰り返すような走行
に適しています。制御が確実で、メンテナンスが容易である
(現・クボタ)
、
鉄クローラ式キャリアRC-20を発売
1978(昭和53) 久保田鉄工
点も機械駆動式より優れています。
ホイール式キャリアRC-8FD、
RC-15FDを発売
1979(昭和54) 久保田鉄工、
キャタピラー三菱
(現・キャタピラージャパン)
、
鉄クロー
ラ式キャリアLD35を発売
●クローラの走行技術:かつて走行方式をクローラと二分し
ていたホイール式は軟弱地における走破性の弱さや価格の
(現・筑水キャニコム)
、
小型クローラ式キャリア
1980(昭和55) 筑水農機
GC660
(積載重量1.3t)
発売
日立建機、
ホイール式キャリアCW-M15を発売
諸岡、
第1号機となるMST-500
(積載重量2.5t)
を発売
高さなどを理由に淘汰されました。半面、クローラ式は最高
速度11km/hを実現するなど、
走行性能を高めています。
●前後進の制御技術:荷台部分の360 旋回や運転席の反転に
MST-600(積載重量3t)
を発売
1981(昭和56) 諸岡、
ヤンマーディーゼル、
クレーン専用キャリアYFC22を発売
より、走行方向を変えずに前後進操作することができます。
鉄クローラ式キャリアLD25を発売
1982(昭和57) キャタピラー三菱、
諸岡、
MST-300を発売
ステアリングを切って方向転換する必要がないため、
作業現
場の路盤を傷めにくく、
特に圃場整備で効果を発揮します。
MST-800(積載重量4t)
を発売
1983(昭和58) 諸岡、
●部品を積極的に共用:キャリアの固有技術を支える旋回装
1984(昭和59) 諸岡、
MST-1500(積載重量6t)
を発売
置や足回りの主要部品は油圧ショベルとの共通化を図って
いるメーカがほとんどです。これにより、整備性や信頼性を
高速ゴムクローラ式キャリア
1985(昭和60) ヤンマーディーゼル、
YFW25Rを発売
高めています。
鉄クローラ式キャリアLD350を発売
1986(昭和61) キャタピラー三菱、
MST-2500(積載重量15t)
を発売
1987(昭和62) 諸岡、
三転ダンプ式小型クローラ式キャリアBFG1301
1988(昭和63) 筑水農機、
発売
諸岡、
MST-3000(積載重量15t)
を発売
キャリアの将来展望は?
●インフラ整備途上国で活躍:インフラ整備途上国の広い場
1989(平成元) 諸岡、
MST-2200(積載重量10t)
を発売
所ではダンパ、マテリアルハンドリングマシンなど、他機種が
1990(平成2) 筑水キャニコム、
クローラ式キャリアSE2301を発売
運搬機として活躍しています。
1991(平成3) 諸岡、
MST-450(積載重量2.5t)
を発売
●走破性の一層の改良:技術革新の重点は、軟弱地盤はもちろ
1992(平成4) 諸岡、
国内最大キャリアダンプMST-3300(積載重量17t)
、
PC-065B(積載重量3t)
を発売
ん、
どんな現場でも走行できる走破性の一層の改良です。
そのポ
1993(平成5) 石川島建機
(現・IHI建機)
、
IC30
(積載重量2.5t)
を発売
新キャタピラー三菱
(現・キャタピラージャパン)
、
ゴムク
ローラ式キャリアLD1000を発売
イントとなる足回りの耐久性強化には素材や部品の段階から取
り組む必要があります。
●農業市場へ進出:キャリアは圃場整備で用途を広げ、最近で
1994(平成6) 新キャタピラー三菱、
ゴムクローラ式キャリアLD1000B
を発売
筑水キャニコム、
荷箱180 旋回のダンプクローラ式キャリ
アBFG1303D4を発売
は山間部の高速道路建設やダム工事現場で使われていますが、
性能を維持しながら軽量化と低価格化が実現できれば、農業市
荷箱180 旋回のクローラ式キャリア
1995(平成7) 筑水キャニコム、
S25AD4を発売
場への進出が可能になります。
農業機械のコンバインを母体とし
て始まった技術開発が農業市場で実を結ぶわけです。
IC45
(積載重量4t)
発売
1996(平成8) 石川島建機、
コマツ、
CD60R
(積載重量6t)
、
CD110R
(積載重量11t)
を発売
新キャタピラー三菱、
ゴムクローラ式キャリアLD400、
LD700、
LD1000Cを発売
筑水キャニコム
S25AD4
IC70
(積載重量6.5t)
、
IC100
(積載重量10t)
発売
1998(平成10) 石川島建機、
日立建機、
全旋回の鉄クローラ式キャリアCHR70を発売
諸岡MST-2200VD
ゴムクローラ式キャリアLD1000D
2000(平成12) 新キャタピラー三菱、
を発売
日立建機、
全旋回のゴムクローラ式キャリアEG40Rを発売
CD10R
(積載重量0.9t)
を発売
2001(平成13) コマツ、
日立建機、
全旋回式のゴムクローラキャリアEG110Rを発売
CD20R
(積載重量2t)
を発売
2003(平成15) コマツ、
ゴムクローラ式キャリアLD700E、
2004(平成16) 新キャタピラー三菱、
LD1000Eを発売
日立建機
EG70R-3
65
ココがすごい!日本の建設機械
油圧クレーン
Mobile Cranes 油圧クレーンとは、
トラッククレーン、ラフテレー
ンクレーン、
オールテレーンクレーンを指します。
いずれも移動式クレーンに分類され、一般道を走
行することができる建設機械です。
タダノGR-250N
油圧クレーンの特徴は?
油圧クレーンの用途は?
●トラッククレーン:トラックキャリアの上にクレーン装備を搭
●トラッククレーン・オールテレーンクレーン:油圧式はその機
載したもので、キャリア側運転席とクレーン
動性を生かし、建設工事、土木工事、港湾などでの荷役作業に
運転席の二つの運転席があります。走行部
広く使用されています。
がトラックになっているので迅速に現場
●ラフテレーンクレーン:主に一般住宅、
ビル建設の建て方作
まで自走で移 動できることが 特 徴で
業、建設・土木の資材積み降ろし作業などのほか、
遠隔制御がで
す。ブームが箱型で起伏および伸縮
きるものは砂防ダムなどの危険を伴う現場でも使用されていま
を油 圧シリンダで行う油 圧 式と、
す。
オーガ、
バイブロハンマなどのアタッチメントを装着すれば、
ブームがラチス構造でワイヤロープ
小規模の基礎・土木作業にも使うことができ、幅広い用途で活
で起伏を行う機械式に分類され、特
躍しています。
に油圧式は機動性に優れています。
●オールテレーンクレーン:
タダノOC-200N
油圧クレーンの技術的な特徴は?
ホイールクレーンの大型化の
ニーズに応えて発展した建機
油圧クレーンは、油圧ポンプで油圧源をつくり、
コントロールバ
です。全輪ステアリング、全輪
ルブで各機器に分配し、作動します。その利点としては作業装
駆動を取り入れ、狭い場所で
置がコンパクトにできることです。一方、機械式は動力源をメカ
の走行が可能。不整地での走
ニカルクラッチで伝達します。
その利点は機械の作動状況が分
コベルコクレーン パンサーX700
行が可能なものもあります。
かりやすいこと、欠点は作業装置が大きく取り扱いが困難なこと
●ラフテレーンクレーン:
です。
一つの運 転 席で走 行とク
現在、
日本における移動式クレーンの主流は油圧式ですが、取
レーンの操作が可能な機械
り扱いが簡単で狭いスペースで作業ができ、機動性に優れてい
です。油圧式と機械式に分
ることが、
支持されている理由といえます。
類され 、油 圧 式 は 四 輪 駆
動・ステアリング機能を持
ち、小回りが利きコンパクト
油圧式クレーンの安全対策は?
加藤製作所MR-250R
なので不整地、狭い場所での作業にも適しています。現在では
油圧式
数々 安全対策 講
移動式クレーンのシェアのほとんどをラフテレーンクレーンが占
●
・
。
:過負荷
折損事故、
機体 転倒事故 未然 防止
めています。
66
過負
荷防止装置
装備
角度、
。
、
張 出 幅 検出
、
長 、
状態
許容荷重
算出 、作業中 荷重 比較、許容限界 近付
警報 発
、危険 作動 停止
機能 持
他、旋回領域制限装置、
備。
1955(昭和30) 多田野鉄工所(現・タダノ)、OC-2
型(2t吊油圧式トラッククレーン)
神戸製鋼所国産第1号
ほか発売
技術導入
向上
常 発見
装
視界 補助
。近年
性能 信頼性
1953(昭和28) 神 戸 製 鋼 所( 現・コベルコクレー
ン)、国産第1号のトラッククレーン
を完成
。
作動範囲制限装置
活用
機能 織 込
油圧クレーンの変遷
図
1959(昭和34) 加藤製作所、油圧式トラッククレー
ン生産開始
、音声警報装置、異
自己診断機能、表示画面 切 替
備
●
(現・クボタ)
、
KTC- 180
1962(昭和37) 久保田鉄工
(18t吊機械式トラッククレーン)
発売
。
レーン・オールテレーンクレーンと同等の安全装置を装備し
ています。走行時 安全性向上
、小型機分野
前方突 出 量 削減、走行視界性向上
化、
前方傾斜化
大型機
補助制動
装置
、補助
装
備 進
世界最大の全油圧式トラッククレーンNK-750
1969(昭和44) 加藤製作所、
ジャンボ発売
神戸製鋼所、油圧トラッククレーンTシリーズ発売
多段
進
、
。
多田野鉄工所OC-2型
1964(昭和39) 住友機械工業(現・住友重機械工
業)、
「住友-リンクベルト」
ブランドにて機械式トラッククレー
ンを発売
:クレーン作業において、トラックク
油圧式トラッククレーン発売
1970(昭和45) 住友重機械工業、
多田野鉄工所、
ラフテレーンクレーンTRシリーズ発売
日本グローブ、
TM2700(27.5t吊トラッククレーン)発売
NHC80-A
(30t吊トラッククレーン)発売
1973(昭和48) 新潟鐵工所、
コベルコクレーンKMG5130
1975(昭和50) ユニック
(現・古河ユニック)、K-230(23t吊油圧式トラック
クレーン)
ほか発売
海外の動向は?
ラフテレーンクレーンΩ160生産開始
1979(昭和54) 神戸製鋼所、
オールテレーンクレーンの輸入車両は、欧州基準で製造されて
ラフテレーンクレーンの生産を開始
1980(昭和55) 加藤製作所、
おり、
日本より全体的に軽量化されています。伸縮ブームも軽量
1982(昭和57) 小松製作所、
ラフテレーンクレーンの生産を開始
化・長尺化され、遠くに吊り上げることができる機械です。
日本
1984(昭和59) 石川島建機
(現・IHI建機)、国産大型ラフテレーンクレーン
CCR400
(40t吊)
発売
のクレーンは剛性が高く、速いサイクルの作業には適しています
1986(昭和61) 昭和飛行機工業
(米国グローブ社製)
、
ラフテレーンクレー
ンRT-250
(25t吊)発売
が、伸縮ブームが短くアタッチメントを取り付けての作業となり
ます。従って海外製品と同じレベルの開発を進めることが輸出
国産初8WSオールテレーンクレーンKA-800完成
1987(昭和62) 加藤製作所、
の鍵となるでしょう。
1989(平成元) 神戸製鋼所が世界初のミニラフテレーンクレーン
(RK70M・RK70)
を発売
油圧クレーンの将来展望は?
オールテレーンクレーン生産開始
1990(平成2) 住友建機、
1992(平成4) タダノ、
オールテレーンクレーンARシリーズを発売
軽量化はもちろんのこと、操作性、安全性の追及は不可欠です。
純国産最大500t吊トラッククレーン
1995(平成7) 加藤製作所、
NK-5000完成
また道路、橋梁などの保全のため、軸重を抑えた車両の開発も
今後の課題です。
ラフテレーンクレーンWINGシリーズ発売
1996(平成8) コマツ、
環境面でもさらに低騒音化、
国内最大550t吊オールテレーンクレーンAR-5500
1998(平成10) タダノ、
M発売
排出ガス規制適合化を進め
ていく必要があります。
(現・コベルコクレーン)、
タダノとラフテレーン
2000(平成12) コベルコ建機
クレーンのキャリア部について業務提携
2005(平成17) 日立住友重機械建機クレーン、オールテレーンクレーン
ATXシリーズを発売
四軸のラフテレーンクレーンCREVO700
(GR-600N
2008(平成20) タダノ、
Ⅱ)
発売
加藤製作所、
四軸のラフテレーンクレーンSL-700R
(KR-70H-L)
発売
コベルコクレーン、
スラントブームの25t吊ラフテレーンク
レーン パンサーX250(RK250-7)発売
加藤製作所KA-2200
スラントブームの70t吊ラフテレーンク
2009(平成21) コベルコクレーン、
レーン パンサーX700(RK700)
発売
67
ココがすごい!日本の建設機械
クローラクレーン
Crawler Cranes
クローラクレーンは、
自走式移動式クレーンの一種で、建設
現場や土木現場での重量物の荷役、基礎工事などに使われ
ます。
クローラ式の走行装置の上部に運転室や巻上装置、
ブーム起伏装置、旋回装置などを載せた構造で、油圧式が
主流。
陸上で移動する最も重い建設機械の一つです。
コベルコクレーン
マスターテックSL13000
●作業安定性がよい:1970年代に入り、油圧モータでロープ
日本でのクローラクレーンのあけぼのは ?
の巻取りや旋回、走行などを行う全油圧駆動機が世界に先駆
●ショベルのアタッチメントから発展:クローラクレーンを含む
けてわが国で相次いで開発されたことにより、操作性や作業性
移動式クレーンは19世紀末に米国で生まれたパワーショベル
が飛躍的に改善されました。
また、
吊り上げ能力が100t未満か
のアタッチメントとして発展。1950(昭和25)年以降、専用機と
ら、1979(昭和54)年には270tへと向上しました。
して、
クローラクレーン、
トラッククレーンに分かれて進化してき
●安全対策が向上:法令で義務付けられた過負荷防止装置、
ワ
ました。
イヤロープ巻過防止装置、
ブーム起伏制限装置などのほか、機
●国産第1号は?:クローラクレーンの最初の技術導入について
械の異常を自動監視するモニタリングシステムやレバーロック
は実ははっきりしていない部分もあります。1952(昭和27)年、
などを採用し、
安全性を向上させています。
石川島重工業(現・IHI)
が米国の建機メーカと技術提携して設
●アタッチメントで用途拡大:クローラクレーンにクラムバケッ
立した石川島コーリング(現・IHI建機)
によるクローラクレーン
ト・ドラグバケットや基礎工事用フロントアタッチメントを取り付
が最初の技術導入であり、
国産第1号ともいわれています。
けることで用途が拡大します。
タワーアタッチメントを装着し、
自
●その後のクローラクレーン:欧米の技術導入を足掛かりとし
走式タワークレーンとして使われることもあります。
て発展してきたわが国の移動式クレーンは、今や欧米メーカに
クローラクレーンの用途は?
OEM供給するまでになっており、世界でもトップクラスの生産
国です。大型化や油圧式への移行を経て、近年ではさらなる大
クローラクレーンは建設工事の一般荷役作業に使われる建機
型化、運搬のしやすさ、組み立てやすさ、環境対策、省エネ対策、
です。
フロントアタッチメントを取り替えることで、現場の状況に
安全性向上が技術面の大きな課題となっています。
応じたさまざまな作業を行えるのが利点。近年は港湾荷役や基
礎工事の掘削作業など用途の範囲が拡大しています。
クローラクレーンの長所は?
海外でも活躍?
●不整地、軟弱地盤に強い:
運転室などのある上部旋回
世界的な規模で進むインフラ整備やエネルギー産業の発展に
体を支え、全体を移動させる
伴い、わが国の移動式クレーンに対する海外需要は増える一
働きを持つクローラは建機に
方。海外メーカのOEM供給、輸出の両面から世界市場における
必要不可欠な足回り。
クロー
シェアを着実に伸ばしています。生産台数でも日本は今や世界
ラクレーンはその構造上、不
のトップクラスに位置しています。
整地や軟弱地盤の現場でも
埋もれることなく移動できる
のが利点です。
IHI建機
CCH700
68
ココがすごい!日本の建設機械
クローラテレスコ
Telescopic Boom Crawler Cranes
日本建設機械工業会で対象としているクローラテレスコは、
吊り上げ能力5.0t未満の小型のクローラクレーンで、伸縮
ブームを持つ機械です。狭い現場、不整地、地下工事などで活
躍します。
前田製作所LC1385M-8
日本でのクローラテレスコのあけぼのは?
クローラテレスコの用途は?
主に地下工事やトンネル工事での吊り作業などに使用され
●油圧ショベルのアタッチメントがあけぼの:1980年代に油
ています。
圧ショベルのアタッチメントとして、
もともとトラックなどに装着
していた伸縮ブームをショベルに取り付け、小回りの利く小型ク
レーンとして開発されたのが、
クローラテレスコです。
クローラテレスコが普及するまで
どうしていたのか?
●クローラテレスコ誕生の過程:クローラクレーン、
トラックク
レーンなど移動式クレーンの細分化は日本で発達したといって
油圧ショベルを使用したり、鉄板を敷いて設置地盤を確保して
もよいでしょう。ラチス
からトラッククレーン、
ラフテレーンクレーン、
ユニッククレーンを
ブームのクローラクレー
使用していました。比較的軽いものであれば分解による人力作
ンとテレスコブームのホ
業を行っていました。
いずれも不安定な吊り作業となるため安全
イールクレーンの長所を
性に課題がありました。
持って生まれたのがク
ローラテレスコです。
コベルコ建機YS450L
クローラテレスコによって実現したことは?
クローラテレスコの特徴は?
狭い場所や不整地での吊り作業、建築逆打ち工事での安全確
保、作業効率のアップなどが挙げられます。油圧ショベルでもク
●ブーム分解の必要がない:車体をコンパクトに格納して移動
ローラテレスコと同じ作業は可能ですが、用途外使用となるこ
できるので、
ラチスブームのように分解組み立ての必要がないこ
と、
また重量物の吊り作業ができないなどの制約があります。
さ
とが、
現場での作業の省力化、
効率化を実現しています。
らに日本は海外と比較して規制が厳しいことから油圧ショベル
●不整地でも使用できる:走行装置がクローラ式なので不整
にクレーン機能が付いた機械へのニーズが高まり、
あわせて狭
地、軟弱地でも走行が可能。移動性がよいという長所があり
い場所でも使用できるクローラテレスコへのニーズも高まった
ます。
のです。
●狭い場所でも作業ができる:5t未満は小型なので、狭い場
所での吊り荷作業を安全に行うことができます。
●走行吊りができる(条件付き)
:定格総荷量を落とすなどの
条件付きで吊り荷を吊り上げたまま走行移動が可能。
狭い工
事現場での資材運搬で重宝されています。またアウトリガを
張り出す必要がないので、移動してすぐに作業ができる点も
作業の効率化、
短時間化に寄与しています。
日本車輌製造NCC26
70
クローラクレーンの変遷
クローラクレーンには、
どのような技術が生かされているのか?
1952(昭和27) 石川島重工業が米国の建設機械メーカ
のコーリング社と技術提 携し、石川島
コーリング(現・IHI建機)
を設立。
クロー
ラクレーンの製造販売開始
●油圧技術:全油圧式クローラクレーンの動力はディーゼルエン
ジンで駆動する油圧ポンプから各作業装置の油圧モータに伝えら
1957(昭和32) 神 戸 製 鋼 所( 現・コベルコクレーン)、
255A-LC生産開始
れ、
下部走行装置の走行用動力もまかなっています。
駆動方式の
1964(昭和39) 神戸製鋼所、クローラクレーン300シ
リーズ発売
油圧化は機械の大型化も推進しました。
●ハイテンション材技術:現場の大規模化に伴って機械本体が
クローラクレーンD-207LC型を開発
1966(昭和41) 日本車輌製造、
大型化する一方、
車体の軽量化、
コンパクト化に対するニーズも
1971(昭和46) 日立建機(現・日立住友重機械建機クレーン)、世界初の全
油圧式クローラクレーンKH150発売
高まっています。
このため、
機体には強度や剛性を高めたハイテン
全油圧式クローラクレーンNK-160C発売
1972(昭和47) 加藤製作所、
ション材を使用。
これにより、
吊り上げ能力の向上やアタッチメント
全油圧式クローラクレーンCH型を開発
1974(昭和49) 石川島コーリング、
の長尺化、
作業半径も拡大しました。
1975(昭和50) 住友重機械工業(現・日立住友重機械建機クレーン)、全油
圧式クローラクレーン発売
●安定化技術:左右クローラの幅を広げて作業時の安定性を増
全油圧式クローラクレーン550S発売
1976(昭和51) 神戸製鋼所、
し、
クレーン能力を増大する仕組みを取り入れたものがあります。
石川島建機に社名変更
1977(昭和52) 石川島コーリング、
また、設置状態や作業状態を監視す
神戸製鋼所、
クローラクレーン5000シリーズ発売
る各種センサとITを活用した安全対
がクローラクレーン、
1981(昭和56) 日立建機と多田野鉄工所(現・タダノ)
トラッククレーンに関し業務提携
策が実用化されています。
1985(昭和60) 石川島建機(現・IHI建機)、150t吊クローラクレーンCCH
1500を発売
● 排 出ガス対 応 技 術:クローラク
レーンメーカはエンジンをエンジン
1986(昭和61) 神戸製鋼所、
クローラクレーン7000シリーズ発売
メーカから購入して車体に載せてい
住友重機械工業が建設機械事業を分社化し住友建機設立
ます。
エンジンメーカが定めた搭載条
クローラクレーン
1987(昭和62) 住友建機、米国・リンクベルト社を買収し、
を日本から供給開始
件に合わないと排出ガス性能を守れ
ないため、
エンジンメーカと協力して
排出ガス規制に対応しています。
石川島コーリング
330スプローラ
テレスコピック式クローラクレーンCCH-Tシ
1990(平成2) 石川島建機、
リーズ発売
日本車輌製造
DH658-135Hパイルドライバ
クローラクレーンDH500-5型を開発
1991(平成3) 日本車輌製造、
神戸製鋼所、
国内最大750t吊りクローラクレーン7800発売
クローラクレーンの将来展望は?
1999(平成11) 石川島建機、米国・テレックス社とクローラクレーンのOEM
供給契約を締結
●進む大型化:20年余り前に30∼50tだった吊り上げ能力は、
神戸製鋼所、建設機械事業を分社化して神鋼コベルコ建
機、油谷重工と統合し、
コベルコ建機を設立
大型化の傾向を強めています。
これに伴い、世界中のあらゆる場
テレスコピック式クロー
2000(平成12) コベルコ建機(現・コベルコクレーン)、
ラクレーンTK550発売
所で作業できるように運びやすく、組み立てやすいことが重視さ
れています。
2001(平成13) 住友建機の分社化により住友重機械建機クレーン設立
●ランニングコスト圧縮へ:購入から廃棄までの間、安全に直結
日立建機、住友重機械工業、タダノがクレーン事業について業務
提携
する保守点検整備費用のコスト比率が高いのが特徴です。
この
石川島建機、
日本車輌製造とクローラクレーン事業を中心と
する業務提携締結
ため、
自動給脂、
自動調整、長寿命化などのメンテナンスフリーが
日本車輌製造、
クローラクレーン&アースドリルDH800-ST
型を開発
進展するでしょう。
●深まる環境対応:環境規制が強
2002(平成14) 日立建機のクレーン部門と住友重機械建機クレーンが合併
し、
日立住友重機械建機クレーンが設立
化される中で、排出ガス、騒音、振動
2003(平成15) 日立住友重機械建機クレーン、
クローラクレーンSCX-2シ
リーズ発売
対応はもとより、省エネ化、作動油
の生分解オイル化、鉛フリー化など
2004(平成16) 石川島建機、
CCH2500クローラクレーンを発売
への取り組みが進むと考えられて
コベルコ建機、米国・マニトワック社へ
の北米向けクローラクレーンのOEM
供給契約を締結
います。
自動車や油圧ショベルなど
で実用化された技術を取り込む形
コベルコ建機の分社化により、
コベル
コクレーン設立
で対応していくことになるでしょう。
日立住友重機械建機クレーン
SCX2000-2
69
テレスコ
2005(平成17) 石川島建機・日本車輌製造、
ピック式クローラクレーンNIK900T
型を共同開発
石川島建機・
日本車輌製造
NIK900T
コベルコクレーン、米国・マニトワック社への欧州向けクロー
ラクレーンのOEM供給契約を締結
クローラテレスコの技術的なポイントは?
クローラテレスコの変遷
●コンパクト化:狭い場所で
1979(昭和54) 油谷重工(現・コベルコ建機)、
の使用が主たる用途なので、
YS450L発売
コンパクト化(後端半径の短
1987(昭和62) 石川島建機(現・IHI建機)、小型
縮化、運転席のはみ出し量
(4.8t)テレスコピッククレーン
の最小化)
が進められてきま
CCH50T
(ピックエース)
を発売
した。一方でクレーンとして
新キャタピラー三菱
(現・キャタピ
ラージャパン)
、
E70発売
の吊り能力のアップという相
反する技術的な課題を克服
(現・日立
1990(平成2) 住友建機
していることが、
クローラテ
住 友 重 機 械 建 機ク
レスコの需要拡大に貢献し
レーン)、C-52発売。
ペットネーム「つる太
ています。
郎」
として好評を得る
●走行吊り が可能:小型ク
※
レーンのルーツと考えられる
機種はアウトリガを装着して
石川島建機
CCH50T
新キャタピラー三菱
E70
日立建機
(現・日立住友重
機械建機クレーン)
、
モー
日立建機TX40-URE
メントリミッタを標準装
備したEX60G発売
いたため、
走行吊りができませんでした。
現在ではアウトリガのな
い機種が主流となっており、
走行吊り、
狭い場所での運搬作業が
日立建機
EX60G
1991(平成3) 住友建機、三色灯とモー
できる点が画期的な要素となっています。
メントリミッタを連動させ
搭載したLS-1600F2TC
(※走行吊りは原則禁止ですが、
定格総荷重を落とすなどの条件付きでの走行は可能です)
発売
●旋回、
ブームの長さ、
アームなどの改良:現在では後方小旋回
前田製作所、
フレームを
油圧ショベル+伸縮テレスコアームの改良が進み、
ブームの長さ
クローラクレーン専用で
がモデルチェンジのたびに長くなっている点もクローラテレスコ
設計したCC-505発売
の技術革新のポイントとなっています。
前田製作所CC-505
CC-505-2発売
1994(平成6) 前田製作所、
クローラテレスコを支える基盤技術とは?
C-29発売
1995(平成7) 長野工業、
荷重検出、作業半径などから定格荷重を検出表示警報する安
全装置開発技術、高張力鋼板を使い歪みの少ない箱型ブーム
長野工業
C-29
LC-755-3発
1998(平成10) 前田製作所、
売。
ウインチの連続作業が
をつくる製造技術。
また、製缶技術(曲げ加工、溶接加工、歪み
可能に
取りのノウハウ)、電気制御、油圧制御などです。
1999(平成11) 日本車輌製造、NCC26型
海外での動向は?
ミニクレーン発売
小型クレーンは10年ほど前から欧州で認知度が上がってきてい
2003(平成15) 前田製作所、
LC-785-6発売。
ます。
輸出台数も年々増加しており、
コンパクトでありながらメン
排出ガス第二次基準対応エン
テナンスを重視した設計が高く評価されています。
ジン搭載
クローラテレスコの将来展望は?
前田製作所LC785-6
2009(平成21) 前田製作所、
LC1385M-8発
売。
オフロード法対応エンジン
人力作業の機械化が今後の重要な課題です。
さらに、狭い現場
搭載
での施工、操作の容易化、過負荷防止もしくは過荷重防止の進
化、転倒防止技術の向上、情報端末を使用した車両情報の活用
前田製作所LC1385M-8
もポイントとなります。
また、
まだ市場が少ない海外需要の増加
が期待されています。
71
ココがすごい!日本の建設機械
タワークレーン
Tower Cranes
タワークレーンは、主に高層ビルの建設現場でよく見られます。
タワー
(一般的にはマストと呼ばれる)の頂部にクレーン本体(旋回体)
が設置
され、その旋回体がタワーを昇降する機械です。別名「クラインミング
クレーン」
とも呼ばれ、
クレーン等安全規則では
「クライミング式ジブク
レーン」
に分類されています。
IHI運搬機械JCC-V900
日本でのタワークレーンのあけぼのは?
タワークレーンの用途は?
高層ビルの建設はもちろんのこと、
ダムのコンクリート打設や
●旧西ドイツからの技術導入によって発展:タワークレーン
原子力発電所建設の大ブロック工法でも使用されています。
は欧州からの技術導入によって日本にもたらされた機械で
す。日本で最初にタワークレーンが稼働したのは1953(昭和
タワークレーンが使われるまで、
高い建物はどうやって建てていたのか?
28)年ごろ、
旧西ドイツから輸入された20t・m(※t・m=定格
過重 作業半径)
級の水平ジブ式であるといわれています。
●国産第1号機は:1960(昭和35)年に新橋虎ノ門電気ビルの
1961(昭和36)年∼1962年ごろまではガイデリックや三脚
工事に使用されました。
デリックなどによる鉄骨組立が主流でした。
ガイデリックで
●その後のタワークレーン:1962(昭和37)年
(現・IHI)
KTK45W 開発
起状機能 有
、
呉造船所
は、
仮設構台や建物の構造部分を利用してせり上げる工法を用
45t・m級
い、三脚デリックでは組み立てた鉄骨上に走行レールをつく
1986(昭和61)年には、
。
北川鉄工所
り、
移動台車で前進しながら鉄骨の組み立てを行うという工法
が15t・mビルマンJCL015を開発しています。1963(昭和
が主力でした。
38)年7月の建築基準法の改正で、
「高さ制限と容積地区制を
中心とする改正」
が施行。
従来の31mという高さ制限が廃止さ
タワークレーンによって実現したことは?
れて以来、
超高層ビルが競って建てられるようになり、
タワー
クレーンの需要が高まりました。
現在でも国内の大規模ビル
超高層ビルの先駆けとなった霞ヶ関ビル
(1968年竣工)
や、
新都
建築で活躍し、200∼900t・m能力の機種が多くなっていま
庁舎
(1990年竣工)
を含む新宿副都心、
幕張メッセ
(1989年竣
す。中でも都市部では高さ150∼250m級の高層ビルが多く
工)
、
横浜ランドマークタワー
(1993年竣工)
、
六本木ヒルズ森タ
建設されており、クレーン能力400t・m級のタワークレーン
ワー
(2003年竣工)
など、
東京や近郊の名所となっている多くの
が汎用的に使用されています。
ビルでタワークレーンが活躍しました。
タワークレーンの技術的な特徴は?
油圧装置を利用した昇降方法の技術開発。
これは、
油圧ポンプ、
油圧モータで構成されたもので、
開発当初に使用されていた直
接駆動式
(エンジン動力を直接歯車などで伝達する)
に比べて
1967(昭和42)年 に石川島
安全性や作業性が向上しました。
播磨重工業
(現・IHI)
が製鉄所用の高炉建設向け60tクライミン
グクレーンに油圧式昇降装置を採用したのをきっかけに、
12t
北川鉄工所ビルマンJCL015
の建築用クライミングジブクレーンにも取り付けられたのが
日立建機
C10パワーリーチ
最初です。
72
タワークレーンの変遷
「マストクライミング方式」と
「フロアクライミング方式」の違いとメリットは?
1953(昭和28) 旧西ドイツから輸入された20t・m級の水平ジブ式が国内で
ごろ
初めて採用
●マストクライミング方式:クレーンのマストを継ぎ足し、
ビ
ルに支え
(ステー)
をとり、
ビルに沿ってクレーンがのぼってい
1960(昭和35) 国産のタワークレーン第1号機使用
く方式です。
メリットは解体用クレーンが不要なこと。
1962(昭和37) 呉造船所(現・IHI)
が起状機能のあ
●フロアクライミング方式:ビルの鉄骨を使ってクレーン自
るジブを有した45t・m級タワーク
身がよじのぼっていく方式であり、
メリットは狭い敷地でもク
レーンKTK45Wを開発
レーンが立てられることです。
1963(昭和38) 建築基準法の改正。
「高さ制限と容
積地区制を中心とする改正」が施
タワークレーンが登場してきた背景として、
どのような社会的ニーズが?
行。従来の31mの高さ制限が廃止
1968(昭和43) 霞ヶ関ビル竣工
1963
(昭和38)
年7月の建築基準法の改正により従来の31m
呉造船所KTK45W
1986(昭和61) 北川鉄工所がビルマンJCL015を開発
という高さ制限が廃止され、
ビルの超高層化が進められたこと
が背景にあります。
また、
翌年の東京オリンピックのために、
高
1989(平成元) 幕張メッセ竣工
能率で、
より安全性の高い、
しかも機動性のあるタワークレー
ンが求められるようになりました。
1990(平成2) 東京都の新都庁舎竣工
(現・IHI運搬機械)
、
ジブクレーン2000台完成
1991(平成3) 石川島輸送機
その他、
タワークレーンの
「ここがすごい」
という技術は?
北川鉄工所、
ビルマン1000台完成
1993(平成5) 横浜ランドマークタワー竣工。運転室に下方が見えるよ
うに窓ガラスが付けられたタワークレーンが使用された
巻上速度の高速化と高揚程
(軽負荷時には10倍速でフックを
上げ下げする技術)
。
これを実現しているのがインバータです。
2003(平成15) 六本木ヒルズ森タワー竣工
巻上げ、
起伏、
施回などの速度を制御する機械で、
大型クレーン
の課題とされてきた荷役効率を大幅に向上させました。
荷重に
高揚程420m、重荷重32tのタワークレーンに
2009(平成21) IHI運搬機械、
応じてモータのスピードをコントロールし、
荷振れを軽減、
着
て、東京スカイツリー R 建設中
床ショックを緩和するなどのメリットがあります。
また運転操
作を簡素化し、
より確実な安全性を実現しています。
今後、
タワークレーンに
求められる技術開発は?
環境対応、
省エネ、
高効率化が望まれています。
また、
近年では
狭い場所でも施工ができるフロアクライミング方式を採用す
るケースが増えていることから、
そうした条件下でのより安全
な施工への対策も必要となっています。
建設中の東京スカイツリー R
73
ココがすごい!日本の建設機械
トラック搭載型
クレーン
Truck Mounted Cranes
トラック搭載型クレーンとは、市販のトラックの荷
台とキャブの間に搭載する小型クレーンで、移動式
クレーンの中で最も多く生産されている機械で
す。
トラックの大きさに応じて0.49∼4.9t吊りが
あり、小型から大型まで幅広いトラックに架装され
古河ユニックU-canECO
ています。
●スクラップグラップル、
マグネット:スクラップ関係
日本でのトラック搭載型クレーンの
あけぼのは?
●オレンジグラップル:産廃関係
●丸材グラップル:林業関係
●国内各メーカが独自に開発:トラック搭載型クレーンは日本
トラック搭載型クレーンの特徴は?
の各メーカがそれぞれ独自に技術を磨き、試行錯誤の末に開発
したものです。共栄開発(現・古河ユニック)
の場合は、欧州視察
運搬と積み降ろしが1台でできることが最大の特徴です。
トラッ
で荷の積み降ろしと運搬を効率よく行うトラック搭載型クレー
ク搭載型クレーンが開発されるまでは、
トラックはトラック、
ク
ンを目の当たりにして、今後の日本の発展に必要な機械と感じ、
レーンはクレーン専用機と二つの機械で作業していましたが、1
開発を進めたとされています。
台2役を実現することで作業効率が向上しました。
●国産第1号は1961(昭和36)年ごろに
トラック搭載型クレーンの用途は?
登場:こうして各社が開発の末、共栄開発
で1961年8月にUNIC100を開発。多
多田野鉄工所
田野鉄工所(現・タダノ)
でも同時期に
TM-2H
運輸業、
土木建築業、
設備工事業、
造園・石材業、
自動車修理業、
リサイクル業と多種多様です。なお、
これほどまでに用途が広
積載可能なクレーンを発売
がった要因としては、3t未満の吊り上げクレーンはクレーン性
しています。
能検査(クレーンの継続使用に不可欠な検査)が不要だったこ
と、
また資格取得※が容易だったことが挙げられます。
(※現在では小型移動式クレーン技能講習が必要)
共栄開発
UNIC100
トラック搭載型クレーンの技術的な
ポイントは?
●レバーで操作性の向上:操作はクレーンの左右に付いたレ
バーで行いますが、
アクセル連動機構(操作レバーとアクセルが
加藤製作所KS-20
連動)
が作業のしやすさを実現しています。
●ブームの長尺化:以前は特にブームの
トラック搭載型クレーンの種類は?
多段化に向けて開発競争がありました
ブームの構造によって、
次の2種類があります。
●伸縮ブーム式:日本のトラック搭載型クレーンではこちらが圧
倒的に主流となっています。
主にウインチ操作で荷物の吊り上げ
前田製作所
MC-225A
作業を行うものです。
●屈折ブーム式:用途に応じて、多彩なアタッチメントを装着で
き、
さまざまな分野で使用されます。
新明和工業CB364F
74
が、6段ブームが出てからはシャシとクレーンとのバランスから
トラック搭載型クレーンの変遷
いったん終息、2∼6段のブームを持つものがポピュラーとなり
ました。
1961(昭和36) 共栄開発
(現・古河ユニック)
がUNIC100
(1t吊)
、
UNIC200
(2t吊)
の開発に成功
●リモコン、ラジコンの開発:多田野鉄工所(現・タダノ)
では
1977(昭和52)年にリモコン装置を開発。
ユニック
(現・古河ユ
(現・タダノ)
、
TM-2H発売
1962(昭和37) 多田野鉄工所
ニック)
では1979(昭和54)年にワンハンド型のリモコン装
2.9吊のU-300シリーズ発売
1963(昭和38) 共栄開発、
置、次いで1985(昭和60)年にはラジコン装置を開発しまし
1966(昭和41) 多田野鉄工所、
架装トラックの多様化に応え、中型トラッ
ク搭載型クレーンTM-20を発売
た。
これにより、従来二人で行ってきたクレーン操作、玉掛け
作業が一人で行えるようになり、省力化に寄与しました。
バッテリ式MC-100
(0.98t吊2段)
発売
1968(昭和43) 前田製作所、
古河ユニック
連動ラジコンのイメージ
KS-20
(360 旋回、
2t吊、
4t車)
を発売
1974(昭和49) 加藤製作所、
機能の充実とクレーンの高能力化に応え、
1976(昭和51) 多田野鉄工所、
TM-30Aを発売。
さらに翌年には有線式のリモコン装置を
発売し、
作業の効率化に大きく貢献
1980(昭和55) 多田野鉄工所、ブーム断面構造が五角形のTM-30Z発売
ブームの多段・長尺化と自動化を実現
1983(昭和58) ユニック
(現・古河ユニック)、レバーにアクセル機構を内
蔵したオートアクセルを開発。片手のクレーン操作とス
ピード調整が可能に
タダノ ラジコン操作イメージ
海外での動向は?
1985(昭和60) 多 田 野 鉄 工 所 、4 . 9 t 吊 で 重 作 業 を こ な す 高 性 能 機 種
TM-50Z発売
ユニック、
全無線式のラジコン装置RC-30R開発
トラック搭載型クレーンは海外にも輸出されており、先進国に対
しては伸縮ブーム式と屈折ブーム式が混在していますが、主に
KS-300シリーズ
(オートアクセル化)
を発売
1986(昭和61) 加藤製作所、
伸縮ブーム式のメリット
(操作が簡単、優れた連動作業など)
を
アピールして販売しています。
また、かつての日本のようにイン
横型配置レバーを採用したCB-20-32発売。
以
1987(昭和62) 新明和工業、
降の開発機種はすべて横配置レバーに
ユニック、業界初全自動伸縮六角形・6段ブームクレーン
UR-35VA6開発
フラ整備が急速に進む発展途上国では需要が高く、幅広い用途
で使用されています。
MOMOCOシリーズ発売。世界初のフックイン機
1991(平成3) タダノ、
能を搭載。
さらにラジコン、
転倒警報装置などをフル装備、
時代を先取りしたエポックマシンとして注目を集める
トラック搭載型クレーンの将来展望は?
●安全性の向上:ブームやアウトリガを格納せずに走行しよう
1992(平成4) 新明和工業、八角形ブームを採用したCB29-16、CB2511、
CB20-35を発売
とすると警報音や音声が鳴るブーム・アウトリガ未格納警報装
置や、設定した高さになると自動停止する高さ制限装置、転倒
1997(平成9) 前田製作所、
業界初の荷台内架装5段ブームMC225A発売
防止装置などの安全対策はすでに施されていますが、
さらなる
古河ユニックとOEM提携、
発売
2000(平成12) 加藤製作所、
安全性の確保が求められています。
●環境への配慮:エンジン回転数を上げることなく今までと同
2001(平成13) タダノ、
業界初の地面に対する水平移動やブームに対する
平行移動の複合操作を指1本のラジコン操作で実現したナ
ビ仕様を発売
じ効率で作業ができる低燃費・低騒音クレーンや、
トラックの
バッテリを動力源とするバッテリクレーンが登場していますが、
時代とともにさらにニーズが高まるでしょう。
2002(平成14) 新明和工業、
タダノとOEM提携、
発売
●自動化、操作性のさら
2006(平成18) 古河ユニック、
U-can ECOシリーズ発売。
環境性と経済性
という新しい風を吹き込む
前田製作所、
タダノOEMによるMXシリーズ発売
なる向上:省力化という
課題に向けて、自動化、
2007(平成19) 古河ユニック、
連動ラジコンの連動性をさらに高めるジョ
イスティック式ラジコン 連動ラジコンJOYを開発
誰もが安全に操作できる
操作性能の向上も技術
2008(平成20) タダノ、
ブームには1枚板折曲ブーム、
下地塗装には防錆力
に優れたカチオン電着塗装を採用した画期的なZestシ
リーズを発売
改良上の課題となってい
ます。
タダノZest
75
ココがすごい!日本の建設機械
高所作業車
Aerial Work Platforms
高所作業車は、作業床が昇降して任意の位置に移動できる
自走式の作業車です。機動性に優れ、電気、通信、道路標
識、照明工事、高架橋、
トンネル内の補修工事などの道路工
事のほか、建築工事の建物の外部仕上げや補修工事など
に利用されています。
アイチコーポレーションTZ-10A
日本での高所作業車のあけぼのは?
高所作業車はもともと北米から技術導入をしたもので、
そのデ
ザインをヒントに、愛知車輌(現・アイチコーポレーション)
が独
自の技術で開発したのが最初です。以後、
その優れた機動性か
ら幅広い用途に使用されるようになり、
急速に普及しました。
所作業、大きな施設の補修などで使用されています。欠点は操
高所作業車の種類と用途は?
作が複雑であること。
高所作業車の大きな分類は、走行装置の構造でいうとトラック
●垂直昇降型:床が垂直に昇降するタイプ。内装工事や設備工
式・ホイール式・クローラ式、作業装置の構造でいうと伸縮ブー
事の足場など限定されたエリアでの作業に適しています。
ム型・屈折ブーム型・混合ブーム型・垂直昇降型となります。
●トラック式:走行装置がトラックシャシになっているため一
●伸縮ブーム型:直伸式ともいいます。作業位置に向かってブー
般道路を走行できるので、現場の移動が容易。工期の短い工事
ムが長く伸びるタイプで、作業床地上高が比較的高いため電気
現場、電気通信工事、看板工事、街路灯、信号機などの保守工
通信工事、建設、造船工事などに幅広く利用されています。欠点
事現場で使用されています。
はブームが全縮しても届かない低い作業エリアがあること。
●ホイール式:走行部分にゴムタイヤを使用しているため舗装
●屈折ブーム式:ブームが屈折するタイプで作業位置まで奥深
道路を傷めずに現場内での連続作業が可能。建設工事、造船工
く進入でき、
また障害物を乗り越えたり電線をよけたり、
また引
事の現場で使用されています。
込み作業なども可能なので、狭い現場でよく利用されています。
●クローラ式:走行部分がクローラになっており、不整地、軟弱
欠点は旋回時、
屈折部が車幅から出やすいこと。
地盤での作業が可能。
トラック式に比べ作業半径が大きく取れ、
●混合ブーム型:伸縮ブームと屈折ブームの混合型。作業床が
建築工事、
設備工事現場で多く使用されています。
高く半径も大きく取れるのが特徴です。遠く離れた位置での高
伸縮ブーム型
混合ブーム型
トラック式
垂直昇降型
ホイール式
屈折ブーム型
クローラ式
出典:社団法人日本建設機械化協会「日本建設機械要覧 2010」
76
高所作業車の変遷
高所作業車が登場するまで、
どうしていたのか?
1963(昭和38) 愛知車輌
(現・アイチコーポレー
ション)
、
はしご車を開発
仮設足場やはしご、脚立、ローリングタワーなどで高所作業を
行っていました。
高所作業車第1号を
1965(昭和40) 愛知車輌、
開発
高所作業車によって実現したことは?
高所作業車ス
1982(昭和57) 極東開発工業、
ペースエース開発
作業の安全向上、作業の効率化(スピード化)、作業者の高齢化
対応、工事費用の削減などです。高所作業車が普及した背景に
(現・タダノ)
、
スカ
1983(昭和58) 多田野鉄工所
イボーイ
(活線作業車)
は、
転落事故防止、
足場仮設撤去の時間短縮、
工期の短縮、
作業
AT-136TE発売
位置までの昇降歩行による疲労軽減など、高所作業の安全化、
効率化、建築コスト低減を求める建設工事現場のニーズがあり
愛知車輌
高所作業車第1号
多田野鉄工所
スカイボーイ
AT-136TE
1991(平成3) 新明和工業、
ました。
APM099-52F発売
デンヨー、
高所作業車
海外でも活躍?
分野に参入、
発売
欧州、北米、
アジアのメンテナンス工事、中国、韓国の造船市場
1994(平成6) 極東開発工業、
新明和工業APM099-52F
電動屈折ブーム式
向けの工事で活躍し、
日本を含めた世界で活躍する日本製高所
高所作業車E300AJP発売
作業車の世界シェアは約12%となっています。海外でもデッキ
タイプの高所作業車を活用しての施工は進んでいますが、
ほとん
タダノ、
高所作業車スーパー
どが垂直昇降型(真上に伸びる)
です。
それに比べて日本製は垂
極東開発工業
E300AJP
デッキシリーズを発売
直昇降型とブーム
(横へも伸びる)
型の両方で
「より現場に適し、
長野工業、
高所作業車
作業効率が向上する高所作業車」
を選択できるようになってお
NUL-060発売
り、
近年は海外においても日本製ブーム型が採用されるようにな
りました。電力・電工・通信関係の静音型駆動源(バッテリ仕様・
1996(平成8) アイチコーポレーション、
全電動型高所作業車試作機
低騒音エンジン仕様)
を装備する環境対策型の製品も輸出して
SH-105EV開発
います。
長野工業NUL-060
1997(平成9) アイチコーポレーション、
鉄道電気工事用電車線高所作業車RL-050開発
高所作業車には、どのような技術が
生かされているのか?
オーバーフェンス作業車
1998(平成10) アイチコーポレーション、
SF-44A、
重荷重型高所作業車
バケット内で油圧工具を使用できることにより、
作業効率が大幅
TZ-15A開発
に向上したことが一つ。
そして油圧ウインチ・サブブーム装置の
日立建機、
HX99B発売
開発で、人力では持ち上がらない重量物の吊り上げが可能にな
りました。
さらに、
バケット首振り装置の開発で、
より安全で効率
6.1m高所作業車
2006(平成18) 北越工業、
的な作業環境が実現できるようになったことが、高所作業車を
日立建機HX99B
2機種発売
支える重要な技術です。
また、
360 全旋回が可能になったことも
SP14CJM発売
2007(平成19) アイチコーポレーション、
技術革新のポイントです。
8m、
9.9m高所作業車発売
2008(平成20) 北越工業、
北越工業
ENTL099
77
ココがすごい!日本の建設機械
アスファルト
フィニッシャ
Asphalt Pavers
アスファルトフィニッシャとは、アスファルト舗装工
事の際、アスファルト混合物の均一な敷きならしに使
われる機械です。一部の機械は路盤材の敷きならしに
も使用されており、道路工事の現場などでよく目にす
る機械です。
住友建機HA60W
りもよいとされています。
日本のアスファルトフィニッシャの
あけぼのは?
●ホイール式:中小規模工事用の小型機械は現場間の移動が
便利なのでホイール式が多く使用されます。
しかし近年油圧機
器の発達によってホイール式でも全輪駆動方式が可能となり、
●米国で開発・実用化され日本に輸入:1933(昭和8)年に米
国でフローティングスクリードを採用した舗装可能幅3∼4.2m
伸縮スクリード装置も装備し
のアスファルトフィニッシャが開発され、1953(昭和28)年、極
たホイール式中型機械の製
東貿易が米国・バーバーグリーン社の879-A型フィニッシャ2台
造台数が増加傾向にありま
を輸入し日本鋪道(現・NIPPO)
に納入。
これが、
わが国における
す。
また、
自動レべリング装置
アスファルトフィニッシャのあけぼのです。
を装着することで、クローラ
●国産第1号は?:その2台の機械は、国道41号(愛知県∼富
式に劣らない仕上がり精度
が得られるようになりました。 ヴィルトゲン・ジャパンS1603-2
山県)の道路舗装に使用されました。一方、アスファルトフィ
ニッシャの国産第1号機は、
1956(昭和31)
年、東京工機(現・
三井三池製作所)
製造のもので、
舗装幅は1.8∼2.8mでした。
アスファルトフィニッシャによって
実現したことは?
●その後のアスファルトフィニッシャ:以後、アスファルト
舗装工事の増加とともに、1960(昭和35)年ごろから国内で
本格的に製造・開発されるようになりました。当初は舗装幅
かつて敷きならし作業は手作業あるいはブルドーザなどで行っ
2.4∼3.6m級のものが主でしたが、
現在は2.3∼6.0m級が主
ていましたが、
アスファルトフィニッシャが導入されたことによっ
流になっています。一方、高速道路などの大型工事には、
て、均一な敷きならし、道路の強度の向上、作業の効率化、省力
1972(昭和47)年に3∼12m級の機械が輸入され、片側車線
化が実現しました。
全幅を一度に施工できるようになったことから国内でも3∼
9mの機械が製造されるようになりました。
アスファルトフィニッシャには、
どのような技術が生かされているのか?
アスファルトフィニッシャの種類
●フローティングスクリード:スクリードとは、敷きならしを行う
機械のこと。㎜単位の精度が求められるアスファルトフィニッ
●クローラ式:中大規模工事・急坂道などの使用条件が厳しい
道 路では機 体の平 衡
シャにとってスクリードは不可欠です。現在、
すべてのフィニッ
が保ちにくいため、
けん
シャに装備されているのがバーバーグリーン社発明のフロー
引力の大きいクローラ
ティングスクリードです。
式が用いられます。特
●伸縮スクリード:工事現場で最も手間がかかるのが、必要施
に大 型 機 械は安 定 性
工幅員にするためのスクリードエクステンションの組み立て、
ま
に優れ、舗装の仕上が
た途中で幅員を変えたり舗装範囲内に障害物があった場合など
範多機械F1741C
78
の際の脱着でした。
この課題を解決し省力化を実現するために
アスファルトフィニッシャの変遷
開発されたのが伸縮スクリードです。
1979
(昭和54)
年にドイツ
1953(昭和28) 極東貿易、
米国・バーバーグリーン社の879-A型フィニッシャ
2台を輸入、
日本鋪道
(現・NIPPO)
に納入
から輸入されました。
◇伸縮スクリードの種類:スクリードエクステンションそのもの
(現・三井三池製作所)、国産第1号機を製造。舗装
1956(昭和31) 東京工機
幅は1.8∼2.8m
をメインスクリードの前方または後方に左右一対に並べ、
油圧で
伸縮させて舗装幅を任意にコントロールできるスクリード方式
1959(昭和34) 住友機械工業
(現・住友建機)、国産初のホイール式アスファ
ルトフィニッシャHA35を開発
と、
メインスクリードの後ろにほぼ同幅のスクリードを二つ装備
し、左右に伸縮することで舗装幅の調整を行う三連伸縮スク
(現・酒井重工業)、
スイス・アンマン社から、
アス
1960(昭和35) 酒井工作所
ファルトフィニッシャ304Fなどの製造技術を導入
リード方式があります。
また伸縮幅以上の施工を行うとき、組立
スクリードと伸縮スクリードを併用し9mまでの施工ができる機
三菱重工業、国産初のホイール式アスファルトフィニッシャAF-1
を開発
種、伸縮スクリード部
分を2段式にしてエク
国産初のトラックけん引
1964(昭和39) 範多機械、
式アスファルトフィニッシャを開発
ステンション装 着を
行わず、最大舗装幅
1970(昭和45) 範多機械、小型アスファルトフィ
ニッシャを開発
が得られる機種など
も開発され普及して
います。
1972(昭和47) 舗装幅3∼12m級の超大型機械
が輸入され、
以後国内でも3∼9m
級の機械が製造される
キャタピラージャパンMF45WE
範多機械の国産初
けん引式アスファルト
フィニッシャ
1979(昭和54) 新潟鐵工所、
2連式伸縮式スクリード デュアルマットを開発
海外での動向は?
1981(昭和56) 路上表層再生工法兼用アスファルトフィニッシャ開発
住友機械工業、
RV3連式伸縮式スクリード スミワイドを開発
海外では欧州の機械が主流となっており、世界の大部分(欧州・
中国・インド・中近東・アジア・アフリカ・日本)
で普及。米国や韓
ホイール式アスファルトフィニッシャで国産初の油
1986(昭和61) 住友建機、
圧式の4WDを開発
国では米国仕様が主流となっているため、
欧州メーカもこれに対
応して米国仕様の機械を開発し、参入しています。
日本製のアス
コンピュータ自動制御のロボットアスファルト
1990(平成2) 新潟鐵工所、
フィニッシャ セントーレ21を開発
ファルトフィニッシャの場合は、輸送規制・車検対応などで国内
エクステンションスクリードの運搬・組立が容易
1992(平成4) 住友建機、
なスイング式エクステンションを開発
独自の規制が多いため、
日本限定仕様となっており、
海外市場へ
の参入はこれからの課題です。
範多機械、超小型アスファルトフィ
ニッシャF14Cを開発
アスファルトフィニッシャの将来展望は?
1995(平成7) 新キャタピラー三菱(現・キャタピ
ラージャパン)、国内(海外)初の2
段伸縮スクリード搭載のアスファル
トフィニッシャMF60WD、MF60
Dを開発
●自動化と省力・省人化:熟練のオペレータの減少や慢性的な
不足ということもあり、操作を容易にした省熟練機械、
オペレー
範多機械F14C
新キャタピラー三菱MF60D
タ一人でコントロール可能な省人機械の開発が進められていま
新潟鐵工所、乳剤散布装置付アス
ファルトフィニッシャを開発
す。
今後はGPS情報など、
コンピュータやネットワークを中心とし
た情報技術の導入を一般化させ、地球環境への負荷も減らして
1997(平成9) 範多機械、3段スクリード搭載のア
スファルトフィニッシャF1740Cを
開発
いくことが求められています。
●新工法への対応:近年は環境に配慮した舗装体の開発やコス
範多機械F1740C
新潟鐵工所、世界初の二層同時施工型アスファルトフィニッ
シャを開発
ト縮減のニーズなどから新工法が生み出されつつあります。
それ
に対応していくために乳剤を散布しながら舗装施工する乳剤散
三連伸縮式スクリードJ・PAVERを開発
2001(平成13) 住友建機、
布装置付きの機械、1台の機械に2種類のアスファルト混合物を
範多機械、4.5m級中型アスファルトフィニッシャを開発
積載して舗装施工する二層同時施工型の機種が開発されようと
しています。
特に後者は1997
(平成9)
年に日本が世界に先駆け
て開発、
近年この工法は定着しつつあります。
79
ココがすごい!日本の建設機械
締固機械
Compaction Machinery
土木・建築工事の現場などで地面を固めるのに
使用される機械です。締固める方法によって、
①ロードローラなど静荷重(重力)
を利用するもの
②タイヤローラなどこね返しを利用するもの
③振動ローラなど振動(ゆすり)を利用するもの
④タンパなど衝撃を利用するものに分類。作業現
酒井重工業R2-2
場の状況に応じて、複数類の機械を組み合わせる
場合もあります。
た機械です。
鉄輪とタイヤの両方を備え
日本での締固機械のあけぼのは?
ているため、一次転圧から二次転圧、仕
●国道1号線の造成が契機:多くの建設機械と同様に締固機
上げ転圧まで幅広く適用できます。
械も海外からの輸入に頼っていました。日本では、1919(大
●ハンドガイドローラ:前後に鉄輪を備
正8)年∼1922(大正11)年にかけて行われた国道1号線の
えた非搭乗型機械です。
フレームあるい
造成工事に伴って急増した需要に応えるために技術導入さ
は鉄輪内部に装備した振動機構により、
れました。
振動を発生させ締固めを行います。
砂利
●国産第1号は?:スチームローラの国産第1号は1918
(大
や砂など粘性の小さい材料に適してお
正7)
年につくられたという記録があります。また内燃機関を
り、
振動力により最も深い層まで締固め
搭載したタンデムローラの国産第1号は、酒井工業所(現・酒
ることができるので、
締固め力が高いこ
井重工業)
が1929
(昭和4)
年に製造しています。
とが特徴。
狭い現場や施工区端部の締固めに威力を発揮します。
●その後の締固機械:1931
(昭和6)
年には、
米国・ガリオン社
●平板締固機械:鋼製の平板を備えた非搭乗型の手押し式機械
から図面を買い取る形で渡辺機械工業(現・日立建機カミー
です。
ノ)がガソリンエンジン駆動のマカダムローラ第1号機を製
●ランマ:エンジン回転力をクランク機構
作。その後も油圧駆動のタンデムローラやワイド化を図った
によって、
往復
(上下)
運動に変換し機械下
タイヤローラ、機械の質量以上の締固めの効果を狙った振動
部の打撃板で締固めを行います。
ローラなどが登場し、
国土開発に貢献しました。
●プレートコンパクタ:平板上に搭載され
酒井重工業TW502
ボーマク
ジャパン
BVW63H
た起振機によって振動を発生させ締固め
締固機械の主な種類
と自走を同時に行います。
特に、
間隙を緻密
●タイヤローラ:車体の前後に空気入りタイヤを配置し、
機械
に締固める必要のある砂質土壌では、
高振
の重量を利用し静的圧力を掛け、
タイ
動・高遠心力が要求され重量級前後進バイ
ヤの特性を生かし締固めを効果的に
ブロが多く使われています。
行う機械。
盛土路床および路盤の二次
転圧、
アスファルト舗装の表装仕上げ
に適しています。
三笠産業
MT-55L-SGK
明和製作所
KP-6S
締固機械の用途は?
日立建機
RT205
一般的には道路工事現場で見かけることの多い機械ですが、
●マカダムローラ:鉄輪が前後に三輪
地面を締固める作業現場で幅広く活躍しています。例えば、
配置され、
主に路床、
路盤、
アスファル
空港の滑走路や埋立地、港湾の構築における締固め、鉄道工
ト舗装の締固めに使われる機械です。
事、
コンクリートダム建設現場での締固めなどです。
重量が大きく、
静荷重を利用して締固
めを行います。
締固機械が普及するまで、どうしていたのか?
日立建機
カミーノCS125型
●タンデムローラ:鉄輪を前後に一
主として、
人力によりけん引式の木製ローラで締固めていまし
軸ずつ配置した機械です。
た。
現在のコートローラのようなものです。
機械化されてから
●コンバインドローラ:鉄輪(振動
はローラの重量化による高い締固力によって、
道路構造物の高
輪)
とタイヤを前後に一軸ずつ配置し
品質化や長寿命化が飛躍的に進みました。
酒井重工業SW652-1
80
締固機械の変遷
海外でも活躍?
1911(明治44) ドイツ・ハム社、
エンジン仕様の
日本製締固機械は性能、品質とも海外で高く評価されています。
ロードローラ製作
1950年代は戦後の復興需要などで東南アジアに進出。1980(昭
和55)年以降は中東や米国に目を向けました。その後も中国をは
ハム社ロードローラ
1918(大正7) タンデムスチームローラの国産第
1号機がつくられる
じめとするBRICs地域などの新興市場に照準を合わせるなど、
時
代に応じた展開を進め、各国のインフラ整備を支えています。
(現・酒井重工業)
、
内燃
1929(昭和4) 酒井工業所
酒井工業所
タンデムスチームローラ
機関搭載のタンデムローラを製造
締固機械には、どのような技術が
生かされているのか?
1931(昭和6) 渡辺機械工業
(現・日立建機カミーノ)
、
ガソリンエンジン
駆動マカダムローラおよびタンデムローラ発売
●振動発生技術:土砂に振動を与えると締固め効果が大きくなる
ことに着目して開発されたのが振動ローラです。主要技術の振動
機構はロール内部の起振機を振動させるもので、油圧モータで駆
動。機体に直接振動が伝わらない構造です。最近では、振動の大き
渡辺機械工業
マカダムローラ
さを任意に変えられる機構や、
地面に対して擦り付け
(水平方向の
渡辺
機械工業タンデムローラ
1933(昭和8) 酒井工業所、
マカダムローラ開発
動き)
を行うような振動機構が開発されています。
●空気入りタイヤの開発:タイヤローラのタイヤは、
アスファルト
1953(昭和28) 明和製作所、
ジャンプランマー開発
混合物を締固める際に高温の混合物に接することによる膨張と施
1954(昭和29) 渡辺機械工業、
自走式タイヤロー
工終了時の収縮を繰り返すため、寿命は一般走行用のタイヤより
ラ試作
も短くなります。このような条件に対応する材料を開発してきま
した。
また、
締固効率と品質が向上するフラットタイヤやワイドタ
渡辺機械工業
自走式タイヤローラ
1959(昭和34) 酒井工作所
(現・酒井重工業)
、
三軸
三笠産業
ダンピング
ランマ
1号機
ロードローラ、
タイヤローラTR41
イヤの開発も行っています。
発売
●中折れ式フレームの採用:現在ほとんどのローラに採用されて
いる中折れ式フレーム(アーティキュレート式)は、前後輪が同じ
1961(昭和36) 三笠産業、
ダンピングランマ第1号機
軌跡を描けるようにするのが狙いです。
この機構の採用により、
踏
完成
三菱重工業、
タイヤローラU20開発
み残しを減らすことができました。
●騒音低減:都市型工事需要が拡大する中で、
音源部の遮音や風の
振動ランマ開発
1962(昭和37) 明和製作所、
流れを考慮した低騒音、
超低騒音技術をローラに搭載しています。
また、
小型機の分野では、
大型マフラーを搭載した上で吸音材と遮
三菱重工業U20
1964(昭和39) 三笠産業、
日本初のインパクトローラMRV-10を開発
音材でエンジンをカバーした防音対策を施しています。
1966(昭和41) 明和製作所、
バイブロ・プレート開発
締固機械の将来展望は?
油圧駆動アーティキュ
1969(昭和44) 酒井重工業、
●GPS活用の管理体制:建設費用の低減や工期短縮などの要望
レートローラR1開発
に応えるため、GPSやトータルステーション(光波測距儀)締固
酒井重工業R1
1977(昭和52) ボーマクジャパン、
BW90A発売
管理を採用している現場が増えてきました。締固機械の走行軌
跡と地盤反力などから現場の品質を確保するのが狙いです。
1983(昭和58) ハム社、
水平振動システムの特許を取得し、
量産化
●広がる海外での活躍:世界的な経済の冷え込みとは別に、イン
BW151AD-2発売
1997(平成9) ボーマクジャパン、
フラ整備に伴う建設機械の需要は着実に増えています。このイン
フラ整備に使用される締固機械は輸出、現地生産の両面で海外に
(現・キャタピ
1998(平成10) 新キャタピラー三菱
活躍の場を広げています。
ラージャパン)
、
CATタイヤローラ
●安全性の強化:機械周辺に対する安全対策の強化が課題となっ
PF290B導入
日立建機、
RT205発売
ています。安全を損ねるリスクを低減させる設計と製造を行うこ
とで労働災害を防ぐのが狙いです。
想定リスクを洗い出し、
入念な
新キャタピラー三菱
PF290B
2007(平成19) ボーマクジャパン、BW141AD-4発売
検討と適正な評価を行い、
より高い安全性を確保することが求め
られています。
2009(平成21) 関東鉄工、
H550・H650発売
81
関東鉄工H550
ココがすごい!日本の建設機械
コンクリートポンプ
Concrete Pumps
コンクリートポンプとは、ミキサ車などで運ばれてきた生コン
クリートをホッパで受け、ポンプ機構により輸送管を通して目
的の場所へ圧送する建設機械です。主なポンプ機構は、ピスト
ン式とスクイーズ式があり、切換弁などの構造に各メーカの特
徴があります。コンクリートポンプには、定置式と車載式があ
り、中でもブーム装置を搭載したブーム車と呼ばれるコンク
リートポンプ車が広く普及しており、コンクリート打設工事の
ほとんどがブーム車により施工されているといわれています。
日工ダイヤクリート
DC-SL1400BDH-M28
たPTF60B型、
極東開発工業のPB10-50から普及。
遠隔操作も
日本でのコンクリートポンプのあけぼのは?
できるブームの屈伸、旋回は現場での機動性を一段と高めてき
ました。
●ドイツで開発、米国で実用化:世界初のコンクリートポン
プは1907(明治40)年にドイツで開発されました。1923(大
●ブーム圧送と吐出量の増大化:コンクリートポ
正12)年には米国・レックス社が実用機を開発。1960年代半
ンプ車に搭載されたブームは、
油圧シリンダによ
ばから技術提携による国産機種の発売が相次ぎました。
る屈折式が一般的。
メーカ各社は効率的にコ
●国産第1号は?:1950(昭和25)年、石川島重工業(現・IHI
ンクリートを圧送できるSバルブ方式の採
建機)がドイツのトルクレット社と技術提携した機械式クラ
用や吐出量の増大化、
ブームの軽量化
ンクシャフト駆動の12A型
(定置式)
と20A型
(同)
です。
に力を入れています。
●その後のコンクリートポンプ:ドイツや米国のメーカとの
●車両の規制緩和で進んだ大型
技術提携による国産コンクリートポンプは石川島重工業の取
化:1994(平成6)年の車両に関す
り組みを皮切りに盛んになりました。続いて、三菱重工業は
る規制緩和により、25tシャシに搭
ドイツのシュビング社と、極東開発工業は米国のチャレンジ
載したブーム長さ36mという国内
クック社と、新潟鐵工所は米国のトムセン社と提携。いずれ
最大のコンクリートポンプ車が登
も油圧式でした。
場。
コンクリート打設工事の工期短
縮や省力化を進めました。
極東開発工業
PY100-26H
コンクリートポンプの用途は?
土木建築工事用コンクリートの打設に使用される車両系建
コンクリートポンプが登場するまで、
どうしていたのか?
設機械です。
「もしも、世の中にコンクリートポンプがなけれ
ば、コンクリート構造物はこれほど早く高品質化されなかっ
クローラ式小型ダンプやクレーンバケット、
ネコ車(手押し車)
な
ただろう」
とされるほど重要な役割を果たしています。
どによって現場までコンクリートを移送していました。
コンクリートポンプの長所は?
コンクリートポンプには、
どのような技術が生かされているのか?
●打設工事を省力化・迅速化:現在、
コンクリート打設工事の9
割以上がコンクリートポンプ車によるものといわれています。
そ
●油圧技術:コンクリートポンプの進化で重要な役割を果たし
の活躍により、建設現場における打設工事の省力化や工期短縮
などに大きく貢献した点が、
特徴といえます。
たのが1953(昭和28)年にドイツで開発された油圧式です。
コ
●ブーム搭載で高まった機動性:本格的なブーム付コンクリー
ンクリートポンプ車のブームの屈伸や旋回、屈折など、主要機構
トポンプ車は石川島播磨重工業が1972(昭和47)年に開発し
の動きは油圧システムで制御されるようになりました。
82
●ブームの屈折、長尺化:屈折式
コンクリートポンプの変遷
ブームの採用やブームの長尺化
は機動性を高めるための重要技
1907(明治40) ドイツのメーカがコンクリートポンプを開発
1923(大正12) 米国・レックス社、
コンクリートポン
プの実用機を開発
術です。特に、
日本では、細かい生
コンクリート分配に対応するた
ドイツ・
1950(昭和25) 石川島重工業(現・IHI)、
トルクレット社と技術提携し、機械
式 クランクシャフト駆 動 方 式 の
石川島重工業20A型
12A、20Aを開発
め、
ブーム先端に長いホースを用
いる工法が取り入れられていま
す。
(現・IHI)、定置式油圧コンクリートポン
1961(昭和36) 石川島播磨重工業
プをトラックに搭載したPT12Tを開発
●残コン排出技術:スクイーズ式
三菱重工業、
ドイツ・シュビング社と技術提携し、BP25M・
BP12Mを開発
ポンプ車の利点の一つである残コ
ン処理は工事の経済性にもかか
わる主要技術。ホッパ内、コンク
プツマイスター
BSF36.16H
1966(昭和41) 石川島播磨重工業、連続コンクリート圧送のPTB25T・
PTB30TPコンクリートポンプ車を開発
極東開発工業、米国・チャレンジクックブラザーズ社と技術提
携し、PC80-10スクイ―ズ式コンクリートポンプ車を開発
リートシリンダ内、
ゲートバルブ、根元配管内の残コンをすべて排
出できるピストン式ポンプ車もあります。
米国・トムセン社より640ブーム付コンクリートポンプ車が
国内に納入
●振動抑制技術:コンクリートポンプのブームは年間100万回
ブーム付コンクリートポンプ車を開発
1968(昭和43) 石川島播磨重工業、
程度の振動を伴います。過剰な振動はブームの劣化を早めるの
極東開発工業、伸縮式ブーム付スクイーズクリートポンプ車
PB10-10を開発
で、無用な振動を発生させないことが重要です。
このため、油圧
回路を改良するなどの対策が試みられています。
ピストン式コンクリートポンプ車PK25開発
1969(昭和44) 極東開発工業、
ブーム付コンクリートポンプ車DC-100B開発
1970(昭和45) 三菱重工業、
3段屈折ブームコンクリートポンプ車
1972(昭和47) 石川島播磨重工業、
PTF60B開発
コンクリートポンプの将来展望は?
1973(昭和48) 極 東 開 発 工 業 、3 段 屈 折ブ ー ムコンクリートポンプ 車
PB10-50開発
●ポンプの高圧化:ビルの高層化や耐震構造に不可欠な高強
1977(昭和52) 極東開発工業、
ダイレクト式スクイーズクリート開発
度コンクリートの圧送にポンプの高圧化が望まれており、各
スイング式バルブ搭載コンクリートポンプ車開発
1982(昭和57) 新潟鐵工所、
メーカが開発に取り組んでいます。
丸伸商会(現・シンテック)、平行摺
動式バルブ機構の定置式小型ピ
ストンコンクリートポンプを開発
●より一層の大型化:海外ではブーム高さ70m級のポンプ車
が登場し大型化には目を見張るものがあります。
もちろん日本
1983(昭和58) 大一機械工業(現・大一・テクノ)、
Wローラ式スクイーズポンプ車を
開発
でも大型化は望まれていますが、36mが実用上の最大級です
(一部ですが52m級の輸入車も見受けられます)。
この状況は、
1985(昭和60) 極東開発工業、ペリカンスイング
式バルブコンクリートポンプ車開発
しばらくは変わらないと思われます。
●安全対策:2006(平成18)年にJIS A 8612安全要求事項
コンクリート
1991(平成3) 三菱重工業、ダイヤクリート式(残コンゼロ)
ポンプ車開発
が制定されています。
また、
日本建設機械工業会コンクリート
1993(平成5) 極東開発工業、31mロングブーム付コンクリートポンプ車開発
ポンプ部会では独自のガイドラインを設けて各メーカとも安全
ブーム制振装置KAVS付ブーム付コンク
1994(平成6) 極東開発工業、
リートポンプ車開発
装置の開発に取り組んでいます。攪拌装置の緊急停止装置や
ドイツ・プツマイスター社、52mロングブーム付コンクリート
ポンプ車を日本に納入
自動停止機能はその一例です。
●環境対応:多くの
1996(平成8) 石川島建機(現・IHI建機)、36mブーム付コンクリートポン
プ車IPG135B-6N36/4開発
建設機械と同様、騒
極 東 開 発 工 業 、3 6 mブ ー ム 付コンクリートポンプ 車
PY120-36開発
音・排出ガス規制や
C O 2 削 減などの環
2000(平成12) 三菱重工業、新潟鐵工所よりコンクリートポンプ事業取得
マックスイングバルブ式コンクリートポンプ車を発売
境 面への対 応が大
世界最小ブーム付スクイーズコンクリートポ
2001(平成13) 極東開発工業、
ンプ車PH35-11開発
きな課題となってお
り、各メーカとも製
2003(平成15) プツマイスター社、生コンクリート搬送・ミキシング・ポンピ
ング・打設機能を1台で可能にしたコンクリートポンプミキ
サ車PUMIを日本へ納入
品 開 発に取り組ん
でいます。
シンテック
MKW-55SM
大一・テクノDCP-X40
日
2006(平成18) 日工、三菱重工業よりコンクリートポンプ事業を取得し、
工ダイヤクリート設立
83
ココがすごい!日本の建設機械
コンクリート
プラント
ジクロス
Concrete Plants
コンクリートプラントは、
コンクリート製造システム
のメイン装置です。セメント、砂利、砂、水などの原
材料をそれぞれ個別に、種類別に貯蔵し、
これらを
所定の配合で計量し、コンクリートミキサに投入
後、十分に練り混ぜてフレッシュコンクリートを製
造します。
北川鉄工所ブロックタイプのコンクリートプラント
日本でのコンクリートプラントの
あけぼのは?
コンクリートプラントの用途は?
およそコンクリートを使用するあらゆる施工に役立ってい
コンクリートプラントは米国からの技術導入により日本に
ます。橋梁、地下鉄、トンネル、高層ビルはもちろんのこと、ダ
持ち込まれました。最初に導入したのは日本建機の真鍋武雄
ムや港湾の工事でも活躍しています。
氏といわれています。
コンクリートプラントには、
どのような技術が生かされているのか?
生コンクリート製造システムとは
原材料の貯蔵、
供給・貯蔵システム、
計量・混練システム、
操作・品
●強制二軸ミキサ:コンクリートプラントの進化過程におい
質管理システム、
環境・リサイクルシステムの各システムを機能
て、コンクリートを混練するミキサの進化は大きなポイント
的に組み合わせた総合システムです。
そのシステムにおいて、
コ
となるものです。ミキサは、不傾式→可傾式→傾胴式→パン
ンクリートプラントはメイン装置となるものです。従ってプラ
形と進化してきましたが、1970年代後半から登場した強制
ントの計画には、生コンクリートの用途、生産規模、トラックミ
二軸ミキサが現在では主流となっています。
短時間で混練が
キサ車数、設置場所、地形、面積、原材料の入荷条件、工事期間な
できる、部品交換の周期が長く計画的な保守管理がしやす
どに適した形式を選択
い、コンクリートの排出時間が短い、つまり出荷サイクルタ
し、周囲環境の条件と入
イムも短い、大型機種の製造が可能など、多くのメリットが
荷および出荷の車の流れ
あります。
を考慮した配置を計画す
●全自動式プラント:プラントの自動化も重要な技術的ト
る必要があります。
ピックスです。その進化の過程は、手動式→半自動式→全自
日工コンクリートプラント
動式となっていますが、現在では電子制御方式の操作機構、
コンクリートプラントが登場するまで、
その役割はどのように果たしてきたのか?
化が図られています。
品質管理装置、工場全体の集中管理装置などのコンピュータ
●ロードセル計量:各材料の計量器については、現在ロード
工事現場で調合、混練を行っていました。現在では、工場で生
セル(力・荷重を電気的に変換して検出するセンサ)直接計量
産されたコンクリートを工事現場に運んで使用するのが主
方式が主体となっています。操作盤にさまざまなソフトを組
流ですが、ごく少量のコンクリートを必要とする場合や、逆
み込んでいるため高い計量精
に非常に大量のコンクリートを必要とする場合に現場で混
度が期待できる点や、データ
練を行う場合があります。
をソフト処理できるため数百
から数万種類のデータの記憶
が可能になっている点などが
メリットです。
84
光洋機械産業コンクリートプラント
コンクリートプラントの変遷
日本製のコンクリートプラントの特徴は?
環境対策
力
入
点
車両規制
大
特徴
対応
1949(昭和24) 国内初の生コンクリート工場、
東京コンクリート工業業平橋
工場が、
日本建機によって完成
。
。
(現・日工)、
コンクリートミキサ製造販売開始
1951(昭和26) 日本工具製作
●粉塵防止対策(大気汚染防止法対応)
:粉塵 主
、骨材
移動
発生
投入時 発生
。
設
粉塵 、
集塵装置 設
1952(昭和27) 石川島コーリング(現・IHI建機)設立。米国・コーリング社と
技術提携、
コーリング式傾胴形重力式ミキサおよび塔型プラ
ント発売
対処
75cm以上 幅
該当
北川鉄工所、可傾式ミキサ開発
。特
、
粉塵発生施
発塵個所
防塵
、
散水装置
手動計量式バッチャプラント発売
1955(昭和30) 北川鉄工所、
設
1956(昭和31) 日本工具製作、
コンクリートプラント製造販売開始、
スミス
式自動傾胴ミキサの製造販売
。
●防音・振動対策(騒音規制法、振動規制法対応)
:骨材落下
部、
、
基礎
、水
機械室
防音・振動対策 行
。
●排水処理設備(水質汚濁防止法対応)
:
車
処理、
排水
回収
再利用
。骨材
排水
、回収
洗浄
水
再利用
自動式バッチャプラント第1号機納入
1963(昭和38) 日本工具製作、
洗浄、戻
石川島重工業(現・IHI建機)、
イバーグミキサ発売
洗浄
、砂利、砂
置場、
1962(昭和37) 栗原工業
(現・クリハラ)、
旧西ドイツ・エルバ社と技術提携し
エルバ強制練りミキサ、エルバ生コンクリートプラントの国
産化開始
外壁、
、多
スウェーデン・パラスインターナショナル社と技
1966(昭和41) 北川鉄工所、
術提携、
ボルテックスミキサの製造販売を開始
日本工具製作、
タービン式ミキサの製造販売開始
デンマーク・トーマスシュミット社と技術提携し
1970(昭和45) 栗原工業、
ホットコンクリートプラントの国産化を開始
完全
。
1971(昭和46) 日工、自社製プラント操作盤製造販売開始、ホットコンク
リートプラントの製造販売開始
コンクリートプラントの海外への
進出動向は?
機種
、輸出
違
エルバ式生コンクリートプラント排水
1977(昭和52) エルバ(現・クリハラ)、
処理装置、
エルバ式砂利選別プラント排水処理装置を開発
、ODA、
比率
海外
高
整備
市場
旧西ドイツ・BHS社と技術提携し二軸強制
1974(昭和49) 光洋機械産業、
練りミキサの製造販売を開始
可能性
増加
。
、中国
今後
中近東
日工、完全ユニットプラントの製造販売開始
新
世界最大級6m3・二軸ミキサを発売
1978(昭和53) 光洋機械産業、
。
二軸強制ミキサSFミキサの製造販売
1979(昭和54) 日工、
プレスドラム式連続自動脱水機を開発
1981(昭和56) エルバ、
コンクリートプラントの将来展望は?
日本
、計量精度
瞬発力
増強、混練性能
進化
、
IT
。例
、環境対策
。
今後
駆使
、GPS
、
応
シャフトレスミキサの国産化を開始
1990(平成2) クリハラ、
技術革新
1992(平成4) 北川鉄工所、
強制傾胴二軸ミキサFVミキサ発売
省力化、高性能化、環境対策
駆使
車両管理
情報共有化
自動管理
1984(昭和59) 石川島建機(現・IHI建機)、油圧可変式ミキサHyDAMミキ
サ発売
、
実用化
、
図
、
今後
1998(平成10) 日工、瞬発力バッチャプラントDASHプラント製造販売開始
DSFミキサ製造販売開始
1999(平成11) 光洋機械産業、WEF型二軸強制練りミキサ・ダブルシール
(軸シール)発売
、
表面水
進
考
高流動・高強度対応WJK型二軸強制練りミ
2000(平成12) 光洋機械産業、
キサ発売
。
2001(平成13) 日工、
都市型省スペースプラント発売
連続羽根式ミキサTWISTERミキサ発売
2002(平成14) 石川島建機、
コンクリートミキサ ジクロス発表
2004(平成16) 北川鉄工所、
2005(平成17) 光洋機械産業、高流動、高強度対応トルネード型二軸強制
練りミキサ、
生コンクリート冷却設備発売
2007(平成19) 光洋機械産業、新型二軸強制練りミキサTWISTER NEW
を発売
2008(平成20) 日工 、超高強度コンクリート用二軸強制ミキサDASH200Nミキサの製造販売開始
クリハラ コンクリートプラント
85
ココがすごい!日本の建設機械
推進機械
Small Jacking Machines
推進機械は下水道管敷設工事などで活躍。鉄筋コ
ン ク リ ー ト 管 、鋼 管 、塩 化 ビ ニ ー ル 管 を 順 次 、
ジャッキで押し込みながら、地中をモグラのよう
に掘り進める仕事をします。大きさと長さの決
まった管を継ぎ足す工法に用いられるのが特徴
です。大規模なトンネルを掘るシールド機の仲間
といえます。
コマツ スリムアークTA500
く変化する地域が多く、
必ずしも一定ではありません。
軟弱地
日本での推進機械のあけぼのは?
盤から礫、
岩盤層まで多様な条件に応じた掘削アタッチメント
●国鉄線路の地下で:わが国初の推進工法は1948(昭和23)
の組み合わせで、
最適な工事をすることができます。
年5月に行われた国鉄尼崎線軌道下の横断工事で採用され、
●省スペース、ローコスト:推進装置をコンパクトに設計し
ガス管埋設工事に使われました。
て、
小型立坑からの発進が可能になりました。
また、
支援のため
●国産第1号は?:小口径管を用いた推進機械を最初に商品
のクレーンや発電機などの設備は小規模なもので済み、
トータ
化したのはコマツです。
担当したのは同社の制御研究室
(帆足
ルコストを削減する効果もあります。
研究室長グループ)
で、
米国から導入したトンネルボーリング
推進機械の用途は?
マシン技術の一部を活用したといわれています。
●その後の推進機械:小口径管推進工法は主として下水道管
施工精度
(勾配)
の厳しい下水道管の工事に採用されたことで、
の敷設工事に用いられています。1977(昭和52)年に埼玉県
ガス管、
電力管、
通信管用などに対象用途が広がりました。
推進
久喜市でアイアンモール工法という技術が実用化されて以
管の種類も鋼管、
塩化ビニール管、
ダクタイル管、
レジンコンク
来、現場の土質や施工条件に応じて、圧入方式、オーガ方式、
リート管、
強化プラスチック管と増えています。
泥土圧方式など数多くの方式やそれを実現する機械が開発
推進機械が登場するまで、どうしていたのか?
され、
実用化されています。
下水道管の敷設は主として地面を切り開く開削工法が一般的
推進機械の長所は?
でした。
やむを得ない場合には鋼管に人が入って行う刃口推進
がありましたが、
危険を伴うため、
機械化が望まれていました。
●路面を開削する必要がない:推進工法は発進する側の立坑
に置いた推進機に埋設管をセットし、
到達する側の立坑に向け
推進機械ができる以前は口径600mmでも人間が鋼管の中に
て順次押し進めていく仕組みなので、
路面を開削する必要があ
入って作業していました。
しかし、
1975
(昭和50)年に出され
りません。
工期の短縮や交通渋滞の緩和、
さらには掘削残土の
た労働基準局長の通達で、推進工法に伴う作業はトンネルの
減量化にも有効です。
建設作業にあたるとみなされ、
安全対策上、
口径800mm以下
●さまざまな地盤に対応できる:わが国の地盤は土質が著し
の管には人が入らないように定められました。
コマツ
東邦地下工機TH-150F
TP75SCL
86
日立建機DL50B
推進機械の変遷
推進機械には、どのような技術が
生かされているのか?
1948(昭和23) 国鉄尼崎線軌道下の横断工事で、
わが国で初めて推進工法
が採用される
●地質対応技術:先端部にビットを回転させる油圧駆動の機械
部を置き、
らせん状ブレードを回転させ、
後方に搬送するオーガ方
水平ボーリングマシンとしてTH-50型を開
1965(昭和40) 東邦地下工機、
発、
主にパイプルーフ工法に使用される
式が主流です。
土砂の移送には泥水を使う泥水方式もあります。
1971(昭和46) 三和機材、
ホリゾンガー工法機の前身、水平ボーリングマ
シンホリゾンガーSH-600型試作機を開発
わが国の多彩な地質に応じた取り組みです。
●測量技術:施工精度を求められるため、
機械先端の位置を測量
ホリゾンガーSH-1000型でけん引式、
位置検出
1973(昭和48) 三和機材、
スクリュ芯より目視のターゲットを製作。福岡・九州特殊
土木で実験施工
することが必要です。
オーガ方式の場合、
軸の中空を通して、
先端
に設置したLEDランプを確認します。泥水方式の場合にはレー
ザー光線を利用します。
また工法によっては圧入方式・オーガ方
ホリゾンガー方向修正装置の開発に着手
1976(昭和51) 三和機材、
式・泥土圧方式すべてにレーザー光線を使用しているケースもあ
1977(昭和52) 小松製作所、
方向修正機能付小口径推進機械仮管併用二工
式アイアンモールTP80を開発
ります。
●推進方向制御技術:先端位置が予定線から外れたときは、
4本
1978(昭和53) 三和機材、
ホリゾンガーSH-1030型の方向修正装置付第1
号機を開発
のジャッキを伸張させ、
マシンヘッドを揺動させることで方向修正
を行います。
鋼管推進方式では鋼管全体を回転させて直進性を維
千葉県印旛郡公共下水道汚水管渠築造工事
1980(昭和55) 東邦地下工機、
にTH型水平ボーリングマシンを使用。鋼製さや管方式に
よる管渠敷設工事が行われる
持するものもあります。
●掘削土砂排土技術:オーガ方式がブレードで管内の土砂をそ
のまま排出するのに対し、
泥水方式は管やホース内を循環する泥
ホリゾンガーテレビカメラシステム、岩見沢第
1981(昭和56) 三和機材、
1回現場テスト成功
東邦地下工機、
鋼製さや管方式TH型推進機TH-150型製作
水に土砂を混入して流体輸送します。
推進機械の将来展望は?
エンビライナー第1号機開発
1986(昭和61) 三和機材、
東邦地下工機、
HA-150型推進機を開発
●機体の小型化:都市部では現場周辺の住民の日常生活に支障
1988(昭和63) 小松製作所、泥土圧方式一工程式アイアンモールTP90S
を開発
東邦地下工機、
テレビモニタシステムを開発
日立建機、
D351推進機第1号機を発売
をきたさないよう、
道路使用期間の短縮や使用面積の縮小が課題
となっています。
また、
より小さくなる立坑の中での作業を想定し
た機械については、
一層の小型化が求められています。
1989(平成元) 東邦地下工機、
TH-30型推進機製作
●推進の長距離化:発進側と到達側の立坑間を推進する下水道
工事では長距離推進が可能なら立坑の数を省くことができ、
工事
直径2mの小さな立坑から推進を可能にしたエ
1990(平成2) 三和機材、
ンビライナーSH-303型第1号機開発
日立建機、
D501推進機第1号機を発売
費の軽減を図ることができます。
そのためには、
長距離推進に必要
な高精度の測量技術と施工技術の開発が求められています。
適用口径を350∼450mmの塩ビ管まで拡大し、
1991(平成3) 三和機材、
長距離推進に成功。
エンビライナーSH-408型第1号機開発
●下水道管の老朽化対策:下水道管が早期に普及した大都市で
は、
耐用年数を超える経年管の比率が高く、
管の老朽化、
破損に
1994(平成6) コマツ、泥土圧方式先導体駆動方式礫・玉石対応TP95S
を開発
起因する道路陥没が多発し、
深刻な社会問題となっています。
破
壊したヒューム管・陶管・ポリエチレン管などのその位置に、
新た
TH-100型推進機、
TH-200型推進機開発
1995(平成7) 東邦地下工機、
日立建機、
DL35N推進機、
DL50N推進機を発売
に再構築する事業は大都市を中心に拡大していくものと予想さ
れ、
都市環境を考慮すると、
非開削による改築推進技術へのニー
立坑内駆動方式塩ビ管・ヒューム管対応小型立坑
1997(平成9) コマツ、
発進機TP40SCLを開発
日立建機、
DL70推進機を発売
ズが一層高まっていくものと思われます。
DL50B
(分解型)
推進機を発売
2000(平成12) 日立建機、
DL35B
(分解型)
推進機を発売
2001(平成13) 日立建機、
TH-50型推進機開発
2003(平成15) 東邦地下工機、
曲線対応可能な小型立坑発進礫・玉石対応機スリ
2004(平成16) コマツ、
ムアークTA500を開発
三和機材
SEH-508型
87
ココがすごい!日本の建設機械
シールド
Shield Machines
シールドは、主に軟弱地盤の掘削時に用いられ、土
砂の崩れを防ぎながら横穴式に掘り進み、セグメン
トと呼ばれるトンネル内壁材を組み立てながらモグ
ラのように地中を進んでいく機械です。現在では、
切羽の圧力を保持しながら、機内は大気圧下で作業
できる密閉型の機械が主流となっています。なお、
主に岩盤の掘削を目的とした機械は、
トンネルボー
リングマシン
(TBM)
と呼ばれ、坑壁に掘進反力をと
る構造のためシールドとは区別されています。
ジャパントンネルシステムズ 直径12.53m泥土圧シールド
事では直径14m超の大断面泥水シールドが活躍しました。
日本でのシールドのあけぼのは?
●複雑な地質に対応できる:比較的均一な地質の欧州とは違
い、
日本の地質は複雑です。
特に都市トンネルならではの軟弱
●旧国鉄のトンネル工事が最初:初のシールドによるトンネル工
事は1826
(文政9)
年、
英国のテムズ川で採用された矩形シール
地質を克服するために開発されたさまざまな技術は、
日本製
ドによるものでした。
日本では、
1917
(大正6)
年に旧国鉄羽越線
シールドの品質向上に大きく貢献しています。
折渡トンネルで初めて使用され、
その後熱海線丹那トンネルでも
●作業の自動化が進んでいる:シールド工法はトンネル工事の
採用されましたが、
いずれも湧水や崩壊性地山などの悪条件によ
中では最も機械化が進んでいます。近年は、
「 作業の完全自動
り途中でシールドの使用を中止しています。
化」
や
「優れた坑内環境」
が、労働者不足や高齢化対策に有効と
●国産第1号は?:日本製シールドの第1号は1936(昭和11)年、
旧
いうことで、広く海外からも注目されています。
国鉄関門トンネルに採用された直径7m開放手掘り式(圧気併用)
でし
シールドの用途は?
た。現在では技術、生産台数、施工実績のいずれも日本が世界一です。
わが国では、
上下水道、
電力ケーブル、
ガス導管、
共同溝、
地下鉄、
●その後のシールド:導入当初主流であった手掘り式シールドは
技術の進展に伴い、半機械掘り方式を経て全断面機械掘りに移行
道路などあらゆる地下建設工事に用いられています。
最近では、
騒
しました。機械掘りは泥水式、土圧式、泥土式などに発展しました。
音・振動の防止といった面からも、
特に都市部における工事に最も
断面形状も円形から異円形(円形を二つ並べたものや四角形)へ
有効で代表的な工法と考えられています。
と進化しています。現在ではセグメントの自動組立、
自動方向制御
海外でも活躍?
など、
さまざまな省力化と自動化が進められています。
日本のシールドの技術水準は世界のトップクラスです。英仏間
のドーバー海峡下にあるユーロトンネル、
トルコのボスポラスト
ンネルなどのビッグプロジェクトでも
コマツTK781P
日本製シールドが活躍しています。台
日立造船二連MF 日立造船三連マルチ
湾、中国、
シンガポールなどでは地下
シールドの長所は?
鉄 敷 設 工 事などで数 多くの日本 製
シールド機が使われています。
●地表面への影響がない:昔の工事は工事現場を地上から掘
り起こす必要があったため、地上の人や車の往来を妨げざるを
コマツTM771W
トンネルボーリングマシンとの違いは?
得ませんでした。
シールドは機械を入れる穴(立坑)
さえ掘れば、
トンネルを構築しながら地下を掘り進むので、地表面にはほと
主に軟弱地盤掘削が目的のシールドに対し、岩盤の掘削を目的
んど影響を及ぼしません。
とした機械をトンネルボーリングマシンと呼びます。海外では
●大口径の工事ができる:初期のニーズは下水道関係が多かっ
1880年代から試作機による実験工事が行われ、1950年代に
たのですが、技術の発達で大口径化が可能となり、地下鉄や地下
実用化されました。
しかし近年では、
シールドによる硬岩掘削技
河川、道路などにも使われるようになりました。東京湾横断道路工
術も進歩しており、
両者の境界がなくなりつつあります。
88
シールドには、どのような種類があるのか?
シールドの変遷
●開放型機械掘り式:シールドの断面全体を回転式カッタヘッ
1826(文政9) 英国・テムズ川のトンネル工事で世界で初めてシールド工法
が採用
ドで掘削。切羽が安定した所では、掘削速度が速く、工期の短縮
1846(弘化3) イタリアで世界初のロックトンネルマシン考案
や人員節減を図ることができます。掘削した土砂はベルトコン
ベヤなどで排出します。
コーンタイプのディスクカッタ
1851(嘉永4) 米国のチャールズ・ウイルソン、
をアームに取り付けた回転式のロックトンネルマシンを考案
●ブラインド式:手掘り式の前面に開口部を持つバルクヘッド
(隔壁)
を設け、
シールドをジャッキで押し進めるだけで土砂を
排出する仕組みです。
ところてんの原理を応用した排土方法で、
1917(大正6) 旧国鉄羽越線折渡トンネル工事の際、日本で初めて使用される
が途中で使用中止
ごく軟らかい土質の工事に適しています。
1936(昭和11) 関門鉄道トンネル工事の際、国産のシールド工法が初めて採
用される
●土圧式:密閉型機械掘り式の一種で、切羽とバルクヘッドと
の間(カッタチャンバ)
に掘削土砂を充満させて切羽を安定させ
1948(昭和23) 旧ソ連の地下鉄工事でメカニカルシールド採用
る仕組みです。排土はスクリュコンベヤ
1952(昭和27) 米国・ロビンス社、
近代的トンネルボーリングマシンを開発
などを用いて行います。
1953(昭和28) 関門道路トンネル工事で日本で初めてルーフシールド機採用
●泥水式:密閉型機械掘り式の一種で、
掘削土砂は地上から送られる送泥水と
攪拌しスラリ
(泥水)状にしてパイプ輸
川崎重工業泥土圧シールド
送します。地上の泥水処理設備で土と
1964(昭和39) 旧帝都高速度交通営団
(現・東京メトロ)
の東西線建設
工事にシールド工法を採用
水に分離した後、水は再利用します。軟
弱地盤だけでなく、
川底や海底など水圧
の高い所での使用に適しています。
1957(昭和32) 名古屋市交通局の東山線建設
工事にシールド工法を採用
川崎重工業泥水シールド
シールドの将来展望は?
地下鉄用ルーフシールド
電電公社(現・NTT)
の電話ケーブル敷設工事にシールド工
法を採用
1965(昭和40) 東京都の水道敷設工事にシールド工法採用
●一段と進む自動化:多くの建設機械と同様、
シールドにも自動
1984(昭和59) 東京電力の管路新設工事に拡大シールド工法採用
化、
情報化技術が導入されています。
今後セグメント全自動組立
1986(昭和61) 英仏海峡トンネル
(ユーロトンネル)工事に日本製シールド
マシンが採用される
装置に見られるように、
コンピュータで制御された自動化が一
段と進むでしょう。
JR東日本の京葉都心線建設工事に二連円形(MF)
シールド採用
シールドを採用
1991(平成3) 大阪市交通局の7号線建設工事に三連円形(MF)
建設省(現・国土交通省)広島国道事務所の新交通システム
建設工事に二連円形
(DOT)
シールドを採用
東京都地下鉄建設の12号線(大江戸線)建設工事に複円形
(H&V)
シールドを採用
1992(平成4) 首都高速道路公団のジャンクション建設工事にマルチマイ
クロシールドトンネル
(MMST)
工法を採用
日立造船
セグメント全自動組立装置
神奈川県内の水道敷設工事に機械式地中接合(MSD)工法
を採用
●増える大深度地下工事:地下の埋設物がますます増える中で、
今後は個人の権利が及ばず用地取得の問題が少ない大深度地下
1993(平成5) 川崎市内の下水道敷設工事に球体シールド工法を採用
での工事が増加すると思われます。
用工事に直径14.14m泥水
1994(平成6) 東京湾横断道路(アクアライン)
シールドを採用
●今後の海外展開:日本製シールドの技術力は高く、
世界各国で
使用されています。
今後は人口が多いながらも、
インフラ整備が遅
シールド工
1996(平成8) 横浜市の下水道敷設工事に地中分離型(親子)
法を採用
れている地域からの引き合いが見込まれています。
インドや東南ア
ジア地域からも地下鉄敷設に関する問い合わせが数多く寄せら
2002(平成14) 京都市の地下鉄建設工事に複線断面矩形シールドを採用
れています。
シールド工法技術協会、
日本トンネル技術協会の資料参考
89
ココがすごい!日本の建設機械
コンプレッサ
Compressors
コンプレッサは空気圧縮機ともいい、建設工事ではエンジ
ン駆動方式で可搬式のものが多く使用されています。
コン
プレッサには多くの種類がありますが、日本建設機械工業
会ではエンジン駆動、可搬式のコンプレッサを対象として
います。
北越工業PDS655S
コンプレッサが登場するまでは、
どうしていたのか?
日本でのコンプレッサのあけぼのは?
黎明期には米国の技術が一部使用されることもあったようです
が、現在、国内で普及しているコンプレッサは、ほぼ日本独自の
動力源として使用できるエアはコンプレッサが使われるようにな
技術で開発されたものです。
るまで存在しませんでした。
あるいは、人間が一時的に空気を圧
縮して使用することはあったかもしれませんが、
コンプレッサの
コンプレッサの特徴
ようにある一定の圧力の圧縮空気を供給し続けることはできま
駆動方式と設置条件でその特徴を説明します。
せんでした。
コンプレッサの登場によって、燃料、電気などと並ぶ
●駆動方式:
動力源として、
圧縮エアが加わりました。
◇モータ駆動:電力が確保できる場所でのみ使用されます。排
コンプレッサの進化過程における
技術的なターニングポイントは?
出ガスが出ず、
振動、
騒音が少ない点が長所です。
◇エンジン駆動:燃料の補給があれば、
どんなところでも使用で
きます。
ただし排出ガスを排出し、振動・騒音が大きい点がデメ
●レシプロ(往復式)
コンプレッサからロータリ
(回転)
コンプ
リットです。
レッサへ移行する際のベーンの耐久強度向上:シリンダ内をピ
●設置条件:
ストンが往復運動するレシプロコンプレッサは、古くから使われ
◇定置式:移動ができません。
ているものの、小型のものを除いて振動・騒音が大きく効率も悪
◇可搬式:簡単に移動ができます。
いためロータリコンプレッサに交代しつつあります。
その際、
ロー
これらの駆動方式、
設置条件の特徴を組み合わせると、
プロ式の短所を補いました。
タリ式の回転翼であるベーンの耐久性を向上させることで、
レシ
◇エンジン駆動・可搬式
⤝Ẵ
ྺථᘒ
コンプレッサ:工事現場な
ᤴẴ
ᤴฝᘒ
ど一時的かつさまざまな
ࣅࢪࢹࣤ
ࣅࢪࢹࣤࣛࣤࢡ
場所で使用できます。
エンジン駆動・可搬式
コマツEC210SS
ࢨࣛࣤࢱ
ࢤࢾࢠࢷ࢔ࣤࢡࣞࢴࢹ
◇モータ駆動・定置式コ
ࢠࣚࣤࢠࢨࣔࣆࢹ
ンプレッサ:隧道および都
市部の工事の動力源の一
ࢤࣤࣈࣝࢴࢦ࢛࢕ࣜ
つであるエアの供給など、
常用的な使用に向いてい
ます。
࣭࣊ࣤ
⤝Ẵ
屋外モータ駆動定置式
北越工業SMS22SD
ピストン式コンプレッサの概念図
90
ベーン式コンプレッサ
ᤴẴ
●ロータリコンプレッサからスクリュコンプレッサへ移行する
コンプレッサの変遷
際の独自の歯形の開発:現在、中型以上では、
ロータリ式の中
でもスクリュ式が代表的になっています。
スクリュ式は、ねじれ
(現・アトラスコプコ)、
1905(明治38) ガデリウス
第1号機を発売
た二つの歯形を噛み合わせてケーシングとスクリュの間の空気
を圧縮し、吐出する構造です。連続して効率的な圧縮空気を吐
1938(昭和13) 北越工業、定置式往復動コンプ
出するための独自の歯形の開発が、振動と排気に伴う騒音を抑
レッサの製造・販売開始
え、効率的なコンプレッサを生み出しました。
1946(昭和21) 北越工業、
小型高速往復動ポータブルコンプレッサの開発
⤝ථ
ロータ
ガデリウス第1号機
ケーシング
1955(昭和30) 北越工業、国産初のロータリコンプレッサ完成。小河内ダム
建設工事現場で稼働
1968(昭和43) 北越工業、
海外技術に頼らないスクリュコンプレッサを完成
ᤴฝ
1970(昭和45) 北越工業、無負荷動力軽減装置、特殊円弧スクリュ歯形、国
産最大ポータブルスクリュコンプレッサ開発
スクリュ式コンプレッサ
海外での動向は?
1973(昭和48) デンヨー、
エンジンコンプレッサを開発、生産開始
●世界各国で活躍:日本製コンプレッサは、北米、欧州だけでな
1976(昭和51) 小松製作所、三井精機と業
く、南米、
ロシア、
アジア、
中近東、
アフリカなど、全世界に出荷さ
務提携を行い、可搬式エア
れています。
コンプレッサ小松ECシリー
ズの製造・販売を開始
●幅広い用途:その用途も多岐にわたり、各種インフラ整備工
事、鉱山、工場のエア源として活躍しています。珍しいところで
小松製作所EC50Z
1980(昭和55) 北越工業、新型ニュースク
は、
水族館やテーマパークのエア源、
航空機エンジンの始動など
リュエンジンコンプレッサ
にも使用されています。
PDSシリーズを開発・販売
開始
●日本製コンプレッサの人気の理由:小型から大型までさまざ
まな種類を輸出していますが、
日本製は高い耐久性と信頼性で
北越工業
PDS100S
1982(昭和57) デンヨー、
モータコンプレッサの生産開始
定評があります。
また、機械のパフォーマンスやスペックだけで
1989(平成元) 小松製作所、デンヨー
なく、低燃費、低騒音、
クリーンな排出ガス
(排出ガス規制対応)
と業務提携を行い、デ
など、
環境に配慮している点も特徴となっています。
ンヨーからのOEM供
●高い輸出比率:今後も輸出は伸長すると考えられるため、国
給を受けて、新たにEC
内はもとより海外も見据えた製品開発を、
引き続き行っていく必
小松製作所
EC255SSB
シリーズを発売
要があります。
1996(平成8) 北越工業、高圧エンジンコンプレッサPDSK900S発売。高
コンプレッサの将来展望は?
圧コンプレッサのシリーズ化となる
今後も代替燃料やCO2排出量の削減、省エネといった、環境に
1997(平成9) デンヨー、
インガソール・
配慮した技術開発が求められるでしょう。
ランド社と共同開発の新
型コンプレッサを発売
また、
コンプレッサの使用に関しては、圧力容器安全規則、騒音
規制法および振動規制法、
水質汚濁防止法、
大気汚染防止法な
デンヨー
DIS-55SB
屋外設置型空冷オイルフリーコンプレッサSMAD75
2006(平成18) 北越工業、
ど、数々の届け出が義務付けられている場合が多く、今後も引き
発売
続き対応していく必要があります。
可変圧力システムを採用したDIS-200VPS発売
2008(平成20) デンヨー、
91
ココがすごい!日本の建設機械
基礎機械
Foundation Work Equipment
基礎機械とは、土木構造物および建築構造物を支える地中構造部分である基礎を構築するための機械であり、既製杭施
工機械、場所打ち杭施工機械、地中連続壁施工機械、地盤改良機およびグラウト機械の総称です。工法ごとにさまざまな
機械が製造されています。
基礎機械の分類は?
基礎工法
既成杭工法
打撃
施工方式
圧入
回転
掘削
場所打ち杭工法
バケット掘削
循環掘削
オールケーシング
連続スクリュ
深礎
ケーソン
地中連続壁工法
RC壁用バケット掘削
RC壁用循環掘削
原位置攪拌
正循環式(BH)
逆循環式
オープンケーソン
ニューマチックケーソン
回転式
衝撃式
矢板
地盤改良工法
置換
脱水
掘削置換(浚渫置換)
強制置換
化学的脱水
バーチカルドレーン
締固め
排水
脱水・締固め
表層締固め
固結
深層締固め
表層処理工法
深層混合処理
止水
荷重分散(新材料・ジオテキスタイル)
凍結
薬液注入
止水矢板
敷設式
排水併用式
92
基礎工事機械
気動パイルハンマ
ディーゼルパイルハンマ
油圧パイルハンマ
バイブロハンマ
油圧式杭圧入引抜機
アースオーガ
大口径ボーリングマシン
アースオーガプレボーリング機
アースオーガ中掘機
アースドリル
大口径ボーリングマシン
リバースサーキュレーションドリル
全旋回型掘削機
揺動型掘削機
アースオーガ
機械式深礎機
懸垂式クラムシェル
ロッド式クラムシェル
垂直多軸式回転掘削機
水平多軸式回転掘削機
単軸式垂直軸回転掘削機
パーカッションドリル
多軸アースオーガ
等圧型施工機(TRD)
油圧式杭圧入引抜機
振動パイルハンマ
ウォータジェット
締固砂杭打機
生石灰パイル打機
ボード系ドレーン打機
サンドドレーンパイル打機
グラベルドレーンパイル打機
パックドレーンパイル打機
ウェルポイント施工機
サンドコンパクションパイル工法機
タンパ工法機
動圧密工法機
振動締固工法機
トレンチ式攪拌機
ロータリ式攪拌機
簡易方式(バックホウ)
DLM工法機(スクリュフィーダ方式)
粉体噴射攪拌機(DJM工法)
深層混合処理機(スラリ式CDM工法)
高圧噴射攪拌用地盤改良機
◇バイブロハンマ:バイブロ
ハンマは、鋼矢板・ハット型
基礎機械の特徴は?
鋼矢板・H型鋼杭・鋼管杭・
鋼管矢板などの既製杭の打
込み・引抜きを行う機 械で
す。低周波型から超高周波
型まで多様な機種の構成に
より各種地盤条件に対応で
き、現在では施工時の振動
や騒音の低減に配慮した環
境対策型のバイブロハンマ
が海上・陸上工事で活躍し
ています。
既製杭施工機械
コンクリートパイル・鋼管杭・鋼矢板などの既成杭の施工方式
には、打撃・圧入・回転・掘削があり、それぞれに施工機械が開
発されています。近年はさまざまな高支持力杭工法が開発され
ており、施工品質を向上させるための施工管理装置が実用化さ
れています。
調和工業SR-45
●圧入方式:既設杭を反力に、油圧で杭を押し込むため、あらゆ
る現場環境での連続壁構築に使用されます。
大和機工AE10
◇油圧式杭圧入引抜機:原
理の発見から機械の実用化
まで、
すべて日本で行われた
純国産建設機械で、静荷重
を用いて鋼矢板や鋼管矢板
などを地中に圧入(引抜き)
します。既設杭をつかむため
転倒の危険がなく、施工は
無振動・無騒音、
自動計測す
る圧入情報で杭の品質管理
を行います。適用矢板の種
類は豊富で、硬質地盤や低
空頭地に対応する専用機も
そろっています。
日本車輌製造DH658-135H
●打撃方式:環境規制が比較的少ない海上工事や山間部工事
などで使用されます。
◇気動パイルハンマ:蒸気や圧縮空気を使用し、打撃体の質量6∼
125tのものまで製造されています。水中作業が可能で斜杭も打て
るなどの特徴から海上工事でも活躍しています。
◇ディーゼルパイルハンマ:ラムと呼ばれる鋼製の重錘をシリンダ
内で上下させ、杭の頭を打撃します。能率的で大きな打撃力が特徴
ですが騒音、振動、油や煙の飛散などに課題があります。杭打ち作業
にはパイルドライバというクローラ式の台車や杭打ち船が必要です。
技研製作所SCU-ECO400S
(硬質地盤対応機)
●回転、掘削方式:打撃方式に代わるものとして、次の機械が使用
されています。
◇油圧パイルハンマ:油圧でラムを押し上げ落下させて杭を打つ機
械です。2∼180tの大型機まで製造されています。
ラムの押し上げ
高さを任意に調節でき、打撃力の調整が可能なこと、騒音が低く油や
煙の飛散がないのが特徴。水中使用、斜杭打ちも可能なので大型海
上工事でも活躍しています。
アボロンシステムGV330
三和機材SA-D-150H
◇アースオーガ:騒音・振動などの環境負荷を大きく低減。既成杭の
プレボーリング工法、中掘工法、回転埋設工法などに使用されます。
地中連続壁工法や地盤改良工法には、二∼五軸に構成された多軸
アースオーガが使用されます。
日本ニューマチック工業HP-2SX IHI建機NVA-60SS
93
ココがすごい!日本の建設機械
基礎機械
Foundation Work Equipment
近接して施工できること
場所打ち杭施工機械
場所打ち杭は、構造物の大型化とともに環境負荷が少ないことから
から 需 要 が 増 え 、大 型
需要が増大しています。下記のほかに、大口径ボーリングマシンや
化、高深度化しています。
岩盤掘削孔用のダウンザホールハンマなどが場所打ち杭施工に使
●直打ち工法:鋼矢板な
用されています。
どを直 接 打 込む工 法で
す。既成杭施工機械が使
用されます。
●原位置攪拌工法:原位
置(土中)で土とセメント
系固化材を攪拌し、
これ
にH型鋼などを建て込む
工 法 で す 。多 軸 ア ー ス
オーガが多く使用され、
柱列式連続壁を構築しま コベルコクレーンTRDⅢ
す。
また、連続的に原位置攪拌を行うチェーンカッタ式の掘削
機も開発されています。
●RC置換工法:溝状のトレンチを掘削した後、鉄筋かごなど
を建て込み、
コンクリートを打設する工法です。
RC置換工法
での連続壁施工機械には、
クラムシェルで掘削するバケット式
掘削機、回転ドラムカッタで掘削しリバースサーキュレーショ
ン方式で揚泥する回転式掘削機、パーカッションビットで掘削
する衝撃式掘削機などがあります。
これらの掘削機の多くは、
加藤製作所
KE-1500Ⅲ
日立住友重機械建機クレーン
SDX407-2
◇ オ ー ル ケ ー シング 掘 削
機:ケーシングチューブを支
持地盤まで押し下げながら
掘削するので確実な杭の構
築ができ、泥水を使用しない
ため発生土の処理が容易と
いう特徴があります。また、
玉石や岩盤などの掘削も可
能で、広く普及しています。
ングを入れ、深い所は泥水または
ベンナイト液で孔壁を保護。四角
や丸断面のケリーバという棒を
回転させ、
その先に付けた円筒形
のバケットで 削 孔します。低 騒
音、低振動で、狭い場所での施工
が可能、掘削口径の変更も容易
なのが特徴です。
コンピュータを利用した各種施工管理システムが搭載されて
います。
◇アースドリル:地表部にケーシ
地盤改良機械
軟らかい地盤の土質を改良して、支持力のある地盤にする工法
を地盤改良工法といいます。地盤改良工法には置換工法・脱水
工法・締固め工法・固結工法な
どがあります。
各工法専用機もありますが汎用
機械を用いることも多い上に、各
工法の中でも使用材料や改良原
理に非常に多くの提案がなされ
ているため、施工機械から見て
系統的にとらえることは難しく
三和機工
SRD-2000HⅡ
なっています。
固結工法の中で最も一般的なの
◇リバースサーキュレーションドリル:ほかの工法と比べて大口
径・大深度の掘削が可能で広範囲の地盤性状に対応できます。揚
泥方式はポンプサクション方式とエアリフト方式があります。
は深層攪拌混合工法です。地中
連続壁と同様に原位置(土中)
で土とセメント系固化材を攪拌
して、単軸・多軸のアースオーガ
地中連続壁施工機械
地中に深い溝を掘り、
コンクリートを注入して壁をつくる工法を
を使用して、円柱状改良コラム
地中連続壁工法といいます。任意の形につくれること、建物に
体を造成します。改良径は住宅
94
日立建機SPD06
向けの小径のものから施工効率を高めた直径2.5mの大口径ま
基礎機械の変遷
でが実用化され機械の大型化も進んでいます。一方、施工精度
の向上に向けてメカトロ技術や確実な施工管理技術の構築の
1954(昭和29) 神戸製鋼所
(現・コベルコクレーン)KH220A、
ディーゼルパ
イルハンマ国産化
ためインテリジェント化が推進されています。
1956(昭和31) 三和機材、
アースオーガSKEA型製作
グラウト機械
アースドリル製造開始
1959(昭和34) 加藤製作所、
セメントやベントナイトなどの混合液を注入して、止水、土留め、
1961(昭和36) 日立製作所(現・日立住友重機械建機クレーン)、懸垂式杭
打機U106製作
地盤改良などを行う工法をグラウト工法といいます。
これに使用
されるのが、
グラウトミキサとグラウトポンプで、重要な施工機
U106用のアタッチメント式アースドリル製作
1962(昭和37) 日立製作所、
械と位置付けられています。
1963(昭和38) 日本車輌製造、
3点式支持式杭打機D-07開発
特に既製杭工法や地盤改良工法では、
グラウトの管理は施工品
質に大きくかかわってくるため、
グラウト材料の開発とともにグ
PS150製作
1965(昭和40) 日立建機、
加藤製作所、
リバースサーキュレーションドリル製作
ラウト機械の高度化が進められています。材料貯蔵サイロ、計量
1966(昭和41) 石川島播磨重工業
(現・IHI)
、
ペーパードレーン打込機製作
器、
グラウトミキサ、
グラウトポンプ、操作盤、記録装置などの一
1968(昭和43) 三和機材、同芯二軸オーガSDA-80型(ドーナツオーガ)開発
連の機械をシステムとして管理する管理計測システムが導入さ
油圧パイルハンマ試作
1972(昭和47) 建設機械調査、
れ、
確実な施工管理を行うとともに省力化に貢献しています。
(現・技研製作所)、
サイレントパイ
1975(昭和50) 高知技研コンサルタント
ラー第1号機完成
日本ニューマチック工業、油圧バイブロハンマ開発
三軸アースオーガPASシリーズ製作
1976(昭和51) 三和機工、
神戸製鋼所直径1,350mm、
重錘掘削機製作
(現・アボロンシステム)、
吊下式オーガ併用
1977(昭和52) 中央自動車興業
杭打機CV205開発
(現・コベルコ建機)、DJM1070、粉体噴射攪拌
1980(昭和55) 神戸製鋼所
地盤改良工法機製作
油圧パイ
1983(昭和58) 日本車輌製造NH-70・日立建機HNC65.80ほか、
ルハンマ製作
ブーム懸垂式杭打機DAK150製作
1984(昭和59) 大和機工、
三和機材PMA-120
拡底施工用油圧アースドリルKH125開発
1985(昭和60) 日立建機、
基礎機械の将来展望は?
リーダーレス型杭打機RX2000製作
1986(昭和61) 日立建機、
住友建機、
アースドリルLS-78RH5、108RH5などを製作
●施工管理の進化:目に見えない地中深くで構造物を支える工
1987(昭和62) 日本車輌製造DHJ-8、
小型地盤改良機製作
事を行うために、
それぞれの工法で施工状況を計測する管理装
置が開発されています。管理情報のデータ通信による情報共有
1988(昭和63) 調和工業、
油圧式可変超高周波バイブロハンマSS-40L製作
化技術も始まっています。
1990(平成2) 日本車輌製造DH808-170M、
国内最大の3点支持式杭打
機(全装備重量180t)開発
●海外展開:地形が複雑で、難しい地盤である日本の基礎工事
ンフラ整備で活躍し始めています。
1997(平成9) 技研製作所、
硬質地盤対応圧入機開発
調和工業、ゼロ起動・ゼロ停止型バイブロハンマSR・VRシ
リーズ開発
●環境負荷への対応:同じ性能の杭でも、掘削土砂が少なく
小型地盤改良機AE10製作
2001(平成13) 大和機工、
に使用された実績をもつ基礎機械は、東南アジアや中国でのイ
なったり、施工の際に周囲の地盤に影響を与えることがない地
新型ブーム懸垂式杭打機DAK300製作
2009(平成21) 大和機工、
盤改良工法など、
環境にやさしい取り組みが進められています。
95
ココがすごい!日本の建設機械
ドリル
Drilling Equipment
ドリルとは、いわゆるさく岩機、
およびさく岩機を搭
載している機体を総称したものです。打撃と回転
力、あるいは回転力のみで岩石など比較的硬質な
対象物に孔を開ける機械の総称で、日本建設機械
工業会では油圧クローラドリル、
ロータリドリル、
ダ
ウンザホールドリル、油圧ドリルジャンボ、アンカド
リルの5機種を対象としています。
古河ロックドリルHCR1200-EDⅡ
に比べて数倍のスピードが得られ、生産性も飛躍的に向上しま
日本でのドリルのあけぼのは?
した。
●日本初登場のさく岩機は英国・米国製:日本のトンネル工
事で最初にさく岩機が採用されたのは1877(明治10)年、旧
ドリルの用途は?
栗子トンネル米沢工区で採用された米国製のさく岩機とい
われています。この工事を主導した初代山形県令・三島通庸
●鉱山開発だけでなくダムや鉄道のトンネルにも:明治初期
氏がこの技術導入を行った人物との説もあります。
鉱山で初
から、鉱山開発だけでなくトンネル建設(道路、鉄道、水路、ダ
めて採用されたのは1881(明治14)年、吉岡鉱山で使われた
ムなど)にも使用されていました。現在の主たる需要はトン
英国製のダーリントン式さく岩機でした。
ネル建設、
砕石、
鉱山、
土木工事向けとなっています。
●国産第1号は「足尾式三番型」
:国産のさく岩機の第1号
●誰もが知るビッグプロジェクトでも活躍:ドリルは新幹線
は、
1914
(大正3)
年に足尾銅山で採用された
「足尾式三番型」
のトンネル掘削に大きな役割を果たしています。
複線断面と
です。足尾銅山機械工場(現・古
しては世界最長の東北新幹線の八甲田トンネル(26.5km)、
河ロックドリル)の川原崎道之
八甲田トンネルができるまで山岳トンネルとしては世界最
助氏が考案・製造したもので、
日
長だった同じく東北新幹線の岩手一戸トンネル(25.8km)、
本人の体格に合わせて軽量化
難工事を克服した北陸新幹線の飯山トンネル(22.2km)な
したことが特徴です。この背景
ど。また、青函トンネル、黒部第四ダム、関西国際空港などで
には、それまで使っていた輸入
も活躍しています。
のさく岩機は生産性、経済性に
優れていたとはいえ故障が多
日本製ドリルの特徴は?
く、その修理や破損部品の補充
優れた設計力、厳しい品質管理に裏打ちされた高いさく孔性
を繰り返すうちに、次第に国内
での技術向上が図られていっ
たという経緯があります。
能、高い耐久性・安定性を叶える高次元でのバランス技術。日
足尾銅山機械工場 足尾式三
番型
本製の油圧クローラドリルは海外でも広く活躍しています。
●中空鋼ロッド:1897
(明治30)
年、
米国で初めてさく岩機に使
用。圧縮空気を孔底に送り、
くり粉
(さく岩機で孔を開けるときに
ドリルが普及するまで、どうしていたのか?
出てくる岩石や粉塵)
を強制的に排除するというもので、翌年さ
●手掘り、火入れ法で対処:ドリルが普及するまでは、ツルハ
らに改良を加え圧縮空気の代わりに水を送り込むことによって
シやタガネで発破用の孔を開ける工法、また岩石を熱した
粉塵を無害な泥水にすることに成功。
これにより抗夫の作業効
あと水をかけ、岩をもろくして掘り進む工法が主流でした。
率、安全性が飛躍的に向上しました。
このさく岩機は、
「近代さく
岩機の祖」
ともいわれています。
日本では1937
(昭和12)
年に大
「足尾式三番式」の登場によって、工期は熟練鉱夫の手掘り
96
量生産が開始されました。
ドリルの変遷
●超硬ビット:1945(昭和
20)年に、
タングステンカー
1914(大正3) ドリルの国産第1号機となる
「足尾式三番型」
が足尾銅山
で採用
バイトをタガネの先に挿入し
たことは、岩盤せん孔の技術
革命の一つに数えられます。
(現・古河ロックドリル)
、
ASD25ハンドハンマ用
1948(昭和23) 古河鉱業
2型レッグを製造。
レッグドリルの時代へ突入
この実用化によって、従来品
に比べて30倍もの寿命を実
現、
中空鋼の耐久度を向上さ
せました。
日本での本格生産
現在使用されている
クローラドリル用の
エキステンションロッドとビット
1951(昭和26) 東京流機製造の前身である建設機械製作所(現・インガ
ソール・ランド)
、
ワゴンドリルの国産第1号機を開発
開始は1948
(昭和23)
年。
● 油 圧 式さく岩 機:1 9 7 0
(現・三井造船)、米国の機械をモデルに大
1954(昭和29) 日本開発機製造
穴径ドリルの元祖となるGC7型を開発。奥只見ダムで4台
(昭和45)
年、
フランスで世界
導入
初の油圧ドリフタが実用化。
日本では1977(昭和52)年
に国産第1号機が登場して
(現・テイサク)
、
国産第1号レッグドリル
1955(昭和30) 帝国鑿岩機製作所
TL-80製造開始。
三井金属神岡鉱山へ納入
います。
その後も輸入機から
学び技術を向上させ、1983
世界初の油圧クローラドリル
(昭和58)年ごろからは本格
(現・インガ
1958(昭和33) 米国のクローラドリルをモデルとして東京流機製造
ソール・ランド)
がドリフタを開発、
十津川ダム工事現場で稼動
的な全油圧式ドリルの時代に入りました。油圧式さく岩機は、圧
倒的なエネルギー効率とさく孔効率の向上、作業環境の大幅な
改善をもたらし、
さらにその後実現されるさく孔の全自動化をも
(現・鉱研工業)
、
国産初
1975(昭和50) 鉱研試錐鉱業
の全油圧式ロータリパーカッション
たらす基礎技術となりました。
ドリル アロードリルRPD-1を開発
鉱研工業
RPD-150C
ドリルの将来展望は?
空圧クローラドリル
1976(昭和51) 古河鉱業、
PCR200発売開始。
現在も継続生産
●進む研究開発:機体の移動、
機体の位置決め、
および全自動
しており世界トップの実績を継続
さく孔により完全自動さく孔作業の実現に向けて研究が進め
られています。また、今後のドリルの課題は、誰にでも扱える
1977(昭和52) 古河鉱業、油圧式クローラドリル国
簡単操作と快適せん孔の追求に絞られており、具体的には次
産第1号機となるHCR200型を開発
のような解決策が実現可能であろうとされています。
●まっすぐな発破孔を速く、きれいに、より経済的に、なおか
1982(昭和57) 東京流機製造、国産初のコンプレッ
つ安全、快適に:慢性的な人手不足を解決するためにも、メ
サ内蔵の全油圧式クローラドリルを
カトロ化を含む操作性の向上、防振、防音、防塵、視界性まで
投入。以 後 、本 格 的 な 全 油 圧 式 ク
含んだ居住性の向上が今後の
ローラドリルの時代へ突入
課題です。また、いかに人手を
省いて1台あたりの生産性を
TU150型スキッド式アンカードリル発売
1991(平成3) テイサク、
向上させるか、大型化を含む省
力化に向けての改善、メカトロ
固い地盤でも地下10mまで掘り進められるサン
2003(平成15) 鉱研工業、
化に伴う故障対策や故障予知
プル土壌採取機ソニックドリルED-15、
多目的クローラド
システム、故障診断システムへ
の対応が求められています。
古河鉱業
油圧式クローラドリル
HCR200型
リルS-150を開発
アトラスコプコROC07CS
97
ココがすごい!日本の建設機械
油圧アタッチメント
Hydraulic Attachments
油圧アタッチメントとは、油圧ショベルの先端に取り付けるバケッ
ト、
カッタなどの総称。
アタッチメントを交換することで、多様な作
業を行うことができます。日本建設機械工業会で対象としている
油圧アタッチメントは油圧ブレーカ・油圧圧砕機・油圧グラップル
です。
古河ロックドリルFX45
油圧ブレーカ
コンクリート構造物の解体や岩盤の掘削、舗装路面の破砕などに使われる油圧ショベルの先端に取り付けられるア
タッチメント部分です。シリンダの中を往復するピストンの運動で、のみの頭部に打撃を与えるメカニズムで作動し
ます。
破砕するものや状況に応じて、のみの先端形状を使い分けています。
ルギーの有効利用は、
各社が独自の機構を開発・発展させ、
業界
日本での油圧ブレーカのあけぼのは?
全体の製品水準を高めています。
●発祥はフランス:油圧ブレーカはフランスのモンタベール社が
1965(昭和40)年に開発。同社はその後、着々と地歩を固め、
油圧ブレーカの用途は?
1969
(昭和44)
年に世界的な油圧ブレーカメーカとなりました。
岩盤の掘削や破砕、
コンクリートの破壊など、
インフラにかかわる
コンクリート構造物の解体や採石、採鉱場における小割破砕、
さまざまな分野で油圧ブレーカは市場を広げました。
舗装路面の破砕、銑鉄の湯道除去など数多くの現場で使用され
●国産第1号は?:もともと、空気式のブレーカを手掛けていた
ています。また、
国内メーカが油圧化の流れに沿う形で、複数社で開発に取り組
道路トンネルの
むようになりました。国産第1号は古河鉱業(現・古河ロックドリ
岩盤掘削工事
ル)
が1976
(昭和51)年に発売したHB600です。
や砕石場におけ
●その後の油圧ブレーカ:油圧ショベルの先端部に取り付けられ
る二次破砕など
るアタッチメントとして進化してきた経緯があるだけに、
開発の過
にも使われてい
程も油圧ショベルと連動する面があり、
小型から大型機種まで対
ます。
解体作業
鉱山工事
応できる形になっています。
近年は環境に配慮し、
低騒音や低振
動タイプの低環境負荷型の機種開発が進められています。
油圧ブレーカが登場するまで、
どうしていたのか?
油圧ブレーカの長所は?
油圧ブレーカ以前には、空気式ブレーカが使用されていました。
大型工事には鉄球を落とす仕組みのドロップボール工法、
●汎用性:主として油圧ショベルに搭載されますが、
バックホウ
ジャッキ工法などが採用されていました。
ローダに搭載される場合もあります。
作業現場の事情に合わせた
最適な組み合わせが可能です。
●エネルギー効率が高い:油圧ショベルの油圧源を利用するの
海外での活躍ぶりは?
で、
ブレーカ使用時のエネルギー効率が向上。
油圧ショベル作業
の費用対効果を格段に高めました。
また、
適用作業の範囲拡大は
日本の油圧ブレーカメーカは1970年代半ばから製品の海外展
油圧ショベルの市場拡大にも貢献しています。
開を推進。
ニーズに合ったきめ細かな製品ラインアップの充実
●破砕能力が高い:日本製の油圧ブレーカは高度な設計と厳し
に努めています。30余年を経た今日、世界統計こそないものの、
い品質管理により、
非常に高い破砕能力を備えています。
併せて、
日本製の油圧アタッチメントは世界市場で最も成功した製品群
耐久性、
安定性、
操作性のいずれも高い次元で実現しています。
の一つとして評価されています。
●メーカ各社が独自色:油圧ブレーカは打撃ピストンが往復運
動する機械です。
このため往復運動の制御や供給される油圧エネ
98
油圧ブレーカの変遷
油圧ブレーカには、
どのような技術が生かされているのか?
1957(昭和32) 日本ニューマチック工業、
空圧ブレーカ
IPH開発、
販売
●油圧式への転換:ブレーカにとって空気式から油圧式への
日本ニューマチック
1971(昭和46) 油谷重工(現・コベルコ建機)、 工業IPH-400
ペッカーYB600開発
転換は最大の出来事です。
これにより、
騒音の低減ばかりでな
く、
油圧ショベルの機動性や作業環境改善、
エネルギー効率の
1972(昭和47) 甲南建機、
油圧ブレーカMKB400発売
大幅な向上などを図ることができました。
●打撃力増大技術:強い打撃力を得るため、
油圧パワーに窒素
日本ニューマチック工業、
油圧ブレーカHPHシリーズ開発・販売
ガスエネルギーを加える方法を採用しています。大型機種で
は、
アキュムレータ
(蓄圧器)
を搭載することで、
さらに打撃力
(現・古河
1976(昭和51) 古河鉱業
)
、
HB600 発売
を強めているものもあります。
●打撃音吸収技術:油圧ブレーカ本体からの打撃音をブレー
帝国鑿岩機製作所(現・
テイサク)、BB-77ブ
レーカ発売
カ本体の防振ゴムで支え、
全面をブラケットで覆う形式が主流
です。
これにより、
特に不快に感じる高音
(高周波音域)
の打撃
甲南建機
MKB400
古河鉱業
HB600
日本ニューマチック工業
HPH横型ブラケット
日本ニューマチック工業、
Hシリーズを開発・販売
音を低減させています。
油谷重工
YB600
1977(昭和52) オカダ鑿岩機(現・オカダアイヨン)、UBシリーズの販売を開
始(帝国鑿岩機製作所と共同)、以後コンスタントにUBシリー
ズ発売
油圧ブレーカの将来展望は?
油圧圧砕機
(大割)
HSCシリーズ発売
1980(昭和55) 日立建機、
●一段と進む環境対応:油圧ブレーカには、さまざまな利点
がある半面、比較的大きな騒音や振動の発生源となるため、
油圧ブレーカMHB16型、
MHB24型を開発
1982(昭和57) 丸善工業、
適用作業範囲が制限され
YNBシリーズ発売
1986(昭和61) 東洋空機製作所、
る場合もあります。この
甲南建機、
MKB吸音・吸振型ブレーカNシリーズ、
超低騒音
型ブレーカSSシリーズ発売
ため、低騒音化、低振動化
に向けた対策が求められ
油圧圧砕機
(小割)
HSPシリーズ
1990(平成2) 日立建機、
発売
ています。
Eシリーズを開発・
1994(平成6) 日本ニューマチック工業、
販売
●相反する性質を吸収:
油圧ブレーカは高性能を
丸善工業MHB80
強力型ブレーカVシリーズチルト型ブレーカ発売
1996(平成8) 甲南建機、
求められる「精密油圧機 オカダアイヨンSシリーズ
器」という側面と、手荒に 超低騒音油圧ブレーカ
日立建機、
油圧ブレーカHSBシリーズ発売
扱われる「油圧ショベルのツール」という相反する側面があ
丸善工業、大幅なコストダウンを
図った低油量油圧ブレーカユ
ニット開発
日立建機
ります。それらの兼ね合いを図りながらまとめ上げていく製
品開発も課題です。
TOPシ
1997(平成9) オカダアイヨンとテイサク、
リーズ油圧ブレーカを共同開発
●進むショベルメーカとの連携:
油圧アタッチメントは油圧ショベル
2002(平成14) 丸善工業、静音小型油圧ユニット、
少油量式小型油圧ユニット開発
と共存共栄の関係にあるので、ア
タッチメントの性能を生かすために
2004(平成16) 日本ニューマチック工業、
GHシリーズを開発・販売
も、より綿 密な関 係が求められま
2005(平成17) 日本ニューマチック工業、
環境に配慮した静音
ブレーカを発売
す。価格の安さを武器に台頭が考
えられる韓国製、中国製との競合を
視野に入れた連携もさらに進むで
しょう。
HSBブレーカ
日本ニューマチック工業
GH-50
GHE-10
超大型油圧ブレーカGH-50 発
2007(平成19) 日本ニューマチック工業、
売
テイサク
超大TB型ブレーカ
「超低騒音油圧ブレーカを用いた解体
2010(平成22) 古河ロックドリルの
掘削工法」
がNETIS登録
99
ココがすごい!日本の建設機械
油圧アタッチメント
Hydraulic Attachments
油圧圧砕機(大割)
オカダアイヨンTS-W2000
油圧圧砕機
油圧グラップル
油圧圧砕機はビル建物の解体などに、油圧グラップル
はスクラップ類の荷積みや荷降ろしなどに使われま
す。油圧圧砕機は大割圧砕機と小割圧砕機とに大別
されます。圧砕機もグラップルも、油圧ブレーカと並
ぶ、
油圧アタッチメントの主力製品です。
油圧圧砕機(小割)
テイサクSGP850
油圧グラップル
マルマテクニカ
MGB2900LS
ロチンやシュレッダへのスクラップ投入などに高い処理能力を
油圧圧砕機、油圧グラップルのあけぼのは?
発揮します。
●油圧ブレーカの代役:近年の都市部の騒音、
振動規制の問題
●高い汎用性:油圧グラップルは解体現場のほか、木材の伐採な
から、油圧ブレーカが使用できないビル解体などを中心に油圧
ど数多くの作業現場で活躍。その汎用性の広さから、現在の素材
圧砕機が使用されています。
ビルの高層化、建造物の多様性に
生産に欠かすことのできない機種の一つとなっています。
伴い、油圧圧砕機も多様化しています。
油圧圧砕機の用途は?
●自由度の高い動き:油圧グラップルには、
あたかも人間の手
首のように自在に動かせる自由度の高い動きが要求されます。
大割圧砕機の主な用途は鉄筋コンクリート構造物の破砕や解体
長尺物や重量物の旋回、移動が楽に行える強力な力を生み出す
作業です。
アームの根元にあるカッタは鉄筋を切断できます。小
旋回モータは心強いアイテム。油圧ショベルを大きく移動させ
割圧砕機はコンクリートと鉄筋のより分けに適しています。
ることなく効率よい作業をこなせるような要素技術は日本のお
油圧グラップルの用途は?
家芸ともいえます。
●性能の評価基準:油圧圧砕機の性能を決める評価基準には破
木材家屋の解体作業、スクラップ処理、解体現場での鉄筋処
砕能力・破砕性・開閉速度・操作性などがあります。ただし、大割
理、原木・間伐材の整理など
「つかむ」
ことを中心とする幅広い
機の破砕能力が「先端歯圧砕力 最大開口幅 懐長(ふところの長
作業に適しています。
さ)」であるのに対し、小割機は「先端歯圧砕力 最大開口幅 懐
油圧圧砕機や油圧グラップルが
登場するまで、どうしていたのか?
長」
に加えて
「可動フレーム幅」
を掛けた値で判断されます。
油圧圧砕機、油圧グラップルの長所は?
油圧圧砕機が使われる以前はハンマやロープによる手作業で
●コンクリート解体に威力:大割圧砕機はクワガタムシのよう
した。
その後、
鉄球での解体→大型ブレーカ→低振動・低騒音の
なハサミで鉄筋コンクリート構造物を砕き割り、解体します。
コ
圧砕機での工法へと移り変わっていきました。
カッタ機の登場
ンクリートの破砕や粉砕ばかりでなく、
コンクリートからの鉄筋
は火災の危険が伴う鉄筋や鉄骨のガス切断作業を大幅に減ら
の分離、鉄筋・鉄骨の切断などにも使用されます。
しました。
●大割の作業を引き継ぐ:小割圧砕機は大割圧砕機で砕き割
海外での活躍ぶりは?
られたコンクリート塊をさらに小さく砕き割り、
コンクリートと鉄
筋を分離し、分別するのが主な仕事です。鉄筋の丸め込み作業
油圧圧砕機は海外生まれながら、
日本で大きく発展してきたと
や積込み作業に最適。電磁石付小割圧砕機や永久磁石付小割
いう経緯があります。
このため、世界的に見ると、油圧ブレーカ
圧砕機などもあります。
ほど普及している製品とはいえません。
しかし、油圧圧砕機の一
●高いスクラップ処理能力:油圧グラップルはUFOキャッチャ
部メーカは油圧ブレーカメーカと同様、1970年代半ばから海
のような機構を有するアタッチメントです。
ちょうど人間の手で
外進出に乗り出しており、現在は世界各地で確固たる地位を築
物をつかむような作業をするので、狭いスペースでの高積み、
ギ
いています。
100
油圧圧砕機、
油圧グラップルの変遷
油圧圧砕機や油圧グラップルには、
どのような技術が生かされているのか?
1976(昭和51) オカダ鑿岩機
(現・オカダアイヨン)、
TSクラッシャを発売
●高張力鋼板や増圧機の採用:仕事の中心となる破砕能力や
稼働質量を高めるためにはアタッチメントの軽量化を図ること
1977(昭和52) 坂戸工作所、
ペンチャーの開発に成功
が大切です。
そのために採用された、軽くて丈夫な高張力鋼板や
オカダ鑿岩機
TSクラッシャ
油谷重工(現・コベルコ建機)、
増圧機は大きな効果をもたらしました。
油圧圧砕機ニブラー開発
●高性能電磁石の搭載:作業効率を高めるための対策として、
ハサミ部分の開閉速度の向上に取り組みました。
また、迅速に
1980(昭和55) 日立建機、
油圧圧砕機(大割)
稼働する高性能電磁石を搭載。
この電磁石はさまざまな素材か
HSCシリーズ発売
ら鉄を分離する能力に優れています。
油谷重工ニブラー
ブースタ
1984(昭和59) 日本ニューマチック工業、
付きの第1号機を発売
日立建機、
油圧グラップルシリーズ
発売
日立建機HSCシリーズ
油圧圧砕機(小割)
1986(昭和61) 日立建機、
HSPシリーズ発売
ユタニ工業GV200S
日立建機、
油圧グラップル
日立建機HSPシリーズ
EXシリーズ発売
オカダアイヨンOSC-83M
日本ニューマチック工業SV47X
●機械本体の耐久性を高める技術:設計段階から、
コンピュー
マルマ重車輛(現・マルマテクニカ)、
グラップルMGB2900開発
タによる強度解析を実施。
データをもとに、
ハイテン材などの特
油圧圧砕機ガブリン
1988(昭和63) テイサク、
殊鋼を随所に使用し、剛性や耐久性を高める一方、軽量化を
日立建機EXシリーズ
シリーズを開発
図っています。
TKC200小割クラッシャ発売
TC200大割クラッシャ発売
1989(平成元) テイサク、
油圧圧砕機、油圧グラップルの将来展望は?
GL210大割クラッシャ発売
1994(平成6) テイサク、
●メーカ各社が切磋琢磨:油圧圧砕機の技術的重点は強い・速
い・軽いの実現に集約されます。
同時にこれらは製品の能力を測
マルマ重車輌
MGB2900
コンクリート小割機開発
1997(平成9) 丸善工業、
る目安でもあります。
メーカ各社はそれぞれの能力を少しでも高
開口幅3000mmの油圧圧
2002(平成14) コベルコ建機、
めるために磨きをかけています。
その努力は今後も続くでしょう。
砕機ニブラーKR3000R開発
●CADを利用した製品開発:高い次元で強い・速い・軽いを実
現するためには、製造工程全体を通じた取り組みが大切です。
コベルコ建機
ニブラーKR3000R
中でも、CADを積極的に活用した設計やCAEによる構造解析
コマツ
(コマツ建機販売)、 コマツ
(コマツ建機販売)
KAMSアタッチメント
などはバランスのよい製品づくりの決め手となります。
●東南アジアなどでの需要が増える:油圧圧砕機は旋回タイ
大割圧砕機OYC950発売
プ、
マグネット搭載タイプ、
マルチユースタイプ、鉄骨カッタな
コマツ
(コマツ建機販売)、
ど、
用途に応じて多品種化しています。今後は東南アジアや中国
KAMSアタッチメント
を含め、各国の都市部で急増するであろうビル解体に伴い、圧
小割圧砕機GV210発売
砕機の需要が増えると考えられます。
タグチ工業、
ガジラDSカッタ発売
101
OYC950
コマツ
(コマツ建機販売)
GV210
タグチ工業
DSX-200A
ココがすごい!日本の建設機械
自走式
リサイクル機械
Mobile Recycling Machines
日本建設機械工業会では、自走式リサイクル機械として
自走式クラッシャ、自走式木材破砕機、自走式スクリーン、
自走式土質改良機の4機種を対象としています。
これらは
いずれも、建設リサイクル法に基づいた資源の再生に寄
与するために用いられています。
コマツBR380JG
るいで粒度を調節した後、燃料用木材チップ、建材用ボード原
日本での自走式リサイクル機械の
あけぼのは?
料、堆肥用混合材などに再利用されます。
●自走式スクリーン:スクリーンとは、
ふるいのこと。材料をふる
いにかけて粒の大きさごとに分別する機械です。
自走式スクリー
●北欧からの技術導入:移動式の岩石用の破砕機は古くから存
ン単独で現場でふるい分けが行えるほか、破砕機や土質改良機
在していましたが、
自走式リサイクル機械の一種である破砕機が
と組み合わせて使用する
正式な製品として登場したのは欧州が最初といわれています。
日
ことも可能なため、多岐に
本では、解体現場用・移動式を最初に販売したのがオカダアイヨ
わたった使い方ができる
ン、
自走式破砕機を最初に開発・販売したのがコマツといわれてい
機械です。
ます。
●自走式土質改良機:石灰
●日本でリサイクル機械に生まれ変わる?:破砕機などの機
やセメントなどの添加剤を加
械をリサイクル用として使用できるように改良したのは、
日本の技
えて土を所定の品質に改良
術です。建設リサイクル法の施行、
日本の多様な地盤などに対応
自走式スクリーン
日立建機VR516FS
するための機械です。改良さ
していくことで技術レベルも向上しました。
れた土は地盤改良や汚染土
壌改良などに再使用され
自走式リサイクル機械の特徴と
破砕されたものの再利用法は?
ます。
●自走式クラッシャ:建設現場で出るコンクリート塊やアスファ
自走式土質改良機
キャタピラージャパンMR126
ルト・コンクリート塊、岩石などのリサイクルを行う機械です。
ク
ローラ式の走行装置を持ち、主にジョー
破砕機の技術のポイントは?
クラッシャ、
インパクトクラッシャな
ホッパ(コンクリート塊などを受け止め流下させる)、
フィーダ(コ
どの破砕主体を搭載してい
ンクリート塊などの材料を、
クラッシャに供給するとともに、ふる
ます。
クラッシャによって
いの役目をする)、
クラッシャ、
ベルトコンベヤがオールインワン構
適切な粒径に破砕され
造となっていることです。
また油圧式のクラッシャによる出口隙間
たコンクリート塊 など
全自動調整システム、
クラッシャ保護機能など、操作が複雑なプ
は、コンクリート用再生 自走式クラッシャ
骨材、路盤材、埋戻し材、 コマツBR380JG-1
ラントとは違い、使い勝手を重視した機能を織り込んだ点もポイ
ントです。
裏込め材として再利用されます。
また、油圧技術そのものの進化も大きなポイントですが、今後は
●自走式木材破砕機:造成工事の際に取り除いた樹木や抜根
省エネを見据えてハイブリッド、電気式などの技術も必要になっ
材、剪定作業で出る幹や枝、各種解体工事の廃木材などを破砕
てくると考えられます。
する機械です。破砕主体は高速回転式破砕機(ハンマ)
が主で、
ふ
102
自走式リサイクル機械の変遷
自走式リサイクル機械の普及によって
実現したことは?
1978(昭和53) オカダ鑿岩機(現・オカダアイヨン)、
PCP移動式クラッシャ発売 オカダ鑿岩機PCP-S001
自走式リサイクル機械が普及するまでは、定置式機械がその役
割を担っていましたが、定置式では対象物の処理設備または生
1991(平成3) コマツ、木材解体の雑ガラの現場内処理
を目的としたインパクトクラッシャ搭載の
ガラパゴスシリーズBR60を発売
産設備のある場所までの輸送が必要でした。
そもそも自走式の
普及が急速に進んだのは1995(平成7)年の阪神・淡路大震災
の際に発生したコンクリートガラなどを、近場で処理できること
ジョークラッシャを搭載したガラパ
1992(平成4) コマツ、
コマツBR60
ゴスシリーズBR200J発売
が認知されたことによります。
ビルの解体現場で発生したコンク
リートガラをその場で再生できること、輸送コストが低減できる
1994(平成6) 日立建機、
自走式クラッシャHR420発売
こと、輸送により生じるCO2の抑制などが、
自走式によって実現
神戸製鋼所(現・コベルコ建機)、
自走式
ジョークラッシャKMC200を発売
されたといえます。
日立建機HR420
1995(平成7) 阪神・淡路大震災の復興で自走式リサイ
日本製自走式リサイクル機械の特徴は?
クル機械が活躍、
以後急速に普及
品質評価が厳しい日本製品は、品質・信頼性のポテンシャルが
1996(平成8) 住友建機、土質改良機リソイルマンSS
神戸製鋼所KMC200
200RS発売
非常に高いことが特徴として挙げられます。
その品質の高さが、
海外では日本ほど求められておらず、
海外のシェアはそれほど高
くないという側面もあります。
住友建機
SS200RS
中山鉄工所、
世界最大級の自走式
クラッシャNC648Gを開発
自走式リサイクル機械の海外動向は?
2008
(平成20)
年の日本・北米・欧州の自走式クラッシャの出荷
中山鉄工所
NC648G
2000(平成12) マルマテクニカ、
自走式木材破砕機
実績は約1,600台。
まだ海外への進出は途上であるともいえま
TG400ATX発売
すが、
今後アプローチは進むものと考えられます。
諸岡、
自走式木材破砕機
MC2000発売
自走式リサイクル機械の将来展望は?
マルマテクニカ
TG400ATX
諸岡
MC2000
自走式クラッシャ、
自走式木材破砕機においては、今後はさらに
再生資源としてのニーズが高まることから、破砕機の大型化や
(現・古河ロックドリル)
、
2001(平成13) 古河機械金属
自走式木材破砕機FPC1600発売
古河機械金属FPC1600
効率化、
破砕製品の品質向上が図られると考えられます。
土質改良機については、
国土交通省が定める2010
(平成22)
年
新キャタピラー三菱(現・キャタピラー
ジ ャパ ン )、環 境 リサ イクル 機 械
SOCIO(ソシオ)
シリーズ発売
度の建設発生土の有効利用率90%、建設汚泥の再資源化率
75%という数値目標の達成に向けて、
さらなる技術開発、
改良が
新キャタピラー三菱
MC230V2
求められることでしょう。
また、2003(平成15)年に土壌汚染対
2003(平成15) コベルコ建機、
自走式ジョークラッシャKM350Jを開発
策法が施行されたことを受けて、工場跡地などの土壌浄化や改
良に対応した処理技術の確立、新たなリサイクル機械が期待さ
ガラパゴスシリーズ
2006(平成18) コマツ、
BR380JGをマイナーチェンジ
れています。
また、
ほかの建設機械同様、
騒音・振動・粉塵の低減、
省エネなど
自走式インパクト発表
2008(平成20) 中山鉄工所、
がポイントとなるでしょう。
中山鉄工所NC1000S
103
ココがすごい!日本の建設機械
アスファルト
プラント
Asphalt Plants
アスファルトプラントとは、道路などの材料となるアスファ
ルト・砂・骨材・石粉を加熱・混合し、アスファルト合材を製
造する機械です。バッチ式・連続式の2種類に分けられま
すが、日本国内では計量と混合を1回ごとに行うバッチ式
が主流です。1回ごとに区切ることで、温度設定を正確に
行うことができるからです。
日工NAP-PBD2000+NRU100
アスファルトプラントの
高いリサイクル率を支える技術とは?
アスファルトプラントのあけぼのは?
アスファルトプラントは米国生まれ。道路会社が米国から機械
一 度 使用した合 材を加
を購入し、
それをまねて日本のメーカが製造を始めるようになっ
熱乾燥させて、再度合材
たといわれています。
に変える技術は、昭和50
年代初めにスタートした
官民による推進政策で発
展しました。
そして2008
(平成20)
年度実績では、 田中鉄工
リサイクル率は7 4%と
田中鉄工
リサイクルプラント
リサイクルアスファルトプラントTRD30
なっています。
これを実現する技術としては、
リサイクルプラント
で加熱乾燥する際、
アスファルトは加熱し過ぎると劣化してしまう
アスファルトプラントの用途は?
ので、
新材と異なる並流式加熱方法を採用していること、
また劣
アスファルトプラントはアスファルト合材をつくる用途で使用さ
化したアスファルトを復活させる再生用添加剤の性能が向上し
れてきましたが、最も使われてきたのは道路舗装です。
そのほか
たことが挙げられます。
さらに、
リサイクルプラント燃費向上のた
の用途としては、駐車場・滑走路・ダムなどが挙げられます。
めのバーナの開発などもリサイクル率の向上に寄与しています。
骨材の加熱乾燥技術、
アスファルトプラントの加熱によるリサイ
アスファルトプラントが登場するまで、
どうしていたのか?
クル技術は、生コンクリートプラントにないもので、
アスファルト
プラントのアピールポイントとなっています。
アスファルトプラントが登場するまで、
アスファルトはドラム缶で
省エネ、省力化を支えた技術とは?
加熱、骨材・砂は鉄板(150∼160℃)
の上で加熱し、人の手に
●省燃料・省電力:乾燥
よりこれらの混合を行っていました。
加熱装置の熱効率の向
アスファルトプラントの普及によって
実現したこととは?
上のためのドライヤ、
バー
ナなど加熱装置の改良、
合材の多品種化、大量生産が可能になり、舗装道路が普及した
貯蔵装置の断熱保温、熱
ことです。
また、合材自体の品質の向上により、道路の高速化が
交換機を用いた熱効率
可能になり、物流のスピード化にも大きく寄与、地域間の交流が
の向上、
リサイクルプラン
盛んになり、
物・文化が共有できるようになりました。
トから出た高温度の排出
ガスを予熱空気として利
104
日工ガスバーナ
用するなどのほか、低空気比バーナの開発、代替燃料対応バー
アスファルトプラントの変遷
ナの開発、
エネルギ監視装置の開発、貯蔵装置の断熱効率の向
上などにより省燃料・省電力を図っています。
昭和30年代
●省人化:リレー制御→ロジック
回路による電子制御→マイコン
日本工具製作(現・日工)、
アスファルト
プラントの製造を開始
1957(昭和32) 田中鉄工、長崎県庁へ600
ボードによる制御→パソコンによる
ヤードのプラントを納入
制御→ネットワーク技術を使った
田中鉄工600ヤードプラント
合材工場全体のOA化という変遷
150t/hプラント完成
1967(昭和42) 日本工具製作、
を経て、
制御装置の自動化を行うこ
とによって省人化を図っています。
1968(昭和43) 東名高速道路にて、
初の国産プラント採用
日工nextシリーズ
合材サイロ開発
1970(昭和45) 日工、
騒音、
振動、臭気、土壌などに関しては
どのような対応をしてきたのか?
1971(昭和46) 日工、180t/hプラント完成、高速道路
で採用
アスファルトプラントにおいて重要なテーマといえるのは、臭気、
騒音、
浮遊粒子状物質
(NOx、
SOx、
煤塵)
の3点です。
日工
180t/hプラント
1972(昭和47) 日工、国産最大(現在に至るまで)の
240t/hプラント完成
●臭気対策:脱臭装置の採用によって臭気を抑制しました。
日工、防音、防塵対策型プラント完成
●騒音対策:シェルタ
(外装)
の設置、低騒音機器(サイレンサー
インバータ)
を採用して音が漏れるのを防ぎました。
さらに、
ス
バグフィルタ製造開始
1973(昭和48) 日工、
キップエレベータによる合材サイロ投入を見直し、
サイロをアス
日工
240t/hプラント
1974(昭和49) 日工、
ドイツメーカと技術提携し、NB
ファルトプラント本体下に設置することによる連続投入によって
バーナ開発
も騒音を抑えました。
1977(昭和52) 日工、
リサイクルプラント完成
●浮遊粒子状物質対策:低NOxバーナの開発、
集塵装置の採用
(バ
グフィルタ・乾式サイクロン)
などによってNOxほかを抑えました。
日工
バグフィルタ
1981(昭和56) 日工、
リサイクルユニット開発
CO2対策の具体的な対応と、
それを支える技術は?
1983(昭和58) 日工、
BonDシリーズ発売
ファクトリーBonD開発
1992(平成4) 日工、
●乾燥加熱装置の高効率化:乾燥加熱に使う燃料は、節約のた
日工、脱臭装置製造販売開始
めに熱を極力捨てないようにしています。
こうした廃熱回収率も
日工
BonDシリーズ
TOPシリーズ発表
1993(平成5) 日工、
近年向上しています。
●A重油から代替燃料使用:A重油が燃料の場合、低空気比
脱臭装置製造開始
1995(平成7) 日工、
バーナの使用でCO2排出は従来比4%の削減になります。A重
日工
ファクトリーBonD
ダブルホットビンプラント開発
2001(平成13) 日工、
油用バーナに代えてガスバーナを使用した場合は24%のCO2
排出削減となります。
またNOXの削減にも貢献しています。
ガス
マルチドライヤシステム開発
2002(平成14) 日工、
以外でも生物由来の資源を燃料にした場合、
カーボンニュート
日工TOPシリーズ
環境保護プラント開発
2003(平成15) 田中鉄工、
ラルによりさらなるCO 2の削減が可能です。その他、中温化合
材の研究も推進しています。
新型バーナ
「WELL-turbo」
開発
2004(平成16) 日工、
アスファルトプラントの将来展望は?
2006(平成18) 日工、低NOx対応の新型ガスバーナ
開発
アスファルトプラントに求められる課題としては、今後、石油製
品の高騰により合材製造単価が上昇することが考えられます。
田中鉄工
環境保護プラント
2008(平成20) 日工、環境保護+景観などとの調和を
図った新型リサイクルプラント開発
これは道路会社にとっても死活問題となる重要な課題です。
ま
た、近年普及している高粘度のアスファルトを使用している排水
日工 新型リサイクルプラント
性合材のリサイクル化の推進や、安全性の向上なども今後の課
題です。
105
日工 新型
リサイクル
プラント
ココがすごい!日本の建設機械
コンクリート
バイブレータ
エクセンHBM50ZX
Concrete Vibrators
コンクリートバイブレータとは、セメント、砂、粗骨材を調合
し、攪拌時に水を混入した生コンクリートを型枠内に投入し
てコンクリートを形成する際、高周波微振動によって過剰な
水分や空気を排出させる機械です。
これによって空隙を防
ぎ、本来の強度を保ったコンクリートを形成することができ
三笠産業FX-50RE
ます。
らゆるコンクリート工事に対応できるよう、多機種のバイブレー
日本でのコンクリートバイブレータの
あけぼのは?
タを製造しています。
コンクリートバイブレータの用途は?
●フランスの対ドイツ対策で世界初登場?:コンクリートバイブ
レータの最初の開発に関しては、
はっきりとした文献は残されて
●幅広い用途:コンクリート
いませんが、一説には、第一次大戦後、勝利したフランスがなお
構造物は、ダム、高速道路、
もドイツの脅威に備えるために、
ドイツとの国境に
「マジノ線」
橋脚、港湾工事、隧道工事、
(1936年完成)
なる108もの要塞を構えた際、
コンクリート強度
地下鉄駅、一般ビル建築、高
(対爆砲弾性能)
を求めるためにコンクリート振動機が発明され
層建築とさまざまです。
また
たと伝えられています。
マンホール、
U字溝、
ボックス
●日本への輸入と国産化:1934
(昭和9)
年、
製造メーカは不明
カルバートなどのコンクリー
ながら、富国通商によって輸入されたのが、
日本における初のコ
ト二次製品製造や、原子力
ンクリートバイブレータでした。
その後、林自動車製作所(現・エ
発電所の炉心部などもコン
ダム現場での使用風景
クセン)
の創業者である林 茂木氏が、富国通商からの依頼を受
クリート構造なので、バイブ
けて、1935(昭和10)年に空気式バイブレータ5台を製造した
レータが活躍します。
のが、
国産第1号です。
●とりわけダムで大活躍:わ
●その後のバイブレータ:敗戦後の1947(昭和22)年、
当時日
が 国 の ダ ム 建 設 にコンク
本を占領していたGHQからの指令で、
すべてのコンクリート工事
リートバイブレータがかかわっていないものはありません。小河
でバイブレータが使用されるようになり、
普及しました。
内ダム
(東京都・山梨県)、黒部ダム
(富山県)、佐久間ダム
(静岡
建築現場での打設工事
県・愛知県)、奥只見ダム
(福島県・新潟県)
などの日本の代表的
コンクリートバイブレータの特徴は?
なダムはもちろん、
さらに海外でも、現在世界一の中国三峡ダム
で日本製のコンクリートバイブレータが活躍しました。
生コンクリートの打設時にだけ使用され、
コンクリート構造物が
ある限り必要不可欠なバイブレータは、本来の気泡除去の役割
コンクリートバイブレータによって
実現したことは?
だけでなく打設時のコンクリートの流動性を高める機械として、
現在のところこれに代わるものはありません。
バイブレータは機
種(太さ)
によって時間あたりの締固め可能なコンクリート量が
効率よく流動化させることで、密実なコンクリートの構築が実現
異なり、
かつ大きな砂利
(粗骨材)
で構成された生コンクリートに
したことが最大のメリット。
すなわち高い耐圧縮強度
(引っぱり応
細いバイブレータを掛けても締固まるもととなる流動化
(液状化
力に対する強度も鉄筋コンクリート工法の発明により実現)
を長
と考えてよい)
は生まれません。
したがって、
「こういう部材で構成
期間(コンクリート構造物の実用的自然寿命は100∼200年と
された生コンクリート
(配合設計)
には、
こういうバイブレータが
いわれている)
にわたり、補修なしで耐久性(対候性、耐火性、耐
必要である」
という非汎用性の機械でもあるので、各メーカはあ
地震性など)
が維持できる構造物が実現しました。
106
コンクリートバイブレータの変遷
コンクリートバイブレータの
技術的なポイントは?
1934(昭和9) 富国通商がフランスからエア式コンクリートバイブレータを
輸入、
日本国有鉄道信濃川発電所工事に使用
高周波バイブレータの開発が、大きな技術的進歩です。バイブ
1935(昭和10) 林自動車製作所(現・エクセン)、国産第1号機のエア式バイブ
レータを製造
レータの原理は特殊な場合を除き、回転する振り子によって発
生する遠心力を振動に転換するというものですが、
何によって振
コンクリート振動機の特許を得て生産・販売を
1938(昭和13) 林自動車製作所、
開始
三笠機械工業(現・三笠産業)、コンク
リート振動機の試作を開始
り子を回転させるかが、技術革新の鍵でした。空気圧、電気モー
タ、
ガソリン内燃機関の回転出力などを経て、先端部に高周波
モータと振動体を直結させて軽量化を図り、重い原動機を引き
三笠機械工業第1号機
ずりながらの作業から開放し、
電源ケーブルだけで自由に動き回
1948(昭和23) 林自動車製作所、戦後第1号のコンクリート
バイブレータとしてエア式バイブレータ3A
型を生産、
国産バイブレータが復活
れる高周波バイブレータ開発の意義は、
重要なポイントとなりま
した。
コンクリートバイブレータを
支える基盤技術とは?
林自動車
製作所
3A型
1950(昭和25) 三笠産業、
横須賀軍港工事現場のM建設から、
コンクリバイ
ブレータの製造を受注
1962(昭和37) 林製作所(現・エクセン)、HV型(振動方法が遊星式)バイブ
レータを開発
「砂利の中に握りこぶしを突っ込んで毎秒200回、全振幅で
1mmも2mmも揺さぶれば、あっという間に血まみれ」。特殊
1963(昭和38) 三笠産業、内部用電気式高周波
型バイブレータ導入
(モータ式)
鋼に熱処理を施したバイブレータの振動体(筒)も同様です。
軽量化の要望に応えつつ、耐摩耗性の高い材料の選定調達や
1968(昭和43) 三笠産業、
コンクリート締固め試
験報告書(建設機械化研究所)
で
日本の試験基準の作成
加工、さらには機械設計上、最も忌避すべき衝撃荷重を前提
に使用されるバイブレータ内部の振り子保持用ベアリングな
どがバイブレータを支えています。単純に見えて非常に高い技
三笠産業MVI-MD型
(現在Fシリーズ)
国内に高周波48Vバイブレータ販売開始
1971(昭和46) 日本ワッカー、
術難度を備えています。
1972(昭和47) 林バイブレーター
(現・エクセン)、
ダム
用省力バイブレータ バイバック、高周
波48Vシリーズバイブレータを開発
海外での動向は?
締固めにバイブレータを使用しない施工を当然のように行う国
建築壁面用小型振
1984(昭和59) 林バイブレーター、
動機、愛称「キツツキ」開発
もあるため、
バイブレータの使用方法は各国で格差があります。
例えば、
日本では20年前に販売が打ち切られているフレキシブ
林バイブレーター
HFC型/HMV型
1990(平成2) 林バイブレーター、高周波バイブレータ用電源として、超軽
量、超小型のマイクロインバータH107型を開発
ルシャフト型バイブレータが米国では現在も主流です。
このよう
に各国のマーケット実状により各地域のバイブレータメーカが
さらなる小型化、高性能化
1994(平成6) エクセン、
を実 現したインナーバイブレータ
フィンヘッドと全閉防滴型のニューロ
マイクロインバータ ぜんぺいクンを
開発
それぞれの需要を満たしているといえます。
半面、
ダムや原発建設など、
最高度の安全性や寿命が求められる
施工においては、
高性能な日本製のニーズが高くなっています。
1998(平成10) 三笠産業、世界初のマグネット
モータを使ったマイコン制御高
周波バイブレータを開発
コンクリートバイブレータの将来展望は?
熟練の現場作業者の確保が難しい中、誰が使用しても同じ結果
2002(平成14) エクセン、打設音の低減、タイル・
型枠の傷防止としてソフトフィン
ヘッドのインナーバイブレータと
小型・軽量・耐水・全閉防滴高周波
インバータ耐水インバータを開発
が得られるような機械を目指しつつ日本が最も得意とする感知
センサ技術を生かし、
コンクリートの充填、適度な密度を知らせ
る見える化技術が今後の課題となるでしょう。
また、
さらなる高
強度化、最適な作業条件を提供する機械が求められていくと予
想されます。
107
エクセン
HBM50ZX型
三笠産業
マイコンバイブレータ
Vシリーズ
ココがすごい!日本の建設機械
オフロード
ダンプトラック
Off-Road Dump Trucks
ダム建設に代表される大規模土木工事や鉱山、砕
石現場など、過酷な条件下で大量の岩石や土砂を
効率よく運ぶために使われる建設機械です。公道
を走ることができないことから
「オフロードダンプト
コマツHD785-7
ラック」
と呼ばれます。
フレーム形状によって、固定
タイプのリジッド式と屈折タイプのアーティキュ
レート式に大別されます。
日本での
オフロードダンプトラックのあけぼのは?
オフロードダンプトラックの長所は?
●積載能力が大きい:荷台
は積込性、荷姿、排土性など
●発祥は米国:リジッド式
を考慮し、大量の土砂や岩
は、商用トラックをベース
石を能率的に運搬できるよ
に米国・ユークリッド社が
うに設 計されています。リ
1934(昭和9)年に開発
した15t積みダンプトラッ
クが 最 初です。アーティ
ジッド式はV型形状荷台、
ユークリッド社15t積みダンプ
アーティキュレート式は舟
形形状荷台で、走行中の荷こぼれを防いでいます。
キュレート式は、スウェー
●エンジン出力が高い:過酷な現場での作業に耐えられる高出
デンのボルボ社が1966
力を得るため、
ターボチャージャやアフタークーラ付きのディー
(昭和41)年に10t積み
の量産を始めたといわれ
ています。
リジット式
キャタピラージャパンCAT773D
ゼルエンジンが採用されています。近年は排出ガスの清浄化と
ボルボ社10t積みダンプ
燃費改善を目的とした電子制御技術や高圧燃料噴射技術を取
り入れたエンジンが搭載されています。
●国産第1号は?:日本では、1953(昭和28)年着工の佐久間
●不整地や軟弱地に強い:アーティキュレート式は高速運搬を
ダム
(静岡県・愛知県)建設工事でユークリッド社の15tタイプ
しないため、小径のワイドラジアルタイヤの採用で車体を低くす
が使われました。その後、
ることができます。重心が低い上、全輪駆動であることから、
リ
国土復興事業の一環とし
ジッド式の不得手な不整地や軟弱地での走行性、登坂性に優れ
て政府の国産化政策を受
ています。
けて、小松製作所が1956
●積込機を選ばない:低くて長い荷台を装備しているため、ホ
(昭和31)年に15t積み
イールローダ、油圧ショベルなど、各種積込機との多様な組み
の国産第1号機を開発。 小松製作所HD150
合わせが可能です。
佐久間ダムの建設現場に
投入されました。
オフロードダンプトラックの用途は?
●その後のオフロードダンプトラック:アーティキュレート式の
通常は大型積込機械と組み合わせて土砂や岩石を運搬します。
国内第1号は1978(昭和53)年、関越自動車道建設工事に使
ダム工事、土地造成、
ゴルフ場の造成、
トンネル工事などの現場
用された18.5t積みの輸入機です。1970年代以降本格化した
で広く使用されています。
工事の大規模化はオフロードダンプトラックの大型化を促進。
1994(平成6)年に開港した関西国際空港の建設時には78∼
オフロードダンプトラックに求められる特性とは?
136t積みが土砂採取現場で使われました。現在、石灰石鉱山
オフロードダンプトラックは公道以外の過酷な稼働条件の現場
では190∼220t積みが稼働しています。
108
で大量の土砂や岩石を効率よく運搬する建設機械です。
このた
オフロードダンプトラックの変遷
め、時間あたりの運搬量やトンあたりコストで評価される高い生
産性が求められます。生産性の確保には高い稼働率を維持する
1934(昭和9)
信頼性と耐久性が不可欠です。
最近は、
オペレータの作業環境を
考慮した快適性と安全性の確保にも力が入れられています。
米国・ユークリッド社、15t積みのリジッド式ダンプトラック
を開発
ユークリッド社ほかの15t積みダンプト
1953(昭和28) 佐久間ダム着工。
ラックが納入される
海外での活躍ぶりは?
(現・三菱重工業)、三菱ふそうW26DHIW型
1954(昭和29) 三菱日本重工
15tリアダンプトラックを製作
海外では、
1970年代以降、炭鉱の露天掘りが本格化してショベ
ル&ダンプ工法が盛んになりました。大規模工事が多い資源開
低重心、V型傾斜ベッセル、
オフセットキャ
1956(昭和31) 米国・ルターナ社、
ブ、逆傾斜ウィンドウ、
エア油圧サスペンションなどを備え、
現代のオフハイウェイダンプトラックの原型となるダンプト
ラックを開発
小松製作所、15t積みのリジッド式ダンプトラックHD150
を開発
発国では、
日本国内での稼働機に比べて、
より大きなオフロード
ダンプトラックが普及しています。290∼326t級の超大型機も
あります。
オフロードダンプトラックには、
どのような技術が生かされているのか?
初の電気駆動オフハイウェイダンプト
1964(昭和39) 米国・ユークリッド社、
ラックを開発
●無人化システム:大規模な災害復旧工事におけるオペレータの
1966(昭和41) スウェーデン・ボルボ社、10t積みのアーティキュレート式
ダンプトラックの量産を開始
安全を確保するための無人運転技術が確立しています。海外の大
200t超のオフハイウェイダンプトラックを開発
1972(昭和47) 米国・ワブコ社、
規模鉱山では、GPSを利用した無人化システムが使われています。
●フルオートマチックトランスミッション:1977(昭和52)年に
当時世界最大となる350tダンプトラッ
1974(昭和49) 米国・テレックス社、
クを開発
小松製作所、HD680開発
発売された46t積み機には電子制御式フルオートマチックトラ
ンスミッションが採用されました。負荷に応じた最適な変速を
HD460開発。
世界で初めてオートマチックトラ
1977(昭和52) 小松製作所、
ンスミッションを採用
し、誤動作に対するフェイルセーフシステムも使われています。
●ハイドロニューマチックサスペンション:窒素ガスを封入した
電気駆動ダンプトラックHD1200開発
1979(昭和54) 小松製作所、
ハイドロニューマチックサスペンションが主流。乗り心地を改善
する一方、不整地を走破するのに威力を発揮します。
HD1200M
(機械駆動車)
開発
1981(昭和56) 小松製作所、
●車載型積載質量計測システム:サスペンションにかかる荷重
1983(昭和58) 小松製作所、
160tの機械駆動式ダンプトラックHD1600M
開発
から積載質量を計測・記録するシステムを搭載し、作業の進捗
状況の管理に役立てています。記録したデータをパソコンにダ
1988(昭和63) 小松製作所、全段電子制御自動変速機(K-ATOMiCS)搭
載のHD785-3開発
ウンロードできるものもあります。
オフロードダンプトラックの将来展望は?
1995(平成7) 米国・キャタピラー社、GPS無人ダンプトラック777Cの走
行試験をテキサスの採石場で実施
●一段と進む電子制御化:エンジンをはじめとする車両の各装
当時世界最大の電気駆動式ダンプトラック930E開発
1996(平成8) コマツ、
置の高度な電子制御化がさらに進むと考えられています。積載
アーティキュレートダンプトラックHM400開発
2001(平成13) コマツ、
重量や車両の異常を表示、管理するモニタシステム、
アンチロッ
クブレーキ、
オートサスペンションなど、既に実用化されている
2002(平成14) 新キャタピラー三菱(現・
キャタピラージャパン)、
最大積載重量218tのダ
ンプトラックCAT793C
発売
新キャタピラー三菱CAT793C
ものも少なくありません。
●不具合の発生を未然に防ぐ:車両の高い稼働率を保つため
に、不具合の発生を未然に防ぐことを目的とした機械管理シス
テムが搭載されるようになっています。
これは、稼働状況をデー
2004(平成16) 日立建機、
AH400-D発売
タとして管理する仕組みで、現場の車両の状況を遠隔地で把握
する際にも役立てることができます。
●注目されるアーティキュレート式:リジッド式より車両重量の
2006(平成18) コマツ、
HD785開発
軽いアーティキュレート式は低出力のエンジンが使用でき、燃
2007(平成19) 新キャタピラー三菱、新
世代環境対応型エンジ
ン「 A C E R T T M 」搭 載
CAT773F、
775F発売
費や走破性においても好条件をもたらします。
こうした経済性や
作業性、一般建設工事にも使える適用範囲の広さなどから、同
形式の機種が注目されています。
109
日立建機AH400-D
新キャタピラー三菱CAT773F
ココがすごい!日本の建設機械
スクレーパ
Scrapers
スクレーパとは、
1台で掘削、積込、運搬、捨土、
敷きならしといった一連の土工作業を行う機械
です。被けん引式と自走式に分類されます。ま
た、スクレーパ系の機械としてプッシャがありま
す。一般に大規模土工にはスクレーパ作業が有
効です。
コマツWS23S-1
スクレーパの種類と特徴は?
●自走式スクレーパ(モータスクレーパ)
:トラクタとスクレー
パを一体にした機械で、被けん引式に比べ走行速度が速く、比
較的長距離の運搬に適しています。
◇シングルエンジンモータスクレーパ:燃費がよく経済的。
積込
みにはプッシャが必要です。運搬距離は200∼2,500m程度。
◇タンデムエンジンモータスクレーパ:四輪駆動で、登坂や走
行性に優れています。
プッシュ・プル仕様車では、2台1組で積込
コマツWS09
みを行うことができ、
プッシュドーザは不要。運搬距離は、200
●被けん引式スクレーパ(キャリオールスクレーパ)
:油圧式と
∼1,500m程度です。
ケーブル式に分類されますが、油圧式が大半を占めています。
履帯式トラクタでけん引するため、
自走式に比べて軟弱地、不整
地、
勾配のある地形などでの使用に適しています。
被けん引式スクレーパの構造図
キャタピラージャパンCAT623G
◇エレベーティングモータスクレーパ: 自力積込みができ、比
較的近距離運搬向き。1台のワンマン運転で掘削・運搬・敷きな
らしができます。米国では道路・宅造工事などでは、整形仕上げ
の定番機械です。
日本ではあまり知られていません。
出典:社団法人日本建設機械化協会「日本建設機械要覧 2010」
110
スクレーパの変遷
1924年(大13) 米国・ルターナ社、
初の自走式スクレーパ開発
1932(昭和7) ルターナ社、
初のけん引式スクレーパ、
通称
「キャリオール」
を開発
初のモータスクレーパ ターナプルを開発
1938(昭和13) ルターナ社、
SR43を開発。
ブルドーザとスクレーパを融
1943(昭和18) Dr.H.Cordes、
合したシャトル運転が特徴
初のツインエンジンモータスクレーパ
1947(昭和22) 米国・ユークリッド社、
(パワーシフト)
を開発
エレベーティングスクレーパを開発
1952(昭和27) 米国・ハンコック社、
コマツWS23-1
スクレープドーザSR53を生産。後年、
1953(昭和28) 旧西ドイツ・メンク社、
日本車輌製造がライセンス生産
●プッシャ:スクレーパの積込作業の際に使用する、後押し用の
トラクタをプッシャといいます。
スクレーパ、特に自走式スクレー
金剛製作所、オープントップ型けん引式スクレーパC-80
(6m3)
を防衛庁
(現・防衛省)
の発注で製作
パは掘削積込みの能力が十分でない場合があるため、
その補助
として必要な機械です。
初のオーバハング・ツインモータスクレーパ
1954(昭和29) ユークリッド社、
を開発
スクレーパの用途は?
道路工事にキャリオールスクレーパを投入
1957(昭和32) 日本道路公団、
三菱重工業、
ウーリッジタイプのモータスクレーパMS型を
試作
高い土地を削って低い所を埋める作業に適し、宅地、工場敷地、
ゴルフ場、道路敷地など、土地造成に広く使用されています。
日本開発機(現・三井造船)、けん引式スクレーパFA12
(9m3)
を試作
スクレーパの技術的なポイントは?
1958(昭和33) 日本開発機のけん引式スクレーパFA8シリーズがFA8L
(7m3)
に発展
●電子制御エンジン:電子制御により油圧力を駆使し、最適燃
焼を実現。大幅な低燃費、低公害、
低騒音につながっています。
相模工業、小松製作所D80用けん引式スクレーパRS9
(9m3)
を製作
●オートマチックな操作が可能:前後進、速度段のシフトが1本
のレバーで行えるオートマチックトランスミッションが採用され
1959(昭和34) 相模工業、
RS6(小松製作所D80用6.1m3)
製作
ています。
1961(昭和36) 日本開発機、
大型スクレーパFA14(平11m3)
を製作
●ディファレンシャルコントロール:軟弱地で一方の駆動輪が
空転したとき、
ディファレンシャルロックペダルを踏むことで、両
三菱重工業、MS10型(9m3)
を試作
輪が直結して他方の駆動輪にもトルクを与え、
けん引力が増し
(現・日立建機)、
5m3スクレーパ製作
1963 (昭和38) 日立製作所
て脱出しやすくなります。
●クッションヒッチ:トラクタとスクレーパの連結部に油圧シリ
ツインモータスクレーパTMS8を開発
1967(昭和42) 三菱重工業、
ンダを取り付け、バウンドなどによるショックを窒素アキューム
日本国土開発、
けん引式スクレーパ24SBHを製作
レータが吸収します。振動が少ない高速走行ができ、
オペレータ
ツインモータスクレーパWS16開発
1970(昭和45) 小松製作所、
の疲労を軽減します。
111
ココがすごい!日本の建設機械
ロード
スタビライザ
Road Stabilizers
道路の舗装はアスファルト混合物と路盤から成っ
ています。路盤はアスファルト混合物からの荷重
を下に分散させる重要な部分なので、均一で十
分な支持力を保つため、適宜混合作業を行う必
要があります。ロードスタビライザは、その作業
を現場で行うための機械です。
酒井重工業PM550
ロードスタビライザの種類・構造は?
日本でのロードスタビライザの
あけぼのは?
●タイヤ式とクローラ式:道路で使用する路上再生路盤工法用
のタイヤ式と、地盤改良用のクローラ式があります。
タイヤ式は
●ドイツからの技術導入?:ロードスタビライザの日本での生い
立ちについての記録はあまり残されてはいません。
おそらくドイ
その機動性を生かし主に路上で使われます。
ツ・ボーマク社からの技術導入であると考えられています。
クローラ式は低接地圧による走行安全性を生かし、路盤以外に
●その後のロードスタビライザ:昭和50年代の日本では、
自動
も工場敷地などの軟弱地盤の安定処理にも活用されています。
車輸送が急激に伸び、
幹線道路の多くに交通量の急激な増加に
なお、混合幅2∼2.4m、混合深さ0∼60cmまでが一般的です
伴う路盤破損
(表面に亀裂)
が見られるようになりました。
そこで
が、特に軟弱地盤の安定処理用として、混合深さ1mのものも普
ロードスタビライザを使用して、既設のアスファルト混合物層と
及しています。
路盤層を直接混合し、同時に添加剤も混合する
「路上再生路盤
工法」
が採用されるようになり、
普及しました。
この工法は交通遮
断時間が短いことから、現在でも路盤の再生工法としては一般
的になっています。
タイヤ式 スタビライザ
タイヤ式 スタビライザ
クローラ式 スタビライザ
コマツGS360-2
クローラ式 スタビライザ
(深層用)
出典:社団法人日本建設機械化協会「日本建設機械要覧 2010」
112
●構造:路盤をかき起こして破砕する刃
(ビット)
、
油圧駆動方式
ロードスタビライザの変遷
で回転させながら混合するドラム、
そしてガードから成る構造で
1958(昭和33) 道路整備五箇年計画や高速道路建設に合わせて、
路床・路
す。
ガードはドラム全体を上から覆い、
人体の一部が回転物に接
盤の改良需要が拡大
触するのを防ぎ、
破砕混合物中の材料の飛散を防止します。
酒井工作所
(現・酒井重工業)
、
自走式ロードスタビライザ
ロードスタビライザの長所は?
PM201型を開発
既設舗装をそのまま有効利用できる舗装発生材の再生利用方
小松製作所、
タイヤ式スタビライザを開発、
販売
1981(昭和56) 法の一助としての長所があります。
これは社会的にニーズが高ま
1987(昭和62) 路上再生路盤工法の技術指針がまとまる
るリサイクル、
環境問題に対応したものです。
ロードスタビライザの用途は?
次のような用途でロードスタビライザが活躍します。
●既設アスファルト舗装が破損し、
路盤の構造強化が必要な個所
●従来の砂利道に表層を設ける場合など、路盤の補強が必要
な個所
●工場構内の道路、駐車場、作業ヤードなどの補修あるいは補
強が必要な個所
●路上再生路盤と路床の間に、下層路盤に相当する既設粒状
路盤が10cm以上確保できるところ
ロードスタビライザが登場するまで
どうしていたのか?
油圧ショベルで路盤打換作業を行っていました。路上路盤再生
工法が行われるようになって以来、
油圧ショベルを用いる工法は
ほとんど使用されなくなりました。
ロードスタビライザによって実現したことは?
舗装廃材の再生利用による経費削減、工期の短縮、重量物に耐
え得る路盤づくりが実現しました。
ロードスタビライザの将来展望は?
●再々生の時代へ突入:路上再生は、
ほとんどの道路で終わっ
ており、
これからは、
一度施工された再生路盤の再々生工事が増
えていくと考えられています。
そのため、大型のロードスタビライ
ザの必要性が高まってくるとも予想されています。
●新しい添加剤の登場:再生路盤の品質向上、経済性の面か
ら各種添加剤の研究が行われています。例えば、
ストレートア
スファルトに水、空気を混合させ、泡状にしたフォームドアス
ファルトは耐久性に優れ、早期の交通開放が可能。
しかもアス
ファルト乳剤より経済的なため、新しい添加剤として注目され
ています。
113
ココがすごい!日本の建設機械
路面切削機
Road Planers
路面切削機は、交通荷重によりできたアスファ
ルトコンクリート路面の凸凹、小さな穴やひび
割れのひどい部分などを補修する際に、路面を
削り取るための機械です。かつては切削するだ
けの機械もありましたが、現在では切削から積
込みまで1台で行えるコンベヤ付きのものが
一般的になっています。
ヴィルトゲンW200
日本での路面切削機のあけぼのは?
路面切削機の種類は?
●海外の機械を参考に独自に研究開発:1970(昭和45)年ご
●走行形態:走行形態で分類すると、車輪式と履帯式がありま
ろ、
ドイツ、米国、英国の機械を参考に、国内の道路建設会社な
す。
機動面では車輪式が優れており、
履帯式はけん引力で有利で
どが独自に研究開発して発展したものと考えられています。
大型機の多くはこの形態となっています。
●路面切削機発展の契機:田中角栄内閣(1972年発足)が推
進する日本列島改造論により、都市開発、高速道路拡大を背景
として、交通量が増加、
車両も大型化し、轍割れ、
凸凹、
ひび割れ
などの損傷が顕著となってきました。従来、補修には舗装面を加
熱後にグレーダなどではぎ取り、
その後再舗装するという方法を
取っていましたが、
それでは増加する補修に対応できず、
しかも
車輪式
範多機械CRP-120FLⅡ
コスト高、非効率という欠点があったため、各種の路面切削機や
積込機が開発・実用化されるようになりました。
●切削機と積込機の一体化:切削廃材の処理は、従来、積込用
ショベルローダと運搬用ダンプトラックの組み合わせで行われ
ていましたが、
2車線の交通制限が必要となり著しい交通渋滞を
招く原因となっていました。
このため、
切削機能と廃材集積・積込
機能を1台に集約した機械が開発されるようになり、近年ではこ
の形が主流となっています。
●多様な路面タイプに対応:近年では、光ファイバケーブル埋
設用溝切削、排水性舗装に付属する排水管埋設用の溝切削、
ド
覆帯式
ヴィルトゲンW2000
ラムの外周をV字型のものに換えてVカットできるものなど、
さま
ざまな路面タイプに対応する機械
が増えています。
また、高圧ウォー
●駆動型式:切削作業装置の駆動で分類すると、油圧式と機械
タジェットを使ったものもあり、鉄
式があります。油圧式は作業装置を左右にシフトさせることがで
筋などが入った路面舗装の切削
き、
路上の障害物などを容易に避けられることが利点です。
また、
に使用されています。
機械式は動力伝達効率の面で有利です。
ウォータジェット工法
による切削作業
114
路面切削機の仕組みは?
路面切削機の将来展望は?
切削作業装置の心臓部は、外周に爪状のビットを取り付けた
中大型機では、熟練オペレータの不足、施工能率向上のため多
カッタドラムです。
これを高速回転させて路面を削り取ります。
ド
機能な制御を行うコンピュータを搭載することで、
切削作業の自
ラム幅がそのまま切削幅となり、
300∼2,000mmのものまで製
動化、
省力化を図っています。
造されています。切削された路面のくずはオーガで集められ、
ベ
ルトコンベヤでダンプトラックなどに積込まれます。
路面切削機の用途は?
一般道、高速道路や空港滑走路などの切削工事のほか、鉱物の
採掘、岩盤切削などに使用されています。路面切削機が普及す
るまで、舗装面の除去作業は油圧ショベルやブルドーザのリッ
パ
(爪を取り付けた引っかく機械)
によって行われていました。
ヴィルトゲン レベルプロ
また、路面切削機による補修工事は夜間工事が多く周辺住民へ
の作業騒音、振動、粉塵公害などによる苦情もあるため、
これら
への対応も課題です。工事に伴う交通渋滞を減らすための施工
のスピードアップなど、高能率の機械の開発、工法の改善なども
今後対応すべきポイントとなるでしょう。
路面切削機の変遷
酒井重工業ER552F
路面切削機によって実現したことは?
1972(昭和47) 酒井重工業、油圧駆動ホイール式ロードカッタER160を
開発
表層のみの補修が可能になり、経済的な施工が実現したほか、
安全性の向上、工期の短縮、環境面での悪影響の抑制などが実
1973(昭和48) 酒井重工業、ロードカッタ対応の油圧駆動フィードロー
現しました。
ダFL50を開発
路面切削機には、
どのような技術が
生かされているのか?
小型路面切削機、小型常温切削機を開発
1979(昭和54) 範多機械、
1982(昭和57) ヴィルトゲン、
1900C型日本上陸
初期の機械は切削能力が小さく、
路面をヒータで加熱しアスファ
1984(昭和59) 範多機械、路面切削機の開発に伴い、切削廃材積込機を
ルトを軟化させ切削していましたが、切削ドラム駆動方式により
開発
高圧油圧システム、
ダイレクトドライブ方式の開発による常温で
の切削が可能となりました。切削ツールとしては、従来の平ビッ
1986(昭和61) 範多機械、中型路面切削機を開発
トに代わってコニカルビット
(さまざまな土質や岩盤に対応でき
500C/4型日本上陸
1989(平成元) ヴィルトゲン、
て磨耗が少ない、
硬い地盤でも連続切削が可能)
を採用すること
により、平たんな仕上がりが実現できるようになり、消耗品の寿
1998(平成10) 範多機械、
超小型路面切削機CRP-35を開発
命も長くなりました。
また、
レベリングセンサの進歩によって切削
精度が上がったことも技術面でのポイントです。
2007(平成19) 酒井重工業、油圧駆動ホイール式ロードカッタER552F
を開発
115