新事業創出支援事業 成果事例集[生産財編] 新事業創出 支援事業 成果事例集 新連携・地域資源活用・農商工連携 生産財編 独立行政法人 中小企業基盤整備機構 独立行政法人 中小企業基盤整備機構 独立行政法人 中小企業基盤整備機構 はじめに 私ども中小企業基盤整備機構(以下「中小機構」という。)は、中小企 業施策の総合的な実施機関として、平成16年7月に設立されました。 以来、中小機構では、「創業・新事業展開の促進」「経営基盤の強化」 「経営環境変化への対応」などを事業の柱として、全国に10か所の地域本 部・事務所を設置し、中小企業の成長ステージの全般にわたる支援施策を 展開しています。 なかでも、新たな事業に果敢に挑戦する中小企業のサポートを目的とし た新事業創出支援事業は、平成17年度に異分野の中小企業連携による「新 連携事業」、平成19年度に地域資源の活用による「地域資源活用事業」、 平成20年度に農林漁業者と中小企業者との連携による「農商工等連携事 業」が、それぞれ法律の施行とともにスタートし、中小機構は、プロジェ クトマネージャーなどの専門家を中心に、国の認定取得に向けた事業計画 の策定から、認定後の事業化達成まで、事業者と伴走しながら、さまざま な課題に対する一貫した総合的な支援(ハンズオン支援)を行ってまいり ました。 平成25年3月現在、国による事業計画の認定件数の累計は、全国で2,501 件(新連携:859件、地域資源:1,096件、農商工:546件)となりました。 認定事業の売り上げが拡大し中核事業に成長したところなど、成果が上 がっている事例が数多く輩出されています。 この度、そのような事例について、事業の背景や展開、成果などをご紹 介すべく、全国から105事例(生産財43、消費財62)を抽出し、成果事例 集として編さんいたしました。 これから新しい事業に取り組もうとされている中小企業の方々、あるい は、支援する立場の方々に本事例集を手に取っていただき、今後の活動の 一助としてご活用願えれば幸甚に存じます。 末尾になりましたが、本事例集の作成に当たりましてご協力いただきま した事例企業の経営者、関係者の皆さま方に心から感謝を申し上げます。 平成25年3月 独立行政法人中小企業基盤整備機構 新事業支援部長 重岡 薫 新連携事業 新連携事業とは、事業分野を異にする 複数の中小企業者が有機的に連携し、そ の経営資源(設備、技術、個人の有する 知識及び技能その他の事業活動に活用さ れる資源)を有効に組み合わせて、新事 業活動を行うことにより、新たな事業分野 の開拓を図ることをいいます。 地域資源活用事業 根拠法 中小企業新事業活動促進法 事業実施年度 平成17年度~ 事業主体 異分野の中小企業者2者以上(共同) 計画期間 3年以上5年以内 事業内容 新商品の開発又は生産/新役務の開発又は提供/商品の新た な生産又は販売の方式の導入/役務の新たな提供の方式の導 入/その他の新たな事業活動 主な認定要件 1. 異分野の中小企業者2者以上がそれぞれの経営資源を持ち 寄り取り組む事業であること 2. 新事業分野の開拓であること 3. 相当程度の需要が開拓されること 4. 新事業活動により一定の利益を上げられること 地域資源活用事業とは、地域の特徴的 なものとして認識されている“地域産業資 根拠法 中小企業地域資源活用促進法 源”を活用して、中小企業者が新商品・ 新サービスの開発、生産等を行い、需要 の開拓を図ることをいいます。 事業実施年度 平成19年度~ 事業主体 中小企業者(単独又は共同) 計画期間 3年以上5年以内 事業内容 新商品の開発、生産又は需要の開拓/新サービスの開発、提供 若しくは需要の開拓 主な認定要件 1.都道府県が指定する地域産業資源を活用した事業であること 2.地域産業資源の新たな活用の視点が提示されていること 3.域外への新たな需要を相当程度開拓するものであること ■地域産業資源とは 各都道府県が指定する以下のものをいいます。 (1)地域の特産物として相当程度認識されている農林水産物又は鉱工業品 (2)地域の特産物である鉱工業品の生産に係る技術 (3)文化財、自然の風景地、温泉その他の地域の観光資源として相当程度認識されているもの イメージ図 中小企業(コア企業) 中小企業(異分野) 経営 資源 大学・研究機関等 農林水産物 経営 資源 観光資源 中小企業(異分野) 経営 資源 新事業活動 経営 資源 鉱工業品 経営 資源 NPO・組合等 新事業分野開拓 (新たな需要が相当程度開拓されるもの) 事業スキーム 事業スキーム 国が「基本方針」 において認定要 件等を策定 2 異分野の中小企 業者が 2 者以上 で連携体を構築 中小企業者連携 体 が 共 同 で「新 連携事業計画」を 作成し、国に申請 主務大臣の認定 (経 済 産 業 大 臣 等) 各種支援措置 の活用 新事業分野 の開拓 国が「基本方 針」において 認定要件等を 策定 都道府県が 地域資源を 指定 中小企業者が「地 域資源活用事業 計画」を作成し、 都道府県に申請 都道府県が 意見を付与 して経済産 業局に提出 主務大臣 の認定(経 済産業大 臣等) 各種支援 措置の 活用 新商品・新サー ビ ス の 開 発・ 生 産 等 及び需 要の開拓 3 農商工等連携事業 中小機構の支援イメージ図 全国10ケ所にある中小機構の地域本部等では、新連携事 業、地域資源活用事業、農商工等連携事業(以下「3事業」) による新商品・新サービスの開発等の実現にあたり、ビジネスに 精通したプロジェクトマネージャー (PM) 及びチーフアドバイザー (C 農商工等連携事業とは、農林漁業者と 商工業者等が通常の商取引を超えて連携 根拠法 農商工等連携促進法 し、お互いの強みを活かして、新商品・新 サービスの開発、生産等を行い、需要の 開拓を図ることをいいます。 事業実施年度 平成20年度~ 事業主体 農林漁業者と中小企業者(共同) 計画期間 原則5年以内 事業内容 新商品の開発、生産又は需要の開拓/新サービスの開発、提 供又は需要の開拓 主な認定要件 1. 農林漁業者と中小企業者が有機的に連携して実施する事業 であること 2. 農林漁業者及び中小企業者のそれぞれの経営資源を有効に 活用したものであること 3. 新商品・新サービスの開発、生産等若しくは需要の開拓を行 うものであること 4. 農林漁業者の経営の改善かつ中小企業者の経営の向上が実 現すること AD)が、事業計画策定、商品開発、販路開拓等に対するア ドバイス・ノウハウ提供を行い、事業の構想段階から法認定後 の事業化達成まで一貫した支援を行っています。 経済産業局 農政局 等 地域支援機関 等 中小機構地域本部等(全国 10 ケ所) ブラッシュアップ支援 ・法的要件の確認 ・ビジネスアイデアのヒ アリング ・具体化に向けたアドバ イス ・事業計画策定の支援 ・商品開発、市場調査等 に関するアドバイス ・事業性・市場性の評価 国による 法律認定 フォローアップ支援 需要開拓 事業化達成 中小企業者 農林漁業者 窓口相談 ・事業計画の具体化支援 ・販路開拓等支援 ・定期的なアドバイス プロジェクトマネージャー等による課題等への相談対応 イメージ図 地域活性化支援アドバイザー派遣事業 中小機構 の主な 支援ツール 地域活性化パートナー事業 ビジネスマッチング 専門家派遣事業 国際化支援事業 農林漁業者 連 携 中小企業者 中小機構の主な支援ツール (1)地域活性化支援アドバイザー派遣事業 新商品等 対象者 3事業の認定事業者及び認定を目指す 事業者 事業内容 認定事業者等が直面する専門的・実務 的な課題の解決のため、民間での豊富 な実務経験を有する地域活性化支援ア ドバイザーを複数回派遣して、必要な アドバイスを行い、課題の適切かつ早 期の解決を支援します。 派遣回数 (同一課題について)5回以内 事業スキーム 国が「基本方針」 において認定要 件等を策定 4 農林漁業者・中 小企業者が連携 体を構築 農林漁業者・中小企 業者が共同で「農商 工等連携事業計画」 を作成し、国に申請 主務大臣の認定 (農林水産大臣・ 経済産業大臣等) 各種支援 措置の 活用 新商品・新サー ビ ス の 開 発・ 生 産 等 及び需 要の開拓 派遣する専門 企業の現役・OB人材等の実務家や、 家 中小企業診断士等の中小企業支援の第 一線で活躍している経験豊富な専門家 (2)地域活性化パートナー事業 対象者 3事業の認定事業者 事業内容 市場ニーズの把握や商品企画、開発した新商品・ 新サービスの市場での評価やマーケティング、首 都圏等での販路開拓等で発生する課題に対応す るため、全国規模で活動する大手の流通事業者 等を「地域活性化パートナー」として登録。パー トナー企業との効果的な連携活動により、課題 解決を図り、事業化の早期達成を支援します。 登録企業数 99社 (平成25年3月現在) 主な企画内容 ■販路開拓支援; 大型展示会、百貨店等販売 会、通信販売企画、商談会等 ■商品化支援; 各種相談会、専門家アドバイス、 商品評価等 ■その他; セミナー講師の派遣、アドバイザー、 評価者としてのバイヤーの派遣 5 法認定に基づく各事業の支援措置 (3)ビジネスマッチング(展示会、商談会等) 中小企業総合展 販路ナビゲーター創出支援事業 経営革新等に取り組んでいる中小・ベンチャー 企業 内容 中小企業・ベンチャー企業が、自ら開発した製品・ 技術・サービス等を展示・紹介し、販路開拓や 業務提携といった企業間の取引を実現すること を目的とした中小機構主催のビジネスマッチン グイベントです。 対象者 内容 中小機構または、都道府県等中小企業支援セ ンターの支援を受けていて、自社で開発した 優れた製品、サービス等の販路開拓を希望し ている中小企業 自社で開発した製品、サービス等の販路開拓 に課題を抱える中小企業に対し、販路開拓に関 する豊富な経験とネットワークを持つ販路ナビ ゲーターが、製品評価及び販路候補先に関す る情報提供を行います。 補助金 対象者 ※上記のほか、3事業の認定事業者を対象とした展示・商談会イベントなども開催しています。 (4)専門家派遣事業 経営・技術・財務・知財などの専門家を派遣し、企業の発展段階に応じたアドバイスを行います。 事業の特徴 事業名 専門家継続 派遣事業 派遣する専門家 支援期間 中小企業の様々な経営課題の 中小企業診断士等、中小企業の 支援内容により 解決、新事業展開等の企業目 支援の第一線で活躍している経 6ヶ月~1年程度 標の実現に向けた長期継続的 験豊富な専門家 な派遣 専門家1人・1日あた り16, 700円 - 中小企業が計画している海外展開事業(製造 販売拠点の設立、製品の輸出等)や海外プロ ジェクトが実現可能か、 採算が取れるか等を 検証するF/ S調査について、 事前計画の作 成から現地同行調査、及びフォローアップまで、 海外ビジネス経験が豊富な専門家がサポート します。 一部経費については中小機構が負担 します。 内容 6 海外投資、輸出入や海外企業との業務提携な ど、中小企業の海外展開に関する経営課題に 対し、海外ビジネス経験の豊富な専門家が個 別にアドバイスを行います。 日本製品の購入や合弁会社設立、代理店契約 締結など日本企業との連携を希望している海外 企業経営者等との商談会を開催します。 ◆ 高度化融資制度 4者以上が連携して行う事業に必要な 生産・加工施設等の設備資金について、 中小機構が都道府県と協力して融資を 行います(無利子)。 内容 ◆ 政府系金融機関による融資制度(法 認定不要) 事業計画の認定を目指してブラッシュ アップ中の事業者に対し、設備資金及び 運転資金について、日本政策金融公庫 が優遇金利で融資を行います。 海外への販路開拓に意欲的に取り組む中小企業 を対象に、海外展示会及び国内の国際展示会 への出展をサポートします。展示会の準備段階 から、展示会場での支援、出展後のフォローアッ プまで、海外への販路開拓の一貫した支援を行 います。 ※上記のほか、海外展開を目指す方を対象とした各種セミナーや研 修なども企画、開催しています。 ◆ 小規模企業者等設備導入資金助成法 の特例 小規模企業者等の設備資金につい て、無利子設備資金貸付の貸付金額を 6,000 万円以下に、また同無利子設備 資金貸付の貸付割合を 2/3 以内に優遇 します。 ◆ 信用保証の特例 中小企業者が金融機関から融資を受ける際、信用保証協会が債務保証をする制度で、中小企業者は次の措置を受けること ができます。 *普通保証等の別枠設定 普通保証 2 億円、無担保保証 8,000 万円、特別小口保証 1,250 万円、流動資産担保融資保証2億円に加えて、それ ぞれ別枠で同額の保証を受けることができます。 *新事業開拓保証の限度枠拡大 新事業開拓保証の限度額が 2 億円から 4 億円(組合 4 億円から 6 億円)に拡大されます。 ◆ 食品流通構造改善促進法の特例 食品の製造等の事業を行う中小企業者が金融機関から融資を受ける際、食品流 通構造改善促進機構が債務保証等をする制度で、食品の製造等の事業を行う中小 企業者は、当該認定事業に必要な資金の借り入れに係る債務の保証等を受けるこ とができます。 国際展示会出展サポート その他支援措置 国際化支援アドバイス ◆ 事業化・市場化支援事業 連携体が行う新商品開発等に係る試 作・開発費(試作・実験費、原材料費等)、 販路開拓費(展示会等出展費、マーケ ティング調査費、広報費等)、事業費(産 業財産権等取得費、借損料、連携構築 費、旅費等)などの経費の一部を補助 します。 補助金限度額 3,000 万円、但し試作・ 開発を伴わない場合 2,500 万円(上 限)補助率 2/3 以内 専門家1人・ 同行支援1回あたり 4, 000円 海外経営者との商談会 内容 ◆ 地域資源活用売れる商品づくり支援 事業 新商品開発等に係る試作・開発費(試 作・実験費、原材料費等)、販路開拓費(展 示会等出展費、マーケティング調査費、 広報費等)、 事業費(産業財産権等取 得費、借損料、旅費等)などの経費の 一部を補助します。 補助金限度額 3,000 万円(上限)補 助率 2/3 以内 専門家1人・1日あた り16, 700円 信用保証 内容 ◆ 事業化・市場化支援事業 連携体が行う新商品開発等に係る試 作・開発費(試作・実験費、原材料費等)、 販路開拓費(展示会等出展費、マーケ ティング調査費、広報費等)、事業費(産 業財産権等取得費、借損料、連携構築 費、旅費等)などの経費の一部を補助 します。 補助金限度額 3,000 万円、但し試作・ 開発を伴わない場合 2,500 万円(上 限)補助率 2/3 以内 ◆ 農業改良資金融通法、林業・木材産 業改善資金助成法、 沿岸漁業改善資金 助成法の特例 中小企業者が農林漁業者の行う農業 改良措置等を支援する場合に農業改良 資金等(無利子)の貸付を受けること ができます。また当該資金の償還期間 及び据置期間を延長します。 (5)国際化支援事業 F/S(フィージビリティ・スタディ)支援 農商工等連携事業 資 首都圏若しくは近畿圏市場に 販路開拓 販路ネットワークを持つ販路開 コーディネート おけるテストマーケティング活 拓コーディネーター 動の支援 事業 融 戦略的CIO 育成支援事業 中小企業の経営戦略に基づくI CIO経験者、中小企業診断士な 支援内容により T化計画の策定及びその実施 ど中小企業のIT経営に関して十 6ケ月~1年程度 に向けた比較的長期的な派遣 分な知見と実績がある専門家 地域資源活用事業 ◆ 政府系金融機関による融資制度 認定を受けた事業計画に基づく設備資金及び運転資金について、政府系金融機関が優遇金利で融資を行います。 費用 中小企業が直面する特定の経 特定分野の経営実務について、 5ヶ月以内(アドバイ 専門家1人・1日あた 営課題解決に向けた短期集中 大手・中堅企業等における豊富 スは10回以内) り8, 000円 な経験を持つ実務経験者 的な派遣 経営実務 支援事業 新連携事業 ◆ 中小企業投資育成株式会社の特例 事業を行う中小企業者が増資等を行う場合、資本金3億円を超える株式会社で あっても投資育成会社の投資対象に追加されます。 ◆ 特許料の減免措置 技術に関する研究開発事業による成 果について、中小企業者が特許出願を 行った場合、審査請求料・特許料(第1 ~ 10 年)を半額に軽減できます。 7 目次 ●北海道 新連携事業 地域資源活用事業 農商工等連携事業 事業区分 内 容 アルミと国産木材の組み合わせ 断熱性に優れた木製窓を開発 ページ 木質ペレットの販路開拓 地元の小中学校や公共施設で導入拡大 12 北海道 南富良野町森林組合 低コストの木質チップ燃料供給システム 地産地消型のバイオマス事業を展開 14 宮城県 加美電子工業 株式会社 新しい超臨界二酸化炭素塗装装置を開発 希釈溶剤排出量を大幅削減 16 株式会社 モス山形 コケを使った簡易緑化システムを開発 施工・メンテナンスの低コスト化を実現 18 株式会社 フミン 環境に優しいガラスコーティング 大きな効果で環境対応 20 栃木県 筑波精工 株式会社 独創的な静電チャックを開発 大型化・薄型化する液晶パネルを搬送 22 群馬県 株式会社 黒沢レース 多種多様なストリングスカーテンを開発 新たな可能性求めてものづくり 24 群馬県 日本省力機械 株式会社 超音波カッターで業界革新 ライセンス販売で海外市場も攻略 千葉県 株式会社 にしばら葉彩 東京都 富山県 三芝硝材 株式会社 石川県 独自の金属曲げ加工機を開発 展示会積極参加で販路開拓に成功 ページ 56 伝統工芸品「金沢箔」を食品に活用 発想豊かに食用金箔の可能性を広げる 60 福井県 永平寺サイジング 株式会社 睡眠を助ける健康マットで一貫体制 ものづくり大賞など数々の賞を獲得 62 京都府 和晃技研 株式会社 誤動作のない消火システムの製品化 下請け脱出、 メーカーへの転換達成 64 大阪府 エースシステム 株式会社 蒸気で炊飯、 売り上げ倍増 大学との共同研究で違いを証明 66 大阪府 株式会社 タケックス・ラボ 竹由来の抗菌剤で成長市場を開拓 「竹一本丸ごと使い切る」戦略 68 26 兵庫県 髙丸工業 株式会社 産業用ロボットを中小企業に拡大 「ビフォーサービス」を展開 70 誰でもできる水耕野菜の夢実現 生産管理で品質・効率大幅向上 28 兵庫県 協同組合 兵庫木材センター 連携で生産から流通の一貫体制を構築 良質な木材を安定供給 72 株式会社 ヴァイタス つくっているのは患者さんの笑顔 病室のアメニティー環境を向上 30 和歌山県 株式会社 ヴァイオス 新しいバイオマス転換技術でリサイクル し尿などを有機質肥料に再生 74 東京都 株式会社 環境経営総合研究所 産業廃棄紙を再利活用したエコ材料 海外企業との連携による世界展開 32 岡山県 株式会社 ショウエイ 76 東京都 マイクロ・ トーク・システムズ 株式会社 競技計測システムをグローバル展開 国内外の競技大会で欠かせない存在に 独自技術で舶用エンジン部品が存在感 世界の大型船になくてはならない存在に 34 広島県 株式会社 東洋高圧 78 株式会社 アムクルー LEDの高機能照明システム開発・製造 風雨に強く屋外看板などで急速に普及 短時間低コストで食品エキスを製造 化粧品業界で新たな用途拡大を目指す 36 藤崎電機 株式会社 38 世界で最も微細な粉体を大量に 医薬品製造に利用できる製品を開発 80 ショーダテクトロン 株式会社 硬脆性材加工装置の開発に成功 I T社会の一端を支える 徳島県 福岡県 計測検査 株式会社 トンネルのひび割れ診断を事業化 公共交通機関などから高い評価 82 福岡県 ムライケミカルパック 株式会社 これまでにない強化・断熱複合塗料 連携力で受注増を呼び込む 84 長崎県 株式会社 イネックス LED使い屋外用照明装置を開発 大手にない独自の放熱技術を活用 86 福島県 関東 静岡県 中国 静岡県 40 愛知県 株式会社 池山メディカルジャパン 自然な人工乳房を実現 乳房再生支援技術の開発も取り組む 42 愛知県 株式会社 エコ・テクノロジー 次世代トルネード型風力発電機 狭小地、 荒天でも稼働 44 愛知県 大津鉄工 株式会社 安全、 低コストのDスルー工法 全国展開目指し業界団体も設立 46 熊本県 青紫蘇農場 株式会社 紫蘇の機能性に着眼した商品開発 紫蘇の可能性を発掘 88 愛知県 株式会社 近藤機械製作所 高性能自転車用ハブを開発 航空技術で高速回転性と耐久性を発現 48 大分県 有限会社 ビューティフルライフ 高齢者や要介護者への理美容サービス 病院、 介護施設に向けて販路拡大 90 愛知県 杉江製陶 株式会社 ケーブル保護用多孔陶管の新商品を開発 市場環境の変化に対応し、 販路開拓 50 宮崎県 株式会社 コムテック 発情時期を連絡するシステムの開発 牛飼育農家の経営安定化に貢献 92 愛知県 ゼネラルヒートポンプ工業 株式会社 効率的な地下熱利用ヒートポンプを開発 環境に優しいシステムの普及に貢献 52 鹿児島県 株式会社 日本計器鹿児島製作所 94 愛知県 株式会社 明城 地元三河材を生かした家づくり 独創的な木造住宅工法を開発 半導体製造装置の開発技術をベース 大ヒット中の全自動散水・止水制御装置 54 静岡県 中部 9 ●九州 古橋織布 有限会社 シャトル織機で織り上げた超高密度織物 独自技術で大量生産品との差別化 ●四国 株式会社 箔一 ●中国 58 ●近畿 「創意無限」でガラス建材の新境地開拓 エコと機能、 デザインを両立した商品 九州 協和マシン 株式会社 内 容 四国 富山県 事業区分 ●北陸 株式会社 イワクラ 事業者名 ●中部 北海道 10 都道府県 ●関東 飯田ウッドワークシステム 株式会社 近畿 東北 北海道 山形県 8 事業者名 北陸 北海道 都道府県 ●東北 新事業創出支援事業 成果事例集[生産財編] 飯田ウッドワークシステム 株式会社 ●社名 国産木材の圧密加工 マーケティング調査 マイウッド・ツー(株) (株)あきない総合研究所 ●スギ等国産材の圧密化加工ノウハウ ●市場調査によるターゲットの明確化 (愛知県岩倉市) (東京都港区) ※認定時の構成 分析結果を示しながら、複合カーテン ウォールの利便性を強調した。特に首 都圏では、環境や省エネに対する関 心が高まっており、来場者の反響も良 好であった。 事業の成果 認定によって信用力高まる 東京・檜原村に工場設立 新連携の認定が大きく事業展開を 後押ししている。マスコミからの取材も 多くなり、会社の信用力と認知度向上 につながった。行政や民間からの引き 合い、建築家からの問い合わせも増え ており、受注実績と人的ネットワークの 拡大につながっている。金融機関から の信用度も高まり、資金調達力が強化 されたという。 また、事業推進の過程でさまざまな 出会いがあり、東京都や同檜原村と の関係が生まれた。首都圏の需要対 応に多摩地域の豊富なスギを活用し ようと、23年、檜原村に東京工場を設 立し、事業をスタートさせた。当該事業 は、多摩産材という地元資源を活用し た「多摩産スギ材の断熱性を生かし た木製内窓『いいうち窓』 の開発・販売 と地域振興」 という事業名で、24年10 月に地域資源活用の認定を受けてい る。 さらに、銀座に営業の拠点となる東 京支店も開設。 ショールーム兼セミナー 会場の役割を果たしており、立地が良 いことから来場者も多い。北海道の小 さな企業が東京に進出するというの は、 地元にとっても誇らしい出来事であ り、社員のモチベーション向上にもつな がっているという。 今後の事業展開 住宅の改修需要にも対応 海外にも進出 今後は、新築ばかりではなく、需要 が大きい一般住宅の改修・改築市場 にも本格的に進出したいと考えてい る。既に、北海道内の集合住宅などで 実績があるが、全てオーダーメードの 認定事業の売上高推移 経 営 者 の ひ と 言 単位:百万円 国の発展を支援するビジネス 150 120 60 30 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 北海道の人口500万人程度に対し、首都圏 はその約10倍の規模があります。中小企業数 も多く、その経営者の方々の熱意も伝わって きます。刺激を受けて成長するには、首都圏 での事業展開は必須と考えています。木製窓 は、北海道の環境で育った技術ですが、今後と も、環境問題、省エネ対策など、社会的な課題 を解決して、国の発展に寄与できるようなビジ ネスを展開したいと考えています。 ●沖縄 ●沖縄 90 0 ため割高になっていた。そこで、 アルミ サッシの代用品として規格品の木製 サッシ窓の開発に取り組む予定だ。首 都圏では多摩地域の檜原ブランドの 木製サッシ窓を開発し、主に富裕層の 住宅改修用に供給する。 同社がプロデューサー役になり、 こ のようなビジネスを各地域の林業事業 者とジョイントベンチャー方式によって 推進したいと考えている。全て「自分」 でやるのではなく、仲間をつくってみん なでウインウインの関係を築いていこう という発想が、飯田社長の根っこにあ る。 ロシアや中国への進出も考えてい る。断熱需要は多いが、技術的にはま だ発展途上の地である。同社の木製 窓への潜在需要は大きい。既にサハリ ンや香港などで営業を始めており、 日 本ブランドとしてPRしている。北海道 大学と連携して美術館に導入するプ ロジェクトも進むなど、国内外で事業拡 大がさらに進むことが期待される。 ●九州 ●九州 10 ●製品の企画・製造・販売 ●カーテンウォール取付構造に関する特許 ●四国 ●四国 木・アルミ複合カーテンウォールの内部 アルミは、耐候性に優れているが 熱の伝導率も高い。開発したカーテン ウォールは、 このアルミを外側に使用す ることで耐候性を高め、内側に断熱性 に優れた木材を組み合わせたもの。木 材を活用することで、従来のアルミサッ シ窓に比べて断熱効果は65%も高ま り、省エネ効果が大きい。窓などの開 口部は最も熱をロスしやすい部分であ り、建物の高断熱化の進展とともに注 目度が高まっている。 新事業活動促進支援補助金は、主 に商品の研究開発やプロモーションに 活用した。 プロモーションについては、 建築専門誌を活用したPRに加えて、 住宅メーカーや設計事務所、消費者 向けにセミナーを開催したり、展示会 に出展して、断熱効果などの定量的な 飯田ウッドワークシステム(株) (北海道札幌市) ●中国 ●中国 木・アルミ複合カーテンウォールの外観 断熱効果65%向上 木製窓で先端的な取り組み コア企業 カーテンウォールの開発 ●近畿 ●近畿 事業名:国産木材・アルミ複合大型カーテン ウォールの開発・製造・販売 認定日:平成19年2月21日 事業の展開 (北海道下川町) ●カラマツ等国産材の調達 ●集成材化加工ノウハウ ●設計者集団へのプロモーション ●北陸 ●北陸 飯田ウッドワークシステム 株式 会社 ●代表者 代表取締役 飯田 信男 ●設立 平成12(2000)年9月 ●所在地 北海道札幌市南区真駒内曙町 4-10-10 ●資本金 3,050万円 ●従業員数 17名 ●売上高 4億円(平成23年2月期) ●事業内容高断熱木製窓の製造 ●URL http://www.iimado.com/ ●TEL 011-582-2521 ●FAX 011-582-2621 飯田ウッドワークシステム㈱の飯田 信男社長は、北海道立林産試験場に 勤務していた当時、木製窓などの研究 に携わっていた。在職中に欧州を自費 で視察したところ、結露しやすいアルミ の窓枠はほとんどなく、断熱効果が高 い、結露しにくい木製の窓枠を100年 以上も使い続けている現状を知った。 そうした環境に優しい木製窓を国 内にも普及させたいと考え、試験場を 辞めて、平成12年に起業。 ドイツで開 発された木材とアルミを複合化した窓 枠の製造技術を国内に導入して事業 を展開し、地元の大学や自治体など多 くの施設に採用された。 この窓枠の製造技術を応用した国 産木材・アルミ複合カーテンウォールの 開発にも着手し、特許も取得した。 そし て、 この事業をさらに普及、展開させる プロジェクトマネージャー 山中 文雄 下川町森林組合 (福岡県福岡市) ●中部 ●中部 会社概要 欧州の木製窓がヒントに 公設試験場を退職し起業 飯田社長は、もともと木材や森林の研 究者で、 ドイツなどのさまざまな先進的な 事例を学んできました。研究者ゆえに、 きちんとした理論と データの裏付けがあり、省エネルギーニーズの高まりにも いち早く対応しています。社長はとにかく仲間づくりが上 手な方です。そのため、社員の皆さんも明るく元気です。 これからも、信頼できる仲間とみんなで商売をしようとい うスタイルで事業を進めていかれることと思います。われ われも良きサポーターとして、声援を送り続けたいと思い ます。 中小企業基盤整備機構 北海道本部 (有)コアプランニング ●関東 ●関東 木・アルミ複合窓(外側:アルミ、内側:木) ことを目指して、建築家や工務店のネッ トワーク構築に強みを持つ㈲コアプラ ンニング (福岡県)、 マーケティング調査 を担当する㈱あきない総合研究所(東 京都)、 カラマツなど国産材を調達し、 集成材加工のノウハウを持つ下川町 森林組合(下川町)、 スギなど国産材 の圧密化加工ノウハウを持つマイウッ ド・ツー㈱(愛知県)の4社と広域連携 し、19年2月、新連携事業の認定を受 けた。 国産木材の集成加工 建築家・工務店のネットワークの構築 ●東北 ●東北 木材の持つ断熱性や温かみのある質感は快適な室内環境において捨て がたいもの。飯田ウッドワークシステム㈱は、この点に着目し、耐候性に優 れたアルミと断熱性に優れた木材を組み合わせた窓や大型カーテンウォー ルを開発。高気密高断熱の建築技術が求められる寒冷地北海道ならではの 事業である。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 アルミと国産木材の組み合わせ 断熱性に優れた木製窓を開発 事業の概要 連携体の構成 北海道札幌市 代表取締役 飯田 信男 氏 11 株式会社 イワクラ 料補給の仕組みを構築している。 木質ペレットの販路拡大のため、地 元で開催されるエコフォーラムやビジ ネスエキスポなどの展示会に積極的 に参加するほか、 自社企画の「木質ペ レット利用促進セミナー」を札幌市で 毎年開催するなど、市場での認知度 を高める活動を行っている。 また、 コア 企業である同社が中心となって「日本 木質ペレット協会」を設立。後藤英夫 社長が副会長に就任し、全国での木 質ペレットの浸透、促進にも貢献してい る。 矢崎総業(株) 未利用木材集荷システムの開発 ●汎用型木質ペレットボイラー、 ●未利用木材の収集運搬 木質ペレットストーブの開発 システムの開発・運営 ●普及浸透 ●ペレット直焚の冷暖房 システムの開発 公共機関、 メーカー、新築住宅 等 事業の成果 地元小中学校に続々設置 累計売上2億円を達成 認定事業の売上高推移 今後の事業展開 一層の低価格化が課題 全国にPR展開 本事業を採算ベースに乗せるには、 木質ペレットの生産量の拡大と併せて コスト低減を進めることが不可欠だ。 一方で、 木質ペレットの需要を高めるこ とも重要であり、エコ意識の高い施設 などへのストーブやボイラーの導入促 進、簡易に納品できるシステムの普及 浸透やペレットの安定的供給、 さらに は、災害時の燃料としての活用、冷暖 房利用としての開発なども進めていき たいと考えている。 こうした点からも、今後は道内だけ でなく、全国的な情報発信も求められ る。 日本木質ペレット協会を中心に、 ペレットの規格を定めて、 トレーサビ リティーや品質保証を明確にし、FSC (森林管理協議会)の認定や農林規 格として取り扱いができるよう活動を続 けていくつもりだ。 経 営 者 の ひ と 言 バイオマスの地産地消を 70 24年度 20 0 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 ●沖縄 ●沖縄 30 新連携事業で生まれた成功事例を、 もっと世の中にアピールして、その成果 を利用する人たちの事業や生活が豊か になるような仕組みづくりが必要です。 木質ペレット事業は、将来性、社会性が ある事業分野ですので、バイオマスの地 産地消を目指して、他事業者と協力して 普及させていきたいと考えています。 ●九州 ●九州 単位:百万円 10 ●四国 ●四国 事業認定を受けて、展示会やセミ ナーなどで積極的にPRしたことや、地 元紙での情報発信などパブリシティー 戦略を駆使したことが実を結び、札幌 市内の小中学校20校以上にペレットス トーブが設置されている。 さらに、札幌 市では、その他の小学校60校にも設 置を計画し、順次設置が進んでいると いう。 また、札幌市円山動物園、苫小 牧市や新冠町の福祉施設、道内農場 のビニールハウス、工事現場事務所な どにも、ペレットストーブやペレットボイ ラーが導入されている。 認定事業期間の4年間では、 ストー ブ500台強が設置され、木質ペレット 販売は年間1,400トンを超え、関連事業 の累計売上では2億円を達成した。 こ うした実績の積み重ねによって、木質 ペレット事業は、同社の事業の柱となり つつあるところであり、 当該事業に関わ る社員の意識や意欲の向上にもつな がっているという。 なお、本事業を本格的に事業化す るには、各社の技術力や知識がフルに 生かされる必要がある。 このため、同 社を中心に定期的に連携体会議を開 催し議論を深めているところであり、結 果として、各社の強みが発揮される有 機的な連携体になっているという。 40 12 ●北海道仕様ペレット ストーブ開発、販売 木質ペレット燃焼機器の開発 金子農機(株) (埼玉県羽生市) (株)小橋建設(北海道苫小牧市) ※認定時の構成 50 木質ペレット利用促進セミナーの様子 サンポット(株) 中小企業基盤整備機構 北海道本部 プロジェクトマネージャー 吉本 平史 60 屋外に設置された空送式ペレット搬送装置 展示会における出展ブース ●調査・研究 ●物流戦略立案 ●中国 ●中国 木質ペレット配送装置 間伐材などの林地残材を工場へ 運搬するには、大きなコストが掛かる。 そこで、 コスト削減を図るため、伐採し た材木をそのまま製造工場に持ち込 むのではなく、連携体企業が改良した 重機を使い、山林現地で枝葉などの 不要部分を取り除いたうえで破砕して チップ化し、 ペレット製造工場に運び込 む方式を構築した。 また、木質チップを 圧縮・乾燥させるのは化石燃料ではな く、残材である木皮を燃料として利用 することで、 カーボンニュートラルを目指 している。 木質ペレットストーブの弱点は灯油 などに比べて、燃料の補給の方法が 確立されていないことにあった。 そのた め、 ストーブ設置建物の屋外に専用の タンクを設置し、空気の力でストーブに 木質ペレットを供給する自動供給装置 を開発した。 また、工場から木質ペレッ トを運搬する車両も開発するなど、燃 ●事業統括 ●未利用木材ペレットの原料化 ●安定したペレットの生産 ●木質ペレットの販路の拡大 (株)森のエネルギー研究所 ●近畿 ●近畿 事業名:未利用木材を活用した木質ペレット (バイオマス燃料)の開発・販路開拓 認定日:平成19年11月14日 林地で破砕しコスト低減 自動供給装置も開発 (株)イワクラ(北海道苫小牧市) ●北陸 ●北陸 ●社名 株式会社 イワクラ ●代表者 代表取締役 後藤 英夫 ●設立 大正2(1913)年6月 ●所在地 北海道苫小牧市晴海町23-1 ●資本金 2億円 ●従業員数 145名 ●売上高 109億2,500万円(平成23年3 月期) ●事業内容木材・木製品等の製造・加工・販 売 http://www.iwakura-corp.jp/ ●URL ●TEL 0144-55-6811 ●FAX 0144-55-7497 大正2年創業の木材関連事業の老 舗企業。創業当時は鉱山開発に伴う 森林の開拓や山林開発、管理業務を 主な事業としていた。住宅建築需要が 拡大した高度成長期には、製材業にも 手を広げ、木材の輸入も手掛けた。 し かし近年は、建築資材用や製紙原料 のパルプなど木材需要の低迷に加え、 世界的な森林環境保護の流れから輸 入木材の供給も減少、木材関連事業 が縮小傾向にある。 一方、国内の森林管理のために、国 産材の利用を促進する必要性は依然 として強く、間伐材に加え、小径木や 枝、伐根などの未利用木材を活用した バイオマス燃料の開発に着手した。新 たに乗り出したのはストーブ用の木質 ペレットの供給システムの確立と販路 開拓。木質ペレット燃焼機器を開発す る金子農機㈱(埼玉県)、未利用木材 の集荷システムを開発する㈱小橋建設 (苫小牧市)、木質ペレットの生産を行 う㈱イワクラの3社で連携体を組み、平 事業の展開 北海道立林産試験場 ●技術指導 ●技術評価 ●中部 ●中部 会社概要 国産材未利用材の利用促進へ 燃焼機器、集荷システムも 成19年11月に新連携事業として認定 された。 当事業は、苫小牧を代表する企業であ る同社が新規事業として全力でチャレン ジした、北海道らしく、今後のエコ社会に貢献しうる素晴ら しい事業です。認知度が低かった木質ペレットを、一般の 消費者に普及浸透させてきたことで、未利用木材の有効 活用や、配荷システム構築にもつながりました。札幌市内 の小中学校や公的動物園での導入も、木のぬくもりへの 回帰や、自然環境保護への期待につながっています。 木質ペレットの生産 ●関東 ●関東 事業の概要 コア企業 技術協力 ●東北 ●東北 間伐材や林地残材である未利用木材から、効率よく木質ペレット (バイオ マス燃料)を製造する技術を確立した。燃料の供給や流通の仕組みをシス テム化することで、木質ペレットの普及拡大を目指している。山林の保全・ 管理が進み、カーボンニュートラル(自然界の炭素の増減が発生しない循環 または状態)の実現に貢献することが期待されている。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 木質ペレットの販路開拓 地元の小中学校や公共施設で導入拡大 木質ペレットストーブ 連携体の構成 北海道苫小牧市 技術開発室長 中出 海 氏 13 南富良野町森林組合 ●林地残材、森林整備 マルマテクニカ(株) ●チップボイラーの提供 ※認定時の構成 灯油コストと同程度の価格で供給でき る。 しかし、 ピンチップは通常、60%程度 の水分を含んでおり、そのままでは燃 焼させることが難しい。実用化するに は水分が40%以下になるように乾燥さ せる必要があるが、乾燥に化石燃料 を使ってはコスト高となり、二酸化炭素 (CO 2 )の排出による環境への負荷も 高くなる。 そこで考案したのが、雪氷エ ネルギーによる乾燥技術だ。 冬場にためた雪山の中に空気を送 り込むことにより、空気中の水分を結露 させ、乾燥した空気を得る。その風を 木質チップが置かれたビニールハウス に送り込むことにより、 自然乾燥させる のである。 この方式であれば、適度に 乾燥させることができ、無駄な燃料を 使うことがない。 しかし、 この方式を確 立するための実証施設には大規模な ものが必要となった。そのため、北海 道庁の施策である「一村一炭素おと し」事業に応募、採択され、 この補助 金を活用して、雪氷エネルギー乾燥シ ステムの導入を進めることができた。 事業の成果 町全域での普及目指す 森林事業の活性化へ 南富良野町では現在、中学校やホ テルにピンチップ燃料を利用したボイ ラーが導入され、順調に稼働してい る。 また近々、小学校にも導入が予定 されており、南富良野町全域での普及 を目指している。 森林事業は、木材の価格や為替、 住宅建設戸数など、景気の変動に左 右されやすく、経営を安定化させるこ とが難しい。 ピンチップ燃料で、事業化 が進むことで収入源が確保できれば、 森林整備事業の推進に寄与すること ができる。 今後の事業展開 地産地消のモデルに 近隣市町村との連携も 認定事業の売上高推移 経 営 者 の ひ と 言 単位:百万円 地域間連携で広域対応も 80 70 60 50 30 23年度 20 22年度 21年度 バイオマス事業は、木質ペレットに加工し 広域での対応を考えると、コスト面や流通面 で課題が出てきます。まずは、地域内の地産 地消型事業で、連携組織間の利益の循環を 確立することがポイントではないかと考えて います。地域モデル事業として確立できれ ば、事業を水平展開して、地域間連携で広域 対応することも可能ではないでしょうか。 ●沖縄 ●沖縄 40 0 現在は、町内での残材利用のみを 目標としているが、 この事業が地産地 消的なモデルとして確立していけば、 近隣市町村との連携で、広域対応も 可能だと考えている。今後の木質バイ オマスボイラーの普及に伴う、燃料チッ プの需要量の増加に対応するために は、原料となる林地残材の回収効率 の向上が事業的課題となる。 そのため に必要となる大型機械の導入に掛か る費用などの課題を解決しながら、広 域な事業展開を進める予定である。 現在、木質バイオマス燃料事業の 発展的な展開として木質バイオマスエ ネルギーを利用したハウス栽培事業を 南富良野町と検討中であり、燃料チッ プの需要先は今後も広がっていくこと が想定される。本件事業は南富良野 町と同様な産業構造と風土を持った いわゆる中山間地域に普遍的なビジ ネスモデルとなることが期待できる。 ●九州 ●九州 14 ピンチップボイラー ●室温制御・燃焼技術 中小企業基盤整備機構 北海道本部 プロジェクトマネージャー 大熊 一精 10 ピンチップ自然乾燥システム 南富良野町森林組合 ●四国 ●四国 林地残材は、丸太を切り出す際に 払い落とされた枝などで、 これまでは 破砕したチップの出荷用途が家畜の 敷きわらなどに限られていた。本事業 は、 この林地残材を破砕して「ピンチッ プ(木質チップの中では切削タイプの 角チップではなく、剪断・破砕タイプのも の)」にし、それを燃料とした新しい熱 供給システムであり、 まずは南富良野 町内の施設への導入を目指した。 一般に燃料として使われることの 多い木質ペレットは燃料にするために 廃材や幹材などをおがくずに1次加工 し、水分調整の後、圧縮成形するもの であり、 ピンチップは破砕・選別工程の みで製品化できる。木質ペレットに加 工するのに比べて、半分以下のコスト で済むため、熱量換算で計算しても、 (株)ホッコウ ●中国 ●中国 南富良野町の森林風景 雪氷エネルギーの乾燥技術 灯油と同程度のコストに ピンチップ製造・販売 ●近畿 ●近畿 事業名:木質チップ燃料による熱供給シス テムの開発 認定日:平成21年2月20日 事業の展開 食品工場、 大規模ハウス農家、 ホテル・旅館など 燃焼技術開発・販売 ●北陸 ●北陸 ●社名 南富良野町森林組合 ●代表者 代表理事組合長 新田 信一 ●設立 昭和27(1952)年3月 ●所在地 北海道空知郡南富良野町字幾寅 ●出資金 5,205万円 ●従業員数 10名 ●売上高 2億2,988万円(平成24年3月 期) ●事業内容南富良野町全域の山林管理、 残材 回収、 ピンチップの製造・販売 ●TEL 0167-52-2130 ●FAX 0167-52-2340 南富良野町は90%が森林に覆われ ており、 トドマツやエゾマツは主に建材 として、 カラマツは梱包材やパレット、集 成材(ラミナー) の原料としてそれぞれ 利用されている。 しかし、円高や輸入 材の増加で国産材の需要が低迷し、 原木の流通に勢いがない状況が続 いており、林業の収入源が縮小する 一方で、山林の管理コストは増加し、 林業経営が圧迫されているのが現状 だ。 こうした中で、南富良野町森林組 合は、町内の林地に数多くありながら 何も価値を持たなかった残材を新た な経営資源として捉え、バイオマス燃 料としての活用を模索していた。 また、 南富良野町においても、 平成13年には 「YAMA ぴか大作戦構想」 という取 り組みで、林業や山林に輝きを取り戻 すとともに、森林から木質バイオマスエ ネルギーを得ることや、 それを利用した 事業展開を行うなどの計画が起案さ 中山間地域の 製材工場、 森林組合 ●中部 ●中部 会社概要 新たな経営資源を模索 町の方針も後押し れ、 これが「地域新エネルギービジョン 策定委員会」において引き続き検討さ れた。 当委員会にビニールハウスを使った 大型温室の建設とボイラー設置に豊 富な実績がある㈱ホッコウも参加して おり、検討内容の具現化を目指し、連 携して、木質チップ燃料による新たな 熱供給システムの開発を目的とした農 商工連携事業に取り組み、21年2月に 認定された。 代表者 ●関東 ●関東 事業の概要 本事業は、このままではいわゆる中山 間地は生き残れないのではないか?との 強い危機意識から生まれました。冬には氷点下30度まで 気温が下がることもある南富良野町において、林地残材 を暖房用燃料として活用することは、CO 2排出量の大幅 削減のみならず、低コストでのハウス栽培にもつながって いく可能性があります。今後、ハウス栽培が本格化してい き、地域における新たな産業・雇用が創出されることを期 待しています。 ●東北 ●東北 林業や山林に輝きを取り戻そうと、それまで価値を持たなかった残材を 新たな経営資源として活用する、バイオマス事業を展開する。雪氷エネル ギーという環境への負荷がない技術で自然乾燥させることで燃料チップの 含水率の調整にもめどが立った。地産地消モデルとして確立し、広域な事 業展開を目指す。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 低コストの木質チップ燃料供給システム 地産地消型のバイオマス事業を展開 林地残材 連携体の構成 北海道南富良野町 参事 池部 英明 氏 20年度 15 加美電子工業 株式会社 連携体の構成 宮城県加美町 コア企業 加美電子工業(株) (宮城県加美郡) (独)産業技術総合研究所 ●高圧ガス装置基本設計 ●情報提供・製作支援 ●技術及び特許提供 ●事業全体の企画統括 ●装置設計製作、塗装技術 ●装置販売 (株)岩沼精工 (宮城県岩沼市) ●装置の配置設計 ●装置の加工、組立 ●ガンの開発、設計、製作 宮城県産業技術総合センター ●解析機器の利用支援 ●塗膜解析技術支援 ●ガンの加工法開発支援 高圧ガス装置設計、検査 (株)コスモテック (東京都中央区) ●高圧ガスに関する技術、検査 中小企業基盤整備機構 東北本部 プロジェクトマネージャー 渡辺 勝實 ※認定時の構成 事業の概要 会社概要 連携によって実現した新技術 VOC排出量とコストを削減 認定事業の売上高推移 15 5 16 23年度 0 経 営 者 の ひ と 言 22年度 ユニークな発想を自社だけでは実現できないと決 め付けず、諦めないで中小企業が自ら世の中の役に 立てる事業を行う意思を持ち、主体となって動くこと が事業化へつながると感じます。技術はあっても1社 では事業化までこぎ着けるのがかなり難しいので、お 互いに強い機能を持ち寄り、事業化の連携は積極的 に行うべきです。自ら努力するとともに、事業認定ま で敷居が高いと思っても迷わずに勇気を持って踏み 出せば、中小機構は親切に支援してくれます。 ●沖縄 ●沖縄 10 超臨界CO2塗装装置(混合部) いまのところ、 この塗装法は、携帯電 話や自動車の内装品など小型の樹脂 部品の塗装にとどまっているが、今後 は自動車、家電などの中・大型製品や 船舶、飛行機、橋梁、 さらには一般住 宅の外壁など、樹脂以外の分野でも 利用されるものと期待されている。 今後は顧客満足度の向上に努め るとともに、精密加工品のノズルを安 価に製造する工夫などを重ねて販売 価格を下げる一方、 自動車車体や家 電製品、家具など多様な製品の塗装 にも対応した装置を開発し、各業界に 積極的に売り込みを図っていく計画。 有害化学物質への社会的関心や規 制が強まる中、VOCを削減し、エネル ギー消費も少ない超臨界CO2塗装へ の注目度は、 ますます高まると考えてい る。 積極的な連携に踏み出す勇気 20 液化炭酸ガスボンベ 震災で事業にブレーキがかかった のは、大きな痛手だったが、23年10月 には車載用小型プラスチック部品メー カーへの販売が実現した。 営業は塗装技術関連の展示会や 中小企業総合展などへの出展、 イン ターネットでの情報発信を中心に行っ ているが、ユーザーの口コミや新連携 の認定が報道されることによって、 自分 たちで個別訪問して営業するのに比 べ、知名度アップにははるかに効果が あったという。 国が行う 「第3回ものづくり日本大 賞」特別賞の受賞やテレビ局の取材、 地元紙の記事掲載などもあり、現在、 大 手の自動 車メーカーや電 気 機 器 メーカー、機械メーカーなどで導入を 検討している企業が5社あり、 ほか多く の問い合わせが来ている。 ●九州 ●九州 単位:百万円 中・大型製品への展開 顧客満足度の向上 ●四国 ●四国 超臨界CO2塗装装置は、VOC排出 量削減に加え、高い塗膜品質(意匠 性・均一性・密着性) とランニングコスト 削減、他の低VOC技術に比べ付帯設 備が少ないなど多くのメリットを持って いる。 それだけに、 開発は難航した。 超臨界CO2と塗料を混合するタイミ ングがその一つ。 「超臨界CO 2と塗料 成約、引き合い続々 受賞、テレビ局の取材も ●中国 ●中国 事業名:希釈シンナーを大幅に削減した超臨 界二酸化炭素塗装技術による塗装装置の製 作、 販売の事業化 認定日:平成23年2月8日 事業の展開 今後の事業展開 ●近畿 ●近畿 加美電子工業 株式会社 代表取締役 早坂 裕 昭和45(1970)年6月 宮城県加美郡加美町字下野目雷 北6 ●資本金 4,800万円 ●従業員数 126名 ●売上高 33億2,700万円(平成23年12 月期) ●事業内容電子部品・機械部品・光学部品な どの表面処理加工処理 ●URL http://www.kamidenshi. com/ 0229-67-3110 ●TEL 0229-67-6930 ●FAX 昭和45年に創立し、 これまで主に大 企業向けに電子、機械、光学部品など の表面処理加工を中心に一貫生産を 行ってきた。近年、環境対策が社会的 ニーズとなる中、平成18年、大気汚染 防止法のVOC(揮発性有機化合物) 排出規制が転機になった。 加美電子工業㈱は、15年から(独)産 業技術総合研究所(産総研)の共同 研究に参加しており、そこで出合った 超臨界二酸化炭素(超臨界CO 2 )が 新事業の門を開いた。超臨界(流体) とは、物質がある一定の圧力と温度下 で、気体と液体両方の特性を持つ特 殊な状態のこと。超臨界CO2の魅力の 一つに高い溶解力がある。 研究開発の末、向かった用途先は スプレー塗装。従来のスプレー塗装で は、希釈溶剤を大量に使用している。 これを超臨界CO 2に代替すると希釈 溶剤排出量を大幅に低減することが 事業の成果 ●北陸 ●北陸 ●社名 ●代表者 ●設立 ●所在地 VOC排出規制が転機に 従来品と同等の仕上げ品質 は、混合器内で一気に混ぜ合わせな ければいけない。混合しつつ、 スプレー ガンに送り込み噴霧する。 この一連の プロセスを、混合器内の圧力を落とさ ず連続的にやる必要があった」 (早坂 裕社長)。 ガンも従来の口径では大き 過ぎて、塗料が一気に噴き出してしま う。高圧噴霧ノズルの開発や運転条 件の検証を重ね、 ようやく安定して塗 れるようになった。 「今回の連携体で 装置全体や塗装ガンなどの材質、形 状、 うまくそれらの問題を解決し、塗装 設備の販売まで達成することができた」 (早坂社長) しかし、認定から1カ月後、東日本大 震災が発生。同社の設備被害は軽微 だったものの、岩沼精工が津波被害に 遭い業務が完全にストップした。それ でも、岩沼精工の業務再開に向けた 努力および各支援のもとに、3カ月後に は再稼働を果たした。その後、事業は 短期間で実用化にこぎ着けるまでにな る。 ●中部 ●中部 超臨界CO2塗装装置(制御盤) と塗装ロボット 分かった。塗膜均一性、平滑性、鮮映 性などもこれまでと同等の仕上げ品質 を確保した。 23年2月、産総研や宮城県産業技 術総合センターの協力を受けながら、 制御技術に強さを持つ装置の製造 や、超精密加工を求められる塗装ガン の設計製造ノウハウを有する㈱岩沼 精工(岩沼市)、超臨界技術を活用す る高圧ガス装置設計や検査などを行 う㈱コスモテック (東京都) と連携、超 臨界CO 2塗装装置の事業化を目的と し、 新連携事業に認定された。 ●関東 ●関東 従来の主要な塗装方法である有機溶剤系塗料によるスプレー塗装で、大 量に使用される希釈溶剤を少量の超臨界二酸化炭素に替えて塗装の低粘 性化を図り、これまでと変わらない仕上げ品質を保持したまま、希釈溶剤排 出量を大幅に低減させる装置を開発した。 装置製造 塗装ガン設計製造 事業統括・開発・製造・販売 ●東北 ●東北 社長子息が開発部長としてリーダー シップを発揮されています。この開発体制 を維持しつつ、技術開発としては、他の新連携認定事業者 の塗装ガンの機構や精度などと連携して、精度向上、コス トダウンに結び付けていただけたらと思います。 ●北海道 ●北海道 新しい超臨界二酸化炭素塗装装置を開発 希釈溶剤排出量を大幅削減 連携体 支援者の視点 代表取締役 早坂 裕 氏 17 株式会社 モス山形 会社概要 認定事業により開発した商品は、高 強度発泡スチロールとコケ植物を一 体化して軽量化を実現した屋上・屋根 用緑化資材の「コケボード」、 および保 水力と耐久性に優れた不織布マットと コケ植物を大型ミシンで縫製すること により最大幅1メートル、長さ30メートル まで製造できるようになった壁面緑化 資材としても使用可能な「コケマット」 である (従来は1メートル四方までの規 格しか製造できなかった)。 この商品により、重量制限のある工 場のトタン屋根などへの設置や、施工 コストの低減などの課題を解決した。 また、 コケの栽培には遊休農地を活 用しているが「高齢者でも十分に可能 な軽作業で、稲作よりも収入が大きい ので、遊休農地の解消に役立ち、地域 の活性化にも貢献している」 (山本正 幸社長) という。 こうした取り組みは農 業振興の観点から、県の行政に高く評 価され、各地域の農業委員会や認定 (東京都港区) ●コケ植物による屋上緑化ノウハウ ●施工方法の開発能力 認知度・信頼性のアップ 新連携で販路拡大に成功 「認定によって事業の認知度や信 頼性が高まり、 県や市に事業の重要性 を理解してもらえたということが最大の 成果だ」。山本社長は事業認定の成 果を、 こう話している。中小機構からは 事業課題に関するさまざまなアドバイ スや、販路開拓のための「中小企業総 合展」をはじめとした各種展示会への 出展支援を受けた。 また「農林水産省 からの県への出向者を通じて、関係者 の見学が増え、新事業展開を検討し ている大手メーカーも興味を示し、来 社する機会が増えた」 ともいう。 コケ緑化事業に実績のある企業と 地域を越えた広域な連携をしたことに より、県内を中心に東京や大阪方面へ 事業化支援 山形県中小企業団体中央会 (山形県山形市) ●事業化支援能力 ●組織運営指導能力 今後の事業展開 ネットワークと事業の拡大 新たな事業展開を模索 新連携認定で5年間の支援を受け ることで、展示会への出展機会の拡 大やいろいろな人たちと知り合うことも でき、 ネットワークが広がった。企業との マッチングもでき、売り上げ増と雇用拡 大につながった。今後、 コケ生産に新 規参入を希望する農業者も増加する ものと思われ、そうした農業者との連 携も重要で、 コケによる緑化事業のさ らなる普及と新たな事業展開を模索 している。 23年度 22年度 50 21年度 20年度 19年度 ●沖縄 ●沖縄 100 国の認定を受けることは重要であり、必ずプラ スになると思います。経営は積極的に打って出る ことが重要であり、公的制度をうまく利用すべき です。中小機構や経済産業局に相談すれば親切 にアドバイスをしてくれます。国の制度を利用す るのは難しいというイメージがありますが、申請 方法に関しても中小機構からいろいろなアドバ イスを受けられるので、制度は積極的に活用す べきです。 ●九州 ●九州 制度は積極的に活用を 150 0 の販路拡大にも成功した。震災の影 響で多少落ち込んだものの、認知度 の高まりとともに売り上げは上昇傾向 にある。 また事業の重要性が認められ 「アグリビジネス投資育成㈱(日本政 策金融公庫とJAグループの共同出資 会社)からの投資も得られた」 という。 経 営 者 の ひ と 言 200 18 (東京都港区) ●無潅水薄層屋上・壁面緑化システムの企画・設計・ 販売力 施工法開発 (有)アースグリーン 事業の成果 250 強力な営業ツールとなる見本市出展ブース (静岡県袋井市) ●折板屋根コケ緑化施工ノウハウ、販売力 ●緑化用取付金具の開発及び製作ノウハウ 農業者の会合で、講演し、啓蒙活動も 行うようになった。 単位:百万円 コケの吹き付け施工の様子 販売 (株)国際環境デザイン協会 ※認定時の構成 認定事業の売上高推移 JR東日本四ツ谷駅の屋根緑化 施工法開発・販売 谷口建材(株) ●四国 ●四国 持ち前の技術力で課題解決 遊休農地解消で地域にも貢献 (福岡県前原市) ●コケ植物による屋上緑化及び壁面緑化ノウハウ、 販売企画力 ●中国 ●中国 事業の展開 (山形県山形市) ●緑化用コケ生産ノウハウ、 コケ製品開発ノウハウ ●コケボード、 コケマット等緑化資材の生産能力 ●近畿 ●近畿 事業名:コケ植物による屋根・壁面等の簡易 緑化システムの開発・事業化 認定日:平成19年12月18日 販売・企画・施工 (株)ソリッドドットコム ●北陸 ●北陸 ●社名 株式会社 モス山形 ●代表者 代表取締役 山本 正幸 ●設立 平成3(1991)年5月 ●所在地 山形県山形市中沼43-5 ●資本金 3,250万円 ●従業員数 10名(他、パート10名) ●売上高 1億2,000万円(平成24年4月 期) ●事業内容緑化資材(コケ植物)の栽培・屋 上緑化・壁面緑化、コケ吹付工 法・コケ庭園 http://www.mos-yamagata. ●URL com/ ●TEL 023-666-6605 ●FAX 023-666-6135 平成3年5月に創業、間伐材を利用 して、丸太を加工したログハウスなどを つくる事業を展開していた。 その後、環 境保全の意識の高まりに着目し、 スナ ゴケやハイゴケなどコケ植物による緑 化事業を手掛けた。 地球温暖化、 ヒートアイランド現象の 深刻化などで建物の屋上や壁面の緑 化に関心が高まったが、 さまざまな要 因で進んでいない。新築される大型ビ ルなどには芝やセダムが緑化に使わ れることが多いが、耐重量性や経済 効率、外来種であることから生態系へ の影響などの問題を抱えているのが 実態。 このため一般家庭はもちろん、 既存の工場の屋根や壁面の緑化は 進んでおらず、施工コストの低減や緑 化資材の軽量化など、従来にないタイ プの緑化システムが求められていた。 中小企業基盤整備機構 東北本部 プロジェクトマネージャー 佐藤 博己 コケの生産・製品開発 (株)モス山形 ●中部 ●中部 軽く扱いやすいコケを活用 多様な用途で普及を目指す そこで着目したのが乾燥に強く、雨 水だけで生育するコケだ。根を生やす ための土壌や肥料も不要で管理に手 が掛からず、安価で施工方法が簡単 なため、現場の施工コストも低減する という利点がある。 コケを利用した緑化システムの開発 構想は、 ある程度まで進んでいたが、 中小機構のプロジェクトマネージャー から新連携事業の紹介を受けたことを きっかけに事業化に向けて認定申請 への挑戦を決意。施工法の開発や販 売などを担ってもらうため、 ㈱ソリッドドッ トコム (福岡県)、谷口建材㈱(静岡 県)、㈲アースグリーン (東京都)、㈱国 際環境デザイン協会(東京都) などの コケ緑化事業に実績を持つ企業と連 携体をつくり、19年12月に事業認定さ れた。 山本社長の環境事業への取り組みは、 10年ほど前から注目していました。多くの 事業者が参入を試みるものの事業化に至らず挫折する 中、山本社長の熱意と実行力の継続には驚嘆させられる ものがありました。 本事業は多くの賛同者による協力を得て推進されてい る事業であり、 また休耕農地活用など農業振興の重要な モデルとしても社会的意義は大きく、今後も事業の成長 へ向けた支援を継続していきたいと考えています。 ●関東 ●関東 事業の概要 コア企業 ●東北 ●東北 土壌がなくても育つコケの特性を活用し、建物や屋上を低コストで緑化 するシステムを開発した。省エネ対策や緑地面積の確保に貢献できるた め、工場や倉庫、コンビニなどの建築物分野がターゲット。従来なかったコ ケの大量栽培技術を開発し、展示会などに出展して販路の拡大を図ってい る。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 コケを使った簡易緑化システムを開発 施工・メンテナンスの低コスト化を実現 折板屋根ユニット工法 連携体の構成 山形県山形市 代表取締役 山本 正幸 氏 19 株式会社 フミン フミンコーティングは、 ガラス面で紫 外線の約9割や、赤外線を7割カットす ることで、太陽光による室温上昇を約2 ~5度抑える (体感的には約10度)。夏 季の冷房費を節約する一方、 ヒートア イランド現象の発生を抑制する効果が あり、冬季は室内の熱をガラスが吸収 して熱の損失と結露を抑えるという。 認定後は中小機構の支援を得て中 小企業総合展などに出展。それがマ レーシアの閣僚の目に留まったり、 ドイ ツの展示会への出展要請を受けたり と、海外からのオファーが急増した。海 外に営業に飛び回る中、 シンガポール で大手ホテルの設計担当トップと商談 していたとき、東日本大震災に見舞わ れた。その後風評被害が続き、福島と いうだけで通関もできずに大打撃を受 けた。売り上げも大きく目減りした。 事業の成果 年間18%の節電効果 自動車にも展開へ しかし状況は好転しつつある。世 界的にビルガラスからの反射熱による ヒートアイランド問題や遮熱フィルムを 張ったガラスの割れ問題などが相次 いでおり、 フミンコーティングに対する 需要はなお大きいと期待される。 これまでの施工実績のうち、国立新 美術館のデータでは年間で18%の節 電効果の報告を受けた。暑い地域が ターゲットであり、沖縄のホテルや米軍 基地、 アブダビ、 ドバイのビルも受注し た。 中小機構からの支援は「今まで気 付けないことに気付けたという点が大 きな刺激になった」 という。 プロジェクト マネージャーのアドバイスに基づき出 展した展示会では自動車市場に参入 するきっかけが生まれた。軽量化が求 められる電気自動車はガラス部分をポ リカーボネート (プラスチックの一種) に 移行する流れがある。それにもフミン コーティングが有効と分かり、今では専 門の代理店と組み営業展開が行われ ている。 認定事業の売上高推移 今後は、海外展開にさらに力を入れ る方針だ。サウジアラビアでのプレゼン テーションが地元新聞で大きく紹介さ れた。石油産出国が省エネ技術を探 求しており、財閥企業との合弁会社の 話が進んでいる。 シンガポールでは、 ビ ルからの反射熱防止のために反射率 の規制があり、 フミンコーティングは有 効な手段として期待されているという。 23年12月、南アフリカ・ダーバンで開 催された「国連気候変動枠組み条約 第17回締約国会議(COP17)」の会場 では、 日本の省エネ技術コーナーで紹 介され、注目された。米国でも特許を取 得し、化学会社からも提携の申し入れ が来ているほか、 シンガポール、 マレー シア、 インドネシア、 オーストラリアで特許 を取得し、中国、香港、欧州、 インド、韓 国、 台湾でも特許を申請中だ。 24年度 23年度 20 22年度 ●沖縄 ●沖縄 40 中小機構では海外展開の支援も行ってい るので、海外の企業と提携しながら進めてい くと、海外展開が比較的容易になります。日 本企業の海外進出の理由の一つは「安い人 件費」でコストダウンを求めていますが、 「一 緒にやりましょう」という姿勢で話せば、信頼 感が増し、仲よく事業しましょうといったよう にフレンドリーに話し合いができます。 ●九州 ●九州 60 20 海外展開も視野 中東など赤道直下の国々 海外展開は現地パートナーと 80 0 今後の事業展開 経 営 者 の ひ と 言 100 サウジアラビア・ジッダでのプレゼンテーション ●ガラスの洗浄技術の開発 ●洗浄資材の供給 ※認定時の構成 120 サウジアラビア・リヤドでのプレゼンテーション ●ガラスに遮熱剤をコーティングする 技術の開発 ●コーティング資材の販売 ●施工管理 (秋田県横手市) 中小企業基盤整備機構 東北本部 プロジェクトマネージャー 渡辺 勝實 単位:百万円 ㈱フミン社屋 サイチ工業(株) ●四国 ●四国 展示会出展で効果 震災で風評被害も (福島県福島市) ●中国 ●中国 事業の展開 (株)フミン ●近畿 ●近畿 事業名:省エネルギーガラスコーティングの施 工と事業化支援 認定日:平成21年7月10日 設計、開発 ●北陸 ●北陸 ●社名 株式会社 フミン ●代表者 代表取締役 八木澤 勝夫 ●設立 昭和53(1978)年11月 ●所在地 福島県福島市郷野目字上21 ●資本金 1,000万円 ●従業員数 4名 ●売上高 3,900万円(平成24年9月期) ●事業内容赤外線・紫外線カット、ガラスコー ティング事業 http://www.fumin.jp/ ●URL ●TEL 024-544-0223 ●FAX 024-545-0620 医薬品の卸売業として創業したが、 平成12年から、海洋の珪藻土地層か ら採取した抗菌作用があり、不純物 質を吸着する「フミン質」を利用した、 土壌改良剤などの開発・販売の新事 業に着手した。そうした中、八木澤勝 夫社長は、 コピー機がタッチパネルで、 指先の熱を感知して操作できるように なっていることに興味を持ち、 それを窓 ガラスに応用すれば熱を吸収してくれ るのではないかと考えた。最近の携帯 電話が長時間使用しても熱を持たな いのは、半導体基板に遮熱コーティン グが施され、 熱を吸収しているためだ。 調べると、 これらのコーティング剤に は従来「三酸化アンチモン (ATO)」 が使われているが、 これは発がん性の 疑いがある。一方、 「五酸化アンチモン (APO)」であれば発がん性の疑い がないといわれている。 「安全な塗料と 塗装方法を開発すれば、事業になると 技術開発・施工管理 ●中部 ●中部 会社概要 安全な塗料を発明 スプレーコーティングを開発 直感した」 と八木澤社長。 APOを主要成分としたコーティング 剤の開発に成功する一方、 これをスプ レーで塗布すればビルの窓ガラス全 体もコーティングできるはずと考え、噴 霧式のスプレーガンの開発も手掛け、 19年1月に「フミンコーティング」 として、 塗料と塗膜を形成する技術全体の特 許を取得した。 さらに、 ガラスへのコーティングは塗 布前の洗浄の良否が最終品質に大き く影響する。そこで国の戦略的基盤 技術高度化支援事業の認定を受けガ ラスの洗浄研磨技術の開発を行って いた秋田県のサイチ工業㈱と連携し、 21年7月、薄膜で透明性の高いコー ティング技術を実現し、 この事業化を 目的とした新連携事業として認定され た。 コア企業 ●関東 ●関東 事業の概要 八木澤社長は、幅広い技術的見地を 持っている上に、物事の観察力と気付きが 鋭い方です。時には驚かされることもありますが、触れ合っ た多くの方からは、思考面で、非常に参考になった、 といっ た感想が聞かれます。柔らかい人柄も相まって、どこの国 にでも入っていき、人脈をつくっていかれる姿は、言語に関 係なく、国際人です。 ●東北 ●東北 赤外線や紫外線を吸収・カットするガラスコーティング剤とコーティング 技術を開発した。太陽光による室内の温度上昇防止、結露防止による抗 菌、ガラスの反射によるヒートアイランド現象の抑制、紫外線カットによる 害虫対策などさまざまな効果を持つ。確かな効果と、独自ノウハウによる施 工方法によって国内のみならず、海外においても大きな評価を得ている。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 環境に優しいガラスコーティング 大きな効果で環境対応 フミンコーティングされた国立新美術館の壁面ガ ラス 連携体の構成 福島県福島市 代表取締役 八木澤 勝夫 氏 21年度 21 筑波精工 株式会社 次世代分野に販路拡大 大手企業との関係づくり ●システム設計 ●電極設計 ●製品組立及び検査 C大学工学系 研究科教授 電極製作 コントローラー製造 豊和産業(株) テクノデバイス(株) ●電極製作 ●制御基板回路 の設計、製作 中小企業基盤整備機構 関東本部 チーフアドバイザー 小松原 健夫 ※認定時の構成 各種展示会や認定事業者交流会 への中小機構の出展支援を受け、出 展したことで大手商社とのマッチング の機会があり、 これをきっかけに商社と の連携による事業展開も図られた。 ま た、新事業活動促進支援補助金を活 用した製品開発のほかに、 プロジェクト マネージャーの紹介が国内ファンドか らの出資につながった。 事業の成果 国内外の液晶パネルで実績 半導体製造への展開も好調 静電チャックの売り上げは事業認定 を受けた後順調に伸び、21年には、液 晶ディスプレーパネル用のチャックを中 心に、 2億円を超えた。 液晶ディスプレーパネルの液晶封入 工程や有機ELの蒸着工程でも活用さ れるようになり、特に液晶封入工程で は日本、台湾、韓国と中国の量産ライン に採用されるまでになった。 静電チャックを応用して開発したサ ポーターは、半導体の薄型ウエハーの 加工や表面処理に使う冶具として販 売を伸ばしているという。 今後の事業展開 海外で活況な分野に着目 広範囲での応用を目指す 今 後 、特に成 長 が 見 込めるのは LEDの製造過程。 ドイツにも静電チャッ クメーカーがあるが、そこの製品は半 導体ウエハー用のみ。筑波精工のもの は導体、 半導体、 絶縁体いずれの材料 も吸着して、熱にも強く、液体の中に入 れても吸着力は落ちない。だから、広 範囲の分野に応用することができる。 静電チャックは、例えば重ねた紙に 吸着させた場合、 吸着するのは接触し ている1枚のみ。 この性質を利用して、 印刷機やキャッシュディスペンサーな どの送出ベルトへの応用も目指してい る。 「事業認定により得た人脈は、海外 のOEM(相手先ブランドによる生産) メーカーへの糸口にもなった。海外でも 日本同様に製造業が不振な面はある が、例えば携帯電話のタッチパネル製 造は活気があり、 日本ほど落ち込んで いない部分もある。LED関連でも、海 外の方が新商品への設備投資が盛 んだ。中小企業が生き残るためには、 やはり海外への進出が不可欠だ」 と傅 社長は話す。 用途が幅広い製品だけに、今後は 新製品の研究開発から、成長が予想 されるマーケットを見定めて販路を拡 大することに主眼を移していく。 ●中国 ●中国 ●四国 ●四国 認定事業の売上高推移 経 営 者 の ひ と 言 単位:百万円 人脈による情報を生かせ 200 150 50 0 17年度 18年度 19年度 20年度 22年度 21年度 23年度 ●沖縄 ●沖縄 100 新連携認定後に申請した補助金は助 かりましたが、それ以上に人脈を拡大す るための専門家のサポートが役に立ちま した。情報が増えて、経営資源をどこに集 中させるかの判断がしやすくなりました。 また、中小機構の、専門家派遣事業や海 外展開を支援する仕組みなどを有効に 活用しました。製造業の先輩たちに相談 しながら、 ここまで来られたのは、事業認 定が生きていると思います。 ●九州 ●九州 同事業は、液晶ディスプレーパネル などの従来の製造ラインを、静電チャッ クを利用したものに入れ替えるのでは なく、 これから新規製造あるいは増産 が見込まれる製品の製造ラインに展開 していく形で販路を開いた。 「今後より大型化と薄型化が進んで いく液晶ディスプレーがいい例だが、 その他に用途が見込まれるのが、有 機EL、半導体ウエハー、LED」 (傅社 長) という。販路を広げるためには、次 世代の商品が生まれるジャンルや、そ こでのニーズを正確に把握する必要 があった。 「次に何が出てくるかという情報の 収集と判断が必要になってくるが、大 手企業に話を持っていっても、中小企 業だと商品の良さを理解してもらうとい う部分でのハードルが高い状況にあっ た。そこで、大手メーカーとの人脈づく りのサポートを受けられたことが非常 に役立った」 (傅社長)。情報が多く入 るようになったことで、 その後の事業展 開を判断するための情報も増えたとい う。 静電チャックの開発・製造 技術連携(支援者) 大型液晶ディスプ レーパネル、半導体 製造装置メーカー ●近畿 ●近畿 22 事業の展開 筑波精工(株) ●北陸 ●北陸 筑波精工㈱本社 テレビなどの液晶ディスプレーパネ ルや半導体ウエハーの搬送や加工に は従来、金属製のメカチャックや真空 吸着のバキュームチャックと呼ばれるも のが用いられてきた。 しかし、 テレビの 大型化でたわみが大きくなると、従来 の方式では困難になってきた。 このような背景の中、筑波精工㈱で は、 プレートに低電圧をかけるだけで 1平方センチ当たり600グラムという強 力な吸着力を半永久的に持つ静電 チャックを開発した。 従来ある±3.0キロボルト以上の高電 圧をかける静電チャックはすでに他社 が開発していたが、真空環境下では 放電が起こる可能性が高い。 しかし、 開発した静電チャックは0.7~1.2キロボ ルトで高吸着力を実現するとともに、逆 極性の電圧をかけることで、吸着した パネルをチャックから離脱し、静電気は 全く残らないという特長を持つ。 同社の静電チャックは、傅寶莱社長 の東京大学大学院時代からの研究 テーマを原点としたが、事業化には幾 つかの壁があったので、他社との連携 で課題解決を目指した。電極の問題で は、 シート状電極の成形技術と量産化 するノウハウが必要だったため、豊和 産業㈱と連携した。電極コントローラー の問題では、低電圧対応型を独自開 市場 製品設計、製造 • A商社 • B商社 ●中部 ●中部 事業名:大型液晶ディスプレーパネル(LCD) ・ 薄型フィルム・半導体極薄ウエハー向け静電 チャックの事業化 認定日:平成18年2月27日 低電圧で高吸着力を発揮 連携で技術課題解決 発する必要があったが、制御基板回 路の設計技術を持つテクノデバイス㈱ と連携した。 こうして、3社で連携体を 構成し、平成18年2月に新連携事業と して認定された。 この事業は傅社長が学生時代に研究 を始めた技術を発展させ商品化した珍し いケースだと思います。全く新しい原理に基づく吸着技 術で、吸着する対象物を選ばず、低電圧で大きな吸着 力を持ち、従来の静電チャックでは考えられない水中で の吸着や、長期間の吸着維持など、今後大きく用途を 拡大し事業が成長することが期待できます。今後も、機 構のいろいろなメニューを活用して支援していきたいと 思います。 ●関東 ●関東 ●社名 筑波精工 株式会社 ●代表者 代表取締役 傅 寶莱 ●設立 昭和60(1985)年6月 ●所在地 栃木県河内郡上三川町 大字上蒲生字願成寺2168-10 ●資本金 3億1,782万5,000円 ●従業員数11名 ●売上高 1億7,231万円(平成21年3月 期) ●事業内容静電吸着関連システムの開発・ 製造・販売 http://www.tsukubaseiko.co.jp/ ●URL 0285-55-0081 ●TEL ●FAX 0285-55-0768 事業の概要 コア企業 販売 ●東北 ●東北 会社概要 液晶ディスプレーパネルなどを搬送・加工するには、パネルなどを保持す るチャックという装置が必要になるが、テレビ画面の大型化や薄型化など に伴い、より大面積のものを吸着、搬送する必要がある。しかし、従来の搬 送、保持方法であるメカチャック、バキュームチャックでは対象物に局所的 ストレスがかかり品質に影響するため、次世代の方法が検討されてきた。 筑波精工㈱は、独創的な静電チャックを開発し、このニーズに対応した。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 独創的な静電チャックを開発 大型化・薄型化する液晶パネルを搬送 薄型ウエハーの補強、固定が電気制御で可能に なるウエハーサポーター 連携体の構成 栃木県上三川町 代表取締役 傅 寶莱 氏 23 株式会社 黒沢レース 群馬県太田市 会社概要 経 営 者 の ひ と 言 製造業は開発が命 ●沖縄 ●沖縄 製造業は開発が命。開発は日々続けて いかなければなりません。地域資源活用 事業に取り組むことによって、事業の目標 を明確にすることができ、 またおのずとや らざるを得ない状況になります。さらに、 開発に必要な資金面などでの支援も得ら れます。この事業を利用することで、会社 の幅を広げることができると思います。 ●九州 ●九州 ストリングスカーテンは商業施設を メーンターゲットとする。そのため難燃 性が求められるが、輸入品には難燃 の糸を使った製品は少なかった。そこ で開発では難燃性の糸を使用、加え て純銀を編み込み美しさも兼ね備え た。 さらに地元企業と連携し手捺染に よるプリント、映像を投影させることが できるように立体的な作りのタイプな 「ストリングスカーテンの大きな波 はこれから」 と黒沢社長は先を見る。 「製造業者は、商品開発を毎日考え 続けなければいけない」と黒沢社長 が話す通り、 ストリングスカーテンの開 発は現在も続いている。蛍光色の糸を 代表取締役 黒沢 昇 氏 展示会 24 ●四国 ●四国 海外の展示会にも出展 協同組合を設立し一貫生産 世間への周知が重要 大手家具メーカーで販売 新しいものを作り続ける 遮熱のレースカーテンに挑戦 ●中国 ●中国 ㈱黒沢レース本社 事業の展開 事業の成果 使った製品や段染めをした製品など、 日々新しい着眼点で製品開発は進ん でいる。特に段染めは、縦方向は比較 的簡単に染めることができるが、染め るのが難しいといわれる横方向のグラ デーションにも挑戦しており、25年度中 の完成を目指している。 また、省エネが家庭にも浸透したこ とで、 「遮熱するためのカーテン」が求 められている。 日本の家庭の窓には、 常にレースカーテンが引かれている。 だからこそ、 レースカーテンでの遮熱 が必要なのだ。現在、同社では他社に 先駆けて遮熱の糸を使用したカーテン の開発に取り組んでいる。 「織物は4千年の歴史があるといわ れるが、柄を織り込んだレースカーテ ンのラッシェルレースは50年程度の歴 史しかない。 まだまだ可能性は無限に ある。だからこそ、 われわれは命懸け で一つのことを追求し、誠心誠意、 “も の” に当たるプロにならなければならな い」 (黒沢社長) ●近畿 ●近畿 事業名:テキスタイル内装材の開発販売プロ ジェクト 地域資源名:東毛地域の織物製品、 レース製 品 認定日:平成20年3月6日 ㈱黒沢レースは、昭和31年の創業 以来、 レースカーテンの開発・製造を続 けている。 「付加価値の高いゾーンで 開発を続け、 日本メーカーのトップラン ナーという自負はある」 (黒沢昇社長) と言い、高品質とオーダーに応える柔 軟性を武器に売り上げを着実に伸ば してきた。 しかし近年、窓装飾の変化 や住宅着工の減少、原材料の高騰な どにより業績が落ち込み、価格決定の 主導権を持つオリジナル商品の開発 が不可欠となった。 そうした中、付き合いのある業者か らストリングスカーテン開発を受注し た。 ストリングスカーテンはひも状のレー スが連なったもので、 ホテルや大型商 業施設などで新しい空間演出ができ る内装材として注目されていた。 しか し、ほとんど輸入品に頼っているため 納期までに時間がかかる上、高価格、 低 品 質の製 品が多いという問 題が ど、多種多様なストリングスカーテンを 「ファッション的に波もあるから、待つこ 開発し続けた。 とも大切だと思う。 まずは、世間に製品 新事業活動促進支援補助金を活 を知らしめることが重要」 用してフランクフルトの展示会にも出 23年夏には、 六本木ヒルズの「スカイ 展、海外に向けたPRも行った。 「元来、 アクアリウム」や日本橋架橋100周年記 生産したものは問屋を通して売ってい 念特別展の「アートアクアリウム展」で たため、直接、設計者や店舗の方に見 ストリングスカーテンが使用された。展 てもらう機会は少なかった。それだけ 示会出展を重ね、 カタログ製作により露 に、展示会で生の声を聞いたことが、 出度は着実に高まっている。その成果 開発に役立った」 という。 が24年に出た。国内の大手家具メー また、専門商社から「インテリア内装 カーが自社店舗での販売に乗りだした 材をトータルコーディネートするために、 のだ。ストリングスカーテンは元来、住 窓口を一本化してほしい」 との要望に 宅用のカーテンとしてヨーロッパで開発 応え、新たにハイテックス協同組合を されたもので、住宅での利用拡大は同 設立した。 これにより整理加工、縫製、 社が目標に掲げる一つだった。 立体倉庫によるデリバリーなどを行う 今後の事業展開 一貫生産、 一貫管理体制を整えた。 ●北陸 ●北陸 ●社名 株式会社 黒沢レース ●代表者 代表取締役 黒沢 昇 昭和31(1956)年9月 ●設立 ●所在地 群馬県太田市大原町1141 ●資本金 4,800万円 ●従業員数 50名 ●事業内容レースカーテン、産業資材の製 造 http://www.kurosawalace. ●URL co.jp/ ●TEL 0277-78-3111 0277-78-6697 ●FAX オリジナル商品で新たな販路 高品質なひも状カーテン ストリングスカーテン ●中部 ●中部 商業施設をメーンターゲットにしたストリングスカー テン あった。 東京のイベント会場でこのカーテン を目にした黒沢社長は「これならでき る」 と判断し、開発に着手した。 ストリン グスカーテンは、ひも状であるため熱 加工を施すのが難しく、温度管理に 緻密さが求められる。問題が出ると地 域の仲間に相談し、一つ一つ改善し た。そして、受注から半年後には、 オー ダーに合わせて1週間以内にデリバ リーできる体制を整えた。品質も格段 に向上させた。 この成功の後、 さらに大柄表現、産 地の手捺染(てなっせん)の展開、難 燃糸の使用、エコ商品化、金・銀糸の 編み込みなどを新たに目指し、平成20 年3月に地域資源活用事業として認定 を受けた。 中小企業基盤整備機構 関東本部 チーフアドバイザー 花畑 裕香 ●関東 ●関東 事業の概要 黒沢社長は、「製造業は開発が命」と おっしゃるように、常に商品を開発し、高品 質な商品に仕上げて提供されています。また、 レースカー テンという今までの固定観念をなくし、視点を変えた発想 で、機能性を重視したカーテンに空間デザインの概念を取 り入れ、幅広いニーズに対応されるなど、商品だけでなく 使用シーンの開発にまで取り組まれています。今後も幅広 い意味での「開発」に期待が高まります。 ●東北 ●東北 レース・織物製品など群馬県東毛地区の地域資源を生かし、ひも状のレー スが連なったストリングスカーテンを新たに開発した。従来は欧州からの輸 入品に頼っていたが、海外製品に比べ高品質で速やかな納品が実現できる 体制を構築し、さらに新たな染色などに挑戦している。 ●北海道 ●北海道 多種多様なストリングスカーテンを開発 新たな可能性求めてものづくり 支援者の視点 25 日本省力機械 株式会社 群馬県伊勢崎市 会社概要 専門家の助言で開発が加速 研究を重ね、理論が精緻化 群馬県産業 支援機構 北関東産官学 研究会 超音波発信機の製造 ロボット動作ソフト開発 (株)ソノテック 牧野オートメーション研究所 ●高出力超音波発信機の 開発と性能・信頼性評価 ●超音波発信機製造 ●ロボット動作ソフトウェアの 開発 中小企業基盤整備機構 関東本部 チーフアドバイザー 小松原 健夫 ※認定時の構成 派遣の支援を受けたことが大きな技 術革新につながった。 カッティングの理 論付けにより “切る” という行為を数値 化することで、炭素繊維を含む複合材 などの難削材を切る条件も分かってき た。 また、千葉工業大学、群馬県産業 支援機構、北関東産官学研究会など の支援を受けることで、事業が加速し た。 事業の成果 新機能搭載で事業が軌道に 加工・成形業界にも革新 リーマン・ショックによる日本経済への 打撃が経営を直撃し、設備投資業界 の売り上げは大きくダウンしたといわれ るが、同社は人員削減を断固として行 わないことを決断した。その理由を田 中章夫社長は「技術屋は育てるのに 10年かかる。10年かけて育てた人をリ ストラするわけにはいかない。今、 リスト ラしたら、 ここを乗り切っても次の一手 が打てなくなる」 と話す。人員削減の かわりに役員、社員の給料をそれぞれ カットした。 資金面での苦労は、 リーマン・ショッ ク時だけではない。認定後に初めて受 注した超音波トリム機の決算は赤字。 このまま改良を進め、 ビジネスとして発 展させるためにはさらに費用がかか る。超音波トリム機の開発を進めるべ きか、 ここで断念すべきか選択を余儀 なくされ、社員にも相談した。すると、社 員は「やりましょう」 と即座に断言したと いう。その結果、 自らの意思で開発を 進めた社員のモチベーションは非常に 高まり、新機能を搭載したハイブリッド 方式も開発。事業を徐々に軌道に乗 せた。 その後、超音波トリム機をプラスチッ ク成形品のバリ取りに応用することを 考え、超音波バリ取り機を開発。手作 業のバリ取りをなくし、 プラスチック成形 ではタブーだったバリを許容する省エ ネ成形で革新を起こしている。 また、超 音波トリム機は、特許の第三者格付け 機関IPB社から二つのAと一つのAマ イナスという高い技術評価を受け、超 音波バリ取り機も特許取得した。 今後の事業展開 世界で3,000億のマーケット 国内外のシェア拡大目指す 超 音 波トリム機 、超 音 波 バリ取り 機が活躍するマーケットは国内外で 3,000億程度といわれる。その巨大な マーケットで同社が占める割合は0.3% にすぎない。 さらにシェアを広げるため に、 まず標準機を製作し、広く世に知ら せることで量産効果を狙っている。 また、事業戦略としてライセンス販 売も進めている。 アジア各国、米国、 カ ナダ、 メキシコの7カ国でロイヤリティー 契約を行った。今後もヨーロッパを中心 に、積極的なロイヤリティー契約を結 ぶ予定だ。 経 営 者 の ひ と 言 双腕ロボットを用いた無人仕上げ機 別の角度から製品を見る ●九州 ●九州 ●沖縄 ●沖縄 認定を受けたからには、 「必ず成功す るんだ」という強い信念を持って事業を 行ってほしいと思います。世間に通用す る製品を作ることを意識し、制度を有効 に活用してもらいたい。特に、専門家の 派遣制度はこの事業ならではです。専 門家の意見を聞くことで、中小企業で はできない技術の深掘りが可能となり、 わが社の事業もさらに発展しました。 代表取締役 田中 章夫 氏 小型仕上げ機 26 ●四国 ●四国 事業認定を受け、2年目にはビジネス につなげることを目標として掲げたが、 実際、その目標通り受注に成功した。 超音波トリム機の開発には多額の費 用がかかる。企業の返済能力に新連 携プロジェクトの評価を加味した優遇 金利融資が受けられ、 この制度を使っ て融資を受けた。 また、新事業活動促 進支援補助金も活用し、技術の基盤 を確立したものの、 これだけで開発を 続けることは難しく、受注することで資 金が回り開発スピードを上げることを目 指した。 この連携事業に特化したのは 退路を断つ意味もあったという。 開発は苦労しながらも進んでいた が、中小機構から切断理論の専門家 ●多関節ロボットの開発・製造 ●刃物の高寿命化と切断性能 の総合評価 販路支援 事業化支援 ●中国 ●中国 日本省力機械㈱本社 事業の展開 日本省力機械(株) ●近畿 ●近畿 事業名:自動車内装材用超音波カッターの事 業化 認定日:平成17年9月29日 自動車の内装材であるカーペットや FRPなどの複合材料の切断には従 来、水流で切断するウォータートリムが 多く使われているが、 これには大きな 動力が必要なうえ、水や切りくずの処 理が難しく、 また、騒音が大きいなどの 欠点がある。 そこで、本事業では紙や繊維などの 切断に利用される超音波カッターに目 を付けた。 これであれば、 ウォータートリ ムの欠点の多くを解決できる。 しかし、 切断するのは複雑な3次元曲面を持ち 軟質な素材でありながらガラス繊維を 含み厚みもある素材である。 コストを抑 えつつ、 切断面にバリが出ず、 かつ省ス ペース設計を目指し改良を重ねた。 ロボット製作 ●北陸 ●北陸 ●社名 日本省力機械 株式会社 ●代表者 代表取締役 田中 章夫 ●設立 昭和58(1983)年12月 ●所在地 群馬県伊勢崎市福島町173 ●資本金 6,225万円 ●従業員数 22名 ●事業内容加工機械の開発・製造 http://www.n-s-k.co.jp ●URL ●TEL 0270-40-3111 0270-40-3112 ●FAX 業界初の技術を連携で実現 低コスト・高品質・省スペース ソフト開発支援 電気通信大学 ●中部 ●中部 複雑な3次元曲面を持ち軟質な素材でありながら ガラス繊維を含み厚みもある素材を切断する機械 開発には連携力がものをいった。 日 本省力機械㈱が多関節ロボットの開 発・製造、刃物の高寿命化と切断性向 上のため超音波発信器のスペック設 計と総合評価を行い、加えてカッター 用超音波発信機で高い技術を持つ ㈱ソノテックと共同して超音波発信機 の高出力化を行うとともに、牧野オート メーション研究所がロボット動作ソフト の開発などを受け持ち、商品の差別 化に取り組んだ。 同社は省力機械の専門会社でしたが、 田中社長がユーザーの工程の自動化に事 業の限界を感じて、他社にない独自のロボット搭載の超音 波カッターの開発に取り組みました。固有技術のロボット 制御と連携体や支援機関などの技術を融合して独自の商 品を開発しました。また、 この技術を基に開発したバリ取り 機は手作業のバリ取りをなくすとともに、プラスチック成形 ではタブーだった、バリを許容する省エネ成形は業界に革 新を起こしています。 ●関東 ●関東 事業の概要 コア企業 ●東北 ●東北 創業以来、顧客の製造設備の省人・省力化を目的としたさまざまな機械設 備を送り出してきた。この経験を生かして、繊維強化プラスチック(FRP) やカーペットなどの自動車の内装材を自動でカットするロボット搭載超音波 カッターを開発し事業化した。カッティング理論とロボット制御技術を背景 とした工程の合理化で、多くの業界から注目される企業へと躍進している。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 超音波カッターで業界革新 ライセンス販売で海外市場も攻略 連携体の構成 27 株式会社 にしばら葉彩 2社のノウハウを融合 収穫時期予測なども簡単に 同社では、 システム導入の結果、種 子の量や植え付け日、肥料を散布した 日と量などを入力すると、気温、湿度な どのデータから「いつ収穫・出荷すれ ばいいか」を自動的に計算でき、 「 100 ケースの出荷に何人必要か」なども割 り出せるようになった。パートの管理も でき、生産ロスが大幅に減少。約7,900 平方メートルの農場を10名で維持でき るようになった。 事業の成果 販路の多様化にも見通し 目標の売上高も既に達成 認定事業の売上高推移 カット野菜や新たな加工品も 消費者の動向が気掛かり 「一番の気掛かりは消費者の動向」 と鈴木取締役。 「トマト以外の野菜の 消費量が減り、代わりにコンビニの惣 菜やカット野菜が売れる時代。対抗す るには、地産地消にこだわり、消費者 のニーズに合わせた商品を作っていく しかない」。 カレー用にカボチャやジャ ガイモをカットして冷凍する商品を開 発する。そのための加工施設を建設 予定。 「一般家庭向きにハーブ入りの カット野菜も手掛けたい」 TPP(環太平洋連携協定)交渉参 加が論議になるなど、 日本の農業がこ れからどういう方向に進むのか「不安 はある」 と語る。 しかし、 スーパーやコン ビニのカット野菜との違いは「採ったも のをその日のうちに出せる (出荷でき る)」点。 「そうした特性を今後も生かし ていきたい」 経 営 者 の ひ と 言 子ども、孫までできる農業を 24年度 50 23年度 22年度 21年度 ●沖縄 ●沖縄 100 農業を取り巻く環境は確かに厳しいですが、思って いるのは「地元で子どもや孫までできる農業を」という ことです。それが、愛彩グループのメンバー共通の願 いでもあります。地域に雇用を生み出し、お金を地元に 還元する農業にこだわっていきたい。生産管理・支援 システムの購入には、新事業活動促進支援補助金が 大きかったです。それがなければ難しかったかもしれ ません。今後も地域に雇用を生み出し、お金を地元に 還元する農業にこだわっていきたいと思っています。 ●九州 ●九州 単位:百万円 0 今後の事業展開 ●四国 ●四国 同社では現在、9種類の若葉を交ぜ てパックにしているが、植え付けてか ら出荷までにかかる期間は25日間で、 日産は30グラム入り1万パック。夏場は 成長が早く、15日間で日産1万6千パッ クとなる。出荷量はシステム導入以前 に比べ1割強増えた。逆に人件費は1 割以上の削減。 「人件費を抑え、生産 効率が上がった」 (鈴木取締役)。出 荷先は、 システム導入以前は青果市 場15社がほぼ100%だったが、現在は 90%に。残りの10%を、 レストランや大手 流通業者などの直接契約先が占め、 販路の多様化を進めることができた。 これには、中小機構が行う中小企業 総合展への出展や地域活性化パート ナー事業の活用が利いている。24年1 月には、久留里に愛彩グループの産直 市も開設した。 認定事業の目標売上高は、期間終 了まで1年以上を残して達成した。 「水 耕栽培の回転効率・生産効率の増 加」 も予想通り。農薬使用や作業の履 歴が追跡でき、消費者に安心を与え、 栽培技術向上にも役立つトレーサビリ ティーが確保できるようになった。 イン ターネット利用で、実際の管理はタブ レット端末を使っている。 グループの他 の農場も、それぞれの条件に合うよう にカスタマイズして導入。 メリットを共有 している。 150 28 ●水耕栽培ノウハウ ※認定時の構成 200 ベビーリーフをトッピングした「レタス&ハーブらーめん」 ●水耕栽培環境制御 構築ノウハウ、 ソフトウェア開発力、 農業生産資材販路 中小企業基盤整備機構 関東本部 チーフアドバイザー 清水 尚政 250 約7900平方メートルを10名で維持している農場 (株)にしばら葉彩 ●中国 ●中国 にしばら葉 彩 から、これまで農 場 で蓄積された水耕栽培ノウハウを提 供し、生産管理・生産支援システムを 開発した。本システムは、売り上げやト レーサビリティーも記録できる販売管 理のほか、労務管理など経営に必要 な管理を一元的に行うことができる。 こ れを実証試験として、同社の農場に導 入、完成度の高い製品として完成させ た。 システム開発費用には新事業活動 促進支援補助金が活用できた。 東海物産(株) ●近畿 ●近畿 事業名:水耕栽培等を含む施設栽培の生産管 理・生産支援システムの開発と販売 認定日:平成21年6月29日 事業の展開 施設栽培等の 農家法人 システムの仕様作成支援 ●北陸 ●北陸 ●社名 株式会社 にしばら葉彩 ●代表者 代表取締役 須藤 久雄 ●設立 平成19(2007)年1月 ●所在地 千葉県君津市西原138 ●資本金 500万円 ●従業員数 10名 ●売上高 1億5,000万円(平成22年12月 期) ●事業内容野菜作農業 http://www.kazusa-aisai.net/ ●URL (「カズサの愛彩グループ」) ●TEL 0439-35-4848 0439-35-4850 ●FAX 名水にも指定される良質の水、そ れが当地で野菜栽培を行う大きな “武 器” だった。㈱にしばら葉彩もその一員 である「カズサの愛彩グループ」の最 初の法人が水耕栽培事業を始めたの は昭和51年。にしばら葉彩の創業は 平成15年だった。農業の衰退が社会 問題となる中、 「仲間たちとも話し、水 を生かすためにも、 これからは水耕栽 培しかないと判断した」 (鈴木剛取締 役)。 現在、 グループは1農場1法人1品目 で運営して八つの農場を持っており、 その中で同社は、 サラダなどに使われ る生食用のベビーリーフ (ルッコラ、水 菜、 レタス、 ビートなどの若菜の総称) を 生産、 出荷している。 これまでに水耕栽培の企画、設計、 栽培ノウハウは蓄積されていたが、 「熟練者に頼らず生産ロスの少ない 水耕栽培ができないか」 と、新しいシス テムの開発を模索した。最適な生産管 システム開発・販売 ●中部 ●中部 会社概要 熟練者の経験に頼らず 新しいシステムを模索 理・支援システムを求め、 コンピューター メーカーや県などに問い合わせたとこ ろ、高い水耕栽培環境制御構築のノ ウハウを有する東海物産㈱(三重県) に行き着いた。 ところが偶然にも、東海 物産もまた同システムの他社製品との 差別化を模索している最中であった。 両者は水耕栽培も含む施設栽培の 生産管理、生産支援システムの開発を 目指す農商工連携事業に着手、21年 6月に認定された。 両社で共同開発した本システムは、生 産のロス率を究極的に抑え、経営に必要 な指標や、労務管理まで組み込んだ他の見本ともなる優 れもののシステムです。 本システムが広く知れ渡り、他者にも採用されること は、日本の施設園芸者の経営力の向上にも必ずやつなが るものであり、今後の展開に期待するものです。この点を 今後とも積極的に支援していきたいと思います。 ●関東 ●関東 事業の概要 代表者 ●東北 ●東北 青々と育った葉っぱを、収穫したその日のうちに出荷。そんなベビーリー フの水耕栽培を支えるのは、収穫日の予測から作業コスト、人件費の算出ま で、インターネットを利用してタブレット端末を使う生産管理・生産支援シス テム。熟練農業者の経験と勘に頼っていた従来の水耕栽培が、誰でも簡単 にできるようになり、品質と生産効率を高めることができるようになった。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 誰でもできる水耕野菜の夢実現 生産管理で品質・効率大幅向上 熟練者に頼らず生産ロスの少ない水耕栽培で生 産したベビーリーフ 連携体の構成 千葉県君津市 取締役 鈴木 剛 氏 29 株式会社 ヴァイタス ●北陸 ●近畿 事業の成果 今後の事業展開 全国50病院に導入 経済産業省などからも選定 トータルヘルスケアが可能に 今後の需要拡大が期待 既に、全国の約50の病院へ導入さ れた。現在も医療機関からのさらなる ニーズに応えるべく、 システムの進化を 目指し開発を続けているが、資金的な システムは一見、ベッドサイドのテレ ビからの発展システムのように受け止 められがちであるが、 このサービスの 狙いは、 あくまでも患者を中心とした医 (株)TBSビジョン ●VOD配信用コンテンツの調達、管理、提供 ●TBS関係地方局関連企業を活用した 販売促進支援 ※認定時の構成 療環境とアメニティー環境の融合だ。 そうすることによって、患者に対する トータルなヘルスケアが可能となり、快 適な治療や療養がサポートできるとい う。 その中でも、一番注目されているの は、 「医療看護支援ピクトグラム」。 ピク トグラムとは、 「絵ことば」 「絵文字」 と 訳され、姿勢や食事といった日常の行 動を一目で分かりやすくシンボル化し、 関係者間のコミュニケーションを助ける ツールである。医療看護支援ピクトグラ ムは、 まだ規格化されているわけでは ないが、同社の導入経験によれば、医 療現場では、 「患者との情報共有がで きる」 「注意喚起が図られミスが少なく なる」など好評を得ている。医療看護 支援ピクトグラムが、 さらに普及してい けば、同社のシステムの需要も拡大す ることになり、 今後が期待される。 経 営 者 の ひ と 言 単位:百万円 患者を中心としたサービス情報基盤へ 700 600 500 400 300 21年度 200 20年度 100 0 19年度 18年度 患者を中心とした医療や療養情報のネット ワーク化は、患者と医療機関、地域社会をつな ぐ、いわばソーシャルネットと捉えることもでき ます。今後、医療機関と在宅におけるヘルスケ アのニーズが高まっていくことが予想されるの で、地域医療を支える情報基盤整備を目指し て、システム開発に臨みたいと思います。それ を実現するには、認定事業などで得た信頼を 基に、金融機関などから資金的な支援を受け やすくなることで、経営環境の整備を進めるこ とが必要です。 ●沖縄 ●沖縄 30 バイタル情報画面 コンテンツの調達・管理・提供 ●九州 ●九州 医療看護支援ピクトグラムの表示例 事業認定後は、全国の病院への導 入が進み、好評を得ている。その要因 の一つには、本サービスが単にベッド サイド端末で利便性が向上したという だけでなく、患者に対し退院後の生活 の喜びを感じさせる新しいコンテンツ の提供に成功したことが挙げられる。 大手放送局のTBS系コンテンツ制作 会社と提携したことはユーザーの信頼 アクシスソフト(株) ●サービス専用ブラウザの開発、保守 ●Web型医療情報システムの開発 ●VOD関連アプリケーションの開発、保守 体力がまだ弱いベンチャー企業にとっ て開発コストは継続して大きな課題と なっている。 しかし、事業認定後の18 年には、経済産業省の「サービス産業 創出支援事業」に選定されたほか、 20年には日本生産性本部・サービス産 業生産性協議会によって「第2回ハイ・ サービス日本300選」にも選ばれ、将来 的に発展性のあるITシステムとして注 目を集めており、金融機関からの支援 環境は認定前と比して一変したとい う。 導入された病院で好評 レンタル方式で導入を容易に 病室内のベッドサイド端末 アプリケーションの開発・保守 性確保に大きく機能している。 加えて、 システムの販売方式をレンタ ルとしたことも病院側の導入を容易と した。商品化された医療情報システム は病床ごとに端末を設置する必要が あり、全体では1病院あたり数千万円 から1億円を超える投資となる。 レンタル とすることで、ユーザーである病院側 は患者から利用料として日額数百円を 徴収し、 レンタル料に充てることにより、 費用負担を最小限にしてサービスの 導入が可能となった。 認定事業の売上高推移 ●サーバ及び端末機器の開発、製造 ●サーバ及び端末の保守 ●四国 ●四国 事業の展開 ゴールデン・マイクロ・システムズ(株) ●医療機関への営業活動 ●電子カルテメーカーとの インテグレーション ●中国 ●中国 事業名:患者アメニティ環境と医療環境の融 合を目指すヘルスケア・ポータル・サービス 認定日:平成17年7月28日 (株)ヴァイタス ●近畿 ㈱ヴァイタスは、平成16年に先進的 な医療情報システムの開発を目指し、 薬剤師や診療放射線技師、医療情報 技師の肩書を持つ医療現場経験者と システム開発経験者らが集まって誕生 したベンチャー企業である。 狙ったサービスは、病院、患者双方 のニーズに応えるもの。病院側にはカ ルテなど医療関連情報をいかに電子 化し患者へ迅速なサービスを図れる かが課題としてあった。一方、患者側 にはそれまで有料のテレビ程度しか 病室での娯楽がなく、 しかもプリペイド カード方式では購入の手間や割高感 もあり、普段の生活にネット環境が当た り前になってきた昨今では不満の多い 現状があった。 そこで本サービスでは、ベッドサイド に情報端末を設置しネットワーク化す ハードウェアの開発・保守 ●北陸 会社概要 販売チャネルの提供 VOD関連機器販売 ●中部 病院内情報連携の必要性 コミュニケーションを支援 ●中部 情報端末メニュー画面 ることで、 テレビをはじめ、 インターネット やVODといった機能を提供し、入院 患者が在宅時に近い生活が送れるよ うにさまざまなアメニティーを提供して いる。加えて、 これまで口頭により行わ れてきた病院から患者への連絡も端 末経由で知らせたり、医師・スタッフの 紹介、病院食の選択や売店ショッピン グの情報も配信する。医療スタッフが 病状や治療方針などを説明するに当 たっては同端末により医療画像、検査 結果や治療スケジュールを見せること で分かりやすく伝えることも可能にし た。 17年7月、同社はサーバーや端末機 器などハードウエア開発・保守を行う ゴールデン・マイクロ・システムズ㈱、 コン テンツ調達・管理・提供の㈱TBSビジョ ン、医療情報システム・VOD関連アプ リケーションなどの開発・保守を行うア クシスソフト㈱と連携体を構成し、新連 携事業として認定された。 市場はかなり大きいと判断できますが、 ほとんどの病院にテレビが入っており、業 者、病院ともメリットを享受しているうちは、割り込むのは大 変です。追い風は電子カルテ化ですが、これもベッドサイド にパソコンを導入しなければならないと決められているわけ ではありません。そのためには病院側の説得もさることなが ら、テレビ導入業者を巻き込み代理店化することも考える必 要があるように思います。また、パソコン関係はモバイル化 が進行しており病院に持ち込む患者に対する対応なども早 急に検討する必要 中小企業基盤整備機構 関東本部 プロジェクトマネージャー 柳沢 剛 があると思います。 ●関東 ●関東 事業の概要 コア企業 ●東北 ●東北 テレビの視聴が中心だった病室のベッドサイドのモニターをネットワーク 化した情報端末に置き換え、インターネットやVOD(Video On Demand =ユーザーニーズに応じて映像を配信する)など、患者に対するアメニ ティー(快適性)環境を向上させた。医療関連情報の提供も可能にして、医 療スタッフとのコミュニケーションツールとして進化させたサービスを提供 している。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 つくっているのは患者さんの笑顔 病室のアメニティー環境を向上 ●社名 株式会社 ヴァイタス ●代表者 代表取締役 小林 巧 平成16(2004)年7月 ●設立 ●所在地 東京都千代田区内神田1-15-7 AUSPICE内神田9階 ●資本金 2億5,749万9,000円 ●従業員 11名 ●売上高 5億円(平成23年9月期) ●業務内容医療関連情報システムの企画、 構築、運営 http://www.vitas.biz/ ●URL ●TEL 03-6273-7866 03-5280-5022 ●FAX 連携体の構成 東京都千代田区 代表取締役 小林 巧 氏 17年度 31 株式会社 環境経営総合研究所 連携体の構成 東京都渋谷区 コア企業 氏素性のはっきりした産業廃棄紙を再 生することにしたものですが、産業廃棄紙 も表面コートしたものなどは食品容器にするには問題が あります。そこで、可能性のある産業廃棄紙を公的機関で 徹底した分析を行い、信頼性確認を行った点は評価できま す。最近は、用途が日用品分野、家電製品部品、自動車部 品にも発展しており、成長性も大いに期待できます。 産業廃棄紙発泡食品トレー製造・販売 支援者 大 手 商 社が 販売代理店 となり、食品ト レー 業 界 へ の販売促進 を行う (株)環境経営総合研究所 産業廃棄紙の供給 (株)ムトウユニパック ●産業廃棄紙パウダー化技術 ●澱粉混合・乾燥技術 ●食品トレー販売 ●産業廃棄紙の供給 ●産業廃棄紙発泡体製品の成形 ●産業廃棄紙食品トレーの加工 2次加工 機械製造 ●東北 ●東北 玉井環境システム(株) (株)ティエスピー ●産業廃棄紙食品トレーの 2次加工 中小企業基盤整備機構 関東本部 プロジェクトマネージャー 柳沢 剛 ●産業廃棄紙粉砕設備ラインの開発 ●産業廃棄紙発泡体製造設備の 開発・供給 ※認定時の構成 事業の概要 会社概要 32 現在、同社の売り上げは順調に伸 び、 100億円を超えた。 成形用材料で製造された「住宅や ビルの断熱材」 「精密部品などを梱包 する際に使用する緩衝材」、新連携で 認定を受けた「食品トレーや容器」が、 大手メーカーなどで活用されている。 従業員も創業から10年以上が経過し た現在は、 工場の増設などに伴いパー トも含めると189名に拡大している。 22年3月には、米国で開催された国 際プラスチック環境会議で環境管理 賞を受賞した。 この受賞を機に、海外 への事業展開も活発化している。既に エコ材料のさらなる用途開拓 活発化する世界展開 食品トレーから始まった成形用材料 や製品は、エコ材料などとして、工業 用品の部材などへ広く応用できる可 能性も秘め、 さらなる用途開拓が期待 される。 ブラジルやカナダへの進出も計画し ており、今後は国内市場の拡大に加え 海外企業との連携を通して、環境に優 しい成形用材料の世界展開を目指し ていく。 経 営 者 の ひ と 言 認定事業の売上高推移 単位:百万円 人任せにしない 700 600 500 400 300 200 100 0 今後の事業展開 19年度 17年度 20年度 21年度 22年度 ベンチャー企業は、 まず人任せ にせず、自分でやってみることが 重要です。コア技術をしっかりと 自分のものにすることです。その 上で、事業を拡大するために、そ れぞれの分野の業界のトップと の協業・連携で、商品開発を進め ることが大切だと思います。 ●沖縄 ●沖縄 最新鋭設備を整えた茨城工場 売り上げの急拡大 米国で生産工場が稼働 ●九州 ●九州 ㈱環境経営総合研究所本社入り口 事業の成果 ●四国 ●四国 事業開始から松下社長が最も重視 していることは、 コア技術をしっかり自 社のものにすることである。松下社長 自身は、当初、技術的には素人であっ たが、町工場で成形技術を学ぶなど、 試行錯誤による商品開発を繰り返しな がら、産業廃棄紙を微粉砕処理し、 パ ウダー化して混練しペレット化するコア 技術を確立した。 事業化に際しては、課題が多様で あったため、他社が持つ経営資源も組 み合わせながら事業を推進した。17年 の新連携認定に当たっては、原料であ る産業廃棄紙を供給する企業、 押し出 し成形加工などの製造設備を開発す る企業、ペレットを2次加工する企業、 販売代理店として販売促進を担う企 業とタイアップした。 この連携により、原 材料の産業廃棄紙供給から販売まで 一貫したシステムを構築することがで きた。 「中小企業は経営資源に限界があ る。1社で開発から販売までの全てを 行うのは難しい。高度な技術力や競 争力を持ったトップ企業と連携するこ とで、事業を拡大することができる。い ろいろな企業とタイアップして事業を展 開するという新連携の考え方は重要 なことである」 と松下社長は言う。 産業廃棄紙の再利活用による発泡 食品トレーの開発は、 「発泡スチロール ●中国 ●中国 製紙工場から出た紙の端材など、 ゴ ミとして大半が焼却されてきた産業廃 棄紙を再資源化し、材料リサイクルを 行い工業用原料や製品として供給し ている。金融業界出身の松下敬通社 長が、環境ビジネスの将来性に目を付 け、 平成10年に設立した。 発泡食品トレーは、産業廃棄紙を乾 式による微粉砕処理でパウダー化し、 工業用でんぷんと合成樹脂を混ぜて 造粒ペレット化した成形用材料を、水 蒸気で発泡させ押し出し成形すること で製造する。 この他にも、重量比51%以上の紙パ ウダーとポリオレフィン系樹脂の混練 による容器包装などの成形材料(マプ カ)の製造、バイオマス資源利活用事 業など、 さまざまな事業を展開してい る。 工場を建設している韓国に加え、米国 ミシガン州には、現地企業との合弁で、 エコバイオプラスチック・ミッドランド社を 設立した。産業廃棄紙から乾式微粉 砕された紙パウダーとプラスチックを混 練したバイオプラスチック・ペレットの米 国における唯一の製造拠点として、生 産工場が稼働している。 これらペレット は、食品関連・パッケージング玩具、断 熱材などに使用される。 ●近畿 ●近畿 事業名:産業廃棄古紙の再利活用による発泡 食品トレーの開発・製造・販売事業 認定日:平成17年12月2日 コア技術の確立 企業連携による事業展開 を改善するなど、産業廃棄紙を使った 複合材料の物性改善に取り組んだ。 千葉工場での商業生産体制確立 後、現在では札幌や茨城にも工場を 設立するなど事業を拡大している。 ●北陸 ●北陸 ●社名 株式会社 環境経営総合研究所 ●代表者 代表取締役 松下 敬通 ●設立 平成10(1998)年4月 ●所在地 東京都渋谷区南平台町16-21 ●資本金 4億7,000万円 ●従業員数 151名(他、パート38名) ●売上高 103億円(平成24年8月期) ●事業内容リサイクル・エコ製品の製造 http://www.ecobioplastics.jp/ ●URL ●TEL 03-5428-3123 03-5428-3245 ●FAX 産業廃棄紙を再利活用 エコ材料や製品の開発 製の食品トレーに変わる環境に優しい 容器を作ることができないか」 という顧 客からの問い合わせがきっかけで取り 組んだ。 その後も大手企業などのニーズに 応じ、新たな用途の開発に取り組み、 産業廃棄紙の再利用による箸やおも ちゃなどの日用雑貨・家電部品などの 用途へ拡大していった。 また、松下社長は事業化に当たり、 公的支援策などの外部の力も活用し、 事業化課題を解決していった。新連携 の認定を受けたことで、中小機構との つながりもより密になり、 技術面のサポー トを中心に支援を積極的に活用した。 経営実務支援事業の活用では、大 手化学メーカー出身のアドバイザーの 支援も受けながら産業廃棄紙を微粉 砕する工程の連続運転化を実現し、 商業生産体制を確立した。専門家継 続派遣事業の活用では、 プラスチック 開発が専門のアドバイザーの支援も受 けながら、 紙の粉と合成樹脂の親和性 ●中部 ●中部 発泡食品トレー 事業の展開 ●関東 ●関東 製紙工場から出た紙の端材などを微粉砕処理するなどして、成形用材料 を製造する技術を開発。他社が持つ経営資源や中小機構の支援も活用しな がら、事業化を成し遂げ事業の拡大にも成功した。現在は、海外の大手企業 との連携により、世界展開を目指している。 ●北海道 ●北海道 産業廃棄紙を再利活用したエコ材料 海外企業との連携による世界展開 連携体 支援者の視点 代表取締役 松下 敬通 氏 18年度 33 マイクロ・トーク・システムズ 株式会社 東京都千代田区 会社概要 ●社名 中小企業基盤整備機構 関東本部 プロジェクトマネージャー 柳沢 剛 ●ハードウェア開発 ●製品試作 販売・マーケティング 古市 勲 (スポーツイベントコンサルタント) ●世界陸上競技連盟、各国 タイマー業者等との人脈 ●情報収集 ※認定時の構成 年間に伸び、再利用可能なタグとなっ た。 「J-chip」の普及には、競技大会で 誰もが簡単に装置を設置し、使いや すいシステムが求められていた。そこ で、海外のさまざまな競技大会に積極 的に参加し、 タイマー計測業者の現 場ニーズをくみ取って、 システム改良 を重ねた。競技大会でテスト使用しそ れぞれの国ごとのタイム計測環境の 情報収集に新事業活動促進補助金 を活用できたため、海外実情把握の 機会を増やすことが可能となり、 これが 「J-chip」によるタイム計測の普及に とって大きな力となったという。 事業の成果 世界の主要大会で採用 海外の先行システムをしのぐ 同社は、 「J-chip」 と 「S-chip」を合 スカントリー大会などの主要大会にも 3~4年後には、売り上げを現 「J-chip」が採用されるようになった。 わせて、 在の2倍にしたいと考え、米国市場で メジャー大会での採用は、他の大会 の「J-chip」の拡大と、海外市場への での採用の呼び水となり、現在は、海 外のトップシェア企業の計測システム 「S-chip」の用途拡大に期待してい る。 また、 「J-chip」機能をさらに強化 を圧倒する勢いで、マラソンをはじめ し、従来活用しづらかったモータース 自転車競技、 トライアスロン、 クロスカン ポーツや競走馬の調教など、他の競 トリーなど数多くの競技会で採用され 技の計測にも活用できるようにしたいと ている。特に、 トライアスロン競技では 考えている。 防水性に優れた「J-chip」によるトル ソーシステムは世界トライアスロン協 会の標準タイム計測仕様となり強みを 経 営 者 の ひ と 言 発揮している。 今後の事業展開 「J-chip」から「S-chip」へ 他種類の競技にも拡大狙う 世界では年間2万6千レースが開 催されており、 タイマー業者180社が さまざまな技術的な成果と地道な 大会運営を行っている。米国市場の 営業の努力が実を結び、 ローマ・マラ 開拓が目下の課題だ。 ソン、世界陸上大会マラソン・競歩、 一方、 「 J - c h i p 」の 基 本 仕 様を 世 界ハーフマラソン大 会、世 界クロ 発展させて研究開発を続けていた 「 S - c h i p 」システム は、工場や施設内の 認定事業の売上高推移 単位:百万円 ポイントをバラバラに 通過する人の履歴を 250 記録するもの。大手 企業の社員管理シス 200 テムや、危険度や秘 150 密性の高い化学プラ ント工場などにおけ 100 23年度 22年度 る人の動きを監視す 21年度 50 20年度 るシステムなどで利 19年度 0 18年度 用されている。 海外派遣でニーズをくみ取る 簡単で使いやすいタイム計測シス テムを開発し、国内外に普及させて いくことが、当社の目標です。そのた めに国内外のさまざまなスポーツイ ベントに積極的に参加して、現場ニー ズをくみ取り、 タイマー計測業者との 商談を行っています。しかし、経営資 源が限られている当社にとって、海外 のタイム計測状況を調査するのは大 変でしたが、補助金などの支援が、オ ンリーワンの技術のグローバル展開 を加速させるのに大きく役立っていま す。 ●沖縄 ●沖縄 34 J-chipの装着例(海外マラソン大会) J-chipの装着例(海外マラソン大会) ●製品企画・マーケティング ●ソフトウェア開発 ●販売企画 ●九州 ●九州 J-chipの装着例(MTB競技) アクティブ型と呼ばれる従来のタグ は、 自ら電波を発信するため、受信機 から送信機までの距離を取ることがで きる。ただ、 タグ作動用小型電池が必 要で、 また一定周期で電波を発信し続 けるため電池寿命が短いことと、受信 システムが複雑などの弱点があった。 商品化された小型、軽量で、測定精度 の高いチップ「J-chip」は、 アクティブ型 の課題を解決した “セミアクティブ型” と 呼ばれる技術で、電池寿命は一気に7 (株)マトリックス ●四国 ●四国 J-chip ECO受信機 長寿命、再利用可能なタグ 現場ニーズくみ取り改良 マイクロ・トーク・システムズ(株) ●中国 ●中国 J-chipの仕組み 事業の展開 回路設計・試作 ●近畿 ●近畿 事業名:RFIDを利用した「トルソーシステム」 の開発・製造・販売 認定日:平成18年2月2日 国内・海外の タイム計測業者 製品企画・ソフト開発・販売 ●北陸 ●北陸 マイクロ・トーク・システムズ 株 式会社 ●代表者 代表取締役 橋本 純一郎 平成6(1994)年8月 ●設立 ●所在地 東京都千代田区神田岩本町1-5 ●資本金 1億9,100万円 ●従業員数16名 ●売上高 8億円(平成24年3月期) ●事業内容電子・電気機器の製造・販売 http://mts.greentag.to/ ●URL index_j.html 03-5294-0411 ●TEL ●FAX 03-5296-0485 平成6年に創業し、RFID(非接触 ICチップ) を利用した建物の施錠、入 退場管理システムなどの開発、製造販 売を手掛けている。橋本純一郎社長 が、計測関連企業の営業職だった当 時、外資系の大手半導体メーカー、国 内の大手鍵メーカーと出合い、RFID に強い関心を持ったという。現在、後 者の企業と業務・資本提携し事業を 行っている。 新たなビジネスチャンスはマラソンの タイム計測。 この業界のトップシェアは 靴の甲にタグを装着するシステムを開 発したオランダのメーカー。 しかし、 これ には左右のどちらの足に着けるかで ゴール時に0.3秒ほどタイムが変わって しまうという問題があった。開発したの は、胴体(トルソー)通過時を正式なタ イムとする一般ルールに沿うゼッケン装 市場 ●中部 ●中部 独自開発の計測システム ゼッケン装着型を実現 海外競技大会での使用例(ローマ) 着に対応したキャラメル大のチップにリ チウムイオン電池を内蔵させたもの。 こ れには測定精度の高いチップの開発 が欠かせない。そこで、 自転車競技用 のタイム計測用装置開発にノウハウを 持つ㈱マトリックスとスポーツ界に幅広 い人脈を持つスポーツイベントコンサル タントの3者で連携体をつくり、事業計 画を作成、 中小機構を訪問した。 プロジェクトマネージャーからは「技 術の優位性だけでトップシェアのオラン ダメーカーと戦うことはできない。価格 面の優位性を確保しないといけない」 と指摘された。 そこで、 コストダウンに取 り組んだ。途中計測用マットなど周辺 機器の小型化軽量化に挑戦、10分の 1以下の軽量化に成功、 それがフルマ ラソン用システム一式での原価低減に つながった。18年2月、新連携事業とし て認定された。 「J-chip」というマラソンタイム計測用 チップは従来靴の甲に着ける輸入品が パッシブなのに対し、開発したものは電池内蔵のアクティ ブタイプでゼッケンの裏に取り付け、胸でラインを通過す るタイムを計測します。RFIDに知見を持つコア企業が発 想し、連携で事業化したもので、シェアトップとなりました。 逆転の発想ですが、本来の正確な計測を追求した成果と いえます。水平展開で施設内の監視用チップに発展してお り注目されます。 ●関東 ●関東 事業の概要 コア企業 ●東北 ●東北 各種競技計測の経験に裏付けされた「J-chip」。世界のユーザーのさ まざまな声を反映し、改良を積み重ね進化した結果、マラソンからMTB/ ロードレース、トライアスロン、クロスカントリースキーまで、多くの競技で 利用されている。国内はもとよりヨーロッパ、米国、オセアニア、アジアと世 界中の競技大会のスポーツ計測の現場で欠かせない存在となっている。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 競技計測システムをグローバル展開 国内外の競技大会で欠かせない存在に 連携体の構成 代表取締役 橋本 純一郎 氏 17年度 35 株式会社 アムクルー 連携体の構成 静岡県静岡市 開発・製造・販売 (株)パイロットコーポレーション 東洋ライト工業(株) 不二化成品(株) (株)タカショーデジテック (株)高天 その他 (株)アムクルー (静岡県静岡市) ●FLS研究、開発、製造、販売 コーディネイト (財)静岡産業創造機構 (株)原町サイン (株)ルキオ (福島県南相馬市) (東京都世田谷区) ●ラミネートへの印刷技術 (デザイン、色校正) ●FLS式看板製作・施工の 製品化技術 ●印刷機械開発・製造技術 ●メディア、 インクの開発・ 選定技術 ※認定時の構成 事業の概要 会社概要 認定事業の売上高推移 多彩な用途展開 リフォーム市場に参入へ 新製品の用途は多彩だ。取り付け 工事が簡易として、同社は古いオフィ スビルを対象としたリフォーム市場へ の参入を目指す。 また、耐久性が蛍光 灯の5倍以上と長く、掃除もしやすいこ とから家庭向けの販売にも力を入れ ていく。 将来的には自動車のアクセサリー 部品や舞台衣装などへの応用利用を はじめ、防水性を生かし医療器具へ の活用、魚を呼び寄せる漁船用ランプ など、 さまざまな用途を模索している。 経 営 者 の ひ と 言 単位:百万円 最適なサービスに努める 700 600 500 300 23年度 200 22年度 100 21年度 当社の第一方針として「お客さまの期待に 応え、常に満足のいくサービスを提供し、最 適なサービスに努める」としています。FLSに ついてはさまざまな試験をクリアしておりま す。品質においては他のLED商品に負けな い自信を持っております。 ●沖縄 ●沖縄 400 0 今後の事業展開 ●九州 ●九州 36 事業認定を受けたことで、製品開発 は急進展した。 「信用保証の特例措置 を受け、金融機関から融資を受けるこ とができた。 また、新事業活動促進支 援補助金で開発研究費の一部を賄う ことができた。 これが大きかった」 (塚 本常務) 連携により、開発したのはシート状プ リント基板にLED素子を均等に配列 し、独自の技術によりラミネートした面 発光シート 「FLS」 (フラットライティング システム)。それまでのLED商品は電 球タイプ、 モジュールタイプ、 テープタイ プが主流だったが、FLSは標準タイプ で、縦・横45センチの正方形で厚さが 約4ミリと薄く、重さも約280グラムと軽 い。LED素子は縦、横12個ずつの計 144個がきれいに並んでいる。正方形 認定を受けてからマスコミの取材が 増え、露出度が高くなった。 これが営 業面で効いた。中小機構の支援を受 けて出展した各種展示会でも、商談 が以前よりスムーズに進むようになっ た。その場で引き合いがあった先には 後日、積極的に営業を行い、 しかも成 約率が高まった。結果、売り上げは順 調に伸長し、静岡駅近くの大手ショッピ ングセンターや地元商店街をはじめ、 空港、銀行など、続けて受注機会を得 た。現在は大手消費者金融や自動車 メーカー、海外のブランドショップから引 き合いがあるほか、韓国の企業からは 技術提携の話が進んでいる。 また、知名度が向上したことの効果 ●四国 ●四国 ㈱アムクルー本社 製品開発が急進展 さまざまな場所へ設置可能 売り上げは順調に伸長 地元商店街を明るく照らす ●中国 ●中国 風雨にさらされても強く、屋外看板などにも使用される 事業の展開 事業の成果 は営業面にとどまらない。例えば材料 やパーツの選定、資材の購入といった 購買業務においても会社の信頼度が 上がったことで、安定的な取引関係が 生まれた。高価な「真空成形機」の導 入についても、低利なリース契約を結 ぶことができた。 ●近畿 ●近畿 事業名:LEDによる屈曲可能な面発光体の開 発と事業化 認定日:平成20年12月24日 ㈱アムクルーは、平成3年に屋外看 板業としてスタートした。地球環境保 全の意識が高まる中で、18年に、取引 先のフィルム販売会社からLED照明 事業の譲渡を持ち掛けられた。LED は照明機器をはじめ、多様な用途へ の利用、商品開発が盛んになってお り、蛍光灯光源からの移行が始まって いた。 また、看板など屋外広告物も、事 故や危険防止対策として、本体の軽 量化、壁面からの突出の条件などの 規制により、 「軽く」 「薄く」 との規制が 強化されつつあった。 「蛍光灯は寿命 が短く、修理作業も高所が多く危険が 伴う」 (塚本勝常務取締役) ということ もあり、 「LED照明システムは将来、蛍 光灯に代わる光源になると考え、基本 特許の譲渡提案をすぐさま受け入れ た」 (松永英人社長) という。 開発は試行錯誤の連続であり、開発 過程では中小機構の専門家などから 多方面の支援も受けた。 ●北陸 ●北陸 株式会社 アムクルー ●社名 ●代表者 代表取締役 松永 英人 平成3(1991)年12月 ●設立 ●所在地 静岡県静岡市葵区平和1-5-20 ●資本金 1,000万円 ●従業員数 5名(他、パート・アルバイト6名) ●売上高 3億円(平成24年6月期) ●事業内容LEDによる屈曲可能な面発光体 の開発・製造 ●URL http://amcrew.web.fc2. com/ ●TEL 054-653-5366 054-653-5388 ●FAX 屋外広告物にLEDを活用 新連携で開発課題の解決へ をベースとするシートを自在に組み合 わせるだけで、巨大サイズの屋外看板 でも容易に仕上がる。 さらに、厚さが薄 いため、薄型電飾の製作も可能で、 さ まざまな場所へ設置できる。大きさは、 用途によって使い分けができるよう5種 類を用意している。 LEDの特性に加えて、①防水性が 強化された②定電流回路の使用で照 度がむらにならず、電流変化が起きて も照度が均一に保てるなどの高品質 が特長だ。特に、防水性について、品 質の鍵を握るとして、 カバーフィルムの 選定を繰り返し、独自技術で乗り切っ た。その結果、風雨にさらされても強 く、屋外看板などに使われるようになっ た。 これは他のウエッジライト (導光板) 方式では決してまねできない。LED素 子の導電接着剤による固定、 その強度 と外圧に耐えるようラミネートシートによ る真空圧着手法は、冷蔵庫の内箱真 空成形技術からの転用である。その ●中部 ●中部 シート状プリント基板にLED素子を均等に配列し、独 自の技術によりラミネートした面発光シート「FLS」 しかし、製品の実用化には予想以 上の時間がかかった。思うように開発 が進まない。①防水性はどうか②温度 や湿度にどの程度耐えられるか③振 動や衝撃の耐久性はどうか、につい て、 多くの課題が残されていた。 そうした中で20年12月、 ラミネート印 刷技術に強みを持つ㈱原町サイン (福 島県)、印刷機械開発・製造技術に強 みを持つ㈱ルキオ (東京都) と連携体 をつくり、LEDによる高機能照明システ ムの事業化を目的とした新連携事業 の認定を受けた。 ●関東 ●関東 中小企業基盤整備機構 関東本部 チーフアドバイザー 藤井 昇 技術提供 技術提供 金融支援 静清信用金庫 ●東北 ●東北 省エネ・長寿命で地球環境に優しいLED(発光ダイオード)。そのLED素 子を使ったシート状の「面発光体」を開発し、高機能照明システムを製造・販 売している。薄型で柔軟性、防水性に優れ、蛍光灯に代わる屋内外の看板 や案内板などの光源として急速に普及している。 コア企業 販売支援 ネオンサイン、屋外広告物などの敷設 事業を展開してきたチーム(事業体)は、 市場の強い潜在ニーズである「環境対策」 「事故・危険防 止策」 「コスト削減」に着目し、志を一つにする技術者を中 心に多方面(県・国)の支援を仰ぎながら本事業を展開し ました。すなわち本事業は、チームの夢を具現化した事業 といえます。まさに、新連携発、内照式照明の「日本スタン ダード」 (世界スタンダード)を目指すべく、引き続き支援 したいと思います。 ●北海道 ●北海道 LEDの高機能照明システム開発・製造 風雨に強く屋外看板などで急速に普及 連携体 支援者の視点 代表取締役 松永 英人 氏 20年度 37 ショーダテクトロン 株式会社 浜松信用金庫 装置開発 組立て・メンテナンス プロソニック(株) (神奈川県川崎市) ●超音波振動装置技術 (有)葉月産業 (埼玉県春日部市) ●装置の組立て、 メンテナンス ●ユーザーサポート 専門家の協力で成果 求められる高度な技術 事業の成果 ポリシングマシンが主役に 不良品発生を防ぎ高い強度 認定事業の売上高推移 今後の事業展開 海外からの引き合いも 医療分野への道も探る これまで国内の大手ガラスメーカー などに納入し、好評を得ているが、 ここ 数年は台湾や韓国からの引き合いが 目立っている。 中には、 ポリシングマシン 10~40台の注文もあったという。 ガラス加工に対する需要は高まる 一方だ。今後、同社は内視鏡カメラな ど医療分野や車のルームミラーやサイ ドミラー、 インパネのガラス化向けなど の新たな加工機開発への道も探って いる。 経 営 者 の ひ と 言 会社の実力を認知 500 300 200 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度 ●沖縄 ●沖縄 400 新連携の認定は中小企業にとっ て知名度だけでなく、会社の実力を 世間に認知してもらうことになりま す。他社と対等に付き合える第一歩 で、 メーカーを売り込む大きなチャ ンスになります。また、従業員にとっ ても、自信とモチベーションを上げ る効果は計り知れません。 ●九州 ●九州 単位:百万円 100 ●四国 ●四国 市場の開拓に当たってはコア企業 の頑張りがあった。先端産業市場は市 場ニーズの変化が激しい。特に本事 業ではハードディスクのガラス基板加 工から、新しい市場であるスマホの硬 質ガラス加工へと市場を創造していく 必要があった。 それにはコア企業の情 報収集力がものをいった。 「マスコミに取り上げられたため、会 社と商品の知名度が上がった。展示 会への出展も多くなり、 いろいろな方と 知り合うことができた。中小企業は一 社だけでは事業展開がうまくいかない ことがあるので助かる」 (庄田社長) 20年ごろから、新しい携帯やスマホ が相次いで登場すると、 ポリシングマシ ●中国 ●中国 連携は機能し、 コアリングマシンをは じめ、携帯やタブレットPC用のOGS(ワ ンガラスソリューション) カバーガラスの 研磨で威力を発揮する「ポリシングマ シン」 (研磨機)、 「クロスセパレーター」 (切断機)、 「フォーミングマシン」 (成 形機) を次々と開発した。 しかしその開発の道は必ずしも平 たんなものではなかった。実際、 ガラス 加工は難しい。加工時に無数のチッ ピング (「欠け」)が起き、少しでも傷が あったり、 ガラスの端にギザギザがある と、 もろくなり割れてしまう。特にスマー トフォン (スマホ)やタブレットPC用のガ ラス製品には高度な技術が求められ、 激しい競争にさらされている。一連の 加工機を開発し、成果を挙げたのは、 連携企業体の強力な連携はもとより、 新連携事業による支援の下、 「超音波 0 ンが売り上げの主役になった。同装置 には①従来のガラス1枚ずつの加工と 違い、何枚も積み重ねて同時に加工 するため、傷や汚れの不良品発生を 防げる②ガラス端面を鏡面研磨して 美しくし、強度も高くなる、 というメリット がある。 技術」が専門の静岡理工科大学教授 や「接着剤の開発」 を支援した大手化 学メーカーなどの協力であった。 事業の展開 600 38 金融支援 ●制御ソフト開発 ※認定時の構成 700 先端技術が詰まったVカットマシン 静岡理工科大学 (静岡県浜松市) チーフアドバイザー 松本 眞明 800 ショーダテクトロン㈱本社 技術開発支援 (静岡県浜松市) ●硬脆性材加工技術 ●トータルエンジニアリング ●専用砥石の開発 ●解析ソフトによるシミュレーション ●近畿 ●近畿 事業名:硬脆性材加工装置の開発と事業化 認定日:平成19年7月19日 電気化学工業(株) ソフト開発 ショーダテクトロン(株) (有)フェイテス ●北陸 ●北陸 ショーダテクトロン 株式会社 ●社名 ●代表者 代表取締役 庄田 匡宏 昭和32(1957)年11月 ●設立 ●所在地 静岡県浜松市西区桜台5-1-1 ●資本金 1,500万円 ●従業員数 68名(他、パート・アルバイト9名) ●売上高 21億円(平成24年3月期) ●事業内容プリント基板切断機Vカットマシ ン、ガラス材の精密加工機、端面 研磨機などの製造・販売 http://www.stech.co.jp/ ●URL ●TEL 053-414-6111 053-414-6135 ●FAX 昭和32年の創業で、当初は木工機 械の販売や機械装置を製造してい た。先端事業分野への参入契機は56 年のこと。 プリント回路展に縦型切断機 を出展したのをきっかけに、木製家具 をV字型にカットする切断技術を利用 した加工装置「Vカットマシン」を開発 し発表した。効率の良いカット方式で コスト削減につながると評価され、多く の大手プリント基板メーカーに納入し、 精密機械メーカーの基を築いた。 それでも一つの新商品だけで企業 が永続することはあり得ない。常に新 しい事業分野を模索し、 目を付けたの がカバーガラスや石英、 セラミックなど の硬脆性材と呼ばれるもの。硬脆性材 は、機能的特性などから光学関連部 品や電子材料などで一層の応用が期 待されていたが、加工性が悪く、いか にきれいに、速く加工するかといった加 工技術が求められていた。 「開発に着 手したころ、 プリント基板製造機に頼り 実験・装置開発 硬脆性材接着技術 ●中部 ●中部 会社概要 超音波でガラス加工 4社の強みを持ち寄る コア企業は木工加工機を専門としてき た企業です。木材独特の加工技術のノウ ハウを異分野の硬脆性材加工に応用し独自技術を開発、 事業化に成功したことは他企業の活動にも参考になると 思われます。今後、硬脆性材の利用分野はますます増加し てくることが予想され、さらに大きな事業に発展するもの と期待しております。既に企業活動の大きな柱になってい ますが、事業分野の拡大とともに事業所の拡大、設備増強 などに対応する効率的な経営支援が必要になってくるも のと思われます。 中小企業基盤整備機構 関東本部 ●関東 ●関東 カバーガラスや石英、セラミックなどを加工する硬 脆性材加工機 切った経営の危うさを感じたので、新 たな事業の展開が必要だった」 (庄田 匡宏社長) 当面の開発目標は、 ガラス製ハード ディスク用のダブルコアリング加工とい われる穴開け切削加工装置。それは 到底、中小企業1社で完成できるもの ではない。優れた技術を持つ3社に声 を掛けた。 ショーダテクトロン㈱がコア 企業となり、硬脆性材加工技術の基 礎開発と加工機製作、砥石開発など を担当。 コアリング (穴開け)加工を効 率的に行う超音波振動に関し高度な 技術を有するプロソニック㈱(川崎市) が、 回転式超音波発振ユニットの製造 を担当。優れた制御ソフト開発技術が あり、高精度加工に対応した自動化ソ フトプログラム製作が得意な㈲フェイテ ス (浜松市)は、独自の技術で機械の 働きをコントロールする制御ソフトの開 発を担当。㈲葉月産業(埼玉県) は、装 置の組み立て、 メンテナンスなどを担当 した。 平成19年7月、硬脆性材加工装置 の事業化を目的に4社連携による新連 携事業として認定された。 コア企業 ●東北 ●東北 カバーガラスや石英、セラミックなどを加工する「硬脆(こうぜい)性材加 工装置」の開発に成功し、製造・販売を行っている。木工機械製造で培った ものづくりのノウハウを生かし、これまでにもパソコンなどの電子機器に組 み込まれているプリント基板をクリアカットする加工装置「Vカットマシン」 を生みだすなど、IT社会の一端を陰で支える重要な役割を担っている。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 硬脆性材加工装置の開発に成功 IT社会の一端を支える 事業の概要 連携体の構成 静岡県浜松市 代表取締役 庄田 匡宏 氏 39 古橋織布 有限会社 静岡県浜松市 会社概要 40 平成20年に4千万円だった古橋織 布㈲の売り上げは、事業認定から2 年後の23年から大きく伸び、24年には 7,500万円になった。23年度には、織物 製造業では初めて、浜松市の「ものづ くりマイスター」認定を受けた。 「展示会で出会うデザイナーたち これまで国内外で人脈をつくり、欧 米でも一応の実績ができたが、単発の オーダーにとどまっている。安定した売 り上げにつながるように、 さらに交流を 深めていきたい。 また、 インドやタイ、香 港での展開を視野に入れている。 「日本側の品質検査は非常に厳し い。それは海外でも知られていること で、それをクリアしている日本製品は、 海外でも競争力がある。織物のニー ズも日本国内と海外では大きな違いは ない。 しかもヨーロッパでは、大手メー カーでも中小の工場に対して対等に 話をしてくれるのがうれしい」 経 営 者 の ひ と 言 ニーズに対するアンテナを 新しい展開をつくっていくには行動力と頑 張りが大切です。人それぞれ能力の違いは あっても、気持ちを常にもっていくことで新し いことはできます。それと“出会い”が大事。 他業種や若い人と情報交換することが、世 の中のニーズに対するアンテナになります。 地域資源活用事業の認定を受けたこと で、新たなネットワークが広がり、 このアンテ ナを磨くのに役立ちました。 ●沖縄 ●沖縄 布地見本 認定から2年で売り上げ増に 異業種交流にヒント 欧米でつかんだ実績を生かす インドなどアジア圏を視野 ●九州 ●九州 古橋織布㈲本社 事業の成果 今後の事業展開 ●四国 ●四国 新たに開発したのは、静岡県遠州 地区の遠州織物技術を活用し、一般 的に限界とされている糸密度よりも5~ 10%も高い密度の織物を使った生地。 糸を芯までしっかりのり付けすること で、 ストレスに強くなり、織った際にも糸 が丸いまましっとり仕上がる。 これを、 昭和40~50年代の大量生産時に効 率化を目指して開発された近代型の 織機ではなく、 それ以前の低速で回転 するシャトル織機で織る。生産ペース は1日20~25メートル程度で、一般的な 織物工場の約半分だが、独自のノウハ ウも加味した布は他にはない手触りと なる。 作ったのは遠州ツイード (ウール・麻 混ツイード)、細番手コードレーン (綿 100%) 、 バンブーリネン (竹・リネン交織) といった生地で、他社や海外産の安 価な大量生産品との差別化を図りな がら国外を含めた販路の拡大を目指 した。 商品紹介のパンフレットを作製し展 示会に出展。 「展示会では、例えば30 歳代の若いデザイナーが興味を示し てくれた。 わざわざ東京から工場を見 に来てくれる人もいる。一般のニーズ る」 作るのはプロでも自販は初心者。そ れを自覚しながらの挑戦が、新商品の 販路拡大につながっている。 ●中国 ●中国 事業名:風合い重視の伝統製法による新たな 超高密度織物の開発と海外販路開拓 地域資源名:遠州織物 認定日:平成21年3月19日 昭和3年の創業以来、綿織物が盛 んな浜松市で地元問屋の委託生産を 中心に行ってきた。 しかし20年ほど前 から、円高により原料コストが高騰。大 手工場が次々と廃業していき、中小も 含め市内に1,000社超あった工場は、 現在では100社程度まで減少した。 「もともと浜松の中小工場は、 技術に は定評があった。 しかし委託生産だけ では食べていけなくなり、17~18年前 から長年の技術を生かして自販の道 を模索し始めた」 (古橋敏明社長) とい う。 そこで着手したのが新たな生地の 開発。 目指したのは超高密度でふっく らした風合いを持ち、 イタリアやフラン スなど世界的なアパレルのニーズにも 対応できる新しい生地で、平成21年3 月、地域資源活用事業の認定を受け た。 は、 よそにはない生地で独自の商品を 作りたいと思っているので、 さまざまな 助言や提案をしてくれる。 こちらもそれ が勉強になった。海外からの問い合わ せも増えている」 という。 訪問営業はほとんどせず、展示会 を通じた商談がメーン。海外への販売 は、売り上げの2割強を占める。古橋 社長は「品質を認めてもらえているよう で、値下げを求めてくることはほとんど ない」 と言う。 手に取って見てもらえれば、その技 術は多くの人が認めてくれる。その機 会となる展示会への出展や中小機構 が主催する認定事業者交流会への 参加が、 大きなメリットになったという。 「例えば漬物を作っている業者の方 やチーズを作っている業者の方など、 分野が違っても発想の仕方や取り組 む姿勢に、 なるほどと思える。特に、 ア イデアや発想というのは年齢には関係 ないので、若い人との交流も勉強にな ●近畿 ●近畿 古橋織布 有限会社 代表取締役 古橋 敏明 昭和3(1928)年2月 静岡県浜松市西区雄踏町山崎 3574 ●資本金 300万円 ●従業員数 5名 ●売上高 7,500万円(平成24年8月期) ●事業内容織物の製造・販売 ●URL http://www.furuhashiweaving.co.jp/ 053-592-1249 ●TEL 053-592-1053 ●FAX 安価な大量生産品と差別化 海外の展示会に積極出展 に詳しい新しいお客との交流を通し て、 生地の色や柄に反映していった」 フランスのパリ、 イタリアのミラノと いった海外の展示会にも積極的に出 展。海外バイヤーの目に留まり、取引が 始まったほか、大手アパレルメーカー への販売も実現し、海外売り上げが伸 びた。 また、 日本で海外向けの商品で 活躍しているデザイナーを通して、 口コ ミで社名が海外に伝わるケースもある という。 ●北陸 ●北陸 ●社名 ●代表者 ●設立 ●所在地 原料高で大手が次々廃業 委託生産から自販へ切り替え 中小企業基盤整備機構 関東本部 チーフアドバイザー 高橋 玲子 ●中部 ●中部 低速のシャトル織機で織ることによってふっくらし、 しっとりとした風合いを保ちながら超高密度の織 物を実現 事業の展開 作業風景 ●関東 ●関東 事業の概要 ●東北 ●東北 江戸時代から綿の名産地で、 「遠州織物」が栄えた遠州(静岡県西部)。 風合いを重視して作られる伝統的な製法を生かしつつ、独自の技術を用い て、ふっくらし、しっとりとした風合いを保ちながら超高密度の織物を開発。 ヨーロッパなどの展示会に積極的に出展し、海外に販路を広げる。 認定事業の開発商品が国内外から品 質を高く評価されており、国内では大手 アパレルによる同社生地自体の紹介POPを提示しての販 売展開もみられています。海外では展示会出展のたびに 年々オーダーが増加しており、有名アパレルとの直接取引 も実現し、今後も販売先拡大が大いに期待できます。ただ し、単発受注が多いため、今後も継続的な海外展示会出 展が不可欠ですが、単独では費用負担も大きいため、国 際化支援制度などの活用が求められています。 ●北海道 ●北海道 シャトル織機で織り上げた超高密度織物 独自技術で大量生産品との差別化 支援者の視点 代表取締役 古橋 敏明 氏 欧米向けテキスタイル商談会 41 株式会社 池山メディカルジャパン 会社概要 める機能を有しているほか、乳房再建 に用いる自肉の必要量を計量しやすく することで、手術時間の大幅な短縮を 実現し、患者の負担をできる限り少なく するシステムとなっている。 この人工乳房と乳房再建の二つを 柱にしたのが「人工乳房再生トータル ケアシステム」だ。協力病院との連携 により、患者の心のケアと身体的な乳 房再生の道を切り開くことを目的として いる。医療関係者(形成外科医、麻酔 医、看護師)向けの指導マニュアルビ デオの製作なども開始した。 事業の成果 学会発表で大きな反響 認知度も向上 認定事業の売上高推移 (愛知県名古屋市) ●コーティング装置の特許 権者 ●医療機器認定事業者 ●人工乳房製造、販売ノ ウハウ ●再建システム用資材の 提供 ●人工乳房資材の混合 技術・ノウハウ ●人工乳房製造指導 ●再建システムマニュアル の作成ノウハウ ●乳がんに関する情報提供 販売先 医療機関 人工乳房利用者等 経 営 者 の ひ と 言 何事も諦めずにやる 10 24年9月末 23年度 自分自身、最初の事業失敗で挫折を味わ いましたが、人工乳房の分野で復活すること ができました。何事も諦めずに前に進んでい れば、道は開けるものです。ずうずうしいと思 うくらいに、自分の信念を主張すること。そう することで、熱意が伝わり、協力者が集まって きます。人の役に立つことは、絶対諦めては いけない。諦める方が社会損失だと考えてい ます。 ●沖縄 ●沖縄 0 女性スタッフ。 また製作担当のスタッフ が5万件に達するのではないかと予測 も全て女性にしている」 (池山社長)。 している。 「認定を受ける前は、研究開発に没 「再生技術の普及には人材育成が 急務」だと考えており、同じ女性の立 頭し、今思えば患者さんへの告知方 場でケアできるよう、主婦を中心に約 法が十分でなかった。認定によりマス コミの取材が増加し、世間の認知度、 100人の研修生を有給で教育し、熟練 人材の育成に力を入れている。 注目度は格段に上がった。その際、中 今後は「乳房だけにとどまらず、人 小機構から地域活性化支援アドバイ 体のあらゆる部位の再生支援を行い ザーの派遣を半年ほど受け、マスコ たい」と考えている。指を欠損した人 ミや学会、病院などへの効果的なプ への再生支援など、整形外科医とタッ ロモーション方法を学んだことが役に グを組んだ取り組みも検討している。 立った」 (池山社長) という。 また、米国では年間約3万人の再建 今後の事業展開 手術患者がいるといわれており、 「ライ 人材育成が急務に センス供与などの手段でまず進出の あらゆる部位へ再生支援拡大 足掛かりをつけたい」考えだ。現在、中 小機構の国際化支援アドバイザーか 「乳がん患者は喪失感がとても大き らのアドバイスも受けている。 く、重要なのは、いかに心にあいた穴 一方、新しい取り組みはそれだけで を埋められるかということ。人工乳房を 選択する決心がつかない方も多い。 はない。全国温泉協会や日本旅行新 聞社と協力し、乳がん患者が旅行しや 当社では購買前に必ずお客さまにカ ウンセリングをさせていただいている。 すいツアー企画など、環境の整備も始 めている。 アドバイザーは人生経験豊かな50代 ●九州 ●九州 単位:百万円 2 42 (株)ジェイアンドティシステムズ (愛知県名古屋市) ●四国 ●四国 現在、人工乳房市場における同社 のシェアは95%に達している。 また、再 建手術に使うMT計量法キットを日本 乳癌学会で発表したところ、医療関係 者やマスコミから大きな反響があった。 同キットの普及で5年後には再建手術 4 MTマスターモデル (株)池山メディカルジャパン ※認定時の構成 6 MT計量法キット 日本人工乳房協会 中小企業基盤整備機構 中部本部 プロジェクトマネージャー 平松 昌 8 人工乳房の製作現場 人工乳房作成人材支援 ●中国 ●中国 事業名:乳房を失った患者に精神的ショックの ケアを施す乳房再生支援システムの提供事業 認定日:平成24年2月3日 人工乳房資材の技術提供 再建システムマニュアルの提供 ●近畿 ●近畿 株式会社 池山メディカルジャパン 代表取締役 池山 紀之 平成15(2003)年1月 愛知県名古屋市名東区高社 1-231 ●資本金 1,800万円 ●従業員数 20名 ●売上高 2億円(平成23年3月期) ●事業内容人体再建用資材、人工乳房の製 造・販売 ●URL http://www.ikeyama-mj. com/ 052-776-6918 ●TEL 052-777-6918 ●FAX 再建用資材、 人工乳房の製造・販売 協力病院 ●北陸 ●北陸 ●社名 ●代表者 ●設立 ●所在地 医療ノウハウ支援 ●中部 ●中部 人工乳房 本事業は、乳がんが発見された患者に 対し、不安を少しでも解消してもらうため に「リボンネット」というホームページを運営・情報発信し、 再建手術に使用する再建システムキットや指導マニュア ルビデオの提供、水温で肌の色と同じ赤みを帯びるオー ダーメードの人工乳房の提供による乳房再建の総合的支 援システムです。本事業は女性の視点に立ったきめ細か な支援であるため、患者の方からは非常に感謝されていま す。 ●関東 ●関東 内の㈱ジェイアンドティシステムズと 知り合い、共同で開発を進め、2年ほ 親族の話で開発決断 どかけて満足のいく仕上がりの人工 人工乳房で数々の受賞 乳房が完成した。21年にはN-1グラ 日本で乳がんの手術を受ける女性 ンプリ (NEXT NAGOYA NO.1) を は年間約5万人。そのうち切除で乳 受賞、22年には「ジャパンベンチャー 房を失う女性は約3万人といわれてい アワード2 0 1 1中小 企 業 庁 長 官 賞 」 る。平成7年、医療関係事業を手掛け 「NOBUNAGA21最優秀賞」を立て ていた池山紀之社長の親族が乳がん 続けに受賞している。 になり、左の乳房を切除した。 「人目を こうした実績のもと、人工乳房の開 気にして温泉にも行けない。普通の生 発だけでなく、乳房再生の総合的な支 活が送れるような人工乳房が欲しい」 援システムを提供、普及することを目指 という親族の願いを何とかかなえよう し、24年2月に新連携事業として認定 と開発に着手した。 された。 乳房再生は、腹部などの自肉を移 事業の展開 植する乳房再建手術と、 シリコン樹脂 正確な乳房再建手術を で人工的な乳房を製作し装着する方 法に大別できる。 しかし、再建手術は、 乳房の計量法を開発 乳房に移植する肉の量や形状を医師 開発した人工乳房は、水温によって の経験や勘に頼っている部分が大き 地肌と同等色の赤みを帯びる。 「露天 く、余分に肉を取ってしまったり、正常 風呂など人前でも裸になれるように」 と な乳房とのバランスが悪かったりする いう患者のニーズを実現した。 など、多くの問題点があった。一方の 両社の連携の成果はそれだけにと 人工乳房も、当時、市場に出回ってい どまらない。乳房再建の分野でもMT たものはすぐに外れたり蒸れたりと実 計量法を考案した。 これは、手術前に 用性が低いものばかりであった。 患者の正常な乳房からシリコン樹脂で そのような中で、 シリコン樹脂に詳 型を取り、その型を基にマスターモデ しい専門家を有する、同じ名古屋市 ルを製作。術後の乳房の再現性を高 コア企業 ●東北 ●東北 協力病院などの支援も受けながら、乳がんの摘出手術によって乳房を 失った患者に対して、新たな再建手術の方法や、より自然な人工乳房の提 供を行い、必要な情報やサービスを提供する総合的な乳房再生事業を展開 している。㈱池山メディカルジャパンが開発した人工乳房は、好みの既製品 のブラジャーが装着できるほか、水温によって地肌と同等色の赤みを帯び、 人前での入浴やシャワーもできるため、患者から喜びの声が上がっている。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 自然な人工乳房を実現 乳房再生支援技術の開発も取り組む 事業の概要 連携体の構成 愛知県名古屋市 代表取締役 池山 紀之 氏 43 株式会社 エコ・テクノロジー 連携体の構成 愛知県名古屋市 コア企業 風力発電装置の 設計・販売 風力発電装置の 製造・メンテナンス (株)エコ・テクノロジー 道路管理企業 (愛知県名古屋市) (有)美芳園工業 (愛知県愛知郡) ●東北 ●東北 自治体 ●風力発電装置の特許権者 ●筐体の製造、組立て ●風力発電装置の設計、 ノウハウ ●風力発電装置の出荷試験 ●国内への販売 ●風力発電装置のメンテナンス 中小企業基盤整備機構 中部本部 プロジェクトマネージャー 平松 昌 ※認定時の構成 事業の概要 会社概要 事業の展開 安全、効率が特長 都市のランドマークに 過程の中で社会貢献を 70 60 40 30 20 44 0 24年度 古い技術に新しい技術を組み合わせる ことによって、革新的な結果(イノベーショ ン)が出てきます。未来の子どもたちに私 たちができること、それが再生エネルギー の開発です。その目標に向かって、志を高 く持ち、諦めない精神を持つことです。目 標に到達できなくても、そのプロセスの中 で、社会貢献ができているはずです。 ●沖縄 ●沖縄 50 第二東名高速道路浜松インターの設置風景 トルネード風力発電装置をプラット ホームとした、 さまざまな利用方法を 提案する考えだ。例えば、展望台や巨 大津波の際の避難塔を都市のランド マークとして建設し、それにトルネード 風力発電装置を付けて、監視カメラや 街路灯、通信設備をアプリケーションと して設備し、 自立型の建造物とするな ど、ユニークな発想の提案も検討して いる。 また、水力発電分野でも同様な構 造が採用できると考えており、現在、愛 知県内で実験している。海外市場も積 極的に展開する方針で、すでにシンガ ポールの環境展に出展し、大きな反響 を得た。 ●九州 ●九州 単位:百万円 10 水力でも開発へ 海外市場も視野に 経 営 者 の ひ と 言 80 新型多段式仕様10kW級 (愛知県新舞子) 地元の高速道路運営会社では、吹 き流しに代わる新たな横風喚起標識 を探していたところ、 この風力発電装 置を知ったという。冬季の強風と雷が 激しい北陸地域において、 プロペラ型 の風力発電装置では事故の危険性 が懸念されたが、同製品は強風や落 雷にも倒壊、損壊しない構造を備えて いたことから採用された。 さらにこれが 追い風となって多数の商談が持ち込 まれ、民間企業や官公庁への販売も 順調である。 「愛知環境賞」を受賞するなど、新 しい風力発電装置としての評価は高 い。事業認定によって「信用力と認知 度が高まったことで、 ファンドなどからの 出資要請が多くなった」 (加藤社長) と している。 また、 「地元テレビ局などから 今後の事業展開 ●四国 ●四国 認定事業の売上高推移 高速道路への設置 愛知環境賞も受賞 ●中国 ●中国 ㈱エコ・テクノロジーは、開発を進め るうちに、製造コストや重量の面で課 題を抱えていたが、連携先の美芳園 工業は、各部品の接合技術や軽量ノ ウハウを持ち、低コストで生産ができる ことから、各部品の形状を改良し、部 品点数を減らすとともに強風に強い最 適な筺体(きょうたい)形状の開発に成 功した。 また、美芳園工業に本体の組 み立てや出荷試験を依頼したところ、 不良率も激減することができた。 トルネード風力発電装置は、3本の 支柱に支えられて頑強であり、双方向 に回るブレードが回転トルクを打ち消 事業の成果 の取材も多く、対応が間に合わないよ うな状況になっている」 と加藤社長は うれしい悲鳴を上げている。 ●近畿 ●近畿 事業名:強風や落雷等の悪条件下でも発電 可能で安全性を備えた双方向回転式風力発 電の製造・販売事業 認定日:平成23年6月17日 建築士の加藤政春社長は建築設 計の傍ら、趣味で風とも親しむウインド サーフィンやハンググライダーを楽しん でいた。風力発電装置の開発は、ふと 設計してみようと思い立ったのがきっ かけという。風力を効率よく動力に変え る形状としてオウム貝やヒマワリの種 に着目したデザインを研究し、試行錯 誤を繰り返した。そして誕生したのが、 世界でも類を見ない縦型の風力発電 装置「トルネード風力発電装置」。 上下2段の縦型ブレードに発電装置 を取り付け、双方向に回すことで、増 速機を使わずに倍の発電ができるこ とが特長。風切り音が小さく、風向きに 影響されず、力強く回転することがで きる。 ブレードが双方向に回転すること で、回転トルクを打ち消し合い、本体構 造フレームをブレードの回転による、 ね じれトルクから守って安定させている。 ブレードを縦方向に2段積むことで、小 さなスペースでも受風面積を稼いでお などで設置が進められている。 ●北陸 ●北陸 ●社名 株式会社 エコ・テクノロジー ●代表者 代表取締役 加藤 政春 ●設立 平成19(2007)年7月 ●所在地 愛知県名古屋市千種区日岡町 1-16-1 ●資本金 3,700万円 ●従業員数 3名 ●売上高 6,600万円(平成24年4月期) ●事業内容自然エネルギー供給システムの 研究、開発、設計、施工 ●URL http://eco-technology.jp/ ●TEL 052-734-8010 ●FAX 052-734-8011 類を見ない縦型発電装置 設置面積が少ない すため、台風などの強風にも強いな ど、安全性に配慮しているほか、 プロ ペラ方式に比べて風切り音が小さく、 バードストライクもない。 また、双方向に 回転する2段のブレードに発電装置を 取り付けることで、 全方向の風を効率よ く回転エネルギーに変え、かつ回転を 倍速で発電に生かせるなど発電効率 が高いという。 0.3~10キロワットを発電する小型か ら中型の装置で、都市空間における 再生エネルギーを利用したプラットホー ム製品を意識しているのが特長だ。例 えば、街灯や監視カメラ、掲示板、携 帯などの通信塔を付加施設としてパッ ケージ化し、エコな環境を都市のさま ざまな場所のランドマークとして提供で きる。 すでに国際特許も取得、 グリーンエ ネルギーへの期待もあり新聞やテレビ にも取り上げられるようになったため、 認知度が高まり道路管理会社や官公 庁にも注目され、高速道路や公共施設 ●中部 ●中部 トルネード風力発電装置(中部国際空港セントレ ア) り、小スペースで効率のよい発電係数 を実現させている。 この開発にめどが立ったため、 ステ ンレスや鉄・アルミニウムなどの素材の 曲げ加工に優れた技術を持ち、躯体 接合技術を有し、装置の製造、 メンテ ナンスを行う㈲美芳園工業(愛知県愛 知郡) と連携体をつくり、平成23年6月、 新連携事業として認定された。 ●関東 ●関東 上下2段のブレード(羽根)が双方向に回転し、発電効率が優れた新しい 風力発電装置を開発、製造販売している。設置場所が狭く、荒天でも稼働 し、バードストライクも少ないため、安全性を重視する企業や官公庁から注 目を集めている。 同社と㈲美芳園工業が有機的に連携 し、両社の強みを生かして製品が開発さ れたところに本事業の優れた点があります。昨今、グリー ンエネルギーへの関心は非常に高まっていますが、本事業 では官公庁関連にターゲットを絞り、経営資源を集中して 販促活動を行っていきます。当機構では、本事業の経営戦 略と不足する経営資源を考慮し、知的財産、販路開拓、財 務について専門家を派遣し、フォローアップ支援を行って いきます。 ●北海道 ●北海道 次世代トルネード型風力発電機 狭小地、荒天でも稼働 新連携 支援者の視点 代表取締役 加藤 政春 氏 23年度 45 大津鉄工 株式会社 連携体の構成 愛知県弥富市 会社概要 社屋全景 スルー施工連絡会」 も設立した。 この 連絡会は、現在、4社のコア企業を中 心に全国18社で構成し、構成メンバー 間で営業情報の共有やDスルー工法 の普及展開を共同で行っている。 この LLPと連絡会の事務局を担当するの は同社のスタッフである。 Dスルー工法に必要な製品はLLP が一括で全国の施工会社や大小の ゼネコン会社に提供する。 会員企業は、 「耐震基礎安心工事システム」 という コンセプトで確実な施工と各工程で厳 しい検査を行い、安心基礎工事の実 現に取り組んでいる。 事業の成果 事業認定でイメージアップ 会員向け技術講習会で研さん 認定は「対外的なイメージアップに つながった」 「マスコミなどの取材回数 も増え、工法普及に大いに貢献した」 (大津社長)。新事業活動促進支援 補助金を、 カタログ作製のほか、建築 認定事業の売上高推移 (社)日本鋼構造協会 ユニタイト(株) (兵庫県神戸市) ●部品設計・開発 ●専用部材、副資材製造 (株)東京ネジ製作所 (東京都葛飾区) ●東日本マーケッティング ●Dスルー工法企画・開発・設計 今後の事業展開 連携組織の活用 5年後には30億円に Dスルー工法を今後さらに全国に展 開していくためには、部材コストや施工 費用などで、同業他社に競り勝つため のコストダウンを行い、工事の施工にお けるさらなる工期短縮や効率化が課 題となる。 また、 営業面では、 そもそも建築工事 の設計段階で、発注仕様に採用され ていなければ、Dスルー工法による施 工を受注できないことになる。そこで、 LLP「Dスルー」の活動を通じて、連絡 会会員同士のITを活用した営業情報 の共有や、 見積もり作成支援ツール、 注 脚計算ソフトの開発など、会員企業に 対する営業支援の強化に努めている。 大津社長は、 「Dスルー工法関連事 業の売り上げを現在の7億円から、5年 後には30億円にしたい」 と抱負を語っ た。 コーディネーターが大事 300 250 200 150 100 21年度 20年度 19年度 18年度 土木関連の展示会や中小企業総合 展への出展、各種の広報活動、会員 同士の情報交換、 さらに営業支援ツー ルである見積もり作成ツールや注脚計 算ソフトの開発などに活用し、特に対 外活動において性能の高さが広く評 価され、認知度が高まった。連絡会会 員企業も年々増加し、 それがビル、 マン ションなどでゼネコンへの販売が順調 に推移する力となった。 一方、施工件数が次第に増えるに つれて、 日本のどこでも均一の施工状 態を提供することが課題となってきた。 施工品質向上のためには、施工作業 に関する知識や技術を持ち、かつ認 定された人が施工作業を行う仕組み が必要と考え、施工実績の多い会員 企業と共同し、新規会員企業への指 導・教育を行う取り組みを行っている。 年2回の技術講習会を開催し、会員が それぞれの施工事例を紹介し、施工 内容と技術レベルの確認を行い、研さ んに努めている。 新連携事業に取り組んでみて、連携に参加した4社がそれ ぞれの思いを整理し、連携の目標を目指して、その思いをつな いでいくことが重要です。事業が進む段階で、必ず各社の役 割、分担、身入りが変化します。そういう時には、常に原点に 戻って目標を見失わないようにしないと連携は続きません。本 事業は、当社が担当しているLLP「Dスルー」の事務局が、4社 の連携を強化するためのコーディネーター役となったことで 連携がうまくいったと考えています。そうしたコーディネーター 役の存在が新連携のキーポイントといえるでしょう。 ●沖縄 ●沖縄 46 技術協力 経 営 者 の ひ と 言 単位:百万円 0 Dスルー工法の施工例 東日本マーケッティング ※認定時の構成 50 Dスルー工法の施工現場 部品設計・開発、専用部品・副資材製造 顧客 全国ゼネコン ●九州 ●九州 Dスルー工法のアイデアは実は30年 前にさかのぼる。 しかし、 それを販売に つなげることがどうしても難しかった。 本事業では同社のノウハウをあえて公 開し仲間を募った。 「中小企業同士が 仲間を組んで、中小企業なりのやり方 で事業を拡大していくことが重要」 (大 津社長) を信念とし、有限責任事業組 合(LLP) 「Dスルー」 と、 同工法に賛同 した施工業者が集まった業界団体「D ●東日本基礎ボルト・アンカーフレーム 製造 ●四国 ●四国 LLPを設立 製品販売と工法の普及 (埼玉県八潮市) ●現場施工工事技術研修 ●西日本マーケッティング ●西日本基礎ボルト・アンカーフレーム 販売 ●中国 ●中国 事業の展開 (株)アキテック (愛知県弥富市) ●近畿 ●近畿 事業名:耐震建築用基礎ボルト工事システム の全国展開事業 認定日:平成18年10月20日 大正12年の創業以来、一貫してネ ジ製品を中心とした建築用金属製品 の製造販売事業を行ってきた。本事業 の契機となったのは阪神大震災。基 礎ボルトの破断破損が原因で、多くの 建物が転倒・倒壊し、大きな損害が発 生した。 これを教訓に、柱脚倒壊防止 に有効な「Dスルー工法」を開発し、 よ り安全で全国均一な施工が可能な耐 震建築用基礎ボルトの製造および工 事システムの施工を行い、Dスルー工 法の普及を図っている。 在来工法では、架台部分と鉄筋が ぶつかり合うことで位置ずれを起こす などスムーズな施工が難しい。 またア ンカーフレームを施工現場で組み立 てるため、障害物や段差があった場 合に脚部の移動や長さの調節で手間 が掛かる。Dスルー工法ならこれらの Dスルー施工連絡会 東日本 基礎ボルト・アンカーフレーム製造 ●北陸 ●北陸 ●社名 大津鉄工 株式会社 ●代表者 代表取締役 大津 尚彦 ●設立 大正12(1923)年4月 ●所在地 愛知県弥富市五斗山3-138-2 ●資本金 7,600万円 ●従業員数 98名 ●売上高 25億円(平成23年3月期) ●事業内容土木・鋼構造物の工事 ●URL http://www.otsutekko. co.jp/ 0567-56-5502 ●TEL ●FAX 0567-56-5512 新工法を開発 安全な施工と工期短縮 業界団体 大津鉄工(株) ●中部 ●中部 Dスルー工法のイラスト 問題を一掃できる。 「建設現場におけ る鉄筋の配筋工事の省力化が特徴 であり、注文のリピート率は95%と高く、 現場で評価されている」 (大津尚彦社 長) Dスルー工法の全国展開に向け、 現場施工工事技術者の教育研修と西 日本地区向けの製品(Dスルー基礎ボ ルト・アンカーフレーム)製造を行う大津 鉄工㈱がコア企業となり、東日本地区 施工管理などを行う㈱東京ネジ製作 所(東京都)、東日本地区向けの製品 製造を行う㈱アキテック (埼玉県)、Dス ルー用副資材の製造を行うユニタイト ㈱(兵庫県)の4社が連携し、新連携 事業として平成18年10月、事業認定さ れた。 4社が連携を組むことによって、 低価格で性能の高い製品の提供、施 工時間の短縮化を図ることができた。 中小企業基盤整備機構 中部本部 プロジェクトマネージャー 平松 昌 現場施工工事技術教育研修等 ●関東 ●関東 地震に対する建物の脆弱性を改善するため、鉄骨基礎の安定化を図るア ンカーボルトと安全で低コスト、施工が容易なDスルー工法を活用したアン カーフレームの製造組立手法を開発。同手法を全国に普及させるため、各 地の施工業者からなる業界団体を設立し、技術教育研修を通じて、普及活 動に取り組んでいる。 コア企業 ●東北 ●東北 同社をコア企業とする連携体は、月に2 〜3回の頻度で連携体会議を開催し、緊 密な情報交換や意見交換を行い、問題点・課題を迅速に 解決しています。Dスルー連絡会では、建設業界団体の関 係者や学識者を招き、Dスルー工法の普及に努めていま す。また、建設土木業界では工事の受発注業務でトラブル が発生しないように、認定当時では珍しい有限責任事業 組合LLPを設立し、順調な事業の発展に成功しました。 受発注管理 有限責任事業組合LLP 「Dスルー」 ●北海道 ●北海道 安全、低コストのDスルー工法 全国展開目指し業界団体も設立 事業の概要 連携体 支援者の視点 代表取締役 大津 尚彦 氏 47 株式会社 近藤機械製作所 連携体の構成 愛知県蟹江町 コア企業 同社の代表取締役および関係する従業 員の本事業に対する士気が極めて高く、 全員が意識、行動を共有化し、高い経営モチベーションで 展開しています。この力強い企業行動に対して、今後も積 極的に内に入り込み、企業・機構が一体となって前進させ ていきたいと思います。 ハブの設計・製造・販売 (株)ティ・エフ・マネジメント ●航空機品質 ●マネジメント指導 (株)近藤機械製作所 (愛知県名古屋市) (有)御器所技研 ●ハブの構造設計 ●特許の出願管理 ●H21年JIS Q9100認証取得 ●航空機部品設計・精密加工技術 ●難切削材機械加工技術 ●超精密ハブ組立て技術 西尾張シーエーティヴィ (株) ●広報ツールの開発 ●広域宣伝網開拓 (株)東新電化 (名古屋市中川区熱田新田) ●ハブの表面硬化 (アルマイト処理) ●ハブ表面の意匠性向上 ●独自の発色技術 (ノウハウ) 朝日大学体育会自転車競技部 ●自転車性能評価 ※認定時の構成 事業の概要 会社概要 事業の展開 高性能ハブを実現 高級自転車を対象 今後の事業展開 35 海外進出本格化 オートバイも視野に 30 25 15 10 5 GOKISOハブとホイールの組み立て風景 GOKISOハブの検査の様子(宝工場) 48 GOKISOホイール 0 24年度 23年度 22年度 近藤社長は「今後も、ユーザーの声 に耳を傾けて、新商品の開発を進めて いきたい」 としており、 月100セットの販 売を当面の目標としている。 また、 オー トバイ、競技用車いすなどへの用途開 チャレンジ精神忘れないで 下請け事業で成り立っている企業 も多いと思いますが、やはり基本は、 マーケット(ユーザー)と向き合った 製品の開発・製造だと考えています。 自社商品の開発を行うことで、社員 の士気も高まるので、チャレンジ精神 を忘れないでほしいと思います。 ●沖縄 ●沖縄 20 経 営 者 の ひ と 言 ●九州 ●九州 単位:百万円 新たな事業分野への進出、それも 大手メーカーを中心とする自転車業 界への参入は至難の業だった。 このた め、宣伝技術にたけた企業の支援を 得ながら、マスコミや口コミを利用した 新たな宣伝手法を駆使して、 グローバ ル展開を図る戦略を取っていった。 この結果、 「GOKISO」は、国内外 の300名以上の自転車競技者に愛用 され、高い評価を受けている。 リーマ ン・ショック以降低迷した業績も改善さ れ、25年度の売り上げを4億2千万円と 見込むなど、回復基調となってきてい る。 「GOKISO」の性能に共鳴して、入 社した自転車選手もいるという。 そのこ とで、 さらに「GOKISO」の性能向上の ための改良が進んでおり 「社員に本当 のものづくりの成功体験をさせることが 目標」 という。 なお、 この自転車選手は、 実業団競技に参加し、優秀な成績を 残している。 ●四国 ●四国 認定事業の売上高推移 自転車選手も愛用 ものづくりの成功体験 ●中国 ●中国 自転車用ハブの開発では、以前か ら支援を受けていた㈱ティ ・エフ・マネ ジメントの協力も得ながら、航空機のベ アリングの構造もヒントにした。試行錯 誤の結果、 ハブ単体で3万rpm以上の 超高速回転、耐荷重は400キログラム 以上で従来ハブの4倍以上であり、か つ寿命は航空機部品と同等の30年と いう、世界にない高性能を持つハブを 完成させた。 事業の成果 発も視野に入れている。 自転車レースが盛んな欧州や台湾 への海外展開にも積極的で、 これまで に、 フランス、 オランダ、 ドイツ、 アメリカ、 オーストラリアの展示会に出展してい る。社長によると 「反応は上々」で「ドイ ツからは既に引き合いがあり、近々、取 引を開始する予定である」 とのことだ。 本格的な海外進出がこれから始まる。 近藤社長は、認定は「企業にとって の社会的な名誉だ」 と語っている。認 定を受ければ社会的な信用度が向 上し、金融機関の支援も受けやすくな る。 こうした企業同士での事業連携を 進めることが重要で、 そうした観点から 「今後も認定事業を推進することが 必要だ」 と考えている。 ●近畿 ●近畿 事業名:航空機技術を取入れた業界初の超 低慣性自転車用ハブの製造・販売事業 認定日:平成23年2月2日 昭和22年の創業以来、 自動車関連 の下請け企業として精密ベアリング部 品の製造に携わってきた。 また、高い技 術力を生かして民間航空機のジェット エンジン用ベアリングの機械加工にも 参入し、平成21年度には国内で唯一、 大手航空機メーカーから正式な認定 を受けた工場として航空機の品質マ ネジメントシステム (JIS Q9100) も取得 した。 しかし、 リーマン・ショック以降、 自動 車関連の受注がピーク時の15%に低 迷し、事業方針の転換を迫られた。 「自 社独自の事業でマーケットに向かい合 うことが必要」 (近藤信夫社長) と判 断。 そんな中、社内でブームであった自 転車レースに参加した機械設計エン ジニアの専務が、 自転車のハブの状 態が悪いことに気付き、 「重く、 ガタが あり、安定しないのはなぜか」と疑問 路開拓を推進している。 ●北陸 ●北陸 ●社名 株式会社 近藤機械製作所 ●代表者 代表取締役 近藤 信夫 昭和22(1947)年2月 ●設立 ●所在地 愛知県海部郡蟹江町舟入1-130 ●資本金 4,000万円 ●従業員数 32名 ●売上高 3億6,800万円(平成23年4月 期) 精密機械の開発・設計・加工・販 ●業種 売 http://www.kondo-kikai.co.jp/ ●URL ●TEL 0567-95-1343 ●FAX 0567-95-7296 航空機部品の加工技術を活用 自社の独自事業の必要性 ジュラルミン製ハブの表面硬化と腐 食を防止するため、東新電化が保有 するアルミニウム合金の表面に酸化膜 を付与するアルマイト処理技術とノウ ハウを組み合わせ、独自の発色と耐久 性が可能となった。 そうして完成したのが高級自転車 用ハブ「GOKISO」。現在、 この高級 ハブと、車輪外周部品のリムと、 ハブと リムを結合させホイールとして組み立 てた製品を製造し、市場に供給してい る。 新連携事業の認定を受けたのは、 17年度の工場屋根の断熱工法の開 発事業に続き2回目。当時はマーケット に精通するものがおらず事業拡大を することができなかった。 この反省を踏 まえて、基幹技術である航空機部品 加工技術をフルに生かして、高速性 能や耐久性を重視するプロやマニア に対しての直接販売や大小の自転車 店、競技用自転車を製造する国内外 の自転車メーカーをターゲットにした販 ●中部 ●中部 自転車用GOKISOハブ を抱いた。 「軽快に、 スムーズに走れる 高性能なハブが欲しい」 という専務の 素朴な願望が、 自転車のホイールに取 り付け可能なハブの開発に結び付い た。 各種小物アルミ部品の表面処理を 多色・発色性に優れたアルマイト処理 で行う㈱東新電化(名古屋市) と連携 して、航空機品質で作り上げた自転車 用回転軸ハブを開発、23年2月に新連 携事業として認定された。 ●関東 ●関東 中小企業基盤整備機構 中部本部 チーフアドバイザー 加藤 隆幸 ハブの表面処理 ●東北 ●東北 基幹技術である航空機エンジンの主軸を支えるベアリング加工技術を活 用し、軽快に走ることができる自転車の高性能ハブを開発、大手自転車メー カーが展開する高級自転車市場で販路開拓に成功した。現在、国内外300 名以上の自転車競技選手に愛用される商品にまで成長した。 ●北海道 ●北海道 高性能自転車用ハブを開発 航空技術で高速回転性と耐久性を発現 連携体 支援者の視点 代表取締役 近藤 信夫 氏 49 杉江製陶 株式会社 愛知県武豊町 会社概要 既存製品を改良 新機能と価格優位性 新製品は、各所の公共工事で採用 され、 好評を得ている。 新製品を全国的に普及させるため には、既存顧客層に加えて、国や地方 自治体、建設コンサルタント会社などの 新規顧客を開拓するとともに、彼らに 工事設計書の作成段階で同社製品 を採用してもらう必要があり、 そのため にも同社および製品に対する知名度 の向上は重要な課題であった。服部 秀夫社長は、 「地域資源活用事業に 認定されたことで、販路開拓や試作品 開発のための支援が受けられたこと に加え、 マスコミの取材回数や展示会 への出展機会が増え、大きなPR効果 があった」 と評価している。 同社は、耐久性だけではなく、 さらな る価値を求めて環境調和性を考慮に 入れた技術改良も進めている。資源 循環型のリサイクル製品を目指し、回 収品を粉砕して骨材として製品に混 入し、50%のリサイクル率を実現すると ともに、10年に建設汚泥をセラミック原 料化して取り入れた製品開発に成功、 エコマーク取得や国土交通省のNET IS登録などを果たしているが、現在に おいても、 その取り組みは続いている。 服部社長は、 「リサイクルにも力を入 れ、環境問題への取り組みも積極的に 進めていきたい」 としている。 また、 海外 においても、途上国を中心に空港や高 速道路の整備が進んでいるため、 OD A (政府開発援助)やゼネコンとの協 業を通じて海外進出する方法を模索 しているところである。 経 営 者 の ひ と 言 地に足を着けた会社に 0 200 0 150 23年度 22年度 21年度 ●沖縄 ●沖縄 0 100 ビッグでなくてもよいので、地に 足を着けたグッドな会社を目指し たいと考えています。そのために は、自社の利幅を優先するよりも、 人に役立つ事業を継続させること が必要です。社員や社会に対して 共生の精神を忘れずに事業展開 することが大事だと思います。 ●九州 ●九州 単位:百万円 0 環境問題に積極的な取り組み 海外進出を模索 ●四国 ●四国 50 電線共同溝の埋設現場 各所の公共工事で採用 認定で大きなPR効果 認定事業の売上高推移 500 本社工場 事業の成果 今後の事業展開 ●中国 ●中国 新製品開発のポイントは、従来の耐 火性・耐震性・エコといった特長をさら に伸ばすこと。そして、競合品に対す る市場競争力を高めることであった。 具体的には、敷設施工の簡易さや敷 設条件に応じた強度性能の実現、直 径の異なる多孔配列などさまざまな 埋設ニーズに対応した新機能の提 供、そして工期短縮やメンテナンス性 なども考慮したトータルコストの低減に よる価格優位性の確保などだ。 そして、既存製品「セラダクト」に、 同社に蓄積された製陶技術やノウハ ウを駆使して改良を加え、以下の三つ の新製品を開発した。 トンネル専用のケーブル保護管「セ ラダクトA neo」は、 カップリング方式と いう接合する部分をソケット式にして 工期短縮を図るなど施工性を高めた ほか、同量の原料から管の長さを8% 時に樹脂管を複数用いないことから、 価格面でも競争力を持つ製品となって いる。 ●近畿 ●近畿 事業名:常滑焼の特徴を活かし防災・エコ・高 品質を実現したケーブル保護用多孔陶管の製 造・販売 地域資源名:常滑焼 認定日:平成20年7月2日 事業の展開 (5センチ)伸ばすことに成功した製品 で、 「トータルコストの軽減」につながる よう改良されている。 空港内の地中埋設ケーブル保護管 「セラダクトA エル・ソナタ」は、 スクラッ チと呼ばれる独自のひだ状の形状を 管の側面に採用することによってジャ ンボ機の3倍、荷重2千トンに耐えられ るよう設計された製品である。空港で はこれまでは鋼管が使用されていた が、陶管の方が価格面でも優位性が あり、塩害などへの耐腐食性にも勝る ことから、 採用が増えているという。 電線や電話ケーブルの地下埋設用 保護管「セラダクトA タモクト」は、 電柱 の地中化が進む都市部での浅層埋 設ニーズに対応すべく開発された製 品である。従来は異なる口径のケーブ ルを埋設するため、直径の異なる樹脂 管をコンクリートで固めたり、陶管の中 に入れ込む方法が採用されてきた。 そ こで、複数の大きさの口径を持つ多孔 陶管を開発し、施工面での簡易化と同 ●北陸 ●北陸 ●社名 杉江製陶 株式会社 ●代表者 代表取締役社長 服部 秀夫 ●設立 昭和23(1948)年10月 ●所在地 愛知県知多郡武豊町字上山1-76 ●資本金 5,684万円 ●従業員数 115名 ●売上高 19億円(平成23年8月期) ●業種 埋設ケーブル保護管用多孔陶 管、陶製トラフ、マンホール等の 製造・販売 ●URL http://www.sugie.co.jp/ ●TEL 0569-35-2360 ●FAX 0569-35-4087 設立以来、良質な常滑の陶土を活 用した「常滑焼」の土管づくりで培った 製造技術を生かし、陶製トラフ (U字型 側溝) の製作など、独創的な商品開発 にまい進してきた。常滑焼は大型のつ ぼやかめ、土管など、素地を低温で硬 く焼き固めるため、優れた耐熱性や強 度を持つことが特長だ。 昭和26年には、工期短縮を実現し た多孔陶管「セラダクト」を考案し、国 内唯一のケーブル保護用多孔陶管の 専業メーカーとなっている。 高度成長期になると、道路建設ラッ シュによってトンネル内の埋設ケーブル 保護用多孔陶管の需要が急増した。 特に、54年に発生した東名高速道路 日本坂トンネル火災事故では、大きな 損傷を免れたことによって、他の鋼管 や樹脂製品に比べて強度、耐熱、耐 性に優れていたことが証明され、杉江 製陶㈱製品の品質の高さがあらため て認識されることになった。 中小企業基盤整備機構 中部本部 プロジェクトマネージャー 大嶋 浩敬 ●中部 ●中部 市場縮小で新製品開発 業界のニーズを集約 ケーブル保護用多孔陶管 しかし、道路公団の民営化など、市 場変化の影響で平成17年ごろから売 り上げが減少。 このため、建設業界のニーズを集 約して新市場を開拓し、価格面で優 位性を訴求できる新製品の開発に取 り組むことを計画。20年7月に地域資 源活用事業として認定された。 空港に埋設される陶管 ●関東 ●関東 事業の概要 同社は常滑焼の特長でもある土管の 製造技術を生かして現代の需要に即した “新しい土管づくり”を地域で行っています。他に事業者 が少なくなっている中で、技術力を生かした展開は地域に はなくてはならない事業モデルだと考えています。性能面 でも見直されつつある製品です。さらなる用途開発にも期 待したいところです。 ●東北 ●東北 昭和初期から常滑焼の技術を応用した国内唯一のケーブル保護用多孔 陶管を製造する専業メーカー。近年、公共工事の需要が落ち込む一方で、電 線の地中化など、新たなニーズが顕在化している。市場環境の変化に対応 すべく、埋設時の簡易さ、高強度、直径の異なる多孔配列などの新たな機能 を備えた新製品を開発し、販路開拓に成功している。 ●北海道 ●北海道 ケーブル保護用多孔陶管の新商品を開発 市場環境の変化に対応し、販路開拓 支援者の視点 代表取締役社長 服部 秀夫 氏 20年度 51 ゼネラルヒートポンプ工業 株式会社 愛知県名古屋市 会社概要 ●社名 ※認定時の構成 テル・温泉旅館において冷暖房・給湯・ が続き、現状では年間2億~3億円の 床暖房システムの採用が決まった。 売り上げとなる大きな事業となってい ヒートポンプのプロモーションにも力 る。 を入れており、地中熱利用促進協会の 特に、東邦地水との連携によって 情報発信、各種セミナー開催のほか、 地質状態に応じた工費算定や工事 24年度には中小機構が開催した中小 施工方法などのさまざまなノウハウや 企業総合展内でもプレゼンテーション データが利用できるようになったことで、 を実施し、来場者へ製品や地下熱利 「顧客の多様な地下熱利用条件に 用に関する説明を行った。その後、問 応じた最適なシステム提案が可能とな い合わせや引き合いが増加している。 り、売り上げの拡大につながった」 とい 今後、各業界の実情にあった個別具 う。 体的な提案を行っていく予定である。 また、事業認定を受けたことで、地 元の新聞などをはじめとする多くのマ 事業の成果 スコミの特集で取り上げられ、 そのPR 年間2億〜3億円規模に 効果はかなり大きかった。その他、中 認知度が大きく向上 小機構の各種セミナーをはじめ展示 事業認定を受けたことで、以前にも 会などで講演の機会を得て、地下熱 増して協業関係は緊密となり、共同営 利用に関する広報活動を行うこともで 業・共同受注も増えて成果につながっ きた。 た。社員同士の横のつながりや他社に 今後の事業展開 触発されるなど、 社員のモチベーション 潜在マーケットの開拓 も向上したという。 この結果、地下熱利 新しいシステムの提案も 用ヒートポンプ事業は売り上げの拡大 柴芳郎常務によると 「 地 下 熱 利 用 はある 認定事業の売上高推移 単位:百万円 程度普及が進んできた が、 今後の潜在マーケッ 500 トの開 拓にはまだいく つか課題がある」とい 400 う。 300 地中熱利用ヒートポ ンプは導 入 費 用 が 高 200 22年度 いため、補助金を使っ 21年度 100 て採算が取れる状況と 20年度 19年度 0 なっている。 このため、 導入時の初期コストで大きなウエート を占める掘削コストの一層の低減に取 り組む。 その一方で、電力料金などエネル ギーコストへの関心の高まりを追い風 と捉え、積極的な営業展開を進め、太 陽熱などの新エネルギーと地下熱を 複合的に組み合わせた新しいシステ ムの提案も行っていく方針である。 経 営 者 の ひ と 言 事業認定きっかけに広報活動 当社は、新連携事業の認定をきっ かけに、省エネ・再生可能エネルギー に対する世の中の関心の高まりと相 まって、地元新聞をはじめ全国紙の 特集にも取り組み事例が取り上げら れ、営業面で大きなプラスとなりまし た。特に、認定をいただいたことで、 中小機構などからさまざまな団体・ 機関からのセミナーや展示会での講 演を依頼され、地中熱利用に関する 広報活動が行いやすくなりました。ま だまだ新しい、発展途上の技術を社 会に普及させていくために、今後も 公的支援制度を有効に活用させて いただきた いと考えて います。 ●沖縄 ●沖縄 52 地中熱利用ヒートポンプ システムの仕組み ●地下熱利用の普及PRを実施 ●九州 ●九州 温泉施設への導入事例 地中温度と外気温 (模式図) 販売体制の構築に当たっては全国 に販路を持つ大手商社との間に販売 代理店契約を締結したことによって、 一気に事業が進展した。一方、保守点 検についても大手ビルメンテナンス業 者と保守管理契約を締結、事業基盤 が固まった。 結果、大手部品メーカーの洗浄ライ ンへの採用が決まり、 また幾つものホ 中小企業基盤整備機構 中部本部 プロジェクトマネージャー 平松 昌 ●四国 ●四国 ゼネラルヒートポンプ工業㈱社屋 地下熱利用の普及PR 特定非営利活動法人地中熱利用促進協会 ●中国 ●中国 工場や温泉旅館への導入 東邦地水(株) ●地質調査、 ボーリング工事、空調衛生工事を実施 ●本事業に必要な地質データを保有 ●近畿 ●近畿 事業名:地球環境に優しい空調・給湯に利用可 能な業務用高効率地下熱利用ヒートポンプの 普及事業 認定日:平成18年6月8日 ボーリング工事、地質データ保有 ●北陸 ●北陸 ゼネラルヒートポンプ工業 株式 会社 ●代表者 代表取締役社長 柴 茂光 ●設立 昭和59(1984)年11月 ●所在地 愛知県名古屋市緑区大高町字己 新田121 ●資本金 7,000万円 ●従業員数 38名(他、アルバイト1名) ●売上高 9億5,000万円(平成24年3月 期) ●事業内容空冷式・水冷式ヒートポンプ冷暖 房給湯機の製造・販売 http://www.zeneral.co.jp/ ●URL ●TEL 052-624-6368 052-624-6095 ●FAX ●高効率地下熱利用ヒートポンプの製造、販売を実施 ●地下熱利用システムの設計等を実施 ●中部 ●中部 地中熱ヒートポンプシステムの製造現場 熱源システム設計、製造、販売 ゼネラルヒートポンプ工業(株) ●関東 ●関東 可能であり、何より環境に優しいことが 大きなメリットである。 環境に優しいシステム しかし、地下熱利用システムを広く 地下熱利用の普及を目指す 普及させるためには、導入時のコスト 昭和59年の創業当時は、空冷式の 削減と社会への周知という二つの課 ヒートポンプを取り扱っていたが、平成 題があった。 11年に地下熱を利用したヒートポンプ コスト削減については、地下熱を得 開発を行う (独)新エネルギー・産業技 るための縦穴の掘削費用が、その場 術総合開発機構(NEDO)のプロジェ 所の地質特性により大きく変動するた クトに参画したことをきっかけに、地下 め、井戸の深さや本数を技術的に調 熱利用の水冷式ヒートポンプの開発に 整し、掘削工費を厳密にする仕組み 本格着手した。 が必要だった。 これを解決するため地 地下熱利用は、熱源により地中熱、 質データを保有し、 ボーリング工事など 地下水、温泉排湯の三つに分けられ を手掛ける東邦地水㈱(三重県) と連 る。一般に地下水と温泉排湯は比較 携することとなった。 また、社会への周 的低コストでシステム導入ができるが、 知については、地下熱の利用が環境 地理的に利用できる場所が限定され に優しく、省エネ面でも優れていること ている。 これに対して、地中熱は、地中 を世の中に知ってもらうため、地下熱 に配管し水循環させて熱交換を行う 利用の普及PRに取り組んでいる特定 ので、地盤が安定していればどこでも 非営利活動法人地中熱利用促進協会 導入が可能で、大きなマーケットの可 (東京都) とも連携し、18年6月、新連 能性がある。 携事業の認定を受けた。 また、地下熱利用は、年間を通じて 事業の展開 一定した温度が得られるため、熱効率 販売・メンテナンスの確立 が高く、 ランニングコストを抑えることも 事業の概要 本事業は再生可能エネルギーが世間 一般に認知される前の平成18年度に認定 された事業です。3社が独自の経営資源を持ち寄り、地質 調査から掘削、 ヒートポンプ装置の開発、地下熱利用の普 及活動に取り組むことによって、事業を推進してきました。 先行して市場への普及活動を行った効果もあり、顧客から の信頼を得ることによって、受注も増加しています。今後も 本事業へは普及活動に役立つ展示会でのプレゼンの場を 提供していきたいと思います。 コア企業 ●東北 ●東北 年間を通じて温度が一定の地下熱源を活用した高効率の業務用空調・給 湯システムの開発、普及を目指している。地中熱抽出のための掘削工法の 改良、高効率ヒートポンプのシステムの設計と電話回線を利用した遠隔監 視による保守システムを構築し、全国的な地下熱利用ヒートポンプへの関 心の高まりによって、導入実績が進んでいる。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 効率的な地下熱利用ヒートポンプを開発 環境に優しいシステムの普及に貢献 連携体の構成 代表取締役社長 柴 茂光 氏 18年度 53 株式会社 明城 愛知県安城市 会社概要 認定事業の売上高推移 600 500 300 23年度 200 22年度 54 21年度 20年度 ●沖縄 ●沖縄 400 伝統軸組工法の家づくりは、残念ながら今 後確実に衰退すると考えています。私自身、 廃業も考えましたが、その前にやることがあ ると思い、新工法の開発、品質の実証、木材 調達の仕組み、 PR活動、工法認定取得など 地道な取り組みを続けてきたことが成果につ ながりました。今後も時代を先取りした取り 組みを行っていきたいと考えています。 ●九州 ●九州 今後も時代を先取りしたい 700 0 同社では、新工法による三河材の 無垢材のみを使用した「無垢の木の 家モデルハウス」を安城市内に新た にオープンさせている。大手電機メー カー関連企業との共同企画による太 陽光発電システムや、同社オリジナル の断熱障子パネルの採用など、最新 技術を取り入れた住宅として、消費者 に訴求していく計画だ。 また、 「NPO法人三河自然素材家づ くり研究会」活動の一環として、新工 法などをNPO会員企業である工務店 などに提供するとともに、材木の共同 仕入れや共同の住宅販売などを通し て、三河地域の木材を100%利用する 家づくりをさらに広めていきたいと考え ている。 経 営 者 の ひ と 言 単位:百万円 100 社屋 最新技術を集めた住宅の提案 会員企業に新工法を提供 ●四国 ●四国 新工法は、天井や壁、床の梁(はり) や土壁用に使用するパネルなどをあら かじめ工場で製造し、現場で組み立 てるプレハブ住宅工法を応用したもの で、現場での工期の大幅な短縮化に 成功し、 「建前」からおおむね55日間で 家が完成する。 価格面でも大手住宅メーカーのプ レハブ住宅より低価格を実現した。そ の一つの要因として、 スギ、 ヒノキ、 マツ といった地元の三河材の主要産地の 森林組合などと連携し、新たな木材調 達の仕組みを構築したことが挙げられ る。従来は西日本の大手産地の木材 を使用していたが、地元の森林組合と 組むことで、調達時間の短縮や輸送コ ストの低減が可能となったほか、地元 の製材所が同社の規格にあった部材 加工を引き受けてくれることになり、 トー タルとして従来よりも低コストで部材を 仕入れることを実現。現在、地元三河 産材は使用木材の約7割を占めてい る。 事業認定を受ける過程で、綿密な 事業計画を作成していたこともあり、新 事業活動促進支援補助金の獲得に つながった。補助金を活用して、 「大臣 認定壁倍率」工法認定の取得や「住 宅性能表示」のための実験を行うな ど、予定していた取り組みが前倒しで 実現できたという。 また、 自社のホームページで、住宅 工法の特長や強度実験結果などを消 費者に分かりやすく情報提供してお り、 それが新たな顧客層の獲得につな がっているという。 現在、本事業を中核事業と位置付 け、団塊世代・団塊ジュニア世代を主 なターゲットとして販路展開を進めて いるところであるが、地元西三河地区 以外の顧客にも徐々に認知度が浸透 してきており、同社を指名する動きが 今後の事業展開 ●中国 ●中国 室内環境測定実験棟 新工法で工期とコスト抑える 新たな木材調達の仕組み構築 大臣認定壁倍率工法認定取得 性能PRで新たな顧客層を獲得 着実に増えてきている。 ●近畿 ●近畿 事業名:自然素材と短工期にこだわった革新 的家づくり工法による三河材の販路拡大事業 地域資源名:三河材 認定日:平成20年3月26日 事業の展開 事業の成果 ●北陸 ●北陸 ●社名 株式会社 明城 ●代表者 代表取締役 榊原 勝己 ●設立 昭和52(1977)年12月 ●所在地 愛知県安城市城ヶ入町団戸 173-16 ●資本金 1,800万円 ●従業員数 18名(他、アルバイト6名) ●売上高 5億円(平成24年9月期) ●業種 伝統的木造軸組工法住宅の建 築 ●URL http://www.meijyou.co.jp/ 0566-92-0233 ●TEL ●FAX 0566-92-0160 昭和41年の創業で、愛知県西三河 地区を中心に木造住宅の建築事業を 展開してきた。 「四季のある日本では、 自然木材を使用した工法こそが最適 な居住環境を提供できる」 (榊原勝己 社長) との信念のもと、 「家族生命を守 る家づくり」 「家族の絆をつくる家づく り」 「50年後、100年後も変わらず頼れ る家づくり」を経営方針として、 自然木 材や土壁、屋根瓦を使った在来工法 の木造住宅の建築を行ってきた。 しかし、住宅市場は低価格や短工 期、高耐震性などをうたい文句にした プレハブ住宅工法が主流となり、在来 工法の木造住宅は価格や品質などで 厳しい競争にさらされた。 このため「在 来工法にこだわるだけでは、会社の存 続自体が危ぶまれる」 (榊原社長) との 強い危機感を抱き、㈱明城が得意とし てきた自然素材の加工技術や製造ノ ウハウを生かしつつ、 プレハブ住宅工 法という合理的な工法の利点を取り入 れた同社独自の新木造工法を確立す ることを決意。約4年の開発期間を経 て、化粧パネル工法、 オブリーク工法、 土壁パネル工法、両面真壁仕上げ工 法などを確立させ、 特許も取得した。 このような革新的な家づくりの新工 法を活用した木造プレハブ住宅の建 新工法住宅の拡販には、品質、性 能面でも優れた住宅であることを消 費者にアピールすることが必要だが、 三河材(ヒノキ、 スギ)は強度が足りな いという指摘があった。そこで、名古 屋大学や愛知県林業センターなどの 協力も得て、強度実験を実施。その結 果、輸入材に比べ強さだけでなく、 「ね ばり強い」特性があることが判明した。 同社敷地内に実験棟を建築し、輸入 材を利用した家に比べ居住環境に優 れていることも実証している。 同社では、 三河材を生かした自然素 材の家づくりを広めようと、 「NPO法人 三河自然素材家づくり研究会」を立ち 上げている。 「木の家」の良さを地域 の工務店や消費者に伝えるため、企 業会員向けの技術講習会を開催した り、親子連れを対象に自然の中で育つ 木の良さと実際の伐採の様子などを 見学するイベントを開催したりしている ところだ。 ●中部 ●中部 建前完了後の土壁パネル プレハブ住宅工法を転用 自社独自の新木造工法を確立 築事業およびリフォーム事業を展開す るとともに、建材として用いる三河材の 消費拡大を目指した事業計画を策定 し、平成20年3月に地域資源活用事業 として認定を受けた。 NPO法人三河自然素材家づくり研究会による「山の学 習」 ●関東 ●関東 事業の概要 中小企業基盤整備機構 中部本部 プロジェクトマネージャー 大嶋 浩敬 ●東北 ●東北 在来工法による木造住宅から脱却して新たなパネル工法を開発、短工期 とコストダウンに成功した。地元三河材や国産材を使った自然素材住宅の 良さを伝える活動も進めている。地元森林組合、地元製材所との連携を進 めながら、地元の木造住宅メーカーとして着実に成長している。 榊原社長のキャラクターが、本事業の推 進には欠かせない要素になっていると思い ます。中小企業としての強みがまさに経営者の個性という ところでしょうか。ただ、住宅建設をめぐる外部環境はさら に厳しくなっていく中で、同社の持つ自社工法、自社林を どう活用していくかがポイントになると思います。社長の良 きアドバイザーとしての立場を継続して支援を行っていき たいと思っています。 ●北海道 ●北海道 地元三河材を生かした家づくり 独創的な木造住宅工法を開発 支援者の視点 代表取締役 榊原 勝己 氏 19年度 55 協和マシン 株式会社 板金加工業者 専用の金型製造 (産業機械、配電盤、家具等) 川崎鉄工所 (富山県南砺市) ●専用の金型製造 中小企業基盤整備機構 北陸本部 チーフアドバイザー 布目 大剛 ※認定時の構成 械の展示会だ。 ここにKMPを持ち込 み、実際に稼働する状況を多くの人に 見てもらった。 「実際、 KMPシリーズを 見てもらうことが、契約につながること が多かった」 と話す吉田保雄社長自ら が、 トップセールスを行い、成果を挙げ た。特に、設備投資の決定権を握る経 営幹部に見てもらうことが効果的だっ たという。板金曲げ加工機の作業性 の高さや処理スピードの優位性は現 場作業者に容易に理解され、導入に 対する要望は強い。 しかし当機は1台 数千万円に及ぶもので、購入希望者と 採用の意思決定権者には大きなギャッ プがあり、購入決定は容易ではなかっ た。そこで展示会に出展することで、 企業の経営幹部に直接アプローチで き、 商談を円滑に進めることができた。 連携先が近隣にあることも事業展 開に有利に働いた。納期、形状、 メンテ ナンス、試作など、多岐にわたる要請に 対し、川崎鉄工所がこまやかでそつの ない対応をしてくれるおかげで、新規 受注の勢いを加速できた。 事業の成果 総売り上げの主力を占める 主力商品に成長 KMPシリーズはこれまで60台以上 を販売した。認知度の向上とともに売 り上げも順調に推移し、現在は約6億 円。総売り上げの主力を占める商品に なった。 展示会などへの参加で商品認知度 が高まり、参加以降、問い合わせは確 実に増えていった。 吉田社長は「中小企業にとって、展 示会のために移動費用なども含めて 数百万円も投資して参加するリスクは 高く、新事業活動促進支援補助金を 活用できたことは有意義であった。商 品のカタログやビデオも製作すること 認定事業の売上高推移 今後の事業展開 販売台数の倍増が目標 技術職の育成注力 KMPシリーズの販売台数を現在の 倍、120台にするのが今後の目標だ。 そのために営業職はもちろん、機械の 改良を可能とする技術職の確保、育 成を進めていかなければならない。技 術職にも商談に同席させ、営業職だけ では把握しきれない顧客ニーズをすく い上げ、既存商品の改良や新商品の 設計開発に生かすよう心掛けている。 すでに、海外の商社からも問い合わ せがあり、将来の海外展開も視野に 入っている。 また25年に東京で開かれ る塑性加工技術の専門展示会への 参加を予定しており、 これまで以上の 反応を期待している。 経 営 者 の ひ と 言 単位:百万円 勇気を持って決断を 600 500 400 200 24年度 23年度 100 22年度 21年度 じっとしていても仕方がありません。今の 時代、 じっとしていたら縮小していくだけで す。経営者は、やらなければいけないこと は勇気を持って決断し、新しい事業にチャ レンジしていくべきです。今後、認定を目指 す事業者に申し上げたいのは、販路開拓が 最も大事だということです。中小企業にとっ ては大変コストがかかり、勇気がいることで はありますが、商品を知ってもらうために展 示会には参加してみるべきだと思います。 ●沖縄 ●沖縄 300 0 ができ、数百社に商品を知ってもらうこ とができた」と話す。 ●九州 ●九州 KMPシリーズの販売数は当初、伸 び悩んだ。従来型の曲げ加工機が広 く普及しており、金型で板材を押さえ つつ独特な爪構造の金型で上下に曲 げる方法自体、認知度が低く、省コス ト・高能率のメリットがなかなか浸透し なかった。そのため、商品宣伝の必要 性を痛感したが、販路開拓のノウハウ を持つ中小機構の支援とアドバイスが 大いに役立った。 宣伝の中で一番効果があったの が、東京ビッグサイトで開催された機 ●曲げ加工機の設計製造・販売 販売先 ●四国 ●四国 56 中小機構の支援で宣伝強化 展示会参加で認知度アップ (富山県高岡市) ●中国 ●中国 協和マシン㈱本社 事業の展開 協和マシン(株) ●近畿 ●近畿 事業名:高生産性・省力化・環境対応等を実 現した金属曲げ加工機の製造・販売事業 認定日:平成20年7月18日 富山県立大学 事業管理・曲げ加工機の設計製造・販売等 ●北陸 ●北陸 ●社名 協和マシン 株式会社 ●代表者 代表取締役 吉田 保雄 ●設立 昭和47(1972)年9月 ●所在地 富山県高岡市戸出春日795 ●資本金 3,000万円 ●従業員数 41名 ●売上高 10億円 ●事業内容産業機械の製造・販売 ●URL http://kyowam.com/ ●TEL 0766-63-3805 ●FAX 0766-63-3804 昭和47年に創業し、大手アルミサッ シメーカーなどの注文に応じて、制御 ソフトを含めた各種自動加工機、搬送 ライン装置の企画、製造、据え付けま での一貫工場として成長してきた。や がて、大手工作機械メーカーの協力 会社としても事業を拡張、そこで蓄積 された独自技術を基に自社開発モデ ルを企画。熟練工でなくても操作可能 で作業負荷も小さく、省コストで稼働で きる従来にない新しいタイプの曲げ加 工機の開発を目指した。 汎用の曲げ加工機は通常2人以上 で作業し、曲げる際の反動で跳ね上 がる金属板を支えなければいけない ため重労働の上、熟練技を必要とす る。 また油圧ポンプ式が主流なため、 常時通電が必要で騒音も大きく、油の 交換費用などコストもかさむ。 技術相談・情報提供 ●中部 ●中部 会社概要 工作機械メーカーの協力会社 画期的な曲げ加工機を開発 一方、 自社ブランドの「KMPシリー ズ」にはさまざまな特長を求めた。特 許取得済みのコア技術である「板材 曲げ加工機クランプ装置」は、従来の 「跳ね上がり」をなくし、 「装置の小型 化と同時に大きな押圧力を実現」 した ものであり、 その結果、①作業員1人で の稼働が可能②汎用品の2倍以上の 加工速度③動力には油圧を全く使わ ず、 ACサーボモーターを使用すること で「稼働コストの削減」 「静音性」 「環 境負荷低減」 を実現した。 さらに、高精度の研磨技術を強みに 持ち、特殊形状にも対応できる川崎鉄 工所(富山県南砺市) との連携にも成 功、 「 金型交換が不要」である構造を 実現するとともに、段取り時間の大幅 削減も可能にし、平成20年7月に新連 携事業として認定された。 認定当初にはライバル視していなかっ た外国企業が最近になって類似品を国内 展開し始めたことにいち早く対策を講じ、強力なコスト削 減と性能・機能強化を実現しつつあります。その迅速性と リーダーシップの発揮は特筆に値します。今後も市場環 境変化を機敏に捉えた戦略構築に協力するために、情報 収集とその共有化を深めていきたいと思います。 ●関東 ●関東 事業の概要 コア企業 ●東北 ●東北 従来からの得意分野だった「金属曲げ加工機」をより省コストで使いやす くした自社ブランドの金属曲げ加工機「KMPシリーズ」を開発した。販売 宣伝に力を入れて徐々に販路を広げ、注文機械に並ぶ看板商品に育て上 げた。顧客の要望に合わせて改良を重ねており、着実に売り上げを伸ばし ている。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 独自の金属曲げ加工機を開発 展示会積極参加で販路開拓に成功 熟練工でなくても操作可能で作業負荷も小さい 金属曲げ加工機「KMPスタンダードモデル」 連携体の構成 富山県高岡市 代表取締役 吉田 保雄 氏 20年度 57 三芝硝材 株式会社 富山県高岡市 会社概要 事業の成果 公共事業での需要高まる 社内外に新事業展開アピール 事業認定を受けたことで商品認知 度が高まり、地方自治体や首都圏を中 心としたビルのエントランス部などでの 採用が増え、全く取引関係がなかった 今後の事業展開 環境に優しい商品開発を促進 ガラス職人の育成にも注力 認定事業の売上高推移 経 営 者 の ひ と 言 単位:百万円 人があってこその機械 120 100 80 40 24年度 23年度 20 0 22年度 21年度 20年度 ●沖縄 ●沖縄 60 近年は公共事業や建築投資が減少する 一方、機能や意匠性に優れた商品が評価さ れるようになっており、顧客の要望も多様化 しています。もっと日本でガラスの魅力を広 げていきたい。欧州の洗練された意匠も貪 欲に学びながら、美しいガラス建材を作って いきたい。そのためにも優れたガラス職人を 育てていきたいと考えています。良い機械が あっても、やはり人があってこその機械です。 ●九州 ●九州 ノンスリップECOなど新商品の販路 を開拓するため、各新商品の特長、優 位性を徹底的に把握し、 どのようにそ の特長、優位性を市場に浸透させた らよいか、PR方法について中小機構 のプロジェクトマネージャーやチーフア ドバイザーから繰り返しアドバイスを受 けた。例えば、顧客の注意を引く効果 的な製品パンフレットやウェブサイトの 作り方や構成などを学んだ。認定を契 機に展示会への出展回数を増やし、 メ ディアに取り上げられる機会も増えた。 滑らない床ガラスであるノンスリップ ECOは、従来、加工を容易にするため ガラスに入れていた鉛の使用をやめ た点を強調、 環境に優しい「エコ商品」 として売り込んだ。加えて、歩行の安 全性を高めながらも美しい空間演出を 実現。売り上げは、新商品の売り上げ の中で3割程度を占めており、企業を ●四国 ●四国 58 商品特性を徹底把握 機構の支援で効果的にPR ●中国 ●中国 三芝硝材㈱本社 事業の展開 今後も環境に優しい商品の開発、 販売に力を入れていく。その一つが、 大手ガラスメーカーと連携して開発し た、 ビルの壁面にはめ込む建材一体 型のソーラーパネル。今後の太陽光発 電の普及を見込み、新たなエコ商品 の一つとしてゼネコンなどに売り込んで いく。 また、IT分野では、成長著しい携 帯電話やタブレット用薄板ガラスにも 進出する計画だ。 ノンスリップECOは、 もともと電話ボッ クスに貼られたビラをはがしやすくする ガラス作りの中から生まれた。 ビラをは がしやすくするための工夫が突起物。 それがノンスリップ開発のヒントになっ た。 社是の「創意無限」の通り、創意工 夫を加えたこれまでにないガラス建材 を今後も生み出していくためにも、 ガラ ス加工職人をはじめとする技術者の 育成にさらに力を注いでいく。 ●近畿 ●近畿 事業名:業界初の滑らない機能性ガラス床材 及びアートガラス建材の製造・販売 地域資源名:ガラス製品 認定日:平成20年12月24日 創業以来、板ガラスの2次加工を手 掛けてきた。単品物よりも、量産品の加 工を得意とし、 自動車用強化ガラス製 造からスタート。今では建築用、 産業用 など幅広い分野の特殊加工ガラスを 製造する総合ガラス加工メーカーにま で成長した。 これまで順調に売り上げ を伸ばしてきたが、発注メーカーの事 業廃止に伴い、売り上げの3分の1を占 めていたテレビ画面用フィルター製造 事業を失い、経営にも大きなダメージを 被った。 全社一丸となり、新たな収益源とな りうる魅力的な新商品の開発に挑戦 した。そこで開発されたのが本事業の 商品群である。人が歩いても滑らない ように表面に小さな突起物を付けた床 ガラス「ノンスリップ」や鉛フリーの「ノン スリップECO(エコ)」、 そして模様など を直接印刷できるセラミック印刷ガラス 業者からの問い合わせや突然の注文 が入った事例もあった。 そのほか、事業認定は社業の健全 性を社内外にアピールするのに大い に効果を発揮。認定を通して、社員全 員が会社の方針を共有し、明確な目 的意識を持って仕事に励むことができ た。 また金融機関との融資協議でも事 業に対する新たな試みが評価され、 ま た認定後の活動実績が信頼度を高め る要素の一つとなり、円滑な融資につ ながった。 西英夫社長は「視点、 目の付けどこ ろを変えて、新商品開発で頑張ってい ることを社内外に向けてアピールしな ければならないと考えたことも、認定に チャレンジするに至った理由の一つ」と 振り返る。 ●北陸 ●北陸 ●社名 三芝硝材 株式会社 ●代表者 代表取締役 西 英夫 ●設立 昭和32(1957)年8月 ●所在地 富山県高岡市岩坪23-2 ●資本金 4,875万円 ●従業員数 184名(他、パート6名) ●売上高 40億7,500万円(平成24年6月 期) ●事業内容板ガラスの加工・販売 http://www.sanshiba-g.co.jp/ ●URL ●TEL 0766-24-6811 ●FAX 0766-27-1222 主力事業消滅で危機感 滑らないガラスなど開発 支える柱の一つに成長した。 デジタルデータ (写真) をガラスに直 接印刷するサン・セラミックスも、無鉛イ ンク使用を前面に打ち出し、 ノンスリッ プECOと併せて、環境に優しい商品 としての特性をPR。駅舎、歩道橋、大 学などの公共セクターで次々と採用が 決まり、市場に対して認知度を高めて いった。 ノンスリップECOやサン・セラミックス などの販路拡大を通じて、環境負荷の 低い建築材の需要が高いことをあら ためて認識し、商品の改良、開発など に生かしている。 ●中部 ●中部 電話ボックスに貼られたビラをはがしやすくするガ ラス作りから生まれたノンスリップガラス 「サン・セラミックス」、LEDの光が足元 を照らす光る床システム「L-floor(エ ル・フロアー)」、大理石を表面に張り合 わせた装飾ガラス「サン・ルミナ」などで ある。 いずれもこれまでのガラス建材のイ メージを一新し、 ガラス建材の活用範 囲を広げている斬新な商品で、販路 の拡大を目指し、平成20年12月に地域 資源活用事業として認定された。 模様などを直接印刷できるセラミック印刷ガラスは、東 京都内の公園のモノレール駅舎に採用された ●関東 ●関東 事業の概要 中小企業基盤整備機構 北陸本部 チーフアドバイザー 高田 忠直 ●東北 ●東北 滑らないガラス床材など特長あるガラス建材を開発し、加工ガラスの新 たな魅力を生み出している。建築材の市場が縮小する中で果敢に新商品開 発に挑戦、機能性とともにデザイン性も優れたガラス建材を都会の駅前ビ ルの床材やビル外壁用などに供給、街角を美しく飾っている。 ガラス加工の一大集積地である富山県 内において、企業の規模・設備の多様さな どの面で量産の加工能力が高い企業です。今回の認定事 業では「エコ」や「意匠性」をキーワードにした建築資材の 内装・外装材の認知度を高めることで、一定の成果を収め ることができました。今後のキーワードは「用途開発」。こ の点を重点的に支援していきます。今後のさらなる飛躍を 期待しています。 ●北海道 ●北海道 「創意無限」でガラス建材の新境地開拓 エコと機能、デザインを両立した商品 支援者の視点 代表取締役 西 英夫 氏 59 株式会社 箔一 石川県金沢市 会社概要 事業の展開 食品分野に進出 最適金箔量で顧客満足度向上 事業の成果 予想を上回る売り上げ急増 食品安全規格、認証も取得 認定事業の売上高推移 金沢から世界へ 200 100 24年度 23年度 50 60 22年度 21年度 伝統を革新に変え、金沢箔の新しい価値を つくり続けてきました。新しい技術開発や世 界の金箔文化との交流を通して、金沢箔の 伝統が持つ確かな美しさと技術開発による 新しい魅力を、金沢から世界へ広げていきた いと思っています。 ●沖縄 ●沖縄 150 0 食用金箔以外にも㈱箔一の金箔に よる建築装飾技術を使った建築材の 販売に今後、力を入れていく。すでに、 有名ホテル、東京スカイツリーやJR九 州新幹線「つばめ800系」の内装など 「おもてなし空間」の内装装飾に使わ れている。 海外展開も積極的に進めていく方 針だ。現在は主に東アジアを中心に、 商社や現地代理店を通じて、食用金 箔をはじめさまざまな商品を出荷して いるが、ゆくゆくは現地法人を設けて 販売を強化することも検討している。 ●九州 ●九州 単位:百万円 250 星の形に成形した食材演出用の「金箔ジュエリー」 金箔建築材に注力 海外展開も強化 経 営 者 の ひ と 言 300 ㈱箔一の箔巧館 今後の事業展開 ●四国 ●四国 開発商品の売り上げは、 年々増加し 認定当初の約1億円から2億円超へと 急増している。予想を上回るスピード の売り上げ増に対応するため23年に は工場を増床するとともに袋詰め機械 を導入、担当人員を増やして生産能 力を2倍に拡大し、売り上げ目標も当初 の5億円から10億円に上方修正した。 食品メーカーなどが求める市場の 要求に一つ一つ丁寧に応えていった 地道な積み重ねが大きな成果として実 を結んだ。食用金箔という 「食品」を生 産していることから、商品の品質、安全 を確保するため、食品安全マネジメン トシステムの国際規格ISO22000:2005 の認証も取得した。金箔を最高度に輝 かす工芸品製造で培った確かな技術 と、安全性を保つ積極的な姿勢で、顧 客の信頼を勝ち取り、取引を拡大でき た。 ●中国 ●中国 もともと工芸品製造の会社で、食 品分野での販路開拓のノウハウはな かったので、 中小機構から紹介を受け た展示会・個別商談会に参加するな どの支援を受けた。 アジア最大級の食 の専門展示会・フーデックスジャパンに は10年以上も継続して参加し、開発商 品のカタログを配布して宣伝に努め、 認知度を高めていった。 その結果、 メーカー担当者との関係 構築が進み、商品の改善点が明確に なるなど、商品の質も上がった。食品 メーカーなどに売り込みをかける中で に先立って準備ができたという点は大 きい。 さらに、技術課題解決のため、中小 機構のインキュベーション事業による 支援も受けた。 ●近畿 ●近畿 事業名:「金沢箔」を活用し、 独自の加工技術 を応用展開した食用金箔の商品開発と販路開 拓 地域資源名:金沢箔 認定日:平成20年7月2日 地元伝統産業製品の金箔を使った 「金沢箔工芸品」の製造会社として 昭和50年に創業した。創業翌年に開 発した「あぶらとり紙」 を販売し、 ブーム のさきがけとなった。 あぶらとり紙は、金 箔をたたいてのばすときに、金箔の間 に挟む手すきの和紙。繰り返したたか れるので繊維質が細かくなり、優れた 吸収力を誇る。 その特長に目を付け再 利用したアイデアの勝利だった。 常識にとらわれず、果敢に新規分野 に挑戦する社風で、酒に入れたりする 金粉(切り廻し)や金箔スプレーの枠 にとどまっていた食用金箔の市場を拡 大する新商品を次々と開発した。砂糖 やチョコレートを金箔などでコーティン グした食材トッピング用のアラザンシュ ガーやアラザンチョコレートのほか、金 箔をハートやクローバー、花びらなど の形に成形した食材演出用の「金箔 ジュエリー」などユニークな新商品を ラインアップに加えた。 これらの新商品 開発を支えたのが、食用接着剤を使っ はさまざまな注文、要望があり、商品改 良を重ねた。砂糖やチョコレートを金 箔でコーティングする際、かぶせる金 箔の量が多過ぎるとむらが生じ、食品 メーカーが求める金箔の輝きがうせて しまう。そこで、新事業活動促進支援 補助金も活用のうえ、最高度に輝く最 適の金箔量を量る計測器を導入し、 試験を重ね食品メーカーの厳しい品 質要求を満たす商品に仕上げていっ た。 海外展開についても中小機構から 支援を受けた。20年に国際化支援ア ドバイス制度を活用して英文契約書 書式を作成した。 また21年には、数カ月 にわたって海外各国における食用金 箔・銀箔に対する法規制状況と実態 調査、各国顧客候補リストを作成し、 リ スク回避にも留意のうえ、 自信を持って 海外販路の開拓を進めるための基盤 を確立した。食用金箔関係での海外 向け売り上げはまだ数千万円ではあ るが、今後の海外展開積極化の方針 ●北陸 ●北陸 株式会社 箔一 ●社名 ●代表者 代表取締役 浅野 達也 ●設立 昭和52(1977)年9月 ●所在地 石川県金沢市森戸2-1-1 ●資本金 4,800万円 ●従業員数 47名(他、パート71名) ●売上高 16億8,000万円(平成24年9月 期) ●事業内容金沢箔美術工芸品・あぶら取り 紙・建築建装などの製造・加工・ 販売 http://www.hakuichi.co.jp/ ●URL ●TEL 076-240-0891 ●FAX 076-240-6800 チャレンジ精神旺盛な社風 極薄金箔の扱いにくさを解消 箔移し ●中部 ●中部 砂糖を金箔でコーティングしたアラザンシュガー て、薬用カプセルで使われているでん ぷん製の可食フィルムと極薄の扱いに くい金箔とを張り合わせる新技術。食 用金箔で使う金箔は約1万分の1ミリと 薄く、 ちょっとした空気の動きでもふんわ りと浮き上がり、静電気でくっついたり、 逃げたりしてしまうので、 成形困難で取 り扱いにくかった点を解消した新技術 である。平成20年7月に地域資源活用 事業として認定された。 中小企業基盤整備機構 北陸本部 チーフアドバイザー 大泉 正城 ●関東 ●関東 事業の概要 全国の箔生産量の98%を占める金沢 の伝統工芸「金沢箔」ですが、中でも同社 は、 「伝統工芸」の殻を破って新しい金箔の市場を開拓す ることに積極的です。本事例集で紹介されている食用金 箔や、現代の「おもてなし空間」を飾る、スカイツリーや九 州新幹線の車両、有名ホテルの内装などの建築内装装飾 分野がその例です。業界のリーディング企業として地域経 済活性化の志を持って世界に羽ばたかれることを期待し ます。 ●東北 ●東北 全国生産量の98%のシェアを誇る地元金沢の伝統工芸品である「金沢 箔」 (金箔、銀箔、プラチナ箔など)を「食品」に利用しやすくする新技術を開 発し、砂糖やチョコレートなどに箔をコーティングする新商品を展開してい る。 「食用金箔」のイメージを刷新し、活用の範囲を大きく広げている。伝統 の枠にとらわれないものづくりの姿勢が新たな需要の掘り起こしに成功し た。 ●北海道 ●北海道 伝統工芸品「金沢箔」を食品に活用 発想豊かに食用金箔の可能性を広げる 支援者の視点 代表取締役 浅野 達也 氏 20年度 61 永平寺サイジング 株式会社 福井県永平寺町 会社概要 OEM供給で売り上げ増 グッドデザイン賞など受賞 認定事業の売上高推移 ものづくりは、日本の宝 80 70 60 30 22年度 20 10 洗濯やリサイクルも可能で、数々の賞を受賞 62 21年度 20年度 ●沖縄 ●沖縄 40 ナンバーワンになる、という気持ちが大切です。 まねをしてもうけようという国もあるが、ものづく りはそんなものではありません。ものづくりは知 恵の固まりであり、日本の宝です。私たちも工業 技術センターの研究者や大学の先生、繊維メー カーの技術者に助けられましたが、彼らは持って いる技術と能力を他の人に惜しげもなく伝えてい く。その気持ち、文化が日本の宝なのです。特許 で守るだけでは、商品も技術も広がりません。 ●九州 ●九州 単位:百万円 0 河合社長は今後、 当該事業をさらに 拡大する計画だ。現在マットは年間2 万5千枚の生産能力だが、25年までに 10万枚の生産体制を目指す。 そのため の新たな設備投資も計画している。 ま た、 百貨店販売を維持して消費者ニー ズに応える努力を続けるとともに、新た な分野として、 介護施設や動物病院へ の販路も強化する予定だ。 社員は若返りが進み、30代前半が 中心になっているが、今後も優秀な人 材を採用し、 中国や台湾などへ輸出す ることを考えている。 「海外向けにマッ トを年間3万〜4万枚は売りたい。将来 は売り上げのうち国内60%、海外40% くらいの構成にしたい。輸出は、福井 のDNA(遺伝子) みたいなものですか ら」 と意気込んでいる。 経 営 者 の ひ と 言 50 永平寺サイジング㈱の従業員ら 年間10万枚体制を目指す 老人やペット用の販売強化 ●四国 ●四国 19年には東京の大手寝具販売会 社から夏場の寝具商品としてマットの OEM(相手先ブランドによる生産)の 今後の事業展開 ●中国 ●中国 事業名:3次元多層構造織物の用途展開によ る商品開発と販路開拓 地域資源名:絹・人絹織物 認定日:平成19年10月12日 事業の成果 引き合いがあり、年間5千万円の売り 上げ増につながった。現在は会社全 体の売り上げのうち3分の1はマットが 占め、残りはカーテンなどの売り上げ だ。将来的には、人間用マットのほか 動物用クッション (座布団)の売り上げ 比率の増大を図る。 近畿経済産業局のベンチャー支援 事業や中小機構の支援を受けて国内 展示会に出展する機会も増え、経済 専門紙にも事業が紹介されるなど知 名度も上がった。20年の関西フロントラ ンナー大賞審査員特別賞や第3回モ ノづくり連携大賞中小企業部門賞、 さ らに24年11月には、 グッドデザイン賞に 選ばれるなど高い評価を受けた。 「最も大きな成果は信用力が上がっ たこと」 と河合社長は言う。工業技術セ ンターや大学、繊維メーカーや寝具販 売会社など大手企業にも後押ししても らえた。 「産官連携でバックアップしてく れた。大勢の人とのつながりができた のが、 幸運だった」 と語る。 ●近畿 ●近畿 永平寺サイジング 株式会社 代表取締役 河合 国昭 昭和38(1963)年5月 福井県吉田郡永平寺町東古市 2-22 ●資本金 7,000万円 ●従業員数 27名 ●売上高 3億7,000万円(平成24年3月 期) ●事業内容合繊織物一貫製造・販売、健康 マットの製造・販売 ●URL http://www.eiheiji-sizing. co.jp 0776-63-2203 ●TEL 0776-63-7025 ●FAX 福井県は輸出も含めて繊維の一大 産地として有名だが、途上国からの追 い上げや円高不況などから、 かつて約 2,500あった織布工場は約200と、10分 の1以下になった。 昭和38年創業で50年の歴史を持 つ永平寺サイジング㈱も、 ポリエステル 素材やナイロンなど合繊輸出がほぼ 100%だったが、 プラザ合意後の円高 や新興国の追い上げで、採算は大きく 悪化。当時、父親の下で常務だった河 合国昭社長は「繊維から離れることは 事業の展開 できないが、輸出量産から脱出しよう」 均一なクッション性を実現 と考えた。 全国の百貨店などに販路拡大 大手繊維メーカーや商社が福井か ら撤退する中、河合社長が注目したの 寝具やクッション材として使われる は、過去に大手繊維メーカーが開発し 「3次元多層構造クッション材」は、複 た製品だった。内部に多くの空洞を持 数の縦糸と横糸からなる多重の織物 ち、床ずれ防止の寝具として販売して を熱処理して膨らませる。県工業技術 いたが、繊維不況のあおりでわずかに センターや福井大学との共同研究に 売れただけで撤退した製品だ。 よってマット (布団)の繊維原料を根本 河合社長は、改良すれば事業化で 的に見直したところ、多方向からの圧 力に対しても、均一なクッション性を実 現。安眠や床ずれ防止の効果がある。 素材もナイロンからポリエステル100% に変えることで、 クッション性が向上し、 洗濯やリサイクルも可能になった。 「クッション材は分からないことの連 続だった。開発はもちろん、 設備を導入 して本当に糸ができるか、実際に売れ る商品になるのか、最初はいろいろ考 えた。 しかし、大手繊維メーカーも応援 してくれて、事業に参画する人も一挙 に増えていった」 と河合社長は振り返 る。 大手寝具販売会社や専門店を回 るなど販売先の開拓を続けるなかで、 徐々に商品の特長が理解され、受け 入れられるようになった。 「ものづくりの 工場から、製造、販売の会社に変化」 するのを肌で感じた。 ●北陸 ●北陸 ●社名 ●代表者 ●設立 ●所在地 大手メーカーの開発品を改良 開発、製造、販売の一貫体制 中小企業基盤整備機構 近畿本部 プロジェクトマネージャー 樽谷 昌彦 ●中部 ●中部 床ずれを防ぐ体圧分散性がある「3次元多層構造 クッション材」 きると考え、平成16年ごろ地元の福井 県工業技術センターや福井大学の門 をたたいた。 また、大手繊維メーカー OBの技術者たちも四国や倉敷から応 援に来てくれた。 「工業技術センターは、繊維に関し ては120年くらいの歴史を持つ日本で トップクラスの公的研究所。大手繊維 メーカーの方もわれわれ中小企業に 惜しげもなく技術を教えてくれた」 と語 る。技術を学びながら新たに織機を導 入して改良を重ね、特許も取得。19年 10月に地域資源活用事業の認定を受 け、本格的に開発、製造、販売の一貫 体制に転換した。 マットは動物にとっても快適 ●関東 ●関東 事業の概要 同社は産学連携など多方面からの協力 を受けながら、この新製品の事業化に向 けて着実に進んでいますが、 これは代表者の製品開発に おける先見性、前向きな取り組み姿勢、ならびに行動力、 交渉力のたまものであると感じています。今後は販路開拓 はもちろんのこと、製品の良さを知ってもらい、新たな用途 を見いだせるよう支援を続けていきます。 ●東北 ●東北 日本を代表する繊維産地の福井県で、衣料用繊維の生産から脱し、健康マット (布団)と高齢者の睡眠を助けるオーバーレイ(敷布)を製造、販売する。 「3次 元多層構造クッション材」として、軽量で通気性がよく、床ずれを防ぐ体圧分散 性があり、洗濯やリサイクルも可能な製品の開発に成功した。ものづくり大賞や グッドデザイン賞など数々の賞も受賞。大手寝具販売会社への供給や、病院、 介護施設、さらにペット用として動物病院などへの販路を着々と広げている。 ●北海道 ●北海道 睡眠を助ける健康マットで一貫体制 ものづくり大賞など数々の賞を獲得 支援者の視点 代表取締役 河合 国昭 氏 63 和晃技研 株式会社 連携体の構成 京都府京都市 コア企業 高めてきた技術力を生かして、後発な がらも特徴ある防災システムを新連携事 業として選択し推進してこられ、見事に下請け脱却を果た し、 メーカーとしての立場を築き上げられています。また当 初あった人材育成課題も、着実に拡大展開させてきた新 事業への対応そのものが、社員のやる気を喚起し、おのず と人材育成の場となることにより徐々に解決を図ってきて おられます。 全国ネット構築 (有)イナセ 研究開発 京都大学 開発・製造・販売 和晃技研(株) (京都府京都市南区) ●新機能搭載型防災機器の製品化 ●分担各社の進捗管理 ●電子制御の開発、製造 実証試験 滋賀県工業技術総合センター ●東北 ●東北 開発・製造 (株)伊藤金属製作所 (大阪府大阪市東住吉区) 中小企業基盤整備機構 近畿本部 プロジェクトマネージャー 菊谷 敏 ●自社製品の開発 ※認定時の構成 事業の概要 会社概要 64 新連携により第二創業を実現 海外から引き合い相次ぐ 下請けと新規部門を車の両輪にし て経営してきたが、防災分野における ネームバリューが定着してきたので、20 年に付加価値の低い下請け稼業から 経 営 者 の ひ と 言 単位:百万円 認定までの手続きや議論も有意義 600 500 400 300 200 100 0 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 25年4月 23年度 決算見込み 認定を受けるまでの緊張感がいいと思 います。無駄だと思っていた手続きや議 論は振り返ってみると、冷静に考える時間 となっていました。自分を含めて中小の 経営者は猪突猛進型が多いから、異業種 交流をしている他の経営者グループから いろいろ指摘され、 「それもありかな」と 考え直すことも少なくありませんでした。 ●沖縄 ●沖縄 制御盤を和晃技研㈱が開発 事業の成果 認定事業の売上高推移 ●九州 ●九州 容器弁を㈱伊藤金属製作所が開 発 新しい消火システムでは「誤動作を 完全に回避できる制御盤」 と 「漏れな い容器弁」の開発が不可欠となった。 これを解決したのが、電子回路技術と 高圧に耐える金属加工技術のコラボ レーション。和晃技研㈱は携帯電話な ど電波の使用が増える中で誤動作を 回避できる制御装置の開発に注力し、 業界で初めて制御盤に電波ノイズ対 策を内蔵し、誤動作ゼロに近づけるこ とに成功した。 一方、伊藤金属製作所は、 ボンベの バルブでは、 「絞めるネジ」から発想を 転換。塑性変形を利用してガス漏れ をシャットアウトするノウハウ「metalと metalによるselfsealing」 を開発、 経年 変化に耐える信頼性の高い消火シス テムを実現した。 最近、 インドから多くの中小企業経 営者の訪問を受けて、岩﨑隆二社長 が感じたことは「豊かになって防災機 器に関心を持ち始めている」 というこ とだった。今後は海外展開を重視する が、国内での全国ネットワークの構築も 並行して進める考えだ。 そのためには、海外要員としてグ ローバル社員の育成が課題となる。信 頼性の高い同社の消火システムがど こまで海外に浸透するか注目したい。 また、現在は、再生可能エネルギー の買い取り制度が誕生して以降、太 陽光発電システムの照会が急増して おり、 当面は再生可能エネルギー部門 の拡大が確実視されている。 この機会を最大限に生かして、消火 システムや非常用電源をも有機的に 組み合わせて、全国展開を図っていく 構想である。 ●四国 ●四国 最新機能の消火システム 経年変化に耐える高信頼性 ガス漏れ防止ノウハウを開発 インドでも防災に高い関心 グローバル社員育成が課題 ●中国 ●中国 事業名:制御とメカの連携による高信頼性 防災機器の開発と事業化 認定日:平成18年11月7日 事業の展開 今後の事業展開 ●近畿 ●近畿 和晃技研 株式会社 代表取締役 岩﨑 隆二 昭和41(1966)年10月 京都府京都市南区西九条豊田 町26 ●資本金 2,000万円 ●従業員数 30名 ●売上高 6億2,000万円(平成24年4月 期見込み) ●事業内容1.非常用電源・自家発電装置・蓄 電装置・消火システムの設計・ 製造・販売 2.災害対応型・太陽光発電シス テムのプロデュース ●URL http://wakogiken.com/ ●TEL 075-681-6291 ●FAX 075-681-6297 先代が昭和34年、 ラジオの時報によ る電波時計を開発し「日本電波時計 ㈱」を創業したが、時代に先駆け過ぎ て需要が伸びず、2年で大手家電メー カーの下請けに転じた。主にルームエ アコンなどの電源装置の設計開発か ら量産まで、高度成長の波に乗って 業容を大幅に拡大し、親会社の要請 に応じて海外にも展開したが、 その結 果、社内の空洞化を招いた。そこで、 家電製造のノウハウを活用できかつ 海外に奪われない事業として「防災分 野」に展開する戦略を立て、平成14年 に非常用電源や消火システムのメー カーとして新規参入したが、知名度が 浸透するまで、 下請け稼業も経営基盤 の一つとして据え置き再出発した。 消火システムの盲点は、 ノイズによ る誤動作とボンベからのガス漏れであ る。いったん誤動作が起きると被害は 数千万円に達することもあり、他方40 〜50年メンテナンスなしで使われるボ ンベも、いざというときにガス漏れで役 立たないという深刻な事態も起こる。 この課題を解決するため、下請け として同じ発注元の仕事をしていて 気心が通じていた㈱伊藤金属製作所 (大阪市) と連携体を構成。18年11月 に新連携事業が認定された。 伊藤金属製作所は高圧の流体、気 下請けは、利が薄くても確実に下請 け費用の入金があったが、 このままで は下請け稼業で終わってしまうという 危機感があった。新連携事業に取り組 むことによって分かったのは、 いくつか の新事業構想を持っていた中、認定 にふさわしい市場競争力のある新事 業への絞り込みやその事業展開にお いて最も強力な連携先企業の選択な どの議論が中小機構のプロジェクトマ ネージャーとの間であったが、結果とし て得意分野を持ち寄れば異業種との 提携で一つの強力なシステムを構築で きるという事実だ。製品の値決めを自 分たちでできるので、収益の中から一 定の研究開発費を捻出することも可 能となった。 一件一件の契約で「選ばれたとい う担当者の自覚」の芽生えは大きく、 メディアに取材されることで「やらなく ちゃ」 という意識が高まり、 「メーカーに 一歩近づいた」 という実感が強まって いるという。 ●北陸 ●北陸 ●社名 ●代表者 ●設立 ●所在地 金属加工メーカーと連携 メーカーへの脱皮を目指す 完全に撤退した。昭和61年に下請け からの脱却を夢に描いたものの、バブ ルのせいで一時期は90億円を超える 売り上げに心を奪われたが、350名の 従業員を抱え決して利益率が良いと はいえなかった。22年かけて要員の自 然減を待ち、 ソフトランディングした結 果が、30名で5億円足らずの売り上げ であったが利益率は格段に好転した。 さらに、電力会社の新社屋や台湾 新幹線、台北市故宮博物館など内外 のメジャー施設への納入を果たして業 績は右肩上がりに転じ、海外からの引 き合いが相次いでいることは社内に大 きな意識変革をもたらしている。 製品も、消火システムや非常用電 源に加え、最近では太陽光発電の総 合プロデュースも手掛けている。既存 のコア技術を組み合わせて、売電、 自 家使用、蓄電の3機能を備えた独自の “災害対応型”が「京都モデル」とし て京都府から認定され、 “ 太陽光のコ ンビニ” と称されている。 ●中部 ●中部 和晃技研㈱本社工場 体を対象とする製品の金属加工に高 い技術を持っており、両社とも「メー カーへの脱皮」という共通の目的を 持っていたことも、連携が進んだ要因 となった。 ●関東 ●関東 培った電気機器の設計技術と機械加工企業とのコラボレーションで、誤 動作を撲滅し、消火ガス漏れリスクを排除した高信頼性消火システムを開 発、大手家電メーカーの下請けからの脱出を果たした。経営規模は縮小し たが、社員のモチベーションは右肩上がりだ。 ●北海道 ●北海道 誤動作のない消火システムの製品化 下請け脱出、メーカーへの転換達成 連携体 支援者の視点 代表取締役 岩﨑 隆二 氏 65 エースシステム 株式会社 事業の展開 千万円するが、1キロ当たりのコストは 約6円、 ガス釜炊飯器の半分以下で、 設置スペースも5分の1以下と省エネ、 省スペースを実現した。 システムはお いしいご飯が容易に炊けることに加 え、 コストメリットもある。 しかし、市場で 評価されないのは販売方法に問題が あったためだ。それを気付かせてくれ たのがプロジェクトマネージャーだ。 「なぜ売れないのか、悪いところは 何かを認識していないと、利点に変え られない」 と厳しく指摘された。商品と して自信のある利点を、客の目線でア ピールしなければいけない。例えば、 初期投資は高いが、数年後には年間 で5千万円のコスト削減になると具体 的に説明すれば、顧客はそれを参考 に判断できる。 「品質が良く、安定して出せること と、省エネ」を柱に販売のやり方を学 んだ。時に怒られることもあったが、互 いに真剣だった。 「プロジェクトマネー ●機器の販売および広報活動 ジャーは、休みの日も夜も電話をくれ て、一緒に考え、調べてくれた。一生懸 命支援してくれたことに感謝するしか 言葉がない」 (佐古圭弘社長) という。 達し、受注残も10件以上に上る。 「新 連携事業の認定を受けたことで、信 用力など裏付けができたのが大きい」 (佐古社長) という。 事業の成果 今後の事業展開 自社製法を科学的に証明 新規事業が大黒柱に成長 工場移転も検討 海外への進出も 事業が認定されると、1,500万円の 開発費のうち1千万円が補助され、地 元の大阪信用金庫の紹介で大阪府 立大学との共同研究が実現した。実 際に人が食味する官能テストやでん ぷん質の分析など、 コメを傷つけずに おいしさと白さを保つ製法を科学的に 証明してくれた。 名刺にも 「経済産業省新連携事業 計画認定企業」を入れた。それまで見 向きもされなかった銀行からの融資決 定や食品メーカーの役員クラスが会社 を訪ねるようになった。売り上げも順調 に伸びており、24年は半期で5億円に 事業規模が大きくなるにつれて、人 員増加や工場の移転も検討している。 システムの開発や保守関連の技術者 も欲しいし、資金も必要だ。 白米だけで なく、酢など調味料を入れたすし飯や おむすび用の塩味のご飯、 弁当用のま ぜご飯など需要も多岐にわたっている ため設備の増強は大きな課題である。 また、関西圏を中心に販路も拡大し たいし、韓国やオーストラリアの回転寿 司チェーンへの販売展開も検討してい る。現地では冷凍庫が少ないため、常 温流通できる商品やシステムの開発も 考えている。 認定事業の売上高推移 経 営 者 の ひ と 言 もっと制度を活用して ●沖縄 200 23年度 100 0 22年度 21年度 24年度 9月末 ●沖縄 300 中小機構には感謝しかありません。優良な 中小企業、零細企業は大手企業に買収された り、技術を取られたりすることが多々あります。 中小機構が零細企業の末端まで支援できるよ う、さらに工夫が必要です。こういう認定制度 があることは、中小企業にとってすごいチャンス なのだから。小規模、零細企業にとって信用力 が付き、全体が底上げされるのではないでしょ うか。もっと制度を活用してほしいと思います。 ●九州 ●九州 400 66 (兵庫県神戸市) ※認定時の構成 500 ぬか臭さが残らず、芽胞菌を死滅させるためご飯が黄 炊きあがったご飯を成形 色くならない (株)洸陽システムソリューション 中小企業基盤整備機構 近畿本部 プロジェクトマネージャー 菊谷 敏 単位:百万円 エースシステム㈱本社 機器の販売 ●四国 ●四国 蒸気炊飯システムで1時間に炊ける 量は125キロから600キロ。125キロ炊 きなら5千人分のご飯が炊ける計算に なる。装置の価格は2千万円から1億2 (大阪府和泉市) ●連携体との運営・管理 ●機器の設計と製造 ●中国 ●中国 売れない理由をまず認識 「客の目線」でアピール 和泉市ものづくり サポートセンター エースシステム(株) ●近畿 ●近畿 事業名:釜を使用せず蒸気を活用した省エ ネ炊飯、品質安定、簡単操作の蒸気炊飯器の 製造販売 認定日:平成20年7月25日 事業化支援 開発・生産・統括 ●北陸 ●北陸 ●社名 エースシステム 株式会社 ●代表者 代表取締役 佐古 圭弘 ●設立 平成8(1996)年6月 ●所在地 大阪府和泉市万町41-2 ●資本金 1,000万円 ●従業員数 16名 ●売上高 3億円(平成24年5月期) ●事業内容産業機械の設計・製造 http://www.acesystem.co.jp ●URL 0725-50-2288 ●TEL ●FAX 0725-50-2266 昭和63年10月に創業、NC加工機な どの産業機器、制御盤を含む制御機 器の設計・製造を手掛けてきた。平成 16年ごろから過熱水蒸気でご飯を炊く 「蒸気炊飯システム」を弁当業者など に向けて販売を始めた。家庭などでは ご飯を炊く場合、 コメと水を釜に入れ て “煮る” が、蒸気炊飯はステンレスの 網の上にひいたコメに高温の蒸気を 当てることで炊飯する方法だ。 釜で炊く場合は、火加減や水、温度 などの調整が必要だが、蒸気炊飯シ ステムでは、 コンピューター制御により、 誰が炊いてもおいしいご飯ができる。 ま た、高温の蒸気のため、ぬか臭さが残 らないことに加え、 ご飯が黄色くなる原 因の芽胞菌を死滅させるという利点も ある。炊きあがったご飯は焦げやべた つきもない。 双日マシナリー(株) ●中部 ●中部 会社概要 誰が炊いてもおいしいご飯 なぜ売れないかが分からない 新連携認定事業計画の開始直後のリー マン・ショックに起因する極めて厳しい経 営環境下においても、持ち前の優れた事業経営感覚を 持って乗り越えてきた賢明なる若き経営者です。開発商 品の特長を第三者による科学的検証により裏付け、それ らを加えて、新規顧客から大規模で連鎖反応的な受注獲 得を進めており、今後の展開を大いに期待するとともに、 大きな投資を伴う経営活動に関しては適切と思われる助 言をしていきます。 ●関東 ●関東 高温の蒸気で炊くことで、誰が炊いてもおいしい 上、さまざまなメリットがある業務用のシステム しかし、 この新たに開発したシステ ムは、知名度がなくさっぱり売れなかっ た。そんな時、地元の「和泉市ものづ くりサポートセンター」の紹介で中小 機構の支援を知り、 プロジェクトマネー ジャーと1年かけて認定事業にふさわ しい各種想定リスクにも対応可能で 事業成功への蓋然性を高めた事業 計画や、それを推進する事業環境を つくり上げた。販売については、ESCO 事業の展開を通じて多くの関連機器 の販売実績を持つ㈱洸陽システムソ リューション (神戸市) との連携で強化 を図り、新連携事業として平成20年7 月、 事業認定された。 コア企業 販売支援 ●東北 ●東北 おいしいご飯を炊くことは家庭でも難しいが、蒸すことによって、焦げや べたつきがなく、安定したご飯を業務用に供給できるシステムを開発。中小 機構や近畿経済産業局の支援で大学とも共同研究して科学的にも「おいし さ」を証明、売り上げや受注は倍以上に増えた。国内のスーパーや冷凍食 品メーカー、弁当店だけでなく、海外の回転寿司チェーンへの進出を計画 するなど事業を拡大している。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 蒸気で炊飯、売り上げ倍増 大学との共同研究で違いを証明 事業の概要 連携体の構成 大阪府和泉市 代表取締役 佐古 圭弘 氏 20年度 67 株式会社 タケックス・ラボ 大阪府吹田市 会社概要 信和アルコール産業(株) (大阪府吹田市) ●開発 ●品質管理 ●販売 製造・販売 原料調達 高知環境資源開発(株) (株)伏見製薬所 (香川県丸亀市) ●孟宗竹抽出物の製造 ●販売 中小企業基盤整備機構 近畿本部 プロジェクトマネージャー 菊谷 敏 (東京都中央区) ●製剤の製造 物流・販売 住友商事(株) (東京都中央区) ●物流 ●販売 ●販路開拓 ※認定時の構成 現在は売上高の50%を占める主力商 品になっている。 認定計画を近畿経済産業局に申 請する前に、 プロジェクトマネージャー と二人三脚で計画作りをした。愛情あ る熱心な指摘と叱咤激励で社長は経 営者として非常に鍛えられた。抗菌作 用は実際に効果がなければ意味が ないので、集団感染リスクのある飲食 店やホテル、病院、介護施設など販売 先で徹底調査し、ユーザーの立場か ら何が課題かを把握し、企業としてど う対処し、説明するかなどを徹底的に 行った。 「認定計画を提出する前にプ ロジェクトマネージャーから的確なアド バイスを受けた。補助金もありがたかっ たが、 このアドバイスが成果を挙げた 大きな要因の一つだ」 (土屋卓見R&D ソリューション部長) という。 このプロ ジェクトマネージャーは、大手電機メー カーのOBで、 ビデオテープの規格をめ ぐるVHS戦争を戦った人だ。 事業の成果 磨き上げられた認定計画 金融機関からも評価 21年度はインフルエンザの流行で売 り上げも伸びたが、その後22、23年度 はインフルエンザの流行は小さく、他社 も似たような商品を出してきたため売 り上げが落ちた。 しかし、事業認定の おかげで社長による講演の機会が増 えたり、新聞などにも取り上げられたり し、知名度が上昇、信用力も増し、 ベン チャー企業として銀行からの融資、大 手ベンチャーキャピタルからの出資が 得られた。 これも磨き上げられた認定 計画・ビジネスモデルが金融機関など に評価された証しだ。 今後の事業展開 竹を使った建築材も計画 衛生市場は今後も拡大 今後、販売のアイテム数を増やして いく方針だ。主力の「タケックスクリーン Biz」だけで売り上げの過半を占める ため、2本目の柱をつくっておく必要が ある。具体的には、多くの分野で竹を 利用した製品を考えているが、特に今 後は竹を使ったフローリング、建築材な どの開発と販売を検討している。 海外、特に中国、台湾への進出につ いては、すでに台湾の研究所と共同 研究を進めており、抗菌などの効果試 験を行っている。台湾を介して中国に 進出する計画だ。 日本国内では、飲食店向けなどに販 売しており、原料は国産竹にこだわり、 変える計画はない。 しかし、 建築材など は中国産の竹も使えるのではないか と、将来の販売も計画している。竹は 繁殖力が強く、針葉樹を脅かす成長 力を持っている。 しかも、 ウイルスや病 気のまん延は尽きることはなく、衛生面 での市場は今後も拡大するとみてい る。 経 営 者 の ひ と 言 ●九州 ●九州 こちらからアプローチを ●沖縄 ●沖縄 中小機構は揺り籠のように手厚くやっていた だきました。感謝しかありません。もっと活用でき る制度もあったと反省しています。近づけば近づ くほど、手厚くやってくれます。親身になって相 談に乗ってくれるので、こちらからアプローチし た方がいいと思います。 ㈱タケックス・ラボの入居するビル R&Dソリューション部長 土屋 卓見 氏 「竹一本を丸ごと使い切る」ことが企業のライフワーク 68 ●四国 ●四国 インフルエンザが流行した時から口 コミで徐々に抗菌効果があると浸透し 始め、21年の5月と11月に新型インフル エンザが流行した時は、子どもやお年 寄りへの抗菌効果は商品力として抜き んでていた。 このことが大学の実証結 果だけでなく、飲食店や病院など販売 先からも信頼され、販路も関西地区だ けでなく、 東京や九州まで拡大した。 さらに22年には新事業活動促進 支援補助金を活用し、 それまでの商品 「タケックスクリーン」の改良型「タケッ クスクリーンBiz」を作ることができた。 近畿竹資源有効活用 コンソーシアム (株)タケックス・ラボ ●中国 ●中国 インフルエンザ流行で浸透 支援が成果を押し上げる 竹資源用途開発支援 製造 ●近畿 ●近畿 事業名:竹資源有効利活用事業のコア技術 となる竹抽出物製剤の市場拡大を目指した 連携体事業 認定日:平成20年3月24日 事業の展開 (NPO法人)環境資源 開発研究所 開発・販売 ●北陸 ●北陸 ●社名 株式会社 タケックス・ラボ ●代表者 代表取締役 岡田 久幸 ●設立 平成14(2002)年2月 ●所在地 大阪府吹田市江坂町1-13-48 インタープラネット江坂ビル3F ●資本金 1億8,209万4,000円 ●従業員数 14名 ●売上高 2億5,000万円(平成24年7月 期) ●事業内容天然竹由来機能製品の製造 http://www.takex-labo.com/ ●URL ●TEL 06-6821-2554 ●FAX 06-6821-4841 竹が持つ消臭や抗菌作用は古くか ら知られていたが、商品として効果を 実証し、販売に結び付けることにこだ わった。孟宗竹の表皮からわずかコン マ数パーセントのエキスを抽出して粉 末にし、 さらに液状に加工する研究を 行い、大阪府立大学や鳥取大学など 六つの大学との共同研究で抗菌効果 を実験した。飲食店やホテル、病院、 介護施設、 保健所などのキッチンやトイ レ、 テーブルで噴霧した結果、細菌や ウイルスへの抗菌力が、21日経過して も持続することが明らかになった。 こうした効果を基に、添加物含有の アルコール製剤化に強みを持つ信和 アルコール産業㈱(東京都)や医薬 品・医薬部外品の開発製造などに強 みを持つ㈱伏見製薬所(香川県) と連 携し、抗菌剤「タケックスクリーン」を開 発した。効能は大手衛生用品メーカー 情報提供支援 ●中部 ●中部 効果実証できる新商品開発 大学と共同研究 竹が持つ消臭や抗菌作用を活用した抗菌剤 の商品にひけをとらず、原料は天然素 材なので、手荒れや環境への影響は 少ない。 アンモニアなどに対する消臭 効果を発揮することも大学の研究で 証明された。 この企業連携のスキーム で平成20年3月、新連携事業の認定を 受けた。 竹は生育サイクルの早い有効な資 源でありながら、活用する分野が減少 したことで、 「竹公害」 として社会問題 にもなっており、竹の有効活用は、環境 への負荷を低減することにもつながっ ている。 若年時に竹が持つ特異な特性への興 味を持ったことに端を発し、その秘めた機 能性の全てを引き出し、世に役立つものとして事業化する ことをライフワークとしている経営者です。厳しい事業推 進環境下において、幸い連携企業を含め、多くの協力、支 援も受けて着実な事業展開をしてきています。今後は他 の機能性を生かした新製品の開発事業化にも期待し、そ の際の新連携再挑戦テーマとしても支援していく予定で す。 ●関東 ●関東 事業の概要 事業推進体制 コア企業 ●東北 ●東北 孟宗竹の抗菌、消臭効果に着目してウイルスや細菌に対する抗菌剤の研究 開発と製品販売を展開。集団感染の危険がある現場の調査や大学との共同研 究と中小機構からの支援で、抗菌効果を実証する新製品開発や販路を拡大し、 信用力も増した。 「竹一本を丸ごと使い切る」ことが企業のライフワーク。 「竹を 焼いて炭にして消臭効果がある商品を販売するのは初めの一歩。今後は、より 付加価値の高い商品の開発、販売を目指したい」とベンチャー精神を発揮する。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 竹由来の抗菌剤で成長市場を開拓 「竹一本丸ごと使い切る」戦略 連携体の構成 消臭や抗菌作用のある竹 69 髙丸工業 株式会社 70 ●事業の業界へのPR メンテナンス 販売 (株)テンマウエルサービス エヌアイウエル(株) (大阪府豊中市) (大阪市中央区) ●メンテナンス ●スクール運営 ●営業 ●販売 販売 ※認定時の構成 ことがある。 しかしパソコンを使うことで 事業の成果 データが残り、それが資産となる。 さら コンサルタントや特別教育 にフォーマット化や標準化が進み大き 高校生も修了証取得 な時間短縮となり、品質も安定するとと もに人件費の削減につながる。同様に 売上高は6億円前後で推移してい ロボットで作業することによりそのデー るうち、認定事業によって「3分の1から タを資産化し、標準化を進めることで 半分」 (髙丸社長)が受注につながっ 必ず大きなコストダウンにつながると説 たとみている。やはり 「尼崎ロボットテク 明している。 このようにして中堅・中小 ニカルセンター」の設立が大きい。労働 製造業がロボット導入によるメリットを 安全衛生規則には、事業者は産業用 享受できるようユーザー視点に立った ロボットの教示や検査などの作業に労 コンサルタント事業を展開した。 働者を就かせるときは、 その全員に特 またユーザーがロボット導入効果を 別教育を行うことが義務付けられてい 最大化した生産ができるよう商品の設 る。21年3月に開始した特別教育講習 計形状を変えていくことの提案など、 では、 これまで関西だけでなく東京や 適切な生産技術の指導を行うととも 東北、 中国、四国、九州などから658名 に、一般的に大手メーカーに向けた大 (24年末現在)に教育修了証を発行 量生産に合わせて作られているロボッ した。業種では金属関係の製造業が トを、中堅・中小製造業向けに少量多 多数を占めているが、化学・薬品・食品 品種生産でもロボットが活用できるよう などの関係業者も増加傾向で、高校 なカスタマイズも行っている。 生や大学生(計93名) も含まれており、 次世代につながっている。 認定事業の売上高推移 経 営 者 の ひ と 言 単位:百万円 海外からも引き合い 簡単に使えるロボットを 5年間の認定期間が終わり連携体と しては解消したが、 もう少し長い期間 のパートナーを探している。認定によっ てマスコミなどに取り上げられ、知名度 も上がる一方、海外からの引き合いも あり、 「国内の生産自動化を支援して ほしい」 という中国からは10基単位の 引き合いや展示会へ出展の要望もき ている。 これらに関しては、景気動向や 海外情勢などを見ながら、慎重に進め る方針だ。 今後の展開には自信を持つ。 ここに きて、 ロボットがロボットらしく使われるよ うになってきた。 ロボットが人件費を削 減するための道具ではなく、 もののつく り方自体がロボットに合ったつくり方に なってきている。単品ものの製作に使っ てもメリットがでる、簡単に使えるロボッ トが業界を支配する。その動きは変わ らないとみている。 日本の優位性崩れず 600 500 400 300 200 0 今後の事業展開 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 ロボットの組み立てもそうですが、日本人 は繊細で無駄のない技術と知識を持ってい ます。世界で日本人の優位性は崩れないと 思います。その意味でも中小機構は、後押し をしてくれました。認定事業によってインキュ ベーション(卵のふ化)に成功しました。これ から、餌をかみ砕いて口に入れてもらい、でき れば飛び立てるまで面倒をみてくれたらと期 待しています。 ●沖縄 ●沖縄 工場内を案内する髙丸正社長 広報 関西次世代ロボット推進会議 中小企業基盤整備機構 近畿本部 プロジェクトマネージャー 菊谷 敏 100 日本で初めて産業用ロボットの導入計画から設計、製造、設置、稼 働、保守、 オペレーター教育の一連の業務を提供 支援 ●九州 ●九州 同社は、 ロボット導入に迷っている中 堅・中小製造業に対して投資効果を 理解してもらうことから始めた。例えば 鉄工所の溶接作業をロボットで行った 場合、 ロボットの方が速くなければ導入 の意味はないという経営者に対して、 パソコンで行う文書作成作業やCAD を使った作図作業も同じことがいえる が、 同じ作業をする上での時間を単純 比較すると手書き作業の方が有利な ●ロボットスクール教材 開発支援 ●四国 ●四国 投資効果を理解してもらう 少量多品種生産にも活用 (財)新産業創造研究機構 ●中国 ●中国 事業の展開 ●システム設計 ●製造 ●近畿 ●近畿 ARTC 尼崎ロボットテクニカルセンター ●所在地 兵庫県尼崎市道意町7-1-3 06-4869-9123 ●TEL ●FAX 06-4869-9111 事業名:中堅・中小製造業へ最適ロボットシステ ムを供給する企業グループの構築と事業推進 認定日:平成18年7月18日 1980年代から90年代、 日本経済を 支えた自動車工場や半導体工場など は、国産産業用ロボットを使い、圧倒的 に品質が良くて安い製品づくりに成功 した。 しかし、それら産業用ロボットの 95%は大企業に導入されており、 中堅・ 中小製造業の工場向けはわずかしか ないのが実態だ。 中堅・中小製造業にロボットの導入 が進まないのは、 リーマン・ショックなど 景気の動向も影響しているが、最大の 原因は①中小企業経営者にロボットに 対する投資効果に関する知識がない ②製造スタッフが、人手によるものづく りとロボットによるものづくりに作り方の 違いがあることを理解していない③ロ ボットを使える人材がいない―と、髙丸 正社長は考えた。 これをビジネスチャンスとしたのが本 事業である。 これまで顧客の要請に応 じほぼ全ロボットメーカーに対応したシ ステム開発や設計・製造・納入実績を 持つ髙丸工業㈱をコア企業とし、販売 (兵庫県尼崎市) 開発支援 ●北陸 ●北陸 髙丸工業 株式会社 ●社名 ●代表者 代表取締役 髙丸 正 昭和42(1967)年5月 ●設立 ●所在地 兵庫県西宮市朝凪町1-50 JFE西宮工場内 ●資本金 7,500万円 ●従業員数 24名 ●売上高 5億6,000万円(平成24年8月 期) ●事業内容産業用ロボット (搬送ロボット・溶 接ロボット・その他)及びロボット 周辺装置・ポジショナー・マニプ レーター・専用溶接冶具等の設 計・製造・ロボットティーチング・メ ンテナンス、産業用ロボット特別 教育、ロボットスクール http://www.takamaru.com/ ●URL ●TEL 0798-38-9200 ●FAX 0798-38-1919 製造 髙丸工業(株) ●中部 ●中部 会社概要 ロボットテクニカルセンター 人材育成へ教育事業 を担うエヌアイウエル㈱(大阪府) と、 メ ンテナンスを担う㈱テンマウエルサービ ス (大阪府) とで連携体をつくり、 中堅・ 中小製造業がロボットを導入しやすい 環境を提供するため、 日本で初めて産 業用ロボットの導入計画から設計、製 造、設置、稼働、保守、 オペレーター教 育の一連の業務を行う新連携事業と して平成18年7月に認定された。 そして、新連携対策補助金の活用 などにより、19年1月には認定事業の 拠点として「尼崎ロボットテクニカルセン ター(ARTC)」を設立、国内の主要ロ ボットメーカー7社のロボットを設置し、 実際のロボットによるトライアルテストを 行ったうえで、最適なロボットシステムを 提案している。 また、21年3月には同セ ンターのロボットを使用して行う教育事 業も立ち上げた。 大企業で主に活用されてきた優れた機 能を持つロボットシステムを、中堅・中小企 業にも導入していくことを目指し、導入を阻害している要 因について幅広い視点で深く分析し、その要因を取り除く 具体的手段として、実体験のできる検証場所を設立し、 さ らに次世代のものづくりを担う人材育成の仕組みをも構 築してきており、高い志を持って強力に推進している経営 者です。その展開に期待し、引き続き支援していきたいと 思います。 ●関東 ●関東 事業の概要 コア企業 ●東北 ●東北 中堅・中小製造業へ生産のロボット化を推進するため「アフターサービ ス」ではなく、ロボット導入の実現に向けての「ビフォーサービス」を事業展 開する。最適なロボットシステムの提供を目指し、 「尼崎ロボットテクニカル センター(ARTC)」を設立。日本で初めて産業用ロボットシステムの導入計 画から設計、製造、設置、稼働、保守、オペレーター教育の一連の業務を提供 している。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 産業用ロボットを中小企業に拡大 「ビフォーサービス」を展開 産業用ロボット 連携体の構成 兵庫県尼崎市 代表取締役 髙丸 正 氏 71 協同組合 兵庫木材センター ※認定時の構成 を、事業者が連携して生み出すことによ かし、高効率、高品質の製品を追求でき り、新規事業を成功させ、地域活性化に た」 (八木理事長) という。 つなげる」 という農商工連携の理念を議 事業の成果 論する中で、伐採事業者、製材業者、販 地元に雇用生む 売業者などの意識が統一された。 関東や九州、四国に販路拡大 その一方で、 コストの削減も同組合の 使命。連携事業ではまず流通を簡素に 原木取扱量は、4年後には最大年間 し、運送料や手数料の負担を小さくする 12万6,500立方メートル。兵庫県全体で 流通システムを構築した。 これによって流 15万立方メートルとなっており、それと変 通経費を半分に抑えることができ、業務 わらない量をセンターで扱う計算になる。 を共通にすることで品質の信頼性も高ま スケールメリットを生かして外材にも対抗 り価格交渉力も生まれた。一方、森林保 できる供給体制が出来上がりつつある。 有者には安定した計画的な利益還元を また、雇用でも地域活性化のために、 行い、継続可能な事業基盤を構築した。 地元出身者を50名採用するなど、地元 製材業は、設備投資が巨額となるた に貢献。従来は都市部に流出していた め、有利な条件での長期の資金調達が 若い世代を地域にとどめる効果も生まれ 必須である。5万平方メートルの大型製 ている。 材施設を建設したが、建設費の調達は 出荷先は兵庫県だけでなく、大阪府 認定に向けたブラッシュアップ段階から や岡山、愛知、滋賀県から四国、九州、 日本政策金融公庫を交えて事業計画 関東などにも広がった。取引先の住宅 の議論を行った結果、信用保証の倍増 メーカーや工務店からは「価格は適正」、 と制度融資の実行という形で実現した。 「品質は良好」という評価を得ており、 「支援のおかげでスケールメリットを生 今後、取引拡大を望む声も多く得てい 認定事業の売上高推移 生産能力の着実な拡大 設備増設に新たな資金も必要 中小機構の専門家のアドバイスも受 けながら大規模な工場と設備が出来上 がり、売り上げや生産量だけでなく知名 度も上がったが、23年の製材稼働率は 116.6%で、一層の向上が必要だ。特に 製材能力を拡大するために乾燥設備の 増設などを検討している。資金の手当て も含めて景気動向や売れ行きなどを慎 重に見ながら少しずつ能力を増やしてい く。中小機構から投資家も紹介するとい う話があったが、足元を固めながら「何 とか挑戦してみたい」 (八木理事長) と 着実な事業展開を考えている。 ●九州 ●九州 0 ●沖縄 800 600 24年度 400 23年度 200 22年度 21年度 ●沖縄 自分たちの産業の流れを見直し、不必要 なぜい肉を取る。日本の人口が半分になれ ば、生産も半分になるでしょう。中小機構のア ドバイスと支援、そして事業を素早くやる。こ れがとても大切だと感じています。 0 120 100 72 今後の事業展開 事業を素早く、が大切 0 0 る。 売上高は、24年度は月間で前年より 倍近い1億1千万〜1億2千万円で推移、 製材の生産量も23年度実績は事業計 画を上回った。 経 営 者 の ひ と 言 140 石油の代わりに木の皮、削りカスを再 利用し、蒸気を発生させ、木材を乾燥す る (化石燃料使用時より2億円ほどの コストダウンにつながる) ●情報:需要に応じた原木集荷 中小企業基盤整備機構 近畿本部 プロジェクトマネージャー 光井 將宇 単位:百万円 協同組合兵庫木材センターの製材工場 ●技術:列状間伐等低コスト素 材生産 ●情報:木材販売情報の 一元化 ●四国 ●四国 木材産業と一口に言っても、伐採事 業者、製材業者、販売業者などの思惑 はバラバラだ。中には、中が腐っていたり 虫食いがあったりする材木でも、切り口 の表面がきれいなら、製品の品質に関係 なく丸太ごと売られてしまうようなケース もある。 原木を切り出す伐採事業者は自分の 仕事だけ、製材業者は機械で必要なも のだけを加工し、製品は販売業者を通し てエンドユーザーに届けられるため、同 業種の中であっても、互いはプツンと分断 された状態だ。 こうした状況を打開しようというのが 同組合の目的で、豊かな森林資源を有 効に使い、山からエンドユーザーまで 見通せる生産拠点にするという考えだ。 「消費者ニーズに応える商品付加価値 ●設備:高性能林業機械 ●技術:含水率等品質管理 ●中国 ●中国 事業名:林業と木材産業の共同連携による兵 庫県産スギ材の新たな製品開発・製造販売 認定日:平成21年2月23日 連携による新たな価値創造 スケールメリットを生かす 大規模需要者 ●設備:最新鋭製材機械 ●近畿 ●近畿 協同組合 兵庫木材センター 理事長 八木 数也 平成20(2008)年4月 兵庫県宍粟市一宮町安積字丸山 217-20 ●出資金 1億3,100万円 ●従業員数 57名 ●売上高 12億1,400万円(平成25年3月 期) ●事業内容木材・木製品の製造 http://www.hyogo-mokuzai. ●URL com/ ●TEL 0790-72-8811 ●FAX 0790-72-8812 事業の展開 商社など (有)杉下木材、(株)八木木材 ●北陸 ●北陸 ●社名 ●代表者 ●設立 ●所在地 日本の林業は輸入木材との競合など による木材価値の低迷、林業就業者の 減少や高齢化の進展などで厳しい環境 に直面している。間伐が行われず放置 されたままの森林も珍しくない。 兵庫県の林業産出額は全国30位前 後だが、宍粟(しそう)市を中心に林野面 積は約56万ヘクタール、木材量は全国 で9番目に多く、年間の人工林成長量は 160万立方メートルとなっている。 その中で利用されているのは、年間 15万立方メートルと10分の1程度。 「大き な油田を抱えているのと同じ。その資源 を利用した産業を振興しよう」 (八木数 也理事長) との思いでたどり着いたのが 組合の設立だ。品質・価格・供給力で外 材に対抗できる新たな県産木材の供給 システムを確立しようと、平成20年4月に 地元の森林組合や素材、製材業者、工 務店など23社が出資して協同組合兵庫 木材センターを設立。 これを受け、木材 大手ハウス メーカー、 協同組合 兵庫木材センター ●中部 ●中部 会社概要 豊かな森林資源で産業振興 外材に負けない体制を構築 住宅市場 ●関東 ●関東 良質な木材を安定供給し、取引先からも価格や品 質面で高評価 の調達先として素材生産業者2社と農 商工連携の連携体を構成し、21年2月に 事業認定された。 本事業は厳しい逆風下の林業を、消費 者ニーズの観点から見直したものです。日 本の風土を守る治水の観点からも山林を維持管理するこ とは重要であり、無計画な伐採や放置は災害につながり かねません。そのためにも、計画的に事業として林業が営 まれることが、必要不可欠です。そうした新事業としての 林業を立ち上げるために地域が結集して、これまでの技 術、 ノウハウ、知恵を用いる事業です。支援者として、国や 自治体の制度を活用して、全力で支援してまいります。 代表者 ●東北 ●東北 林業と木材産業の連携により、原木生産から木材製品の安定供給までス ケールメリットを生かした一貫体制を構築した。スギやヒノキなどの森林所 有者と原木を切り出す素材業者、丸太から柱や板にする製材業者、工務店 や住宅メーカーなどエンドユーザーまでを見渡して高品質で安い木材を供 給でき、国内林業の新しい試みとして全国からも注目されている。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 連携で生産から流通の一貫体制を構築 良質な木材を安定供給 事業の概要 連携体の構成 兵庫県宍粟市 理事長 八木 数也 氏 20年度 73 株式会社 ヴァイオス 低コストのリサイクル技術 99%のリサイクル率 の掘り起こしとし尿処理の委託先の開 拓に努めている。 し尿系廃棄物は99%がリサイクルさ れ、低コスト・高品質の有機質肥料が出 来上がる。同社では、有機質肥料の効 果の実証と、資源循環型農法を実現す るため、22年にグループ会社として農業 生産法人㈱ヨシムラファームを設立。 ニン ニクや桃、 さらには無農薬トマトやパセリ をハウス栽培している。 事業の成果 処理能力拡大で売り上げ増 全国初の民間し尿処理施設 新連携の認定を取得したことで、商工 中金から長期低利の融資を受け、桃山 リサイクルセンターの処理能力と肥料生 産設備の増強を行っている。その結果、 受け入れられるし尿の量が増え、売り上 げ拡大に結び付いた。 リサイクル部門の 売り上げは24年2月期で6年前に比べ15 倍の約3億円にまで拡大。 これに伴い、 会社全体の売り上げも、6億4千万円に (和歌山県海南市) ●施設設備・開発 ●処理場運営の技術指導 ●施設設備メンテナンス ●し尿処理場からの収集・運搬 ●既存車両の活用 ●取引先の紹介 今後の事業展開 競争厳しくも低コストに自信 人材育成で組織を強化 生産肥料の販売 村岡事務所 (和歌山県和歌山市) ●肥料販売網の構築 ●金融コンサルティング 認定事業の売上高推移 経 営 者 の ひ と 言 会社が目指すビジネスを 150 23年度 100 22年度 50 21年度 20年度 会社の目指すビジネスに沿った形でないと 認定をとっても意味がありません。新しいチャ レンジや方向性といった漠然としたもので はなく、一歩一歩やることが大切です。市場 のないところを走っても結果は付いてきませ ん。 ●沖縄 ●沖縄 200 ●九州 ●九州 単位:百万円 0 で広がっているし尿処理の受託業務を 全国に広げて、処理量にして年間3万ト ンを処理・リサイクルすることが目標だ。 競争は激しいが、 コストの安さには自信 がある。 3年後には社員を60~70名に増やす とともに、売上高10億円を達成させるこ とを目標にしている。 また、借入金を計画 より前倒しで返済し、5年後には桃山リサ イクルセンターに続く第2のリサイクルセン ターを建設する構想もある。 「廃棄物関 連の業界は今まで人材を育成していな い。新しい発想で社内組織を強化してい く」方針だ。 一方、海外展開にも力を注ぎ、東京大 学と共同でタイの名門タマサート大学へ の技術支援も進めながら、 インフラ整備 が遅れている同地で水処理事業を手掛 けることを計画している。併せて有機農 法による減農薬の有機野菜づくりを行い、 「メード・バイ・ジャパニーズの野菜を作 ことも夢だ。 る」 ( 村社長) 今後は、近畿圏を中心に新潟、広島ま 250 74 (愛媛県松山市) 大幅に拡大している。従業員も30名から 50名に増員した。 24年には、桃山リサイクルセンターが、 これまでの汚泥処理施設から、民間が 建設し運営する全国初のし尿処理施設 として和歌山県の許可を受けることにな り、市町村など公共機関だけが担ってき たし尿系廃棄物の処理が、民間にも認 められることになった。 同社が認定を目指した目的の一つ に、人材育成を通じた自社技術の向上 と社内組織の強化を掲げていた。 リサイ クル技術の分野では東京大学との共同 研究も始まった。 「認定によってネームバ リューが上がったことが大きい。東京大 学との連携が進んだことや、全国から新 規のお客さまが増えたことも新連携認定 という。 のおかげといえる」 ( 村社長) 300 桃山リサイクルセンター内の汚砂磨砕機 (株)明光 ※認定時の構成 400 桃山リサイクルセンター し尿系汚泥の搬入 プロジェクトマネージャー 菊谷 敏 350 桃山リサイクルセンター水処理工場 施設機械設備開発・導入 (株)ダイキアクシス ●四国 ●四国 ㈱ヴァイオス本社 ●新規処理施設の運営 ●資金調達のメイン ●中国 ●中国 開発したリサイクルシステムは、海洋 投棄されていたし尿系廃棄物を陸上処 理施設で微生物反応によって浄化・再生 させるというもの。焼却処理を行わない ため、 ダイオキシンや温室効果ガスが発 生しないうえ、重油などの化石燃料も不 要。 また、 ろ過工程で使用する中空糸膜 は7年間交換不要なため運転コストの低 減につながっている。 村社長自ら全国 を回り、低コストで環境に配慮したリサイ クル技術であることを訴え、市場ニーズ ●新規処理施設の建設 ●既存処理施設の活用 ●連携体構築契約書 の作成 ●ビジネスコンサルティング 販売 ●近畿 ●近畿 事業名:新たな汚泥処理技術による(し尿系) 廃棄物のリサイクルと肥料化事業 認定日:平成18年7月18日 事業の展開 (株)ヴァイオス(和歌山県和歌山市) 西岡会計事務所 ●北陸 ●北陸 ●社名 株式会社 ヴァイオス 村 英樹 ●代表者 代表取締役 ●設立 昭和53(1978)年5月 ●所在地 和歌山県和歌山市西庄295-9 ●資本金 3,000万円 ●従業員数 50名 ●売上高 6億4,000万円(平成24年2月 期) ●事業内容廃棄物処理 http://www.vioce.jp/ ●URL ●TEL 073-452-9356 073-451-3056 ●FAX ㈱ヴァイオスは、昭和42年に浄化槽施 工・維持管理業として創業した。2代目の 村英樹社長がし尿廃棄物をリサイク ルして肥料を生産(堆肥化)することを 思い付いたのは、東京で開かれた環境 事業の勉強会に出席したことがきっかけ だ。江戸時代にはし尿が有償で農家に 引き取られていた歴史を学び、業務転換 することを決意。 し尿系廃棄物の収集運 搬および各浄化槽の維持管理という業 務に、 リサイクル業務を加えて、平成13年 に肥料生産工場を、15年に処理施設の 桃山リサイクルセンターをそれぞれ操業 させた。 肥料生産工場では、発酵肥料「ばい おこんぽ」を生産している。肥料業界の 競争も激しい中、最初は使用をためらう 農家も多かったが、肥料の利用方法な ど農家に対する勉強会や啓蒙活動を 地道に重ね、 自らも 「ばいおこんぽ」を使 用したニンニクなどの農作物を生産して みせることで、顧客を開拓していった。 新処理施設の建設 コンサルティング ●中部 ●中部 会社概要 業務を大きく転換 し尿系廃棄物処理に参入 こうした中、 し尿系廃棄物の海洋投棄 を全面禁止する国際条約が19年2月に 施行されることを前にして、桃山リサイク ルセンターの処理能力を大幅増強させ、 本格的なリサイクルシステムを確立する ことを計画。 ろ過機能を持つ中空糸膜の 技術と施設設備の開発などを行う㈱ダイ キアクシス (愛媛県松山市)、 し尿処理場 からの収集・運搬などを行う㈱明光(和 歌山県海南市)などと連携体を組成し、 18年7月に新連携事業の認定を受けた。 し尿などの海洋投棄が全面禁止になる 国際条約の施行をチャンスと捉え、同時に ダイオキシン問題などで設置が困難な焼却設備を一切採 用しない完全リサイクルにこだわって新事業を展開してい ます。他方では生産した肥料を活用すべく農業生産法人 を立ち上げるだけでなく、6次産業化の認定を取得するな ど、時代の需要を先読みした戦略を採っています。これは、 先代から受け継いだ現2代目社長の事業に対する高い危 機意識とその克服への情熱が、 この事業の成功要因とい えます。 中小企業基盤整備機構 近畿本部 ●関東 ●関東 事業の概要 コア企業 ●東北 ●東北 それまで海洋投棄されていたし尿系廃棄物の陸上処理に挑戦。新たなバ イオマス技術によって焼却工程を不要としたほか、高いろ過処理技術を持 つ企業との連携により、低コストのリサイクルシステムを確立した。農業生 産法人を立ち上げ、リサイクルによって生成した有機質肥料を用いた循環 型農業にも取り組んでいる。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 新しいバイオマス転換技術でリサイクル し尿などを有機質肥料に再生 し尿系廃棄物を99%リサイクルし、生産された低 コストで高品質の有機肥料「ばいおこんぽ」 連携体の構成 和歌山県和歌山市 代表取締役 村 英樹 氏 19年度 75 株式会社 ショウエイ 中小企業基盤整備機構 中国本部 チーフアドバイザー 神保 正 たが、 「ショウエイは品質も安定し直販 しても構わない」 と認められるまでに至 り、 ライセンシー契約のもと、直販体制 を採用できることとなった。その結果、 中国、韓国、 スイスなどマーケットは世 界中に広がった。 製造したICUはこれまでトラブルゼ ロの輝かしい成果を誇っている。24年 3月には、 この実績が評価されてW社 から新しいICUの設計で同社に声が 掛かり、技術者をスイスに派遣した。外 国の技術者が招かれるのは異例なこ とという。 事業の成果 売り上げ30億円 グローバル企業に 事業の先行きに安心感が生まれ、 取引先や金融機関の見る目が変わり、 信用力が増した。 そうした効果を背景に、20年には事 業拡大のため、第2工場を完成させ、 将来への布石を打った。認定後に中 国経済産業局の公報誌に掲載される などし、会社の信用度アップにも大い に役立っている。 さらにテレビ局から社 長の出演依頼もあり、一般消費者には 遠い企業でありながら、 メディアからも 注目される存在となった。 また、愛康との連携やICUの技術を 生かした派生商品の開発など、 社員の ものづくりに対するモチベーションも向 上。世界に通用するプロフェッショナル な技能集団に変わろうとしている。 これまでの累計売上も30億円に達 した。昭和56年に大阪から岡山県に 工場を移転した当時は、水道や電気 の確保にも苦労したほどだったが、そ の過疎地の企業は今や“グローバル 企業” にまで成長した。 なお、事業規模の急拡大に伴い従 業員も増えたため、 中小機構の専門家 継続派遣事業を活用し、大企業の生 産現場を熟知した専門家などの支援 を受けながら、 社内体制も確立した。 経 営 者 の ひ と 言 市場 大手エンジン ビルダー ヒュンダイ ドーソン DU 三菱重工 他 切削加工 (株)愛康 ●精密切削加工 今後の事業展開 連携生かして新商品開発 地域での雇用の場を確保 舶用エンジンは地球環境への配慮 から、国際海事機関(IMO) により排出 ガス規制が強化されてきており、硫黄 酸化物や窒素酸化物の排出削減と同 時に燃費効率の高いエンジンが求め られている。 さらにレベルアップした新 商品を求められているため、W社と技 術面で協力しながら、愛康との連携を 生かして開発を進める方針で、国内 需要を固めながら経営を安定させて、 将来に向けてさらに技術を高度化す る戦略だ。 また、新しい取り組みとして、植物工 場の事業化に向けていくつかの企業 と研究開発も手掛けるという。 ICUの製造で国内外のマーケットを 相手に事業をしながら、地域での若い 人材や女性の雇用推進、一流の技能 者集団の育成など、地域をリードする 企業になることも目指している。 ●沖縄 ●沖縄 新連携は、それぞれの会社の将来を懸ける事 業ともいえ、社長との相性も大切です。その意味 ではいい相手と巡り合えました。また、過疎地で やっているからこそ頑張ろうという気持ちになり ます。過疎地というハンディを逆にプラスになる よう社員全員が力を合わせて、日本だけでなく 世界でオンリーワンの企業になりたいと思ってい ます。 ●九州 ●九州 過疎地のハンディ、プラスに ●四国 ●四国 76 その後、表面処理は同社で内製化 することになり、現在は愛康との2社連 携となっている。 この2社は「相互にス キルアップしようというベクトル(方向 性) がマッチ」 (辻井説三社長) し、 連携 にとどまらず、現在は株式を持ち合うま での親密な関係に進化している。 日本でこの方式のICUを製造してい るのは同社だけで、連携各社の高度 な技術の結集によって量産技術を確 立することができた。 ICUの受注残は 現在1年分を確保しており、同社の主 力製品となり経営を支えている。 昔から同社を知っていた世界三大 舶用エンジンメーカー(W社)の社長 が突然訪問し、 ICUの図面を見せて 「 造ってほしい」と言われたのが 縁 で、その後、注文に応じて製造してい 支援 岡山県 産業振興 財団 ライセンス ●中国 ●中国 ㈱ショウエイ第2工場 技術の結集で量産技術を確立 ICUはトラブルゼロ ●燃料噴射制御装置の材料選定・製造及び販路開拓 WCH社 ●近畿 ●近畿 事業名:新しい舶用電子制御コモンレール 型ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置 の製造・販売 認定日:平成18年2月23日 事業の展開 (株)ショウエイ ●北陸 ●北陸 ●社名 株式会社 ショウエイ ●代表者 代表取締役 辻井 説三 ●設立 昭和19(1944)年 ●所在地 岡山県美作市古町701-1 ●資本金 5,500万円 ●従業員数 98名(パート含む) ●売上高 17億6,000万円(平成24年9月 期) ●事業内容船 舶 用および 発 電 機 用カム、 熱処理、燃料噴射装置その他 ディーゼルエンジン部品の製造・ 販売 ●TEL 0868-78-3819 ●FAX 0868-78-3194 長年にわたり舶用ディーゼルエンジ ンの駆動装置などを製造してきた技 術力を生かし、舶用の電子制御コモン レール型ディーゼルエンジンの中枢と なる電子制御式燃料噴射装置(ICU) を製造している。 このICUは、機械によ るシステムと異なり、高圧にした燃料を コンピューター制御で最も燃料効率が 良いタイミングで噴射する。適切なタイ ミングで燃料を噴射する電子技術は 非常に高度な技術で、構成する部品 の材料選定や表面硬化のための熱 処理、 ミクロン単位の超精密な加工技 術などが不可欠。エンジンメーカーで は品質、 コスト、納期の面から、量産化 に向けた技術課題を解決するのは困 難とされていた。 装置の製造・開発 ●中部 ●中部 会社概要 ものづくりへの志が一致 得意分野を生かし連携 そこで、舶用ディーゼルエンジンの カムや駆動装置を得意とする㈱ショウ エイをコア企業に、精密な切削加工を 得意とする㈱愛康(愛知県)、熱による 表面処理が得意な㈱谷口金属処理 工業所(愛媛県)の3社で連携体を組 み、 技術的な課題を解決した。 もともと3社は営業面で取引関係が あり、社長同士のものづくりに対する志 が一致。平成18年2月に新連携の認定 を受けた。 同社は岡山県北部のいわゆる過疎地域 でありながら、極めて高い技術力を持つグ ローバル企業として活躍しています。それだけに経営者は 地域振興、特に人材育成や雇用の場の確保に全力で取り 組んでおられ、一企業としてのビジョンではなく、社会全体 を見据えた高い理念を持って事業を営んでおられます。中 小機構としては、今後もあらゆる局面で同社の事業活動 を支援していきたいと考えています。 ●関東 ●関東 事業の概要 コア企業 ●東北 ●東北 ここ数年、環境保護への意識の高まりから、舶用ディーゼルエンジンの排ガスに含まれる窒 素酸化物(NOx)など大気汚染物質への批判が高まっている。㈱ショウエイは、大気汚染物質 排出の低減と燃費向上に優れた電子制御コモンレール型ディーゼルエンジンの中枢となる電 子制御式燃料噴射装置(ICU)を製造、販売している。世界の三大舶用エンジンメーカーの1社 から製造ライセンスを受け、日本で唯一、この方式のICUを製造する企業として量産態勢を確 立。世界中の海を航行する大型船のエンジン部品としてなくてはならない存在になっている。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 独自技術で舶用エンジン部品が存在感 世界の大型船になくてはならない存在に 舶用の電子制御コモンレール型ディーゼルエンジ ンの中枢となる電子制御式燃料噴射装置(ICU) 連携体の構成 岡山県美作市 代表取締役 辻井 説三 氏 カム軸組み立て 77 株式会社 東洋高圧 会社概要 装置組立・販路開拓 シブヤマシナリー(株) ●大型タイプ装置の高圧容器製造 ●大型タイプ装置の組立 ●大型タイプ装置の組立 ●装置の販売 (香川県高松市) (石川県金沢市) 市場先 機能性食品メーカー 調味料メーカー 飲料メーカー 等 販路開拓 試験受託・用途開発 ポエック(株) (株)超臨界技術研究所 (広島県福山市) ●装置の販売 (広島県広島市) ●受託試験・用途開発 チーフアドバイザー 神保 正 ※認定時の構成 ㈱東洋高圧は、創業以来、試験研 究用高圧装置の設計製作に取り組む 中で、高温高圧技術や真空技術に強 みを持っていた。そこで、超高圧下で 食品エキスを製造する装置の事業化 に当たり、大型装置の製造力や広範 な営業力を補うため、 中小機構の紹介 もあり、大量生産用の大型高圧容器 の製造は㈱三和テスコ (高松市) 、 同じ く大量生産用の大型装置の組み立て はシブヤマシナリー㈱(金沢市)、販売 はポエック㈱(福山市)、受託試験など は㈱超臨界技術研究所(広島市) と 連携し、平成18年11月、新連携事業の 認定を受けた。 同社は従来、主に大学の試験研究 所向けに受注販売してきたが、幅広い ユーザーを獲得しようと、装置の大きさ もデスクトップタイプの小型のものから 300リットルの大型サイズまでいくつも の種類を用意した。 さらに、新たな販 路開拓には連携企業各社が持つ、食 品、飲料、環境関連機器など既存の 販売ルートを活用した。新事業活動促 進支援補助金はパンフレット製作や展 示会出展、広告などの販路開拓に役 立てることができた。認定後は認知度 も向上、開発した装置の評価につなが り食品・飲料メーカーからの引き合い が入りだした。 事業の展開 事業の成果 化粧品会社が大量購入 合計300台販売 このエキス化の基本技術は、広島 県立総合技術研究所食品工業技術 センターの特許技術で、特許はタンパ ク質系の食材で取得しているが、 それ 以外の食材でも短時間で分解できるこ とを実証している。食品エキス製造装 置(「まるごとエキス」) を活用すること で、 これまでにない品質を持った食品 が誕生する可能性があり、応用範囲 が広がる見通しだ。健康志向の高まり から、体に良くておいしい食品が求め られており、食品エキスの需要は増大 傾向になっていた。 このため、食品・飲 料メーカーだけでなく、調味料などの 会社も販売のターゲットになるとみてい た。 発売して数年後、思いもかけなかっ た化粧品メーカーからまとまった注文 が入った。 「まるごとエキス」で超高圧 今後の事業展開 簡単操作を重要視 斬新なメニューも誕生 需要を拡大するためのポイントとし て、使いやすさを心掛けている。受注 認定事業の売上高推移 経 営 者 の ひ と 言 単位:百万円 認定事業を振り返って 200 150 100 50 0 生産していた研究機関向けの試験装 置は専門家向けの商品だったため、 一般企業向けの商品は特に簡単操 作を重要視している。 このコンセプトが 実って、 しょうゆメーカーがうま味成分 を多く出せるということから購入、サプ リメントを製造する会社も従来の製法 と比較して商品の熟成ができると高く 評価している。東京のレストランでは、 この装置で若いバルサミコ酢を短時 間で熟成、長期間熟成したのと同じま ろやかな味に変化させることができる という。栄養価を損なうことなく料理が できるとしてシェフから重宝がられ、斬 新なメニューが誕生している。 各種材料の試験によりさらに用途が 拡大することも予想されるほか、安全・ 安心の観点から環境関連メーカーな どへの展開もありそうだ。輸出は合計 で10台ほどしか出てないが、類のない 装置のため海外向けにも伸びる可能 性がある。 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 新連携事業を活用させていただき、 本商品の認知度を大きく向上させるこ とができたと考えます。また補助金を得 ることができ、中小企業として費用負担 を軽減できることは、新たな試みにチャ レンジする後押しともなり、有効に活用 させていただきました。ぜひ、認定を目 代表取締役 野口 琢史 氏 指されてみてはいかがでしょうか。 ●沖縄 ●沖縄 当初の販売先は食品関連 幅広いユーザーの獲得へ 処理した化粧品は、粒子が微細で肌 への浸透が高まるという理由でエス テショップに導入され、小型タイプを中 心に150台も売れた。 しわや毛穴を目 立たなくする 「ビューティーソリューショ ン」の有効な方法として美容業界から 注目された。 当初は食品メーカーが主要な納入 先になると推測して製品テーマを「食 品エキス」としていたが、あまりにも 化粧品業界で評判になったことから、 「物性を変化させる装置『まるごとエ キス』」に急きょ変更したほどだった。 需要が拡大したことから現在国内で 合計約300台が販売され、 同社の柱に なりつつある。 ●九州 ●九州 78 高圧容器製造・装置組立 (株)三和テスコ ●四国 ●四国 ㈱東洋高圧本社社屋 (独)農業・食品産業 技術総合研究機構 食品総合研究所 ●中国 ●中国 まるごとエキス装置300Lタイプ ●全体統括 ●小型タイプ装置の製造 ●装置の販売 技術支援 ●近畿 ●近畿 事業名:超高圧下で食品エキスを製造する 装置の製造・販売 認定日:平成18年11月29日 (株)東洋高圧(広島県広島市) ●北陸 ●北陸 ●社名 株式会社 東洋高圧 ●代表者 代表取締役 野口 琢史 ●設立 昭和56(1981)年4月 ●所在地 広島県広島市西区楠木町2-1-22 ●資本金 1,000万円 ●従業員数 30名 ●売上高 8億円(平成24年8月期) ●事業内容試験機器(高温高圧装置)の製造 ●URL http://www.toyokoatsu.co.jp/ ●TEL 082-237-6255 ●FAX 082-230-0611 調味料などに用いられる食品の「エ キス」は、 これまで常温・常圧下で微生 物により分解する発酵法と、酵素分解 法による製造方法があったが、両方と も食材の分解時間が長いため製造原 価が高くなったり、食品エキスの高い 効能が得られないなどの欠点があっ た。 これまでのように塩分添加や殺菌は 行わずに、40~60度の中温で水深5千 メートルから1万メートルの水圧に相当 する超高圧の容器の中に置くことによ り食材を酵素で分解する方法を用い ると、分解時間を約24時間に大幅短 縮し、エキスの品質を向上することが できた。 広島県立食品工業 技術センター ●中部 ●中部 新たな方法で食品エキス製造 分解時間を大幅に短縮 同社は新連携の認定に向けた支援と並行 して、 「設計の標準化」 「新事業構想~マーケ ティング」 「経営管理」のテーマで「専門家継続派遣事業」を活 用いただき、新事業チャレンジへの基盤整備を行いました。当 機構の紹介で信頼できる企業と連携したことと併せ、新事業を スムーズに立ち上げることができた最大の要因だと考えてい ます。本件は当機構の複合支援の先駆けであり、以降の支援 モデルに大きな影響を与えました。同社の技術力、経営者の人 柄と経営理念にほれ込んだオール中小機構による集中支援で あったと思います。 中小企業基盤整備機構 中国本部 全体統括 特許技術等 ●関東 ●関東 事業の概要 コア企業 基本特許 ●東北 ●東北 創業以来の高温高圧や真空分野での実験装置製造技術を生かし、主に メーカーや研究機関から試験装置などを受注生産してきた。その蓄積した 技術をベースに5社による企業連携を行い、低コストで簡便、圧力を利用し てさまざまな食品を丸ごとエキス化する装置の商品化に成功し、全国展開 している。簡単に圧力加工を実現する技術は㈱東洋高圧独自のもので、応 用範囲が広がっている。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 短時間低コストで食品エキスを製造 化粧品業界で新たな用途拡大を目指す 食品だけでなく、化粧品の原料などもエキス化 連携体の構成 広島県広島市 79 藤崎電機 株式会社 徳島県阿南市 会社概要 事業の成果 内外で展示会に出展 トルコからも商談 医薬品製造分野の市場を考えた 認定事業の売上高推移 単位:百万円 世界にないものを 100 80 60 24年度 23年度 20 22年度 21年度 「世界にないものを」とスター トした事業で、当初は荷が重いと いう感じがありましたが、当社の トップブランドとして育てていき たいと考えています。懸案であっ たフルクローズド型の製品が完 成したことで、社内のモチベー ションは高まりました。 ●沖縄 ●沖縄 40 0 80 経 営 者 の ひ と 言 ●九州 ●九州 藤崎電機㈱が開発したマイクロミス トスプレードライヤーの強みは「世界 で最も微細な粉体を大量に生産でき る」こと。特徴は、四つの口がある四流 体ノズルにある。基本的にノズルの穴 を小さくすればミクロン単位の粉体を 加工できるが、 その場合は少量しか生 産できないというジレンマがあった。 マイクロミストスプレードライヤーは、 圧縮した気体によって液滴を音速に 近い速度でノズルから発射させ、 ノズ ルの先端部に衝突した際に発生する 衝撃波で大量に粉体にする (噴霧) こ とを可能にした。 もちろんこの技術は日 欧米6カ国で特許を取得済みである。 同社によれば、噴霧乾燥機を製造 するメーカーは国内に10社程度、海外 で50社程度あるとされるが、同社の装 置は数ミクロンの微細な加工が可能で あるため、競合メーカーは今のところ 見当たらない。 また、同社の推定では、 ミクロン単位 の粉体を求める噴霧乾燥機の世界の 市場規模は60億円程度、そのうち医 薬品製造分野向けは28億円程度であ る。 ニッチな市場ではあるが、今後、需 要は確実に拡大するものとみられ、同 社の野望はその最先端を走ることで ある。 今後の販売は商社、代理店、海外 メーカーとの提携、 ダイレクト販売など 五つの販売チャネルを築く戦略を目指 している。 ●四国 ●四国 世界で最も微細な粉体 四流体ノズルの開発 高速で大量に生産 医薬向け市場は 28 億円 五つのチャネルで販売拡大 ●中国 ●中国 藤崎電機㈱本社 事業の展開 今後の事業展開 ●近畿 ●近畿 事業名:一般機械(ファインケミカル向け噴霧 乾燥機)の製造技術を活用した、 医薬品製造用 マイクロミストドライヤの開発・製造・販売 地域資源名:一般機械器具 認知日:平成20年6月10日 大手製紙会社の原動機部門をスピ ンアウト、昭和48年に電気工事業とし て創業した。 タイミングよく、発電所の 設備工事で下請けに入り、経営基盤 を築いた。その後、電気工事にとどま らず、省力化機械の制御盤や計装盤 と事業範囲を拡大したが、 「いつまで も孫請け、 ひ孫請けではつまらない」 と メーカーを目指し、高速自動選別機な ど自動化ラインの開発設計に乗り出し た。 しかし、個別の機械の開発設計は 「人手が掛かる上、受け身的なビジネ ス」。 そうした状況を打破するためにオ リジナル製品を開発するメーカーへと 経営のかじを切った。 場合に、国内市場はもとより、海外で の展開が不可欠と考え、東京のほか、 ニューヨークやシカゴ、 ドイツのニュル ンベルクなどの粉体展示会に積極的 に出展してアピールした。 これらの海 外展示会の出展経験から、海外展開 を目指す上で、英文によるホームペー ジの存在が不可欠と気付き、新事業 活動促進支援補助金を活用して英文 ホームページの拡充を図った。 さらに、国内・海外でのマーケティン グ調査や、国内の医薬品メーカーや 電池素材メーカーなどへのアプロー チを行った。現在は、国内の電池素材 メーカーへの受注が実現したほか、海 外ではトルコの医薬品メーカーへ納入 済みで、 インドの医薬品メーカーからも 受注を受けている。 また韓国、台湾、米 国の企業からも商談を持ち込まれてい る。 販売実績として、すでに国内向けに 2基のフルクローズド型マイクロミストス プレードライヤーを出荷した。 ●北陸 ●北陸 ●社名 藤崎電機 株式会社 ●代表者 代表取締役 藤崎 稔 昭和49(1974)年7月 ●設立 ●所在地 徳島県阿南市辰己町1-38 ●資本金 3,420万円 ●従業員数 90名 ●売上高 24億円(平成24年9月期) ●事業内容工場・プラント設備の電気・計装 工事、太陽光発電設置工事 http://www.fujisakikk.co.jp/ ●URL ●TEL 0884-21-0555 ●FAX 0884-21-0505 孫請けからメーカーに脱皮 ミクロン噴霧乾燥機 今回の認定事業の計画は、 さらに 医薬品製造に利用できるよう製品開 発を進め、 日本以外の欧米、 アジアへ の販売拡大を目指すものである。 医薬品製造分野での使用に当たっ て問題となったのは、有機溶媒の回収 だった。完全に密閉したフルクローズド 型の装置が不可欠で、 より細かい粉体 が求められた。特に、粉体と気体を分 離する際、医薬品製造では衛生面か らフィルターの使用が認められていな いため、サイクロン (粉体分離器) を高 性能化しなければならなかった。 この 課題解決のために多くの時間と資金 を要することになったが、資金の問題 については、新事業活動促進支援補 助金や低利融資を活用することがで き、負担軽減が図れた。 プラント ●中部 ●中部 数ミクロンの微粉末を大量に生産することができ るマイクロミストスプレードライヤーの社内設備 たまたま徳島県の大手医薬品メー カーから新薬開発のための数ミクロン 単位で粉末を加工できるスプレードラ イヤー(噴霧乾燥機)の開発を依頼さ れた。噴霧乾燥機はもともとヨーロッパ で牛乳から粉ミルクをつくる工程で使 われていた。 この噴霧乾燥機の製造技術を活用 し、 自社で初めてのオリジナル商品を 開発し、医薬品製造に利用できるよう な製品開発と販売拡大を目指した地 域資源活用事業として平成20年6月、 事業認定された。 中小企業基盤整備機構 四国本部 チーフアドバイザー 太田 文男 ●関東 ●関東 事業の概要 同社は、ユニークな発想をお持ちの藤 崎社長を中心として、パワフルに新しい事 業を手掛けている企業です。医薬品製造用マイクロミスト ドライヤーと並行して、太陽光発電事業や、竹林被害に対 応した竹加工機械の製造など、社会貢献にもつながる事 業を進めておられます。当事業においては、今後、海外で のさらなる展開が期待されます。中小機構の海外展開支 援メニューも活用できるとよいと考えています。 ●東北 ●東北 青色発光ダイオード(LED)を開発し、世界から注目を浴びた大手精密化 学品メーカーの主力工場の隣に、黄色の藤崎電機㈱の本社工場が異彩を放 つ。こちらも世界に先駆けて液体からミクロン単位の粉体をつくり出すマイ クロミストスプレードライヤーを開発、電池の電極材や医薬品製造分野で の利用拡大を目指している。 ●北海道 ●北海道 世界で最も微細な粉体を大量に 医薬品製造に利用できる製品を開発 支援者の視点 専務取締役 藤崎 耕治 氏 20年度 81 計測検査 株式会社 低利融資で診断車両を開発 橋梁、下水など広がる用途 事業の成果 道路、鉄道会社から受注 トンネル検査に「革命」 処理スピードの短縮 見えない壁の内部まで 認定事業の売上高推移 200 24年度 100 23年度 22年度 50 21年度 20年度 ●沖縄 ●沖縄 250 車両に搭載する機器はオーダーメードのた め開発費用が掛かるので、事業認定により優 遇金利で低利融資を受けることができて大い に助かりました。インフラ施設の致命的な損傷 を回避するためには、予防保全の考え方を導 入する必要があります。事業がさらに拡大して くると、わが社だけでは手が回らなくなる可能 性があります。将来的には業務提携することも 考えなければならないかと思っています。 ●九州 ●九州 業務提携も視野に 150 82 え、依然として改善の余地があること も事実だ。中でも、ユーザーからは診 断処理のスピードアップを求められて いる。現在はトンネル1キロのデータ分 析に1週間程度が必要となるが、最終 的には調査日の翌日には結果が分か るようにしたい考え。 また、現在の診断装置では、壁の表 面のひび割れや歪みなどを発見できる ものの、壁の内部空洞までは見つける ことができない。今後は非破壊検査の 技術を駆使し、壁の奥の異常を発見 するなど、 トンネルのすべてを検査でき るようになることを目指している。 トンネ ルの表面をたたかない形の非接触の 技術により内部構造まで検査するの は、現時点では難しいとされるが、 チャ レンジを続ける方針だ。 現在、2台の診断車両を保有してい るが、全国各地の検査をこなすには5 台は必要になるため、仕事の範囲を見 極めながら車両も増やす計画だ。 経 営 者 の ひ と 言 300 0 ※認定時の構成 新しい診断技術を開発したとはい 350 高精度レーザースキャナーで取得したトンネル計測例 経営支援 福岡ひびき信用金庫 地域力連携拠点 今後の事業展開 400 覆工面写真例(MIS試験車両で撮影) ●管理ソフト開発 ●管理ソフトの特許所有 体などから受注できるようになった。 建設後30年以上経過した道路トン ネルは全国に8,700本以上あるとされ ており、 インフラ設備が老朽化する中 で検査箇所が増えるにもかかわらず、 熟練技術者が少なくなり、 トンネル内 部の点検・補修作業は道路管理者に とって頭の痛い問題だった。全国の鉄 道会社も同じ問題を抱えており、20年 ごろから診断依頼が相次ぐようになっ た。 このシステムはトンネル検査に「革 命」を引き起こしたともいえ、 この数年 の売上高は右肩上がりとなり、従業員 も毎年3~5名ずつ増やしている。公共 交通機関の安全確保が注目されてい る中でテレビなどに紹介されることも多 く、 有名企業になっている。 単位:百万円 計測検査㈱社屋外観 ●マルチ・アイ・システムの開発 ●診断技法等の特許所有 ●診断技法の開発 ●販売 (新潟県新潟市) ●四国 ●四国 この診断システム「マルチ・アイ・シス テム」は、撮影システムの改良が進ん できていた17年ごろに高速道路管理 会社からトンネル検査を受注、 これが その後の事業拡大の起点となった。 こ の仕事で技術的なレベルの高さを証 明し、高速道路管理会社や地方自治 (有)ジーテック (福岡県北九州市) ●中国 ●中国 システムを実用化し、 スピーディーな 診断を行うためには、 トンネルの表面に カメラのピントを合わせなければならな かった。その後、試行錯誤してトンネル 内で停車せずにピント調整ができるよ うになり、1万キロを超える走行試験を 実施。その結果、時速50キロで走行し ても撮影の精度は落ちないまでに性 能が向上した。撮影データ処理時間も 大幅に短縮できるようになり、21年、作 業効率を大幅にアップしたシステムを 完成させた。認定に伴い優遇金利が 計測検査(株) 金融支援 日本政策金融公庫 管理ソフト開発 ●近畿 ●近畿 事業名:作業効率を飛躍的に向上させる診 断技法「マルチ・アイ・システム」による維持管 理業務の事業化 認定日:平成20年12月1日 事業の展開 診断技法特許・システム開発・販売 ●北陸 ●北陸 ●社名 計測検査 株式会社 ●代表者 代表取締役 坂本 敏弘 ●設立 昭和49(1974)年11月 ●所在地 福岡県北九州市八幡西区陣原 1-8-3 ●資本金 3,000万円 ●従業員数 89名 ●売上高 9億円 ●事業内容トンネル、道路などの表面検査 診断サービス ●URL http://www.keisokukensa. co.jp/ ●TEL 093-642-8231 ●FAX 093-641-2010 開発のきっかけは平成11年、新幹 線のトンネルで起きたコンクリートの落 下事故。当時、 トンネル内部の検査は 熟練した技術者などが行う目視や打 音による検査と、 レーダーを照射して 把握する非破壊検査など限られたも のしかなかった。人海戦術に頼るため 1キロを確認するのに1週間もかかった り、 コストが高かったりするなど調査手 法の限界があった。 このため効率的な検査診断方法の 開発に着手、車にビデオカメラを積み、 トンネル内で停車してピントを合わせて 壁面を撮影する方法を考案し、 サービ ス提供を開始した。 しかし、 この方法は トンネルを通行止めにするため、交通 渋滞を招くことに加え、計測検査の診 断ノウハウはつくり上げたものの、診断 結果を顧客に見せるソフトを保有して いなかったため、受注につながらない 可能となった日本政策金融公庫から の低利融資資金は、診断車両の開発 費用に充てた。 出来上がった診断システムはユー ザーから高い評価をもらい、受注が拡 大していった。道路や鉄道のトンネルは 老朽化が指摘されており、診断ノウハ ウの向上とともに、診断システムが活 躍できる領域は広がりそうだ。 トンネル 以外でも橋梁、大規模下水管、大深度 空間などが診断の対象となる。未開拓 の分野も多く将来的にも有望だ。 販売支援 コンサルタント等 ●中部 ●中部 会社概要 移動式画像記録装置から出発 安価で目に見えるシステム 時期もあったという。 そのころ、新潟県の㈲ジーテックが 撮影したデータを分かりやすく見せる マネジメントシステムを開発したことを 知り、安価で目に見える管理システムを 構築することができた。新連携事業の 認定は、 このジーテックと連携体を構築 し、 20年12月に受けた。 同社はその高い技術力を背景として、 G PSを搭載した高精度3D形状計測を可能 にし、診断箇所を正確な座標で示すことができ、0.2ミリ以 上のクラックを認識できるという精度の高さに加え、検査 時間を従来手法に比べて大幅に短縮できる点に大きな強 みを持っています。昨今の老朽化トンネル問題を追い風と して、本システムの需要はさらに高まるものと期待します。 需要も着実に拡大しており、現有診断車両の追加生産に 向けて、中小機構としても新たな資金調達などの事業拡 大に向けた支援を行っ 中小企業基盤整備機構 九州本部 プロジェクトマネージャー 松田 英穂 ていく予定です。 ●関東 ●関東 事業の概要 コア企業 ●東北 ●東北 トンネルなどのコンクリート構造物の劣化診断の作業効率を飛躍的に向 上させる移動式の画像記録装置「マルチ・アイ・システム」を開発し、事業化 した。その診断技術は全国の公共交通機関などから高く評価されている。 建設後30年以上経過した道路トンネルは全国に8,700本以上あるとされ ており、市場の伸びが期待されている。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 トンネルのひび割れ診断を事業化 公共交通機関などから高い評価 トンネルなどのコンクリート構造物の劣化診断の 作業効率を飛躍的に向上させる検査車両 連携体の構成 福岡県北九州市 代表取締役 坂本 敏弘 氏 83 ムライケミカルパック 株式会社 福岡県久留米市 会社概要 ●強化・断熱複合塗料の開発・製造 ●省エネ効果の評価 一級建築士事務所 ●屋根、壁の建築仕上げ材の 機能性の評価 施工技術開発 高口塗装 ●施工技術開発 ●ノズル開発 ●吹き付け機器開発 100万平方メートルの実績 屋根の塗装以外の受注も ●安全対策用 三脚棒の開発 ●雨漏れ補修手法 ※認定時の構成 た結果、断熱性能の良さが決め手とな り、受注を勝ち取った。新規の顧客か ら注文を受けると、 メンテナンスが容易 で効果が分かることから、数年経過後 の建屋改修でも注文がくるようになり、 顧客から信頼を獲得していった。 24年度には中小企業総合展でプレ ゼンテーションを実施。商品提案を行 い、鉄道業界・電気保安設備業界の 企業との接点が生まれ、引き合いが 増加している。今後、各業界の実情に あった個別具体的な提案を行っていく 予定だ。 今後の事業展開 省エネ意識により市場拡大 電車の屋根にも正式採用 東日本大震災以降は節電の必要性 から、 CO2の排出を減らすことができる 断熱性能の高い塗装は一段と関心を 集めるようになっている。屋根や外壁 にとどまらず、電車の屋根、学校の校 舎、体育館などあらゆる構造物に市場 【同社施工例】YKK AP㈱九州事業所様(19年4月撮影) が拡大してきている。夏場の冷房によ る電力消費がかさむ東京の鉄道会社 で、60台の車両の屋根にこの塗料を 試験的に塗って調べた結果、驚くほど 電車内の温度が下がる成果が出たそ うで、今年からこの塗料が正式に採用 され、対象となる車両台数も当初より 増える予定だ。 また、今後は代理店網を拡充し、全 国のエネルギー管理指定工場へも販 路を拡大していく予定である。併せて、 関東や近畿での環境・省エネの展示 会などで、省エネに関心のある企業層 への浸透を狙う。 輸出については、誠新産業の協力 を得て受注ルートの拡大を計画して いる。 タイにある日系企業の工場や学 校などの屋根には既に塗装されてい るが、実績が増えてくれば市場は広が る。世界中を見渡しても、 これほど断熱 効果の優れた特殊塗料は珍しく、省エ ネ技術の決定版になりそうだ。 経 営 者 の ひ と 言 ●沖縄 ●沖縄 新連携事業の認定以前から、連携体の各 社は技術開発を含めた協力を行っていまし たが、一体感に欠ける部分がありました。事 業認定を受けるに際し、中小機構の適切な サポートのおかげで各社員の意識も向上し、 一体感が生まれました。各社の得意技術を 体系化することで、安全確保と施工能力や 品質が向上し、受注拡大につながりました。 ●九州 ●九州 環境対応製品の開発を推進 代表取締役社長 村井 正隆 氏 トップコート (MS60)吹き付け 84 ●四国 ●四国 累計の屋根の塗装面積は100万平 方メートルを超えており、事業認定され てからは50万平方メートル (甲子園球 場のグラウンド面積の40倍弱)の実績 がある。 事業認定を受けてからは、 信用が増 して営業がやりやすくなった。認定を 受けたことが自然とPRになり、取引先 などからも今まで以上に評価されるよ うになったという。 次第に評判が広がり屋根の塗装以 外の仕事も入るようになった。20年に は大手通信会社の交換機ボックスの 塗装の商談が舞い込んだ。それまで 塗られていたエポキシ系の塗装では 長持ちがしないため、耐久性、断熱性 と機能性の高い塗料が求められ、大 手企業との競合となった。実績がない のが不利だったが、性能テストを行っ ●海外市場への展開 迫田板金工業(株) 中小企業基盤整備機構 九州本部 プロジェクトマネージャー 白木 忠 事業の成果 販路展開 誠新産業(株) ●中国 ●中国 本社・技術研究棟 ムライケミカルパック(株) 九州大学 ●近畿 ●近畿 事業名:従来にない強化・断熱複合塗料の 製造・販売 認定日:平成17年7月15日 スレート屋根や壁に塗装する特殊 塗料の製造販売、受注から施工まで 事業の展開 一貫した体制を持っている。環境対策 企業連携で受注拡大 が重視される中で、画期的な塗料の クーラー要らずの断熱効果 開発に成功した。 開発された強化・断熱複合塗料は、 ビルなどの外壁の塗装を中心に行っ 老朽化したスレート・折板の屋根や外 ていたが、省エネ、環境対策が重要視 壁の強度を20~30%向上させ、5万平 されるようになってからは工場や倉庫、 方メートルの屋根面積の工場で室内 マンションなどの屋根の塗装にシフトし 温度を夏季において約4度引き下げ た。施工業者との連携により、受注した た。ユーザーは消費電力削減による 仕事が施工、仕上げ、 メンテナンスまで コスト削減が 二酸化炭素(CO2)削減、 スムーズに流れるようになり、受注が拡 可能になる。 また金属屋根壁の場合 大した。 は防さび力向上になり、延命効果があ 加えて、当初は屋根の補強を主眼 り、 雨音などの低減も期待できる。 に工法を開発したが、塗装後に室温を 吹き付け機器の開発に強みを持つ 計測してみると予想以上に断熱効果 高口塗装(熊本県)、施工作業者の安 があることが判明、夏季の冷房電力を 全対策用工具の開発に強みを持つ迫 (建築物の構造によるが)15~53%も 田板金工業㈱(久留米市) と連携を組 節電できることが分かり、 クーラーも要 み、最適な施工方法も確立した。無洗 らなくなるほどの断熱効果を発揮、断 浄工法による施工は、 スレート屋根に 熱メリットを前面に出した営業活動を 行った。併せて工事後のメンテナンス に関しても10年間の耐久保証を付け るなど、 アフターケアも強調した。 さらなる受注の増大によりムライケミ カルパック㈱だけでは業務量に対応で きず、九州域外および海外への施工 技術者への施工指導などについて連 携企業の役割が重要となった。 技術検証 性能評価 ●北陸 ●北陸 ●社名 ムライケミカルパック 株式会社 ●代表者 代表取締役社長 村井 正隆 ●設立 昭和42(1967)年4月 ●所在地 福岡県久留米市藤山町696-5 ●資本金 2億9,300万円 ●従業員数 35名 ●事業内容強化・断熱塗料の開発・製造 ●URL http://www.murai.co.jp/ ●TEL 0942-21-7667 ●FAX 0942-22-4570 ●営業所 福岡、東京 これまでにない画期的塗料 海外展開パートナーも参画 開発・製造 ●中部 ●中部 断熱効果が高く、夏季の冷房電力も節電できるケ ミカルカチオンパック塗料 含まれるアスベストを封じ込めることが できる。平成17年7月、海外展開パート ナーである誠新産業㈱(福岡市) を含 め4社連携による新連携事業として認 定を受けた。 反射・断熱(遮熱)塗材の開発から20 年。同社の強みは製造から施工までをす べて自社で行える「一貫システム」にあります。現場での お客さまの声を製品の開発に迅速に反映させ、製品の性 能を最大限に引き出す施工技術を確立させることにつな がっています。当初は工場向けが中心でしたが、近年国内 の鉄道車両などへの採用も始まり、省エネ・環境分野にお いて、 さらなる市場の拡大に期待をしております。 ●関東 ●関東 事業の概要 コア企業 ●東北 ●東北 壁や屋根に塗装する特殊塗料メーカーで、断熱効果のあるケミカルカチ オンパック塗料を開発し、塗装、施工業者と連携して販売している。これを 塗れば、強度補強、断熱効果だけでなく、防さび、防音効果があり、無洗浄 工法による施工は屋根に使われているスレートに含まれるアスベストの飛 散防止処理ができ、環境汚染飛散防止公害対策にもなる。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 これまでにない強化・断熱複合塗料 連携力で受注増を呼び込む 連携体の構成 85 株式会社 イネックス 連携体の構成 長崎県佐世保市 連携体 ●北海道 コア企業 ●東北 ●関東 LED(発光ダイオード)が現在ほど普及していないころから消費電力の 少ないLEDを使った街灯、ライトアップ装置など屋外用の照明装置を少な い人数で開発、受注してきた。価格低下が著しい家庭用には手を出さずに 屋外用のニッチな市場に特化、独自技術を生かして事業の拡大を目指す。 回路設計支援、実験 長崎総合科学大学 LED照明器具企画・設計・製造・販売 (長崎県長崎市) (株)イネックス(長崎県佐世保市) 光学系設計支援・評価 ●LED照明器具企画・開発・設計・製造・販売 ●部品調達 長崎県工業技術センター (長崎県大村市) 放熱基板開発 長崎県窯業技術センター 基板設計・製造、組立 (株)サンチュウ(長崎県島原市) (長崎県東彼杵郡) ●少中量、 カスタム対応回路基板 設計・製造 ●電子部品・半田選定 ●回路解析 プロジェクトマネージャー 松田 英穂 ※認定時の構成 事業の概要 会社概要 今後の事業展開 自動車分野に進出 大手の下請けにはならない 照明の分野は技術の進歩が速く、 新しい事業分野への進出が生き残り のための決め手になる。 トンネルや道 認定事業の売上高推移 経 営 者 の ひ と 言 単位:百万円 進出先を見極める 300 250 200 100 24年度(見込み) 23年度 50 0 22年度 ●沖縄 ●沖縄 150 注文を受けてからの生産なので経営を安 定化させるのが課題です。将来に向けて設 備投資をしても仕事が受けられなければ経 営が危うくなります。現在取り組んでいる自 動車分野以外にこれからどういう分野に進 出すべきか慎重に見極めたいと思っていま す。 ●九州 ●九州 86 ライトアップされた大阪の通天閣 数年前からは独自技術が次第に認 められて、大きな仕事が取れるように なった。転換点になったのが平戸市の 平戸大橋のライトアップ装置の受注。 橋の主塔は高さ70メートルもあるため、 この距離に合わせて照らす装置の開 発を迫られた。失敗を重ねて2年がか りでやっと20年の春に主塔に鮮やかな ライトを当てることができるようになった という。平戸大橋の出来栄えが評判を 呼んで、皇居周辺の千鳥ケ淵や通天 閣のライトアップなどを次々にこなした。 大きな案件を成功させると、新聞記事 ●四国 ●四国 防犯灯 平戸大橋の成功が評判に 実績増え受注もアップ ●中国 ●中国 ㈱イネックス本社入り口 事業の成果 路灯などの分野はLED化率がまだ低 いため市場としては有望だ。 また、小 田社長は「わが社独自の放熱技術を 生かして車載用ディスプレーなど自動 車分野にも積極的に進出したい」 と、 独自技術を生かした新分野への進出 にも意欲的だ。すでに自動車関連メー カーとの提携が決定、サンプル出荷も している。 さらに漁業分野では省エネで照明 効果の高いLED集魚灯の開発を進め ており、漁業の盛んな長崎県で受注に 結び付けたい考えだ。 同社の基本方針は「提携はしても 大手企業の下請けにはならない」 (小 田社長) ことで、常に対等の立場での 提携関係を模索している。大手企業 が相手では、値下げを求められて忙し いだけの仕事になってしまう恐れがあ るからだ。 今後も技術開発を続けて、常に自社 の独自性を維持、発揮できる立場や関 係を築いていきたいとしている。 ●近畿 ●近畿 事業名:少中量規模・カスタム生産に対応した LED照明器具の商品化 認定日:平成19年11月15日 ㈱イネックスは、創業した当初、駐車 場ターンテーブルなど各種機械の自動 運転装置などを手掛けていた。平成9 年に新会社を設立、15年に長崎県平 戸市の展望台と周辺の林のライトアッ 事業の展開 プを受注したことをきっかけに、LEDの 低利融資で資金繰り改善 カラー照明器具の本格的な開発に着 表面放熱処理技術が武器 手した。 同社は照明装置の開発が専門で、 事業認定により、多額の試作品の 工場を持たない。開発した製品を組み 改善、改良費用を新事業活動促進支 立てて現場に設置してくれる会社を探 援補助金で賄うことができ、 「それまで していたところ、大手企業との取引が に地元公共団体から何度か補助金 豊富で最先端表面実装技術を有す を受けたことがあったが、 この補助金 る㈱サンチュウ (長崎県島原市) と連 は開発を進める上で非常に助かった」 携することになった。小田陽一社長は、 (小田社長) という。 日本政策金融公 この会社を連携相手に選んだ理由を 庫からも低利の融資を受けることがで 「当時の社長が、わが社の開発に理 きるなど資金繰りの面でも改善が図ら 解があり、 協力的だったため」 と話す。 れた。 最初は知名度が低く実績もなかっ たため、営業しても相手先に認めても らえなかったが、中小機構の支援で、 九州経済産業局が入居している合同 庁舎のライトアップ実験を行い、大手 電機メーカーなどに披露したところ、高 い評価を受けた。 ライトアップで欠かせ ないのが遠くにある場所をきれいに照 らす高輝度遠距離照射の技術だ。 こ の技術は試行錯誤しながら実用化し、 さらにレンズを使って見え方や色が変 化する技術も開発した。 また、大型の などで取り上げてもらえるので、会社の PRにもなっている。 東日本大震災以降は照明装置の 消費電力にも高い関心が集まり、電力 消費が少なくて済むLED照明が脚光 を浴びだした。単に照明装置を設置す るだけでなく、電力消費を減らすため の制御技術も持っているため、 自治体 を中心に受注実績が増えている。23 年は長崎県対馬市の防犯灯3,150台 を受注、LEDの照明技術を駆使した 省エネ技術に対する評価はさらに高 まっている。 また、24年は、長崎県松浦 市鷹島町と佐賀県唐津市肥前町を結 ぶ鷹島肥前大橋の照明工事が完成 するなど、 着実に成果を挙げている。 ●北陸 ●北陸 株式会社 イネックス ●社名 ●代表者 代表取締役 小田 陽一 平成9(1997)年4月 ●設立 ●所在地 長崎県佐世保市指方町3438-6 ●資本金 1,000万円 ●従業員数 12名 ●売上高 3億円(平成25年8月期見込み) ●事業内容電気照明器具製造業 http://www.inex-corp. ●URL co.jp/ 0956-27-0081 ●TEL ●FAX 0956-27-0122 組み立てメーカーと連携 独自技術でLED照明を開発 LEDになると熱を帯びるため、熱を効 率よく逃がす放熱の表面処理技術が 重要になる。 この放熱設計で長崎県 窯業技術センターと共同で特許を取 得。 これを武器に営業活動を推進して いる。 ●中部 ●中部 2年がかりで主塔に鮮やかなライトを当てることが できた、平戸市の平戸大橋 屋外の照明装置はすべて受注生 産のため開発には大きな資金が必要 となる。開発資金の調達に悩んでいた 時に中小機構から新連携の話を聞き、 チャレンジすることを決意。独自技術を 生かしたLED照明器具の製造、販売 に取り組むべく事業計画を策定し、19 年11月、 新連携の事業認定を受けた。 ●関東 LED照明器具はLED素子のハイパワー 化に伴い、発 熱 抑 制が 課 題となっていたと ころ、同社はこの発熱を抑制するためPWM(Pulse Width Modulation)制御技術を応用し、発熱を抑制した回路設計と放 熱効率の良い電子回路基板およびヒートシンク(放熱基板)を開 発、実用化しました。デザイン性にも優れており、平戸大橋のライ トアップに採用されたのを契機に事業は大きく飛躍しています。 照明器具市場におけるLED化比率は、23年で約25%であり、さ らなる成長が期待されます。今後も継続的に販路開拓支援など を行っていく予定です。 中小企業基盤整備機構 九州本部 ●東北 LED使い屋外用照明装置を開発 大手にない独自の放熱技術を活用 ●北海道 支援者の視点 代表取締役 小田 陽一 氏 21年度 20年度 87 青紫蘇農場 株式会社 熊本県合志市 会社概要 オイル・エキスで商品開発 大学で有効成分を確認 食品メーカーと契約 紫蘇の可能性を再認識 認定事業の売上高推移 経 営 者 の ひ と 言 安心・安全をベースに開発 6 5 4 2 23年度 22年度 1 作業風景 88 商品の安全性を訴えるパンフレット 0 ●沖縄 ●沖縄 3 補助金活用のおかげで、県外の販路開拓 が実現できました。紫蘇の栽培から商品開 発、販売までを手掛ける一貫メーカーとして、 基本的には安心・安全をベースに一層の商 品開発を進めたい。メタボやアレルギーに対 しても有効成分があることが分かってきてい るので、この点をアピールするなどして紫蘇 製品を開発したいと考えています。 ●九州 ●九州 単位:百万円 青紫蘇農場㈱本社 ●四国 ●四国 エキスの抽出により、エッセンシャル オイルやエッセンシャルエキスなどの 商品の開発に成功、食品・化粧品メー カーとも契 約が成 立した。焼 酎メー カーに対してはエキスを提供、焼酎に 紫蘇の香りをミックスさせることで新た な商品が生まれている。消費者向け ●中国 ●中国 事業認定を受けてから、本格的な 商品開発に取り掛かった。紫蘇が持っ ている機能・有効成分を抽出した紫蘇 オイル、赤紫蘇エキスなどの機能性商 品は食品や化粧品メーカー向けに開 発した。 新事業活動促進支援補助金を活 用して香料やオイルの試作開発のほ か、商談会や展示会へも積極的に出 展し、化粧品メーカーなどへの販路開 事業の成果 にドレッシングやソース、 ふりかけなどの 利益も増え、消費者の反応をダイレク 商品も開発、 徐々に普及してきている。 トにつかむことができるメリットがある。 また、認定商品群ではないが10年 ネット販売も本格的に進める予定だ。 前から販売している濃縮タイプの「青 また、 アジア、米国、 ドバイ、 ロシアなどの 紫蘇伝説」 (紫蘇ドリンク)は、 口コミで 市場調査や商談会参加を通じて海外 評判が広がり花粉症の患者に愛用さ への進出も検討している。 れている。花粉症のシーズンが到来す 既存商品の見直しでは、 紫蘇ドリンク を、小容器化して180 る前の1〜3月を中心に、年間2万本も (720ミリリットル) 〜360ミリリットルタイプのものを出して、 売れるヒット商品になっている。東北大 消費者にとってより購入しやすいもの 学が行った紫蘇エキスの成分分析や を提供する。その他、食品メーカー向 臨床研究で、 エキスの中に含まれてい けには紫蘇エッセンシャルオイルパウ るロズマリン酸が花粉症に対して有効 ダーの供給を、麺やパンのメーカーに 成分であることが確認され、健康飲料 対しては紫蘇粉末などの機能性素材 として認知されてきている。 を販売したいと考えている。粉末の形 今後の事業展開 で販売することで素材として使える範 高級スーパーなどに直販 囲が広がる。 また京都大学などの研究 粉末にして新分野に供給 で紫蘇が持っている成分がメタボ対 ドレッシングなど消費者向け商品は、 策にも効果があることが分かってきて おり、 「野菜の栄養成分の王様」 とい 九州の量販店などへの販路が開拓で われてきた特性を生かして健康食品 きたので、今後は百貨店や高級スー 分野の製品の開発にも取り組む計画 パーなどの直販の形で売り込みたい だ。 という。卸を通さない直販にすることで ●近畿 ●近畿 事業名:紫蘇の特性を活かした各種食品メー カー向け機能性素材の開発と提供 地域資源名:紫蘇 認定日:平成20年7月31日 事業の展開 拓を行った。 しかしオイル成分を効率 的に取り出すには従来の手法では難 しく、抽出の過程で香りが変化する課 題をクリアしなければならなかった。試 行錯誤を続けた結果、 独自の方法でオ イルを取り出す技術を確立した。 商品の成分分析では地元の崇城 大学や京都大学、東北大学などの協 力を得て、有効成分の高さを確認して おり、分析結果に基づいた正確なデー タを提供することで納入先から信頼を 得てきている。 ●北陸 ●北陸 ●社名 青紫蘇農場 株式会社 ●代表者 代表取締役 吉川 幸人 平成11(1999)年9月 ●設立 ●所在地 熊本県合志市野々島5472-7 ●資本金 1,600万円 ●従業員数 5名 ●売上高 1億8,000万円(平成24年10月 期) ●事業内容紫蘇の特性を生かした機能性素 材の開発・販売 http://shiso.net/ ●URL ●TEL 096-242-4878 096-242-4885 ●FAX 青紫蘇農場㈱は生の紫蘇や紫蘇ド リンク、紫蘇そうめん、紫蘇茶などの加 工品をスーパーなどに販売する事業 を展開。平成15年には青紫蘇の商品 化で農林水産大臣賞を受賞、 このほ か商品開発で数々の賞をもらうなど実 績を築いてきた。 一方、生産面では独自の土作りから 紫蘇を栽培するなど、限りなく有機栽 培に徹している。安全・安心を求める 消費者のニーズに応えるため、 トレー サビリティーに気を配り、生産物にはす べてロットナンバーを添付、 その番号を 調べれば生産履歴が瞬時に分かるシ ステムになっている。 こうした取り組み が評価されて、施設野菜の分野で全 国第1号の「生産情報公表JAS規格 認定」を受けており、安心・安全かつ天 然で体に優しい素材を提供することを コンセプトに生産。紫蘇の栽培面積は 中小企業基盤整備機構 九州本部 プロジェクトマネージャー 大澤 眞介 ●中部 ●中部 既存商品見直し販路開拓 トレーサビリティーを明示 紫蘇の成分をさまざまな食品に素材として提供 徐々に増えてきて、現在5ヘクタールに なっている。 しかし、消費者ニーズの多様化や 生産コストの上昇、供給が不安定であ ることなどによりブランド化が難しいこ とが分かった。 このため既存商品を見 直して生の紫蘇を加工した、 より付加 価値の高い商品開発を行い、量販店 など新しい販路の開拓を目指すことを 計画。20年7月に地域資源活用事業 の認定を受けた。 地域資源の青紫蘇 ●関東 ●関東 事業の概要 同社は、日本で初めて施設野菜の分野 で「生産情報公表JAS規格認定」を受け、 紫蘇の生産・出荷から、加工、販売まで一元的に管理して います。紫蘇を食の分野にとどまらせることなく、紫蘇から オイルやエキスを抽出することで、その用途は広がってい ます。国内のみならず、海外にも紫蘇の良さや可能性を広 めていくご支援ができればと思います。 ●東北 ●東北 青果としての紫蘇(しそ)を販売するだけでなく、その機能性に着目して 新しい付加価値を生み出す加工商品を開発、食品メーカーにエキスなどの 機能性商品を提供している。紫蘇の成分が花粉症などのアレルギーに対し て有効性があるといわれており、この特性を生かした商品を発売するなど、 健康食品の分野にも積極的な進出を目指している。 ●北海道 ●北海道 紫蘇の機能性に着眼した商品開発 紫蘇の可能性を発掘 支援者の視点 代表取締役 吉川 幸人 氏 21年度 20年度 89 有限会社 ビューティフルライフ 大分県大分市 コア企業 認定期間中はサービス、認定期間終了 後は製品開発、販売で素晴らしい成果を 上げることができた珍しい事例だと思います。現在、中小 機構の販路開拓コーディネート事業により、多機能車椅子 と移動シャンプー台が建築、設計業界にも評価されてお り、 さらなるビジネスの拡大が期待されます。長年理美容 の現場にいたからこそ培えた「医療、福祉業界に十分な理 美容サービスを提供したい」という社長の熱意と行動力が 本事業の成功要因だと思います。 営業・販売 企画・マネジメント (株)ダリヤ ●顧客開拓・理美容師 OBの発掘 ●適正立地場所・空き店 舗等の発掘 (有)ビューティフルライフ 店舗の設計・施工 (株)ダリアート ●ユーザーオリエンテッド 店舗の開発・供給 ●集客の営業促進支援 ●移動理美容車の小型 化開発・製造 ●理美容専用車イス、移 動式シャンプー台の開 発・製造 品質改善 (有)何とかする会社 ●ひやり・はっと・クレーム 対策による品質改善 ●施術向上 ●全国理美容・異業種 (建設業など) オーナー ●全国理美容学校・職業訓練校 ※平成18年認定時の構成 事業の概要 会社概要 マニュアルからサービス普及 製品が病院などから注文 美容サロンでの使用風景 90 認定後、 中小機構の専門家派遣事 ソフトの各種教材を使った、移動車 ・訪問・店舗による理美容サービスの 提供をミニマムスタンダード化し、派遣 する理美容師はOB・OGを活用、理美 容師の再雇用にも役立てようと考えて いる。 サービスを提 認定事業の売上高推移 単位 : 百万円 供 する側 の 理 美 容 師の安 全 0 0 1 教 育を徹 底 す るため、 日本福 80 祉理美容安全 60 協会を設立し、 理 美 容 師に対 40 24年度 23年度 して 安 全 面 の 22年度 20 講習を行って、 21年度 20年度 ノウハウを学べ 0 19年度 団塊の世代が高齢となり、専用機 器を使った充実したサービスが必要 になることを見据えてやってきたのが よかったと思います。専門外の医療・ 介護・福祉分野へは連携によって協 力を得ることができ、高齢者の生活の 質の向上にも役立つことができると 考えます。新連携事業を活用したこと により、申請時には事業の目標と目的 を明確にすることができました。また、 各支援によりハードとソフトを両立し た研究開発の時間を短縮でき、方向 性を見失わずに推進することができ たと感じています。 ●沖縄 ●沖縄 事業の成果 理美容師の再雇用に活用 安全教育を徹底する 高齢化時代を見据えて ●九州 ●九州 ㈲ビューティフルライフ本社 今後の事業展開 経 営 者 の ひ と 言 ●四国 ●四国 「安全・安心・快適な理美容の提供」 を目指す理美容師の職業能力開発の 促進を図る教材作製などのソフトと、 訪問理美容ができる多機能車椅子と 移動シャンプー台などのハードの両面 から高齢社会へ向けた理美容サービ スの開発を行った。 ソフト面では、 さらなる安全性の向上 に必要な施術・サービス・介助、危険予 知訓練、感染予防対策、業務改善の マニュアル製作を目的に、研究・開発プ ロジェクトを立ち上げ、大学や専門家と の連携により製作、 完成させた。 ハード面では、訪問理美容に必要 な専用車椅子とシャンプー台を佐賀 大学医学部の松尾清美准教授らと共 同開発した。 この車椅子は腰への負 担が少なく、 リクライニングシートを倒し ても体がずれにくい。体圧分散を考慮 した座面などの工夫がしてあり、移動 シャンプー台は高さや角度が自由に調 整できる。給排水方法も選択でき、 場所 を選ばないなどの特長があり、施術者 と着座者の双方に優しい製品に仕上 げた。試行錯誤の繰り返しで試作品 が出来上がるまでに5年かかった。 ●中国 ●中国 ㈲ビューティフルライフは、高齢者の 増加により、医療や介護施設などに入 所して外出が不自由な人への理美容 サービスの重要性に着目し、移動理 美容車両を導入。 この車両や理美容 師の派遣により、 どこでも出向く訪問ス テーション機能を構築、在宅訪問を含 めた快適な理美容サービスの提供を 開始した。 (財)大分県産業創造機構から新連 携の認定事業制度があることを聞き、 長年の夢だった理美容サービスを提 供するため、理美容車椅子や安全対 策マニュアルなどの開発に挑戦した。 現場で高齢者などに対する理美容 サービスを長年にわたって実施してき ており、豊富なノウハウや経験を持つ 同社がコア企業となり、店舗の設計、 専用車両の製造・開発、理美容商品 の卸売り、理美容の品質を向上させる 会社5社が連携を組んで、平成18年2 月に認定を得ることができた。 るよう準備を進めている。 この体制が できれば、サービスを提供する側も安 心して質の高い安全なサービスの提 供が可能になり、価格競争に巻き込ま れないで済む。 理美容向け販売ルートの開拓では 代理店を作ろうとしている。現在、九 州、関西、北陸、東海、関東の五つの 代理店を組織することができ、 これを 全国に展開することで販売を加速させ る方針だ。 ●近畿 ●近畿 事業名:移動車・訪問・店舗による、 安心・安全・ 快適な理美容サービスの提供 認定日:平成18年2月21日 ソフトとハードの両輪 大学、専門家と連携 うになった。24年8月に販売を開始し、 理美容事業者や病院、介護施設など に当初目標としていた100台が売れ た。介護事業者が購入する際には国 の助成金を半額受けることができ、訪 問理美容師も介護労働者として助成 金の対象となるため普及が進んでい る。 また、 どこにでも移動して使えるメ リットがあるため、病院や施設からも 評価を受け歯科医などでも使われて いる。持ち運びが可能で「ワンストップ 診察」ができるため、災害時に避難所 での災害医療でも使用できる。 ●北陸 ●北陸 ●社名 有限会社 ビューティフルライフ ●代表者 代表取締役 田中 晃一 平成12(2000)年5月 ●設立 ●所在地 大分県大分市椎迫4-2 ●資本金 300万円 ●従業員数 21名 ●売上高 8,600万円(平成24年9月期) ●事業内容理容・美容業、福祉機器などの企 画・開発・販売 ●URL http://www.be-life.info/ ●TEL 097-546-0666 097-546-6999 ●FAX 外出が不自由な方にサービス 5社が企業連携組む 業を活用し、事業の優先順位付けを 明確化し、数ある事業課題のうち、 ま ずは病院、施設内で訪問理容を行う ためのマニュアルを整備・普及し、訪問 理美容サービスの普及を加速化する 戦略を取った。 その結果、22年度職業訓練教材コ ンクールで「訪問理容師・美容師のた めの危険予知訓練マニュアル」が中 央能力開発協会会長賞を受賞するな どし、訓練マニュアルが業界で全国的 に注目を集め、理容師・美容師が医療・ 介護などの現場で安全なサービスの 提供を行うためにも役立った。 一方、ハードの販売事業の方は苦 労した。 しかし、 中小機構の「販路開拓 コーディネート事業」を活用し、関東圏 の大手建設企業や設計事務所などへ のテストマーケティングを実施し、新た な市場開拓の土台づくりを行った。 ま た福祉機器の展示会などでPRし続け るうちに、病院や介護施設から「こうい う機器が欲しかった」 と注文が来るよ ●中部 ●中部 腰への負担が少なく、 リクライニングシートを倒しても体 がずれにくい多機能車椅子(右) と移動シャンプー台 事業の展開 ●関東 ●関東 中小企業基盤整備機構 九州本部 プロジェクトマネージャー 白木 忠 ●移動・訪問・店舗事業の3形 態運営のマネジメント ●高齢者等理美容施術マニュ アル ●移動理美容車の小型化、理 美容専用車イス・移動式シャ ンプー台の企画 機器開発・製造 (株)オオシマ自工 ●東北 ●東北 高齢者、障害者など介護の必要な人、外出が不自由な人を対象に、安全、 安心、快適な理美容サービスを提供しようと、理美容に関する各種マニュア ルやワンストップでの理美容サービスを提供するための多機能車椅子、移 動シャンプー台を開発、病院・介護施設などへ向けて販路拡大を目指す。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 高齢者や要介護者への理美容サービス 病院、介護施設に向けて販路拡大 連携体の構成 代表取締役 田中 晃一 氏 18年度 91 株式会社 コムテック 口蹄疫で連携が中断 1年1回出産で効率経営 気付かないことである。 「牛歩」によっ 北海道など大規模畜産農家を中心 て、 とりわけ夕方6時から翌朝6時まで にして導入が増え、現在1,200戸の農 の夜間帯の発情開始比率が66%と高 家が導入している。 また、対象頭数が いことが分かっていたが、 この時間帯 5頭までに制限されるものの、牛が発 の見逃しを回避するのが「牛歩」シス 情すると、農家に置いたコンパクトな受 テムの最大の特長といえる。 信機が、歩数の増加数や授精最適時 1カ月以上の飼育期間の短縮により、 期といったデータを表示する簡易装置 飼料代もその分節減される。 また、生 「牛歩Lite」 も新たに開発し、 こちらは 産効率が上昇することから、本ケース 小規模農家を中心に使われている。 の場合、年間で数百万円のコスト削減 「牛歩」は発情情報以外にも、運動 が達成されたという。 量の変化に注視していれば、病気も早 新システムではサーバーの管理を 期に発見でき、早期治療につながる可 同社が代行する。従って、農家はサー 能性がある。現在、 どのような病気に バーの管理やデータの分析などをす かかったときに、 データがどう変化する る必要がなく、携帯メールやFAXで送 か分析中だ。 しかし、 「かなり正確に診 られてくる発情情報だけを気にしてい 断できるレベルになってきており、 これ ればいいというわけだ。 これなら、パソ までは手遅れになっていた病気の早 コン操作が苦手な農家でも問題なく 期発見にもつながる」 (笹栗会長) とい 導入できる。 う。 このシステムは酪農の先進国である 事業の成果 欧米にもないシステムで、24年7月にカ 全国で1,200戸が導入 ナダで開かれた学会で展示したところ 病気の早期発見も 各国の獣医がその分析性能に驚いた 認定事業の売上高推移 今後の事業展開 産学連携成果を商品改良に コールセンターの開設が目標 同社は、宮崎大学と 「牛歩」を用い た産学共同研究を行っているが、 ここ で得られたデータを多面的に解析し、 その成果を商品にフィードバックしな がら改良を加えている。 よりユーザー ニーズに近い商品を開発・改良するこ とが同社のテーマだ。 一方、 システムがさらに普及した段 階で、 コールセンターを開設することも 計画している。 コールセンターができ れば、発情時期の連絡だけでなく、農 家が必要とするさまざまな情報を発信 することも可能だ。畜産経営に関する 情報を共有するためのシステムとして 「牛歩」を活用できるようになれば、地 域をまとめる連絡手段としての道も開 けてこよう。 IT使えばコストが減らせる 400 23年度 22年度 100 21年度 20年度 ●沖縄 ●沖縄 200 畜産農家にはITを使って効率的な牛の出 産ができるようになれば、コストを減らして経 営が安定すると説明していますが、なかなか 分かってもらえません。大規模な農家さんで あれば経営感覚も備えていますが、小規模 の農家さんになると、全体的な管理を行うの は困難となってくるので、 このシステムを使っ て生産性の向上と経営の安定を図っていた だきたいと考えています。 ●九州 ●九州 単位:百万円 0 という。 経 営 者 の ひ と 言 300 92 牛の発情発見に関する指導 ※認定時の構成 500 各国の獣医がその分析性能に驚いたという画期的な システム 宮崎大学農学部教授 故・上村俊一氏 中小企業基盤整備機構 九州本部 プロジェクトマネージャー 鳥丸 聡 600 ㈱コムテック本社 牛の肥育・繁殖ノウハウ ●四国 ●四国 連携畜産農家4者と新システムの実 証実験に取り組んでいる最中、宮崎県 内で口蹄疫が発生。実証実験は中止 せざるを得なかった。 しかし、 その窮状 を見て別の大規模農場が声を掛けて くれた。 「500頭の牛を飼育している農 場でしたが、 この新しいシステムを導 入すると、 それまで平均で420日に1産 であったものが365日 (1年)以内に短 縮されました」 (笹栗紘二会長) 畜産農家が1年1産を困難としてき た最大の理由は、農家が牛の発情に 牛の発情発見 装置開発技術 畜産農家4者 ●中国 ●中国 事業名:牛の発情発見をインターネットを通じ て各農家へ知らせるシステムの開発 認定日:平成20年9月19日 事業の展開 (株)コムテック ●近畿 ●近畿 株式会社 コムテック 代表取締役 笹栗 康 昭和61(1986)年8月 宮崎県西諸県郡高原町大字広原 4876-38 ●資本金 1,000万円 ●従業員数 19名 ●売上高 3億7,000万円(平成24年8月 期) ●事業内容通信機器の開発・製造・販売 http://www.s-comtec.co.jp/ ●URL ●TEL 0984-25-6070 ●FAX 0984-25-6077 中小零細等 農家 システムの実証実験 ●北陸 ●北陸 ●社名 ●代表者 ●設立 ●所在地 牛の発情時期を見逃さずに、適切 な時期に授精させることは畜産農家 にとって生産性を向上させる重要な技 術だ。 しかし、牛の発情時期を目視で 判断するのは簡単ではない。豊富な 経験と勘を有するベテラン農家でもそ の発見率は昼間で7割ほど、夜間では 1割に満たない。 一方、㈱コムテックが開発した「牛 歩」システムによる発情発見率は95% に達する。牛は発情が始まると運動量 が通常の4〜6倍に急増する。 この習 性を利用し、牛の足首に発信機付き の万歩計を取り付け、 その運動量デー タをグラフ化し発情開始を検知する。 従来の経験と勘の世界に科学的アプ ローチを導入した画期的な商品だ。 しかし、北海道の畜産農家を中心に 販売を試みたが、 中小・零細農家の多 くはパソコンを使っておらず、導入に至 らない。 また、 パソコンは使えても 「四六 時中パソコンとにらめっこしているわけ システムの開発 ●中部 ●中部 会社概要 牛の発情発見装置「牛歩」 IT苦手な農家に携帯で連絡 にはいかない」 と断られた。 このため、 パソコンを使えない畜産農家に携帯 電話とメールで知らせるシステムに見 直すことを計画。宮崎大学農学部の 故・上村俊一教授の指導のもと、和牛 の肥育や繁殖のための施設やノウハ ウを有する宮崎県内の畜産農家4者 と連携して、 「牛歩」の新システムを開 発することを目指し、平成20年9月に農 商工連携事業の認定を受けた。 同社の主力商品は、ナースコールを看 護師のポケベルに転送するシステムで、畜 産業界については全くの素人でした。笹栗会長が異業種 交流会で和牛繁殖業者と同席した折に「発情時期の見極 めが難しく非効率で困っている」という話を聞いて、その 課題解決のために牛歩の開発に取り組むこととなったそ うです。異業種の課題を自社のノウハウで解決するという ソリューションビジネスのサクセスストーリーがここにあり ます。 ●関東 ●関東 事業の概要 代表者 ●東北 ●東北 牛の繁殖確率を上げるため、発情を見逃さずに発見する装置を牛に装 着。得られたデータをインターネットのサーバーで一括管理し、パソコンが 使えない、主に中小・零細農家に対して携帯電話へのメールで知らせるシス テムを開発、販売している。このシステムの導入により、畜産農家の経営改 善と畜産業の振興に役立てたいとしている。 連携体 支援者の視点 ●北海道 ●北海道 発情時期を連絡するシステムの開発 牛飼育農家の経営安定化に貢献 牛の発情時期を見逃さずに、適切な時期に授精 させる 「牛歩」 システム 連携体の構成 宮崎県高原町 代表取締役会長 笹栗 紘二 氏 93 株式会社 日本計器鹿児島製作所 連携体の構成 鹿児島県南九州市 同社の事業は、地域の潜在的なマー ケット (農家)のニーズを聞き取り、自社と 連携企業の能力を生かして、現場課題解決型の製品を開 発したところに優位性があります。ニーズを正確に把握す るためのコミュニケーション力(ソフト)と生産技術(ハー ド)の融合といえます。今後、国内はもちろん、海外の市場 開拓に向けての活動も計画されており、それらの支援を 継続していきたいと考えています。 コア企業 鹿児島県工業 技術センター 技術支援 鹿児島県茶業 試験場 企画・開発・製造・販売 (株)日本計器鹿児島製作所 (鹿児島県南九州市) ●全自動散水・止水制御装置の開発・製造技術 ●東北 ●東北 茶業農家を霜害から守るために、設定した温度で正確に散水、止水がで き、乾電池でも作動する全自動散水・止水装置を製造販売している。害虫防 除用への改良も実現し、全国の果樹園農家にまで販売が広がっている。 技術相談・情報提供 ●北海道 ●北海道 半導体製造装置の開発技術をベース 大ヒット中の全自動散水・止水制御装置 連携体 支援者の視点 経営支援 (財)かごしま産業 支援センター 販売支援 ヤンマー農機 販売(株) 共立金属工業(株) (大阪府吹田市) ●スプリンクラーの製造・改良技術 ●販売ネットワーク ※認定時の構成 ●中部 茶業農家で重労働だった見回りの必要をなくした 自動散水・止水装置 会社概要 口コミで販路が拡大 害虫防除用への改良 累計5千台の大ヒット 顧客から開発商品のヒント 散水装置は100ボルト電源で動くも のは既にあったが、広い茶畑では長い 電線コードが必要になり使いにくかっ た。 これを改善するため乾電池で半年 間動く装置を開発したことが差別化に つながり、特許を取得した。 この結果、 事実上の同社の独占販売となり、霜害 防止の散水・止水装置は23年度まで に約4,400台販売、24年度末には累計 5千台に達する見通しだ。売れ行きが 特に好調だった21年度末には社員に 臨時ボーナスも支給した。 すべての果樹農家が対象 1年に1品の新商品が目標 散水装置の評判に加えて、 この装 置を導入する栽培農家に対して県な どから補助金が支給される制度がで 認定事業の売上高推移 経 営 者 の ひ と 言 単位:百万円 全国から認められる商品開発 120 100 80 24年度 23年度 20 設定した温度で正確に動 作する自動散水・止水装置 0 22年度 私たちが30年の間に取得してきたセン サー技術、省エネ技術、マイコン制御技術を 農業分野に応用し、農業の発展に協力してき ました。さらに新連携での補助金を活用し、 販路拡大や新商品開発に着手することがで きたことを深く感謝しています。これからも、 全国の人から認められる商品を開発したい と考えています。 ●沖縄 ●沖縄 60 40 94 今後の事業展開 ●九州 ●九州 ㈱日本計器鹿児島製作所の工場 事業の成果 ●四国 ●四国 認定後、連携企業と一緒になってま ずは岩手のリンゴ農家に販売に回っ た。散水装置の評判が次第に口コミ で広がるようになり、長崎県のジャガイ モ、大分県のスモモ農家にも売れるな ど、全国から問い合わせが来るように なった。鹿児島県や経済産業省から は多くの賞を受賞、 テレビやマスコミに もヒット商品が出るごとにたびたび登 場するようになった。銀行からも融資の 話が来るようになり、会社の信用が増 してくるのを実感した。 霜害防止装置導入で恩恵を受けた 茶業農家から、 今度は対策に困ってい たクロシロカイガラ虫の被害を防ぐ手 立てはないかと相談を受けた。 この虫 はふ化するタイミングでは水に弱いこと を発見、同じ装置に改良を加えるだけ で害虫防除にも活用できることが分か り、実験データを持っていた宮崎県の 試験場と共同開発した。 この時の試作 品を作る費用の一部にも新事業活動 ●中国 ●中国 事業名:農作物を霜害や害虫から守る全自動 散水・止水制御装置の製造・販売事業 認定日:平成21年8月6日 事業の展開 きたため、全国に普及し始めている。 最近では、山形県のサクランボ農家か らも問い合わせが来るなど、すべての 果樹農家が販売対象になってきてい る。 ヒット商品を出してもおごることなく 開発努力も怠らない。水が少ない地域 用には節水型の装置を作るなど、細か い要望にも応えようとしている。農家の 要望を満たそうと 「1年に1品」開発す ることを目標とし、 イノシシ撃退装置もこ うした地道な努力が実った。 売り上げのうち散水装置の販売は 3分の1で、残りは大手メーカーの電子 部品を製造している。今後は独自商品 の販売をさらに伸ばし、売り上げの半 分まで引き上げたい計画で、成長市場 と目されている農業分野での事業拡 大を目指している。中国に市場を奪わ れて多くの組み立て型中小企業が消 滅していく中で、 この地道な取り組み は生き残るための重要な選択肢になり そうだ。 ●近畿 ●近畿 株式会社 日本計器鹿児島製作所 代表取締役 青柳 衆一 昭和51(1976)年8月 鹿児島県南九州市知覧町郡 5159-1 ●資本金 3,000万円 ●従業員数89名 ●売上高 5億5,000万円(平成23年3月 期) ●事業内容茶の栽培農家を霜害や害虫から 守る全自動散水・止水制御装置 の製造・販売 http://www.nkworks.co.jp/ ●URL ●TEL 0993-83-2663 ●FAX 0993-83-4480 茶業農家では春先になると、防霜 用のスプリンクラーの散水・止水をする ための夜中や早朝の見回りが大変な 重労働となっていた。 これは散水氷結 法と呼ばれるもので、新芽に散水した 水を氷結させ、氷結する際に出る潜熱 により新芽自身の凍結を防ぐのが目的 だ。農業分野への進出を検討し、 日頃 から地元農家との関係を深めていた ㈱日本計器鹿児島製作所に、その情 報が耳に入る。半導体の下請けメー カーだった設計開発技術を生かして、 高精度の温度センサーで気温を感知 し、設定した温度で正確に動作する自 動散水・止水装置を開発。 この装置を 導入すればすべてが自動で動くため、 見回りの必要がなくなった。 一方、商品化を目指し技術上の相 談に乗ってもらった鹿児島県工業技 術センターから新連携事業を知らされ た。全国販売を目指し、 スプリンクラー メーカーで全国に販路を持つ共立金 大手電機メーカーの下請けをして いた14年以降に仕事が激減、厳しい 状況に追い込まれたが、地元農家の ニーズをくみ取って会社を立て直すこ とに成功、親会社からも高く評価され た。 茶業農家の評判を聞いたサツマイ モを栽培する地元農家からは、 イノシ シの被害に悩まされているので何か 方法はないかと相談を受け、 青色LED (発光ダイオード) を不規則に点滅さ せるイノシシ撃退装置「ピカちゃん」を 開発、8千台以上売れるヒット商品と なった。農家以外ではゴルフ場からこ の装置の注文が来るなど、用途が広 がっている。 ●北陸 ●北陸 ●社名 ●代表者 ●設立 ●所在地 霜害から全国の農家を守る 全自動散水・止水制御装置 促進支援補助金が活用されている。 最初は農家から信用してもらえなかっ たが、使った農家が実証してくれた。 薬剤を使っていた農家からは、薬代の 節約になるだけでなく薬剤散布による 人体への影響も少なくなり、 喜ばれたと いう。 ●中部 属工業㈱(大阪府) と連携、装置の改 良や新製品の開発でも共同で取り組 む考えで、平成21年8月に事業認定を 受けた。 事業の概要 ●関東 ●関東 中小企業基盤整備機構 九州本部 チーフアドバイザー 井上 照教 営業・販売 代表取締役 青柳 衆一 氏 21年度 95 新連携、地域資源、農商工連携についてのお問い合わせ・ご相談は、 お近くの中小機構地域本部・事務所までお願いします。 東北本部 関東本部 北海道 本部 北海道本部 東北本部 関東本部 近畿本部 北陸本部 中部本部 北陸本部 中部本部 近畿本部 新事業創出支援事業 成果事例集[生産財編] 発 行 連絡先 平成 25 年 3 月 独立行政法人中小企業基盤整備機構 新事業支援部 連携事業支援課 新事業支援部 ハンズオン支援グループ ハンズオン支援課 〒105-8453 東京都港区虎ノ門 3-5-1 虎ノ門 37 森ビル OMMビル11階 九州本部 四国本部 中国本部 TEL :03-5470-1194(ダイヤルイン) FAX:03-5470-1670 中小機構 URL:http://www.smrj.go.jp 四国本部 中国本部 広島KSビル 九州本部 サムティ ■詳しい情報は下記HPをご覧ください 本部 新事業支援部 J-net 21
© Copyright 2025 Paperzz