獣医学部 獣医保健看護学科 獣医保健看護学基礎部門

獣医学部 獣医保健看護学科
獣医保健看護学基礎部門
所属教員 教授 福所秋雄 (2005 年 4 月~)、教授 向山明孝(2006 年 4 月~2008 年 3 月まで)
、教授 小
河孝(2005 年 4 月~2006 年 3 月まで)
、 教授 大坂元久(2008 年 4 月~)
、 准教授 袴田陽二
(2006 年 4 月~)
、准教授 近江俊徳(2006 年 4 月~)
、講師 吉田孝治(2006 年 4 月~2008 年
3 月まで)、講師 青木博史(2006 年 4 月~)
、講師 藤澤正彦(2008 年 4 月~2010 年 3 月、講師
昇任 2010 年 4 月~)
1.教育の現状
獣医保健看護学科
Reading English(選択 4 単位) 担当者:福所秋雄(教授)
、小河孝(教授)
少なくとも 1200 語水準の英語読解力を総合的に向上させ、Grammar、Vocabulary、Skills、Pronounciation、
Function and Revision を機能的に組み合わせた授業を実施し、次いで、科学技術、獣医技術に関連した論
文やマニュアル等の読解力を向上させることを主眼として講義を行う。
自然科学概論(必修 2 単位) 担当者:福所秋雄(教授)
、向山明孝(教授)
、小河 孝(教授)
、大坂元久
(教授)
、袴田陽二(准教授)
、近江俊徳(准教授)
、青木博史(講師)
動物の保健衛生や看護など、獣医科学と関連の深い身近な事柄を中心として、最新の内容を盛り込みなが
ら幅広いテーマで構成し、基礎教養講座の意味合いで話題を提供する。
動物品種論(必修 2 単位) 担当者:向山明孝(教授)
動物の看護や健康管理を行う上で重要なことは、動物との触れ合い、また取扱い方であり、種動物の特徴
や性質などについて予め十分な知識を持つことが必要である。伴侶動物、産業動物、実験動物、あるいは身
近にいる野生動物などについて各動物の品種の成立や分類、品種の特徴や環境への適応性などを体系的に理
解させる。
動物看護体験実習(必須 1 単位) 担当者:吉田孝治(講師)
、分担者:福所秋雄(教授)
、向山明孝(教授)
、
袴田陽二(准教授)
、近江俊徳(准教授)
、青木博史(講師)
、藤澤正彦(講師)
本学付属牧場において産業動物体験実習を行なうと共に、動物愛護行政見学実習、動物医療施設見学実習、
人体機能代替動物養成事業見学実習、博物館見学実習、動物保健看護関連企業見学実習等を行なう。
動物機能学(必修 2 単位) 担当者:袴田陽二(准教授)
、藤澤正彦(講師)
各臓器別にその構造と機能を学び、それらを統合したからだのしくみを理解する。
動物機能学実習(必修 1 単位) 担当者:袴田陽二(准教授)
、藤澤正彦(講師)
動物機能学とは、器官の機能を明らかにしようとする学問である。実習では、動物モデルを用いて、実際
に生きている個体、臓器について実験を行い、その結果を解析することを通し生命原理の探求のプロセスを
学ぶ。
動物生化学(必修 2 単位) 担当者:氏名 近江俊徳(准教授)
動物生化学は、ヒトや動物などの生物がどのような化合物から成り立っているか、また日々行っている生
命活動において、それらの化合物がどのようにつくられ、壊され、生体の恒常性が保たれているかというこ
との基礎を教授する。
動物生化学実習(必須 1 単位) 担当者:氏名 近江俊徳(准教授)
生化学は生命現象を生化学的な手法を用いて解析し、代謝および物質の生理的意義を教えてくれる。本実
習では、動物血液試料を用いたタンパク質解析、遺伝子解析、酵素反応に関する実習を小グループで行ない、
実験の基本的な技術を習得する。
動物微生物学(必修 2 単位) 担当者:福所秋雄(教授)
、吉田孝治(講師)
、青木博史(講師)
動物と関わりをもつ獣医療において、微生物とそれによる感染症や予防を知ることは欠かせない。主に陸
生動物の病原微生物(真菌、細菌及びウイルス)の形態と構造、増殖と培養法、変異と遺伝、診断、予防(ワ
クチン)
、滅菌と消毒法など、動物保健看護やワクチン等の生物学的製剤の開発ならびに感染症診断技術の
基盤となる知識を学ぶ。
動物微生物学実習(必修 1 単位) 担当者:福所秋雄(教授)
、吉田孝治(講師)
、青木博史(講師)
動物微生物学で学んだ知識に基づき、病原微生物(ウイルス・細菌)の増殖・機能等の現象を実際に実習
し、具体的な各種検査法、技術的手法などの理論・技術を体得する。
公衆衛生学(必修 2 単位) 担当者:青木博史(講師)
人類は公衆衛生対策によって多くの人獣共通感染症の恐怖を克服してきたが、社会発展にともなって動物
との関わりも多様化して新たな問題を抱えており、獣医療や獣医療技術の面でも重要な役割を果たすことが
期待されている。人獣共通感染症の病原体、感染源、感染宿主、感染経路などを学ぶと共に、その予防方法
及び対策法について学習する。
動物繁殖・新生子学(選択必修 2 単位) 担当者:袴田陽二(准教授)
、藤澤正彦(講師)
動物の繁殖に関わる事項の仕組みを理解するために、繁殖に関する臓器の構造ならびに機能を学ぶ。さら
に、獣医臨床で問題になる繁殖障害についてもその概要を説明できるようになる。また、発生工学や遺伝子
工学の基礎となる初期発生についても理解を深める。
動物繁殖・新生子学実習(選択必修 2 単位) 担当者:袴田陽二(准教授)
、藤澤正彦(講師)
生の動物を用いた実習をおこない、動物繁殖・新生仔学の講義で学習した内容の理解を深める。
卒業論文(選択必修 4 単位) 担当者:福所秋雄(教授)
、向山明孝(教授)
、袴田陽二(准教授)
、近江俊
徳(准教授)
、吉田孝治(講師)
、青木博史(講師)
比較遺伝・分子遺伝学、微生物・感染症学、生体機能学及び免疫学を中心として、生物現象の科学的追求、
動物衛生又は獣医臨床への応用の基盤づくりを研究テーマとして実験指導を行い、実験結果を論文にまとめ
て発表する。
動物遺伝学(選択 2 単位) 担当者:向山明孝(教授)
、近江俊徳(准教授)
動物の基本的な遺伝の仕組みを理解し、また各種の形質を支配する遺伝子の情報伝達の法則やその発現機
構あるいは遺伝病の発現様式について教授する。
動物免疫学(選択 2 単位) 担当者:向山明孝(教授)
愛玩動物、産業動物、実験動物、鳥類、魚類および野生動物などが生命を維持していくために不可欠な免
疫機構を学び、これらの知識を基に、微生物やウイルス感染に対する予防や健康維持の方法、また抗病性の
高い動物の選択技術などを教授する。
実験動物学(選択 2 単位) 担当者:袴田陽二(准教授)
、藤澤正彦(講師)
動物から生物情報を入手する手続きを動物実験といい、そのために使用される動物を実験動物と定義され
る。動物実験の必要性が広く認識される一方で、反対運動もある。実験動物学では、実験動物の歴史、現状
さらに展望について講義し、実験動物ならびに動物実験に関する正しい知識を会得し、動物実験の有用性な
らびに必要性を説明できるようにする。
疾患モデル動物学(選択 2 単位) 担当者:袴田陽二(准教授)
、藤澤正彦(講師)
ヒトならびに動物の医療分野における疾患モデル動物の位置づけを理解すると共に、代表的な疾患モデル
動物の病因、開発法ならびに利用法を学び、疾患モデル動物の有用性と必要性を説明できるようにする。
数学(選択 2 単位) 担当者:大坂元久(教授)
統計学基礎が主な内容で将来自分の力で統計を扱えるための地力をつけさせることを目標とする。1. 実
際に収集したデータをどうやってまとめるかを体得する。2. 分布の重要性を理解し、離散分布の代表とし
て2項分布、ポアソン分布を、連続分布の代表として正規分布、カイ 2 乗分布について示し、その関係を理
解する。3. 中心極限定理の根本原理を理解し 1標本にもとづく母集団平均値の区間推定と検定を演習する。
特別講義( 単位)担当者:外部講師
就職関連分野(動物臨床看護分野、動物福祉分野、動物看護教育分野、製薬・販売分野、ペット業界、動
物愛護・管理分野、野生動物分野等)で活躍している専門家を講師として招聘し、4年間を通じて教授した
獣医保健看護学を基盤とし社会における実学を学ぶ。全15回実施。
大学院(獣医保健看護学専攻修士課程)
動物微生物学特論(選択 2 単位)担当者:青木博史(講師)
病原微生物の生物性状、遺伝子構造及び分子生物学的特性について理解させると共に、病原・血清診断法、
予防法並びに治療法の開発の基盤となるに基礎的解析能力を養う。
動物感染症学特論(選択 2 単位) 担当者:福所秋雄(教授)
動物疾病のうち、特に感染症は病原体に起因するものであり、寄生虫、原虫、細菌、リケッチャ、ウイル
ス等、その病原体が多岐にわたる。これら個々の感染症の病態、診断、予防並びに疫学の知識を細部にわた
って修得させると共に、診断並びに予防技術の研究開発に向けた研究思考能力を引き出す。
動物看護生理学特論(選択 2 単位)担当者:袴田陽二(准教授)
動物生理学とは動物の体の機能を学ぶ学問で、獣医保健看護学おいて最重要 の基礎学問である。授業で
は、生理学の他に解剖学、組織学、生化学、分子生物学等の基礎医学も適宜取り入れ生体の正常機能を総合
的に教授する。さらに、動物看護が生理機能に及ぼす影響と治癒的効果を解析するための実験方法の理論な
どを教授し、臨床動物看護における動物生理学の総合的、かつ実践的な知識を養う。
分子遺伝学特論(選択 2 単位)担当者:近江俊徳(准教授)
動物看護の現場でしばしば遭遇する遺伝的疾患を有する動物について、責任遺伝子の同定法や構造ならび
に診断法など遺伝子変異、染色体異常に起因する疾患機序を総合的に学修し、動物の飼い主に対して遺伝子
病の機序、診断法などを正しく説明する能力、自ら遺伝子疾患を解析する実験方法の理論などを教授する。
基礎獣医保健看護学特別演習(選択 4 単位)担当者:福所秋雄(教授)
、袴田陽二(准教授)
、近江俊徳(獣
教授)
動物微生物学特論、動物感染症学特論、動物看護生理学特論、分子遺伝学特論等で修得した知識を活かし
て、各専門分野の原著論文を参考とする最新の実験的手法を取り入れた演習を行い、獣医保健看護学の礎と
なる研究思考能力を養う。
基礎獣医保健看護学特別研究(8 単位)担当者:福所秋雄(教授)
、袴田陽二(准教授)
、近江俊徳(准教授)
獣医保健看護学研究において系統的な基礎科学の知識、知見は重要である。そのため、生理・生体機能学、
分子遺伝学、微生物感染症学分野等における最新の知見を取り入れ、実践指導し、研究思考能力を養う。
特別講義(4 単位)担当者:福所秋雄(教授)
、袴田陽二(准教授)
、近江俊徳(准教授)青木博史(講師)
獣医保健看護学教育・研究の指導者に相応しい人材育成のため、自然科学、生命倫理、動物福祉、関連法
規等を基盤に、今後の獣医保健看護学教育・研究の在り方等について総合的に教授する。
獣医学科
獣医ウイルス学Ⅰ(必修 1 単位) 担当者:福所秋雄(教授)2006 年のみ
動物感染症の中でも伝染力が強く、動物の生命及び畜産の振興に重要な影響を及ぼす疾病としてウイルス
感染症が重要である。ウイルス感染症の制御には、予防技術(ワクチン等)
・診断技術・防疫技術が重要で
あり、その技術開発等への応用を踏まえ、その基盤となるウイルス学を学習する。
獣医ウイルス学Ⅱ(必修 1 単位) 担当者:福所秋雄(教授)
、分担者:青木博史(講師)2006 年のみ
獣医ウイルス学Ⅱでは、2005 年の国際ウイルス分類命名委員会の第8次報告書に従い、ウイルス科・ウ
イルス亜科・ウイルス属に所属するウイルスごとに解説し、また、所属ウイルスに起因する感染症について
も学習する。
統計学(選択必修 1 単位) 担当者:大坂元久(教授)2008 年から
確率分布、t 検定、F 検定、一元配置分散分析、適合度検定、最小2乗法と相関係数、ベイズの原理等、
統計学の基礎から応用まで教授する。
数学Ⅰ、Ⅱ(選択 2 単位) 担当者:大坂元久(教授)
統計学基礎が主な内容で将来自分の力で統計を扱えるための地力をつけさせることを目標とする。1. 実
際に収集したデータをどうやってまとめるかを体得する。2. 分布の重要性を理解し、離散分布の代表とし
て2項分布、ポアソン分布を、連続分布の代表として正規分布、カイ 2 乗分布について示し、その関係を理
解する。3. 中心極限定理の根本原理を理解し 1標本にもとづく母集団平均値の区間推定と検定を演習する。
2.研究の現状
微生物・感染症学研究分野 福所秋雄(教授)
、吉田孝治(講師)
、青木博史(講師)
1.牛ウイルス性下痢ウイルスの生物学的特性及びペスチウイルス識別法に関する研究
ペスチウイルスの生物学的性状は非常に多様であるが、メカニズムの詳細は不明である。ペスチウイル
スの牛ウイルス性下痢ウイルスをモデルに各種性状をより詳細に解析し、①END 現象及び干渉現象の培養
細胞種による反応相異及び容易な判定を可能にする株化細胞、②細胞病原性の有無に関与するゲノム構造、
などについて新規性のある結果を得ている。また、同属の豚コレラウイルス感染症における豚コレラ防疫
で支障を及ぼす豚の抗牛ウイルス性下痢ウイルス抗体の特異的識別法の開発に取り組み、両ウイルス間の
ウイルス抗原の比較から、非相同親水性ポリペプチドを同定した。
2.豚サーコウイルスの効率的培養法の開発と疫学に関する研究
近年、養豚業界で慢性的な被害をもたらしている豚サーコウイルスについては、効率のよいウイルス分
離培養法がない。本研究では、基本となるウイルス分離培養系を立ち上げるとともに、分離効率と感度が
より高い培養法の開発を目指している。また、野外サンプルから数株の豚サーコウイルスを分離するとと
もに、分子疫学的解析を行っている。
3.無血清又は動物由来成分無添加培養液で増殖可能な株化細胞の応用に関する研究
組織培養は牛血清などから微生物が迷入する恐れがある。本研究では、牛血清を必要としない豚腎臓由
来培養細胞(福所ら、特許第 2636199 号、1997)を維持し、各種ワクチン株の感受性を確認した。また、
動物由来成分を必要としない牛腎臓由来培養細胞(青木ら、特許第 3994159 号、2007)を維持するととも
に、複数の単一性状の培養細胞を樹立した。
生体機能学研究分野 袴田陽二(准教授)
、藤澤正彦(講師)
1.遺伝子組換え動物の作成と解析
生体における遺伝子の機能解析システムとして、受精卵への遺伝子導入によりトランスジェニック動物
の有用性が広く認知されている。特にマウスはゲノム情報が豊富な上、遺伝子ノックアウト技術も確立さ
れている。しかし、体サイズが小さいため whole body を用いた薬理実験や行動解析に難がある。一方、
ラットはマウスに比して約 10 倍の対サイズを有するため、実験的な外科手術や繰り返しの採血も比較的
容易である。当分野では実験の目的に合わせてトランスジェニックマウスならびにラット(Ueda et al.,
2006)あるいはラビット(Takahashi et al., 2007)の作成を行い、遺伝子の機能解析ツールとして利用
している。
2.臓器幹細胞を用いた再生医学研究
これまで難治性疾患の治療として臓器移植が行われてきたが、ドナー不足の問題は獣医臨床でも同様で
ある。また、移植後の拒絶の克服も大きなハードルである。臓器移植に代わる方法として自家あるいは同
種異系の幹細胞を用いた再生医療が注目されている。我々は、ドナー幹細胞の fate を追跡可能とする細
胞マーキング用タンパク(現在のところ、GFP, DsRed, luciferase、LacZ)を全身性に発現する動物の作
成に成功しているので、これらの動物を用いて、neurosphere を用いた脳梗塞の治療、骨髄細胞由来の MSC
を用いた血管新生に関する研究を行っている。
3.バイオイメージングシステムを用いた動物実験モデル
生体内の遺伝子の発現や移植細胞の動態を可視化することができるバイオイメージングシステムがラ
イフサイエンス研究分野で注目されている。また、本方法は動物に痛みを伴わず、しかも同一個体を繰り
返し利用することが可能なことから、動物福祉の点からもその利用が期待されている。バイオイメージン
グシステムのなかでもルミネッセンスは組織透過性ならびに解像度の点で優れている(Hakamata et al.,
2006, Haga et al., 2007)
。現在、本システムを利用した発生初期胚の解析を計画している。
4.生殖工学技術の改良と普及
動物資源(動物胚ならびに培養細胞)の保存と有効利用を目的に研究資源バンクが国内外で運営されて
いる。しかし、動物胚に関しては凍結サンプルの融解・移植に関する技術が一般的に普及しておらず、バ
ンク利用のボトルネックになっている。当分野では、定法に従って凍結された胚の取り扱いについて習熟
し、その技術普及につとめるとともに、安全で確実な配偶子の新たな保存法の開発を目指している。
比較遺伝学研究分野 近江俊徳(准教授)
1.ヒトおよび動物における血液型物質の比較遺伝学的研究
イヌにおけるヒト血液型類似遺伝子の解析により ABO 類似遺伝子(仙波ら DNA 多型 2009)および RH
類似遺伝子内に新規 SNP を同定した(Chong et.al. J Comp Clin Med 2009a)
.現在、ABO 遺伝子のクロ
ーングや発現解析などの分子遺伝的解析を行っており、動物遺伝学の視点から血液型物質の生物学的機能
解明に迫りたいと考えている。
2.イヌ DEA1.1 血液型に関する研究
5品種、合計 80 例について DEA1.1 抗原の血液型判定を実施し、陽性個体は 68 例(85%)陰性個体は
12 例(15%)であり、品種別の陽性率は ミニアチュアダックスフンド(35 例)が最も高く 97.1%と、
もっと低いシェトランド•シープドック(7 例)の 42.9%と頻度に違いが認められた。
(Chong et.al. J Comp
Clin Med 2009b)
。DEA1.1 血液型はイヌ特異的血液型であり且つ輸血医療に重要であることから、血清
学的解析と共に遺伝子の同定も試みている。
3.動物 DNA 個体識別に関する研究
本学野生動物教育研究機構と福島市および新福島農業協同組合の研究協力協定に基づき得られた標本
の利用によりニホンザル集団の遺伝学的背景を明らかにするため、134 個体の mtDNA のコントロール領域
を解析した結果、本集団はほぼ均一なハプロタイプを有するが(132 個体)2 個体は異なるハプロタイプ
である事を明らかにした(近江ら DNA 多型 2010)
。また、イヌを対象とした mtDNA のコントロール領域
の解析も数百個体で実施しており、多様性および動物法医遺伝学的応用について知見が集積されつつある。
4. 生活習慣病関連遺伝子の分子遺伝学的解析
前職自治医大において実施した症例対照研究により現在炎症関連遺伝子として知られている
CIAS1/NALP3 が本態性高血圧症に関連している事や(Omi et.al. Eur J Hum Genet. 2006)
、RBP4 遺伝子
内の SNP がモンゴル人の 2 型糖尿病に関連する事(Munkhtulga et.al. Hum Genet, 2009)
、ブタとヒトで
糖尿病関連遺伝子である PPARγに新規スプライシングバリアントが存在する事(Omi et.al, J Anim Breed
Genet. 2005)などを報告した。
動物免疫学研究分野 担当:向山明孝(教授)2007 年 3 月まで
イヌの血液型遺伝子の解明及びモノクローナル抗体の作成
イヌの血液型不適合による輸血ショックを防止するため、
血液型検査に応用可能な赤血球表面抗原の DEA1.1
及び 1.2 型に対するモノクローナル抗体の作成を実施した。これまでに、DEA1.1 型に対するモノクローナ
ル抗体を産生するハイブリドーマを分離・作成した。これらの性状解析を進めるとともに、その臨床応用を
目指している。
数学・生物統計学分野 担当:大坂元久(教授)
ヒトの心血管イベント・心臓性突然死の予知・予防に関する研究を行なっている。2010 年には 10 年以上
に及ぶ研究の集大成として心臓性突然死の予知に結びつく前兆が自律神経活動の特有の変化として捉えら
れることを明らかにした。この成果は Circulation Journal に掲載予定である。これを臨床応用する共同研究を
トヨタ自動車・デンソー・日本医科大学と継続中である。自動車運転中の死亡事故の5%以上は心臓性突然
死によると推定されているので、この予知・予防は社会的急務である。ドライバーの心電図をステアリング
から記録しリアルタイムで運転中の自律神経活動、不整脈をモニターするシステムを開発中で実車を完成さ
せた。2011 年には日本医学総会で公開する予定である。
3.過去5年間(2005 年~2010 年)の業績数
原著(国際誌)
51 編
(国内誌)
総説
1編
著書
翻訳
1編
特許
国際学会発表
16 件
国内学会発表
10 編
12 編
5件
60 件
獣医保健看護学科応用部門
所属教員 教授 湯本典夫、教授 梶ヶ谷博、客員教授 小河 孝、客員教授 石崎正通、准教授 小林真
理子、講師 浅田忠利、講師 山本俊昭 講師 山本昌美、非常勤講師 箕輪多津男、非常勤
講師 山内 昭、非常勤講師 濱野佐代子、非常勤講師 本藤 良、非常勤講師 小林和夫、
非常勤講師 霍野晋吉、非常勤講師 小川義和、非常勤講師 前田克彦、非常勤講師 亀井 修、
非常勤講師 中嶌 洋
1.教育の現状
自然科学概論(必修 2 単位)担当者:湯本典夫(教授)
、小林眞理子(准教授)
、浅田忠利(講師)
、山本俊
昭(講師)
オムニバス形式の本講座では、それぞれの専門の中から、低学年にも理解しやすい項目を選び講義を行っ
ている(各担当者 1 回分担当)
。
動物形態学(必須 2 単位)担当者:湯本典夫(教授)、山本昌美(講師)
動物の体を構成する組織や器官の形態や位置及び構成細胞について理解し、さらに構造と機能との関係に
ついても学習する。
動物形態学実習(必須 1 単位)担当者:湯本典夫(教授)
、石崎正通(客員教授)
、
山本昌美(講師)
動物形態学の講義で習得した動物の臓器や組織の微細構造について顕微鏡を用いて観察し、諸臓器がどの
ような細胞によって構成されるか、さらに構成細胞の機能についても理解する。
動物病態学(必須 2 単位)担当者:湯本典夫(教授)、石崎正通(客員教授)
生体の正常範囲を超えた変動の表現である疾病の原因、発症の仕組み、進展の様相、経過及び転帰につ
いて、諸臓器、組織、細胞に生じる形態的、機能的変化を学習する。
動物病態学実習(必須 1 単位)担当者:湯本典夫(教授)
、石崎正通(客員教授)
、
山本昌美(講師)
動物形態学及び動物病態学で修得した知識に基づき、顕微鏡を用いて病理組織標本を観察し、疾病の形態
的変化と生体の応答を理解する。
卒業論文(選択 4 単位)担当者:湯本典夫(教授)
、山本昌美(講師)
、石崎正通(客員教授)
サルの多発性脾嚢胞の組織発生に関する病理学的研究、肉芽腫性疾患の病因に関する分子病理学的研究、
リンパ増殖性疾患の分子病理学的研究、乳腺腫瘍の組織発生に関する病理学的研究をテーマとして指導し、
研究結果を論文として発表している。
野生動物学実習(必修 1 単位)担当者:梶ヶ谷博(教授)
、山本俊昭(講師)
哺乳類を中心とした野生動物について形態学的視点から進化・適応・解剖・病理といった内容を学ぶ。こ
れらを通じて野生鳥獣と関わるどの立場にあっても必要となる基礎的技術と知識を身につける。
動物保護活動論(選択必修 2 単位)担当者:梶ヶ谷博(教授)
、山本俊昭(講師)
実践的な野生動物の保護活動を行っている現場からの様々な立場の講義を行い、一口に野生動物と表現し
ても実際には野生動物を取り囲むきわめて複雑な現代の事情が存在することを学ぶ。
動物保護活動論実習(選択必修 1 単位)担当者:梶ヶ谷博(教授)
、山本俊昭(講師)
野生動物を取り囲む事情は多種多様である。それらは書物メディア情報では空気感は掴めない。現実の活
動に実際に参加させ、実践的活動を体験することでその現実を体感させる。
動物生態調査実習(選択必修 2 単位)担当者:梶ヶ谷博(教授)
、山本俊昭(講師)
野外にて、生態調査の基礎である野生動物の個体数推定方法を学ぶ。実験室では、生物を取り巻く環境を
広域で把握するためGISを用いて環境解析を行い、野生動物の密度と生息環境の関係性を理解する。
水生生物学(選択必修 2 単位)担当者:山本俊昭(講師)
個体群生態学および群集生態学を中心に、魚類の様々な事例を扱いながら講義を進めていく。講義の対象
動物は魚類が中心となるが、講義の課題は野生動物の保全・保護・管理を考える上で重要なテーマを扱う。
水生生物学実習(選択必修 2 単位)担当者:梶ヶ谷博(教授)
、山本俊昭(講師)
河川群集構造を把握するために必要な魚類・水生昆虫・藻類の採取方法を野外にて学び、実験室では、そ
れらの分類および分析を行い、河畔林の違いによる河川群集構造への影響について考える。
野鳥保護活動実習(選択必修 1 単位)担当者:梶ヶ谷博(教授)
野鳥は自然環境の指標として重要であることから、この実習では野鳥に関わる野外調査法や鳥の識別、傷
病鳥の病理解剖を通じて、野鳥保護活動を行う意義や実際の手法について学ぶ。
動物園動物学実習(選択必修 2 単位)担当者:梶ヶ谷博(教授)
、山本俊昭(講師)
動物園動物は野生動物と飼育動物の両者の性格を併せ持つことから特殊な動物といえる。実際に複数の動
物園を訪れて各種の動物の飼育における課題や疾病的な特異性、施設による違いなどについて学ぶ。
動物園動物学(選択必修 2 単位)担当者:小林和夫(非常勤講師)
動物園の歴史から現状、制度、動物園飼育動物まで、広く実践的な動物園と飼育動物に関わる知識と現状
を教授する。
生物命名法(選択 2 単位)担当者:箕輪多津男(非常勤講師)
動物と植物における分類命名法、とくに学名の由来や意味について、系統分類学と関連させながら教授す
る。
特殊動物学(選択 2 単位)担当者:霍野晋吉(非常勤講師)
いわゆるエキゾチックアニマルとして分類される、コンパニオンアニマルとしての鳥類や爬虫類、両生類、
げっ歯類等について、臨床的な視点から取り扱いや性質、疾病について教授する。
卒業論文(選択 4 単位)担当者:梶ヶ谷博(教授)
、山本俊昭(講師)
ツキノワグマの遺伝的特性、個体群の空間的な血縁構造、行動特性、サクラマスの遺伝的特性、環境と性
比決定、野鳥や哺乳動物における交通事故発生メカニズムと防止対策、ニホンザルの年間および各季節の環
境選択性、野鳥とくにカラスによるごみ集積場被害防止対策、窓ガラスに衝突死した野鳥における損傷の病
理学的な判定基準、野鳥における飛行高度の選択性と電線衝突事故との関係などをテーマとして、生態学的、
工学および病理学的手法をまじえて多角的に野生動物を考える技術と論理展開を指導している。
English Reading (選択 4 単位)担当者小河 孝(客員教授)
:2005~2008 年迄担当
Grammar, Vocabulary, Skills, Pronunciation, Function and Revision を機能的に組み合わせて授業を
実施し、少なくとも 1200 語水準の英語読解力を総合的に学ぶ。
数学(選択 2 単位)担当者:小河 孝(客員教授)
:2005~2008 年迄担当
獣医保健看護学分野におけるデータ解析に役立つ実践的「数学」の一分野である推測統計学の基礎的知識
を学ぶ。
動物防疫学(選択 2 単位)担当者:小河 孝(客員教授)
集団を対象とした予防医学という面で公衆衛生を考えた場合に、疫学という学問分野は重要な意味を持つ。
本講座では、獣医学・家畜衛生分野における疫学的に関して、具体例をあげて解説し、その重要性を学ぶ。
環境生物学(選択 2 単位) 担当者:小林眞理子(准教授)
基礎的な知識として、環境および生態系の概念、様々な環境下での生物の適応、生物多様性の意義などを
解説する。また、今日の生物を取り巻く環境は、増大する人間の活動に起因した環境破壊により複雑化して
いることから、過去および現在のヒトによる環境破壊とそれにより生物がどのように影響されたかを説明す
る。
動物・人間関係論(選択 2 単位)担当者:小林眞理子(准教授)
宗教と食の禁忌、ウマと人間の歴史など、様々な視点から動物と人間の関係に関する講義を行っている。
公衆衛生学(必修 2 単位)担当者:小林眞理子(准教授)
、本藤 良(非常勤講師)
公衆衛生の最終的な目標は、国民の健康を肉体的、精神的ならびに社会的に良好に保全することにある。
近年の急速な生活様式や環境の変化に伴い、公衆衛生の領域も複雑に様相が変換しているが、本講座では、
公衆衛生学概論、環境衛生、人獣共通感染症(担当:青木)および食品衛生の 4 つの項目について解説して
いる。
動物介在療法論(必修 2 単位)担当者:小林眞理子(准教授)
古くから続く動物と人間の関係において、人類は、動物と関わりあうことが心身の健康状態の改善あるい
は回復に効果があることを経験してきた。獣医保健看護学科の学生を対象としているこの授業では、動物の
専門家を育成するという本学科の目的を踏まえ、対象を動物(ウマ:小林、小動物:水越担当)に置いて講
義を進めている。
動物介在療法実習(選択必修 1 単位)担当者:小林眞理子(准教授)
学外実習としては、ウマの基本的な取り扱い方法および乗馬の前後における身体能力と心理の変化などに
ついて、実際にウマを触らせながらおこなっている。また、学内実習を希望するものについては、調査票を
使用した調査方法についての解説をおこなっている。
公衆衛生学実習(必修 1 単位)担当者:小林眞理子(准教授)
人の健康に関わる様々な分野の中から、本実習では、環境衛生と食品衛生を取り上げて実習を行っている。
食品衛生では、牛乳を取り上げ、その理化学的検査、細菌学的検査、抗菌物質の検出の方法などについて学
ぶ。環境衛生に関する実習では、上下水道を取り上げ、上水の細菌学的検査、残留塩素の検出、誘導結合プ
ラズマ発光分光分析法を用いた下水中の元素分析などを学ぶ。
動物保健看護体験実習(必修 1 単位)担当者:小林眞理子(准教授)
、浅田忠利(講師)
本学付属牧場における牧場体験、高度動物医療施設見学、博物館見学などを通じて、動物保健看護学を学
ぶ意義を学習させる。
動物保健看護学概論(必修 2 単位)担当者:小林眞理子(准教授)
、山本俊昭(講師)
本講座を、今後の授業の導入と位置づけ、動物保健看護領域における各担当者の専門分野から今後の保健
看護に関連する項目を講義している(各担当者 1 回分担当)
。
卒業論文(選択 4 単位)担当者:小林眞理子(准教授)
野鳥における重金属汚染の疫学調査、ネコの尿中元素濃度の動態と下部尿路疾患の関係、介在活動・療法・
教育におけるウマに関する研究、実験動物、細菌および培養細胞に対する各種重金属の作用など研究テーマ
として実験指導を行い、最終的には学会発表および論文としてまとめて発表している。
動物飼育学(必修 2 単位)担当者:浅田忠利(講師)
牛、緬・山羊、馬、鶏などの産業動物のほか、魚類、小鳥、爬虫類、ウサギ、学校
飼育動物の基本的な飼育法とライフサイクルの概要ならびに動物の衛生管理法を学ぶ。
動物栄養学概論(必修 2 単位)担当者:浅田忠利(講師)
動物に必要な各栄養素やエネルギーの役割、利用と代謝、家畜用飼料およびペットフードの概要について
学習する。
動物栄養学各論実習(選択必修 2 単位)担当者:浅田忠利(講師)
化学分析によって飼料の栄養価値を評価する方法を学ぶ。飼料成分である水分、粗たんぱく質、粗脂肪、
粗繊維、可溶無窒素物および灰分の分析操作法を実習する。また、分析用飼料の調製法や飼料鑑定法につい
ても教示する。
卒業論文(選択 4 単位)担当者:浅田忠利(講師)
マウスの糖尿病に対する木酢液と桑の葉液の効果、微粒気泡による乳牛糞尿汚水の処理のための基礎実験
装置の作製、尿汚水の爆気処理時における気泡粒径と処理温度の違いによる処理効率と環境負荷ガスの発生
特性を研究テーマとして指導している。
学芸員課程その他
生涯学習概論(学芸員課程必修 1 単位)担当者:中嶌洋(非常勤講師)
社会教育と生涯学習についての基本的な解説をし、指導者としての役割と方法について教授する。
教育学概論(学芸員課程必修 1 単位)担当者:中嶌洋(非常勤講師)
教育の本質と制度について概論的に教授する。
博物館概論(学芸員課程必修 2 単位)担当者:小川義和(非常勤講師)、亀井 修(非常勤講師)、前田克彦
(非常勤講師)
博物館の役割や学芸員の業務など学芸員課程の導入部分を総合的に教授する。
博物館資料論(学芸員課程必修 2 単位)担当者:梶ヶ谷博(教授)
、箕輪多津男(非常勤講師) 、山内昭(非
常勤講師)
博物館における資料について、その性質や利用の方法を論じる。具体的には、(1)資料の収集、(2)整理と
管理、(3)保存、(4)展示等に関しての知識と技術の習得を図る。
博物館情報論(学芸員課程必修 1 単位)担当者:梶ヶ谷博(教授)
、箕輪多津男(非常勤講師) 、山内昭(非
常勤講師)
社会と博物館の関係といった部分について、博物館が所有する情報の種類と特質について整理し、社会に
対してそれらのどれを、どう発信すべきかを論じる。
視聴覚教育メディア論(学芸員課程必修 1 単位)担当者:山内昭(非常勤講師)
博物館において利用される教育機器の原理や効果的な使用方法、情報発信との関係などを各論的に教授す
る。
博物館経営論(学芸員課程必修 1 単位) 担当者:前田克彦(非常勤講師)
博物館を財務的視点からみる考え方を教授し、現在の博物館が置かれた状況と今後の課題を議論しながら
展開する。
博物館実習(学芸員課程必修 3 単位)担当者:梶ヶ谷博(教授)
、山本俊昭(講師)
博物館において学芸員としての立場からその業務について学習する。具体的には広報活動や資料収集、展
示方法、解説実習、展示模型作成などの事柄を実践的に学ぶ。
大学院
動物看護病態学特論(専門分野必修、他分野選択 2 単位)担当者:湯本典夫(教授)
動物の様々な疾患のうち、代謝疾患、生体防御機構の統御と破綻、炎症性疾患及び腫瘍を取り上げ、疾病
の原因、発症の機序、病気の表現を病理形態学及び分子病理学の面から講義する。また対象疾患の最新の知
見を紹介し、最先端の研究方法と技術及び知識を習得させる。これにより疾病に関する知識、研究基礎能力
を培い、看護診断、援助及び教育に応用することを教授する。
野生動物医学特論(専門分野必修、他分野選択 2 単位)担当者:梶ヶ谷博(教授)
野生動物は本来人類と切り離されたところで生活を営むべき存在であるが、この1,2世紀あまりにおけ
る人類の生活領域の拡大は、むしろ人類と野生動物との接触機会を増大させており、結果として野生動物側
からみれば、人間活動の影響が傷病野生動物を作り続けているのが現実である。そこに野生動物と人類との
共生に関わる現代的な基礎理論の構築が求められる理由がある。ここでは共生理論の一部を構成する、人間
と比較的関わりが大きい野生動物起源の疾病の保健衛生(集団)と、傷病野生動物の健康回復への手助け(個
体看護)の在り方について考察する。
公衆衛生学特論(専門分野必修、他分野選択 2 単位)
:担当者:小林 眞理子(准教授)
公衆衛生学とは、社会を構成する人々の健康を肉体的、精神的、社会的に良好に保持、増進させることを
目的とした自然科学系、社会科学系に大別される広範な学問分野を含んだ応用科学であり、その最終的な目
的は動物保健看護領域においても同じである。本特論では人獣共通感染症の現状、食品衛生、特に動物性食
品に関係する衛生、動物の関与する環境衛生ならびに人と動物の共生の視点から、ヒトの精神衛生に動物が
どのように関与するかを解説する。さらに、疫学的手法による解析方法や、動物保健看護公衆衛生における
疫学的手法を教授する。
臨床獣医保健看護学特別演習(専門分野必修、他分野選択 4 単位)担当者:湯本典夫(教授)
伴侶動物を主対象動物として、病態病理学、臨床病理学、分子病理学、臨床検査学に関する原著論文を題
材に用いる。題材の発表後、研究の意義、今後の展開、最新の技術や研究方法に関する知識を討議によって
得る。題材項目は、1)腫瘍の病理組織学、臨床細胞学に関する項目、2)リンパ球系抗原に対する抗体の
組織診断への応用に関する項目、3)病理検体の分子病理学的検索への応用に関する項目からなる。
基礎獣医保健看護学特別演習(専門分野必修、他分野選択 4 単位)担当者:梶ヶ谷博(教授)
比較動物形態学の立場から生物の形態の意味について論じた内外の著作・論文を題材とする。特に鳥類の
運動系組織と呼吸系組織の構造に注目し、飛翔不能状態に陥った事例における病理発生の理論的な組み立て
手法をシュミレーション演習するとともに、関連事例における個体看護の合理的な処置について学ぶ。
臨床獣医保健看護学特別研究(専門分野必修、他分野選択 8 単位)担当者:湯本典夫(教授)
伴侶動物を対象にリンパ増殖性疾患の発症のしくみ、生体の応答、組織発生について、病理形態学、分子
病理学的に研究を行い、その結果を学術雑誌に発表し、病理学的な研究手法および研究の進め方、科学論文
としてのまとめ方を修得させる。
基礎獣医保健看護学特別研究(専門分野必修、他分野選択 8 単位)担当者:梶ヶ谷博(教授)
野生鳥類における傷害発生とその個体に及ぼす影響について、野外実例を対象として次の課題で研究を進
めている。1:骨組織の破壊発生のメカニズム、2:骨格筋傷害が運動障害に及ぼす影響、3:野鳥の傷害
事例に対する地理情報システムを用いた解析、4:内臓損傷の発生機転、5:飛翔事故と体内素因との関連
性
特別講義(必修 4 単位)担当者:湯本典夫(教授)
、梶ヶ谷博(教授)
、
担当者:小林 眞理子(准教授)
、山本俊昭(講師)
獣医保健看護学の教員・研究者養成に相応しい、自然科学、生命倫理、動物愛護、法令等に基づき、今後
の獣医保健看護学の在り方、その教育の方向性等を総合的に講義を行う中で、湯本、梶ヶ谷、小林、山本が
各 2 回ずつ講義を担当する。
2.研究の現状
A.病態病理学研究分野
1.悪性リンパ腫の病因と組織発生に関する病理学的研究
胃腸管原発リンパ腫はヒトでは粘膜関連リンパ組織に由来する低悪性度B細胞リンパ腫(MALTリン
パ腫)が多く、T細胞リンパ腫の発生は僅かである。一方、犬や猫の胃腸管原発リンパ腫の多くは概念上
のNK細胞をも含んだT/NK細胞リンパ腫の頻度が高く、ヒトとの病因や組織発生の違いが推定される。
MALTリンパ腫はピロリー菌感染など、何らかの抗原刺激に関連して腫瘍細胞が増殖することが明らか
となっており、腫瘍の縮小に除菌治療が有効な腫瘍である。動物における消化管原発リンパ腫の病因や腫
瘍細胞の由来を免疫学的手法や分子病理学的手法を用いて明らかにすることが治療法の開発や予後の推
定に重要と考え研究を進めている。
2.腫瘍の発生と進展に関する病理学的研究
マウスを用いた発がんモデルを利用して、腫瘍の発生と進展を病理学的に検索した。ヒトの腫瘍で多く
の遺伝子変異が報告されている p53 遺伝子のノックアウトマウスを用いた検索では、胃がんや大腸がんで
は、p53 ヘテロマウスの発がん性はワイルドタイプと変わらなかったが、食道や血管の腫瘍ではヘテロマ
ウスが高い感受性を示し、p53 遺伝子は、発がん物質の種類もしくはその標的臓器によって発がんへの関
与が異なることが明らかとなった。
B.保全生物学研究分野
1.野鳥における外傷の発生原因と発現機構に関する研究
野鳥が人工物に衝突する現象はバードストライクとして知られており、世界中で年間相当数の野鳥が死
亡していると推測されている。また野鳥の衝突対象が航空機や自動車である場合は人類における被害も少
なくない。一方、バードストライクの実態はほとんど正確に解明されておらず、従ってその防止対策も科
学的根拠に乏しい。本研究では野鳥の飛翔様式の解明と実際例の外傷の病理解析を通じてバードストライ
クの科学的な解明を行う。現在までに実際の飛翔速度や飛行パターンの解析結果を解剖結果と照合し、外
傷の発現様式には鳥の飛翔様式が密接に関連するであろうことが明らかになりつつある。
2.サクラマスにおける飼育魚による野生魚への影響
本研究の対象種であるサクラマスは、水産重要種であり、釣りの対象としても人気が高いことから、こ
れまで全国各地の河川で放流が行われおり、資源の増加及び漁業の安定に貢献してきた。しかしながら近
年、野生生物の保護および管理について一般の関心が高まる中、生物多様性を考えたサケ属魚類の資源管
理が求められており、単に増殖学的な視点だけでなく、保全生態学的な視点によりふ化場魚と野生魚の関
係を明らかにすることが急務となっている。これまでの研究では、野生魚と飼育魚における成長のメカニ
ズムを比較検討し、ふ化場魚による野生個体群への影響を明らかにすることを目的として行ってきた。
C.疫学・公衆衛生学研究分野
1.野鳥の有害重金属元素による汚染の解析
2.Listeria monocytogenes 汚染の分子疫学
3.ネコの尿中元素の分布と尿路疾患の関係に関する研究
4.介在活動・療法・教育におけるウマに関する研究
D.応用栄養学研究分野
1.糖尿病やアレルギー疾患の予防および治療に及ぼす各種木酢液の効用に関する研究
木酢液は、化粧品原料や食品添加物、脱臭剤、農業用資材など幅広い分野で使用されている。近年、ア
レルギー性疾患や糖尿病に効果があるとされ、民間療法で利用されているが客観的判断材料に乏しく、医
学的検証が急務である。そこで、アロキサン糖尿病マウスやモルモット腸管を使って検証した。その結果、
供試する木酢液の種類や濃度によって効能が異なる事や症状の改善効果が認められた。
2.動物排泄物の処理利用と環境汚染防止技術の開発
家畜尿汚水を低コストで浄化処理する方法としておが屑を濾材とした濾過装置を試作し、曝気すること
により排出される濾液中の窒素の低減化を図る実験を行った。その結果、窒素を減少させるには曝気を間
欠的に止めて脱窒を起こさせること、硝化細菌が働くための酸素が2~3mg/L 汚水中にあること、水温
が高いこと、これらの要素が必要であると判明した。
3.過去5年間(2005 年~2010 年)の業績数
原著(国際誌) 30 編 (国内誌)
総説
0編
著書
翻訳
0編
特許
国際学会発表
5件
国内学会発表
6編
7編
0件
74 件
獣医保健看護学臨床部門
所属教員 教授 左向敏紀、教授 村松梅太郎(2007 年 3 月まで)、準教授 石岡克己
講師 牧野ゆき、講師 水越美奈、講師、松原孝子、助教 呰上大吾、
助教 百田豊、助教 森昭博
1.教育の状況
当教室では、臨床獣医療に関連する科目の教育および実習を担当している。
動物看護学概論(必修単位 2 単位)担当者:村松梅太郎(教授)、石岡克己(準教授)
複雑多岐に変容する獣医保健並びに動物看護の基本理念を学び、獣医療の高度最前線において獣医療を補
助・支援する高度専門職としての自己理解を促す。
動物保健看護体験実習(必修 1 単位)担当者:左向敏紀(教授)、石岡克己(準教授)、牧野ゆき(講師)、
水越美奈(講師)、松原孝子(講師)、呰上大吾(助教)百田豊(助教)、森昭博(助教)
本学付属牧場における産業動物体験実習をはじめとして、関連各団体や動物診療施設等の見学を通し、動
物保健看護学を学ぶ目的を理解させる。
動物トレーニング理論Ⅰ(必修 2 単位)担当者:水越美奈(講師)
家族の一員としての家庭動物(犬及び猫)に必要となる適切なしつけと行動の基本知識を習得させる。
動物トレーニング理論Ⅰ実習(必修 2 単位)担当者:水越美奈(講師)
家庭犬のしつけを中心に、トレーニング理論にもとづいた実習を行う。
動物トレーニング理論Ⅱ(選択必修 2 単位)担当者:水越美奈(講師)
動物トレーニング理論Ⅰ・同実習で学んだ基礎知識を踏まえ、動物の行動を変容するために必要な知識と
しての学習理論を中心に取り上げる。
動物トレーニング理論Ⅱ実習(選択必修 2 単位)担当者:水越美奈(講師)
動物トレーニング理論Ⅰ・同実習、動物トレーニング理論Ⅱで学んだ基礎的な知識・技術を踏まえ、より
高度な応用力・問題解決能力と飼い主への指導技術の習得をはかる。
動物保健看護関連法規(必修 2 単位)担当者:牧野ゆき(講師)
獣医療関連諸法規の概要を取り上げるとともに、獣医療や動物を取り巻く環境を法的側面から捉えること
により、獣医療のあり方や動物看護師に期待される社会的責務を考える。
動物療検査学(必修 2 単位)担当者:呰上大吾(助教)
血液検査等、獣医療現場で頻繁に実施される検体検査を中心に解説し、検査対象となる臓器の総合的な知
識と統合により検査結果を正しく理解する能力を養成する。
動物医療検査学実習(必修 1 単位)担当者:呰上大吾(助教)
獣医療現場で頻繁に実施される検体検査の原理や検査手技を理解、習得させ、検体対象となる臓器の総合
的な知識との統合により検査結果を正しく理解する能力を養成する。
動物栄養学各論(選択必修 2 単位)担当者:左向敏紀(教授)、森昭博(助教)
犬と猫の代謝生理、発達各段階における栄養素の必要量、現在使用されているペットフードの特徴等を取
り上げ、獣医療の現場で不可欠な実践的栄養学の習得を図る。
動物栄養学各論実習(選択必修 2 単位)担当者:左向敏紀(教授)、石岡克己(準教授)百田豊(助教)、
森昭博(助教)
動物栄養学各論に基づいて、理論をより立体的に理解させ、実践に結び付ける実習を行う。
動物トリミング理論(必修 2 単位)担当者:左向敏紀(教授)、水越美奈(講師)
動物看護業務のひとつである犬のトリミング・グルーミングについて、器具・用語等の基礎知識、トリミ
ングの必要性や各種技法等について講義する。
動物トリミング理論実習(必修 2 単位)担当者:水越美奈(講師)
動物トリミング理論で学んだ基礎知識を実際の動物を用いて実習する。
動物医療看護学Ⅰ(必修 2 単位)担当者:左向敏紀(教授)、石岡克己(準教授)
犬や猫の各種疾患(消化器疾患、肝臓疾患)について、症状と病態との関連や、疾患ごとの看護のポイン
ト等を、総論および各論の両面から講義する。
動物医療看護学Ⅰ実習(必修 1 単位)担当者:左向敏紀(教授)、石岡克己(準教授)、牧野ゆき(講師)、
水越美奈(講師)、松原孝子(講師)、呰上大吾(助教)百田豊(助教)、森昭博(助教)
犬や猫の一般的な容態評価や処置法等、内科的医療技術を中心とした実習を行う。
動物医療看護学Ⅱ(必修 2 単位)担当者:左向敏紀(教授)、石岡克己(準教授)
犬や猫の各種疾患(循環器疾患、呼吸器疾患、内分泌疾患)について、症状と病態との関連や、疾患ごと
の看護ポイント等を、総論および各論の両面から講義する。
動物医療看護学Ⅱ実習(必修 1 単位)担当者:左向敏紀(教授)、石岡克己(準教授)、牧野ゆき(講師)、
水越美奈(講師)、松原孝子(講師)、呰上大吾(助教)百田豊(助教)、森昭博(助教)
犬や猫の基本的な外科的処置や手術室で必要となる技術等、外科的医療技術を中心とした実習を行う。
動物医療看護学Ⅲ(選択必修 2 単位)担当者:左向敏紀(教授)、呰上大吾(助教)
犬や猫の各種疾患(外科学、腫瘍学、神経疾患)について、症状と病態との関連や、疾患ごとの看護のポ
イント等を、総論および各論の両面から講義する。
動物医療看護学Ⅲ実習(選択必修 1 単位)担当者:左向敏紀(教授)、石岡克己(準教授)、牧野ゆき(講
師)、水越美奈(講師)、松原孝子(講師)、呰上大吾(助教)、百田豊(助教)、森昭博(助教)
大学付属医療センターにおいて、各種生体機能検査の原理や方法、機器の取り扱い及び CT や MRI 等の
高度医療検査についての実習を行う。
動物医療看護学Ⅳ実習(選択必修 1 単位)担当者:左向敏紀(教授)、石岡克己(準教授)、牧野ゆき(講
師)、水越美奈(講師)、松原孝子(講師)、呰上大吾(助教)、百田豊(助教)、森昭博(助教)
大学付属動物医療センターでの診療補助や症例検討等を通じ、よりレベルアップした臨床現場での応用力
を養成する。
動物介在療法論(必修 2 単位)担当者:水越美奈(講師)
動物と人間との関係を医療へと適用する動物介在療法について、これに関わる諸要素のうち、動物(小動
物と馬)を主体に講義を行う。
動物介在療法論実習(選択必修 1 単位)担当者:水越美奈(講師)
介在療法・介在活動で必要される、動物(小動物と馬)の基礎的な取り扱いについての実習を行う。
動物病院管理学(選択必修 2 単位)担当者:左向敏紀(教授)、百田豊(助教)
動物病院内での看護師の役割、看護記録の意義と記録方法について講義する。
動物病院管理学実習(選択必修 2 単位)担当者:左向敏紀(教授)、石岡克己(準教授)、牧野ゆき(講師)、
水越美奈(講師)、呰上大吾(助教)
民間の動物診療施設において診療業務の実習を行う。診療施設の業務を総合的に理解させることを目的と
する。
動物医療センター実習(選択必修 2 単位)担当者:左向敏紀(教授)、石岡克己(準教授)、牧野ゆき(講
師)、水越美奈(講師)、松原孝子(講師)、呰上大吾(助教)、百田豊(助教)、森昭博(助教)
本学付属動物医療センターにおいて、日常の診療に立会い、動物医療における診療の流れ、診療業務の実
際を見学する。
動物グルーミング理論(選択必修 2 単位)担当者:百田豊(助教)
伴侶動物の皮膚疾患を中心に、眼科や耳鼻科、歯科等、体表に関連した部位の各種疾患について講義する。
動物グルーミング理論実習(選択必修 2 単位)担当者:石岡克己(準教授)、百田豊(助教)
学内外の動物診療施設において、皮膚疾患を対象とし、検査方法の実習や、症例検討を行う。
動物ハンドリング実習(選択必修 2 単位)担当者:左向敏紀(教授)、石岡克己(準教授)、牧野ゆき(講
師)、水越美奈(講師)、呰上大吾(助教)
本学付属動物医療センターにおいて、臨床現場での保定法、すなわち動物の各種、症例の状況、動物のお
かれた環境等に応じたハンドリングの実際を体験させる。
犬学・猫学(選択 2 単位)担当者:村松梅太郎(教授)
ブルース・フォーグル博士の理解を基調とした講義を行い、犬及び猫についてトータルな理解を促す。
社会活動動物論(選択 2 単位)担当者:左向敏紀(教授)
社会で活動する動物(犬と馬)について、なかでも人の社会福祉に貢献する身体障害者補助犬を大きく取
り上げる。
アニマルケア論(選択 2 単位)担当者:左向敏紀(教授)
他科目で取り上げていない重要項目(幼弱動物のケア、老齢動物のケアリハビリテーション等)、及び、
既習の項目の中でもより専門知識が必要とされる項目について講義を行う。
ペットビジネス論(選択 2 単位)担当者:水越美奈(講師)
日本におけるペット飼育の現状を踏まえた上で、ペット保険やペットショップ等、ペットを取り巻くビジ
ネスについて概観する。
卒業論文(必修 6 単位)担当者:左向敏紀(教授)、石岡克己(准教授)、牧野ゆき(講師)、水越美奈(講
師)、松原孝子(講師)、呰上大吾(助教)、百田豊(助教)、
森昭博(助教)
各分野を担当する教員の研究テーマに即した研究指導を行う。
大学院
実践動物看護学特論(専門分野必修、他分野選択 2 単位) 担当者:左向敏紀(教授)
実践的動物看護学を学問的に高めて行くには、現在実践されている看護学を検証し不足部分な点を補い発
展してゆく必要がある。1)海外での現状と国内の現状比較および人の看護学研究と動物看護学の応用を進
める。2)動物における疾病の病態を理解し、とその病態に必要な看護学の理解、充実のための研究を理解
させる。3)獣医学をサポートする臨床検査および種々検査学の進歩を究めてその応用を勧める。また、病
理組織学といった一見一般的検査技術も時代と共に進歩している。それらに貢献すべき方法の開発研究も必
要である。4)科学的エビデンスの少ない行動学を確実な科学的データを積み上げるべく方法論の開発を行
う。
動物看護倫理・教育学特論(専門分野必修、他分野選択 2 単位)担当者:牧野ゆき(講師)
動物看護専門職としての倫理観や動物看護観を構築するため、現状の把握と取り組むべき課題の明確化を
試み、動物看護倫理の中心課題である獣医療におけるケアのあり方を追求する。また、動物看護教育の役割
として、動物看護専門職の資質能力の一層の向上を図ることで動物と人間の福祉に資することが求められて
いることを踏まえ、看護教育者の能力の向上、臨床実習指導、継続教育等の現状と課題について取り上げる。
動物看護代謝学特論(専門分野必修、他分野選択 2 単位)担当者:石岡克己(准教授)
伴侶動物の代謝に関わる様々な病態について、以下のテーマに焦点を当てて学ぶ。1)脂肪細胞で産生され、
全身の代謝を調節している各種アディポカインについて、分子構造や体内動態を研究する。2)エネルギー
を熱に変換する脱共役蛋白質(UCP)のはたらきや、それを応用した新しい肥満治療法について研究する。3)
栄養代謝の出発点である消化管に発生する様々な病態を、炎症性腸疾患(IBD)を中心に研究する。
動物行動学特論(専門分野必修、他分野選択 2 単位) 担当者:水越美奈(講師)
コンパニオンアニマルが我々の心身の健康にいかにポジティブな影響を及ぼすかについての研究が累積さ
れつつある一方、問題行動を理由に安楽死処分される動物も少なくない。動物福祉とエビデンスに基づいた
問題行動の診断と治療、および予防に関する研究を行ない、問題行動の予防を実践・教育できる動物看護専
門職の養成を目指す。
臨床検査学特論(専門分野必修、他分野選択 2 単位) 担当者:呰上大吾(助教)
獣医療の進歩、動物飼育に関する意識の向上、さらには動物医療保険の発展により、伴侶動物に対しても
様々な検査を実施することが可能となってきた。それに伴い、より侵襲性が低く、より感度の高い検査法の
確立が望まれている。本講義では、動物において応用されている様々な特殊検査法について紹介すると共に、
新規検査法として注目されている遺伝子検査法を取り上げ、最先端の臨床検査を実施・開発するための基礎
的知識を養成する。
臨床獣医保健看護学特別演習(専門分野必修4単位) 担当者:左向敏紀(教授)
伴侶動物の各種材料から動物体に起きている病態を把握する技術を習得し研究への応用も含め指導する。
血液成分からは各種腫瘍細胞の検出方法を習得する。血清診断では、微量の各種ホルモンの測定、脂肪組織
から分泌されるアディポサイトカイン、腫瘍マーカーの測定、バイオプシーサンプルでの組織検査を習得す
る。また、各種サンプルから遺伝子発現を確認して診断への道を探る。ストレスマーカーとしてのホルモン、
各種代謝産物の測定を習得する。
臨床獣医保健看護学特別研究(専門分野必修8単位) 担当者:左向敏紀(教授)
伴侶動物における獣医療は高度化、伴侶動物の高齢化に合わせた看護学の発達に見合う人材輩出、学問体系
を目指す。
1) 糖尿病動物、代謝性疾患および内分泌疾患に対する管理に関する研究、
2) 糖尿病動物の診断および治療指標に関する研究、
3) 疾病動物、老齢動物および肥満動物に対する栄養管理の研究、
4) 疾病動物、老齢動物、腫瘍動物および肥満動物における遺伝子を含む各種検査マーカーの研究、
5) 行動異常および疾病動物におけるストレスマーカー変動に関する研究
6) 動物に対するサプリメント、健康補助食品の作用に関する研究
7) 消化器疾患とくに炎症性腸炎(IBD)に対する治療・看護に関する研究
特別講義(必修 4 単位)
獣医保健看護学の教員・研究者養成に相応しい、自然科学、生命倫理、動物愛護、法令等に基づき、今後
の獣医保健看護学の在り方、その教育の方向性等を総合的に詳細に教授する。
2.研究の現状
代謝・栄養学分野 教授 左向敏紀、准教授 石岡克己、助教 森昭博
動物が健康を維持するために種々の栄養素が適切に利用されなければならない。そのためのメカニズムを
生化学・分子生物学的手法を駆使して明らかにしていくとともに、その乱れにより起こる疾病の治療法、看
護方法を検討する。
肥満の発生メカニズムと治療に関する研究については、脂肪代謝に影響を与える脂肪組織から分泌される
生物活性物質を本体及び遺伝子的発現などを武器に追及する。また、肥満治療としては、栄養成分の変化に
よる方法、脂肪の消化吸収代謝を調整する薬物、サプリメントなどによる治療、運動療法、等について研究
を行う計画である。
消化器疾患はもっとも栄養管理の重要な疾患のひとつである。消化管の疾患、膵臓の疾患、肝臓の疾患お
よびその疾患の重篤度により栄養管理方法、栄養成分が異なってくる。病態を把握する技術、栄養状態を把
握する技術の習得と評価方法の研究がまず必要になる。
犬猫の糖尿病の管理には種々の看護領域の問題がある。検査学ではヒト糖尿病に使われる検査項目、管理
マーカーなど時々刻々と進歩改善している。その獣医療への応用を検討し、オーナーへの啓蒙活動を行わな
ければならない。治療では家庭でのインスリン治療を行う例が多く、その治療指導が来院時必要であり看護
師による聞き取り、指導が大変重要になる。また、栄養管理は糖尿病治療の根幹となるものであり、その研
究およびオーナー指導は大変重要となる。
自然科学、社会科学および人文科学の接点:学際的分野 講師 牧野ゆき
本分野においては、法学の一分野である医事法学を下敷きとし、獣医療特有の諸事情を踏まえた独自の分
野としての獣医事法学の確立を目指している。すなわち、獣医療のあり方や獣医療関係者に期待される社会
的責務、獣医療倫理、動物の福祉を研究対象とし、医療・獣医療やこれらを取り巻く環境を法的側面からと
らえることにより、「生きた道具としての法」を追及している。ことに医療全般についての動向分析は医事
法学と獣医事法学との接点を明確にするとともに、獣医療に対する何らかの示唆を得るうえできわめて有益
であり、研究にあたって不可欠な作業となっている。
今後は、獣医療の場における獣医療関係者・クライアント関係や獣医療コミュニケーションのあり方も研
究の対象として積極的に取り上げ、当事者間の信頼関係を基礎とした、よりよい獣医療の提供に向けて努力
していきたい。
臨床検査学分野 准教授 石岡克己、助教 呰上大吾
動物看護師にとっては臨床検査技術の習得は大変重要である。疾病によって多種多様に変化した血液性状
を測定して行く。血液学的検査、血液化学検査技術の習得、検査の理論・原理および測定機器の測定原理・
構造を熟知する必要がある。測定結果の真偽確認、同時再現性や日差再現性といった精度管理技術も重要で
ある。これらの技術に関する研究は、獣医看護学の面だけでなく獣医学においても必要な研究となる。
腫瘍をはじめとする遺伝子病では、組織を形成する細胞に様々な変化が生じる。顕微鏡下で観察される形
態異常について遺伝子手法を用いることにより迅速に発見する。また遺伝子に生じた変化を分子レベルで探
り出す手法を習得する。
人と動物の関係分野 講師 水越美奈、講師 松原孝子
ペットが伴侶動物と呼ばれるようになったように、「動物を飼う」から「動物を家族の一員として共に生
きる」社会に変わってきており、現在ではこれらの伴侶動物は私たちの生活に密接に関わるようになってき
た。しかし、共に生活するからこそ生まれる動物と家族(飼育舎)や社会との問題もクローズアップされる
ようになってきた。
この分野では、動物も家族も社会も全てが幸せに同じ社会で暮らしていく方法を、動物行動学、動物臨床
講堂治療学、臨床獣医学、動物福祉の視点から考えていく。
具体的には、伴侶動物の問題行動の予防と治療に関する研究、伴侶動物のストレスマーカーの探索、動物に
も飼い主にもやさしいトレーニング方法に関する研究、適性のある良質な身体障害者補助犬の普及に関する
研究を行っていく予定である。また、病気や怪我の治療のサポートをするだけでなく、動物の心のケアや動
物とその飼い主のよりよい関係づくりのサポートができる動物看護師の育成が必要と考えられる。
3.過去 5 年間(2005 年〜2010 年)の業績数
原著論文(英文)
61 編
(和文)
総説
4編
著書
翻訳
5編
特許
国際学会発表
8件
国内学会発表
19
20
0
54
編
編
件
件