2000 年度 スポーツ産業論レポート 「ヨーロッパサッカー界の エリート主義」 1199198k(商2) 成田 健一 81305(商3) アッティラ・フェレンツィ 2001.1.26 目次:①、問題提起・テーマ設定理由・作業分担スケジュール ……2 ②、サッカー巨大産業化の背景・変遷 ……3 ③、ヨーロッパサッカー界におけるバブル形成の背景 (1)ビッグクラブとマイナークラブの二極化 ……4∼7 (2)チャンピオンズ・リーグのシステム ……8 チャンピオンズ・リーグのもたらす経済効果 ・UEFAカップのシステム ……9 ④、資料:1、プレミアリーグTOP10 クラブ収入ランキング 2、主な選手の年俸推移 ……11 3、世界のクラブ収入ランキング ……12 ⑤、今後への課題・解決策(提案) *参考文献・感想 ……12∼13 ⑥、最終コメントに対する見解 ……14 ①、問題提起・テーマ設定理由 今や、サッカーは世界の中でも一大産業としての地位を確立しつつあるが、その中でも ヨーロッパのサッカー界は昨年7月ルイス・フィーゴ(ポルトガル代表)が約63億円で 移籍したように莫大な移籍金が飛び交い、年俸が高騰するといったような急激な肥大化が 進んでいる。この大きな要因として、1997 年から規模が徐々に拡大されてきた UEFA チャ ンピオンズ・リーグ(旧チャンピオンズ・カップ)があると思われる。 1995 年のボスマン判決により“選手の保有”という概念が根底から覆された時期に、さ らにチャンピオンズ・リーグの規模が拡大されたことがビッグクラブのエリート主義を助 長し、マイナークラブとの格差を広げてしまった大きな要因ではないかと認識し、チャン ピオンズ・リーグの現状・問題点を分析することで解決策などが見出せると思ったから。 ・ 作成者・分担 成田 健一 (商学部 2 年) :サッカー雑誌・新聞のバックナンバーの検索・調査 A.フェレンツィ(商学部 3 年) :インターネット上(リーグ公式サイト等)の検索 ・作業スケジュール 10 月∼12 月:資料の検索・収集(随時ミーティング) 1 月:課題・解決策の考察、最終報告・レポート作成 かなり漠然としていると思われるだろうが、膨大な資料収集の元にこのレポートが出来 上がったということを是非理解して欲しい。 ② サッカー巨大産業化の背景・変遷 サッカーがここまでの巨大産業と化した大きな背景としては社会全体のグローバル化が 進んだことにある。つまり、地球全体の交通手段・通信技術が発達したことにより、サッ カーを取り巻き、構成していた要素が様々なビジネスを生んできたことがサッカーを一大 産業へと為し得たのである。 例えばワールドカップはフランス大会での0泊3日ツアーに見られるように、航空料金 の格安化や時間距離の短縮による多くのサポーターの渡航が可能になり、その一方TV観 戦は国営・民間放送による“集約的な”放送からBS、CS放送中心とした有料放送が中 心となった。当然そこから派生する問題は数々あり、チケット問題は言うまでもなく、も はや莫大な金額となった放映権料やスポンサー料の問題などがあげられる。延べ人数で百 数十億人がテレビ観戦する今、2002 年の放映権料は 500∼600 億円ともいわれ、その伸び に比例するように、全世界に宣伝できるオフィシャルスポンサー争いが激化しスポンサー 料も高騰してきた。また、インターネットの世界的普及により、世界のサッカー雑誌、新 聞へのアクセス、しいては試合のライブ中継と、逐一世界のサッカー情報を入手すること が可能になった。いわば“情報・通信の時間距離”も大幅に短縮されたのである。 これらの事象は欧州・南米だけではなくサッカー後進地域と言われるアジア、北米、ア フリカへと世界的な広がり方を示しているため、もはや「世界中のサッカーが世界中の人 によって見られている」といっても過言ではない程である。その中でも最先端地域である ヨーロッパの注目度は高く、当然観たい人が多くなるにつれ放映権の問題が大きくなり、 しいてはその影響で選手の性格をも変えようとしている。 元々サッカー選手(特にヨーロッパ)は“地域の代表”と“ファンタジスタ”という2 つの性格を持っていた。前者は古代都市国家の時代から脈々と受け継がれてきた伝統であ り、クラブ・選手は“おらが町”の物として地元の郷土意識を託されていた存在であると いう意味を、後者はトッププレーヤーにしか持っていないタレント(才能)をピッチ上で 発揮し、観客にファンタジー=幻想・夢を与えられる存在であるという意味合いを持つ。 これらの性格は基本的には変わっていないのだが、前述のようにサッカーを取り巻く環 境の変化により選手のプロとしての社会的ステータスが高まり、経済的にも高額の報酬を 受けるようになった代償として、選手自身は要求されるものが非常に多くなったのである。 トッププレーヤーと言われる選手は年5、6億といった年俸を受け取る一方、年間 70 数試 合という過酷なスケジュールに耐え、常にコンディションを維持しなければならなくなっ た。またそれに伴いクラブの経営も益々肥大化していき、数十億の移籍金が飛び交いその 結果として多額の負債を抱えるクラブが生まれたり、欧州の小クラブや南米のクラブなど その余りに異常なペースに追随できないクラブは、主力選手の大量流出や経営縮小といっ た問題を抱えることとなった。つまり選手自身が変わらずとも、その取り巻く環境が変化 することで、サッカー界そのものが巨大産業としての変貌を遂げてきたのである。特にヨ ーロッパの場合は顕著であり、もはやバブルといっても過言ではない。 ③ ヨーロッパサッカー界におけるバブル形成の背景 (1)ビッグクラブとマイナークラブの二極化 元々経済力の違いからビッグクラブとマイナークラブという構図は存在していたのだが、 ここ数年その傾向は顕著になり、もはや成績でも太刀打ちすることは不可能となってしま った。実際イタリア・セリエAでは 90 年代(∼00 年)はサンプドリア、ミラン、ユヴェン トス、ラツィオの4クラブしか優勝を味わっておらず、例年の予想でも毎年上位に名を連 ねるクラブを指す“ビッグ7”しか優勝の可能性はなくなってしまったと言われている。 このような状況を生んでしまった大きな原因は前述のTV放映権の高騰である。国内リ ーグからビッグクラブは一定の収入を得るためにTV局をスポンサーに招き、代わりに試 合中継を委託し、そのスポンサー料=放映権料を賄うために有料(主にPPV<pay per view ペイ・パー・ビュー>方式:観た試合の分だけ視聴料を払うシステム)で放送し、視 聴者から視聴料を集めるという関係が形成された。その結果視聴者が多い=人気が高いク ラブには潤沢な資金が宿り、全国的にファンの存在しないクラブはそれほど放映権料が入 ってこない、という状況になった。 この放映権料のクラブ格差によってビッグクラブとマイナークラブの二極化が起こり、 このことがさらに経営規模の差を広げることになった。その原因の1つは 1997 年から段階 的に行われてきた UEFA チャンピオンズ・リーグの規模拡大である。 元々このチャンピオンズ・リーグ(以下 CL)はチャンピオンズ・カップ(以下 CC)と 呼ばれ、UEFA(Union of Europe Football Association:ヨーロッパサッカー連盟)加盟各 国のリーグチャンピオンのみがヨーロッパ・クラブチャンピオンを競う大会として行われ ていたものを再編したものである。それまで(∼96−97 シーズン)は予選を勝ち抜いた 16 チームが4組に分かれリーグ戦を行い8チームに絞ってからホーム&アウェーの決勝トー ナメント戦を行うという方式であった。 しかし CC に出られないビッグクラブが収入の高い位置での安定(国内リーグ成績に左右 されないように)を目的とした「スーパーリーグ構想」を立ち上げようとした。CC とは別 にヨーロッパ内で人気の高いビッグクラブによる、国境を越えたリーグ戦を行うことで生 じる莫大な放映権料を目当てとしていたのだが、それに各国リーグが反発、排斥の構えを 見せたためにこの構想は凍結された。そこで UEFA はこの動きを鎮めるために CC の範囲 を拡大した CL を 97 年にスタートさせたのだった。その内容は UEFA ランキング上位国の リーグから 2 位までを出場させることによって1次リーグ参加を 24 チームにし、結果とし て予選リーグの試合を増やし、上位国のクラブ=ビッグクラブを優遇するものであった。 この制度は 2 年続いたが、これでも足りないというビッグクラブの要求により 99 年には各 国最高4位まで出場することができる現行の方式に拡大された。これにより1次リーグに 参加する 32 チームは最低6試合に参加できるようになった。 (システムは後程図示)すな わちこのシステムは上位国のチームを優遇したシステムになっている。また参加できる人 気クラブが増えたため放映権料も高騰し、クラブにとっても大きな収入源となった。 また、1999 年CLの規模拡大と同時に、CL出場権に手が届かなかったチーム(CL出 場チームの下2,3チーム)が出られる「UEFAカップ(以下UC) 」に国内カップ戦(日 本で言う天皇杯)の優勝チームが出られる「カップ・ウィナーズ・カップ(以下CWC) 」 が吸収合併され、さらにUEFAカップの予選として希望チームによる「インター・トト カップ」が作られた。その結果イタリアであれば国内リーグで5、6位に入ることでCL 程の財源にはならないもののある程度の収入を得られるようになり、もし入れずとも7月 から始まる「インター・トト」で勝ち抜けばUEFAカップ優勝の望みも出てくる。 このようにCLの構造変化によりヨーロッパカップ戦の構造自体は変化したのだが、逆 にそれが国内リーグ及び国内カップ戦の存在意義そのものを変えてしまい、更にはクラブ の順位目標・経営目標にも大きな変化を与えることになってしまったのである。 UEFAランキング(CLの結果や代表の結果が勘案されるランキング)1位のイタリ アからは、CLには国内リーグ1・2位が1次リーグから、3・4位が3次予選から出場 でき、5・6位はUC2回戦から出場できるようになった。またCLで早期敗退しても、 敗者復活としてUCに2回戦又は4回戦から出場することもできる。UEFAランキング によってCL・UCに出られるチーム数は決まっているが、上位の国ほど後の方のラウン ドから出場できたり多くのチームが出られるようになっている(CLとUCの出場チー ム・トーナメント形式は別表で説明) 。逆に言うと小国(東欧や北欧など)のチームは8月 からの長い予選を勝ち抜いた上で、さらに強国の上位チームに勝たなくてはならなくなり、 CC時代にあった“番狂わせ”というものは非常に少なくなった。例え同じ国内チャンピ オンであっても、言わば「同じ土俵にも立たせてもらえない」という状況なのである。 このような一連のヨーロッパカップ戦の構造変化により、数々の恩恵と弊害が出てきた。 恩恵といってもそれを受けられるのはビッグクラブだけで、TV放映権料及びCL出場報 酬による収入増である。そして最も大きな弊害といえるのは国内において、更にはヨーロ ッパ全体にも言えるビッグクラブ(経済力のある強国のクラブ)とマイナークラブ(小国 のクラブ)の分化であり、これがいわゆる「エリート主義」であると私達は考える。 このことにより、イタリアやスペインなどの国内リーグではたとえ優勝できなくてもC Lに出られる4位以内に入れば「御の字」という風潮が見受けられるようになり、そのた めの補強、およびCL収入を見込んだ予算設定がなされるようになった。 多くのクラブにCL,UC出場の権利が与えられたといっても人気の度合いや各クラブ の経営規模によって収入に差が現れ、またそこから当てられる強化費による選手層・質の 格差は否めず、結局はビッグクラブだけが出場権を得て、多額の収入を手に入れまた投資 する、とますます差が広がっていく一方の状態になってきているのである。 「多くのクラブ に出場機会を与える」というのはあくまで表面上のことであって、実際はビッグクラブの 経営の肥大化を助長し、マイナークラブの利権を殆ど無視しているのである。 私達は国内リーグにおけるクラブの性格というものが存在していると考えるのだが、目 標の細分化がより顕著になったために次の3つにランク付けすることができると思う。 Aランク:毎シーズン国内リーグでは優勝を狙う。元々大株主や大資産家がバックにいる ため経済力が強い。欧州カップ戦(CL・UC)と並行して国内リーグを戦う ため、多額の投資で各国の代表クラスである「大物外国人」や国内外のクラブ から有望な若手を引き抜く。その結果からカップ戦とリーグで豊富なメンバー を使い分ける「ターン・オーバー制」を用いることが多い。ファンが全国的に (全世界的に)存在し、常に優勝(勝利)を要求される。だがCLの規模拡大 により高収入が見込まれるCLに賭けるチームもある。 (例)イタリア・セリエA:ラツィオ、ユベントス、ローマ、ACミラン等(ビッグ7) Bランク:国内外の「中堅選手」が多い。世界中及び国内の下部リーグにスカウト網を巡 らし世界的にほぼ無名な選手を安価で買い取り、試合で起用することで育て、 Aランクのチームへと高い移籍金で売却する。その収支から生まれる利益をま た補強・育成に回す。よってAランクほどの圧倒的な戦力はないが、中位は確 保できる。あわよくばUC出場権も狙う。 (例)セリエA:ウディネーゼ、ボローニャ、ペルージャ等 Cランク:経済力が弱く、経営規模も小さい。そのため自前のユース組織で育て上げた選 手や移籍金のかからないベテランを中心に組み合わせ、1部リーグ残留を目標 として戦う。上位(Aランク)と・アウェーの対戦では引き分け狙い、B・C ランクとの対戦(特にホーム)では勝ちを狙う。必然的に戦術は守備的(カウ ンター中心)になりがち。地元で育った選手が多いので地域密着度が高いが、 A・Bランクからの「札束攻撃」による有望な若手選手の流出は避けられず、 それを引き止めるだけの力もない。よって毎年のように戦力のアップダウンが 見受けられる。 (例)セリエA:アタランタ、バーリ、レッジーナ、レッチェ等 このように“取り敢えず”3ランクに分類してみたが、実際はB・Cランクは殆ど同化 してきているといってもいいだろう。というのは、Aランクの規模拡大があまりにも急で B・Cランクが共についていけず、結果B・Cランクは共にAへのただの「選手供給源」 となり差別化するのが非常に困難になったと言えるからである。その意味で現実には「ビ ッグクラブとマイナークラブの二極化」と言っても差し支えがないのではなかろうか。ウ ディネーゼのように4年連続UC出場という例外もあるが(この快挙は「プロビンチア< イタリア語でいう“小クラブ”>の奇跡」とも言われている) 、基本的にヨーロッパカップ 戦に出られるのはAランクのチームが殆どで、優勝争いも“ビッグ7”しかチャンスがな いというのが現状である。 またAランクのクラブは人気がある分TV視聴者も多く、PPV方式(前述)となって いるところが多い。特にミランやフィオレンティーナはクラブ会長がTV局も経営してい るためその傾向は顕著である。元々は国営放送や民放が放送していた試合も有料にするこ とで視聴料をクラブ側が一手に集めることすら可能になり、結果収入差を生み出している。 (2)チャンピオンズ・リーグ・UEFAカップの システムとクラブ経営に与える影響(*1) 2000―2001シーズンの(99年に改正)チャンピオンズ・リーグのシステム 1次予選:UEFAランキング 29−49 位国の優勝チーム(リヒテンシュタイン除く) (7/12.19) ↓(10 チーム勝ち抜け) 2 次予選:勝ち抜け 10 チーム+18 チーム:UEFAランキング 17−28 位国の優勝チーム (7/26.8/2) (28 チーム) UEFAランキング 10−16 位国の 2 位チーム ↓(14 チーム勝ち抜け) 3 次予選:勝ち抜け 14 チーム+18 チーム:ランキング 10−16 位国の優勝チーム (8/7−9,8/22,23) (32 チーム) 同 7−8 位国の 2 位チーム、 同 1−6 位国の 3 位チーム、 1−3 位国の 4 位チーム ↓(16 チーム勝ち抜け) 同 1 次グループ:勝ち抜け 16 チーム+16 チーム:前回優勝チーム(レアル・マドリッド) リーグ (4 チーム×8グループの 32 チーム) ランキング 1−9 位国の優勝チーム (9/12−11/8) 同 1−6 位国の 2 位チーム ↓(各グループの 2 位まで勝ち抜け) 2 次グループ:勝ち抜け 16 チームによるリーグ戦(4チーム×4グループ) (11/21−3/14) ↓(各グループの 2 位まで勝ち抜け) 決勝トーナメント 準々決勝: (4/3.4−17.18)8チーム→ 準決勝 : (5/1.2−8.9)4チーム ↓ 決勝 →→ : (5/23)@ミラノ・スタディオ・ジュゼッペ・メアッツァ ヨーロッパクラブチャンピオン UEFAランキング(2000 年)と ヨーロッパカップ戦出場チーム数(主要上位国) CLUC 合計 1、イタリア 4 3 7 12、デンマーク 2、スペイン 4 4 8 13、クロアチア 3、ドイツ 4 3 7 14、 トルコ 4、フランス 3 3 6 15、ウクライナ 5、オランダ 3 3 6 16、 スイス 6,イングランド 3 3 6 17、ノルウェー 7、 ロシア 2 4 6 18、 ベルギー 8、ギリシャ 2 4 6 19、スウェーデン 9、ポルトガル 2 2 4 20、ポーランド 10、チェコ 2 2 4 21,スコットランド 11,オーストリア 2 2 4 22、ルーマニア 2 2 2 2 1 1 1 1 1 1 1 2 2 2 2 3 3 4 4 3 3 2 4 4 4 4 4 4 5 5 4 4 4 (3)チャンピオンズ・リーグによる経済効果(*2、3) チャンピオンズ・リーグ出場祝賀金:最高約3,000万スイスフラン(以下SF) *チームの人気度、リーグ順位等による (1円=72円とする) :約21.6億円 1次リーグ参加(32チーム) ・1次リーグ参加賞金:約150万SF ・試合参加賞金 :約1.08億円(円換算) :約50万SF×6試合=300万SF:約2.16億円 <勝利ボーナス:約50万SF(約3,600万円) ×最大6試合=約300万SF :約2.16億円(最大)> <引き分けボーナス:約25万SF(約1,800万円) > ・+α(ホームゲーム3試合の入場料・TV放映権料(クラブ別) 計:約3.24億円(最低額)∼約5・4億円(最高額)+α 2次リーグ参加(16チーム) ・2次リーグ参加賞金:約150万SF ・試合参加賞金 :約1.08億円 :約25万SF×6試合=約150万SF:約1.08億円 <勝利・引き分けボーナス、+αは上記と同様 :約2.16億円(最大)>: 計:約2.16億円(最低)∼約4.32億円+α 準々決勝進出―参加(準々決勝進出+試合)賞金:計・約400万SF:2.88億円+α (以降、勝利ボーナスは次回ラウンドへの進出賞金に取って代わる。+αは上記同様) 準決勝進出―参加(準決勝進出+試合)賞金:計・約500万SF:3,6億円+α 決勝進出―準優勝:約600万SF:4.32億円、 優勝:約1,000万SF:6.3億円 優勝の場合:計17試合(内ホームゲーム8試合)獲得収入:約40∼50億円+α cf.99’−00’CL1次リーグ・ACミラン−チェルシー入場料収入:約2億円 UEFAカップ総獲得収入:約13億円、コッパ・イタリア優勝賞金:約4億円 (参考)2000−2001シーズンのUEFAカップのシステム (*1) 予選ラウンド:82 チーム :アンドラ、サンマリノのリーグ優勝チーム+ (8/10,24) ↓ フェアプレー賞3チーム+ランキング 16−49 位国リーグ 2 位 (41 チームトーナメント進出)+同 9−21 位国リーグ 3 位+同 19−49 位国カップ戦優勝 1回戦:勝ち抜け 41 チーム+39 チーム:ランキング 1−18 位国カップ戦優勝 同 7,8 位国リーグ3位チーム、同 4−8 位国リーグ 4 位チーム (9/14,28) (96 チーム) ↓ 同 1−8 位国リーグ 5 位チーム、同 1−3 位国リーグ 6 位チーム +16 チーム:CL3次予選敗退チーム 2回戦:勝ち抜け 48 チーム(10/26,11/9) →3回戦:勝ち抜け 24 チーム+8チーム(32チーム) :CL1次リーグ3位敗退チーム (11/23,12/7)→4回戦:16 チーム(2/15,22)→準々決勝:8 チーム(3/8,15) →準決勝:4 チーム(4/5,19)→決勝:2チーム(5/16:ドルトムント) →UEFAカップチャンピオン 前々ページの図を見てUEFAランキング上位国のクラブが如何に優遇されているかが 分かったと思うが、逆に言うと小国でチャンピオンチームであってもヨーロッパチャンピ オンへの道は遥かに険しい。実際、1 次グループリーグの段階では殆どが前ページの表に出 てくる国のチームしか残っていないのが現状である。 また、UEFAカップもCWCを吸収し規模拡大したはずが、前年の優勝チームが国内 リーグでCLの出場権を得たために不出場といった事態があったり、実力が反映されない UEFAフェアプレー賞受賞チームが出場できるなど、権威の失墜も甚だしい。実際、C Lに出られなかったチームの僅かながらの救済のために存在するといっても過言ではなく、 出場したとしても国内リーグの方に力を入れるチームも存在するのである。UEFAカッ プ自体の存在意義が問われるのも当然である。 そして、この2つのカップ戦の間には大きな収入格差が存在する。CL出場による収入 はグループリーグまで進めばリーグ戦のため最低6試合あるため、出場給(+勝利給) ・入 場料収入そして放映権料と多額の収入が手に入ることになる。またラウンドを勝ち上がる につれて人気チームとの対戦もあり、更にPPV方式による収入も見込むことができる。 TV局側もほぼ確実に人気ビッグクラブ(マンチェスターユナイテッドやバルセロナ等) が出場できるCLの方に金(放映権料)をかけることが可能になり、ビッグクラブ側も出 場することを前提として選手補強に多額の投資をするという構図が出来上がったのである。 だがCLがTV局とビッグクラブの思惑で「カネの成る木」に育てられたといっても、 イタリアのローマやインテル・ミラノのようにCL出場権が得られなかったりCLの予選 ラウンドで敗退すると、そのクラブ経営に大打撃を与えるようになっている。つまり、前 述の「CL出場を見越した経営」というプランが今や膨大な規模となっており、それ故に 投資してきた額が全て水の泡になってしまうということである。 ビッグクラブの資金調達手段は多岐に渡っている。その内訳は、 ・株式公開による収入 ・選手放出で生じる移籍金 ・入場料収入 ・マーチャンタイズ収入 (・リーグ優勝賞金) ・TV放映権料(・CL賞金) (・ソシオ収入:スペインに多い) この中で特筆すべきは株式公開であろう。スペインのソシオ制度に近いが、決定的な違 いはチームを株式市場に上場させることで多額の資金調達も可能になる分、ファンだけで はなく一般投資家の注目も浴びることにある。当然成績が良ければ株価も上昇し、悪けれ ば下落する。つまり株式公開することは勝ち上がることを義務づけられるということに繋 がる。また株主に評価されるには財政・経済基準がある程度健全でなければならない。そ のために国内リーグ・CLで好成績を収め多額の収入を得なければいけない。そしてター ンオーバー制の為また選手補強……とこの繰り返しがサッカーのビジネス化そしてその肥 大化の構図を作り出し、結果選手はクラブビジネスの為の持ち駒でしかなくなっている。 これにより資金の移動は殆どがキャッシュフローでなくなり、結果「Virtual(仮 想的な) 」な市場がヨーロッパに生まれ。少しの失敗(多額で獲得した選手が活躍できない、 CLに出場できない、等)が積み重なるともはや巨額の負債を抱える事態が起こりうる。 その例がレアル・マドリッド(スペイン)である。99’−00’チャンピオンズ・リーグで優 勝し巨額の収入を得ているにも関わらず、冒頭で述べたようにMFフィーゴ(ポルトガル 代表)を 63 億円の移籍金で獲得した他にも“大物外国人”と呼ばれる選手を獲得、更なる 収入増を目論んでいる。 “金持ちクラブ”のように思われるが、実は世界一の負債を抱える “借金クラブ”でもある。元々百数十億円あると言われていた負債額が実際の所は 341 億 円を超えていたと言うことが判明した。98’−99’シーズンの純収入額が約 125 億円(別表よ り)であることから、昨年はCL優勝の収入で増収しているとしても同等の支出をしてい る分、実際は赤字経営でそれも膨大な累積赤字の状態で経営をしていることになる。つま り、CL収入を赤字補填に回さず、更なる先行投資をしているということなのである。 このように巨額の投資に駆り立てているものの1つがチャンピオンズ・リーグなのであ る。先程の資料でCLで優勝すると 40∼50 億円+αの収入が入ると述べたが、αとなる入 場料収入は約 15 億円あると言われていることから放映権料を含めるとCL収入は 100 億円 近くになると思われる。 この状況は日本のバブル景気を生み出した背景に非常に類似している。選手はあくまで “資産”であり選手の現在価値は常に変動している。利益を生み出す“資産”を獲得する ためにの“負債” (銀行やスポンサーからの借金)を背負ってそれが積み重なった結果が累 積赤字と繋がっているのである。このような“資産”から生み出される利益(マーチャン タイズ収入、入場料、放映権料そしてCL収入)を見越した経営をする習性がヨーロッパ サッカー界に広がった結果、マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)のように結 果を出し尚且つ健全経営するクラブと慢性的に巨額の負債を抱えるレアル・マドリッドの ようなクラブとビッグクラブの中でも明暗が分かれてきている。あるのは“資産価値”で あって、キャッシュフローではない。これがいつ爆発するか分からない。この状態こそ“バ ブル”と呼ぶにふさわしいと思われる。 このような複雑な背景の中で形成されたバブルもいずれ“弾ける”時がやってくる訳で、 このままの経営を続けるといつかはレアルに倒産の危機がやってくるだろう。だが、身近 な例で横浜フリューゲルスが合併された時のように、クラブはただのプロチーム以上の存 在であり簡単に潰してはいけない。まして 10 万人のソシオを持つレアルのようなクラブで は尚更である。そのためにも、このようなバブルの元凶である、チャンピオンズ・リーグ またはヨーロッパの移籍制度及びクラブ経営そのものの変革が必要なのではないか。 そこで私達はクラブ経営について提案をしたい。まずは会計監査制度の整備である。こ のような莫大な赤字経営を招いたのは資産および潜在的収入(CL収入など)を余りに過 大評価しすぎたツケが回ってきた結果だと思われる。また今黒字経営であっても、結果を 求める余り返済能力を遥かに超えた投資をしようとするクラブが出るかも知れない。ドイ ツでは常にクラブ経営には厳しい監視の目が行き届いている。実際倒産しかけたクラブは 下部リーグに強制降格させられ、主力の放出など体質改善を迫られる。Jリーグでも“身 の丈に合った経営”が叫ばれたが、今ヨーロッパに必要なのはこの意識ではなかろうか。 ④資料 1.プレミア・リーグ99−00年シーズンのトップ10チームの年間収入 引用:http://www.fa-premier.com(収入ランク)http://uk.finance.yahoo.com(通貨レート) 収入(億円) 1999 2000 192 200.7 84.11 106 64.01 98.78 Season 99-00 Manchester United 2 Arsenal 3 Leeds United 4 Liverpool 5 Chelsea 6 Aston Villa 7 Sunderland 8 Leicester City 9 West Ham United 10 Tottenham Hotspur 1 158.3 60.38 41.69 41.17 185.1 61.93 64.53 44.98 73.7 83.04 2.主な選手の年俸上昇の推移(Number 2000 年 3 月号(*4)より) ヴィエリの 年 俸 の 推 移 (百 万 円 ) 700 ジダンの 年 俸 の 推 移 (百 万 円 ) 600 140 600 120 500 100 400 40 120 60 20 1995 1996 1997 1998 1988 1999 ロナウドの 年 俸 の 推 移 (百 万 円 ) 800 1992 1996 クライフェル トの 年 俸 の 推 移 (百 万 円 ) 720 400 700 350 600 300 500 250 400 300 200 150 100 18 0 0 200 60 60 210 200 100 80 300 300 120 180 100 90 360 240 60 50 0 0 1994 1996 1997 1994 1997 1998 3.世界のクラブ収入ランキング(1998−99 シーズン) チーム名 国籍 収入(億円) Manchester United イングランド 181.6 2 Bayern Munchen ドイツ 136.8 3 Real Madrid スペイン 124.6 4 Chelsea イングランド 96.8 5 Juventus イタリア 95.8 6 FC Barcelona スペイン 91.2 7 AC Milan イタリア 88.6 8 SS Lazio イタリア 81.9 9 Inter Milano イタリア 80.4 10 Arsenal イングランド 79.6 11 Liverpool イングランド 74.2 12 Newcastle United イングランド 73.2 13 Parma イタリア 72.7 14 Borussia Dortmund ドイツ 71.8 15 Tottenham Hotspur イングランド 69.8 16 AS Roma イタリア 64.5 17 Leeds United イングランド 60.6 18 Glasgow Rangers スコットランド 59.8 19 Aston Villa イングランド 57.2 20 Glasgow Celtic スコットランド 55.4 21 Valencia スペイン 55.2 22 Olympic Marseille フランス 54.9 23 Kaiserslautern ドイツ 51.4 24 Atletico Madrid スペイン 50.3 25 Paris St. Germain フランス 50.1 1 (日刊スポーツ 2000 年 12 月 9 日刊「世界クラブ収入ランキング」 ―Deloitte&Touche 社<英国の会計事務所>発表―より) 5、成果と課題(提案) かつて出た「スーパーリーグ構想」は当時各国リーグの猛烈な反対で凍結された。その 防止策としてチャンピオンズリーグの出場枠が拡大されビッグクラブはその恩恵を受けた が、逆にマイナークラブは軒並み自らのアイデンティティーを失い、それが国内リーグか らサッカー界そのものの二極化を招いている。特にこの傾向は 99 年の第2次拡大から顕著 になっている。サッカー界全体にも多くの弊害をもたらしたチャンピオンズリーグそれ自 体の構造的な変革が必要なのではなかろうか。私達が考えた解決策としては、 ・クラブの会計監査制度の整備:自らの返済能力を超えた“行き過ぎた”巨額の投資を減 らすことで負債を可能な限り抑える ・移籍金に上限を設ける:サッカー界全体のインフレ傾向に歯止めをかける ・チャンピオンズ・リーグの参加チーム数の縮小 0r トーナメント制の復活 :試合数減による選手の過密日程の緩和、ヨーロッパカップ戦の権威の回復 *参考文献:(Internet) http://www.chelseafc.co.uk/ http://www.fa-premier.com/ http://uk.finance.yahoo.com/ (新聞・雑誌) : 「Sports Graphic Number PLUS」―欧州サッカーを愉しむ。―(*1) P184−185(2000 年 CL のシステム)2000.9/10 付、文藝春秋刊 「World Soccer Digest」 日本スポーツ企画出版社刊 2000 年 4 月 18 日号 「正統理論」―狂気のフットボール P78−81 2000 年 10.月 5 日号 同 ―サッカー界がカオスに陥る? P86−89 By マーティン・へーゲレ(ドイツ・サッカー評論家) 1999 年 9 月号 「ヨーロッパの新たな歴史が始まる」 (CL の新システム)P126−129 2000 年 6 月 1 日号 「カネに縛られるカルチョの皮肉な現象」 (*2) (CL による経済効果)P92―93 ブルーノ・ピヅル (イタリアサッカー誌記者) 同 「名誉はいらないカネさえあれば」P68(*3) (CL 賞金システム)from World Soccer News Headline 「World Soccer Magazine」 2000 年 10 月号 ベースボールマガジン社 P114−117 移籍マーケット情報 日刊スポーツ 2000 年 12 月 9 日付 32 面「世界クラブ収入ランキング」 (Deloitte&Touche<英国会計事務所>発表) 「Number」 2000 年 3 月号 「主な選手の年俸の変化」文藝春秋刊(*4) 感想 : アッティラ・フェレンツィ 授業のテーマ、進め方、ゲストはよかったと思います。こういうテーマで、レポートにし た分析をやる機会が少なくて、なかなかいい経験になりました。 ただ、他の授業でも忙しくて、スポーツ産業論I.とII.のフィールドワークを平行に 進めることがけっこう大変なので、将来には一つにしたほうがいいかと思いました。学生 達もよりよくコミットメントできるのではないかと思います。 成田 健一 前半の方はスケジュールも合わず、資料探し(私の部屋にあるサッカー雑誌群より)も手 間取り思うように進まなかったが、後半の方は一体感が生まれ、意見のぶつけ合いが非常 に面白くもあり、意義深かった。これは共にヨーロッパサッカーに大きな好奇心を持って いたことが大きな要因であろう。 個人的にはまだヨーロッパ(どころか海外も)に行ったことがないのだが、一度サッカー だけを見て回りたいと思う。恐らくここ日本で理論的に色々考えるよりもその現状をこの 目で確かめるともっと違った考察も生み出され、さらに思索を巡らすことも可能なのでは ないだろうか。 6、最終コメントに対する見解 まず触れなくてはいけない事として、5分間のプレゼンテーションでは私達の伝えたい 事の全てが伝わっていた訳ではない、と言う事です。それ故に、レポートを読んでもらえ ば理解していただけるようなことも質問として寄せられた部分が多々見受けられた。興味 のある方は一人でも多く是非レポートに目を通して欲しい。 ・エリート主義は悪い事なのか?問題提起が曖昧なためその辺がはっきりしない。 :現実としてエリート主義にはメリットよりもデメリットの方が多く存在している為に エリート主義は悪だと言う判断を下したのである。恐らくヨーロッパのサッカーの現 状をもっと深く知ってもらえば理解してもらえるのでは。 ・ドイツ以外の国では何故会計監査制度を導入しないのですか? :レポートではあまり触れなかったが、政治そしてリーグとの癒着がイタリアやスペイ ンのクラブに存在しているからではないか。イタリアのACミラン会長が元首相であ ったり、リーグがビッグクラブのおかげて成り立っているという意識が存在している からクラブの放漫経営に厳しく迫れないのではないか。 ・マンチェスターユナイテッドの優勝賞金100億円の出所は? :UEFAから出されるが、その財源はTV放映権料とスポンサー料。 ・日本のサッカー界でもそうなる危険性があるのか? ・Jリーグもバブルの反動で今サラリーが低くなっていると思うが、欧州でも有り得るの か? :日本もバブルであったとは言えるが、その生成過程が異なっている。ただ何ら かの変化は起こるはずで、それがバブル崩壊かもしれない。また将来的に日本 がそのようになる可能性はないとは言えないが、 “選手供給国”である限りは起 こらないであろう。ただアジアレベルでこのような関係が生まれた場合は経済 的に優位を保っている日本が中心としてバブルを形成するかもしれない。 ・野球に比べればその金額規模はまだマシだ。 :その分野球はサッカー以上にバブル崩壊の可能性を孕んでいるのではないか。 ・CLの規模縮小はファンもガッカリさせられるし、スケジュールがゆったりするかもし れないが、逆にアピールする場が奪われるのではないか。 :確かにチャンスとなる試合の“量”は減るかもしれないが、その分試合の“質”が向 上するのではないか。ベストコンディションでない選手ばかりのビッグクラブ同士の 試合に面白さを感じ取ることができるのか。実際そのことが“スタジアム離れ”の原 因ではなかろうか。 以上
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