私が理科を好きになった理由＜体験談７＞１「二人の先生との出会い、身の回りの不思議」二人の先生はじめに、私がお世話になった理科好きの二人の先生について紹介します。理科好きというよりも、自然を調べることを自分のライフワーク（生涯の仕事）として取り組んでいるのです。Ａ先生は、地質を調べることに熱心に取り組んでいます。私も時々ご一緒させていただく機会がありますが、Ａ先生のバイタリティーには、とてもかないません。Ａ先生は、野外で調査したことを地図にまとめ、その地図を見ながら次の調査の課題を設定し、調査ポイントを決定します。野外の調査では、わずかな露頭（大地の奥深くの一部が地表に現れているところ）を見つけ、ノートや写真に記録する。川の中はジャブジャブと進み大きな崖は迂回してとにかく前進する。還暦（６０歳）を過ぎたというのに、調査をするときの足取りは実に軽やかです。地質を調べることの楽しさは、目の前に見えているほんのわずかの事実をもとにして、私たちが毎日の生活を送っている大地の奥深くの仕組みを自分自身で創造（組み立てる）できることにあります。それに加えて、この大地がどのようにしてできたのか、何億年前の「今」を創造することもできるのです。Ｂ先生は、鳥博士です。私は学生としてＢ先生の講義（授業）を受ける機会が何回かありました。そして、Ｂ先生の講義がとても楽しみでした。それは、Ｂ先生の講義が、自分が鳥の調査をされたときの経験をもとにして、あたかもその鳥になりきったような表情で、感情を込めたお話が中心だったからです。Ｂ先生は、「私は鳥と会話ができます。特に、私が専門に調査した鳥については、さえずりを聴けば、あの鳥が今何を求めているかがわかります。」と断言していました。鳥の調査を進める際に、何日間も山に籠もり、めあての鳥が廻ってくるのをじっと待ち、生態をじっくりと観察して自分の手で記録し、調査をまとめ発表する。Ｂ先生のあの自信に満ちた発言の裏には、自分の目標の達成のために努力した、数限りない苦労の成果が隠されていることを感じました。２理科を好きになったわけみなさんは、生き物を飼ったり育てたりしたことはありませんか。アサガオの種をまき、「早く芽を出してね。」と願いを込めて毎日水をやったこと。水槽のキンギョやメダカにえさをやったこと。カブトムシやザリガニと遊んだこと。．．．．など。砂場で山を作ったり、水を流したりして遊んだこともあるでしょう。このような自然との触れ合いの中で、自然は私たちにたくさんのことを語りかけてくれています。みなさんは、そんな自然からの語りかけや問いかけに気づいたことはありませんか。アサガオのあんな小さな一粒の種から、大きなふた葉や本葉が出てくる。「種の中はどうなっているのかなぁ。」と中を切って調べてみる。固くて切りにくいので、少しの間水に浸して柔らかくしてから切ってみる。種の中にはこれから出てくるふた葉のもとが、クシャクシャアになって詰め込まれている。ふた葉の間からそっとのび始めたかわいらしい本葉にそっと手を触れてみる。ザラザラした手の感触。よく見ると、表面に細かな毛がたくさん生えている。水槽のキンギョやメダカは、毎日えさをやり続けていると、人が水槽に近づいただけで、口をパクパクさせながら、水面近くに集まってくる。こうしたことに気づくのは、みなさんが自然に対して、水をやる、種を切ってみる、えさをやるなどの問いかけをしたことによって、自然がみなさんに「返事」を返しているのです。私たちの日常生活は、自然との触れ合いそのものです。ふだんの生活の中で、「あれ？これはどうしてかな。どうなっているのかな？」などと、思ったり、感じたり、考えたりすることがたくさんあるでしょう。そんな素朴な疑問や考えを自分で解決するために、自分なりの方法で、始めの一歩を踏み出してみませんか？自分が不思議に思ったことを解決するために、自分で挑戦してみる。挑戦することの楽しさ。少しずつ何かがわかってくることの喜び。思っていた以上の何かを得た感動。自然への働きかけを通して、「わかった｡ !!!なるほどなぁ。」という感激や納得の世界を味わえるのは、『理科』だけではないでしょうか。私が理科を好きになったのは、自分ではよくわかりませんが、このような感動や喜びを幼・少年期にたくさん味わったからではないかと思います。私たちの身のまわりを見渡すと「不思議」や「疑問」がたくさん散らばっています。みなさんも、そんな不思議や疑問に自分自身で挑戦してみてはいかがでしょうか。