辻 瑞樹 アリのコロニーサイズ認識機構

1頁目に限り端まで
「橙色」を塗ること。
様式S‐1‐10
萌芽‐1
平成17年度 萌芽研究 研究計画調書(新規) ※機関番号
注1. 別途平成17年度萌芽研究研究計画調書作成·記入要領(鶯色)を参照してください。
注2. ※印の欄は研究機関において記入してください。
18001
※整理番号
審査
希望
部門
分 野
分 科
細 目
細目番号(4ケタ) 分割番号
生物学 基礎生物学 動物生理・行動 5705 A ・ B
総 合 ・ 新 領 域 系 の み (「作成・記入要領」2.
を参照)
ふ
り
が
つじ みずき な
所属研究機関
辻 瑞樹 研究代表者氏名
印
アリのコロニーサイズ認識機構 研究課題
使 用 内 訳 ( 千 円 )
研究経費
(千円)
設備備品費
消耗品費
平成17年度
1,801 439 500 端数は切り
平成18年度
1,762 0 捨てる
平成19年度
1,362 総 計
4,925 年 度
研究経費
千円未満の
琉球大学・農学部・助教授 ・部局・職
研 究 組 織 氏 名(年齢)
旅
費
謝 金 等
そ の 他
300 462 100 500 700 462 100 0 400 300 562 100 439 1,400 1,300 1,486 300 (研究代表者及び研究分担者)(研究分担者も研究代表者としての資格を有する者であり、本研究計画に常時参加する者です。)
所属研究機関·部局·職
現在の専門
学
位
役 割 分 担
(本年度の研究実施計画に対する分担事項)
平成17年度
研 究 経 費
(千円)
辻 瑞樹(43) 琉球大学・農学部・助教授 行動生態学 農学博士 研究計画と実行 合計 1 名
萌芽研究 研究機関名
研究経費合計
琉球大学
研究代表者氏名
1,801
1,801
辻 瑞樹
エフォート
(%)
15 萌芽‐2
研 究 目 的 ① 研究目的(科学研究費の交付を希望する期間内に何をどこまで明らかにしようとするのか)、② 当該分野における
この研究(計画)の学術的な特色・独創的な点及び予想される結果と意義、③ 国内外の関連する研究の中での当該
研究の位置づけ等、の事項にわたって焦点を絞り、具体的かつ明確に記入してください。
① 研究目的:近年,社会性昆虫研究の権威である Bourke(1999)により,昆虫社会の多様性を解明する鍵
はコロニーサイズ(家族社会を構成する個体数)であると指摘され,社会行動の進化に与えるコロニーサ
イズの影響に注目が集った.その一方で,ではアリやシロアリがいかに所属コロニーのサイズを「認識」
しているのか,その至近メカニズムに関しては全く未知で,ほとんど質問さえ提出されていない.アリは
何らかの方法で自コロニーのサイズに関する情報を得ているのは間違いない.それは,アリの個体が,所
属コロニーのサイズに依存し行動や形態を大きく変化させるからだ.例えば、一般に繁殖虫は一定以上の
サイズに達したコロニーでしか生産されない.そして,これは女王の齢ではなくコロニーのサイズに依存
した育仔活動の切り替えであることも知られている.コロニーサイズ認識機構は以下の点で謎に包まれて
いる.(1)地中性のため視覚情報が利用できない,(2)飛べないので巣の鳥瞰も不能,(3)敏感なの
は主に嗅覚刺激に対しである.これは,目隠しされた我々ヒトが,手探りと匂いだけで同じ部屋にいる人
の数を当てられるようなものである.私は,個々の個体はコロニー全体を俯瞰しているわけではなく,局
所的情報に対して単純に反応しているだけだが,にもかかわらずコロニー全体の適切な制御が可能である
とする,自己組織化機構が,コロニーサイズ認識の裏にもあるのではないかと考えている.本研究では,
アリがコロニーサイズ情報となり得るどんな刺激に依存し行動を切り替えているのか.そして,コロニー
全体の適切な制御を可能にする意志決定メカニズム(必ずフィードバック機構を内在するはず)を明らか
にしたい. ②研究計画の特色・独創性と意義、および③国内外の研究の中での位置付け 社会生理学(その理論的根幹は自己組織化)はここ10年ほど欧米で台頭し始めた分野だが,日本で
は未だ定着していない.そして本家の欧米でも,ほとんど子育てや採餌に関する分業のメカニズムにだ
け研究の焦点が当てられ,他にもありそうな重要な質問が見過ごされているように思われる.私はコロ
ニーサイズ認識はそのような good questions の1つであると確信する. 萌 芽 研 究 で 応 募 す る 理 由
①萌芽研究で応募する理由(基盤研究(一般)にも応募している場合は、当該研究課題との相違点。)、②着想に至った経緯
等研究の背景、について具体的に記入してください。
① 社会生理学は,個体を構成する神経や内分泌機構などの細胞生物学的仕組みに注目する通常の
生理学とは違い,超個体を構成する個々の個体の行動がいかに社会全体の制御に至るかを問題
にする.これは私の従来の専門である行動生態学(行動の適応進化に関する研究分野)とも趣
を異にする境界領域である.社会生理学的なテーマのなかでも今回焦点を当てたコロニーサイ
ズ認識機構の研究は,極めて独自性の高い質問(新分野)であるため,萌芽研究としてふさわ
しい.また,基盤 B で応募している「沖縄産モデル生物の開発を通した社会行動の総合的研究」
が,従来的な行動生態学と分子発生生物学の総合を目指している点でこのテーマとは大きく異
なり,これとは独立して進められ,かつ比較的小さな予算規模で単独で行うことができる研究
であるため,萌芽研究で応募した. ②社会生理学の欧米での台頭は,社会性昆虫の専門家として以前から注目しており,この分野パ
イオニア的の著書「ミツバチの知恵」(T. シーリー著,青土社 1998)の書評も書いたことがあ
る(辻 1999、生物科学 51: 253-255).しかし,分業と採餌以外の現象にはほとんど注目がされ
ていないことに日頃から強い疑問を感じ,この研究を構想した. 萌芽‐3
研 究 計 画 ・方 法 〈平成17年度の計画と18年度以降の計画に分けて記入してください。
また、Ⅰ及びⅡを区別するため、Ⅰを記入後は点線を引いて分けてください。〉
Ⅰ.研究目的を達成するための研究計画・方法について
① 研究代表者・研究分担者の相互関係(役割分担状況)も含めて研究計画・方法を具体的に記入してください。
また、② 特に初年度については、例えば、主要設備(現有設備を含む)との関連、旅費については調査予定地域や実施体制、また、謝金等
については人数や支援の内容など、経費と研究計画との関連性についても記入してください。③ 研究計画のいずれかの年度において、
「設備備品費」、「旅費」又は「謝金等」のいずれかの経費が90%を超える場合(公募要領7頁を参照)には、当該経費の研究遂行上の必
要性について記入してください。
Ⅱ.生命倫理・安全対策等に関する留意事項(該当者のみ)
ヒト遺伝子解析研究、社会的コンセンサス等を必要とする研究及び生命倫理・安全対策に対する取組が必要とされている研究につい
ては、対策としてどのような措置を講じようとしているのか具体的に記入してください。
大きなコロニーをもつ種と小さなコロニーを持つ種では内在メカニズムが異なることも予想さ
れるため,トゲオオハリアリ(小コロニー種),イエヒメアリあるいはキイロヒメアリ(大コロ
ニー種)を材料とする.通常,コロニーサイズの実験操作に対するアリの反応を観察するには,
長い時間を要すたとえば羽アリの生産(通常年1回)などに注目せねばならない.これがこのテ
ーマの難題である.しかし多女王性のヒメアリ類は年に何度も繁殖虫を生産する.また,トゲオ
オハリアリでは予備研究で女王(gamertgate)の巣内パトロール時間がコロニーサイズとともに
変化することが突き止められている(大コロニーで長いパトロール).いずれも反応を比較的短
期間に繰り返し確認しやすい.トゲオオハリアリでは,女王ワーカー双方とも,個体間の直接接
触で相手(繁殖者か否か)を認識する(Tsuji et al. 1999 Anim. Behav.58:337 ).女王との接
触が一定時間以上途絶えたワーカーは自ら繁殖すべく生理状態を切り替える(オーファン化)
(Tsuji et al.1998 Ethol.104:633).私は,オーファン化したワーカーに接触した女王がパト
ロール時間を延長させることが,裏にあるフィードバック機構(パトロールが行き届けばオーフ
ァン化率も低下)であるとの作業仮説を立てた(一部予備データあり).一方,大きなコロニー
をもつ種では,直接接触による情報ではなく,揮発や間接接触により巣内に拡散する例えば女王
物質のような情報が関与しているとも考える.古典的な未検証の仮説としては二酸化炭素や代謝
副産物の巣内蓄積量を情報源にしているとするものがある.これらの背景を踏まえ以下のステッ
プで研究を進める. (1) とくに大きなコロニーをもつ種で,繁殖虫生産だけでなくもっと単期間であらわれるコロニ
ーサイズ変化に相関した行動的変化を探すため,初年度に購入するビデオ撮影装置によりコロ
ニーサイズ依存性の個体のあらゆる細かい行動の変化を網羅的に探索検出する(1年目).ビ
デオデータの収集には実験補助に使う.予備実験データからとくに注目したいのは個体間距離
である。アリは室内巣に導入後しばらくすると種特異的な個体間距離をとり,これは暗黒下で
行われコロニーサイズによらない.したがって,より大きなコロニーでは広範囲に個体が分布
する.スペーシングに至るまでの個体間相互作用に特に注目したい. (2) コロニーサイズと相関のある各種刺激に対するアリの行動的反応を観察し,可能なフィード
バック機構の作業仮説を提案する.刺激の量を操作し,作業仮説の予測と同じ反応をアリが示
すか,実験的にテストする.例えば,代謝副産物の巣内蓄積がコロニーサイズ情報ならば,例
えば巣を定期的に洗浄することで,繁殖虫の生産を抑えられるかもしれない.トゲオオハリア
リでもしオーファン化ワーカーの存在が女王のパトロール行動を活性化する刺激なら,コロニ
ーサイズでなく単にオーファン化ワーカーの比率を操作することで,パトロール時間の延長が
生じるかも知れない.これらは作業仮説(とその予測)の1例である(1年目,2年目).な
おビデオ映像のデータ化作業には実験補助を使う. (3)刺激が化学物質であった場合(たとえばオーファン化ワーカーに特異的な体表物質など)は,
抽出し生物検定と同定に供す.また,フィードバック機構を数理モデル化し,実験により定量
的に検証する(2年目,3年目).最終年度の謝金は,実験補助とGC-MS 等による化学物質の
同定および合成の依頼に充てる.なお18年度には国際社会性昆虫学会大会(ワシントンDC)で
成果発表する. 萌芽研究 研究機関名
琉球大学
研究代表者氏名
辻 瑞樹
萌芽‐4
(金額単位:千円)
設備備品費の明細
多数の図書、資料を購入する場合は「西洋中世政治史関係図書」のように
消 耗 品 費 の 明 細
ある程度、図書、資料の内容が判明するような表現で記入してください。
品 名・仕 様
(数量 単価) (設置機関)
年度
119千円)(琉球大
119
タイムラップスVHSデッキ Just-Co.VZ-TL168(1 200千円)(琉球
大学) DVDレコーダ 松下 DMR-E330 (1 120千円)(琉球大学) 200
CCDビデオカメラ 保賀TMS-725 レンズ付(1
17 学) 金 額
439
計 19
計 年度
0
(記入に当たっては、萌芽研究 研究計画調書作成·記入要領を参照してください。)
国 内 旅 費
事 項
金 額
17 採集調査
200
資料収集
100
外 国 旅 費
事 項
金 額
0
計 200
200
100
500
計 150
150
100
400
飼育実験機具類 薬品類 AV関連(ビデオープ,DVD) 0
旅 費 等 の 明 細 計 200
200
100
500
飼育実験機具類 薬品類 AV関連(ビデオープ,DVD) 18 金 額
飼育実験機具類 薬品類 AV関連(ビデオープ,DVD) 120
計 品 名
謝 金
事 項
実験補助
等
計
そ の 他
金 額
事 項
金 額
462
実験装置作成依
100
頼
計
300
計
0
計
462
計
100
462
実験装置作成依
100
18 採集調査
100
資料収集
100
成果発表
100
計
300
400
成果発表
実験補助
頼
計
400
計
462
計
100
19 採集調査
100
資料収集
成果発表
計
実験補助
462
100
化学物質同
100
100
定依頼
300
0
計
0
研 究 分 担 者 に 分 担 金 を 配 分 す る 必 要 性 (公募要領8頁を参照)
計
562
100
試料分析依頼
計
100
研究代表者と異なる研究機関に所属する研究分担者に、例えば、遠隔地に所在する研究機関において実施する一定
規模の分担研究などのため、研究費の一部を配分し、当該研究分担者の所属研究機関において経理管理を行わないと
分担部分の研究実施が困難な理由を必ず記入してください。