第10話 なぜポンプは揚水できるのですか? なぜ、ポンプは水を低いところから高いところへ揚げることができるのです か? ポイント ポンプの中にある羽根車が回ることにより水にエネルギーを与え、ポンプのケーシング により水の速度エネルギーを圧力エネルギーに変換することによって揚水することがで きます。 かんがい排水事業で使われる主に使われているポンプは大きく分けて、遠心ポンプ(渦巻 ポンプ)(図1参照)、斜流ポンプ(図2参照)および軸流ポンプ(図3参照)の3種類があ ります。それぞれのポンプにより揚水する仕組みは多少異なっています。 図 2 横軸斜流ポンプの構造 図 1 立軸片吸込単段渦巻ポンプの構造 1.遠心ポンプの場合 ピザを作るとき中心を指で支えて生 地を駒のように回すと、生地は遠心力 で引っ張られて丸く伸びていきます。 ピザの生地を水とすれば、渦巻ポンプ の羽根車を回転させることによって、 図 3 横軸軸流ポンプの構造 ピザ生地と同じように羽根車の外周か ら水が高速で飛び出していくことにな ります(図 4 参照)。 ここで、エネルギー保存の法則又はベルヌーイの定理によれば、 エネルギー = 速度エネルギー + 位置エネルギー + 圧力エネルギー なる関係があるので、ケーシングに囲まれた水の速度エネルギー分が圧力エネルギーに変 わって水の圧力が上がり、揚水できることになります。 遠心力で水が高速で飛び出していく 図 4 渦巻ポンプの仕組 速度エネルギーが圧力エネルギーに変換 流 体 の 速 度 が速 い →圧力が低くなる 流 体 の 速 度 が遅 い 図 5 単独翼の場合 →圧力が高くなる 2.軸流ポンプの場合 飛行機の翼は図5に示すように湾曲しています。ここで翼の周りの空気の流れを考えると、 やはり、ベルヌーイの定理により、翼の背面の空気の流れは速くなり圧力は減少します。 羽根車出口の流速は遅くなる →圧力が高くなる 水の流れ方向 羽根車出口の流速は速くなる →圧力が低くなる 図 6 翼列の場合 図 7 軸流ポンプの羽根車 この翼が等間隔で一直線上に並べたものを翼列といいますが、この中を流体が通り抜ける 時にも翼の入口部と出口付近では速度が変化するので、飛行機の場合と同様に圧力が変化 します(図6参照)。 軸流ポンプの円筒状の羽根車(図 7 参照)を切って広げると翼列と同じようになり、水がこ の翼列を通り抜けるときの速度変化が圧力の変化となって揚水できるようになります。 3.斜流ポンプの場合 斜流ポンプは 図8に示すよう に遠心ポンプと 軸流ポンプの中 間に位置する形 式で、その特性は 図8に示すよう に比速度1が大き くなるにしたが って、遠心的な性 図 8 比速度と羽根車の形状 質から軸流的な 性質へと移行します。 4.ポンプの効率 以上述べたような仕組みでポンプにより揚水が可能となるのですが、ポンプの理論上の 揚程と実際の揚程には差があり、実揚程と理論揚程の比をポンプ効率といいます。ポンプ 効率は体積効率、機械効率、および水力効率から成り立っていますが、その中でも重要な 水力効率2を正確に予測することは難しく、所要の揚程と吐出量が確保されているかどうか は、ポンプの納品に際して実際に検査確認する必要があります。 1 ポンプの特性や羽根車の形状を示すもので、次式で表される。 NS = N ⋅ Q ここで、Ns:比速度、N:回転数(rpm)、Q:吐出量(m3/min)、H:全揚程(m)。 3 H 4 2水力効率を決めるのは、ポンプ内部の水頭損失で、①ポンプ吸込口から吐出口にわたる摩擦損 失、②羽根車、ケーシングなどを流れる時の広がり損失、曲がり損失、渦による損失など、③ 羽根車羽根入口、出口における衝撃損失、などがあります。
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