パワー MOSFET の基礎:ゲート電荷を理解し、それを利用して

VISHAY SILICONIX
パワー MOSFET
Application Note 608
パワー MOSFET の基礎:ゲート電荷を理解し、それを利用して
スイッチング性能を評価する
執筆者:Jess Brown
はじめに
これは、単独デバイスとして使用した場合と、スイッチン
グデバイスとしてスイッチモード電源(SMPS)に実装した
場合の両方について MOSFET の基本動作を説明する、一連
のアプリケーションノートの 2 つめです。1 つめのアプリ
ケーションノート (1) では、MOSFET とこのデバイスに関連
した用語について、定義や物理構造を含む基本事項を説明
しました。今回のアプリケーションノートでは、実用的な
アプリケーション回路で使用した場合の MOSFET のスイッ
チング動作についてさらに詳しく説明し、データシートに
記載されている最小限の情報に基づいて、読者や設計者が
アプリケーションにふさわしいデバイスを選択できるよう
にすることを目指します。このアプリケーションノートで
は、MOSFET のスイッチング性能を評価する手法をいくつ
か取り上げ、これらの手法を実際の結果に照らして比較し
ます。文中で使用するいくつかの定義は、アプリケーショ
ンノート AN605 から借用したものです。
注
(1)
電圧 VGS はこのデバイスのゲートにおける実際の電圧であ
り、デバイスのスイッチング動作を分析する際に検討する
必要があるのは、このポイントにほかなりません。
ステップ入力が VGS_APP で印加される場合、次の式が成り
立ちます。
静電容量の利用
MOSFET のスイッチング動作を基礎から理解するには、ま
ず外部的な影響を一切排除して、このデバイス単独で考え
るのが最善です。この条件下での MOSFET ゲートの等価回
路を図 1 に示します。この場合、ゲートは 1 つの内部ゲー
ト抵抗(Rg)と 2 つの入力コンデンサ(Cgs と Cgd)で構成
されています。この簡単な等価回路で、ステップゲート電
圧の出力電圧応答を取得することが可能です。
(1)
i g = i gs + i gd
(2)
dV GS
i gs = C gs --------------dt
(3)
また、VDS が一定であるため、次のようになります。
dV GS
i gs = C gd --------------dt
AN605
「パワーMOSFET の基礎」
:
「性能指数に関連した MOSFET
の特性を理解する」
、Doc. No. 71933
MOSFET 単独でのスイッチング
V GS_APP – V GS
i g = ---------------------------------------Rg
(4)
したがって、次の式が導かれます。
dVGS
dV GS
V GS_APP – V GS
---------------------------------------- = C gs -------------- + C gd -------------dt
dt
Rg
(5)
さらに、
dVGS
dt
---------------------------------------= -------------------------------------V GS_APP – V GS
( C gs + C gd )R g
(6)
となり、次の式が得られます。
VDS
Igd
–t
V GS = V GS_APP – ke ⁄ ( C gs + C gd )R g
Cgd
Ig
Rg
(8)
t =
0 で VGS = 0 V であるため、次のようになります。
VGS_APP
Cgs
VGS
(7)
–t
V GS = V GS_APP ( 1 – e ⁄ ( C gs + C gd )R g )
(9)
Igs
図 1 - Cgs、Cgd、Rg のみを
示した MOSFET ゲートの等価回路
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Revision: 02-Dec-04
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アプリケーションノート
t
– In ( V GS_APP – V GS ) = -------------------------------------- + k
( C gs + C gd )R g
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スイッチング性能を評価する
12
VGS standard
10
8
VGS (V)
この式から、実際のゲート電圧(VGS)がスレッショルド電
圧に達するまでの時間がわかります。説明のために、より
現実的な回路を図 2 に示します。この回路では、VDS と Cgd
の間に抵抗が追加されています。この例では、ステップ応
答が極めて複雑になり、式(式 10)を解くのが非常に難し
くなります。
VGS complex
6
4
VDS
2
Rgd
0
0
10
20
30
40
50
4
5
Time (ns)
Igd
Ig
Cgd
Rg
VGS_APP
VGS
VGS (V)
Cgs
Igs
図 2 - Cgs、Cgd、Rg に加え、Rgd を
示した MOSFET の等価回路
V GS_APP
V GS = V GS_APP – ----------------------- ( A – B )
2 k
(10)
t ( CR + k )
B =  ( CR k – k )e – ------------------------------------------

2C gd R gd C gs R g
CR k = C gs R g + C gd R g + C gd R gd
アプリケーションノート
また、k は次のように表されます。
2
k = C gs R g + 2C gs R g C gd – 2C gd R gd C gs R g
2
2
2
VGS complex
0
1
2
3
図 3 - 式 9(標準的な式)と式 10(複雑な式)
をプロットしたグラフ
t ( CR – k )
A =  ( CR k + k )e – ------------------------------------------

2C gd R gd C gs R g
2
VGS standard
Time (ns)
A と B は、それぞれ次のとおりです。
2
2.0
1.8
1.6
1.4
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0
2
2
+ C gd R g + 2C gd R g R gd + C gd R gd
図 3 の式 9 と式 10 のプロットは、ゲート電圧が 1 V のス
レッショルド電圧に達するまでの時間に約 1 ns の違いしか
ないことを示しています。したがって、あまり複雑でない
手法を採用しても、ゲート過渡電圧の確度に有意な影響を
与えることはないという議論があり得ます。ただし、スイッ
チング時間の計算値はいずれも MOSFET で実際に発生する
過渡事象よりも短くなることが指摘されています。
上記のとおり、MOSFET に寄生要素を追加して考えると、
そうした現実的な回路についてこれらの式を人手で扱うの
はますます難しくなります。そのため、現実的な回路を分
析する手法が必要です。これらの 2 次(寄生)要因を無視
すると、MOSFET のターンオンおよびターンオフ時間の式
を導くことが可能です。これは式 11 ∼ 16 で得られ、得ら
れる波形を図 4 と図 5 に示しています。これらの式は B. J.
Baliga (1) によって考案された式に基づいています。ここで、
Rg は内部ゲート抵抗、Rg_app は外部ゲート抵抗、Vth は
MOSFET のスレッショルド電圧、
VGP はゲートプラトー電圧
です。
注
(1)
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2
B. J. Baliga, Power Semiconductor Devices
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スイッチング性能を評価する




1
t 1 = ( R g + R g_app ) ( C gs + C gd )In  ---------------------------------
V th 

 1 – ---------------------V GS_APP
(11)




1
t 1 = ( R g + R g_app ) ( C gs + C gd )In  ---------------------------------
V GP 

 1 – ---------------------V GS_APP
(12)
この場合、t4 と t6 は正確に計算できますが、解くのがより
難しいのは t5 の式です。この時間中に VDS が変化し、それ
に伴って Cgs も変化するためです。したがって、何らかの
手法で、動的な Cgd を使わずに t3 と t5 を計算する必要があ
ります。
IDS
VDS
( V DS – V F ) ( R g + R g_app )C gd
t 3 = ---------------------------------------------------------------------------V GS_APP – V GP
(13)
VF は全負荷電流を流したときの MOSFET 両端の電圧であ
り、VDS はそれをオフにしたときの MOSFET 両端の電圧で
す。
VGS
ここから、データシート値を使用すると正確な t1 と t2 が得
られますが、Cgd が VDS とともに変化するため、t3 を計算す
るのは困難です。
t4
t5
t6
図 5 - MOSFET のターンオフ過渡事象
IDS
ゲート電荷を使用したスイッチング時間の算定
図 6 のゲート電荷の波形 (1) を見ると、Qgs は原点から Miller
プラトーの始点(VGP)までの電荷、Qgd は VGP からプラ
トーの終点までの電荷、Qg は原点から、駆動電圧 VGS がデ
バイスの実際のゲート電圧と等しくなる曲線上の点までの
電荷として、それぞれ定義されます。
VGS
VGP
注
(1)
Vth
Gate Charge Principles and Usage, Power Electronics Europe.
Issue 3, 2002. Technology.
3
t3
t2
図 4 - MOSFET のターンオン過渡事象
同じ原理をターンオフに適用すると、スイッチング過渡事
象の式が次のように与えられます。
(14)
V DS – V F
t 4 = ( R g + R g_app )C gd  ------------------------
 V GP 
(15)
V GP
t 6 = ( R g + R g_app ) ( C gd + C gs )  -----------
 V th 
(16)
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Qg
VGS
1
Qgs
Qgd
2
VGP
Miller Plateau
Gate Charge (nC)
図 6 - ゲート電荷の降伏を示す概略図
アプリケーションノート
V GS_APP
t 4 = ( R g + R g_app ) ( C gd + C gs )In  -----------------------
 V GP 
Gate-Source Voltage (V)
t1
VDS
t2 中の VGS の立ち上がり(図 4)は、Cgs と Cgd を帯電させ
ると発生します。この時間中は VDS が変化しないため、VDS
の関数として変化する Cgd と Cds も比較的一定にとどまり
ます。この時点では、Cgs が概して Cgd よりも大きいため、
駆動電流の大部分が Cgd よりも Cgs に流れ込みます。Cgd と
Cds を流れるこの電流は、静電容量と電圧との積の時間微分
に依存します。そのため、ゲート電荷は Qgs であると仮定
できます。
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波形の次の部分は Miller プラトーです。一般に、ゲート電荷
のグラフがプラトー領域に入る点は、ピーク電流のピーク
値と一致すると見なされています。しかし、このゲート電
荷の屈曲点は、実際には時間に対する積 (1)(CgdVGD)に依
存します。したがって、小さな値のドレイン電流と大きな
値の出力インピーダンスがある場合、実際には左の屈曲点
が現れた後に IDS がその最大値に達することがあります。し
かし、この電流の最大値は屈曲点に近いと仮定でき、この
アプリケーションノート全体を通じて、屈曲点のゲート電
圧は負荷電流 IDS に対応すると仮定されています。
Millerプラトーの傾きは一般にゼロまたはほぼゼロであるこ
とが知られていますが、この勾配は Cgd と Cgs 間における
駆動電流の分割に依存します。傾きがゼロでなければ、駆
動電流の一部が Cgs に流れ込んでいます。傾きがゼロであ
れば、駆動電流すべてが Cgd に流れ込んでいます。こうし
た状態になるのは、CgdVGD の積が急速に増大し、駆動電流
すべてが Cgd 両端の電圧の変化に対応するために使用され
ている場合です。したがって、Qgd は、デバイスが Miller プ
ラトーにある間にゲートに注入された電荷です。
t ir = ( R g + R g_app ) ( C iss
(17)
VDS
の
立
ち下がり時間(tvf = t3)に Cgd の値を使用するのは困難で
す。そ の た め、ゲ ー ト 電 荷 の デ ー タ シ ー ト 値 を 使 用 し
(Qgd_d)、ドレイン接続における電圧振幅(VDS_D - VF_D)で
除算すれば、実質的に過渡事象のデータシート値に基づい
た Cgd の値が得られます。
Q gd_d ( V DS – V F ) ( R g + R g_app )
t vf = ---------------------------------------------------------------------------------------------------------I DS
( V DS_D – V F_D )  V GS_APP –  V th + -------- 


g fs  
(18)
同
様に、ターンオフの状態変化について、電圧の立ち上がり
時間(tvr = t5)は次の式で表されます。
Q gd_d ( V DS – V F ) ( R g + R g_app )
t vr = ---------------------------------------------------------------------------------I DS
( V DS_D – V F_D )  V th + --------

g fs 
(19)
ま
た、
電流の立ち下がり時間(tif = t6)は次のとおりです。
注
Ibid.
ゲート電荷と静電容量を組み合わせたスイッチング時間の
計算
このアプリケーションノートの目的は、データシートの値
を使用して MOSFET のスイッチング時間を予測し、それに
よってスイッチング損失の見積もりを可能にすることで
す。ターンオン損失が発生するのは t1 の終点から t3 の終点
までの時間であるため、この時間を計算する必要がありま
す(図 4)。式 11 と式 12 を組み合わせると、電流の立ち上
がり時間を計算することが可能であり(tir = t2 - t1)、この時
間中は VDS が一定にとどまるため、適切な VDS 値で Ciss の
データシート定格値を使用することが可能です。
伝達
特性が一定であると仮定すると、VGP を Vth + IDS/gfs の代わ
りに使用できます。したがって、次の式が得られます。
アプリケーションノート
)
g fs ( V GS_APP – V th )
x In  -----------------------------------------------------------------
 g fs ( V GS_APP – V th ) – I DS
プラトーが終わると(VDS がそのオン状態の値に達したと
き)、Cgd が再び一定になり、電流の大部分が再び Cgs に流
れ込むことに注意する必要があります。Cgd がはるかに大き
く、より Cgs に近いため、勾配は第 1 の区間(t2)ほど急で
はありません。
(1)
at V DS
I DS
  V th + ------- 

g fs  

at V DS
t if = ( R g + R g_app ) ( C iss
)In  -----------------------------
V th




(20)
式とデータシート値の比較
データシートで与えられているターンオン時間とターンオ
フ時間の定義を図 7 に示します。これらの定義は前述の式
と同等と見なすことができ、次の関係が成立します。
t d ( on ) ≈ t 1 + t ir
(21)
t r ≈ t vf
(22)
t d ( off ) ≈ t 4
(23)
t f ≈ t vr
(24)
tr
V
VDS
td(off)
VGS
10 %
10 %
10 %
10 %
td(on)
10%
10 %
tf
t
図 7 - ターンオン時間とターンオフ時間の
定義を示す概略図
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スイッチング性能を評価する
表 1 - スイッチング過渡事象の検討例:Si4892DY
計算
最小値
標準値
Rg
0.6
Rg_app
Ciss(VDS 時)
5.4
620
0.8
6
775
6.6
930
Ciss(0 V 時)
880
1100
1320
gfs
27
VGS_APP
21.6
9
32.4
11
Vth
0.8
1.8
IDS
0.9
1.4
1
1.1
A
Qgd_d
2.8
4.2
nC
VDS_D
13.5
3.5
15
16.5
V
IDS_D
11.2
12.4
13.6
A
RDS(on)
0.008
0.01
0.012
W
VF
0.0072
0.01
0.0132
0.09
0.16
VF_D
10
最大値
1
VDS
13.5
0.12
15
t1(式 11)
0.28
0.79
1.6
tir(式 17)
0.01
0.02
0.05
VDS = 5 V、IDS = 5 A、VGS_APP = 5 V、Rg_app = 10 W
単位
W
pF
S
V
図 8 - ターンオンスイッチング過渡時
の電流と電圧の実測値
V
16.5
tvf(式 18)
1.4
2.8
t4(式 14)
8.4
14.5
5.5
26
tvr(式 19)
7.5
16.7
47.7
tif(式 20)
0.06
0.14
0.44
td(on)
0.29
0.81
1.7
tr
1.4
2.8
td(off)
8.4
14.5
5.5
26
tf
7.5
16.7
47.7
td(on)
-
10
20
tr
-
11
20
td(off)
-
24
50
tf
-
10
20
ns
データシート
ns
式と実測したスイッチング過渡事象の比較
スイッチング過渡事象のデータシート値は抵抗負荷を使用
して測定したもので、実用的な回路を真に表しているとは
いえません。その結果、デバイスは前述の理想的な動作の
様には動きません。そのため、実際のスイッチング波形を
測定し、それを図 8 と図 9 に示しています。これらのスイッ
チング過渡事象は、Si4892DY をバックコンバータ構成のハ
イサイドに使用した場合です。回路パラメータは次のとお
りです。
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表 2 - 実測値と計算値の比較
計算
最小値
標準値
最大値
tir(式 17)
0.18
0.44
1.1
tvf(式 18)
1.6
3.7
tvr(式 19)
3.5
7.9
8.4
22
tif(式 20)
0.95
1.0
1.5
16
20
24
tvf
8.8
11
13.2
tvr
10.4
28
13
15.6
42
単位
ns
実測
tir
tif
35
ns
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アプリケーションノート
スイッチング過渡事象の各最小値は適切なパラメータ値を
使用して計算しました。これによって、最短のスイッチン
グ過渡値が算出されました。場合によっては、スイッチン
グ過渡事象の最小値の計算にパラメータの最大値を使用
し、スイッチング過渡事象の最大値の計算にパラメータの
最小値を使用しました。
図 9 - ターンオフスイッチング過渡時
の電流と電圧の実測値
Application Note 608
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パワー MOSFET の基礎:ゲート電荷を理解し、それを利用して
スイッチング性能を評価する
駆動回路による制限
表 2 は、計算値と過渡事象の実測値を比較したものです。電
圧過渡事象については比較的近い値であることがわかりま
す。しかし、MOSFET のスイッチング時間は寄生要素だけ
でなく、駆動回路からも影響を受けます。前述の条件下で
は、ゲート回路によってパワー MOSFET のスイッチング性
能が制限されることはないと仮定しています。たとえば、
MOSFETのPチャネルおよびNチャネルドライバを使用した
場合、ゲートへの理論上の電流がドライバで供給可能な電
流よりも大きくなる可能性があります。MOSFET ドライバ
を実現する方法はいくつかありますが、それはこのアプリ
ケーションノートの検討範囲を超える話題です。文中で説
明した式を使用すれば、複雑な式やモデル、高価なシミュ
レーションソフトウェアを操作しなくても、スイッチング
時間の評価と、したがってスイッチング損失の見積もりを
行うことができます。
式 25 を VGS から差し引き、t について解くと、過渡事象の
tir が次のように得られます。
t ir = ( R g + R g_app )C iss at VDS
( V GS_APP – V th )g fs L 
 (V
 GS_APP – V th ) + -------------------------------------------------------------
( R g + R g_app )C iss at V DS

x In  ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------
( V GS_APP – V GP )






(26)
同じ原理を tif に適用すると、電流過渡事象について次の結
果が得られます。
t if = ( R g + R g_app )C iss at V DS
g fs L

 V  1 + ------------------------------------------------------------
 GP 
( R g + R g_app )C iss at V DS  

x In  -----------------------------------------------------------------------------------------
V th






重大な不一致は、電流過渡事象の計算値と実測値の間に見
られます。これらの計算値は、実際の過渡事象よりも 1 桁
小さくなっています。そのため、電流の立ち上がり時間と
立ち下がり時間については、さらに検討する必要がありま
す。以下では、これについて説明します。
(27)
電流過渡事象
計算値と実測値の間に不一致が生じるのは、計算は理想的
な状況下で行われているためです。式に取り入れることが
できる 1 つの重要なパラメータは、MOSFET のパッケージ
インダクタンスです。これは電流過渡事象を緩慢にし、い
くつかの仮定を置けば、比較的簡単に考慮に入れることが
できます。
負荷電流は通常、ゲート電流よりもはるかに大きいため、
パッケージインダクタンスを流れる電流すべてがIDS になる
と考えられます。その結果、ターンオン時の MOSFET の
パッケージインダクタンス両端の電圧は、次の式で表すこ
とができます。
( V GS_APP – V th )g fs L
V L = ------------------------------------------------------------( R g + R g_app )C iss at V DS
–t
アプリケーションノート
計算
tir(式 26)
(25)
これは電流過渡事象から生じる電圧であり、ゲート電圧か
ら差し引かれ、したがって電流過渡事象を緩慢にします。
最小値
標準値
最大値
4.7
8.1
13.2
tvf(式 18)
1.6
3.7
tvr(式 19)
3.5
7.9
8.4
22
tif(式 27)
8.1
17.9
32.8
16
20
24
tvf
8.8
11
13.2
tvr
10.4
28
13
15.6
42
単位
ns
実測
tir
tif
x e ⁄ ( R g + R g_app ) ( C iss at VDS )
www.vishay.com
6
表 3 - パッケージインダクタンスを考慮に入れた実
測値と計算値の比較
35
ns
まとめ
このアプリケーションノートでは、単独で評価した場合の
パワー MOSFET の立ち上がり時間と立ち下がり時間につい
て、有効な概算法を示しています。導出した式にデータシー
ト値を使用すれば、MOSFET のスイッチング性能やスイッ
チング損失の適度な指標が得られます。ただし、図 3 に示
したとおり、理想的なスイッチング過渡事象は必ず実際よ
りも短くなるため、現実的な結果を導くには、常にデータ
シートの最大パラメータを使用する必要があります。
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