日商簿記 2 級関連教材 愛読者の皆様へ 平素よりご愛顧頂きまして誠に

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日商簿記 2 級関連教材 愛読者の皆様へ
平素よりご愛顧頂きまして誠にありがとうございます。
日商簿記検定出題区分表の改定により、弊社から出版しております『スラスラできる日商簿記 2 級 商業簿記』
、
『日商簿記 2 級商業簿記ステップアップ問題集』、『日商簿記 2 級仕訳問題集』『仕訳マスター 2 級編』に影響を及
ぼします。
つきましては、当該改定に伴う追加項目などを下記に整理しましたので、ご確認ください。
【注】大原書籍サイトにて販売しております上記教材の最新版は、下記内容を反映したものとなっております。
1 . クレジット取引について
クレジット取引とは、商品をクレジット払いの条件で販売することをいいます。この場合、通常の掛販売
と区別するためクレジット売掛金勘定にて処理します。なお、後日、信販会社への手数料が差引かれた手取
額を信販会社から受取ることになります。
● 例題- 1 ●
次の取引の仕訳を行いなさい。
(1) 売価180,000円の商品をクレジット払いの条件で販売した。なお、信販会社へのクレジット手数料
(販売代金の 1 %)は、商品販売時に認識している。
(クレジット売掛金)
178,200
(支 払 手 数 料)
1,800
(売
上)
180,000
(2) 信販会社から手数料が差引かれた手取額が当座預金口座に入金された。
(当
座
預
金)
178,200
(クレジット売掛金)
178,200
2 . 販売のつど売上原価勘定に振替える方法について
商品売買の記帳方法には、 3 分法(三分割法)や分記法のほか、販売のつど売上原価勘定に振替える方法
(売上原価対立法)もあります。この場合、商品勘定、売上勘定および売上原価勘定にて処理します。
● 例題- 2 ●
次の取引の仕訳を行いなさい。なお、商品販売の会計処理は、販売のつど売上原価勘定に振替える方
法によること。
(1) 商品240,000円を仕入れ、代金は掛とした。
(商
品)
240,000
(買
掛
金)
240,000
(2) 上記商品のうち200,000円を250,000円で売上げ、代金は掛とした。
(売
(売
掛
上
原
金)
250,000
(売
上)
250,000
価)
200,000
(商
品)
200,000
3 . 固定資産の割賦購入について
備品などの固定資産を購入する際に、代金の支払いを分割して行う場合があり、現金購入価額と割賦金の
支払総額との差額が利息となります。固定資産を割賦購入したときの会計処理として、利息部分を区分する
方法と、利息部分を区分しない方法がありますが、ここでは、利息部分を区分する方法を紹介します。なお
分割払いに伴い約束手形を振出した場合は、主たる営業取引以外の取引から生じた手形債務のため営業外支
払手形勘定にて処理します。
● 例題- 3 ●
次の取引の仕訳を行いなさい。
(1) 現金購入価額4,000,000円の備品を4,400,000円で割賦購入した。代金は、 3 ヵ月ごとに期日の到
来する額面金額1,100,000円の約束手形 4 枚を振出した。
(備
(前
品) 4,000,000
払
利
息)
(営業外支払手形) 4,400,000
400,000
(2) 第 1 回目の手形代金1,100,000円が当座預金口座から引落とされた。なお、利息の計算は定額法に
よる。
(営業外支払手形) 1,100,000
(当
座
預
金) 1,100,000
(支
(前
払
利
息)
払
利
息)
100,000
100,000
4 . 収益・費用の認識基準について
商品売買における収益(売上)は、収入に基づいた金額で商品等の販売を行ったときに計上しますが、商
品の種類や性質、その販売に係る契約の内容等に応じて、販売の事実を認識する時点を選択します。主な収
益認識基準としては、下記の基準があります。
出
荷
基
準……商品等を出荷した日に収益を認識
引
渡
基
準……商品等を得意先に引渡した日に収益を認識
検
収
基
準……得意先による検収が完了した日に収益を認識
なお、輸出を伴う場合には、船積基準、通関基準等があります。
また、費用は、支出に基づいた金額を、その発生した期間に正しく計上します。
5 . 役務収益・役務費用について
商品売買業以外のサービス業を営む企業など、サービス(役務)の提供による対価のうち、すでに役務提
供が完了した部分については、役務収益、役務原価などの科目をもって処理します。
● 例題- 4 ●
次の取引の仕訳を行いなさい。
(1) 当社は建築物の設計等を請負っており、請負価額800,000円にて建物設計の注文を引受け、代金の
一部として300,000円が当座預金口座に振込まれた。
(当
座
預
金)
300,000
(前
受
金)
300,000
(2) 従業員に対する給料700,000円および出張等に関する旅費交通費110,000円を現金にて支払った。
(給
料)
700,000
(旅 費 交 通 費)
110,000
(現
金)
810,000
(3) 受注した建物の設計を行い、給料のうち490,000円、旅費交通費110,000円が当該設計に直接要し
たものと判明したため、仕掛品勘定に振替えた。
(仕
掛
品)
600,000
(給
料)
490,000
(旅 費 交 通 費)
110,000
(4) 建物の設計図が完成したため、注文主に引渡し、請負価額800,000円のうち500,000円が当座預金
口座に振込まれた。役務収益を計上するとともに、対応する役務原価を仕掛品勘定より振替える。
(前
受
金)
300,000
(当
座
預
金)
500,000
(役
務
原
価)
600,000
(役
(仕
務
収
掛
益)
800,000
品)
600,000
6 . 未収配当金について
市場価格のある株式については、各銘柄の配当落ち日(配当権利付き最終売買日の翌日)をもって、前回
の配当実績または公表されている 1 株当たり予想配当額に基づいて未収配当金を見積計上します。これは、
配当落ち日を過ぎると、配当金に相当する金額だけ株価が下落するため、この株価の下落を相殺するために
未収配当金を見積計上します。これにより、貸借対照表価額がより実態に近い合理的な金額となります。
● 例題- 5 ●
次の資料に基づいて、平成×3年 3 月28日の仕訳を行いなさい。なお、当会計期間は平成×2年 4 月 1 日
から平成×3年 3 月31日の 1 年間である。
(仕訳の単位:千円)
当社は、当期よりA社株式を売買目的有価証券として保有している。当該株式の配当落ち日(配当権
利付き最終売買日の翌日)は平成×3年 3 月28日である。A社から公表されている予想配当額に基づき、
当社に対する配当額を2,000千円と見積もった。
(未 収 配 当 金)
2,000
(受 取 配 当 金)
2,000
7 . 月次決算による場合の処理について
通常、売上原価の算定、減価償却、引当金の設定等は決算整理事項として年度単位で把握し、会計処理を
行っています。しかし、実務上では損益管理の観点から月次で取引を把握することで、経営活動に役立たせ
ている場合があります。
具体的には、商品売買については販売のつど売上原価勘定に振替える方法の採用や月次での売上原価の把
握が該当します。また、減価償却については月次における減価償却費の予定計上、引当金についても繰入額
の月次における予定計上が該当します。ただし、月次処理による各項目の累計額が、年度決算時の処理額と
異なれば、その差異を修正しなければならないことに留意する必要があります。
● 例題- 6 ●
次の決算整理仕訳を行いなさい。
(決算年 1 回 3 月31日)
決算にあたり、建物の減価償却(耐用年数:25年、残存価額:ゼロ、定額法)を行う。決算整理前
残高試算表における建物、建物減価償却累計額および減価償却費の各勘定残高は、それぞれ100,000
円、43,630円、3,630円である。
なお、当社の減価償却費についての処理方法は、固定資産の期首の残高を基礎として330円を、 4 月
から 2 月までの11ヵ月間に毎月見積計上してきており、これらの金額は決算整理前残高試算表の減価
償却費と建物減価償却累計額に含まれている。
(減 価 償 却 費)
(1) 年償却額
370
(建物減価償却累計額)
100,000円÷25年=4,000円
(2) 年度決算修正額
4,000円-(330円×11カ月)=370円
370
8 . ソフトウェアについて
ソフトウェアとは、コンピュータを機能させるよう指令を組合わせて表現したプログラム等をいいます。
自社利用目的のソフトウェアで将来の収益獲得または費用削減が確実と認められる場合には、その取得原
価を無形固定資産としてソフトウェア勘定にて処理します。無形固定資産として計上された自社利用目的の
ソフトウェアについては、決算時に見込利用可能期間にわたり、定額法等の方法によって減価償却を行い、
この償却額はソフトウェア償却勘定にて処理するとともに、ソフトウェア勘定から減額します。
● 例題- 7 ●
次の取引の仕訳を行いなさい。
(1) 当期首に自社利用目的として、ソフトウェアを500,000円で取得し、代金はこのソフトウェアの導
入に必要な設定作業費用10,000円とあわせて小切手を振出して支払った。
(ソ フ ト ウ ェ ア)
510,000
(当
座
預
金)
510,000
(2) 決算を迎えたため、上記(1)のソフトウェアを見込利用可能期間( 5 年)に基づく定額法により減
価償却を行う。
(ソフトウェア償却)
102,000
(ソ フ ト ウ ェ ア)
102,000
9 . 貸倒引当金の「個別評価と一括評価」、「営業債権および営業外債権に対する貸倒引当金繰入額の損益計算書における区分」について
貸倒見積高の算定方法には、大別して一括評価法と個別評価法があります。一括評価法とは、債権の総額
に一定率を乗じて貸倒見積高を算定する方法をいい、具体的には貸倒実績率法(実績法)などがあります。
個別評価法とは、個々の債権ごとに債務者の財政状態や支払能力等を勘案して貸倒見積高を算定する方法を
いい、具体的には財務内容評価法などがあります。財務内容評価法では、債権額から担保の処分見込額およ
び保証による回収見込額を減額し、その残額について債務者の財政状態および経営成績を考慮して貸倒見積
高を算定します。貸倒引当金繰入は異常なものを除き、営業債権(売上債権・営業活動上の貸付金など)に
対する繰入額は、損益計算書上、販売費及び一般管理費に表示します。営業外債権(営業債権以外の貸付金
など)に対する繰入額は、損益計算書上、営業外費用に表示します。
● 例題- 8 ●
次の資料に基づいて、貸倒引当金について差額補充法により決算整理仕訳を行いなさい。
(1) 長期貸付金2,000,000円は全額A社に対するものである。なお、同社より長期貸付金の担保として
土地の提供を受けている。この土地の処分見込額は1,400,000円であり、A社の支払能力を評価した
結果、残額のうち60%は回収が見込まれる。決算整理前残高試算表の貸倒引当金勘定残高は20,000
円である。
(貸倒引当金繰入)
220,000
(貸 倒 引 当 金)
220,000
(2,000,000円-1,400,000円)×( 1 -60%)-20,000円=220,000円
10. 株主資本の計数の変動について
株主資本の計数の変動とは、会社財産の流出または流入を伴わない株主資本の各項目間における振替えお
よび剰余金の項目内における振替えをいいます。株主資本の計数の変動には次のようなものがあります。
(1) 資本金から準備金(資本準備金に限る)への振替え
(2) 資本金から剰余金(その他資本剰余金に限る)への振替え
(3) 準備金から資本金への振替え
(4) 準備金から剰余金への振替え(資本準備金は、その他資本剰余金へ
利益準備金は、その他利益剰余金
への振替えに限る)
(5) 剰余金から資本金への振替え
(6) 剰余金から準備金への振替え(その他資本剰余金は、資本準備金へ
への振替えに限る)
その他利益剰余金は、利益準備金
● 例題- 9 ●
次の取引の仕訳を行いなさい。
(1) 大原株式会社は、株主総会の特別決議を経て、その後債権者保護手続きが完了したので、資本金
1,000,000円を資本準備金へ振替えることとした。
(資
本
金) 1,000,000
(資 本 準 備 金) 1,000,000
11. 電子記録債権・電子記録債務について
電子記録債権とは、その発生または譲渡について、電子債権記録機関が作成する記録原簿への記録事項の
記録を要件とする金銭債権であり、取引の安全を確保し事業者の資金調達の円滑化などを図る観点から、従
来の売上債権や手形債権とは異なる新しい債権の類型として「電子記録債権法」により制度化されたもので
す。電子記録債権(債務)は、手形債権の代替として機能することが想定されており、手形債権(債務)に
準じて会計処理を行い、電子記録債権勘定、電子記録債務勘定として処理します。なお、譲渡記録により電
子記録債権を他人に譲渡した場合の譲渡損は、電子記録債権売却損勘定として処理します。
● 例題-10 ●
次の取引の仕訳を行いなさい。
(1) C社は、D社に対する売掛金600,000円について、取引銀行を通じて発生記録の請求を行い、D社
の承諾を得て電子記録に係る債権が生じた。
(電 子 記 録 債 権)
600,000
(売
掛
金)
600,000
(2) C社は譲渡記録により、電子記録債権600,000円のうち300,000円を現金298,000円と引換えにE社
に譲渡した。
(現
金)
298,000
(電子記録債権売却損)
2,000
(電 子 記 録 債 権)
300,000
12. 子会社株式・関連会社株式・その他有価証券について
子会社株式とは、他の会社に対する議決権の所有割合が100分の50を超えているなど、他の会社を支配す
る目的で保有する株式をいいます。関連会社株式とは、子会社株式を除く他の会社に対する議決権の所有割
合が100分の20以上など、他の会社への影響力を行使する目的で保有する株式をいいます。その他有価証券
は、売買目的有価証券、満期保有目的債券、子会社株式および関連会社株式のいずれにも分類できない有価
証券をいいます。
子会社株式または関連会社株式を取得した場合には、取得原価をもって子会社株式勘定または関連会社株
式勘定として処理します。所有する子会社株式および関連会社株式は、取得原価をもって貸借対照表に記載
します。したがって、決算整理仕訳は不要です。子会社株式および関連会社株式は、貸借対照表上、関係会
社株式として、固定資産の投資その他の資産に表示します。
その他有価証券を取得した場合には、その他有価証券勘定として処理します。所有するその他有価証券は
時価をもって貸借対照表に記載します。したがって、決算において、その他有価証券を時価に修正すること
になります。この際に生じる評価差額は、全部純資産直入法により処理します。全部純資産直入法とは、そ
の他有価証券の評価差額の合計額を純資産の部に計上する方法をいい、その他有価証券の評価差額は、その
他有価証券評価差額金として処理します。なお、その他有価証券の評価差額は、洗替方式のみ認められてい
ます。その他有価証券は、貸借対照表上、満期が決算日の翌日から 1 年以内に到来する債券の場合には、有
価証券として流動資産に表示し、それ以外は、投資有価証券として固定資産の投資その他の資産に表示しま
す。また、評価差額は、その他有価証券評価差額金として、純資産の部の評価・換算差額等に表示します。
● 例題-11 ●
次の取引の仕訳を行いなさい。
(1) 当期において、E社株式200,000円(長期保有目的)を小切手を振出して取得した。
(その他有価証券)
200,000
(当
座
預
金)
200,000
(2) 決算日におけるE社株式の時価は220,000円であり、全部純資産直入法により評価替えを行う。
(その他有価証券)
20,000
(その他有価証券評価差額金)
20,000
13. 許容勘定科目について
標準・許容勘定科目表の改定により未収金勘定が採点上許容される勘定科目となり、未収入金勘定が標準
的な勘定科目とされました。
14. 手形取引について
手形法上、手形の種類としては約束手形と為替手形の 2 種類が存在していますが、実際に流通しているの
は圧倒的に約束手形であり、為替手形はほとんど無いのが現状であることから、為替手形を使用した取引が
試験範囲から除外されました。
15. その他の削除・移行項目
上記「為替手形」の他に、下記の項目が削除および他の級へ移行されました。
○「仕訳帳の分割(複数仕訳帳制)
」が削除
○「仕入・売上伝票( 5 伝票制)
」が削除
○「大陸式決算法」が削除
○「荷為替手形」が 1 級へ移行
○「特殊商品売買」が 1 級へ移行
○「繰延資産」が 1 級へ移行
○「社債」が 1 級へ移行
○ 本支店会計における「未達事項の整理」が削除、
「内部利益の除去」が 1 級へ移行
(注) 本支店会計における決算手続(財務諸表の合併など)は、 2 級の出題範囲のままです。
2016年 3 月
大原出版株式会社
出版事業部