平成27年11月21日開催 平成27年度人権啓発活動地方委託事業 栗原市男女共同参画講演会 演題 男女共同参画で地域力UP! 講師 萩原 なつ子 氏 立教大学社会学部 大学院21世紀社会デザイン研究科 教授 講師の萩原氏は、平成13年から2年間、宮城県環境生活部次長の経歴を持ち、現在は、立教大学 大学院21世紀社会デザイン研究科の教授としてジェンダーを中心に研究されており、誰にとっても 暮らしやすい男女共同参画の視点からみた地域づくりについて、豊富な知識や経験を活かした講話を いただきました。 ○固定観念から自由になる 動物園は、檻の中にいる動物を私達が見ます。しかし、シンガポール動物園は檻がないので、動物 達が私達を見ています。固定観念にしばられていると、びっくりします。すべての動物を檻から出す わけにはいきませんが、私達も動物の一員として、彼らと一緒に暮らしていることがわかります。 ○平成27年度男女共同参画週間キャッチフレーズ「地域力×女性力=無限大の未来」 今年度、キャッチフレーズの審査員として選考しました。地域力をアップするためには、やはり女 性の力が必要で、そこから無限大の未来があります。今まで女性が活躍していなかったわけでも、 眠っていたわけでもなく、ずっと活躍してきました。しかし、なかなか施策の中に反映されないこと が長く続いていたので、今年は思い切って女性力を出しました。 ○ダイバーシティ(多様性) 女性の視点とは、社会において十分に活かされていない、女性の経験に基づく視点です。今まで活 かされていなかった、「多様な考えや異なった視点を大事にする」という意味です。いろいろなニー ズに応じられるような物を作ったり、サービスを提供するには、多様な人が作る側にいなければなり ません。地域にとっては、どういう施策を展開するのかが非常に重要で、特定のグループの人達が 作ってしまうと、いろいろなニーズに対応できないということになります。 平成27年11月21日開催 平成27年度人権啓発活動地方委託事業 ○Building back the better! ビルディング・バッグ・ザ・ベター、多様な主体が協力して、これまでの社会よりもさらに良い社 会の構築を目指そうということです。 震災時や復興時に、いろいろな問題が浮かび上がりました。復興や再生をするときに、それまでと 同じやり方をしてしまうと、また同じ問題にぶち当たってしまいます。一度浮き上がったいろいろな 問題点を見直して、良いものは残し、変えた方が良いものは変えていきましょうという意味です。男 性と女性、LGBT(性的少数者)など多様な性を持った方、外国の方も含めて、協力して地域をつ くりましょうという意味も含まれます。 ○なぜ、今、地域活性化なのか?女性活躍なのか? あちらこちらで人口、少子高齢化、経済、雇用、安全などの問題があり、地域格差の拡大や、※消 滅可能性都市などと言われています。災害に強い地域、防災と男女共同参画など、いろいろな面で女 性が活躍したり、地域みんなで盛り立てていかなければならない方向になってきました。 今、言われているのが「新しい公共、共助社会」です。市民が当事者意識を持ち、行動することに よって、人々の絆やつながりを紡ぎだす新しい社会を作ることです。地域の主体は住民です。住民が 「この地域を元気にしていく」と思わない限り、元気になりません。だから、「行政だけに頼らない で」ということです。 ※消滅可能性都市…少子化や人口移動に歯止めがかからず、将来に消滅する可能性がある自治体。 日本創成会議が全国の市区町村の半分にあたる896自治体を指定して、早急な人口対策を促した。 ○心の合併への道 市町村合併によって、元気になったところ、そうでないところなどがありますが、岐阜県恵那市の 取組を紹介します。 7市町村の合併後、地域がなかなかつながらず、危機感を持った市役所の職員から映画を作ろうと いうことになり、住民参加型で5年かけて作りました。脚本作りから住民が参加し、できあがった映 画もすばらしいのですが、そのプロセスで一人一人がつながり、地域と地域がつながり、その中から カップルが生まれるなど、プロセスの中でいろいろなことをやっていくことも、地域づくりの重要な ところだと思います。 ○新しい公共とは 新しい公共とは、どんな状況でもすべての人に居場所と出 番のある社会、みんなが人に役立つ喜びを大切にする社会、 多様な主体が参加・参画して地域の課題の解決に取組む社会 です。 みなさんが今日の講演会に「参加」して地元に戻った時 に、やってみたいというプランが浮かんだら、それを0から 責任を持って関わるのが「参画」です。男女共同参画は「女 性が」だけではなく、女性の問題に関わるということは、結 局、男性も生きやすくなるということです。 平成27年11月21日開催 平成27年度人権啓発活動地方委託事業 行政だけでは地域の課題解決は無理なので、今は公益を考える自治会になってきています。どこの 自治会も人が少なくなり大変だとなれば、お互いに連携していく共益、公益になっていくという流れ になっています。地域を活性化するための重要な当事者であるという意識を、どれだけ持てるかとい うのが、基本中の基本です。 ○あるべき「新しい公共(共助社会)」の姿 人権が尊重され、尊厳を持って個人が生きることのできる社会、ひとりひとりが個性と能力を発揮 することによって多様性に富んだ活力ある社会、固定的な性別役割分担意識をなくした男女平等の社 会です。市民協働と男女共同参画が共助社会をつくるために大事です。 ○男女共同参画社会基本法(1999年)の5つの柱 ・男女の人権の尊重 ・社会における制度又は慣行についての配慮 ・政策等の立案及び決定への協働参画 ・家庭生活における活動と他の活動の両立 ・国際的協調 男女共同参画は、機会や生き方の可能性が男女平等で性別にかかわりなく、その人らしく伸びやか に生きられる社会。個人がそれぞれ自分にふさわしい生き方、ライフスタイルを選択できる社会。誰 もが、働くことと家庭生活、地域生活を楽しめる社会です。 ○基本法施行後10年間の反省 宮城県のデータでも出ていますが、「男はこうあるべき」、「年寄りはこうあるべき」という固定 的な性別役割分担意識が根強く、解消されていません。また、男性の意識改革が進まない、政策決定 過程への女性の参画が進まないことです。市町村合併後、女性議員が激減しているといわれていま す。 ○100人男子会「男子学生のための男女共同参画ワールド・カフェ」の開催 「男子が100人も集まって喋る?」との声がありましたが、それが「固定観念」です。女子がい ないと話します、男子は女子がいると格好つけてしまうのです。 男子学生は、男女共同参画基本法を100%知っています。学んできているし、センター入試にも 出ます。男子学生に聞いたところ、「主夫になりたい人」が80%いました。男子学生は、専業主婦 が楽な仕事だとは、誰も思っていません。「専業主婦という選択肢が、女性だけにあるのはおかしい のではないか」という考えです。共働き世代で、「自分の方が給料が少ない場合は、育児休暇は自分 が取った方がいいのでは」という考えで、時代や若い人達が変わってきています。若い人達は、社会 に出たり地域や企業で、固定観念にとらわれた人達につぶされてしまいます。上の人達の意識を変え るのは難しいですが、若い人達は変わっているということだけは認識して、「自分の時はこうだった けど、今はこうなんだ」と切り替えて、応援に回ってほしいと思います。 平成27年11月21日開催 平成27年度人権啓発活動地方委託事業 ○男性の男女共同参画に関する意識調査の5つの志向性 ・経済的役割志向 → 一家の大黒柱は男、家計の担い手は男 これは高度経済成長期のわずかな時代のことで、今は厳しい。両方で大黒柱。 ・主導権役割志向 → 重要事項を決めるのは男の俺だ、長男だ 今の時代、長男長女が多いので難しい。 ・社会的役割志向 → 男は仕事で評価される、家事、育児NO ・知的感情の抑制志向 → 男は泣いてはいけない、弱音を吐いてはいけないという固定観念 震災時、男性は苦しんだ。自分らしく生きるというのは、男女関係なく感情表現をすること。 ・日常生活志向 → どこに行くの?俺の飯は? 生活者としての自立、男性は重要。女性は近代的な自立が重要と言われている。 結婚というのは、男女とも経済的・精神的・生活者とし ても自立していて、一人でも生きていけるけど、二人でい たほうが一緒にいいねという関係です。 長男だからと男性の方が背負っているパターンが多いの で、そこから自由になってみて、自分は何をしたいんだと いう見つめ直す機会は、もしかしたら男性のほうが大事な のかもしれません。それを支える女性の力も必要です。 ○石川県輪島市にある看板 「輪島の女は働き者という定評があり、亭主の一人や二人養えない女は女の風上にも置けない甲斐 性無しだ」と書いてあります。海女さんは、苦しくなると腰に巻いた紐を引っ張って、船の上の夫に 引き上げてという合図を送ります。金になるものを持ってくるのは女性ですが、命綱を持っているの は男性。男女共同参画で成り立っています。男女逆転ではなく、両方が共同しています。男性が大黒 柱というのも固定観念で、文化や地域によっていろいろ変わります。 ○自治会の会長と自治会組織の改革 地位の多様性を考えると、男性だけではだめです。兵庫県丹波市で、役員を経験したことのある女 性の方だけのワークショップを行いました。女性の意見では「女性の考えを受け入れてくれる男性も いることがわかった」、「自分にもできると自信が持てた」などありました。課題としては、「家族 の理解」、「雑用などの押し付け」、「配偶者の自立が大事」などありました。 自治会組織の改革として、自治会規約の中に女性参画を組入れたり、企画作成段階から女性が関わ れる体制を作ったり、多様な住人に合わせていくことなどがあります。 ○機会の平等と結果の平等 同じ能力で男性が少ないところには男性を、女性が少ないところには女性を入れようということ で、保育士への男性の積極的取入れがあります。その結果、お父さん達が子供を預けに行きやすい、 男の子が男性保育士と思い切り遊べるようになりました。 平成27年11月21日開催 平成27年度人権啓発活動地方委託事業 男性の中に女性が一人入っていくのも、女性の中に男性が入っていくのもとても大変です。社会的 排除にしないためには、男性型社会の変革と、女性の活躍推進に向けた社会づくりの加速化が必要で す。 ○東京都豊島区のF1会議 女性が住みやすい都市ランキング3位の豊島区が、消滅可能性都市に指定され、消滅可能性都市緊 急対策本部を設置し検討した結果、豊島区は「女性たちの意見をまったく聞いていない」、「女性た ちに優しくないまち」だということがわかったのです。 そこで、F1会議(F1のスピードとFuture未来と女性の力をテーマ)を設置し、「行政が 一方的に目標を示すのではなく、会議などで多くの人が納得できるような目標を考えていこう」とい う目標を立て、自発的なメンバーで会議のテーマもメンバーが決め、行政職員はメンバーとして参加 するという手法にしました。 「提案が施策に反映され事業化されること」、それこそが女性の意見が取り入られるということで す。消滅可能性都市という危機意識。危機意識を持つことは、地域づくりでとても大事です。誰かが やってくれるというのではなく、私がやるという意識です。 ○緩やかにつながること 組織やひとりひとりの力を活かすためには、組織や社会 の変革を待つのではなく、自ら何かを探すこと、行動する ことが大事です。社会を変える人に自分がなること。小さ なことから始める。多様な人、組織と連携すること。 そして、地域づくりの一番のキーは「緩やかにつながる こと」。強すぎると新しい人が入りづらい、緩やかだと入 りやすいのです。また、女性の視点の大切さ。リーダーシ ップの大切さ。関心を持つことは大事。関心を持たないと 何も見えてきません。男女共同参画も関心を持たないと、 自分事にはなりません。
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