はじめての人のためのスキンカヤック製作の手引き Greenlanders 天狼☆(田中敏彦) 概略 カヤックを作りたいと思う人のために、日曜大工もやらなかった自分がはじめてスキンカヤック を製作した時のエピソードを中心に、模型、実物を使用し製作過程を説明します。 はじめてが故の試行錯誤、後になってから気づく些細な出来事、家族を含め周囲の反応など、 これまでの経験をもとにいろいろお話しできればと思います。 この講義でのキーワード 1.なぜカヤックを作りたいの? ・ 名艇と呼ばれるカヤックも帯に短したすきに長し!僕の場合は、自分が意図するカヤックに出会えな かったこと。 ・ みなさんの場合はどうですか?僕と同じ?それともカヤックの歴史から興味を持った?あるいはス キンカヤックがかっこいいから? まあ、動機はいろいろとあるでしょう。でも何でも良いんです。作り たい、作ってみたいと思う気持ちがあれば必ずできます! 2.どんなカヤックに乗りたいの? ・ それは乗っている自艇を基にしても良いでしょう。雑誌やHPの写真でかっこいいと思ったものでもい いでしょう。沢山の資料やカヤックを見て自分が乗りたい船、作ってみたいなと思う船のイメージを作 り上げることが大事です。 3.まずは資料探しから ・ 資料探しはインターネットでできます。 ・ YAHOOやamazoneでどんどん検索してみましょう。 ・ ぼくは数冊の洋書を買いましたが、結局、カヌーライフの洲澤さんの記事と、ボブ・ブッチャーさんの ビデオをメインに、買った洋書の製作方法をミックスしながら作りました。念のため、参考資料につい て下記に紹介しておきます。 ・ 雑誌:カヌーライフ 2000 24 冬、26 春、(27 夏)、特別企画“トラディッショナルカヤックを作る” 洲澤育範 ・ ビデオ:“Build Your Own Sea Kayak!”BOB BOUCHER ・ 洋書:“BUILDING SKIN−ON−FRAME BOATS”ROBERT MORRIS ・ 洋書:“Instruction in Kayak Building”H.C.Petersen ・ 洋書:“The Aleutian Kayak”Wolfgang Brinch ・ 洋書:“BUILDING THE GREENLAND KAYAK”Christpher Cunningham ・ 洋書:“BUILDING A GREENLAND KAYAK”MARK STARR 4.寸法を決めます! ・ 自分の身体の寸法からカヤックの寸法が決まります。 ・ 長さは身長の三倍だとか、両手を広げたときの三倍だとか言います。一 応5m超でしょう。でも、日本の車事情もあります。フェリーに乗せるため には5mを切る船だって良いんです。 ・ 幅は自分の腰+拳二つ分これがインサイドマキシマムって本に書いてあ りました。でも、実際に自分が乗っている船と比べるといいでしょう。最終 的にはガンネルを開いたときに長さとのバランスを見ながらきめるとい いです。 ・ また、バックレスト、フットブレイス、ニーブレースの場所を決めるのが重 要です。決め方は座った状態で、股間をガンネルのセンターとして、腰、 膝のお皿の上の方、足の裏がその位置になります。 ・ 割り出した寸法から型(スウォードとコーミング)を作ります。 5.材料はどこで買うの? ・ フレームの材料は、キット購入や木材商に相談し調達する手もありますが、ホームセンターにだって あります。こまめに広告をチェックしたり、実際に通って話をしてみると良いでしょう。但し、ホームセ ンターでは、長い材料がなかなか手に入らないのも事実です。 ・ スキンはユザワヤさんなんかの大きな手芸屋さんで売ってます。但し、帆布の幅は 90cm くらいが標 準です。デッキでつなぐことを考えればいいでしょう。 ちなみに以下はカヌーライフに掲載された洲澤さんの記事から抜粋した数字です。 部材 ガンネル キールストリンガー ハルストリンガー バウ&スターンピース バウ&スターンピース補強材 ビーム(#1∼4、7∼13 ビーム(#5) ビーム(#6) メイシック ビーム補強材 素材 ヒバ ヒバ ヒバ ヒバ コクピットフープ リブフレーム ダボ(ガンネル結節用) ダボ(リブやデッキ補強材などの結節用) スキン イト ロープ(コクピットフープ用) ロープ(デッキストラップ用) ロープ(ガンネル結束用) 木部オイル カシ カシ カシ カシ 9号帆布 ダクロン クレモナ クレモナ クレモナ テレピン油 リンシード油 密蝋 スキン塗料 スプルース ヒバ ヒバ ヒバ ザイズ(mm) 4400∼4600*80*25 3800*4000*25*25 4200∼4400*23*23 2200*200*28 1000*100*12 4500*42*22 550*42*47 600*57*52 600*80*60 1000*100*12 600*25*25 2000*42*20 800*10*25 φ8*100 φ5*40 8000*920 φ12*1800 φ6*4000∼ φ3*2000 250ミリリットル 250ミリリットル 10グラム 5∼10リットル 本数 2 1 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 40 以上 8 60 以上 6.んじゃ作りましょう! ・ 切った貼ったは日曜大工レベルで充分です。細かな調整も木だから削ったり足したりできます。 ・ つなぐ、曲げるは難題に見えるけど素人にだってできるんです。ガンネル等の長い材料を入手するの はなかなか難しいですが、短い材はスカーフ継ぎで継いで長さを稼ぎます。 曲げは一見難しそうに思えますが、大きめのナベや金属製の 洗面器さえあれば充分出来ます。曲げたいリブ材は十分に水 につけておくとそれだけでも曲がりやすくなります。 7.木工だけじゃありません! ・ そう、布を縫う作業もあります。スキン(帆布)はフレームに被せて縫い合わせます。 ・ 縫い合わせる上では、スキンにテンションをかけることが重要です。洋書には”野獣の力で引っ張れ” って書いてありました。 ・ テンションをかけて縫ったと思っても、昼間と夜間では気温や湿度でスキンの張りがかわります。縫う 時間帯や条件も少し考えて置いた方がいいかもしれません。また、あらかじめスキンをしめらせた 状態で縫った方がいいのかな。その方がギューと延びて乾いたときにバンバンに張るはずです。 8.塗装だってあります! ・ スキンには防水塗装を施します。 ・ 塗料にもいろいろありますが、僕は車用の二液性のウレタン塗料を使いました。まあ、防水性が得 られれば何でも良いかと思います。塗料はホームセンターの屋根用や外壁用の塗料もつかえますが、 一度、専門の小売店なんかに相談するといいです。 ・ 色もいろいろとあるんで、いろんなカラーのカヤックにしたり、デッキに絵なんかかいたら良いかもし れません。 ・ もう一つ!スキン(布地)自体を何かで染めてみるのもいいでしょう。市販の染料や柿渋なんかであ らかじめ染めて、仕上げはクリヤ(透明)を使えばいいです。クリヤでコーミングも一緒にぬればいい でしょう。 9.完成そして推進式っ! ・ 出来たと思っても、乗ってみるといろいろと不具合が出てきます。 ・ 浸水;デッキの縫い目、デッキコードの根本、コーミングとスキンを縫いつけるための孔等から水が入 ります。これらは塗装を上塗りするかコーキング材でシールします。 ・ フィッティング;特にバックレストは直接背中があたるんで木のままだと痛いです。これはクッションの 効いた背当てを付けました。お尻も痛かったら座布団を敷くと良いでしょう。 ・ ハルの保護;出来るだけ船を浮かした状態で乗ればいいですが、なかなかうまくいきません。どうし ても海岸でずりずりすっちゃいます。で、エッジガードを付けましょう。 ・ メンテナンス;ハルはこすれて塗装が剥離します。余った塗料やゴム系接着剤でタッチアップしましょ う。小石や砂をできるだけカヤックの中に残さないようにしましょう。フレームとスキンの間に挟まっ て摩耗の原因となります。よかれとおもって真水であらうとカビカビになります。海からあげたら洗 わないほうが賢明です。 ・ そう!”スキンカヤックを作ったとき、それがスキンカヤックとのつきあいが始まったとき”なんです。 <宣伝> 最後に今回シーカヤックアカデミーに参戦している Greenlanders の有志のHPを紹介しておきます。 もし、カヤックを作りたいなぁなどとおもったら、これらのHPを覗いてみると良いでしょうなにかしら手 がかりがつかめます。 ・ manzo craft代表のHP http://www.awa.or.jp/home/tayama_farm/manzocraft/index.htm ・ 石川さんのHP http://www.d2.dion.ne.jp/~moeyuz/ ・ Greenlanders のHP http://www5c.biglobe.ne.jp/~kayak/ スキンカヤックは海岸なんかに並べて薀蓄をたれる為のものではありません。 自分で作って、自分で乗って、自分で遊び、楽しむためにあるものだと思います。 試しに、一度作って見てください。お手伝いします。また、違ったカヤックの世界が見えてく ると思います。
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