(2010年 アジア・太平洋電波科学会議) 富山国際会議場

The Murata Science Foundation
2010年アジア・太平洋電波科学会議
2010 Asia-Pacific Radio Science Conference
A02110
開催日 平成22年9月22日~平成22年9月26日(5日間)
開催地 富山県・富山国際会議場(〒930-0084 富山市大手町1-2)
申請者 中央大学 理工学部 電気電子情報通信工学科 教授 小 林 一 哉
層の活性化と発展に資することを目的とする。
会議の概要と成果
開催形態:
「アジア・太平洋電波科学会議」
(Asia-Pacific
主催:国際電波科学連合(International Union
Radio Science Conference:AP-RASC)は、国
of Radio Science:URSI)、電子情報通
際電波科学連合(International Union of Radio
信学会
Science:URSI)が原則として3年ごとにアジア・
協賛:電気学会、電気・電子情報学術振興財団
太平洋地域で開催する規模の大きい国際学術
後援:日本学術会議、富山県、富山市、富山
大学、富山県立大学
研究集会であり、第1回AP-RASCは平成13年
に東京で、第2回AP-RASCは平成16年に中国・
開催場所・開催日程:
チンタオ市で開催された。
「2010年アジア・太
開催場所:富山国際会議場
(富山市大手町1-2)
平洋電波科学会議」
(AP-RASC’10)は第3回
AP-RASCにあたる。AP-RASC’10は、電子情
開催日程:平成22年9月22日
(水)
から
報通信学会とU R S Iの共同主催により、平成
平成22年9月26日
(日)
まで
(5日間)
22年9月22日∼26日(5日間)に富山国際会議
会議規模・構成:
場(富山市)で開催された。以下、実施概要、
国際会議AP-RASC’10の発表論文数、参加
反響・得られた成果、および全体を通しての
者数、参加国数は以下の通りである。
感想について述べる。
発表論文数:529編(採択論文数:566編)
参加者数:597人(国内445人、海外152人)
1.実施概要
参加国数:30カ国・1地域(日本、韓国、中国、
会議の目的:
台湾、オーストラリア、米国、イン
電磁波伝搬・計測から環境電磁工学、エレ
ド、フランス、ロシア、サウジアラ
クトロニクス、フォトニクス、地球、宇宙、天
ビア、タイ、英国、カナダ、ドイツ、
文、生体を含む広範な分野にわたる電波科学
イタリア、フィリピン、ウクライナ、
の研究領域において、アジア・太平洋地域を
ベルギー、カンボジア、チリ、チェ
中心とした世界各国の研究者・技術者が一堂
コ、デンマーク、フィンランド、イ
に会して研究発表ならびに情報交換を行う国
スラエル、マレーシア、オランダ、
際的な場を提供し、世界の電波科学研究の一
ナイジェリア、ポーランド、シンガ
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Annual Report No.25 2011
国際会議A P - R A S C ’10の参加登録受付は9
ポール、スペイン、スイス)
本国際会議では、若手研究者の会議参加を
月22日正午から開始した。午後1時からS P C
促進し、かつ次世代の電波科学・情報通信研
セッション、午後6時からウェルカムレセプ
究を担う若手研究者を発掘・育成することを目
ションが実施された。S P Cセッションでは活
的とし、若手研究者特別支援プログラムとして、
発な議論が交わされた。また、ウェルカムレ
Student Paper Competition(SPC:学生論文コ
セプションには多くの外国人が参加し、終始
ンテスト)
、及びYoung Scientist Award(YSA:
和やかな雰囲気であった。
若手研究者学術奨励賞)の二つを実施した。会
9月23日午前は開会式が実施された。小林
議は5日間であり、開会式、特別講演(2件)
、
一哉・AP-RASC’10大会委員長(中央大学教
オーラルセッション、ポスターセッション、SPC
授)の挨拶、U R S I本部を代表してF r a n ç o i s
セッション、展示、懇親会(ウェルカムレセプ
Lefeuvre・URSI会長の挨拶があり、続いて、
ション、SPC・YSAレセプション、バンケット)
開催地代表として石井隆一・富山県知事の挨
から構成された(添付資料のプログラムを参照)
。
拶、AP-RASC’10組織委員会委員長で元URSI
会長の松本紘・京都大学総長の挨拶があった。
会議日程・概要:
特別講演は2件実施された。9月24日には島
9月22日(水)
田政信氏(宇宙航空研究開発機)、9月25日に
12:00
はAkira Ishimaru氏(米国ワシントン大学)に
登録受付開始
13:00∼16:45 SPCセッション
よる講演がなされ、多くの参加者に大変好評
17:30∼19:30 ウェルカムレセプション
であった。
9月23日(木)
一般講演は、電波科学・情報通信に関する
9:00∼ 9:50 開会式
10の分野(電磁波計測、電磁波、信号とシス
10:10∼17:30 オーラルセッション
テム、エレクトロニクスとフォトニクス、電
18:00∼19:30 SPC・YSAレセプション
磁波の雑音と障害、非電離媒質伝搬とリモー
9:00∼17:00 展示
トセンシング、電離圏電波伝搬、プラズマ波
9月24日(金)
動、電波天文学、医用生体電磁気学)を幅広
9:00∼ 9:50 特別講演1
くカバーしており、9月23日∼26日の4日間で、
10:10∼17:30 オーラルセッション
529件の論文が75のオーラルセッション(6会
18:00∼20:00 バンケット
場並列)及び10のポスターセッションで発表
9:00∼17:00 展示
され、597人(国内445人、海外からは32カ国・
9月25日(土)
1地域152人)の参加のもとに活発な議論が行
9:00∼ 9:50 特別講演2
われた。
10:10∼15:10 オーラルセッション
9月24日のバンケットには約300人が参加
15:30∼17:30 ポスターセッション
した。小林一哉・AP-RASC’10大会委員長の
9:00∼17:00 展示
挨拶、開催地代表として森雅志・富山市長
9月26日(日)
の挨拶があり、続いてU R S I本部を代表して
8:30∼17:30 オーラルセッション
Phil Wilkinson・URSI副会長、Paul Lagasse・
9:00∼17:00 展示
URSI事務局長の挨拶があった。その後、SPC
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とYSAの授賞式が実施された。
は、電磁波計測(A)、電磁波(B)、信号とシ
会期中は技術展示(企業6社、3大学)を併
ステム(C)、エレクトロニクスとフォトニク
設し、大変好評であった。当初、海外からの
ス(D)、電磁波の雑音と障害(E)、非電離媒
論文のキャンセルを心配していたが、キャン
質伝搬とリモートセンシング(F)、電離圏電
セル論文数は予想以上に少なく、セッション
波伝搬(G)、プラズマ波動(H)、電波天文学
座長と会場スタッフの協力によって、全ての
(J)、医用生体電磁気学(K)
である。国際会議
プログラムを予定通り実施することができた。
AP-RASC’10がカバーする分野はURSIが取り
発表機材についても講演者の協力により、特
扱う学問分野と同一であり、電波科学・情報
段の問題は生じなかった。各セッションでの
通信に深く関わっている。
質疑も活発に行われた。
電波科学・情報通信の研究分野は近年、重
会議の詳細(プログラム、論文)について
要な進歩を遂げている。とくに、無尽蔵な太
はCDに収録し、会議参加者全員に配布した。
陽光エネルギーを利用するために宇宙に建設
また、発表論文の中から特に優れた論文を選
する宇宙太陽発電所、そこから電波でエネル
定し、国際学術誌「Radio Science」及び「URSI
ギーを地球に送るという壮大な計画、地球環
Radio Science Bulletin」に特集号として掲載
境の衛星観測、地中に埋もれた遺跡や地雷を
する予定である。
探り出すレーダ技術、次世代の携帯電話のか
たち、人工衛星群を用いたインターネット通
2.反響・得られた成果
信網の開発、人工衛星「かぐや」によって解
本国際会議「2 0 1 0 年アジア・太平洋電波
明されつつある月の地殻構造、磁場・電場環
科学会議」(A P - R A S C ’10)の主催機関であ
境など、電波科学と情報通信が融合して活躍
る国際電波科学連合(U R S I)は、電波科学
する舞台は奥深く、広範囲にわたっている。
の国際的な連絡とその発展を 推進すること
本国際会議AP-RASC’10は、電波科学・情
を目的とした国際学術団体で、国際科学会
報通信分野におけるこれらの最新のトピック
議(International Council for Science:ICSU)
スをカバーしている。世界各国の研究者・技
に加入する30のScientific Union(分野別国
術者がこの会議に出席し、電波科学と情報通
際学術団体)のひとつである。U R S Iは各国
信に関する多くの論文と成果が発表され、関
のURSI国内委員会によって構成されており、
連分野の研究者から反響があった。なお、本
現在、39カ国・1地域がメンバー(M e m b e r
国際会議での発表論文のうちとくに優れた論
C o m m i t t e e)として、2 カ国が準メンバー
文については、国際学術誌「Radio Science」
(Associate Member Committee)としてURSI
及び「URSI Radio Science Bulletin」に掲載さ
に加入している。わが国では、日本学術会議
れる予定である。このように、本国際会議を
URSI分科会が、URSIに加入する公式な組織
通じて日本の電波科学・情報通信分野の活動
であり、電波科学研究の発展のため、多くの
を諸外国に周知し、関連分野の研究者から高
重要な活動を行っている。U R S Iには電波科
い評価を得ることができた点は、大きな成果
学に関する幅広い学問分野をカバーする10の
であった。また、電波科学・情報通信研究の
分科会(A、B、C、D、E、F、G、H、J、K)
将来を担う優秀な若手研究者を発掘できた点
が設置されており、各分科会が取り扱う分野
も、本会議の成果の一つである。
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Annual Report No.25 2011
3.全体を通しての感想
成団体からの助成金、並びに企業からの寄付
最近、「電波環境」が多くの人々の関心を
金によるご支援によるものであり、関係各位
集めており、さまざまな機器が機器本来の働
に厚く感謝申し上げる。
きや性能を発揮する際に機器外部に放射する
URSI本部は、平成5年に京都で開催された
「不要電波」への対策、電波が人体や医用機
「第24回URSI総会」を高く評価しており、近
器に与える影響など、「人と生活(環境)と
い将来、URSI総会が再び日本で開催されるこ
電波の関わり」は、電波科学に従事する研究
とを望んでいる。AP-RASC’10の成功を受け、
者・技術者にとって極めて重要な分野である。
日本学術会議U R S I分科会では、平成26年に
これは同時に、一般社会にとっても重要な関
URSI総会をわが国で開催する可能性について
心事である。本国際会議のメインテーマでは
検討した。その結果、平成22年11月9日付で、
「環境」というキーワードを掲げており、「電
URSI分科会は平成26年開催の第31回URSI総
波環境」に関する多くの論文発表が行われた
会に立候補することを決定した。現在、URSI
ため、今後、広く一般社会の関心を呼ぶこと
分科会では、第31回U R S I総会の日本招致に
が大きく期待される。
向け、諸準備を開始している。AP-RASC’10
国際会議が増加している中で、本国際会議
の成功が第31回U R S I総会の日本開催実現に
が内外から多くの反響を得て成功裡に終了す
つながることが期待される。
ることができたのは、貴財団を始めとする助
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