シンガポール運輸事情 2010年1月 1.行政機構 (1)行政機構全体 シンガポールの行政機構は、各省の下に、現業・規制(行政の執行権も含めて)を行う部署として、” Statutory Body”と呼ばれる設立法を有する特殊法人的な外庁を設けている。省は大臣秘書機能・基本 政策立案・省庁間/他国間調整を行い、外庁は具体的政策立案・政策推進等かなりの行政権限を持って いる。なお、Statutory Boardの実務上のTOPは、Director-General, CEO, Chief Executive等と称する。 (2)運輸関係行政機関組織 ①担当省庁名及び所管事項 シンガポールにおける運輸関係行政は、主として運輸省(MINISTRY OF TRANSPORT)が所管するが、観 光業等の業分野は全て貿易産業省(MINISTRY OF TRADE AND INDUSTRY)が他の産業との並びで所管してい る(ただし、海事産業振興については、海事港湾庁(MPA)がイニシアティブを有する。)。 海上保安業務は、海事港湾庁と内務省(MINISTRY OF HOME AFFAIRS)下の警察組織の1つである警察沿 岸警備隊(PCG:POLICE COAST GUARD)の連携により行われており、取締等の執行業務はPCGが担当し、航 行安全業務(管制・監視)についてはMPAが担当している。 1 ②関係省庁組織図(2009年5月現在。運輸・観光関係省庁のみ。他の組織は省略。大文字は名字。) <運輸行政全般> MINISTRY OF TRANSPORT(運輸省) Minister(大臣): Raymond LIM Second Minister(第二大臣): Mrs. LIM Hwee Hua Sea Transport Division (海上交通局) Director: Alvin LIM Land Transport Division (陸上交通局) Director: PHUA Hooi Boon Senior Parliamentary Secretaries(上級政務 次官) Mr. TEO Ser Luck Permanent Secretary(事務次官): BG(NS) CHOI Shing Kwok Deputy Secretary(副事務次官): (Land, Corporate) (International) Mr.LIM Boon Wee Mr. LEE Yuen Hee Air Transport Division (航空局) Director: SOH Poh Theen International Relations and Security Division (国際・セキュリティ局) Director: Bernard LIM Corporate Development Division (開発局) Director: GOH Teck Seng Corporate Communications Division (広報局) Director: Ms. Janice QUAH Air Accident Investigation Bureau (航空事故調査局) Director: CHAN Wing Keong <Statutory Board> CIVIL AVIATION AUTHORITY OF SINGAPORE(民間航空庁):航空行政、空港運営管理 Chairman: LEE Hsien Yang, Director-General & CEO: YAP Ong Heng LAND TRANSPORT AUTHORITY(陸上交通庁) :陸上交通全般(道路行政も含む) Chairman: Michael LIM Choo San, Chief Executive: BG YAM Ah Mee MARITIME AND PORT AUTHORITY OF SINGAPORE(海事港湾庁): 海事行政全般(船舶検査、航行安全、港湾監督、海上保安(管制・監視)、海事産業振興) Chairman: Lucien WONG, Chief Executive: LAM Yi Young PUBLIC TRANSPORT COUNCIL(公共交通会議) : 公共交通運賃及び路線の認可 Chairman: Gerald EE Hock Kim, Secretary: Eugene TAN 2 <産業(観光連産業を含む)行政> MINISTRY OF TRADE AND INDUSTRY(貿易産業省) Minister(大臣) : LIM Hng Kiang Senior Minister for State(上級国務大臣) : S Iswaran Minister for State(国務大臣) : Lee Yi Shyan Parliamentary Secretary(政務次官) : Sam Tan Chin Siong Permanent Secretary(事務次官) : Ravi MENON <Statutory Board> SINGAPORE TOURISM BOARD (シンガポール観光庁): 観光行政全般(観光業の振興を含む)、小売業・飲食業の営業認可 Chairman: Simon ISRAEL Chief Executive: Ms. Aw Kah Peng HOTEL LICENSING BOARD:ホテルの認可・登録 Chairman: Hoo Sheau Peng, Secretary: Ms Purnima SHANTIAL S ECONOMIC DEVELOPMENT BOARD (経済開発庁): 業振興全般(ただし、観光業はSTB、海事産業はMPA主管) INTERNATIONAL ENTERPRISE SINGAPORE(国際企業庁): 貿易事業振興 <海上保安> MINISTRY OF HOME AFFAIRS(内務省) Deputy Prime Minister and Minister for Home Affaire (副首相兼内務大臣): WONG Kan Seng Second Minister(第二大臣) : K Shanmugam Senior Minister of State(上級国務大臣): HO Peng Kee Senior Parliamentary Secretary (上級政務次官) : MASAGOS Zulkifli SINGAPORE POLICE FORCE(シンガポール警察) POLICE COAST GUARD(警察沿岸警備隊): 海上保安(捜査・取締り執行:日本の海上保安庁の警備救難部に相当) Commander Police Coast Guard: AC TEO Kian Teck 連携 運輸省 MARITIME AND PORT AUTHORITY OF SINGAPORE (海事港湾庁): 海上保安(航行管制・監視:日本の海上保安庁の交通部及び警備救難部の監視部門に相当) 3 (3)運輸省沿革 ① 本省組織 99年6月まで シンガポール運輸通信省 (MINISTRY OF COMMUNICATIONS)日本で言う逓信省と ほぼ同様 99年6月 ITの急速な発展への対応として、これを一元的に取り扱うべく、シンガポール 運輸情報通信省(MCIT,MINISTRY OF COMMUNICATIONS AND INFORMATION TECHNOLOGY)に改組。 2001年11月 IT部門を情報芸術省に移管、MCITは運輸省(Ministry of Transport)となる。 2002年7月 気象部門を環境省へ移管(主としてヘイズ対策の観点から) ② Statutory Board 96年2月 運輸通信省の海事行政部門の一部に船舶・海運関連行政を担当するNational Maritime Board、シンガポール港湾庁(Port of Singapore Authority)の規制・ 監督部門を統合し、海事港湾庁(MARITIME AND PORT AUTHORITY OF SINGAPORE) を設立。 97年10月 「PORT OF SINGAPORE AUTHORITY」は「PSA Corporation」に企業化(現在は、政 府が資本の全てを保有)。なお、PSA社のほかにも、採算性の高い法定機関に ついて順次民営化が進められている。 2009年7月 チャンギ空港は現在、民間航空庁に属しているが、民間航空庁から切り離し法人 化(政府系投資会社であるテマセクが100%出資) 99 年 6 月 2001 年 11 月 2002 年 7 月 政府組織における IT 部門の一 IT 部門を情報芸術省へ移 気象部門を環境省(当時。現在は環 元化 管 境・水資源省。)へ移管 運輸通信省 運輸情報通信省 運輸省 MINISTRY OF COMMUNICATIONS MINISTRY OF COMMUNICATIONS AND INFORMATION TECHNOLOGY MINISTRY OF TRANSPORT 96 年 2 月 国家海事局 海事港湾庁 NATIONAL MARITIME BOARD シンガポール港湾庁 PORT OF SINGAPORE AUTHORITY 船舶検査、船舶登録、航行安全・水路業務等 96 年 2 月 MARITIME AND PORT AUTHORITY OF 分割 SINGAPORE 港湾管制、出入港許可、港湾関係規制 港湾ターミナル、付帯施設等の運営及び関連事業等 PSA Corporation (97 年 10 月 4 企業化) 2.運輸の概況 (1) 輸送実績 イ)海上輸送 2003 986.4 入港船舶(百万GT) 対前年比(%) 入港船舶数(千隻) 対前年比(%) コンテナ取扱量(百万 対前年比(%) 貨物総量(百万トン) 対前年比(%) 135.4 18.41 347.7 2004 1042.4 5.7 133.2 -1.6 21.33 15.9 393.4 13.1 2005 1151.8 10.5 130.3 -2.2 23.19 8.7 423.3 7.6 2006 1315 14.2 128.9 -1.1 24.79 6.9 448.5 6.0 2007 1459.2 11.0 128.6 -0.2 27.94 12.7 483.6 7.8 2008 1621.1 11.1 131.7 2.4 29.92 7.1 515.4 6.6 2003 11,588 -15.6 11,555 -15.3 1,521 -5.2 803,056 -3.8 808,351 0.6 2004 14,336 23.7 14,270 23.5 1,748 14.9 870,582 8.4 904,507 11.9 2005 15,364 7.2 15,356 7.6 1,710 -2.2 892,141 2.5 941,580 4.1 2006 16,678 8.6 16,690 8.7 1,665 -2.6 952,876 6.8 958,341 1.8 2007 17,640 5.8 17,582 5.3 1,480 -11.1 963,873 1.2 930,896 -2.9 (Maritime & Port Authority) ロ)航空輸送 到着旅客(千人) 対前年比(%) 出発旅客(千人) 対前年比(%) 乗換旅客(千人) 対前年比(%) 到着貨物(トン) 対前年比(%) 出発貨物(トン) 対前年比(%) 2002 13,727 13,647 1,605 834,490 803,306 (Civil Aviation Authority of Singapore, チャンギ空港のみ) ハ)陸上輸送 登録車両台数 車両総数(台) 乗用車 タクシー バス 二輪車 貨物車 その他 2003 711,043 405,328 19,384 12,653 134,767 125,023 13,888 2004 727,395 417,103 20,407 12,892 136,122 126,709 14,162 2005 754,992 438,194 22,383 13,220 138,588 128,193 14,414 2006 799,373 472,308 23,334 13,831 141,881 132,841 15,178 2007 851,336 514,685 24,446 14,192 143,482 138,604 15,927 2008 894,682 550,455 24,300 14,976 145,288 142,966 16,697 2003 1,220 53 2,972 801 2004 1,276 57 2,788 876 2005 1,338 71 2,785 991 2006 1,435 75 2,853 945 2007 1,564 81 2,969 927 (Land Transport Authority) 公共交通機関利用人数 (千人) (年度) MRT LRT バス タクシー 2002 1,080 40 3,123 834 (Land Transport Authority) 5 公共交通機関利用距離 (年度) MRT(km/passanger-trip) バス(km/passanger-trip) タクシー(km/engaged trip) 2004 11.5 5.2 8.5 2005 11.5 5.4 8.8 2006 11.3 5.3 9.1 2007 11.2 5.3 9.1 (Land Transport Authority) (2) インフラ投資額(2009年予算) 運輸省予算 S$53億9400万 鉄道建設予算 S$30億6800万 高速道路建設予算 S$11億7100万 港湾拡張予算 S$ 7億1400万 (3) 主な特徴 ①海上交通 ・東西海上貿易の要衝(マラッカ・シンガポール海峡)に位置し、天然の良港をもつことから、19世 紀以来中継貿易拠点として発展。 ・世界最大級のコンテナ取扱港の地位を確立。取扱コンテナの8割がトランジット。 ・海運企業等の地域拠点の誘致にも積極的で、税制等各種優遇措置を講じている。海運産業はGDPの 7%を占め、10万人の雇用を生み出している。 ②航空 ・国際航空のみ(国土が小さいことから、国内航空は存在しない)。 ・国際航空自由化と国際ハブ化を基本とした政策を実施。近隣諸国に比べ観光資源にも乏しく、国内市 場も小さいというハンディを抱えつつも、アジアにおける金融・貿易の中心地としての経済政策と相 俟って、航空自由化政策の下、地域航空ハブとしての地位を確立。常にチャンギ空港の機能・サービ スの向上、新規に寄港する航空会社の誘致、新規路線の開設に積極的に取り組んでいる。 ・自由化については、既に米国等の30カ国以上とオープンスカイ協定を締結。また、英国とは完全自 由化。 ・航空機・部品の製造や保守・整備・オーバーホール関連企業、研究開発、人材開発関連企業の誘致を 積極的に行うことにより、航空産業の持続的な成長を目指している。 ③陸上交通 ・人口密度の高いシンガポールにおいて、公共交通機関が、生活面及び環境面での持続可能な都市とし ての基礎となるとの認識の元、バス、MRT(Mass Rapid Transit。我が国の地下鉄や通勤路線に相 当)等の公共交通機関の利用を促進。 ハード:高速道路、MRTの新線建設を推進 ソフト:オペレータへの競争原理の導入、増便・スピードアップ(バス専用レーン、バス優先信号) 等による利便性・快適性の向上 ・自動車保有及び都心部への流入を規制。 (4)全国規模の交通計画 2008年に、今後10年から15年の陸上交通開発の指針となるロードマップであるLand Transport 6 Master Planを策定(別紙参照) (5)主な政策課題(2009年予算) ・人々を中心とした陸上交通機関(効果的、効率的な公共交通機関の構築) ・海上交通の最先端ハブ及び国際海事活動の最先端中心 ・航空交通の最先端ハブ及び国際航空活動の最先端中心 (6)その他(交通分野における環境面での政策) ①Land Transport Master Planにおいて以下を推進。 ・以下の車種について、ユーロⅣの排ガスレベルを遵守 - 2014年までに全てのタクシー - 2010年までに40%のバス、2020年までに全てのバス ・CNG等のクリーン燃料の使用とともに、環境自動車割引等を通じたエネルギー効率の高い自動車の 普及推進 ②2009年に策定した、「シンガポールの持続可能な開発のための青写真」において以下を推進。 ・環境に優しい交通技術(ディーゼルハイブリッドバス、電気自動車、ディーゼル粒子フィルター等) の試験、自転車インフラの普及(今後五年間で4300万ドル以上の予算で、HDBの中でサイクリン グネットワークを構築)等による環境に優しい交通の推進。 3.航空 (1) 概要 ①輸送量 輸送量の数値は2.運輸概況のとおり。 ②空港 シンガポールにおける民用空港はセレター空港及びチャンギ国際空港であるが、セレター空港は、マ レーシア等近隣への短時間フライトのみであり、実質的に国際空港はチャンギ国際空港のみである。 (以下のデータはチャンギ空港のみ。Civil Aviation Authority of Singapore) ○航空ネットワーク 定期便乗入れ航空会社数 定期便数 乗入れ都市 86社 ※参考:成田空港 73社 週約4500便 ― 60カ国201都市 36カ国96都市 ○利用状況 年間空港利用者数 ※参考:成田空港 37.2百万人(2009年) (前年比 -1.3%) 33.5百万人(2008年) (2006年では、成田は世界6位、チャンギは7位) 年間航空貨物取扱量 ※参考:成田空港 1.63百万トン(2009年) (前年比 -11.9%) 2.06百万トン(2008年) 7 (2006年では、成田は世界3位、チャンギは6位) 年間発着回数 24万回(2009年) (前年比 +3.9%) ※参考:成田空港 19万回(2008年) ○空港データ チャンギ空港 管理者 参考:成田空港 CIVIL AVIATION AUTHORITY OF 成田国際空港株式会社 SINGAPORE(民間航空庁) 敷地面積 約1300ha(870haは埋め立て) 940ha 滑走路 4000m×2本 4000m×1本 スポット 102 141 旅客ターミナル ターミナル1 28万m2、2100万人 ターミナル1 45万m2 ターミナル2 36万m2、2300万人 ターミナル2 36万m2 2180m×1本 ターミナル3 38万m2、2200万人 バジェットターミナル 2.8万m2、700万人 貨物ターミナル 能力 300万トン 能力 240万トン (2) 政府の航空政策・最近の動向 ①政府補助 ・2009年に1億3千万Sドルの航空ハブ開発基金(Air Hub Development Fund)を準備し、着陸料の減額を 15%から25%へ拡大する等の財源として使用。また、チャンギ空港の小売り、飲食、サービス事業者の 賃貸料軽減のために6千万Sドルを、他の空港パートナーの賃貸料軽減のために700万Sドルを準備。 ・2010年の着陸料は、上半期15%、下半期10%減額予定。新たな路線を開設した場合には、インセンティ ブとしてさらなる着陸料減額。 ②空港整備の計画等 1975年 チャンギ新国際空港着工 1981年7月1日開港。さらに、同年、第2期計画開始 第1期計画(滑走路及びターミナル1) 国の資金 15億S$ 民間資金 10億S$ 合計 25億S$ 1984年 第2滑走路等が完成 1985年 ターミナル2の建設開始(1990年11月に供用開始) 第2期計画(ターミナル2) 国の資金 6.5億S$ 1995年 ターミナル1の改装完了(170百万S$) 1996年 ターミナル2の施設増強完了(330百万S$) 1999年 ターミナル1の旅客対応能力増強工事完了(430百万S$) 2000年 ターミナル3の建設開始(2008年1月に供用開始。17.5億S$) 8 2004年 格安航空用ターミナルの建設開始(2006年3月に供用開始。45百万S$) 2008年 ターミナル1の施設増強開始(2011年完成予定。500百万S$) 格安航空用ターミナルの施設増強開始(2009年完成。10百万S$) ③空港、旅客ターミナルの設置・運営主体 チャンギ空港は、現在CAASに属しているが、平成21年7月にCAASから切り離し法人化(政府系投資会 社であるテマセクが100%出資)。 (3) 航空産業の現状 シンガポールをベースとするエアラインは、フル・サービス・フラッグキャリアであるシンガポール 航空とその子会社で近隣諸国を営業圏とするシルク・エア、格安航空会社のタイガー・エア、ジェット スター・アジアがある。 ① シンガポール航空(SIA:Singapore Airline) 創立は、1947年に設立されたマラヤ航空(MAL)。 1967年にマレーシア・シンガポール航空(MSA:Malaysia Singapore Airline)に改組(1965年のマ レーシア、シンガポールの分離に伴い、両国の対等出資による共同経営となった)したが、国際線重視 のシンガポールと国内線強化のマレーシアとの意見の相違により、1972年10月にマレーシア航空と分離 した。以来、シンガポール航空は、シンガポールのフラッグ・キャリアとして、その名を高めている。 同社は、最新の機材の導入や、高品質なサービスの提供に積極的に努める一方で、高い収益性を維持 しており、その競争力は世界的にも極めて高い評価を受けている。近年では、世界で初めてエアバスA380 を就航させ話題となった。 また、他の航空会社との各種提携による事業展開を積極的に進めており、2000年4月7日には、スター・ アライアンスに11番目のメンバーとして加盟した。また、コードシェアも積極的に進めており、日本- シンガポール間では、全日空とコードシェアを行っている(2009年現在、ANA便はすべてSQとのコ ードシェアである。)。 (参考)SIAの会社概要 会社名:Singapore Airlines Limited (シンガポール エアラインズ リミテッド) 設 立:1947年(当時はMSA)、資本金:12億8260万S$、 本社所在地:Airlines House, 25 Airline Road, Singapore 819829 社員数(グループ):約3万人(2007年度末現在) 売上高(グループ):160億S$(2008年度)(前年度比0%増) 運航状況等(2007 年度末現在) : 路線 :36ヶ国、66路線、週726便。 日本直行は成田、中部、関西、福岡の4路線 保有機体数:98機 アライアンス :スター・アライアンスに加盟 ② 格安航空 2004年5月のバリュー・エアの設立を皮切りに、シンガポールを中心とする格安航空の参入・競 争が激化し、現在では、シンガポール・ベースが2社(タイガー・エアウェイズ、ジェットスター・ア 9 ジア)の他、マレーシア、インド、タイ、インドネシア等の格安航空が次々と乗り入れている。 なお、運輸当局は、シンガポールを中心とする輸送量・旅行者の増大に貢献しているとして、格安航 空の発展を基本的に歓迎している(チャンギ空港での格安航空による旅客数の割合は1.7%(2004年)か ら12.3%(2008年)に拡大、格安航空の便数の割合は6%(2004年)から20%(2008年)に拡大)。 1) タイガー・エアウェイズ(Tiger Airways) 2004年7月設立。SIAの子会社。 2) ジェットスター・アジア(Jetstar Asia) 2004年12月設立。豪カンタス航空の子会社。2005年にバリュー・エア(ValueAir)と統合。 4.鉄道 (1)概要 ①輸送量 2.(1)参照 ②インフラ シンガポールの鉄道は、島内の主要路線であるMRT(Mass Rapid Transit)、MRTに連結する地 域市街周回路線であるLRT(Light Rapid Transit)から成る。この他に、タンジョン・パガー地区 にあるシンガポール駅を起点としてクアラルンプールへ向かうマレー鉄道があるが、これはマレーシア の保有である。 MRT MRT EAST-WEST LINE(東西線) 延長(km) 駅数 完成予定 総工費(S)$ 39 27 供用済 南北線とあわせ 約6.3 billion チャンギ支線 NORTH-SOURTH LINE(南北線) 6.4 2 供用済 750 million 44 25 供用済 東西線とあわせ 約6.3 billion NORTH-EAST LINE(東北線) EAST-WEST LINE BOONLAY EXTENSION 20 16 供用済 4.6 billion 3.8 2 供用済 436 million 33.3 29 2010年以降 6.7 billion (東西線延伸) CIRCLE LINE(環状線) 一部供用済 DOWNTOWN LINE(ダウンタウン線) 40 33 2013, 2015, - 2016年 THOMSON LINE 27 18 2018年 - EASTERN REGION LINE 21 12 2020年 - 1 1 2015年 - 14 5 2015年 - NORTH SOURTH LINE MARINA SOUTH EXTENSION EAST WEST LINE TUAS EXTENSION 10 LRT LRT 延長(km) 駅数 完成予定 総工費(S$) PUNGGOL 10.3 15 供用済 354 million BUKIT PANJANG 7.8 14 供用済 不明 SENGKANG 10.7 14 供用済 302 million ③運営主体 軌道、車両等ハードはLTA(陸上交通庁、もともとMRT(大量高速交通公団)が統合したもの) が保有しており、運行は、MRT東西線、南北線、環状線及びLRTブキパンジャン線についてはシン ガポールMRT社(SMRT:地下鉄経営会社としては世界で初めて2000年7月26日に株式上場)、M RT東北線及びLRTセンカン線、プンゴル線についてはSBSトランジット(主要なバス運行会社の 1つ)が委託契約により行っている。 (S$m) 収入 営業利益 2008年 2007年 増減 2008年 2007年 増減 MRT 474.3 436.9 8.6 133.8 129.3 3.5 LRT 9.2 8.6 7.1 -0.2 -0.4 44.4 101.5 87.6 15.8 6.3 65.1 SMRT SBS Rail 10.4 SMRTは年度実績、SBSは年実績 (2)事業規制等鉄道に関する法制度 高速輸送システム法(Rapid Transit System Act)により、高速輸送システムを運行する者はLTAか ら免許を受ける必要がある。 事業者が守るべきサービスの質については、基準(Standard)に規定。 運賃については公共交通会議法(Public Transport Council Act)により、公共交通会議の承認が必 要。 (3)政府の鉄道政策・最近の動向 ①政府補助 政府は、運行事業者に対して財政的な補助は行っていない。 車両購入、駅・路線改築などは政府が行い、間接的に運行事業者を補助している。 ②鉄道の整備計画 Land Transport Master Planを参照(別紙) (4)鉄道産業の状況 (1)③参照。 (5)主要路線 11 (6)その他の鉄道政策 2002年よりタッチセンサー式カード(E-Zリンク・カード)による料金支払いシステムが導入され、 乗客の利便性向上を図っている。このカードは、MRT、LRT、バスで共通して利用できるほか、デ ビットカードとして買い物もできる(現時点では一部の店舗)、②現金での乗車よりも安い割引料金が 適用される、③乗り継ぎやオフピーク乗車等における料金割引が受けられる、といった利点を有してお り、また、このインセンティブにより公共交通機関の利用促進を図っている。 5.自動車 (1) 事業規制等自動車旅客・貨物輸送に関する法制度 ①バス事業 ・バスサービス免許(BSL: Bus Service License) 料金を徴収し、事前に決められた時刻表及び路線に沿って運行する全てのバス事業は、PTCからBSLを 受けなければならない。BSLは個別バス路線ごとの規制を行うためのものであり、バス運行者は新規サー ビスの開始、現行のサービスの変更、現行のサービスからの撤退を行う場合は、PTCに申請しなければな らない。BSLの期限は通常2年。 ・バスサービス運行者免許(BSOL: Bus Service Operator’s License) 個別バス路線ごとの規制を行うBSLに加え、10以上のサービス路線をもつ事業者はPTCからBSOLを受 けなければならない。現在はSBSとSMRTの二社にBSOLが発行されている。BSOLの期限は10年。 ・サービス品質基準(QoS: Quality of Service Standards) 提供されるバスサービスは、PTCにより定められたサービス品質基準を満たさなければならない。サー ビス品質基準は、サービス信頼性、安全性、稼働率等の19のパラメータからなり、満たさない場合は罰 則が科せられる。 12 ・運賃 PTCによる定期的な運賃改定に従い定められた金額以上の運賃を課してはならない。 ②タクシー事業 ・1998年9月からタクシー運賃規制を撤廃し、タクシー事業者が独自に運賃を定められるようになった。 ・2003年6月にタクシー事業者数の制限、各事業者へのタクシー台数割り当てが撤廃され、タクシー業界 は完全に自由化された。 ・道路交通法によりタクシー事業者はLTAから免許を受ける必要がある。 ・タクシー事業者免許(TOL: Taxi Operator License)制度のもと、免許保有事業者は、サービス品質 基準に適合する必要がある。電話予約に対するタクシー稼働率、安全性、顧客満足度によってタクシー 事業者の能力をモニターし、基準に満たさない場合は、罰金を課せられる。 (2) 政府の基本政策、最近の動向 ・公共交通機関の利用促進のため、各種バス優先策を実施(添付のLand Transport Master Plan参照) ・市内繁華街においてはタクシースタンド以外でのタクシー乗車を禁止 ・自家用自動車の保有、使用規制を行っている(添付の自家用自動車の規制参照) (3) 自動車旅客・貨物輸送産業の状況(主要企業、その動向等) ①バス事業 パブリックバスサービスとしてはSBSとSMRTの二社が運行している。その他、スクールバス等の小規模 プライベートバスサービス事業者は多数存在。 SBS 254路線 2,800台以上 78路線 800台以上 SMRT ②タクシー事業者 7社のタクシー事業者と少数の個人タクシーが運行。各社の台数は以下の通り(2008年12月現 在 LTA)。 事業者 台数 事業者 台数 コンフォート 11,390 トランスキャブ 2,391 シティーキャブ 3,849 プレミア 2,162 SMRT 2,934 プライム 406 その他 434 スマート 734 (4)自動車の車検・点検整備について ・車検制度の有無 有り ・根拠となる法令 道路交通法(Road Traffic Act) ・一般的な乗用車の車検期間 ・車検の実施主体 車齢3年未満 なし 車齢3年~10年 2年毎 車齢10年以上 1年毎 民間(LTAに認可された自動車検査センター) 13 ・検査項目 サイドスリップ、車輪アライメント、ブレーキテスト、騒音、ヘッドライト、排気ガス、 車体上部チェック、車体下部チェック等 ・検査不合格の場合の処理 修理後再受検 (5)その他 添付の自家用自動車の規制参照 6.海運 (1) 事業、安全・環境規制等海運に関する法制度 ①内航海運 国土の狭さ故、内航海運は存在しない。シンガポール港内で活動する作業船、給油船等あり。 ②外航海運 ・海運同盟に係る独占禁止法適用除外規定: 競争法41条の適用除外規定に基づき、2006年7月14日に海運同盟の同法適用除外を規定し た規則「COMPETITION (BLOCK EXEMPTION FOR LINER SHIPPING AGREEMENTS) ORDER 2006」を制定(2 010年12月31日までの期限付き)。 ・運航に係る安全規定: ・オフショア登録制度: IMOの条約に従う なし (2)政府の基本政策・最近の動向 ①海運補助制度 ・ 海事クラスター基金(Maritime Cluster Fund: MCA)は2002年に8000万ドルで設立、企業又は個人が、 海事訓練プログラムの開発、研修授業料、奨学金、インターンシップ等の研修に使用できる。また、 2009年に4500万ドルの追加拠出を行い、シンガポールで新たに海事業務を起業する、既存の海事業務 から新たな海事業務へ業務拡大する場合に、初期費用支出にこの基金を利用できるようになった。 ・ Maritime Innovation and Technology(MINT) Fundは1億ドルの基金で、新たな海事技術の開発、研究 等に利用できる。 ②海運税制 ・ シンガポール籍船の運航による利益は、シンガポール所得税から控除。 ・ また、1992年、AIS(Approved International Shipping Enterprise Scheme)制度により、ある 一定の条件(世界的なネットワーク、確かな実績、明白なビジネスプランをもち、シンガポールでの 海運業の拡大をコミットした国際海運企業)を満たせば、その船主の有する船舶の操業により得た所 得は、課税されないことになっている(免除期間は10年)。また、船舶チャーター代金にも適用さ れる。 ・ 2010年度からShip management Feeについても課税免除にする方針。 ・ シンガポール籍船を有する会社は、船舶売却による収入に関する免税措置が受けることが出来る。 ・ 船舶・コンテナリース会社、ファンド、ビジネストラストは、MFI(Maritime Finance Incentive) スキームで認められたリース収入に関し、10年間の税金割引を受けられる。 ・ ASL(Approved Shipping Logistics)スキームにより認められた企業は、貨物・物流サービスから 得た増加収入の10%までの税金割引を受けられる。 14 ③フラッギングアウトの現状及び政府・海運事業者の対応策 上記、税制等の他、 ・ 1978年STCW条約の規定に適合していれば、国籍に関係なく船員を雇用することが出来る ・ 有効な海外の船員資格証明を有する船員は、シンガポール籍船で働くことが出来る ・ NKを含む9つの船級協会を認めている 等により、シンガポール籍船数は近年順調に増加している。 シンガポール籍船の推移(Maritime and Port Authority of Singapore,隻と万GT) 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 隻数 3353 3355 3063 3109 3219 3249 3553 3843 トン数 2317 2355 2557 2771 32963 3479 3960 4370 ④クルーズ産業に対する振興策 観光客の増加策として、クルーズ船の誘致を推進。マレーシアのスター・クルーズがシンガポールを 拠点として就航しているほか、ロイヤル・カリビアンのクルーズ船等も寄港。現在のクルーズターミナ ルでは対応できなくなってきており、新たなクルーズターミナルを2010年までに建造予定。2015年まで にクルーズ客数160万人が目標。 (3)海運産業の経営状況 シンガポールで最大の海運事業者であるNOL(Neptune Orient Lines Limited)をはじめ、シンガポー ルの海運業者の殆どはシンガポール海運協会(The Singapore Shipping Association)のメンバー(約360 社)になっている。構成は、①シンガポール籍企業グループ(シンガポール籍企業でシンガポール籍船 を運航するもの)、②バンカータンカーグループ(バンカータンカーの船主・運航者、バンカーの供給業者、取扱 業者)、③シップエージェント・シップブローカーグループ(シンガポールに事務所を持つ者)、④バ ージ・タグ・サルベージ等企業グループ(バージ・タグ等の船主・運航者)、⑤外国籍企業グループ(外 国籍企業で外国籍船・シンガポール籍船を運航するもの)となっている。 7.港湾整備・運送 (1)港湾の概要 ①埠頭及び設備 シンガポールのコンテナ・ターミナルには、PSA社が運営するPSAターミナル(4地域)とジ ュロン公社が運営するジュロンターミナル(1地域)があるが、うち、PSAターミナル(4地域) が全取扱量の97%を占める。 ■ PSAターミナル 全体 地域ターミナル タンジョン・パ ケッペル ブラニ パシル・パンジ ガー バース数 54 ャン 8 15 14 9 23 面積 600 ha 85 100 80 335 16 m 14.8 15.5 15.0 16 190 基 29 42 32 87 最大喫水 クレーン数 ※ 現在のコンテナ取扱容量は、3500万TEU。パシル・パンジャンのフェーズ3,フェーズ4として、 2013年までに16バース増設予定(取扱容量1400万TEU(40%拡大))。 ②港湾管理におけるITの活用 港湾施設の整備・コンピュータシステムを用いた入出港手続き等の簡略化、港湾サポート機能(船舶 修理、燃料・食料等の補給等)の充実等に努め、顧客サービスの向上を図っている。 【シンガポール港湾関連電子情報交換システム】 ○ PORTNET(Electronic Data Communication Systems) : 港湾利用者(船社)とPSAとの間で、港湾関連書類等の提出、荷役関連情報の確認、各種船舶サ ービスの要求等コンテナ・ターミナル運営に必要な情報交換を行うネットシステム。税関や貿易管理 当局のネットシステム(TRADENET)や海事管理当局のシステム(MARINET)にも接続しており、PORTNET を通じ、ワンストップで各種手続きを行うことができる。 ○ CITOS(Computer Integrated Terminal Operations System) : ヤード内での効率的なコンテナ取扱作業の計画・指示を行うシステム。 積み降ろしするコンテナ の積載位置、保管場所や搭載順序等を計画し、中央制御室より現場(クレーン上等)のオペレーター に作業指示を行うシステム。 ○ CTS(Containerised Traffic System) : 港湾施設内の陸上輸送で使われるコンテナ用トレーラー等に携帯端末システムを搭載し、管理本部 と連絡を取り合うことで効率的な運用管理をはかる。 ③PSA社(PSA ・ Corporation) 1997年10月、シンガポール港湾庁(Port Authority of Singapore)の規制部門を海事港 湾庁に移管し、運営部門について民営化。 現在は政府系投資会社(テマセク・ホールディング) が全ての株式を保有。 16 ・ 積極的に海外展開を図っており、シンガポール以外にも15ヶ国でターミナルを運営。日本にお いては、北九州ひびきコンテナ・ターミナルに資本参加。 ④貨物取り扱い量 ○近年の実績 コンテナ取扱量(百万TEU) 対前年比(%) 貨物総量(百万t) 前年比(%) 2003 18.41 8.7% 347.7 3.7% 2004 21.33 15.9% 393.4 13.1% 2005 23.19 8.7% 423.3 7.6% 2006 24.79 6.9% 448.5 6.0% 2007 27.9 12.7% 483.6 7.8% 2008 29.9 7.1% 515.3 6.5% 2009 25.8 -13.5% 472 -8.4% ※ 2009年のコンテナ取扱量25.8百万TEUのうち、PSA社の取扱量は25.1百万TEU(97%)を占める。 ※ 取扱コンテナの約8割がトランシップで、東西海上貿易の中継拠点。 ※ 日本5大港(東京、横浜、名古屋、神戸、大阪)の合計:14.6百万TEU(2006) ○アジア主要港湾のコンテナ取り扱い数量の推移 30000 25000 シンガポール 20000 千TEU 香港 高雄 15000 釜山 上海 10000 深セン ポートケラン 5000 タンジュン・ペラパス ドバイ 0 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 ※ 2005年に香港を抜き世界一の取扱量となった。2009年も世界一。2位上海は25.0百 万TEU。 ※ 2001年のシンガポールの急落は、隣接するタンジュン・ペラパス港(PTP)の開港による影響。 (マースク及びエバーグリーンが拠点をPTPに移した。) (2)事業規制等港運に関する法制度 MARITIME AND PORT AUTHORITY OF SINGAPORE ACTによりMPAの許可が必要。 (3)政府の基本政策・最近の動向 2009年4月1日から(1年間適用)、商用港湾小型船舶に対する港湾使用料の20%割引を実施し、港湾に おける燃料油供給業者、船具販売業者、タグボート運行者、国内フェリー運行者等のサービス供給者の 業務コストを軽減。 また、コンテナ船、タンカー、ばら積運搬船等の外洋航行船舶にも割引を拡大。港湾滞在日数が10日 を超えない外洋航行船舶に対して10%割引。この割引はコンテナ船への20%割引等の既に実施している 割引に追加して行われる。2009年4月1日から開始し、1年間適用。 17 8.船員 MPAの一部門であるTraining Standards Departmentが船員の訓練及び資格を担当している。シミュレ ータ評価、口頭試験によりCertificate of Competencyを発効しており、これはSTCWに適合している。 船員訓練施設として、Training Standards Departmentの下にIntegrated Simulation Centreがあり、 乗船シミュレータを保有している。 MPAは現在60カ国が発効した海技資格を承認している。 9.造船業及び舶用工業 (1)概要(参考資料:日本舶用工業会・日本中小型造船工業会 東南アジア造船関連レポート27) ①造船業 シンガポールの2007年の海事産業全体の売り上げは130.5億シンガポールドルで、その内訳 は、船舶修繕・改造が48%、新造船が14%、オフショア関連が38%と、修繕・改造及びオフショ ア関連の割合が高いのが特徴である。 FPSOへの改造で70%、リグ建造で60%の世界シェアを誇る。 シンガポールにおける造船所は、ケッペルグループとセムコープマリンの2大企業に代表される。 ケッペルグループ セムコープマリン 2006年造船関連売上高 S$57億5500万 S$35億4504万 従業員数(造船関連) 169,638人 - ②舶用工業 舶用機械産業自体の売上高を示すデータは存在しない。シンガポール海事産業協会(ASMI)の会員数 は204社あるが、そのうち151社が舶用機械の取扱業者(海外メーカーの現地法人や代理店を含む) で あ る 。 ま た 、 ASMI メ ン バ ー 以 外 で も 舶 用 機 械 取 扱 業 者 は 存 在 し 、 Singapore Maritime Directory2007/2008 によると、舶用機械及びサプライ分野では1,138社存在する。 舶用機械のシンガポールへの輸入金額の合計は2007年で7億3003万シンガポールドルであ り、輸入元別順位では、日本(27%)、ドイツ(23%)、アメリカ(22%)となる。品目別割合 では、推進器(75%)、推進器用部品(12%)、レーダー機器(7%)となる。 舶用機械のシンガポールからの輸出金額は2007年で再輸出額2億618万シンガポールドル、地 場輸出額2737シンガポールドルである。輸出先別順位では、インドネシア、マレーシア、中国とな る。 (2)政府の基本政策・最近の動向 環境技術を含めた海事R&D分野を推進しており、MPAが一部補助金を拠出(MINT Fund)。 10.観光 (1)概要 ■景勝地、史跡名勝も無く、観光資源に恵まれない国であったが、セントーサ島観光開発やシンガポー 18 ル全体を1つの観光資源と見なしたまちづくり・イベント企画を行うとともに、空港等のインフラを含 めた施設整備に努め、買い物、グルメを中心とした観光スタイルに至っている。 2000年に入って観光客数に頭打ち傾向が見られたことから、スパ、クルーズ、カジノ、F1開催な どの新たな観光資源の開発・充実(2005年4月、カジノを解禁し、カジノを含む総合リゾート施設 開発を決定。)や、ASEAN地域での観光ハブ機能、トランジット機能の充実等に取り組んでいる。 特に、2008年3月の世界最大の観覧車のオープン、2008年9月のF1開催、2009年及び2010年(マリーナ地 区は2009年末に開業予定であったが2010年に延期)に完成が予定されているカジノを含む総合リゾート の開発等大規模な外客誘致策を展開。 ■観光収入全体の40%(S$50億:2007年)を占めるBTMICEに力を入れており、国際会議等の誘致に 積極的。 ■他民族国家である利点を生かして、幅広い人種の受け入れが可能 ■2007年の来星者数約1030万人と過去最高であったが、2008年は後半の世界的経済後退の影響を受け 1010万人(前年比1.6%減)に減少。うち、日本からは約57万人で、減少傾向が続いている(ピーク: 1995年 117万人)。 ■2008年のシンガポールからの訪日外客数は約16万8千人(前年比10.6%増)で過去最高を記録。 ■主管庁は貿易産業省の外庁であるシンガポール観光局(STB) ①インバウンド(シンガポールへの来訪者)の現状 a)来訪者数推移(STB資料) シンガポール来訪旅行者数 10,284 10,117 8,942 シンガポール来訪者総数(千人) 総数 7,691 8,000 6,898 7,137 7,292 7,198 6,426 2,000 8,328 7,522 7,566 6,958 6,242 1,500 6,127 6,000 1,109 1,001 4,000 1,179 1,171 1,094 日本人 843 860 1,000 930 756 723 599 2,000 589 594 595 571 434 0 0 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 1997年 500 シンガポール来訪日本人総数(千人) 9,751 10,000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 これまで順調な増加を続けてきた来訪者数が、初めて対前年減(前年比1.3%減)。ヘ イズ(インドネシア等の野焼きによる煙害)の影響が指摘された。 1998年 アジア通貨危機による大幅減 2000年 経済回復及び観光政策のてこ入れにより、前年比10.5%増 2001年 2001年9月11日の米でのテロ事件の影響により再び減少。日本からの来訪者は、同事件と 日本経済の景気の低迷を背景に、修学旅行及びビジネス出張が大幅減。国別旅行者数は一 時的に中国に抜かれ3位に後退。(1位インドネシア) 19 2002年 微減(バリ島爆弾テロの影響と考えられる。) 2003年 SARSによる大幅減(19.1%減少)。日本からの旅行者は、前年比40%減。 2007年 来訪者総数は、過去最高を記録。 2008年 ホテル料金の高騰、年後半の景気後退により来訪者総数が減少。 2009年 1月から8月までは、景気後退、新型インフルエンザ等の影響により前年同月比マイナス が続く。9月に前年同月比プラスに転じ、来訪者減少は底打ち感。 b)来訪者内訳 ・ 出発地別来訪者は、ASEAN以外ではSARS以前は日本が1位であったが、2003年以後、 中国(本土)が1位。 ・ 2008年の国別の訪問者数では、1位インドネシア(176万5千人)、2位中国(107万 9千人)、3位オーストラリア(83万3千人)、4位インド(77万8千人)、5位マレーシ ア(64万7千人)となり、上位5カ国で全体の訪問者数の約50%となった。また、上位10 カ国の中で前年比増となった国は、オーストラリア(8%増)及びインド(4%増)のみであっ た。 c)観光収入 2008年の観光収入は148億シンガポールドル(前年比4.8%増)で、過去最高を記録。 d)ホテル稼働率、平均客室単価等(STB資料) ・2008年のホテル客室稼働率は前年実績を大きく下回り、さらに下降傾向にある。ホテル客室稼働 率は81%(前年より6.0ポイント減少)。 ・2008年のホテル宿泊料収入、平均客室単価は過去最高を記録。ホテルの宿泊料収入は21億シン ガポールドル(前年比12.1%増)で、平均客室単価246シンガポールドル(前年比21.9%増)、 稼働客室宿泊料収入(平均客室単価×客室稼働率)は199シンガポールドル(前年比13.5%増) となった。 ホテル平均客室単価 2007年 2008年 2009年 ホテル平均客室稼働率 350 2007年 2008年 2009年 95 301 300 91 90 258 250 256 S$ 249 247 241 236 237 233 224 200 204 200 191 182 178 192 190 194 186 209 208 180 177 205 204 202 82 82.7 82 81 80 79 75 75 82 80 78 77 74 74 181 174 88 85 79 % 89 85 81 80 216 211 90 87 86 85 83 83 239 232 222 207 86 85 85 91 87 73 71 70 69 150 66 65 60 100 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 ②アウトバウンド(シンガポール在住者による海外旅行)観光事情 a)海外旅行者数 シンガポール人の海外旅行者数が増加傾向にある中、日本への旅行者は近年大幅に増加。2008年のシ 20 ンガポールからの訪日外客数は約16万8千人(前年比10.6%増)で過去最高を記録。2009年は景気後退、 新型インフルエンザ、円高等の影響により前年同月比マイナスが続く。(総数はSingapore Immigration and Checkpoint Authority、日本への旅行者数はJNTO資料) シンガポール居住者海外旅行者数推移(千人) (陸路による旅行者を除く) 152 5533 6,000 5,165 5,159 全数(千人) 5,000 4,000 3,745 3,971 120 116 90 2,000 68 74 76.7 140 6,024 4,444 4,363 4,399 4,221 3,000 160 94.2 100 80 76.9 69.5 60 59 1,000 40 0 20 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 全数 日本への旅行者数(千人) 7,000 日本向け b)シンガポール人訪日外客の特徴 ・ショッピング、ポップカルチャー、食 シンガポールでも100円ショップ(2ドルショップ)、アニメ、コスプレ、日本食レストランが人気 ・四季(特に雪、桜等) シンガポールには無い、雪・桜等の美への興味 ・東京、北海道が主要旅行先 北海道の人気が非常に高い。冬にはチャーター便のツアーも。他の季節でもレンタカーによる旅行等 充実。 ・近年は、東北等のローカルエリアも注目 テレビ番組で日本の旅番組が放映され、人気番組になっており、温泉、旅館等への興味が高い。 ・教育旅行先 テクノロジー、自然、環境、ポップカルチャーを含む芸術等、幅広く学べる日本への教育旅行は人気。 日本政府も一部補助金を拠出。日本ファンの増加へ。 ③観光担当政府機関、政府観光局の組織体制 ・観光は、産業振興という仕切で貿易産業省(Ministry of Trade And Industry)が他の産業と同様に所 管。 ・その外庁であるシンガポール観光局(Singapore Tourism Board:STB)が実際の観光行政を担う。 (各国における観光宣伝事業も、各地域に置かれたSTB海外事務所が実施しており、観光に係る企画 立案・実施・宣伝の全てを行っている)。 21 STB概要 ・貿易産業省の外庁として、1964年設立。 ・任務:観光政策の企画立案、実施、海外宣伝 ・海外地域事務所:22事務所。政府観光局として、各地域においてシンガポールのPR、観光マーケ ティングを実施。 ・職員数:約400名 ・組織:政策決定機関として評議会(Board)があり、その長(Chairman)がトップ。 評議会メンバー:12名。旅行代理店、ホテル、交通等観光関連業界の有識者で構成。 評議会の意志決定を受けて、長官(Chief Executive)をトップとする組織(実体上のSTB)が政 策を執行する。主に企画・観光開発、広報・サービス品質、レジャー、国際、BTMICEの5部門があり、 他にIR担当等の特別部門がある。 ・STB予算 年度 2005 2006 2007 2008 予算額(千S$) 165,003 176,692 183,562 213,229 2007年7月のCESS撤廃後は、予算のほとんどが政府からの補助。CESS撤廃前は総予算の約1/4がCESS、 約3/4が政府補助。 ④国際観光収支(日本ASEANセンター資料) 旅行客の滞在日数の短縮化等により、97年のアジア通貨危機以後も観光収入は漸減傾向にあったが、 シンガポールへの旅行者増に伴い2004年から再び増加に転じた。一方、海外旅行者数の増加により 支出も増加し、2001年より支出超過となった。 シンガポール国際観光収支 12000 10384 9947 4535 4363 7, 06 9 5, 22 6 5, 90 3 3, 78 3 5003 6299 4, 61 9 4, 42 8 73 5, 14 2 4631 4, 59 6 5, 0 6000 4000 7861 7619 6, 29 2 8000 9242 7, 39 1 7, 74 4 金額(百万USドル) 10000 3872 3019 2000 0 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 収入(シ) (2)観光関連諸制度 「シンガポール観光局法」 STBの設置法。 22 支出(シ) 「旅行代理店法」 旅行代理店は一定水準以上のサービスを求められるため STBの認可が必要。 「ホテル法」 ホテルは、HOTEL LICENSING BOARDの認可が必要。 「シンガポール観光(観光振興税)法」 ホテルやレストラン等の利用料金の1%を徴収(cess)し、STBの予算として観光ファンドに繰り入 れ。→cessは2007年7月に0%に 「観光振興(ツーリスト・ガイド免許及び取り締まり)規則」 ガイドについても、本規則に基づき免許制となっている。 (3)政府の基本政策・最近の動向 ①ツーリズム2015 ・観光セクターの成長を促進するための戦略的ロートマップ ・2005年1月に公表 重点 ・会議/展示会都市としての強固な地位強化 ・豊かな経験(ユニークリーシンガポール)ができるレジャー目的地としての発展 ・健康管理や教育のような質の高いサービスを楽しめるサービスセンターとしての確立 目標 2004年 2015年 訪星外客数 800万人 1700万人 観光収入 S$100億 S$300億 観光従事者 15万人 25万人 観光開発基金の設立 ・規模:S$20億 ・インフラストラクチャー開発、観光関連従事者の能力強化、イベントの誘致、観光商品の開発 ②BOOST 景気悪化を背景に、観光産業への支援を行うため2009年2月に発表した総額9000万シンガポ ールドル(約54億円)の観光産業強化策。 a)市場キャンペーン キーターゲットは、中国、インド、インドネシア、マレーシアの主要4カ国と新興市場のベトナム、 乗り継ぎ客の期待できるオーストラリア、英国、ドイツ。インターネット利用のキャンペーンで、名前 と電子メールアドレスを登録した人を対象に、総額50万Sドル相当のシンガポール往復航空券と毎月 1万Sドルの賞金が当たる懸賞を実施。 b)雇用の活性 観光業界の人材育成支援として研修費用の補助を実施。 c)MICE強化 イベント開催費用をSTBが補助 d)その他 23 旅行代理店・観光ガイドの新規登録・登録更新費用の削除、法人税低減等。 ③TOURISM COMPASS 2020 2020年までのシンガポール観光政策の青写真を描くため、STBと観光業界で委員会及び5つのタスクフ ォース(Business, Enrichment, Lifestyle, Marketing, Travel and Hospitality)を立ち上げ、検討 中。同時に、一般にも2020年のシンガポール観光に期待するアイデア、意見を募集中。 ④日本との観光協力 2002 年の日本・シンガポール経済連携協定(JSEPA)発効により、日星両国の観光振興を図るため、 両国間の相互訪問の拡大や観光地の開発等に協力(観光に関するデータの相互提供、来訪外国人に対す る情報提供ノウハウの交換、観光開発に関する政策情報の交換)が促進されることとなっている。 (4)観光関連産業の状況(日本ASEANセンター資料) 観光旅行産業のGDP(2007年) 観光旅行産業(直接的経済規模) 観光旅行産業(直接及び間接的経済規模) 金額(10億米㌦) GDPに占める割合(%) 金額(10億米㌦) GDPに占める割合(%) 3.48 2.23 12.99 8.33 観光旅行産業による雇用(2007年) 観光旅行産業(直接的経済規模) 人数(千人) 観光旅行産業(直接及び間接的経済規模) 国内雇用者に占める 人数(千人) 割合(%) 59.04 国内雇用者に占める 割合(%) 2.22 176.32 6.62 (5)その他(最近のトレンド) シンガポールの主要観光プロジェクト ■総合リゾート(Integrated Resorts: IR)の開発 マリーナエリアとセントーサ島の二カ所に総合リゾートを開発 Marina Bay Sands ・カジノ、ホテル、MICE施設、シアター、ミュージアム、ショッピングセンター等 ・2009年末開業予定(2010年に延期) ・総工費:S$50億以上 ・主体:ラスベガスサンズ Resorts World at Sentosa ・カジノ、ユニバーサルスタジオ、海洋生物公園、ウオーターパーク、MICE施設、ホテル、ショッピ ングセンター等 ・2010開業予定 ・総工費:S$50億以上 ・主体:ゲンティング 24 ■F1開催 ・2008年9月に初開催 ・初めての夜間公道レース ・5年間契約 ・5万人規模の集客 ■国際クルーズターミナル建設 ■大規模公園の整備(マリーナ地区、マンダイ地区等) ■シンガポールリバー、オーチャードロードの改良 ■スポーツハブ建設 ■ユースオリンピック開催 等 25 Land Transport Master Plan -シンガポールにおける陸上交通網の改善計画- ポイント ・ 今後 10 年から 15 年の陸上交通開発の指針となるロードマップ ・ 自家用車の利用を抑え、バス・MRT 等の公共交通機関の利用を促進 ・ 2020 年までに朝のピーク時間帯の公共交通機関の利用率を 70%にする ・ 陸上交通庁(LTA)による一元的バス運行計画策定やバス運行事業者への競争原理の導入等によるバス サービスの向上 ・ 2020 年までに、MRT(Mass Rapid Transit。我が国の地下鉄や通勤路線に相当。)の2本の新線の建設 等、総額 200 億シンガポール・ドルの事業を実施。 ・ 効率的な鉄道運営とコスト競争性を維持するため、事業運営期間を 10 乃至 15 年に短縮する等、より発展 した競争的環境(Contestability)を整備。 ・ 2020 年までに、高速道路 3 路線を整備。 ・ 自動料金徴収システム(ERP)の拡大 問題意識 人口密度の高いシンガポールにおいて、公共交通機関が、生活面及び環境面での持続可能な都市としての 基礎となる。 ・ 既に国土の 12%を道路として使用。道路の拡張ペースは、過去 15 年間の年間 1%から、今後 15 年間 は年間 0.5%に減少。 ・ 現在、陸上交通の利用者は1日あたり 890 万人だが、2020 年には 1430 万人に拡大。 Ⅰ.バス 1.シームレスな Hub-and-spoke システム 密集したシンガポールにおいては、全ての2地点間を直結する運行では機能せず、Hub-and-spoke システ ムが効率的。Hub-and-spoke システムにおいては、交通機関の乗り換えが不可欠となることから、接続性 の改善が必要で、全ての公共交通機関を一体として計画及び運用すべき。 (1)陸上交通庁(LTA)による一元的バス運行計画策定 ・ 現在、バス運行会社2社(SBS トランジット、SMRT)が商業的観点からバス路線の計画を立てているが、 2009 年までに LTA が一元的に管理 ・ 現在、公共交通機関利用者の 71%の人が目的地まで1時間で到着できるが、2015 年までに 80%に増 加。 ・ 現在、公共交通機関利用者は自家用車利用者の 1.7 倍の移動時間がかかっているが、2020 年までに 1.5 倍に減少。 ・ Quality of Service standards の強化により、バス運行会社は、バスを増便することが要求され、2009 年 8 月までに、80%以上のバスサービスにおいて、ピーク時の頻度を現在の 15 分毎から 10 分毎以下 に改善。 ・ 特に、ERP の拡張の影響を受ける場所において、ピーク時の頻度を 2008 年 6 月までに 12 分毎に、 26 2009 年 8 月までに 10 分毎に改善。 (2)バスと鉄道の重複運行の許可 ・ 現在、禁止されている、鉄道と平行に走るバス路線を許可。2008 年 6 月から混雑の激しい MRT 南北線 と東西線に沿って走るバスサービスを許可。 (3)距離をもとにした運賃の導入 ・ 2009 年までに、乗り換えに関係なくバス・鉄道で移動した距離に応じた、通しの運賃システムを導入 (4)バスのスピードアップのためのバス優先策 ・ 2008 年 6 月までに、通常のバス専用レーンを 120km から 150km に、終日バス専用レーンを7km から 23km に拡充 ・ 2008 年末までに、バス優先信号による交差点でのバス通行優先を試行 ・ 2008 年末までに、バスが停留所から道路へ合流する場合に、他の車両はバスに道路を譲ることを義務 化 ・ 上記の施策により、現状、支線バスで 16km、基幹バスで 19km の速度を、2009 年までに 20-25km に 増加 (5)統合公共交通ハブ ・ Boon Lay(2009 年)、Clementi(2011 年)に統合公共交通ハブ(バスと MRT の乗り換えをスムーズに するとともに、生活のハブとなるターミナル)を建設中。さらに、今後 10 年で5カ所(Bedok, Jurong East, Serangoon, Joo Koo, Marina South)に建設予定。 (6)統合公共交通情報サービス ・ 現在、32カ所のバス停に設置しているリアルタイム到着情報掲示板を 2008 年 5 月までに20カ所追加。 ・ 2008 年 7 月からリアルタイム到着情報をSMS(ショートメール)で提供。 ・ 2008 年 7 月までに、インターネット等で SBS トランジット及び SMRT の両方をカバーした公共交通機関 路線検索システムを提供 2.効率化及びサービス向上のための競争原理の導入 (1)バスサービスの競争強化 ・ 現在、2社のみがバス運行を担っているが、バス運行事業者が定期的に競争にさらされることが効率とサ ービス向上を促すことから、2009 年を目処に、競争強化について関係者と慎重に検討する。 (2)プレミアムバス等のニッチサービスの向上 ・ プレミアムバスやピーク時の急行バスの増加。現在 42 のプレミアムバスサービスを 2008 年 6 月までに 少なくとも 72 に増加。 3.陸上交通への国民参加 ・ より地域社会に密着した業務を行う Land Transport Community Partnership Division を LTA も設 置 ・ 交通政策について市民と意見交換を行う Community Outreach Programme や学校での講演等を推 進 ・ 陸上交通ギャラリーの開設 Ⅱ.MRT 2020 年までに、住民は、平均して 400m 以内、又は徒歩 5 分の範囲内で MRT 駅にたどり着けるようにな る。 27 1.2つの新線の建設 ・ 新線の一つ、トムソン線(TSL:Thomson 線)は、マリーナ・ベイの中心から中央商業地区(CBD)を抜け、 シンミン(Sin Ming)、ケブン・バル(Kebun Baru)、トムソン、キムセン(Kim Seng)といった現在 MRT に よる接続のない住宅団地を結びつつ、ウッドランズに至る線。 ・ マリーナ・ベイからは、もう一つの線・東部方面線(ERL:Eastern Region Line)が、タンジョン・ルー (Tanjong Rhu)、シグラップ(Siglap)、べドック・サウス(Bedok South)等を経て、チャンギ(Changi)ま でを結ぶ。 ・ TSL と ERL とで、48km の新線となる。政府は既に、TSL を 2018 年までに、ERL を 2020 年までに完 成させるため、作業を開始。 2.新規の延伸線 ・ 2015 年頃の完成を目指し、南北線(North-South Line)及び東西線(East-West Line)に新たに延伸線 を建設。 ・ 南北線では、マリーナ・ベイ駅から新たなクルーズ客船ターミナルが建設されるマリーナ・サウス地区まで の 1km の延伸線を建設するほか、東西線では、トゥアス(Tuas)までの 12km の延伸線を建設する。 3.2020 年までに鉄道ネットワークを2倍に ・ これらの新線等の建設費用は約 200 億シンガポール・ドルと見込まれ、これまでに政府が実施してきてい るブーン・レイ(Boon Lay)延伸、環状線(Circle Line)及び都心線(Downtown Line)の各事業の合計 を上回る。政府は、これらのプロジェクトは、増大する人口と拡大する経済の要求する交通インフラを確保 するために必要な投資であると決定した。 ・ これらの事業により、鉄道ネットワークは今日の 138km から 2020 年には 278km となり倍増し、今日の3 倍の乗客を輸送するだろう。鉄道ネットワークの密度は人口 100 万人当たり 51km となり、ニューヨーク、 ロンドンに並び、香港、東京を上回ることになる。 4.既存路線の快適性向上 ・ 2008 年 2 月から既存路線において朝夕のピーク時に週 93 本増便。これにより混雑が緩和されるととも に、ピーク時の待ち時間を 10-15%低減。 ・ 車両の購入等を進め、南北線(North-South Line)及び東西線(East-West Line)の運送能力を4年間 で 15%増加し、ピーク時の待ち時間を現在の 2.5-4.5 分から2分に短縮。 5.環状線(Circle Line)及び都心線(Downtown Line)の前倒し ・ ベドック貯水池周辺及びタンピネス(Tampines)の住民の利益のため、都心線第3期は完成を2年前倒し し、ブキティマ(Bukit Timah)地域に建設する都心線第2期の完成の1年後の 2016 年に完成させる予 定。 ・ 環状線第3期の開通を 2010 年から 2009 年半ばに前倒し。 ・ マリーナ・ベイ地区のアクセス性を向上させるため、環状線の延伸として、マリーナ・ベイ駅を 2012 年に開 業させる予定である。 6.地上駅でのプラットフォームドアの設置 ・ 2009 年までに Yishun, Jurong East, Pasir Ris にプラットフォームドアを試行のため設置し、その後 2012 年までに全ての地上駅に展開。 7.資金調達及び鉄道産業の枠組み強化 ・ 運輸省は財務省と協力し、資金調達フレームワークを見直し、線的アプローチからネットワークアプローチ へと変更すべき 28 ・ 鉄道運営の効率性を増進し、コスト競争性を維持するため、鉄道産業の枠組みを強化する。現在、2社が MRT を運行しており、規模の経済の観点から合併させるべきとの議論や、両者間での競争が効率性や サービス水準の改善に役立つとの既存の枠組みへの支持の両方があるが、LTAの評価は、1社か2社か ということではなく、「競争の脅威」(the threat of competition)は既存事業者にとっては間違いなく現実 問題となるということであり、さらに、競争は、鉄道ネットワークの統合において妥協を強いるものにはなり 得ない。この観点から事業運営期間を現在の 30 年から 10 乃至 15 年に短縮することについて、関係者と 慎重に検討する。 Ⅲ.高速道路 1.新線建設 ・ 2008 年 9 月 20 日にカラン・パヤレバ高速道路(KPE)を全面開通。北東地区居住者の中心地区への移 動時間を 25%短縮。 ・ 2013 年までに 25 億ドルでマリーナ海岸高速道路(MCE)を建設。 ・ 2020 年までに南北高速道路(NSE)を建設。国内 11 線目の高速道路であり、総延長 21km、事業費 70 億~80 億ドル。北部地区居住者の中心地区への移動時間を 30%短縮。 2.既存線の改良 ・ 中央高速道路(CTE)とタンピネス高速道路(TPE)の拡幅、インターチェンジの改良 ・ 高速道路モニタリング・予報システム(EMAS)の拡張 Ⅳ.自家用車 ・ 現在の自動車台数は 850,000 台。1997 年から 2004 年の間に自動車台数は 10%増加し、自動車での 移動距離は 23%増加。 ・ 自家用車は 1997 年の 370,000 台から 2007 年の 515,000 台と 40%増加。 ・ 自動車の混雑度は 1999 年から約 25%増加。 ・ 自家用車の平均年間使用距離が 21,000km で、他都市と比較(ロンドン 9,100km、メルボルン 13,900km、シカゴ 19,800km)して高い。 1.自動料金徴収システム(ERP)の拡大 (1)通行速度測定の高度化 ・ 2008 年 7 月から ERP 料金の変更を決定するための指標を、現在の平均通行速度から 85 パーセンタイル速 度(ドライバーの 85%が当該速度以上で走行すること)に変更。 (2)ERP 料金の変更(2008 年 7 月から) ・ ERP 料金を変更するときの増加単位を 0.5 ドルから 1 ドルに変更。(50 セントの増減ではドライバー行動 への影響は少ないため) ・ ERP 基本料金(新たな導入ポイントでの当初料金)を 1 ドルから 2 ドルに引き上げ。 (3)中心地区の渋滞緩和 ・ クレメンソーアベニューからフラトンロードにかけて、2008 年 7 月に ERP 料金徴収ポイントを追加。 2.自動車税の引き下げ ・ ERP の改良による収入増加は年間 7 千万ドルと見積もられる。自動車保有よりも自動車使用に対して負 担を求めるとの原則から、全車両に対し道路税を最大 15%引き下げ。これにより政府は 1 億 1 千万ドル 29 の減収。 ・ 現在、市場価格の 110%の追加登録税を、2008 年 3 月から市場価格の 100%に引き下げ。これにより政 府は 2 億ドルの減収。 3.自動車台数成長率の引き下げ ・ 2009 年 5 月より、自動車台数成長率を現在の 3%から 1.5%に引き下げ、さらなる引き下げが必要かどう かの評価とともに自動車台数成長率を 3 年後に見直す。 Ⅴ.多様なニーズへの対応 1.アクセシビリティーの改善 ・ バス停留所や MRT 駅への歩行環境を改善するため、屋根付きの通路や歩道橋を整備。2010 年までに 86%歩道橋を屋根付きにする。 ・ 2010 年までに歩道、駅・タクシー・バス停留所への通路、全ての公共道をバリアフリーにするための 6 千 ドルの計画を完了。 ・ 2010 年までにバスの 40%を、2020 年までに全てのバスを、車いす対応低床バスにする。 ・ 現在、全ての駅にエレベータを含むバリアフリーな入口が少なくとも一つあるが、7 千ドルの費用で 16 駅 に 17 の追加エレベータを設置。さらに、2011 年までに MRT の駅の 70%以上が少なくとも 2 つのバリア フリールートを持つようにする。 2.低所得者層の公共交通利用 ・ 今後も運賃は公共交通委員会によって規制され、運賃が手ごろな価格に維持。 ・ 手当支給等のスキームを通じての助成。 ・ 公共交通運行者や政府による交通バウチャーの提供。 3.タクシーサービスの改善 ・ タクシーの電話予約に関するサービス品質基準を強化。 ・ 2008 年 7 月より共通電話予約番号を導入。 4.自転車利用者の利便性向上 ・ 鉄道及びバスへの折りたたみ自転車の持ち込みについて、2008 年 3 月から 6 ヶ月間試行 ・ 住宅団地の MRT 駅やバス停留所の駐輪場の改善 ・ 2008 年 3 月から自転車の利用の多いサイクリングルートに、自動車運転者への注意サインを掲示 ・ タンピネスの歩道における自転車通行の試行 5.環境保護 ・ 以下の車種について、ユーロⅣの排ガスレベルを遵守 - 2014 年までに全てのタクシー - 2010 年までに 40%のバス、2020 年までに全てのバス ・ CNG 等のクリーン燃料の使用とともに、環境自動車割引等を通じたエネルギー効率の高い自動車の普 及推進 (了) 30 自家用自動車の規制 1.自動料金徴収システム(ERP; Electronic Road Pricing) 概要 都心部や特定の混雑区間への車両の流入を抑制するため、流入地点にガントリー(ゲ ート)を設置し、ガントリーを通過する際に、車載器に差し込んだキャッシュカード から自動的に課金するシステム。1999年に電子化。 ガントリー 車載器及びキャッシュカード 設置地点 ガントリーは中心商業地区(CBD:Central Business District)への進入地点、 オーチャードロードへの進入地点、高速道路及び他の混雑する道路に設置されており、 現在、ガントリーの数は65あるが、今後さらに増設していく予定。 課金方法 キャッシュカードからの自動引き落とし。キャッシュカードは事前にATM、駐車 場等に設置された専用端末、コンビニ等でトップアップする方式であり、キャッシュ カードの金額が不足したままガントリーを通過すると、後日、罰金(S$10)の請求 書が送付されてくる。 車載器を用いたキャッシュカードからの課金は、駐車場の料金徴収にも利用されて いる。 稼動時間及び課金額 時間帯や場所に応じて、柔軟に徴収金額を設定。基本的には平日の通勤・帰宅時間 帯に稼動するものが多いが、土曜日の昼間に稼動するものもある。 一回の課金額としては1Sドル~3Sドルに設定されているものが多い。 定期的(約3ヶ月毎)に課金額を見直しする。見直しは、高速道路で時速45~6 5km(45kmを下回る場合は料金を上げ、65kmを上回る場合は料金を下げる)、一 般道路で時速20~30kmを維持することを基準としている。 ERPシステムの設置費用及び収入額 ガントリー60基の設置費用は約S$8000万である。しかしながら近年の資材、 人件費等の高騰により、今後設置予定のガントリー27基でS$8300万を予定して 31 いる。その他、年間の維持費が必要。 一方、ERPによる一年間の収入額は約S$1億となる。 2.自家用自動車の保有制限(COE制度等) ・ 自家用自動車を保有するためには、政府が毎年割り当てる保有許可証(Certificate of Entitlement)を入札で取得することが必要(約110万円程度で推移)。自動車台数成長 率は現在3%であり、2009年5月より1.5%に引き下げ予定。 ・ また、追加登録税(市場価格の100%)、輸入関税等をあわせると、自動車購入価格は日 本の価格の約2.5倍となる。 参考 ・ 2009年の自動車台数は925,000台。 ・ 乗用車は1997年の370,000台から2007年の515,000台と40%増加。 ・ 1997年から2004年の間に自動車での移動距離は23%増加。 ・ 乗用車の平均年間使用距離が21,000kmで、他都市と比較(ロンドン9,100km、メルボル ン13,900km、シカゴ19,800km)して高い。 32
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