営業改革の重要ポイント (抜粋)

目次
営業改革の重要ポイント (抜粋)
営業管理者の心得
........................................ 2
営業の主体業務は新規開拓
............................ 12

まずは現場主義に徹すべし! ..................................................................... 2

新規開拓こそが営業の主体業務! ........................................................... 12

営業の管理は難しい側面を持つのだが・・・ ...................................... 2

なぜ新規開拓が必要なのか ........................................................................ 12

過去には管理者は不要の時代もあった.................................................... 3

新規開拓が未熟な理由................................................................................. 13

ほっておけば混迷のスパイラルに入り込む ........................................... 3

新規開拓のステップ ..................................................................................... 14

これからの時代の営業管理者とは ............................................................ 4

新規開拓を実践するために ........................................................................ 15
セグメンテーションとターゲッテイング ..................... 6
仮説検証のアプローチ ....................................
16

活動対象とする市場・顧客を明かにしよう! ...................................... 6

なぜ仮設/検証なのか ................................................................................... 16

セグメンテーションとターゲッテイングとは ...................................... 6

個人の持つノウハウの洗い出し ............................................................... 17

なぜセグメンテーション、ターゲッテイングが必要か ..................... 7

組織としての仮設検証................................................................................. 18

セグメンテーション、ターゲッテイングの効果 .................................. 7

仮設検証の事例 .............................................................................................. 18

具体的な事例の紹介 ....................................................................................... 8

仮設検証のアプローチの効果 ................................................................... 19
個人に依存する営業から組織的営業へ ................. 9
営業日報の機能と重要性................................
20

組織的営業が営業改革のキーワード!.................................................... 9

営業日報は活動の道しるべ ........................................................................ 20

個人に依存する営業の時代.......................................................................... 9

営業日報の意味するところ ........................................................................ 21

なぜ組織的営業が必要か ............................................................................ 10

営業日報の機能 .............................................................................................. 22

具体的な評価の仕組みの紹介 ....................................................................11
目次
1
営業改革の重要ポイント
営業管理者の心得

まずは現場主義に徹すべし!
成熟経済でのパイの奪い合い、モノ余り、ニーズの多様化、そして不況による設備投資の減速・・・と、モノを売ることが大変な時代である。
こんな時代だからこそ、リーダーとしての営業管理者の真価が問われるのである。
外部要因を言い訳にするのでなく、営業部隊を立て直す大きくなチャンス到来でもあり、営業管理者自身が高い評価を得る大きなチャンスでもあ
ることを認識すべきである。
現場に任せきりにすると、活動は必ず低迷する。現場を熟知せず机上でコントロールしようとすると、「言われた通り実施しましたがダメでした」
を連発する無責任な組織になり、これまた活動は停滞する。
これを打破するためには、営業管理者自ら市場開拓を実践して、部下に手本を示すことである。
成熟経済、マイナス成長経済での営業手法は、だれもが経験のしたことがない領域であり、営業管理者の役目はその解を見出し、部下を指導する
ことである。
新たな環境で、自ら解を得るには「知(論理的思考)と動(行動力)のバランス」が求められる。
しかし、まずは自分の感性を信じ、自分の仮説を現場にぶつけ検証することを繰り返すことである。現場に身を置き、プレーイングマネージャー
として、もがき苦しむ中から、必ず解は見えてくるはずである。

営業の管理は難しい側面を持つのだが・・・
営業は、いったん外に出てしまうと活動内容や経過が十分に把握できない状態になる。ここが大きく社内業務と異なる点である。
顧客と、どんな話をし、その時の感触はどうで、次のステージをどう考えるか・・・
顧客との 2 者間での事実は、中々わかりにくい。
そして人と人との交渉においては、感性、知性、情熱、相性、そしてモチベーション等、人間の側面が一つの重要な要素になる。これも中々見え
営業管理者の心得
2
営業改革の重要ポイント
にくい。
そして商談成約という結果のみがクローズアップされ、その時の営業マンが脚光をあびることになる。
このように、見えないところでの活動、人間の内面に関わる活動等、複雑な要素が絡み合う中で、現状を正しく認識し、適切な判断を下していく
ことが営業管理者には求められる。
都度、顧客訪問の目的を明確にして計画を作り、訪問実績は営業日報に記述され、次のアクションの妥当性が評価できる仕組みは最低限必要であ
る。
しかし、それ以前に重要なことは、営業管理者が状況の良し悪しを感覚的に捉えることができることである。
その感性を養うためには、常に自らを現場に置き、市場を、顧客を、人を、熟知することであり、さらに自らの信念を基に、自らの五感を研ぎ澄
ませ状況を見極めていく姿勢である。

過去には管理者は不要の時代もあった
市場が拡大している時代は、一つの商談を失注しても、新たな商談を次々に開拓することができ、新たな商談を成約させるチャンスは十分にあっ
た。
あえて営業管理者が口をはさまなくとも、極端な話、ほっておいても営業活動は進行し、結果がついてきた。
要するに意欲ある現場の営業マンは、ノルマ達成のために必死に活動をし続け、売上を伸ばしてきたのである。
営業管理者の仕事といえば、ノルマ達成のため部下の尻を叩いて奮起させる程度のことで、あとは自分の大口顧客をフォローしながら、せいぜい
営業の効率と原価削減の事務処理に専念していれば、大した戦略も、管理も、リーダーシップもなくとも、相応な結果はついて来たはずである。
要は、市場が拡大している時代は、営業プロセスはどうでもよく営業マンに任せた状態で、結果だけみていれば営業は機能したのであり、営業管
理者の優务は問われなかったはずである。

ほっておけば混迷のスパイラルに入り込む
成熟経済、市場の縮小、製品・サービスの充足と、営業にとってモノを売ることが大変な時代の中で、さらに不況という最悪な事態に直面してい
営業管理者の心得
3
営業改革の重要ポイント
る。
顧客の担当は、設備投資、費用支出を抑えられ、モノを購入できない状況になると、ほんとうに有用な情報を提供してくれる営業マン以外には会
わなくなる。特に思いついたころにやって来て、同じ質問を繰り返し、同じ商品を同じように説明していく、そんな営業マンにはまず会わなくな
るだろう。
会えなくなれば顧客との関係はそれまで。
すると、商談に期待ができなくとも、行きやすい、会ってくれる既存顧客に通うことになる。
そこでも当然売上が上がるわけでもなく、重要な市場状況の把握さえ疎かになり、混迷のスパイラルに入り込む。結果、ますます営業目標とは乖
離していくことになる。
こんな時、営業マンは、営業管理者のリーダーシップによりどころを求めるのである。
成熟経済、マイナス成長経済と、外部環境が大きく変化する中で相も変わらず以前と変わらぬ営業方針と営業活動を強いる営業管理者は無能と言
うしかない。
単なる掛け声だけでなく、自ら現場に出て、現状を共有し、適切な具体的方向性を共に模索してく。
尐なくとも営業管理者が同一目線で活動することが、行き詰りを打破するための、同一方向を向いた活動に繋がるのである。

これからの時代の営業管理者とは
外部環境が変わり、今までの経験や基準があまり役に立たなくなっている中、相も変わらず過去の方法を部下に強いるようではうまくいくはずが
ない。
「こうすれば、こうなる」という新しい環境での、新しい解を、部下に求めるのでなく、自ら営業管理者が見出していかなくてはならない。
そのためには自らを現場に置くことである。机上で指揮する(指揮していると思い込む)営業管理者は不要な時代である。
まず、第一に、顧客、業界、経済、社会の状況や流れをつかむことである。そして、自ら現場に立ち、自ら開拓を行い、現状を肌で感じながら仮
説を立て、検証して確かめることを繰り返す。必ず大きな方向が見えてくるはずである。大きな方向が見えてきたら、部下も含めさらに細部での
営業管理者の心得
4
営業改革の重要ポイント
仮説・検証を組織として繰り返しながら「こうすれば、こうなる」という「解(方法)」を見つけていく。
第二に、方向性、方法が見えてきたら、環境に適応した方針を掲げことである。どんなに理想的な方針を掲げ、どんなに立派な計画を立てても、
活動が継続的に実行されなければ意味がない。そして、活動を継続的に実行し続けることが、一番難しいことであることも実感している。活動を
継続的に実行し続けるには、これまた自ら現場に立ち、適切な判断と指導を続けるのである。営業管理者自ら活動している後ろ姿は部下にとって
も手を抜けない状況にさせる。
「営業にとって大変な時代」を乗り切るには、営業管理者の相当な覚悟が必要である。
第三に、営業マンは人であり、それぞれの個性、能力を持ち合わせる。
一人の営業マンに全てを期待するのでなく、個性をうまく組み合わせて仕事を進めることは、結果に対し相乗効果を生む事にも繋がる。何よりも
営業マンの自己尊重・自己実現を満たすことは、モチベーションを高めることになるはずである。見えないところでの活動、人間の内面に関わる
活動等、複雑な要素が絡み合う営業にとってモチベーションは極めて重要な要素である。
山本五十六の言葉で「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」
、まさに現在の営業管理者の在り方に重ね合わせ
ることができる。
 営業管理者の意欲、知力、行動力が営業結果に大きく影響





営業管理者の心得
方針を定め、テーマを宣言し、向かうべき方向に導く指導力
やらざろう得ない仕組み、協力して仕事を進める仕組みを作る組織編制力
自ら現場に出て、活動を指揮し、市場を自ら見極めていく現場主義
営業マンの長所、強み、得意分野を生かした組織活動を実践する能力
部下の心理を読み取り、意欲、モチベーションを向上させる人間力
5
営業改革の重要ポイント
セグメンテーションとターゲッテイング

活動対象とする市場・顧客を明かにしよう!
自社の商品・サービスを、どの市場の、どの顧客を対象にしていくのか、具体化されているだろうか?
顧客属性を基に、顧客を分類し(セグメンテーション)、さらに、どの市場の、どの顧客を重点的に攻めていくのか(ターゲッテイング)
、明確に
する必要がある。対象を明らかにして初めて、それぞれ分類された領域に対する戦略、個々の重点顧客に対する戦略へと、進めていくことができ
るのである。

セグメンテーションとターゲッテイングとは
マーケティング論には必ず出てくる言葉であるが、決して難しい考え方ではない。
日常の営業活動の中で、言葉は知らずとも、無意識のうちに実施されているはずである。セグメンテーションとは、限りなく大きな市場に対し、
自社の商品・サービスの販売対象とする市場や顧客を明らかにするため、同質な小集団にグルーピングすることで「市場の細分化」を図ることで
ある。特に代表的な市場細分化基準として「デモグラフィック属性(基本属性)」、「サイコグラフィック属性(感情心理属性)」、
「状況属性」によ
るセグメンテーションがあげられる。
デモグラフィック属性(基本属性)
:業種業界、資本金、従業員数、上場未上場、地域商圏エリア・・・
サイコグラフィック属性(感情心理属性)
:価値観、考え方、欲求・ニーズ、悩み・不安、課題・・・
状況属性:既存顧客、新規顧客、得意客、潜在的顧客・・・
ターゲティングはセグメンテーションされた市場に対し、どのような顧客、どのような競合他社が存在し、どのような競争が展開されているか調
べ、自社が、最も競争優位になるためにどうすればよいかを検討し、狙うべき市場を明らかにしていくことである。
このとき、競争環境や自社の経営資源を十分に考慮する必要がある。すなわち自社の強みを十分に生かすことができ、競争優位を築くことができ
る市場を選び出す必要がある。
セグメンテーションとターゲティング
6
営業改革の重要ポイント

なぜセグメンテーション、ターゲッテイングが必要か
経営資源(ヒト、モノ、カネ、ノウハウ・・・)には、当然限りがあり、すべてのニーズ、市場に答えていくことは不可能である。
よって自社の商品・サービスが受け入れられる確率の高い市場や顧客を対象にして、経営資源を投入していくことになる。
当然であるが、商品・サービスの企画段階では、対象市場、対象顧客は想定され、開発されたはずである。しかしニーズの変化、ライフサイクル、
代替品、競合等により市場は変化しており、最前線にいる営業は最新の情報でセグメンテーション、ターゲッテイングを見直していく必要がある。

セグメンテーション、ターゲッテイングの効果
狙うべき市場が明らかになり、その市場における競争を優位に進めるための施策が練られる
ため、競争優位が確保できることになる。そして、ある程度、効果の期待できるセグメント
にターゲットを絞ることで、自社の効率性と顧客満足度を最大化することになる。
******** 重点プロモーション基準
200
3.0
従業員
数
資本金
(億円)
100.0
売上高
(億円)
********
3.0
1.5
決
申告所
利益
算
得(億円) (億円)
月
65
評
点
営業活動の「対象」と「重みづけ」が明確になることは、営業組織としてのベクトル合わせ
ができ、各営業マンの向かうべき方向と、行うべき行動が定まるわけで、組織としての組織
力アップにも繋がる。
「重点プロモーション基準」として、
「自社商品の適合性」と「顧客の経営情報(特に財務状況)
」が対になってよく使われる。経営情報を有効に
活用するには財務会計、経営分析の基礎知識も必要であり、また、ターゲッテイングには、競争優位を検討するための、考え方や手法に関する戦
略的基礎知識も必要になることから、セグメンテーション、ターゲッテイングが機能している組織では、営業マンとして、ビジネスマンとしての
基礎知識も備わることになる。
またセグメンテーション、ターゲッテイングは仮説からのスタートであり、市場環境の変化に対応するため、活動しながら、情報分析し、妥当性
を検証して、修正しながら新たな仮説を検証する、この繰り返しにより解を得ていく。
いずれにしても、経営情報、業界動向、市場変化を基に、商品/市場を見極めていく能力は、営業に求められる資質であり、セグメンテーション、
ターゲッテイングを通じて資質向上に繋がることは事実である。
セグメンテーションとターゲティング
7
営業改革の重要ポイント
具体的な事例の紹介

東京商工リサーチ等の調査会社より、自社商品・サービスの見込み客になり得る顧客の、顧客情報を購入する。購入するにあたっては従業員数、
資本金、売上、利益、評点等の一定の基準を指定する。
従業員(人)
購入した顧客情報を、各商品・サービスの販
売戦略の基準になり得る属性レベルから、顧
客群を抽出してみる。
例として従業員、資本金、売上、申告所得、
利益、評点を大きい順に並べ、上位何社かを
営業対象顧客と定義(ABC 分析)し、セグメ
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
(株)神奈川第一銀行
三葉精機製作所(株)
(株)グレート情報システム
(株)サンデン
みなとポリマー(株)
(株)東洋技術
東山鉄道(株)
(株)ナゴヤ
(株)日本発電
(株)久保田工業
(株)四谷酒造
(株)汎用バルブ
(株)パックシルバー
(株)エムロン品川
資本金(億円)
1,510
1,177
570
474
456
450
429
361
360
350
286
263
248
200
売上(億円)
三葉精機製作所(株)
(株)神奈川第一銀行
(株)サンデン
(株)四谷酒造
(株)エムロン品川
(株)ナゴヤ
(株)パックシルバー
(株)日本発電
(株)東洋技術
みなとポリマー(株)
府中大学
東山鉄道(株)
(株)グレート情報システム
353
280
42
29
21
20
11
7
5
5
5
4
4
三葉精機製作所(株)
(株)グレート情報システム
(株)東洋技術
(株)ナゴヤ
(株)四谷酒造
(株)日本発電
(株)エムロン品川
(株)久保田工業
(株)サンデン
(株)神奈川第一銀行
申告所得(億円)
882
666
260
249
186
186
157
144
137
119
(株)東洋技術
(株)久保田工業
(株)ナゴヤ
三葉精機製作所(株)
(株)日本発電
(株)グレート情報システム
(株)エムロン品川
(株)汎用バルブ
(株)オリオン
(株)ニコー
(株)Fスター
(株)グリーンハイム
(株)サンデン
利益(億円)
30
23
21
18
10
8
7
6
5
5
5
4
3
三葉精機製作所(株)
(株)東洋技術
(株)久保田工業
(株)ナゴヤ
(株)サンデン
(株)日本発電
(株)神奈川第一銀行
(株)エムロン品川
(株)パックシルバー
(株)オリオン
(株)ニコー
(株)グレート情報システム
(株)Fスター
(株)汎用バルブ
(株)イネイブル
(株)BUシステム
(株)マックス
評価
170
15
15
11
6
6
5
4
4
3
3
3
3
3
2
2
2
(株)久保田工業
(株)ナゴヤ
(株)グリーンハイム
(株)グレート情報システム
(株)四谷酒造
(株)BUシステム
(株)エムロン品川
(株)ニコー
(株)オージェーシー
(株)神奈川第一銀行
75
73
72
72
72
71
70
67
65
65
ンテーションの基本とする。
各商品・サービスの販売戦略の基準になり得る属性(デモグラフィッ
企業の優良性 と当社への依存度
ク属性、サイコグラフィック属性、状況属性)や「規模と成長性」、
「企
評点 / 社名
大
業の収益性」、
「企業の優良性」、
「当社にとっての重要度」、
「商品との
適合度」
、「自社の進むべき方向」等を考慮した項目を軸に、マトリク
(
既
存
顧
客
)
スに表し、それぞれの領域への戦略を明らかにする。さらには個々の
顧客での戦略を定め、プロモーション活動に入る。マトリクスで表す
ことで、各領域に属する顧客および戦略の見える化が図られ方向性を
共有することができる。
<
第 5 章 仕組み化はこうする「管理の仕組み」
分析 を参照
>
64 国立文化振興事業団
60 マックス
52 ヤマト工業
58 神奈川県情報技術試験場64 日本工学電気
59 日本時計製作
73 ナゴヤ
64 Fスター
72 アジア技研
65 オリオン
68 シャックス
68 日本発電
③②
④①
依
存
度
(
見
込
顧
客
)
60 日本発電
60 汎用バルブ
60 情報機器サービス
75 久保田工業
72 グリーンハイム
72 四谷酒造
58 ユーキ
58 東京バルブ工業
58 八王子精機
72 グレート情報システム
67 ニコー
65 オージェーシー
57 サンデン
56 みなとポリマー
55 東洋技術
71 BUシステム
65 神奈川第一銀行
76 イネイブル
52 三葉精機製作所
51 ランドマップ
51 日本放電科学
80 パックシルバー
75 ミヤギトマト
49 キョウリン
43 スワン
58 品川機械販売
60 オリオン
60 シャックス
58 東山鉄道
60 東京工業
58 イダシン
55 サイバー
地域顧客情報の
(一般顧客)
(重点顧客)
大
企業の優良性 (規模・収 益・評価点)
セグメンテーションとターゲティング
8
営業改革の重要ポイント
個人に依存する営業から組織的営業へ

組織的営業が営業改革のキーワード!
現在、営業の課題は、如何に営業マン個人への依存度を小さくし、組織としての相乗効果を出しながら、成果を上げていくことである。
市場・経済が縮小する中、確実に商談数も激減している。
数尐ない商談を、取りこぼしなく、確実に成約に持ち込むためには、営業マン一人の能力には限界があり、経営トップ、技術部隊、サポート部隊
を含め「全社員営業」の意識をもって臨まないと、なかなか成約が難しい時代である。
そこで、従来のような、一商談一営業マンによる自己完結型の営業から、営業フェイズ毎に、得意とする要員を張り付け、一つの商談を最強のメ
ンバーで臨む組織的営業が求められる。これは、営業のスタイルを大きく変えることであり、営業改革の第一歩でもある。この場合、重要になる
のが評価の仕組みである。チームでの成約に持ち込んだ商談評価を、関係した営業マンにどう反映させるか、仕組みが不可欠になる。

個人に依存する営業の時代
従来の営業組織では、営業マン同士の競争を盛り上げ、競わせることから売上げを確保してきた。
市場が一定方向に拡大している時代、一つの商談が成約できなくなくとも、次の商談を目指すことができ、営業マンの「やる気イコール結果」と
いう意味では、
「競争」も理に叶っていたかもしれない。
そして、
「営業は経験と勘と度胸だ」、
「営業は結果だ」という風潮が続いた。
直面する課題が、経験と勘で解決できるのであれば、こんな楽なことはない。
苦労して情報収集し分析することも、仮設検証の繰り返しで解を求める必要もなく、経験と勘により瞬時に解を得ることになる。
確かに変化が緩やかで、一定の方向に推移している時代は、経験と勘で正しい解も得られたかもしれない。しかし、時代の変換点と言われ、予期
しない新しい事象が次々に発生する今、過去の経験はあまり役に立たなくなっており、かえって過去の経験が足かせになり、活動を阻害する場合
個人に依存する営業から組織的営業へ
9
営業改革の重要ポイント
もあるはずである。
また、どんな経緯を踏もうと、経緯は問わず、結果(売上)が得られればよしとする営業スタイルも、市場が拡大し、営業マンの意欲がものを言
う時代には、ある意味で妥当性があった。しかし、今の時代、これら個人依存型営業は、過去の産物である。
なぜ組織的営業が必要か

全ての営業フェイズを満遍なくこなせる「スーパー営業マン」は皆無に等しい。
営業マンには、商談の切り口を作る初動営業は得意だが、提案・クロージングは不得意、提案・クロージングは得意だが、商品の企画分析という
マーケティングは不得意・・・これらは相反する能力である。市場のニーズが多様化し、複雑化した市場獲得競争において、一人の営業マンに全
てのフェイズを期待することには限界がある。
また、商談は重なるものである。
受注が見込まれる大口商談に集中していたために、他の重点顧客へのフォローが疎かになり、気がついてみると、競争相手との契約が成立してい
た
・・・
といったケースにもなり兼ねない。
従来のような、一商談の開拓から受注、フォローまで自己完結型での営業ではもはや限界である。
それでは、どうするか?
一つの商談において、主管の営業マンが不得意とする営業フェイズは、得意とする営業マンがフォローする。すなわち、チームで成約まで持ち込
むのである。
心理的側面からして、自分の得意分野が認められ、能力が生された上で組織目標に貢献でき、価値を共有できることは、自己尊重、自己実現を満
たすことになり、個人のモチベーションを高めることにもなる。
そして個人プレーから協力体制へと、同じベクトルで活動できることは、組織の活性化にも繋がっていくはずである。
組織的営業が叫ばれてから何年も経過するが、中々実施できない理由の一つとして、チームで成約に持ち込んだ商談評価を、関係した営業マンに
どう反映させるか、「営業マンの評価」の仕組みが確立できていないことにある。
個人に依存する営業から組織的営業へ
10
営業改革の重要ポイント
評価の仕組みが確立されておらず、各営業プロセスに、だれが、どう関ってきたかの評価がなされない場合、自分の成績にならない他人の商談に
関わることが希薄になるのは当然である。
「皆で協力して商談を成約させましょう!」と意気込んでみてもうまくはいかない。
総力を上げて、数尐ない商談成約に持ち込む組織的営業のためには、まず、それぞれの営業マンの知識、能力をオープンにして、適所に適材を投
入できる体制を組むことである。スキル表として知識、能力をオープンにすることは、各自のスキルアップ目標も明確になり、自己啓発へのトリ
ガーになるはずである。そして自社に合った「評価の仕組み」を作り上げることである。
具体的な評価の仕組みの紹介

具体例として
一つの商談に対し、各担当が各営業プロセスで関わった作業比
率を計算し、売上・利益を配分する形をとる。
売上 1000 万、利益 150 万の商談をチームで成約した場合の例
である。
「初期営業」を池田さんと田中さんが同等比率(5 割)で行い、
「提案活動」は佐藤さん中心(5 割)に池田さん(2 割)
、田中
さん(3 割)が行った。・・・
最終「フォロー」まで含めると、この商談に関わった作業比率
は、池田さん 24%、佐藤さん 14%、田中さん 62%となり、この比率で売上 1000 万、利益 150 万を配分するという例である。
また、成約の経緯において、自ら開拓した新規成約商談に対しては加点評価する。
経緯、売上、利益を、それぞれの段階毎で点数化し、総合ポイントで商談価値を評価する。
配分した売上・利益・総合ポイントで各担当の営業評価を行う。といった仕組みである。
<
第 3 章 明日のモチベーション「評価」
個人に依存する営業から組織的営業へ
総合評価でモチベーションアップ
を参照
>
11
営業改革の重要ポイント
営業の主体業務は新規開拓

新規開拓こそが営業の主体業務!
営業マンは、訪問しやすく、確実に売上に結びつく、既存顧客へのアプローチを優先する。そして既存顧客の何倍かの労力を要し、成約の保障も
ない、心理的負担の大きな新規顧客への訪問は、後回しにする。そして新規顧客への訪問が尐ない理由を、既存顧客の商談の忙しさ、事務処理の
多さを主張するものである。
したがって、「営業の主体業務は新規開拓」と定義し、新規顧客開拓の計画を優先しない限り、新規営業は進まない。

なぜ新規開拓が必要なのか
既存顧客への浸透戦略だけで、売上目標、利益目標が達成できる企業は稀であろう。
仮に今期、既存顧客だけの商談で、目標が達成できたとしても、来期も同様に、既存顧客からの商談で目標を達成できる保障はないはずである。
企業寿命 30 年といわれる中で、取引の先細り、信用度の低下、他社ベンダーへの鞍替え、企業買収や合併、海外へのシフト・・・さまざまな環境
の変化により、今までの取引が保障される確率は極めて低くなっている。したがって、将来のためには、継続的な新規開拓が必須になるのである。
長い間、取引を継続してくれた既存顧客は、収益の柱でもあり大切である。
引き続き「ファン」として、取引を継続し、満足して頂けるサービスを提供することで、良好な関係を維持していくことは重要になる。
ただ、その維持活動や、新たな提案活動は、営業マンでなくとも十分に機能する。既存顧客と接点の深いカスタマサービス部隊、サポート部隊等
でも十分に務まることであり、かえって彼らの方が、顧客の実状を熟知しており、顧客満足度を高める術を理解しているケースは多い。見積提出
は営業から行うとしても、ニーズの発見、提案活動のある部分を、カスタマサービス部隊、サポート部隊に任せることも可能ではないだろうか?
そして営業は新規開拓を主体業務とし、将来に向けて、魅力度の高い新規顧客をターゲットに営業活動を展開するのである。
これからは経営トップ、技術部隊、サポート部隊を含め「全社員営業」の意識をもって臨まないと、なかなか成約が難しい時代になってきている。
営業が開拓に専念できるように、営業業務を中心に「分業化」を検討する意味はある。
営業の主体業務は新規開拓
12
営業改革の重要ポイント
ただでさえ、新規開拓は難しく、幅広い能力が要求される。
現在のように市場が縮小する環境下にあって、ターゲット顧客に対する攻略ストーリーを描き、仮設検証を繰り返しながら、成約実績を積み上げ
られる営業マンは、行動力、洞察力、提案力、説得力、そして知識、感性のバランスを有することになる。彼らは将来、営業管理者として大いに
期待できる存在になり得るはずである。
「営業は効率である」などと、市場拡大時代のなごり引きずって、新規開拓のできない言い訳を続けていると、企業は減収のスパイラルに落ち込
んでいく。販売費などは全体の費用の中で微々たるもの。効率を叫んで企業が衰退していくのでは本末転倒である。特に景気低迷の時代に入ると、
新規の顧客開拓力のない企業は大きく業績を落とすことになるであろう。
当たり前のごとく、継続的な新規開拓を続け、実績を積み上げることができる企業が、前述の「能力軸」の一つとして、
「営業力」を持つことにな
る。景気低迷、市場縮小、商品/市場にブレが生じても、商品の差別化が困難な時代でも、営業力での差別化を図ることができるのである。

新規開拓が未熟な理由
「既存顧客の商談掘り起こし」と、
「新規顧客への開拓」を、営業マン個人の判断に委ねていると、営業マンは既存顧客を優先して新規開拓は進ま
ない。
進まないとなると、新規開拓のノウハウは蓄積されず、いつまでたっても新規開拓の未熟さは改善されない。
既存顧客については、状況把握も十分できており、顧客担当との関係も密に保たれていることから、いつでも容易に訪問して情報収集ができる。
常に訪問できれば、新たな案件の情報入手も早く、今までの密な付合いの中で成約への確率も高い。
ところが、新規顧客になると、状況把握を一から始めなくてはならない。そして、無理難題をこなしながら関係を維持し、商談を進めることにな
る。費やした工数に見合う成果が上げらないケースも応々にしてある。特に「営業は結果だ」と結果主義を継続している企業の場合、営業経緯や
営業プロセスは問われず、売上合計にスポットが当てられるため、新規顧客の 1000 万も、既存顧客からの 1000 万も基本的評価は変わらないこと
になってしまう。
こうなると、営業マンの心理として、できれば既存顧客の商談を掘り下げて目標を確保し、不確定要素の大きな新規開拓は避けたいと思うのが本
音であろう。
営業の主体業務は新規開拓
13
営業改革の重要ポイント
そして目標に不足が見えた段階で、あわてて目標を補うために、思い立ったように新規開拓を始める。
こんなことで新規開拓がうまくいくはずがない。そして、
「新規開拓は結果がでないもの」と結論づけ、また既存顧客に回帰するのである。要する
に順序立った新規開拓のステップも踏まずに、新規開拓という、名ばかりの活動を繰り返すことでは、開拓に対するノウハウは積み上げられず、
開拓に対する未熟さがいつまで立っても解消されないことになる。

新規開拓のステップ
所詮、既存顧客への商談開拓の合間に、新規開拓などムリな話しである。
新規開拓を実践するには、
「新規開拓を主体に計画を立て、新規開拓の活動の中に、既存顧客に対する営業活動をおり込んでいく」位の覚悟が必要
である。
そもそも新規開拓とは、そう簡単なものでなく、準備を整え計画的に活動を続けない限りうまくいかない。
目的を明確にし、ターゲット顧客を定め、計画的に「種をまき」、
「育て」、
「刈り取り」の活動フェイズを、仮設/検証のアプローチで進めていくこ
とである。ただ、
「冷やかし客」が高い比率で存在することは確かで、早期に見極める必要はある。
「種をまき」はできても「育て」段階で挫折してしまうケースをよく見かける。
初回 1~2回の訪問で会社案内を行い、自社の持つ商品・サービスの紹介を行う。そこでたまたま顧客の検討案件と一致すれば、次のフェイズにス
テップアップできるが、当面の案件がない場合、足を運ぶことをやめてしまう。やめてしまうと言うより、次の訪問のネタがなく、訪問できなく
なってしまうのである。そではとても「育て」の段階には進めない。
顧客は自社のため、価値ある有用な情報を待っている。
当面の案件がない場合でも、顧客の話に真剣に耳を傾けていると「現状の不満」、
「将来こうしたい」、
「困っている」、「興味関心」は必ず持ってお
り、
「何を求めているか」
、
「何に期待しているか」
・・・が必ず見えてくる。
まさにそこが「育て」に入るポイントである。当面、顧客に提供する有用な情報はそこにある。
以後、誠意をもって情報提供し続ける限り、顧客は必ず会ってくれ、有用な付加価値の高い情報を提供することで、信頼関係も深めることができ
営業の主体業務は新規開拓
14
営業改革の重要ポイント
る。会ってもらえる状況を作ることで、次のステージに進めるのである。
「育て」の段階では特に、幅広い知識と見識、そしてウィトのきいた話題は相手に強い印象を与える。扱っている商品・サービスに関わる話題だ
けでは限界があり、顧客の業界動向、政治経済、経営財務、趣味スポーツ・・・の話題は潤滑油の効果を果たしてくれる。
いずれにしても、顧客への「接触頻度」と「印象の強さ」は、顧客の営業マンへの好感度を測るバロメータになることを認識すべきである。
限られて時間の中で、直接訪問できない場合、メール、ニュースレター、Fax、Tel・・・さまざまな方法で接触頻度を高めることができ、高い付
加価値のある情報提供は強い印象を顧客に与えるものである。

新規開拓を実践するために
新規開拓を確実に実践するには、「営業の主体業務を新規開拓」の方向を示すことで、その重要性を皆が認識することである。
そして、計画的な実施、結果評価と再度計画、新規開拓の成功には重みを課した評価・・・

といった組織的なマネッジメントが必要になる。
新規開拓を進めるには







新規開拓の目的、方針、対象、計画、実施、評価を明確にして、共通認識の基に活動に入る
営業マン個人の活動とせず、社全体で総力を上げて取り組む姿勢で臨み、場合によっては社長はじめ経営陣を巻き込んだ活動とする
管理者も自ら主たる対象顧客の開拓を行い、現場を知ることで共通課題を見出すこととする
営業プロセスの中で、各営業マンの得意分野を有効に使い、横のつながりを重視し、協力体制で成約に挑む
営業プロセスも評価対象とし、成約に対しては、重みづけ実績評価のできる仕組みを採用する
最低週1回、状況報告の中で、管理者・営業マン共に対策を考え議論しながら、有効な次のステップを見出していく
商品・サービスに関わる業務知識たけでなく、会社の仕組み、社会の仕組み等の幅広い知識を深めていく。
営業の主体業務は新規開拓
15
営業改革の重要ポイント
仮説検証のアプローチ

なぜ仮設/検証なのか
営業活動の様々な場面で、解を得ることや、意思決定が求められる。
たとえば、
「この市場の潜在的ニーズを、どうやって測るか」
、
「この顧客を獲得するには、どのようなアプローチをすべきか」、
「自社商品・サービ
スのターゲト顧客の選定は、いかにすべきか」
、
「この市場でのセグメンテーションは、何を基準にすれば最適化できるか」
、
「このような状況の時、
どう解決するか」
・・・に対して解を出さなければならない。
市場・経済が長期に渡り一定の方向に推移している場合、過去の経験による判断で大きな誤りは起こさないはずである。
しかし、現在のように、時代の変換点とも言われ、市場・経済が大きく変化し、様々な予期しない出来事が次々と起こり得る時代では、過去の経
験・方法・基準が、あまり役に立たなくなってきている。かえって、過去の経験を固守するがゆえに、誤った判断を下す可能性も十分ある。
それでは、どうしたらよいか?
お手本がないのであるから、自分たちで方法・基準を探し求めていくしかない。
そのアプローチ方法として仮説/検証がある。
「こうすれば、こうなる」という、解を得るための手段として、仮説/実施/検証のプロセスを使うのである。対象とする事象に対し目的を明確に
して、仮の基準・方法(仮説)を定める。そして実際にその基準・方法が正しいか否かを、活動を通して確認(検証 )していく。これを繰り返し、
正しい解を見出していく方法だ。
仮説/検証とは、戦略と言えるほどの、大げさなものではない。目的・目標に向かって活動するにあたり、「このような現象、このような傾向があ
りそうなので、このような方法でやれば、うまくいく可能性がある。チョットためしてみよう!」程度のことから始めることで十分であり、これ
が仮説である。
次に検証である。
期待した成果が得られた場合、仮設は正しかったと確信を得ると同時に、解を得たことになる。
仮設検証のアプローチ
16
営業改革の重要ポイント
しかし、当初の仮設が、期待した成果に繋がらなかった場合、
「仮説が正しくなかった」と簡単に結論づけるのでなく、
「他の阻害要因」
、すなわち、
アプローチの仕方、検証対象の選定と母数、実施者のスキル、景気等の外部要因等に問題なかったか、きちっと見極める必要がある。
そして、改善すべきところは改善し、評価要素として除くものは除き、再度評価し直す。それでも期待した結果に至らぬ場合は、仮設を見直す。
要するに簡単に結論づけるのでなく物事の本質的な部分で、見極めていくことが大切である。

個人の持つノウハウの洗い出し
仮説/検証のアプローチは、多くの優秀な営業マンなら、当たり前のごとく無意識の内に繰り返し、実績に繋げているはずである。
そして、目的・目標が達成できればよしとし、その思考・活動のプロセスは、共有されることもなく、個人のノウハウとして蓄積される。
仮設から、程よい成果が得られない場合、その原因を分析し、改善すべき点は改善し、新たな仮説をもって活動を繰り返す。ただ、個人ベースで
進めるには限界もあり、とことん原因追究に至らず、改善も個人周辺に限られ、多くが途中で挫折していく。そして「この仮説は正しくない」と
し、これもまた共有されることもなく、個人の経験として頭の片隅に残り、やがて消えていく。
また、共有されていながゆえに、別の営業マンも同じ仮設検証を繰り返すという、組織として無駄を積み重ねていくことになる。よって、早急に
個人ノウハウの洗い出しを行い、個人ノウハウが、組織で活用化できるように共有化を図る必要がある。
たとえば、新規開拓における最大の課題は「継続的に顧客と会える」ことである。
ところが顧客への訪問理由(話題)を明確に示せず、顧客から拒否され、新規開拓を挫折するケースを多く見てきた。
継続的に顧客と会うノウハウとして
「直近の商談がなくとも、顧客の課題・ニーズに関わる情報提供は拒まない(必ず会ってくれる)」
、
「商品を販売することを前面に出さず、顧客の
ために有用な情報を提供することに主眼をおく」
、「前回訪問時のキーワードを使うことで、顧客はさらに踏み込んで情報を提供してくれる」、
「商
品・業務知識だけでは限界。業界動向、市場・経済状況、経営・財務状況、文化・趣味・・・等幅広い知識・見識と有用な情報が必要」、「定期訪
問にて、有用な情報を顧客に提供し続けることができれば、3年以内に成約確率は飛躍的に向上する」
・・・と言った検証された仮設が共有されて
いれば、新規開拓はもっとスムーズに進むはずである。
市場・経済が大きく変化しても、過去に仮設/検証された個人の営業ノウハウの中には、現在も十分に活用できるものは多く存在するはずである。
仮設検証のアプローチ
17
営業改革の重要ポイント
これらを洗い出し、組織的に活用できるか否か、再検証を行う必要がある。そして活用できるものはさらにブラシアップし、組織として共有して
いくことで、組織力は飛躍的に向上するはずである。

組織としての仮設検証
景気減速と市場の縮小により、商談数が激減し、商談自体も複雑化していく中で、トップセールスマンが、会社を牽引していく時代は終わった。
これからは、如何に組織全体の能力を底上げし、如何に組織的な活動によって、相乗的効果を出していくかがポイントになる。
その中で、今まで、個人に依存していた仮設/検証のアプローチを、組織としてオープンに機能させていくことである。
個人の経験則として、
「こうすれば、こうなる」という過去のノウハウを洗い出し、組織的に応用できる形にすると同時に、今後発生する事象に対
し、組織の中で議論しながら仮設を立て、一斉に実施することで、今までより、はるかに早い速度で検証が可能になる。
また組織としての思考力と、行動力のレベルアップが図られ、結果として得たノウハウを共有することで、組織としての業務遂行能力や、学習能
力を向上させることができる。仮設から程よい結果が得られない場合、本当に仮設に問題があったのか、活動自体に問題がなかったのかの原因究
明のため、互いに議論を繰り返すことにより、営業改革に向けての新たな切り口が見えてくるものである。
仮設/検証の具体的アプローチとして、問題・課題を明確にして、数値目標を設定する。そして目標を達成するために、どこに対して、どんな方法
で、いつ、何を実施すればうまくいくかを、仮説として掲げ検証していく。

仮設検証の事例
事例として前述の「新規開拓が継続的にできない」原因として、継続的な訪問が途絶えてしまう対策としての仮設/検証である。
課題:新規顧客に再訪問ができない(会ってもらえない)
目標:ターゲット顧客の9割には常に会える状況にする
仮説:
「新規顧客を訪問した時、顧客の課題・潜在的ニーズ・ウォンツを最低3テーマは感じ取る」、
「前回訪問時のキーワードを必ず話題にする」、
「常にアンテナを高く張りニーズ・ウォンツに関わる情報を収集し、自社商品と関連づける」、
「設定した訪問サイクルに、訪問趣旨を明確にして
仮設検証のアプローチ
18
営業改革の重要ポイント
アポを取る」、
「以上を実施すれば必ず会ってくれ、さらに深い情報収集ができ、回を重ねるたびに顧客との繋がりを強めることができる」
検証:訪問サイクルにおけるアポ取り率が 100%近くに向上

仮設検証のアプローチの効果
問題解決や意思決定を行う時、情報を集め、分析して判断する方法を、一般的と考え実施してきた。しかし、情報収集の設計や分析方法の確定に
は時間もかかり、なかなか説得力ある、的を得た結果を導き出すには困難さも伴う。
仮説検証のアプローチは、情報が尐なくとも、問題の全体像を描いて「仮の答え」を掲げ検証するため、スピーディーに実態に合った結果を導き
出せる。日々解を得なくてならない営業にとって最適なアプローチ方法である。
個人での仮説検証に留めず、組織全体で共有化することで、企業の「組織力」は飛躍的に向上する。物を売ることが大変な時代、その対応に右往
左往するのでなく、目の前の課題に対し、仮設/検証にて解を得ていくアプローチ、思考回路が組織として習慣づけられれば、どんな時代も生き残
れる「将来の能力軸」を身につけることになる。


過去の手法が生きた時代
お手本がない時代のアプローチ
目標(値)
目標(値)
方向性
市場が不連
市場が同じ方
向に推移して
実現
仮説
続に変化し
過去の経験
過去の成功体験
組織的
ている時代
いた時代
実施
検証
プロセス管理
個人の資質
個人的ノウハウ
方向性
実現
結果主義
ノウハウ共有
学習能力
「なぜ、自分だけが売れないのか。そう思い悩んでいる人たちは、はたして日々、仮説を立て、挑戦しているでしょうか?」
IY(イトーヨーカドー)グループCEO
仮設検証のアプローチ
鈴木敏文
19
営業改革の重要ポイント
営業日報の機能と重要性

営業日報は活動の道しるべ
とかく営業日報の主目的は上司への報告のように思われがちである。
しかし第一の目的は、自らの営業展開のために、
「顧客情報を整理し、記録に留め、読み返すことで、新たな切り口を見出す」ことにある。
特に新規顧客の開拓の場合、ある程度長期に渡り「種をまき」
、「育て」、
「刈り取り」のプロセスを踏んでいくことから、大量の情報を入手しなが
ら進めていこことになる。
情報がキチット整理されてはじめて、どう攻めていくか、どう提案していくかの仮設検証の精度をあげることができるのである。
情報が整理されていない営業マンは、前回訪問時と同じ質問を顧客に投げかけるという愚行繰り返すことになる。
顧客は貴重な時間を割き、有意義な情報
提供に期待して会うのであり、状況把握
もできない営業マンとは徐々に会わな
くなるはずである。
訪問時には、記録され日報を読み返し、
今までの経緯を頭に入れ面談に臨むこ
とは、営業マンとして最低限の準備であ
る。
また、活動に行き詰った時、日報を読み
返すことで、当時のやり取りがよみがえ
り、新たな発見、新たな展開の糸口が見
えてくるものである。したがって営業日
報は営業活動には欠かせない重要なツ
-ルになる。
営業日報の機能と重要性
20
営業改革の重要ポイント
営業日報の意味するところ

営業日報を記述する目的が明確に示され、共通認識の基に運用されているだろうか
目的が曖昧で、
「今まで日報を記述してきたからという理由で」続けているケースが多いのではないか。報告が目的ならば、報告を受ける側の管理
者が、報告に対するリアクションを常に示さない限り先細りになり、また「単に記述しておけばよい」との意識のもとに形骸化してしまう。
一般に営業管理者はプレーイングマネージャーであり、仮に 10 名の部下を持ったとして毎日 10 名の営業日報にコメントするほど時間はないはず
である。それならばわざわざ時間をかけ日報を記述することはやめ、朝のミーティングで報告を受け、短時間に要点をつかみ、適切な指示を出す
方がより現実的である。
もう一度、営業日報の目的を再定義すべきである。
営業日報の第一目的は報告ではなく、自分自身の営業展開のために頭を整理し、記述することで新たな展開を見出す手段であると考える。この点
を営業マン一人々が認識した上で進めるべきである。
とにかく、書くことを強要されるとモチベーションは落ち、新しい発想を阻害する原因にもなりかねない。営業日報は自主的に自分の商談を展開
するための手段と位置づけることである。そして 2 次的な効果として情報共有ができ、ひとつの案件に対し組織として議論ができる精度の高い資
料になり得るのである。

営業日報の目的






前回までの日報を基に、今回訪問のストーリーを組み立てる助けとなる
新たな情報を付加していくことで、顧客の状況をより深く知り、潜在的ニーズが見えてくる
今後の展開に必要な仮説を見出す手段となる。要は簡潔な文書にまとめた日報を読みながら考えるのである
顧客が望む情報(新聞雑誌等からの提供)を的確に判断できる。顧客は有用情報を待っている
顧客の状況が把握・整理されていることから、上司を含め、組織的に今後のアプローチを議論する情報となる
営業日報の効果





営業日報の機能と重要性
今後の活動方向、重み付けができ、次の的確な活動ステップを見出すことになる
前回訪問の流れから、顧客は貴重な時間を割いてでも、会うことに意義を見出してくれる。会えない限り何も進まない。
顧客が望む有用情報の提供は、信頼感を生み、良好な関係の中から、必ず商談成約のチャンスが巡ってくる
簡潔な文書で要点をまとめ上げる、ビジネスパーソンとしての資質を高めることになる
顧客情報の共有になり、担当が変わっても案件を引継ぎ、継続的に活動を続けることができる
21
営業改革の重要ポイント

営業日報の機能
営業日報は、記述しながら顧客との情報のやり取りを整理し、次のステップにどう展開していくかを考える手段である。
よって、自由に記述しながら発想ができるためのスペースがあれば十分である。多くの付随する情報の入力は要求せず、シンプル、尐タッチで、
短時間で完成できる機能がポイントである。また顧客情報(基礎・財務・経営)が参照できる機能、付随する情報(売上、利益)が表やグラフに
集約された、見える化が実現されることも必要である。

営業日報の機能



必要最小限の情報を短時間に入力できること
付加情報として見積額、売上、利益の見える化
結果(売上、利益)だけでなく活動プロセスも把握できること
営業日報の機能と重要性



購入した情報(基礎・財務・経営)の同時参照
To Doリストや訪問を促す等の最低限の支援機能を持つ
22