総裁秋篠宮妃殿下 ご動静 資金寄付者感謝状贈呈式並びにお茶会 平成19年5月16日/リーガロイヤルホテル東京 妃殿下は,結核予防事業資金として結核予防会に多額のご寄付を下さった方々に, 感謝状をお渡しになりました。また,式典に続き記念撮影とお茶会が行われ,資金 寄付者のテーブルにお着きになり,なごやかなひとときを過ごされました。 感謝状を手渡される妃殿下 お茶会にて,歓談されるご様子 Message 支部長就任にあたって 鈴木 仁(すずき ひとし) 結核予防会福島県支部長 (福島県保健衛生協会会長) 平成19年4月1日付で前相楽新平会長の後任と して,当協会の会長に就任するとともに,結核予 防会の支部長を務めさせて頂くことになりました。 当支部は昭和15年3月に設立されて以来67年に わたり,県と一体となって結核に対する知識の普 及啓発と結核を中心とした胸部疾患の早期発見に 努力して参りました。この間,多様化する県民の 健康ニーズに対応するため,結核予防会福島県支 部,福島県成人病予防協会,そして福島県衛生検 査協会の三つの団体が統合され,昭和51年4月に は財団法人福島県保健衛生協会として新たに発足 し,現在に至っております。 わが国の結核は着実に減少しており,患者は高 齢者や免疫低下などの基礎疾患を有する者,そし て社会的弱者に偏在してきているようです。しか し,胸部健診で撮影された数多くの胸部X-Pを読影 しておりますと,明らかに結核治癒期の像と考え られる所見に出くわす機会が多く,とくに小児に とりましては,感染源として重要な意味をもつ塗 抹陽性肺結核罹患率が微増を続けていることを考 えますと,まだまだ油断できない状況にあると思 います。 私の専門領域は,小児科学,感染症学および腎 臓病学ですが,乳幼児の粟粒結核や結核性髄膜炎 など重症な小児結核を経験しておりますし,医療 者の結核に対する関心の低下に起因すると考えら れる診断や治療の不適切な症例にも遭遇しており ますので,結核感染防止には人一倍関心を持って おります。 今,結核予防対策は,集団的防衛から個別的防衛 へと大きな転換の時期にありますが,一小児科医 の立場からお役に 立てればうれしい と考えております ので,今後ともよ ろしくご指導を賜 りたくお願い申し 上げ,支部長就任 のご挨拶とさせて 頂きます。 Contents ■ メッセージ 支部長就任にあたって 鈴木 仁……1 ■第82回結核病学会総会印象記 伊藤 邦彦……2 ■平成18年度フィルム評価会報告 尾形 英雄……4 ■日本呼吸器学会学術講演会初出展報告 青木 新……6 ■健康ネットワーク通信№14 菊地 健司……7 ■DOTS 長崎県におけるDOTS事業 藤田 利枝……8 ■シリーズ かたき病 結核(9)忘れられ,問題が残され ている病気−肺外結核− 青木 正和……10 ■シールだより ○複十字シール運動キャンペーンが始まります! 佐藤 利光……12 ○平成19年度結核予防会広報・シール担当者会議 「募金活動の意図を理解し,楽しむ」 佐藤 一博……14 ■エイズ 財団法人エイズ予防財団の啓発活動について 中村 正……15 ■「フィリピン結核対策プロジェクト」活動の歩み 簗瀬 有美子……16 ■Tuberculosis Surveillance Research Unit(TSRU)及びTB Bacteriology Operational Research Meeting報告 御手洗 聡……18 ■世界の結核担当者に聞く ライシュマン教授の来日インタビュー 石黒 洋平……19 ■たばこ ○日本で用いられている環境内指標の問題点 その2 中田 ゆり……20 ○無煙環境を考える ……22 ○「タバコのない社会をめざして−受動喫煙対策の現状と今 後」 ……23 ■思い出の人を偲んで コンキンサン先生 小野崎 郁史……24 ■麻疹の流行について 多田 有希……26 ■感染症法改正関連法令・通知の動き(結核関係抜粋)……26 ■結核予防会支部紹介の頁 長野県支部 北條 千秋……28 ■予防会だより ○公益認定等委員会に公益法人認定に関する要望書を提出 ……29 ○結核研究奨励賞受賞者決定 ……29 〔表紙〕平成19年度複十字シール運動ポスターより 〔イラスト〕佐藤奈津江 7/2007 複十字 No.316 1 第82回結核病学会総会印象記 結核研究所研究部主任研究員 2007年6月5∼6日の両日,国立病院機構近畿中央 胸部疾患センターの坂谷光則先生の会長のもと大阪 国際会議場で第82回結核病学会総会が行われまし た。テーマは「結核対策の新しい展開」ということ ですが,近年の結核の世界で『新しい』と言えば, やはり要望演題にもなっていたQFT,DOTS,分子 疫学の分野が最初に思い浮かびます。 結核診断の今後を担うQFT QFTのセッションは両日にわたり5つに分けて 行われ,計24演題が行われました。全演題が184演 題ですからこれは全体の13%にあたります。これ以 外に大阪府立アレルギー呼吸器医療センターの高島 哲也先生によるQFTに関するランチョンセミナー も行われました。いずれも座れない人がいるくらい たくさんの聴衆が来ていました。如何にこの検査が 結核臨床ならびに結核対策に大きなインパクトを与 えているかが伺えます。初日は小児の接触者検診, 職員検診,接触者検診でのQFTの検討に関する演 題が多く発表されました。小児の活動性結核では, 成人に若干劣る印象はあるもののQFT陽性率は高 いこと,しかし小児の接触者検診ではQFTのみに 頼った場合には感染者を見逃す可能性のあること, などが発表されました。年齢の影響についてはやは りすくなくとも6ヵ月ないし1歳以下では感度が落 ちる可能性も指摘されましたが,いずれもやはり症 例数が少なく今後のデータに待つところが多いよう です。これらの演題をお聞きになった先生とその後 立ち話をしましたが,「QFTを院内感染対策の職 員管理の一環としてもちいるべきなのだろうか」と 悩んでおられました。演題を聞いた限りでは,私の 印象はまだ研究段階といった感じでした。やはり これらに関しても今後のデータに待つところが多い ように思われました。 臨床家の立場からは,QFTが活動性結核診断に どの程度使えるのかが一番関心のあるところです。 これに関しては,初日のランチョンセミナーでの上 記高島先生のレクチャーが非常に情報に富むもので あったと思いました。ツ反にくらべQFTは宿主の 2 7/2007 複十字 No.316 伊藤 邦彦 免疫抑制の影響を若干受けにくく,高島先生らの経 験から活動性結核におけるQFTの感度は80%程度 (海外のメタアナリシスでは75%前後とされており これとほぼ一致します)であろうこと(従って特に 重症結核などではツ反より高い感度を示す),また 特異度も実際には90%前後であろうとのお話でし た。塗抹陰性結核と塗抹陽性結核では殆どQFT陽 性率に差がないとのお話から,潜在性結核感染での 感度もやはり80%前後くらいなのかと想像しました が,そうであればやはり接触者検診などにおいて はツ反に比して感度は落ちるようです。また 症でのQFT陽性率がそれほど高くない M.Kansasii ことなども目新しい情報でした。私自身は,活動性 結核の可能性が低く他疾患が疑われる例での念のた めの除外診断検査としてQFTは有用だが,活動性 結核を強く疑う場合の『確認検査』としてのQFT は今ひとつ信頼性に乏しいような気がしています。 高島先生も,活動性結核診断におけるQFTの使用 に関しては「総合的判断」の必要性を強調されてお られました。やはり活動性結核診断のmagic bullet というわけにはいかないようです。 日本と世界の結核医療の今後 初日午後には,予定を変更してIUATLDのポーラ ・フジワラさんの『結核医療の国際基準(ISTC)』 に関する講演がありました。同基準の暫定的和訳版 を結核研究所で作成し,学会参加者全員に受付時に 配布しました。ポーラ・フジワラさんは日本での ISTCの意義と,日本での結核臨床等へのコメント を含めてお話されましたが,聴衆のレスポンスは今 ひとつだったような印象でした。ポーラ・フジワラ さんは結核医療の国際的コンセンサスに照らして, 「肺結核の治療経過観察に胸部X線写真は不要であ る」,「全剤感受性ならエタンブトールは不要であ る」等と述べておられました。これは現在日本で通 常行われていることとは全く違っており,それ故日 本の結核臨床はこの点で「世界的標準から逸脱して いる」ことになります。ですから,反論であれ同調 であれもう少し活発な議論があってしかるべきであ 第82回日本結核病学会報告 ったのではないかと思いましたが,やや低調のうち に推移したように思います(私だって黙っていたの ですから大きなことは言えませんが)。なお,坂谷 会長から日本結核病学会としてendorsementを出す 意向であることが発表されましたが,日本の現状と 食い違う部分をどうするのかは不明なままでした。 日本結核病学会によるendorsementが形骸的なもの に留まることなく,有用な議論を経て日本の結核臨 床を向上させる機会になればよいと思っています。 入院時から地域へ広がるDOTS ポーラ・フジワラさんの講演後,やはり要望演題で あるDOTSに関するセッションに参加しました。研 究というよりは活動報告に類するものも多く見受け られましたが,演題の殆どが「入院時DOTS」より も外来DOTSを主題にしていました。最初は「入院 時のDOTS」で始まった日本の「服薬支援」ですが, その黎明期においては「入院時ならともかく日本で 外来の患者にそんなことができるのだろうか?」と いう疑問が多くあったようです。しかし,この総会 での演題を見る限り,日本での外来DOTSも進捗と (少なくとも一部での)普及が進んでいる印象をう けました。DOTSのセッションに引き続いて行なわ れた「結核診療クリニカルパス」に関するセッショ ンでも外来DOTSへのスムーズな移行を目指すよう なパスの考案−「地域連携パス」というのだそうで す(私はこの学会で初めて聞いた用語です)−に関 する発表が多かったのも,やはり外来DOTSへの取 り組みが進んできたことの傍証なのでしょう。 結核の分子疫学の世界標準化に向けた動き 2日目の午前中には,抗酸菌の分子疫学に関する セッションに参加しました。臨床に携わる先生方だ けでなく基礎科学に携わる先生の参加も多く,他の 臨床に深く係わるセッションとはまた少し違った印 象をうけました。全体に,どの学会でも基礎科学の 先生方のほうが学会では元気で議論も活発なような 気がしているのですが,なぜなのでしょうか。 座長の先生によると,抗酸菌の分子疫学のセッシ ョンが細菌検査のセッションから分離独立したのは 最近のことのようです。すこし前まで「結核の分 子疫学」といえば,すくなくとも私のような素人 には「IS6110-RFLP」と同義のような印象で受け止 めていましたが,この総会のセッションのお話を伺 った限りでは,最近の議論の中心はすっかりVNTR に移行しているようです。VNTRは分解能の面では RFLPに比べて劣るようですが,低コストで迅速性 に優れ他との比較も容易で,これまでのような限局 した状況で用いるのではなく,より広域に結核の分 子疫学を研究していく上では必須のツールと認識さ れているようです。問題はやはり分解能の向上と, 標準化にあるようです。 最初VNTRはいわゆる12-loci MIRUが準標準法で あったようですが,分解能が悪いとの指摘が繰り返 しなされていました。去年2006年になり,Supplyら のグループが世界中から菌株を収集し,分解能を高 めた標準法として15-loci/24-loci VNTRを世界標準 法として提案したことは記憶に新しいところです (Journal of Clinical Microbiology.2006.Vol.44 (12). pp.4498-4510)。しかしどうもこの「世界 標準」を日本で用いるには問題があるようです。と いうのは,上記「世界標準」はBeijing株の分解能が 低く,日本のようにBeijing株が大半を占めるような 状況下ではそのまま使用することができないのだそ うです。複数の演題が,この問題を解決するための 様々な追加lociや代替案に関して発表していました。 万能の世界標準VNTR(そうしたものがありえる のかどうかは私にはわからないのですが,もしある として)に到達するまでにはまだ時間がかかるのか もしれません。このセッションと同じ時間に行われ た結核研究所抗酸菌レファレンスセンターの前田伸 司先生のシンポジウムでのお話もVNTRの標準化に 関するお話であったとのことです。すくなくとも日 本での標準化VNTRは近いうちに達成されるのでし ょうか。 以上,私が本学会で聞きかじったことを中心に印 象を記してみました。来年は結核研究所所長石川信 克先生が会長で結核病学会総会が行われます。今回 の学会で話題となった上記の問題群が向こう1年間 でどのような動きを見せるのか楽しみなところでも あります。 会場入口にて (左は森結核研究所名誉所長) 7/2007 複十字 No.316 3 平成18年度フィルム評価会報告 結核予防会胸部検診対策委員会 精度管理部会委員長 (結核予防会複十字病院副院長) 尾形 英雄 1985年から始まって今回で22回目を迎えた精度 管理部会フィルム評価会は2006年12月21日,22日 の2日間,例年通り結核研究所講堂で開催されま した。全国支部から放射線技師・医師総勢90人が 参加し,6グループに分かれて予め各支部から提 出されていた間接撮影フィルム115本・アナログ直 接撮影フィルム95枚・デジタル直接撮影フィルム 48枚の画質評価を行いました。 ■今年度の評価成績とこれまでの成績 間接撮影フィルムは,A評価8%,B評価40%, C上評価47%,C中評価5%,C下評価0%で, 直接撮影フィルムは,A評価6%,B評価38%, C上評価54%,C中評価2%C下評価0%でした。 A評価は評価者が欠点を指摘できない模範的な写 真に与える評価なので,稀少価値があります。グ ラフの年次推移でわかるように評価会の発足時A 評価は間接撮影で7%・直接撮影で3%とわずか であったのが,10年ほどの経過で徐々に増加し一 時は15%を上回ったこともありました。しかし, その後徐々に減る傾向がみられ,今年は間接・直 接とも遂に10%を下回りました。一方Aほどでは ないが,読影医がストレスなく読めるB評価フィ ルムは,一貫して増加傾向にあり間接・直接とも 40%程度を占めるようになってきました。C上は 5段階評価の通知表でいえば3に相当する普通レ ベル評価で,発足当時を除けば,常に50%付近を 上下していてその頻度に変動はみられません。通 知表の2や1に相当し,読影に支障のあるとされ たC中・C下は一貫して減少傾向にあり,C下は このところみられません。 ■B・C評価の変動の要因 予防会の評価方法は,黒化度・コントラスト・ 鮮鋭度など10項目についての適否を評価表に書き 込むことで,瞬間的な印象による判断のブレを避 けてきました。またグループごとの甘辛と年度ご との甘辛を極力避けるため,初めに昨年評価済み のサンプルフィルム6枚をグループに分かれて評 価して,各グループのつけた評価点をみながら総 4 7/2007 複十字 No.316 合討議を行って均一の評価基準になるよう目合わ せを行っています。こうした工夫をしても完全に は年度ごとの甘辛を避けられませんが,22年間の 積み重ねがあるのでトレンドとして見えてくる変 化は,予防会の検診フィルムの精度を現している はずです。C中・C下評価がほぼなくなった要因 は,撮影機器の改善にあったと思います。評価会 発足当時には,高圧撮影できないX線装置を持つ 支部もあったので,いくら工夫しても充分な黒化 度をだせなかったと聞いています。フィルム評価 会の最大功績は,読影不能なフィルムを撮ってい た性能の悪いX線装置を各支部から一掃したこと にあったと思います。もう一つのトレンドである B評価の増加は,この延長上にあり,良いフィル ム作りに必要な使用フィルムと増感紙の適切な組 み合わせや,推奨される付加フィルター・グリッ ド・現像処理などの規格を明らかにしたので,少 し努力すればよい画像が提供できるようになった ためと考えられます。 ■A評価減少の意味 フィルムメーカーによるアナログフィルムの画 質を良くする試みは,ほぼ出尽くし既に完成の域 にある中で,近年A評価が減少してきていること を,どう考えればよいでしょうか。参加者の見る 目が厳しくなったのなら問題ないのですが,毎年 参加している複数のベテラン読影医から,目の覚 めるようなよい写真が減ったという声を聞きます。 これまでもA評価の写真を撮る支部は限られてい て,そこには必ず高い技術力を持つ熱心な放射線 技師がいました。予防会の胸部写真撮影技術の屋 台骨は,こうした放射線技師が支え,この技術力 を全国の支部に伝えることがフィルム評価会の最 大の目的だったはずです。しかし,その技術者が 定年を迎え現場から次々と離れたことが,A評価 減少の要因であるならば事態は深刻です。一般に 若い放射線技師の関心は,マルチスライスCT・ MRI・PETなどの新技術の習得に向いて,単純X 線撮影の技術習得には熱心ではないと聞くからで す。 ■今後のデジタル化への対応 胸部CT検診がいくらもてはやされても,医療費 や読影医の不足から胸部検診の主流にはならず, 今後も胸部検診は単純写真によって行われるはず です。予防会の胸部検診が今後も生き残るために は,検診の質を維持することが鍵となります。質 を保つためにはフィルムの精度管理が重要で,今 後もこのフィルム評価会を通して若い放射線技師 にベテランの技術を伝えることが必要です。ただ し間接写真フィルムは遠くない将来生産されなく なり,アナログ直接フィルムもいずれはその時期 を迎えるでしょう。これまでもフィルム評価会で は,デジタルフィルムの評価もしてきましたが, 今後デジタルフィルムの評価を強化して,フィル ムレス化している支部への対応も検討したいと思 います。 7/2007 複十字 No.316 5 日本呼吸器学会学術講演会初出展報告 「COPD共同研究事業」を 日本呼吸器学会員に紹介 結核予防会健康ネットワーク事業部企画調整課主任 青木 新 5月10日(木)∼12日(土)の3日間,東京国 際フォーラムにおいて第 フォーラムにおいて第47 47回日本呼吸器学会学術 回日本呼吸器学会学術 講演 演 会が開催されました。期間中,地下2階「展 示ホ ホ ール」では併設企業展示が行われ,結核予防 会と と しては,本年度より開始された「COPD共同 研究 究」事業(※事業内容は本誌2007.3月特別号を参 照)を日本呼吸器学会会員の皆様にアピールし,理 解と と協力を得るため展示ブースを出展いたしました。 ブ ブ ースの広さは他の企業展示と比べるととても 狭く く ,また「新型医療機器展示!」や「新薬紹と 介!!」といった派手な内容ではありません。結 核予 予 防会ブースの内容は,単なる研究計画の紹介 と説 説 明です。しかし,「小さくても逆に目立たせ る」とのコンセプトのもと制作したのが,ブース の外 外 側を制限まですべて使用した壁一面,その外 壁を を 大きな看板に見立て,入口から見ると遠くに 浮き き上がる「COPD」の文字。まわりの派手な動き にも も惑わされず,「COPDは早期発見が何よりも重 要で で ある」とのシンプルなメッセージを訴えるた めの のブースを製作し,研究事業を紹介いたしました。 説明し,完成したばかりの「COPDパンフレット」 (3種類 監修:順天堂大学医学部呼吸器内科 客 員教授 福地義之助)を見本としてお渡しいたし しま した。 結核予防会ブース 内部:パネルとディスプレイ 後日,パンフレットをお受け取りになった会 会員 の方から,「比較的素人(患者さん)にもわか かり やすく,色もきれいなので使い易いと思います す」 「COPD患者の禁煙をはじめとした教育 に活用 用さ せていただければ」とのメールを頂戴し,パンフ フレ ットを追加でお送りいたしました。他にも,追 追加 でのご希望を頂いており,おかげさまでパンフ フレ ットは好評を得ております。 COPDパンフレット3種類 入口から。中奥の「COPD」の文字が予防会ブース 展示内容は,「結核予防会青木会長から日本呼 吸器学会の皆様への挨拶」,「結核予防会の健診事 業の概要」,「COPD共同研究事業の概要説明」に ついてのパネル展示。また,ディスプレイを設置 し,本事業のオリジナルイメージ映像と音楽を流 しました。(イメージ映像は結核予防会webサイ トに掲載中 http://www.jatahq.org) 他の企業のように案内のコンパニオンはいませ んでしたが,ブース内にはシールぼうやのぬいぐ るみ達が並んでお客様をお出迎え,常駐する担当 者がお越しいただいたお客様に事業内容を丁寧に 6 7/2007 複十字 No.316 今回の展示は,本研究事業が日本呼吸器学会の 協力のもと成り立つ事業であり,その成功のため に,まずこの事業のことを日本呼吸器学会会員の 皆様に知っていただくことが目的でした。参加さ れたすべての会員に対して,本研究事業を広報す ることができたとは思いませんが,巨大な製薬会 社・医療機器メーカーも「COPD」を大きく取り上 げている展示の中で,結核予防会が独自の計画を 訴え,また少なからず期待を集めたことの意義は 大きいものがありました。 今後は計画が実際の作業に移ります。5年間の 計画ですが,まず初年度の結果をまとめ,来年は 神戸のブースでより多くの期待を集めることがで きるよう取り組んでいきたいと思っております。 健康ネットワーク通信 健康ネットワーク事業部企画調整課長 14 No. 菊地 健司 19年度ネットワーク事業担当者会議及びCOPD 事務担当者説明会議が,5月14日(月)こまばエ ミナース(東京・目黒区)で開催されました。今 回の会議では,「標準的な健診・保健指導プログ ラム(確定版)」が発表され,具体的なプログラ ムが見えてきたことを踏まえ,確定版のポイント と,JATA生涯健康管理システムのベースを各支 部・事業所にお示しする機会となりました。 また,午後の班別討議では,渉外・システム・保 健指導の担当者が入り混じって,各支部の情報交 換,疑問点の洗い出しなどを行いました。 プログラムのポイントと要点 アドバイザーの片山文善氏から,今回の確定版 のプログラムについて共通認識を持つために解説 をして頂きました。また,今までの健診や保健指 導は,単年度の考え方で,「実施すること」が目 的であり,効果が見えないものでしたが,これか らは,きちんと6ヵ月で結果を出し,翌年の健診 受診までの6ヵ月間も踏まえた保健指導をしてい かないといけないことなど,従来のやり方では通 用しないことを強調されました。また,19年度中 に試行・計画立案する項目をまとめて頂き,各支 部・本部の各担当者を奮い立たせる内容でした。 新しいシステムの概要 健康ネットワーク事業部吉田達也副部長とNTT データの大庵隆志氏から,Health Data Bankを利 用した生涯健康管理システムの紹介がありました。 特に要望が多かった画面イメージなどが示され, どんな情報がアウトプットされるかが一部ですが 明らかになりました。また,セルフチェック血液 検査キット(DEMECAL)の紹介など,19年度に 特定健診・特定保健指導をトライアルで実施する ための情報提供も合わせて行われました。 システム説明をする大庵氏 班別討議・全体討議 職種をランダムにした3班で,渉外・保健指導・ システムのテーマを話し合いました。やはり渉外 する場合に,セールスポイントをどこに置くかが 大きな要になっていて,結果の出る保健指導や,生 涯にわたる健康管理システムなど支部や事業所に よって違っていることを実感しましたし,競合他 社の情報も入手して活動を始めている支部の事例 も報告されました。 また,色々な職種でも保健指導やシステムにつ いて概要は把握しておかないと,仕事が前に進ま ないという危機感をもって取り組んでいる担当者 が多く,本部職員として圧倒される一幕もありま した。 COPD早期発見事業プロジェクト 続いて企画調整課青木新主任と日本ベーリンガ ーインゲルハイムの加藤久幸氏からCOPD担当者 に向けて標記事業の説明を行いました。特定健診 の有益なオプションとしてとらえ,問診票も別枠 にせず一本化されているメリットとしてとらえて 頂きたいと共同研究に協力を求めました。また, 各支部への事業説明に本部から出向いていくこと も付け加えました。 今回の会議では,特定健診・特定保健指導に対 する支部・事業所と本部の情報共有を図り,より 一層のネットワークを活かしていけるという実感 を持って,「私がやる」という意気込みを新たに しました。 ・ ・ ・ ・ ・ 続いて,6月14日(木)にLMJ東京研修センタ ー(文京区)において,システム担当者会議を開 催しました。各支部のご意見を頂き,システムを 稼動できる状況にする目的で,繁忙期の中,47名 の参加を得て,5月の会議でお願いしたアンケー トの結果報告を踏まえて,討議を行いました。 特定健診・特定保健指導の問診内容にCOPDの 問診内容を盛り込んで,受診票1枚で健診・保健 指導・COPD共同研究の項目を網羅した受診票案 をお示ししました。受診票に記載する項目やその 項目を自由選択できるようにする仕組みなどの要 望が出され,保険者様のニーズにあった様式にで きる工夫が盛り込まれることになりました。 さらに,市町村実施の住民健診への取り組みを 見据えたプログラムへの要望や保険者への詳細な 報告(保健指導情報)への対応など,広範囲に渡 って討議が続きましたが,保険者様が求めている 「結核予防会の健診システムとそのメリット」が わかる資料の作成に多くの希望がでました。シス テム専門でないお客様にも「使いたい,またこれ なら結果の出る保健指導に結びつく」という確信 に変えられるものとなるよう更に充実させていき ます。 また,システムだけでなく,渉外や保健指導の 担当者会議も時期を見て開催し,支部の皆様と共 にネットワーク事業を進めてまいります。これか らもご指導よろしくお願い致します。 7/2007 複十字 No.316 7 Use DOTS More Widely 長崎県におけるDOTS事業 長崎県福祉保健部医療政策課 医師 藤田 利枝 ●はじめに ●服薬支援の実際 長崎県では平成16年度から保健所独自で地域 DOTSを開始している所もありましたが,県全体 の体系的DOTS事業は,17年度に準備に取りかか り,18年度から本格的に開始したばかりです。事 業開始から1年が経過したところですが,県内の DOTS事業の現状と課題について報告します。 《支援対象者について》 DOTSの対象者は,「喀痰塗抹陽性者」または 「医療機関及び保健所が必要と認める者」として います。しかし,年間の新登録患者数が10人未満 の保健所が4箇所あるなど患者数にも差があるた めに,全患者を対象としているところから喀痰塗 抹陽性者のみが対象となっているところまで,保 健所によって対応は様々です。 《支援方法について》 県内の結核病床を有する指定医療機関はすべて 院内DOTSを実施しており,退院時にはカンファ レンスを行い,地域DOTSにつなげています。地 域DOTSにおける支援方法はできる限り患者の希 望を尊重し,月に1回の連絡・確認から毎日の訪 問まで,患者の必要に応じた形態で実施していま す。高齢患者では退院後に施設へ入所する例も多 く,地域DOTSの支援者は現在のところ保健所保 健師,外来看護師,施設職員,患者家族が主とな っています。しかし,患者の利便性および効果的 な服薬確認の点から,もっと支援者の数を増やし ていく必要があると考えます。 ●長崎県の概要 長崎は九州の西北部に位置し,大小約600の島々 をもつ全国一の離島県です。平成19年4月現在で人 口は約145万人,うち約10%が離島在住です。県内 には県立8箇所(本土4,離島4),政令市2箇 所の合計10保健所があります。長崎県全体の新登 録患者数は年々減少しており,平成17年は約350 人,罹患率は23.4でした。70歳以上の新登録患者 の占める割合は64.2%(表)で,全国平均44.9%を 大きく上回っており,これに伴い新登録喀痰塗抹 陽性肺結核初回治療中PZAを含む4剤の処方割合 は50.7%と低くなっています。 ●経過 長崎県では,平成17年11月,「長崎県DOTS事 業実施要領」を作成し,事業をスタートしました。 17年度は,連携を深めるために結核病床を有する 指定医療機関と保健所との連絡会議を開催し,院 内DOTSの徹底と退院時カンファレンスの実施方 法などについて協議しました。18年度からは実際 に地域DOTSを開始し,医療機関との定期的な連 絡会議,コホート検討会なども開催しました。ま た,県内全保健所の担当者研修会を開催し政令市 保健所と県立保健所の情報共有をはかり,カンフ ァレンスを共同で行うようになるなど,保健所間 の連携も深まってきています。 服薬手帳と服薬カレンダー 表 長崎県の年齢階級別新登録患者数(平成17年) 0歳∼19歳 20歳∼29歳 30歳∼39歳 40歳∼49歳 50歳∼59歳 60歳∼69歳 70歳以上 新登録数(人) 比率(%) 8 7/2007 複十字 No.316 計 6 15 18 20 27 38 222 346 1.8 4.3 5.2 5.8 7.8 11 64.2 100 ●地域DOTSにおける課題 《医療機関の連携について》 院内DOTSについては,結核病床を有する指定 医療機関全てで行われていますが,保健所同様に 病院によりその取り組み状況に差があります。保 健所間,保健所と医療機関との連携は深まってき ていますが,医療機関同士については十分に情報 を共有する場がないこともその理由と思われます。 このため,治療環境および,様々な職種における DOTSに関する認識の統一化を進めるために,各 医療機関でのDOTS実施状況などを調査し,情報 提供することが必要ではないかと考えられます。 《切れ目のない支援について》 入院から切れ目なく地域DOTSにつなげること は,治療中断を防ぐ重要なポイントの一つです。 しかし現行の感染症法の下では,退院決定から退 院までの日数が短くなるために,医療機関からの 退院の連絡があった後では十分な支援準備ができ ないことがありました。 特に,中断リスクが高い患者には支援者の調整 にかなりの時間を要するため,届け出から1週間 以内の面接実施率を100%とし,患者情報収集を徹 底する必要があります。初回面接の時から患者と 良好な関係を築き,早い段階から一人でも多くの 支援者を確保して,地域DOTSの成功につなげら れるよう保健所担当職員の意識向上をすすめてい きたいと思います。 《支援者の発掘・充足について》 今後発掘・充足したい地域DOTS支援者として, 診療所・調剤薬局・介護事業所のヘルパー・地域 ボランティアなどがあげられますが,本県ではま だDOTSの必要性について普及・啓発の段階です。 平成18年度は,県医師会の結核医療研修会で, 診療所の医師を対象に地域DOTSのなかで診療所 に期待することについて講話しました。また, DOTS研修会に県・市薬剤師会の参加を得て,支 援方法などについて協議しました。しかしこの中 から地域支援者に結びついた症例はまだなく,各 保健所も,診療所や調剤薬局の積極的活用につい ては十分に取り組めていません。 今後は,「事例を通して学ぶ」,「地域の人材を よく知っている」という保健所の得意分野を生か して一人でも多くの支援者を確保していく必要が あります。地域の人材やサービスなどの社会資源 をいかにコーディネートするかが,患者支援にお ける保健所の腕の見せ所です。 《外来DOTSの脱落について》 喀痰塗抹陽性者のみをDOTSの対象としていた 保健所では,喀痰塗抹陰性で外来通院中の患者か ら治療中断者が2名でてしまい,コホート検討会 で課題としてあげられました。「入院DOTSを受 けない患者こそ,治療の重要性などについて説明 を徹底しなくてはならない」との共通認識が医療 機関と保健所に生まれ,現在,脱落防止の対策を 進めているところです。 ●保健所への期待 防ぎえた治療中断を少しでも減らすためには, 保健所,医療機関,そして患者本人がそれぞれの 役割をもう一度認識し,いざというときに確実に 情報交換を行うことができるようにしておくこと が重要です。また,患者のQOLの向上を目指す上 で,患者と医療機関の間にいる保健所が果たすべ き役割は大きく,結核治療において病院外治療の 支援を担う保健所の重要性は今後さらに高まるこ とと思われます。現在の保健所職員の知識をブラ ッシュアップし,標準化することにより,質の高 いDOTSを提供していかなくてはなりません。 ●まとめ DOTS対策を進めるにあたり,数値目標などに 追われ,いつの間にかDOTSそのものが目的とな ってしまうことがあります。DOTSは手段であり 目的ではないこと,DOTSの中心にいるのは患者 であることを常に意識して,患者一人一人に対し てオーダーメイドのDOTSができるように,組織 的な取り組みを進めていきたいと思います。 DOTSにおける本庁の役割 ●全県的なDOTS実施状況の調査と情報 還元 ●保健所および結核病床を有する医療機 関職員の意識・技術レベルの共通化 ●県・郡市医師会・薬剤師会との連携強化 ●DOTS実施要領・服薬手帳の定期的な 見直し 7/2007 複十字 No.316 9 シリーズ かたき病 結核(9) 忘れられ,問題が残されている病気 ―肺外結核― 結核予防会 会長 1.ルーズベルト大統領夫人の死 1933年から45年まで米国大統領を務めたフラン クリン・ルーズベルトの夫人,エリノア・ルーズ ベルトは1962年に再生不良性貧血と粟粒結核で死 亡されましたが,その臨床対応の適否が約40年を 経た今日もなお議論1)されています。夫人はいた って元気でしたが,75歳の時に貧血が見つかり,精 査の結果再生不良性貧血と診断されました。その 後発熱,悪寒などを繰り返しましたが風邪と考え, 欧州などへ旅行もしていました。しかし,貧血は 進んだため輸血,副腎皮質ホルモン療法を始め, その6ヵ月後に死亡したのです。持続する発熱は原 因不明の「不明熱」とされ,結核の可能性も考えて 抗結核剤が投与されたのは死亡前の約1ヵ月だけ でした。 当時の米国の結核罹患率は10万対28.7,今の日 本より高い値でした。副腎皮質ホルモンが発病を 促したのか,再生不良性貧血が影響したのか,何 れにしても高名な大統領夫人が結核になるとは思 わなかったのでしょう。多数の米国トップクラス の名医が合議を重ねて診断,治療がすすめられた のですが,死亡後の剖検で肺,肝,脾,腎,骨髄 に無数の結核結節が拡がった粟粒結核が見つかり ましたが,これはなかなか診断できなかったので す。 2.診断の実情 わが国で診断が病理学的に確認された結核例で, 臨床での正診率(正しく診断されていた率)が最近 報告2)されました。大学病院や大病院などで1999 年から2004年までの6年間に病理解剖された例で の観察です。大学病院の例では診断が難しく,病状 が複雑な症例が多かったかもしれません。わが国 の総数で見れば,正診率はこれより高いだろうと 思われます。それにしても図に見るように,正診 率が最も高かった結核性髄膜炎でも73.7%,肺結 10 7/2007 複十字 No.316 青木 正和 核は55.7%,結核性胸膜炎は53.3%,粟粒結核では 21.9%だったと報告されています。これら以外の 肺外結核を合わせた例の正診率は33.3%で,2/3 は他の病気と診断されていました。 最近はさまざまな疾患を合併した結核が多くな っています。このために結核が見逃されたのでしょ う。それにしてもこの低い正診率は多くの問題を 提起する数字といわねばなりません。 図.病理診断例の臨床診断率 単位:% 55.7 肺結核 21.9 粟粒結核 73.7 結核性髄膜炎 53.3 結核性胸膜炎 その他の結核 33.3 非結核性 抗酸菌症 75.3 0 20 40 60 80 3.結核は全身病 結核は全身病といわれています。血液やリンパ 液の流れ,あるいは,気管枝や腸管などの中空の 管を通って結核菌は全身どこにでも拡がることが 出来ます。肺以外の臓器の主な結核を見ると表の とおりです。1人で2臓器の結核にかかっている人 もありますが,この表ではそれぞれの疾患が数え られているので,合計数は新登録数より多くなっ ています。2005年には1年間に7,822例(人口10万 対6.12)の肺外結核が発生しました。最も多かっ たのは結核性胸膜炎で4,338例(10万対3.39),次が 肺門リンパ節以外の「他のリンパ節(主に頚部リ ンパ節)結核」1,151例」(10万対0.90)となってい ます。多くの臓器に無数の病変を作る粟粒結核は 全国で585例(10万対0.46),日本人の約22万人に 1人が毎年粟粒結核になっているという数字です。 治療成績が厳しい結核性髄膜炎は全国で1年間に 180例でした。この他,治っても後に機能障害を残 すことが多い骨・関節結核,あるいは今では珍し い眼,耳などの結核は表に見るとおりです。 表.結核の病類別新登録数, %, 人口10万対率(2005年) 実 数 肺外中の% 人口10万対率 新登録総数* 28,319 ― 22.17 肺結核 22,655 ― 17.73 肺外結核総数 7,822 100.0 6.12 胸膜炎 4,338 54.0 3.39 他のリンパ節 1,151 14.3 0.90 粟粒結核 585 7.3 0.46 その他の臓器 536 6.7 0.42 腸結核 296 3.7 0.23 脊椎結核 233 2.9 0.18 他の骨・関節 201 2.5 0.16 結核性髄膜炎 180 2.2 0.14 尿路結核 130 1.6 0.10 結核性膿胸 115 1.4 0.09 皮膚結核 98 1.2 0.08 肺門リンパ節 88 1.1 0.07 性器結核 37 0.5 0.03 耳の結核 33 0.4 0.03 眼の結核 11 0.1 0.01 *1人で2つ以上の結核を合併している例があり,各病類の新登録数 は重複して数えられている。 4.治療にも問題が・・・ 今では肺外結核でも高齢化が進み,肺外結核の 66%は60歳以上,あるいは,50%が70歳以上で占め られています。しかし肺門リンパ節結核は小児に 多く,髄膜炎は20∼69歳の広い範囲に分布し,頚 部リンパ節結核は20歳以上の女性で見られること が多いなどそれぞれ特徴があります。知っている と診断の時に役立ちます。 肺外結核は例数が少ないので診断が難しいだけ でなく,治療でも戸惑うことが少なくありません。 骨関節結核では外科療法が必要か,頚部リンパ節 結核では何時まで治療すればよいか,髄膜炎では 救命のためにコーチゾン(副腎皮質ホルモン)の 併用が必要かなどなどです。それぞれの肺外結核 の治療経験がある医師が少ないし,診査会に提 出しても良いアドバイスを得られないことがある のでなおさらです。 肺外結核の治療でも病巣内の結核菌を化学療法 でなくすことが第一です。肺結核で築かれた結核 化学療法の原則からはずれず,しかも各臓器特有 の問題も理解して治療しなければなりません。ま た,途上国では肺外結核も少なくないので,各種 の肺外結核での臨床対照実験成績も多く報告され ています。英国のガイドラインに3)に見るとおり です。あるいは,専門家と相談することが重要で しょう。 5.今後・・・・高齢化と減少 わが国が結核低まん延国(結核罹患率が10万対 10以下)になって,新発生結核患者数が12,000人 以下になるのは2020年より先だろうと予測されて います。こうなっても,肺外結核は全国では約 3,300人,胸膜炎を除いても約1,500人発生するでし ょう。その多くは高齢者で,基礎疾患を持ち,診 断はますます難しいでしょう。 肺外結核を無視することはまだまだ出来ないの です。 文献 1.Lerner BH. Revisiting the death of Eleanor Roosevelt: was the diagnosis of tuberculosis missed? Int J Tuberc Lung Dis 5: 1080-1085, 2001 2.星野斎之ほか.病理剖検輯報を用いた近年 (1999-2004)の結核死亡例の診断精度の検討. 結核 82:165−171, 2007 3.The National Collaboration Centre for Chronic Conditions, London,Tuberculosis, Clinical diagnosis and management of tuberculosis, and measures for its prevention and control.Royal College of Physicians, London. 2006 : 1-215 7/2007 複十字 No.316 11 シール だより 複十字シール運動 キャンペーンが始まります! 結核予防会事業部資金課長 佐藤 利光 8月1日から複十字シール運動期間となります。 これまで同様,今年も皆さまからの暖かいご支 援を宜しくお願い申し上げます。 8月から気持ちを新たに 資金課では,今の時期,複十字シール運動ポ スターやリーフレットを新調したり,全国の支 部で使っていただくキャンペーン資材を作り変 えたりという作業をしながら,新たな1年が始ま るのだと気持ちをリフレッシュしています。普 通なら年度始めの4月か,正月休み明けにこう いう気持ちになるものなのでしょうが,資金課 では,この時期が一年のスタートになるのです。 ポスターに付いているカレンダーが8月始まり になっているのもそういうわけです。そこまで は先にあげた作業のほかに,全国支部のシール 担当者会議が1泊2日で5月に結核研究所であ り(本誌p.14参照),支部ごとに去年を振り返 りつつ今年はどんなふうに運動をやっていくか ということを話し合い,それを参考にプランを 考えます。 依頼先の選定方法 並行して,複十字シール本体の制作と支部へ の発送業務,昨年の募金成績の全国集計などが ありますが,シ−ル運動に関して同じようにウ エイトの大きいものが本部郵送募金の依頼先の 選定です。ご承知のとおり本部は郵送募金を主 として行っています。かつては個人のお宅へも 募金のDMを送ることが容易にできましたが, 今は個人情報保護法が足枷となって,新規の個 人データの入手ができません。その分,法人向 けのお願いを増やしていますが,都内の法人デ ータもそろそろ開拓し尽くした感があります。 法人データそのものは個人情報と関係なく業者 から入手できるのですが,まったく新たな分野 や業種というものがそうそうあるわけではなく, 以前使ったデータを掘り起こしたり,眠ってい たデータを別の観点から見直してみたりと抽出 12 7/2007 複十字 No.316 条件を変えながら効果がありそうな対象を探し ます。個人から法人への対象者のシフトは今後 も決定的ですから,いろいろな方向からアプロ ーチをしなければデータも枯渇し行き詰まってし まいます。 新しい取り組みについて アプローチということで言えば,今年の本部 の郵送募金DMに入れた趣意書には,これまで と趣向を変えて「お友だち紹介ハガキ」を組み 込んでみました。従来はA4の紙に複十字シール の意義をびっしりと書いていましたが,それら を整理し空いたスペースに料金受取人払いの定 型ハガキを作りました。空いた部分といっても, ハガキにするには細かい郵便規則をクリアしな ければなりません。これまでの用紙では薄すぎ て丈夫さの点で問題がありますし,かといって 大きさを変えずに厚くすると今度は郵送物一式 の重量が増えて,従来の送料では出せなくなっ てしまいます。そこで試行錯誤をしながらA4の 2/3まで内容をまとめて紙を厚くし,GOサイン となりました。 もう1つご紹介しますと,本部のホームペー ジをご覧になった方はお気づきかもしれません が,複十字シールのコーナーで,少し前から季 節に応じたキャンペーンを行っています。これ は通常の募金紹介にとどまらず,期間限定でお まけが付くというものです。大型シールの募金 基準額は1,000円ですが,例えば過去のシールの なかで暑中お見舞いハガキに似合うシールを数 点選び,それも合わせて差し上げるというもの です。最初はどのくらい反応があるか半信半疑 だったのですが,これが少なからずあるので驚 いています。申し込んでくださる方々はたいが いの場合1,000円ぴったりではなく多目の金額で 募金をしてくださいます。ありがたいことだと 感謝すると同時に,インターネットでの情報提 供もおろそかにできないと思いました。ホーム ページでキャンペーンを知って,お申し込みい ただいた方々の中には,初めての方も常連の方 もいらっしゃいます。こちらからの情報提供を 気にかけてくださる方が日本中にたくさんいる と思うと仕事にも張り合いがでてきますし,も っと喜んでもらおうと知恵もしぼりたくなって きます。このキャンペーンの次なるアイデアも 担当者の頭の中にはあるようですので,皆さん 楽しみにしてください。この他に「ブライダル 募金」も今年から開設し高額募金もいただきま した。このように「お友だち紹介ハガキ」も「 期間限定キャンペーン」も「ブライダル募金」も 資金課スタッフの発案です。始めたばかりのこ とですし効果もまだ計り切れませんが,ともか く新しいことを始めたという事実が大事だと思 います。できるかできないかを考えている間は 何もできませんから,まずは一歩踏み出すとい うこと。前例に根拠を求めたり,よそがやるま で様子を見るということではなく,自分を頼り にとりあえず動いてみようという資金課の今日 この頃です。 平成18年度複十字シール運動募金成績 平成18年度の全国募金総額は,3億9,244万 4,582円となりました。複十字シール運動の趣旨 に賛同され,募金にご協力いただいた皆さまに 厚くお礼申し上げます。また募金運動を全国で 展開していただいた支部ならびに結核予防婦人 会の皆さまには,感謝申し上げます。ありがと うございました。 募金形態は,郵送募金が全体の35.2%,残りが 組織募金となっています。組織募金の内訳は, 学校3.0%,市町村16.9%,その他の官公署8.7%, 婦人会関係28.3%,衛生関係団体2.5%,会社2.2%, その他3.1%でした。 都道府県支部別では,前年比増が5支部(北海 道・福島県・徳島県・大分県・沖縄県)で見ら れました。本部募金額は,約110万円増の7,347 万1,834円でした。 総額から諸費用を除いた益金2億7,844万1,821 円の使途は,普及啓発に42.2%,機器整備など に15.1%,結核予防団体の事業助成に14.4%,調 査研究などに14.3%,途上国の支援に14.0%とな っています(図)。 全国総額は11年連続で減少し,総額が4億円を 割ったのは30年前の昭和51年以来のことです。 図 益金の使途 14 千 万 円 12 普及啓発 10 42.2% 8 6 4 機器整備 など 2 15.1% 結核予防 団体の 事業助成 14.4% 調査研究 など 14.3% 途上国の 支援 14.0% 0 7/2007 複十字 No.316 13 平成19年度結核予防会広報・シール担当者会議 「募金活動の意図を 理解し,楽しむ」 平成19年5月17日∼18日 結核研究所 はじめに まずは佐藤資金課長によるオリエンテーション から開始です。 昨年と同様に緊張をほぐすため「昔から親しい 間柄」を前提とした挨拶から始まりました。堅苦 しい雰囲気は和らぎましたが,「お久しぶりです ! ○○支部の・・・」とみなさんに挨拶をされ る度に「あれ? 以前,どこかの会議で・・・」 と年々衰えていく記憶を辿ってしまいました。 グループ討議① グループ討議①では各班に分かれて,2日目のテ ーマでもある「今後,募金を増やすにはどうすれ ばよいか?」につながるよう,特にテーマは決め ずにシール募金運動についての現状,問題点など を挙げ,各班よりシンポジストを選出し,全体デ ィスカッションの形式で様々な意見,提案が挙げ られました。 結核予防会新潟県支部 総務課主事 佐藤 一博 思う」,「誇りを持つ」,「いい仕事をしている」と 感じてほしいことと,シール募金活動の意図を明 確に理解し,それを真剣に伝えていくことにより, 目標・目的に向かう方法・手段は無限に広がり, 結果につながるのだとお話がありました。 私自身,近年,募金活動が持つ本来の意味を考 えるようになってきました。日本には数え切れな いほどの企業・団体がありますが,公に募金活動 が許されているものは少なく,それだけでも非常 に貴重な経験をさせていただいていると思ってお ります。また,山下部長もおっしゃられていまし たが,世の中のために役に立つことを仕事として 従事できることはとてもありがたいことだとも思 うようになってきました。 グループ討議② 特別講演 白熱する班別討議 「ワクチンでつながる世界」と題し,認定NPO 法人世界の子供にワクチンを日本委員会事業管理 部根元氏による講演がおこなわれました。 一番興味深かったのは活動目標の中に「地球規 模の視野を持ったボランティアの育成」,「寄附文 化を創る」,「募金のノウハウを共有する」などあ まりこれまでシール担当者会議の中では話し合わ れなかったものがあり,経験や職員数では我々の ほうが多いのですが,「募金活動・ボランティア に対する姿勢,考え方」に関しては遅れを取って いるのではないかと痛感しました。 最後に根元氏の「楽しくやっています」との言 葉に,決してやらされているものではなく,自ら の意思に従い,世の中に対する自分の使命・役割 ・存在を理解し,充実した活動をされているのだ と感じました。 2日目 講演「シール募金について」 山下事業部長より「シール募金について」と題 し,シール募金運動を担当できることを「幸せに 14 7/2007 複十字 No.316 各班の発表の様子 前日のグループ討議を参考に各班ごとに「今後, 募金を増やすにはどうすればよいか?」を佐藤資 金課長からの助言を基に担当者として現状より高 く,現実的な「目標」を設定し,そこに生じるギ ャップを克服するために体験・経験などの「資源」 から今後1年間の具体的な方法・手段を検討する 形で討議が行われました。そこでは募金協力者へ のアフターケア,婦人会との連携強化,啓発資材 を直接募金に繋げること,キャッチコピーやテー マの設定,支部職員の意識向上などが上げられま した。 最後に この会議は例年,はじめて複十字シールを担当 される方も多く,他支部の募金方法や考え方を聞 くことのできる数少ない場ですので,今後も毎年 開催していただきたいと思います。また,シール 担当者以外の全国各支部役職員のみなさん,また ご覧いただいている一般のみなさまも複十字シー ル運動の意図を理解し,募金活動に何らかの形で 参加していただけたらと思います。 募金活動に参加できることは人生の中でも貴重 ですばらしい経験だと思います。 ぜひ,複十字シール募金にご協力下さいますよ うよろしくお願い致します。 財団法人エイズ予防財団の 啓発活動について エイズは1981年にアメリカで最初の症例が報告 された疾患で,日本では1986年の外国人女性の感 染者等についての報道等により,いわゆる「エイ ズパニック」という形でエイズへの関心が全国に 広がりました。その頃はエイズという病気に対す る正しい知識がなかったために,未知の病気に対 する恐怖がパニックとなって広がってしまったも のです。エイズ関連の報道については,その後日 本では血液製剤によるHIV感染,いわゆる薬害エ イズが主流を占めた時期があり,和解が成立した ことによりエイズに関連する報道の量が極端に減 ってしまいました。エイズ予防には繰り返しメッ セージを発信することが重要なことですが,マス コミの露出が少なくなると,関心が低下すること となります。 日本においてはHIV感染者・エイズ患者は増加 傾向にあり,平成18年の日本におけるHIV感染者 ・エイズ患者報告数は1,358件で1日当たりに換算 すると3.7人となり過去最高となっています。 HIVは誰でも感染する可能性のあるウイルスで すが,感染経路が限られているので,予防をする ことができます。予防するためにはまず正しい知 識をもつことが一番重要です。ただし,エイズの 正しい知識をもっていても,その知識が実際の行 動につながらなければ予防できません。具体的に はHIV感染予防にコンドームが有効なことは知識 として持っていながら,コンドームを使用しない で性交渉をもってしまうという例などです。エイ ズ予防の啓発普及には知識を行動につなげるため の工夫が重要となります。 レッドリボンライブ, フィナーレの模様 財団法人エイズ予防財団は,昨年の12月1日の 「世界エイズデー」イベントとして,「レッドリ 財団法人エイズ予防財団業務部 普及啓発課長 中村 正 ボンライブ」を開催しました。ラジオDJの山本シ ュウさんの呼びかけで,アーティスト,スポーツ 選手,タレント等各界で活躍され若者に支持をさ れている方々が集まり,それぞれ自分の言葉でエ イズ予防を訴えました。このようなメッセージの 伝え方は,受けた方々の心に残りますし,行動に 結びつくものと思われます。 当財団は公共広告機構(AC)の支援キャンペー ンを受けてテレビ,新聞,ラジオなど多角的な広 報を平成17年より展開しています。平成17年の「 カレシの元カノの元カレを知っていますか」とい うHIV検査促進のCMはギャラクシー賞のCM部門 の大賞を受賞しました。平成18年はパペットマペ ットさんの「うしくんのエイズ(HIV)検査体験 レポート」が平成19年6月まで実施されました。 平成19年の支援キャンペーンはGLAYのTERUさ んによるCMが決定し,この7月から1年間キャン ペーンが実施されます。TERUさんがHIV検査を 実際に受けて,検査についてのメッセージを発信 する内容で,大きな効果が期待されています。 渋谷での街頭キャンペーンの様子 6月1日∼7日は「HIV検査普及週間」です。 この週間は昨年創出されたものですが,2回目と なる今年は「レッドリボンライブ」に協力してく れた絢香さんからのメッセージをFM局の協力で放 送し,東京(池袋,渋谷,新宿),名古屋,大阪 で,山本シュウさん,松竹芸能所属タレントの皆 さんのご出演によるライブトークとパンフレット などの配布活動の街頭キャンペーンを実施しまし た。 これからは、6月の「HIV検査普及週間」,12月 の「世界エイズデー」と2つの集中的な啓発普及 を中心に年間を通して継続的な啓発普及を実施し ていくこととしています。 7/2007 複十字 No.316 15 「フィリピン結核対策 プロジェクト」活動の歩み 結核予防会国際部 やなせ 医師 簗瀬 有美子 フィリピン共和国(以下,フィリピン)は,結核 患者数が多く,世界の結核患者の8割が集中する22 の結核高負担国の一つです。結核予防会は1992年か らJICAプロジェクト活動を通じて,フィリピンの 結核対策を向上するための技術支援を行ってきまし た。このプロジェクトは2007年8月末で15年間の活 動に幕を閉じますが,今回は,フィリピンの結核対 策の状況やプロジェクトがこれまで行ってきた活動 について紹介します。 1. フィリピンの概要 フィリピンは,大小 7,100 以上の島々からなる島 国です。気候は熱帯性で大まかには11月∼4月の乾 期とその他の雨期に分かれます。人口は約8,300万 人(2004年),その8割以上がカトリック信者で す。近年の経済発展は目覚しく,国民一人あたりの GNP は 1,232 USドル(2005年)となりました。し かし,経済の地域格差は拡大し,貧富の差も大きな ものとなっています。また人口の約1割は,アメリ カなどへ移住したり中東などへ出稼ぎに出ていま す。 2. 結核患者の発見・治療の実際 フィリピンの結核対策は,1968年から一般保健サ ービスに組み込まれて行われており,実際の患者発 見,治療を行っているのは市町村にある保健所と保 健所支所です。2週間以上の咳があるなど結核の疑 いがもたれた患者は,保健所で3回採痰され,検査 室で塗抹検査が行われます。そして検査で陽性であ った場合,塗抹陽性結核患者として保健所に登録さ れます。治療は直接監視下療法,つまり治療パート ナーの前で,毎日6∼9ヵ月間服薬します。パート ナーには主に保健所のスタッフや地域の保健ボラン ティアがなり,場所は保健所や支所・ボランティア の家・患者の家などです。また治療の効果は,約2 ヵ月毎の喀痰塗抹検査で判定されます。 16 7/2007 複十字 No.316 保健所での服薬風景 看護師や助産師などが患者の服薬を見守ります 3. プロジェクト活動の歴史 公衆衛生プロジェクト(1992∼1997年),結核対策 プロジェクト(1997∼2002年),結核対策向上プロジ ェクト(2002∼2007年)の3フェーズにわたり, JICAプロジェクトで技術支援を行ってきました。 I. 公衆衛生プロジェクト(1992∼1997年): セブ島(人口300万人)に設けたモデル地域で, DOTS戦略に沿った方針のもと,フィールドでの基 礎調査・職員への研修・現場での巡回指導に重きを 置く活動を行いました。そして,このDOTS戦略に 沿った結核対策方針がフィールドで実行可能・有効 であることを示しました。また,結核菌検査の拠点 となるセブ・リファレンスラボラトリーを設立して 技術支援をすることで,セブ地方の喀痰塗抹検査の 精度管理を強化し,検査の信頼性を大きく向上させ ました。 II. 結核対策プロジェクト(1997∼2002年): 前プロジェクトの成果を基盤にして,DOTSの全 国展開への支援を目的に実施されました。このプロ ジェクトでは支援地域をセブ地域以外に拡大し,支 援地域の人口はフィリピン全国の17%程度にまでな りました。また,2002年3月には,日本の無償資金 協力プロジェクトで国立結核研究所(NTRL)がマ ニラ首都圏に設立されました。 フィリピン国立結核研究所(NTRL) フィリピン結核対策の検査部門の中核を担っています III. 結核対策向上プロジェクト(2002∼2007年): フィリピンは,JICAやその他国際協力機関の支 援によって2000年末までにDOTS全国拡大を達成し ました。しかし結核対策・喀痰検査の質が地域によ ってばらつきがあり,充分ではなかったため,質を 全国的に高めて結核患者を減らすために,このプロ ジェクトが始まりました。支援地域として,ネグロ スオキシデンタル州とマニラ首都圏が加えられ,以 下に紹介する内容を目標として掲げて活動しました。 1)DOTSの質の向上:プロジェクトは国・地方 ・州・市町村レベルすべての会議や検討会を通し て結核対策に関する技術アドバイスを行い,また, 保健所に巡回訪問をして,具体的な技術指導を行 うなどの活動をしました。更に,DOTSの質を良 くするための要点をまとめたハンドブック “Quality of DOTS”を作成し,全国に配布しま した。その成果として,フィリピン国全体の喀痰 塗抹陽性の新規結核患者における患者発見率が 72%(2005年),治療成功率が89%(2004年)と なりWHOの掲げた目標値(患者発見率70%と治 療成功率85%)に達しました。またプロジェクト 支援地域でも結核対策成績が向上しました。 保健所(検査室)への巡回指導の様子 患者発見や治療内容などについて指導が行われます 2)全国における喀痰塗抹検査の向上:フィリピ ン全体で喀痰塗抹検査の精度を高めるために,保 健省やWHOと共同で検査精度管理法指針を作成 し,全国配布しました。また,NTRLの機能強化 や研修を通じての全国検査ネットワークの形成を 行いました。その成果として,全国に検査精度管 理システムが拡大し,NTRLを頂点にして10の地 方区検査室,105の検査精度管理センター,1,946 の塗抹検査室という全国検査ネットワークが構成 されました(2006年現在)。 喀痰塗抹検査の研修 質の高い検査を目指して実施されています 3)オペレーショナルリサーチ:保健省やWHOと 共に全国薬剤耐性結核菌調査を行っている他,支 援地域の巡回指導や検査助手向け研修の効果につ いての調査を実施しました。全国薬剤耐性結核菌 調査では,新規結核患者の4%,再治療患者の 21%が複数の抗結核薬が効かない多剤耐性結核で あることが示されました。この結果は,フィリピ ンの新たな結核対策策定の際の重要なデータとな ります。また,巡回指導や検査助手向け研修の有 効性が証明され,これらの結果も今後のフィリピ ンの結核対策に大いに役立つものとなります。 4. おわりに これら15年間にわたる技術支援活動は,フィリピ ンの結核対策向上に大きく貢献しました。しかし, フィリピン結核対策のゴールはまだまだ見えない状 況です。結核患者を確実に減少させるためには, DOTSの質を更に高めるための活動が求められ,ま た新たな課題である薬剤耐性結核,エイズ合併結核, 小児結核などにも取り組んでいく必要があります。 フィリピン結核対策の将来は,私たちが去った後に, このような課題にどう対応するのかにかかっている でしょう。 7/2007 複十字 No.316 17 Tuberculosis Surveillance Research Unit(TSRU) 及び TB Bacteriology Operational Research Meeting報告 結核予防会結核研究所抗酸菌レファレンスセンター 細菌検査科長 御手洗 聡 例年通りTSRUがオランダのスヘーフェニンへ ンで,4月4日から6日まで開催された。またそ れに先立ち,細菌検査のオペレーショナルリサー チ(OR)に関する検討会も,同じ会場で4月2日 から3日まで行われた。日本からは,OR会議に筆 者が,続くTSRUに結核研究所(RIT)から石川信 克所長,加藤誠也副所長,小野崎郁史国際部長, 中川美和氏及び筆者が参加した。 OR会議は,国際結核肺疾患予防連合(IUATLD /UNION)がUSAIDの資金援助を受けて開催した もので,目的は結核対策にインパクトを与え得る 結核診断技術開発ORの選定や,技術的ガイドライ ンに関する専門家間での合意形成であった。この 会議にはFIND,香港SRL,RIT/JATA(筆者), KIT Amsterdam,KNCV,TRC,TRC Chennai, WHO,USAID及びUNIONから主に細菌学専門家 が参加していた。 二日間の協議の結果,いくつかの点で専門家間 の合意を得た。最も多くの時間を割いたのは抗酸 菌塗抹検査についてであり,まず診断時の検体数 の問題が取り上げられ,結果として従来の3検体 採取に代わって,2検体採取を勧めることが合意 された。3つ目の検体が陽性率に大きく寄与しな いことはいくつもの研究で明確であり,検体数を 減らすことで検査室の負担を軽減することが可能 となる。しかし,この内容は既に2006年のSTAG (Strategic and Technical Advisory Group on Tuberculosis)会議で提案され,否決された経緯 があり,どのような点で証拠不十分であるかを明 確にした上で,これから計画されているORに内容 を反映させることになった。もう一つ重要な合意 は結核患者の診断(case definition)に関するもの で,これまで少なくとも2検体の抗酸菌塗抹陽性 をもって「結核患者」としていた定義を改め,1 検体のみの陽性結果でも「結核患者」として登録 するべきであると結論した。また,「陽性」の定 18 7/2007 複十字 No.316 義についても1抗酸菌/100視野をもって陽性とする ことに合意した。抗酸菌染色法についても議論が あり,抗酸菌を強い赤色に染色し,背景は弱い青 色とする合意の下,チール・ネールゼン染色では 石炭酸フクシン濃度を現行の0.3%から1.0%に変更 することで合意した。これは時に質の悪い塩基性 フクシンが販売されていることに配慮したもので, 現行十分な染色性を得られている場合は特に変更 の必要はない。石炭酸フクシンの質を判定する方 法についても研究が進行中であり,近日中に論文 化される予定である。 その他,蛍光顕微鏡の導入に関して,従来の水 銀灯を使った蛍光顕微鏡は検査感度を増加させる と言う点で一致したが,新しく開発された発光ダ イオードを使った蛍光顕微鏡の評価については, 現在実施されている研究の結果を待つ必要がある と結論した。また,次亜塩素酸ナトリウム水溶液 による集菌法についてもORが必要と判断された。 小川培地による培養法も,遠心機を使用しない簡 易な培養法として推奨していくことで合意し,実 践性評価のためのORが必要と結論された。 続くTSRU会議では,①結核の危険因子,②結 核とHIV,③抗酸菌塗抹検査の感度向上,④有病 率調査を含む診断の遅れ,及び⑤多剤耐性結核そ の他のテーマで発表がなされた。中でも結核の危 険因子に関する喫煙の影響をレビューした研究で は,結核感染や発病に対する喫煙の悪影響が示さ れており,予後にも影響していた。受動喫煙や喫 煙量との関連をさらに解析するため,コホート研 究が必要と結論していた。 今回初めてTSRUに参加したが,小会場で議論 しやすい雰囲気であった。先行した結核菌検査に 関する会議と併せて,結核対策の現状を整理し, 研究上のアイデアを得るのに良い機会であったと 考える。 世界の結核担当者に聞く ライシュマン教授の 来日インタビュー 結核研究所国際協力部 企画調査科アドボカシー担当 石黒 洋平 リー・ライシュマン教授 (LEE B. REICHMAN, M. D., M.P.H.),米国ニュージャージー 医科大学国際結核研究所所長 結核の臨床と予防に関する世界的 権威。現在ニュージャージー医科大 学の教授を務める傍ら,サバティカ ルで,ジュネーブにある世界のスト ップTBパートナーシップ(Stop TB Partnership)のシニアアドバイ サーを務めている。 今回,国際看護師協会学術集会に参加するために来日(5月27日∼6 月2日)されたライシュマン教授は,忙しいスケジュールの中,5月28, 29日外務省と厚生労働省を表敬し,また国際協力機構(JICA)で結核 対策についての講義を行われました。 ●今回の来日で一番印象に残ったことは何で すか? 今回様々な日本政府の方々に会う機会がありま したが,どの人も信じられないほど結核のことを 良く知っていたのには大変驚きました。このよう な政府高官レベルでの知識とコミットメントの高 さを私は今まで見たことがありません。来日当初 は日本政府にもっと結核対策に力を入れて欲しい と呼びかけるつもりだったので,相手がすでに結 核について充分な知識を持っており,具体的な計 画もあるとわかり驚いて,夢でも見ているのかと 思ったくらいでした。日本政府にはこれから世界 の結核対策により力を入れるのだという強い決意 が感じられ,大変嬉しく思っています。 厚生労働省で武見副大臣(右) を表敬 ●アドボカシーの戦略として何かアドバイス はありますか? 日本政府はすでにもう結核対策の重要性を認識 しており,実際に行動も起こそうとしていること を考えると,今アドボカシーとして必要なことは, 今実行している結核対策のプログラムをより改善 していくことと,日本国民に政府のこのような行 動をサポートするように呼びかけることです。日 本は結核対策で長年素晴らしい実績を残してきて おり,これからも他の国を巻き込んで世界のリー ダー的な役割を果たしていくことが期待されてい ます。 外務省浜田政務官(左) と会談するライシュマン教授 ●長年結核対策に関わられていらっしゃいま したが,その活動の源は何ですか? 私がこの結核対策に関わり始めた当初は,アメ リカで3人しか結核に興味を持った医者はいません でした。だからそういう状況で,論説を書いたり, 講義をしたりとアカデミックな経歴においては良 いものでした。しかし同時に,結核はそれほど重 要ではないと思っている人が大勢いるのはとても フラストレーションのたまるものでした。ただ, 時が経つにつれて少しずつ結核についてより多く の人びとが理解を深め,対策がとられてきたこと に関してはとても満足しています。結核が撲滅さ れるまで,続けられる限り結核対策に貢献してい けたらと思います。 ●最後に一言 結核予防会結核研究所は,長年の結核対策の素 晴らしい実績があり,世界中から尊敬されていま す。また日本そして世界中に送りだした2,000人以 上もの研修生をはじめとする世界中のネットワー クやリソースを動員するなどして,新たな活動を 切り開いていける可能性もあります。これからも 結核対策のリーダー的役割を果たしていくことを 期待しています。そのために私も喜んで力になり たいと思っています。 7/2007 複十字 No.316 19 日本で用いられている環境内指標の 問題点(その2) 産業医科大学産業生態科学研究所 健康開発科学研究室研究員 中田 ゆり 1.3 タバコ煙評価基準値の国際比較 空気環境対策が進むアメリカでは,Air Quality Index(図1)を各地のテレビ,新聞やインターネッ トを通じて公開し,広く国民に警告を続けている。 日本の厚生労働省が定めている喫煙室内の粉じん濃 度評価基準値(0.15mg/m 3)を以下のAir Quality Indexに照らし合わせてみると,わが国ではこれ以下 であれば合格ラインとされている浮遊粉じん濃度= 0.15mg/m3(150ug/m3)は,“不健康”(太枠で表 示)=「心臓病や肺疾患がある人,年配者や子供は この危険な環境に長く身を置くべきでない」と警告 される危険領域に属する。 図1 米国環境保護庁による大気質指標(複十字311号p.23参照) http://www.epa.gov/airnow//aqibroch/AQI_2003_9-3.pdf また,日本の厚生労働省が定めている「新ガイドラ イン」の評価基準にある一酸化炭素濃度10ppm を, 前述のRepaceのロゼッタストーン方程式1)により粉 じん濃度に変換すると,この濃度(10ppm)に達す る 場 合 の タ バ コ 煙 粉 じ ん 濃 度 は 2 , 5 0 0 u g / m 3= 2.5mg/m3となる。この数値は,日本で使われている (職場あるいは喫煙室内の)浮遊粉じん濃度の評価 基準(0.15mg/m3)の約17倍という劣悪な空気環境に 相当する。 日本では,米国やヨーロッパ各国のように職場を 禁煙化する法律が制定されていない。前月号で述べ たとおり,求められる受動喫煙対策について混乱を 招く「新ガイドライン」が厚生労働省より提供され ている。そのため,新幹線の喫煙車両やタクシ−, 飲食店,カラオケ店,パチンコ店,ゲームセンター, 宿泊施設などだけでなく,多くの労働者が働く一般 の職場においても,環境タバコ煙に起因する粉じん 20 7/2007 複十字 No.316 濃度が0.15mg/m3以下であればよしとされてしまって いる。濃度の高いタバコ煙により汚染された空気環 境の中で働かされている日本の労働者を救うために も,国際的に用いられているエビデンスに基づいた 基準に照らし合わせ,早急に評価基準を見直す必要 があるだろう。 1.4 PM2.5 測定の必要性について WHOが定める空気環境の基準(Air Quality Guidelines 2005年)では,年間のPM2.5(超微粒子) の曝露量の限界を0.01mg/m3以内に,24時間では0.02 mg/m3以内に定めている。PM2.5の値がガイドライン 以下の数値であっても安全である確証はなく,大気中 にあるPM2.5の濃度を少し越えた量に曝露されるだけ でも健康被害が起こるという疫学上のエビデンスが あるため,WHOは,可能な国はさらに低い数値を設 定するように奨励している。また,米国で定められ ている「室内空気環境の基準」(National Ambient Air Quality Standards )AAQSでは,年間PM2.5の曝 露量の限界を年間で0.015mg/m 3 , 24時間では0.065 3 mg/m に設定している(1997年)。 日本の厚生労働省は,分煙の効果を評価する際に は一酸化炭素や空気の流れの他に,浮遊粉じんの濃 度を計測することを定めている。しかし,WHOや欧 米の室内空気環境基準のように浮遊粉じんの粒子サ イズがPM 10 (直径2.5ミクロンから10ミクロン)と PM2.5(直径2.5ミクロン以下)を計測する規定は存在 しない。この2種の粒子サイズは呼吸器官に入り込 み,健康被害をもたらすと考えられている。 特にPM2.5はタバコなどの燃焼により発生する超微 粒子であり,電子顕微鏡でのみ検知することが可能 である。小さな粒子が肺の奥まで入り込むため,短 期・長期的な曝露により深刻な肺・呼吸器疾患や心 臓病,死亡を引き起こし,人体に非常に危険である ことが疫学研究により明らかになっている。他の先 進国ではWHOのエビデンスに基づいた空気環境のガ イドラインを参考にしたPM2.5の測定が主流となって いる。 ハーバード大学の研究チームが2006年7月にUICC World Cancer Congress 2006で発表した報告 (http://roswelltturc.org/downloads/GAMS%20repor t_7_7_06.pdf)によれば,2003年から2006年にかけて, 22カ国の公共空間1,132箇所でPM2.5の測定調査が行わ れた。測定場所は,レストラン・バーなど飲食店,空 港や駅,ホテル,ショッピングアーケード,オフィ スや屋外遊技場などであり,測定は各場所で一週 間行われた。分析は,それぞれの場所での禁煙席と 喫煙席のPM2.5平均濃度が比較され,次に,各国の各 施設におけるPM2.5の平均濃度と,すべての公共空間 が法律により禁煙化されたアイルランドの施設にお いて測定された平均濃度が比較された。データは統 計処理された後,喫煙・禁煙エリア別,都市別,国 別の比較も行われ,各国の受動喫煙防止対策の促進 に活用されている。 日本においても,大気汚染の規制においてはPM2.5の 濃度評価が進められつつある。東京都内のぜんそく患 者らが国や都,自動車メーカーなどに損害賠償を求め た東京大気汚染公害訴訟で,2007年2月,国は原告と の和解協議に積極的に応じる意向を示した。環境省は トラックやバスなどディーゼル車が出す超微粒子 (PM2.5)が人体に危険であることを踏まえ,濃度を規 制する改正案を通常国会に提出する準備を進めている。 公共空間の受動喫煙評価においても,PM2.5の測定を取 り入れて防止対策を強化することが必須である。 2.受動喫煙調査の結果・今後の課題 日 本 の 労 働 安 全 衛 生 法 第 3 条 (http://www.houko.com/00/01/S47/057.HTM)で は「事業主は快適な職場環境の実現のため,労働者 の安全と健康を確保するべき」と明文化している。 ビル衛生管理法でも,タバコの煙に由来する浮遊粉 じんの基準は0.15mg/m3に定められている。 また,2003年に施行された健康増進法の第25条 (http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H14/H14HO103.html) では,「学校,体育館,病院,劇場,観覧場,集会 場,展示場,百貨店,事務所,官公庁施設,飲食店, その他の多数の者が利用する施設の管理者は,受動 喫煙を防止するために必要な措置を講ずるように努 めなければならない」と定めている。しかしながら, この法律は努力規定のみで監督体制が確立しておら ず,違反に対し罰則がないことから,さまざまな空 間で喫煙がなされている。 この数年間,サービス産業や交通機関などにおけ る受動喫煙対策の実態調査やタバコ煙粉じん濃度の 測定調査を続けているが,職場や公共施設での禁煙 化はある程度進んでいるものの,ファストフード店, ファミリーレストラン,居酒屋などの飲食業2),カ ラオケ3)やパチンコなどにおいて,高い粉じん濃度 が検出されている。分煙されているといってもその ほとんどが,同じ空間に禁煙席と喫煙席が存在する 不完全な分煙である(写真1)。禁煙席であっても その粉じん濃度は禁煙化された店と比較するとはる かに高く,劣悪な空気環境となっている。また,禁煙 化されていないタクシー車内4)や,新幹線や特急の 喫煙車両ばかりでなく喫煙車両と隣り合う禁煙車両5) でも,粉じん濃度は禁煙の車両に比べて著しく高い。 新幹線の中で働く労働者(車掌,車内販売員や清掃 係)の多くは契約社員の若い女性であり,乗務時間 の8割において受動喫煙に曝露されている例もあ る 6) 。 写真 1 不完全な分煙 受動喫煙に曝露される環境において多くの労働 者が働いている。健康増進法や労働安全衛生法等 に基づき,利用者の安全だけでなく従業員の良好 な職場環境を整備することは事業主の責務である 一方,受動喫煙防止対策は事業者の自主努力によ って行われるべきとされている。その結果,子供 や妊婦・心臓病患者などタバコ煙弱者も利用する 公共空間やサービス業において受動喫煙防止対策 が不十分であることは,重大な社会問題である。 公共空間の禁煙化は世界の潮流となっている。 北米,豪州,欧州,アジアの一部では利用者と労 働者の健康を守る観点から,飲食店や交通機関を 含むすべての職場を全面禁煙としている。例えば カナダでは,厳しい罰則を伴う法律によって非喫 煙者,未成年者や労働者を受動喫煙の害から守っ ている。(例;飲食店の喫煙室へ未成年者を入れ ることは法律により禁止 写真2)。列車におい ても,屋外デッキを含むすべての車両は禁煙であ り,喫煙は駅に設置された屋根のない場所でのみ 許されている(写真3)。 写真 2 カナダのピザ店入口は別々 写真 3 カナダ駅の巨大な灰皿 参考文献: 1)Repace J, Correlating Atmospheric and Bilolgical Markersin Studies of Secondhand Tobacco Smoke Exposure and Dose in Children and Adults: JOEM Volume 48. 2)中田ゆり・大和浩. 「レストラン,コーヒーショップにおけ る不完全な分煙状況について」日本産業衛生学会総会(山 口県宇部市)2003年4月 3)中田ゆり・大和浩・金子教宏.「カラオケ店における受動喫 煙―タバコ粉じん濃度の調査」日本産業衛生学会総会(東京) 2005年4月 4)中田ゆり・大和浩・金子教宏.「タクシー車内,列車の喫煙 ・禁煙車両における受動喫煙」―タバコ粉じん濃度の調査 日本公衆衛生学会総会(島根県松江市)2005年10月 5)中田ゆり・大和浩.「新幹線・特急の禁煙車両における受動 喫煙曝露」日本公衆衛生学会総会(愛知県名古屋市)2004 年10月 6)中田ゆり・大和浩・金子教宏.「新幹線で働く労働者の受動 喫煙曝露」産業衛生学会総会(宮城県仙台市)2005年5月 7/2007 複十字 No.316 21 無 煙 環境を考える 2007年世界禁煙デー記念シンポジウム 5月31日 (木) サイエンスホール(東京・千代田区) 今年のWHO世界禁煙デーのスローガンは, “Smoke-free environments(たばこ, 煙のない環境)” です。WHOが作成したパンフレットのタイトル は,『屋内全面禁煙−たばこ煙のない環境をつく り,快適に生活しよう!−』(仲野暢子訳,日本 禁煙推進医師歯科医師連盟監修,国立保健医療科 学院研究情報センターたばこ政策情報室発行)で, 屋内100%全面禁煙をうたっています。FCTC(た ばこ規制枠組条約が発効され,4月30日現在147ヵ 国が締約している中で,公共の場所や職場での禁 煙を推進していま す。日本では,喫煙 の健康影響や禁煙に よる効果を認識でき るよう,受動喫煙防 止対策のための普及 啓発を行う目的でこ のシンポジウムが開 催され,300人を超 える参加者が集まり 声に出して禁煙を求めましょうと 力説する大和先生 ました。 吸うことによる離席はさぼりなので生産性が低下 するという切り口で,説得を続けられてきた経験 を語られました。岡田氏は社員の健康と企業のリ スクを排除する事業なのでやっていて喜びが感じ られるし,その他の企業にも広がって欲しいと述 べられました。 会場からの質問に答える演者 受動喫煙のない社会の実現のために 産業医科大学産業生態科学研究所健康開発科学 教授大和浩先生は,様々な場所で粉じん濃度を測 定し,中途半端な喫煙対策では,受動喫煙は防げ ないという研究成果をデータとしてお持ちで,マ スコミ等に発表してこられました。特に,どんな 精密な機器より,人間の鼻が一番敏感で感度のよ い機器となりうるので,少しでもたばこ臭いと感 じたら,すぐに声をあげ,市民の声としてその企 業や団体に絶えず伝えることが大切ですとお話さ れました。 企業における禁煙ポリシーとその実現に向け た取り組み 次にジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社 メディカルカンパニー人事総務本部総務部長岡田 信彦氏は,会社のポリシーとして,2007年1月1日 より所定労働時間中(昼休みを除く9時∼17時40 分)の社内外を問わない禁煙の実現をしました。個 人の嗜好ととらえがちな喫煙について,従業員の 健康を害する以外に,喫煙場所にたむろするのは みっともなく企業イメージを低下させ,たばこを 22 7/2007 複十字 No.316 たばこの煙の有害性と諸外国の動向 続いて国立保健医療科学院生活環境部環境科学 室長遠藤治先生は,たばこの煙に69種類以上の発 がん物質と4,000種以上の化学物質が含まれる有害 性について報告されました。IARC(編者注:国際 がん研究機関)は,「喫煙」と「受動喫煙」をリ スクグループ1(人に対して発がん性がある)と しています。さらに,添加物(キャラメル味など の糖分)に熱分解でアルデヒドなどの有害物質が 生まれることが判っています。2003年のたばこ規 制枠組条約に基づき,たばこ研究室ネットワーク (TobLabNet)が組織されて,たばこの含有物や 排出物への新しい国際標準の試験方法に関する研 究が始まっていることなどを紹介しました。 楽々卒煙「あいうえお」 パネル討論の後,京都府立医科大学教授繁田正 子先生が,たばこをやめたい人の禁煙支援につい て紹介しました。「あ」かるくやめよう (禁煙で体がよく なると前向きに),「い」っきにやめよう (中途半端はだ め)「 ,う」ごいてやめよう (つらいときには運動を)「 ,え」 卒煙をあきらめないでと 繁田先生 んをむすんでやめよう (家族やニコチンガム等を頼って), 「お」きあがりこぼしでやめよう(失敗してもあきらめ ずに)を合言葉にストレスをためない卒煙で,自信 をもってがんばってほいというエールを頂き,ま たそれを支える周りの人のあたたかい支援を強調 されました。 (文責:編集部) 結核予防会2007年禁煙ポスター完成! 結核予防会では, 「禁煙」ポスターを作成しました。 無料で配布していますので,ぜひ,病院や施設,学校や飲 食店など人が集まるところに掲示してください(ただし,送 料は実費ご負担いただきます)。 お問い合わせは, 結核予防会普及課(03-3292-9288)まで。 タバコ問題首都圏協議会主催2007年世界禁煙デー記念シンポジウム 「タバコの煙のない社会をめざして−受動喫煙対策の現状と今後」 5月26日(土)東京しごとセンター講堂(千代 田区)において開催されました。受動喫煙防止対 策を実施している大戸屋(和食のお店),大森交 通(タクシー会社)からそれぞれ取り組みまでの 道のりから改善したことの発表がありました。 禁煙を成功させた企業の報告 大戸屋の太田幸男管理本部長は,禁煙にするこ とで売り上げが増え,居酒屋以外の全店舗で禁煙 が実施されることになったことを報告されました。 また大森交通の郭成子代表取締役は,運送約款に 喫煙客を拒否することができるという項目を入れ, 2004年から全車禁煙車で営業を始めており,従業 員の健康,そして次々に乗車されるお客様の健康 を考える代表者の強い姿勢が伺えました。 専門職からの報告 産業医科大学研究員の中田ゆり氏は,日本の受 動喫煙防止の実態を明らかにし,タバコ煙評価基 準の見直しの必要性を話しました。また,前日の 準の見直しの必要性を話しました。また,前日の テレビで肺の病気COPDを特集した番組をDVDで 紹介されました。また,屋内の完全禁煙が一番で あり,その実現に向けて早急な国際レベルの評価 基準を求めると強調されました。さらに外国の例 から喫煙できる場所にのみ貼られる「喫煙マーク」 を普及することも紹介されました。 全国禁煙分煙推進協議会会長の平間敬文先生は, 環境が子どもたちの受動喫煙や喫煙行動を抑制す るとして,タバコ問題を環境問題ととらえ,無煙 化に取り組む意義を話されました。そして横浜タ バコ病訴訟提訴弁護団長の片山律氏は,受動喫煙 の法的対策について諸外国との違いを示し,たば こ事業法に対して,健康増進法では,健康被害を 訴えるのには弱いが,労働安全衛生法の71条の3 でタバコの煙とにおいについての指針が示されて いるので,こちらを活用できるという情報を提供 されました。また,最近は受動喫煙症という診断 書を書いてくれるので,粉じん濃度や尿中のニコ チン代謝物濃度などをきちんと測って,職場など に申し入れをする(書面で残す)ことを勧められ ました。 禁煙推進議員連盟からの報告 禁煙推進議員連盟事務局長で衆議院議員の小宮 山洋子氏は,超党派で作る議員連盟について紹介 しました。また,FCTCが批准されたときの活動 や,これからの日本の取り組みについて報告され ました。やはり,たばこ事業法の関係で,まだま だ受動喫煙対策は不十分であると考えていて,健 康増進法にきちんと盛り込むなど,さらに活動を 強化していきますと考えを表明されました。 (文責:編集部) 中田ゆり先生から興味深い事例が次々と報告される 7/2007 複十字 No.316 23 カンボジア結核対策の 歴史との歩み コンキンサン 在りし日のコンキンサン先生:敬虔な仏教の国カンボジアでは年に 数回の宗教行事には女性は着飾り家族で出かける。奥様と 先生 2006年11月28日逝去 享年64歳 文・結核研究所国際協力部長 小野崎 郁史 コンキンサン先生とカンボジア結核対策略年表 カンボジア プレイベン州にて誕生 カンボジア王立医学校卒業 カンボジア‐ソ連病院(現国立ノルドムシアヌーク病院)医員 WHO現地臨時医員 ポルポト・クメールルージュ支配 プノンペン市内国立病院(現陸軍病院)医員 カンボジア国立結核センター(CENAT)副所長、医学部講 師を兼任 1988年 同所長に昇任 1994年 DOTSの開始(病院における入院DOTSの拡大∼97年) 1995年 JICA結核分野専門家派遣の開始,国際移動セミナー 1997年 世銀援助開始、全国141病院の結核ユニット100%にDOTS普及 1998年 医学部教授を兼任 1999年 JICA結核対策技術協力プロジェクト開始, ヘルスセンター外来DOTSパイロット開始 2000年 保健省・CENAT定年退職,JICAプロジェクト技術顧問 2001年 日本政府無償資金協力による国立結核ハンセン病対策セン ター落成 ヘルスセンターでのDOTS全国拡大の実施が決定 2002年 第一回全国結核実態調査 2003年 カンボジア結核予防会設立,実行委員長(専務理事), エイズ・結核・マラリア世界基金援助開始 2004年 日本より抗結核薬3年間の無償援助,DOTS全国展開完了 2005年 シール募金による予防会プロジェクト開始 カンボジア結核予防会中心に結核シンポジウムを開催 WHO西太平洋地域とカンボジアの結核対策国際目標を達成 2006年11月28日 悪性黒色腫肺転移にて逝去 1942年 1970年 1971年 1974-75年 1975-79年 1979年 1982年 最近の平和なカンボジアを訪れると、わずか30年前の 1970年代後半に原始共産主義を国是としたクメール・ル ージュが全土を支配し,都市における生活を否定した 上,書物を焼き捨て多くの知識人を虐殺したことなど想 像にも及びません。1975年に1,000人以上を数えた医師 がポルポトの実効支配が終わった1979年には30余名しか 生き残っていなかったそうです。日本をはじめアジアは もともと結核の多い地域ですが,内戦による疲弊,都市 生活者を強制移住させた集団キャンプや難民キャンプで の生活,そして治療薬がまったく手に入らなかったこと などにより,この間カンボジアの結核は世界最悪のまん 延状態に陥りました。結核対策の長を12年間務められた 後,新たに立ち上げたカンボジア結核予防会を実質的ト ップとして引っ張ってこられたコンキンサン先生の半生 は,この世界最悪の結核との闘いの進展の歴史でした。 24 7/2007 複十字 No.316 在りし日のコンキンサン先生:秩父宮妃殿下,青木先生と 折しも,以前から気にかけておられた婦人会スタディツ アーの最中の昨年11月28日に64歳で急逝された先生を偲 び,この闘いの歴史に触れることとします。 歴史を感じさせる1980年代のフィールド風景 左端がコンキンサン先生 1980年代に再編されたカンボジア結核対策ですが,内 戦が続いていたことや医療従事者の不足もあり,いかに 努力しても効果的な対策にはほど遠かったそうです。限 られた調査ですが,レントゲンのスクリーニングもなし に人口10万人当たり450人ほどの塗抹陽性患者が発見さ れたというデータが残っています。フランス赤十字社や ユニセフのサポートにより,地方のスタッフを訓練し患 者を見つけ出しても,半分の患者の治療完了もままなら ない状況が続いていました。 その後,パリ和平協定調印後の1990年,日本の協力が まず研修生受け入れから始まりました。明石康氏が代表 を務めたUNTACによる統治の中,1992年には森結核研 究所前所長がJICA調査団で,また石川現所長がNGOに よる協力の一環としてカンボジアを訪問されています。 コンキンサン先生も国際コースの研修生として清瀬に滞 在しました。私のカンボジアの先生たちとの出会いもこ のころですが,とにかく皆やせていて,奈良の若草山の 鹿を見た彼らが日本の“食糧”が豊富なことに驚愕した という話は記憶に新しいところです。「何とかカンボジ アを助けて欲しい」と当時はつたない英語でのせつせつ した訴えには心を動かされました。 1994年,コンキンサン先生はWHOの協力の下,短期 化学療法とDOTSの採用に踏み切ります。全国の州・郡 病院に結核病棟を設け,見つけた患者は最低2ヵ月の間 入院させて完全なDOTを実施しようという試みです。 世界食糧計画がこれに協力し,治療中の食糧を保障した ことより,治療成績は飛躍的に改善し,10万対100以上 の塗抹陽性患者が治療を受け,治癒するようになりまし た。日本の協力も1995年には結核菌検査の専門家の派 遣,機材の供与などが始まります。何とか技術協力プロ ジェクトの開始と対策の基地となる結核センターの建設 をという先生の願いは,外国人の国外脱出まで招いた 1997年の内紛により一度は頓挫しますが,1999年に両国 政府の合意ができ実現へと向かいます。この年の末には, 私たち日本人専門家を含むCENAT幹部一同が王宮に招 かれ当時のシアヌーク国王・同妃にご進講差し上げると ともに,王室からの寄付をいただき2000年のカレンダー に写真の掲載を許されるという光栄に浴しています。 カンボジア結核患者登録数の推移,1982-2006 4000 TB cases Detected, 1982-2006 3500 No.of Cases 3000 2000 SM(+) SM(-) 1500 Extra-P 1000 Total 2500 500 0 19 82 984 986 988 990 992 994 996 998 000 002 004 006 1 2 1 1 2 1 1 1 2 1 1 2 Year プロジェクトの大きな仕事となったDOTSの拡大「医 師のいない末端の診療所のヘルスセンターに全国的に DOTSを広げよう」という計画には,内外でもかなりの 抵抗がありました。しかし,コンキンサン先生に率いら れいくつもの地方病院や村落を廻って得た,“今のサー ビス体制では「患者が街の病院までたどりついていな い」,「もっと早く患者を見つけなければ結核はなくな らない」”という私たちやスタッフの信念が政府や他の ドナーを動かし,2004年末には全国全てのヘルスセンタ ーでのDOTSの実施,2005年の患者発見70%治癒率85% という国際目標達成へと結びついていきます。現在では 1300万人余の人口で3万5千人もの患者を発見し治療でき るようになっています。 先生にとって残念であったのは,夢であったセンター の落成を待たずに,当時の定年制によりCENAT所長の 職を辞されたことです。その後,人材不足を鑑み政府の 定年が延長されていったこと,また完成後のセンターを 来訪された結核予防会総裁秋篠宮妃殿下ご夫妻のご案内 を自分ができなかったことは残念であった旨,よくこぼ されていました。しかし,大学での講義は亡くなる直前 まで現役で続けられていました。地方のどこに行っても 先生の教え子がたくさんいて,直立不動で指導を受ける といった光景を何度も目にしました。私たちには温厚で いつも気を使ってくださり,時にはスローではっきりし ないこともある先生でしたが,「鬼教授で,試験も厳し く」,そのカリスマ性からも尊敬されかつ恐れられてい たそうです。 定年後の先生はまた、JICAプロジェクトの技術顧問 としてDOTSの拡大を支える一方,カンボジア結核予防 会(CATA)の設立に尽力されました。当時私の勤務先 であった結核予防会千葉県支部(もう一つのCATA)の 協力もあり,2003年11月に国内のNGOとして承認を受 け,2004年にはカンボジアを代表する組織として IUATLDにも正式加盟しました。そして,2005年3月青 木会長がカンボジアを訪問されJATAとの協力プロジェ クトを開始,2006年には婦人会スタディツアーの実施へ と発展していきます。また,カンボジアの結核を学問と して語る会も開催されるようになり,先生が主宰する CATAへの求心力は高まっていきました。 ところが,さあこれから民間組織としてさらなる発展 をと期待し,スタディツアーもそのきっかけにと張りき って準備されていると聞いていた昨年9月末,ショッキ ングなメールが飛び込んできました。「コンキンサン先 生胸痛で入院,胸に多発性の影があるがいかに」という のです。その後はまさにあっという間の出来事で,CT 画像の転送,バンコクでの組織検査,千葉大の長尾教授 をはじめ多くの先生方のアドバイスをいただき化学療法 を開始などとしているうちに,病勢は急速に進展し11月 28日ご家族に見守られ永眠されました。私はその数時間 前にもお会いしましたが,苦しい呼吸の中,「生きたい ・何とかしたい」という強い意志を最後まで保たれてい ました。早すぎる,そしてあまりに痛い死でした。 “これから医師として一線で活躍という時にクメール・ ルージュの時代になった”, “苦労して呼んだ日本の援助 が本格化する時に定年になった”, “CATAが立ち上がり 軌道に乗りかけた時に病魔に襲われた”。温厚な先生が 私にこぼされた“無念”です。内戦の最中には,当時の 奥様とお子様を亡くされるという不幸にもあわれていま す。これから,カンボジアの若い人たちが,コンキンサ ン先生のこの“無念さ”を,平和でかつ貧しい人々が結 核で苦しまなくてよい国家・社会そして世界を築いてい く原動力にして欲しいと感じています。あらためてご冥 福をお祈りします。 (カンボジア結核対策プロジェクト 元チーフアドバイザー) 筆者と。プロジェクト開始当時,病棟は患者であふれ,写真の ような小屋で生活しながら治療を受けているものも多かった 7/2007 複十字 No.316 25 麻疹の流行について 多田 有希 国立感染症研究所感染症情報センター 「麻疹流行!」「○○大学休校」などの報道が相 次ぎ,今年の麻疹の流行に驚かれたことと思います。 どこでどんな流行が起きたのか,なぜおきたのか, どう対応すればよいのか・・・このような疑問のお 持ちではないでしょうか。 流行状況−発生地域と患者年齢− 麻疹の流行状況を把握するものとして,感染症法 の下で行われている感染症発生動向調査があり,全 国約3000ヵ所の小児科(麻疹として15歳未満を対 象)と約450ヵ所の病院(成人麻疹として15歳以上 を対象)から患者数が毎週報告されています。図1 にみられるように,麻疹の流行規模は2001年の大き な流行ののち次第に小さくなり,特に2005年,2006 年の報告数は極めて少なくなっていました。今年 2007年の流行は,昨年末に埼玉県で報告数の増加が みられ始め,今年に入って東京都,千葉県,神奈川 県に拡大してこれらの南関東地域を中心とした流行 が起きました。その後さらに大阪府や栃木県,茨城 県,群馬県など北関東地域,北海道,鹿児島県など からの報告も増加し始めました。 今年の流行の特徴として,10∼20代での患者報告 数の多いことがあげられますが,2007年の成人麻疹 の定点当たり報告数は麻疹の定点当たり報告数より 先に増加が始まり,また明らかに上回るというこれ までにはみられなかった状況になっています。図2 には15歳未満の麻疹報告数の年齢分布を示しました。 2001年と比較して,2007年(第1∼19週累積)は1 ∼5歳の割合が小さくなり,10∼14歳の占める割合 が大きくなっています。また,2007年(第1∼19週 累積)の成人麻疹の年齢分布では15∼29歳が報告の 図1 報告数全体の80%以上を占めています。 流行の背景−なぜ高校や大学で流行が起きたのか− 2001年の大流行後,1歳早期での麻疹の予防接種 を徹底する動きが高まり,これが功を奏して,これ まで流行の中心であった乳幼児の患者数が減少し, 麻疹の流行規模は著しく小さくなりました。図2で 1∼5歳の患者数の割合が小さくなっているのも予 防接種率向上の効果と考えられます。こうして流行 規模が小さくなったことにより,麻疹ウイルスに感 染する機会は激減しました。これまでであれば予防 接種を受けていない場合や,受けていても免疫を獲 得できなかった場合(5%未満存在します)に,乳 幼児期など早い時期に麻疹にかかっていたはずの人 が,かからないまま大きくなるという現象が起こり ました。また,予防接種によって免疫を獲得できた 人の中に,感染の機会がないために獲得した免疫が 増強されず,時間の経過とともに減弱して,発病を 防げなくなった人も一部ですが出てきています。こ うして,10代になるまで麻疹にかからなかった人, 予防接種を受けてから年月が経過した世代の人たち の中に,麻疹ウイルスに対する免疫を持っていない かあるいは減弱した人の割合が大きくなり,このよ うな人々から発病者が多くみられているものと思わ れます。麻疹は,発病1日前から周囲への感染性が あることや,発疹が出るまでは麻疹と気づかれない 場合もあること,また,この世代は乳幼児に比べて 行動範囲が広いことなどを合わせて考えると,乳幼 児中心の流行と比較して広範囲の流行となることも 危惧される点です。 図2 麻疹 (15歳未満)の年齢分布の変化 100% 90% 10∼14歳 80% 定 点 当 た り 報 告 数 8∼9歳 70% 6∼7歳 60% 4∼5歳 3歳 50% 2歳 40% 1歳 30% 0歳 20% 10% 0% 2001年 2007年 (第1∼19週累積) ※小児科定点からの15歳未満の報告数による 26 7/2007 複十字 No.316 感染症発生 動向調査 流行への対応−麻疹の排除に向けて− 麻疹は子どもが誰でもかかる病気で,かかった方 がよい病気と思っている方もいらっしゃるのではな いでしょうか。しかし,麻疹は合併症がなくても入 院を要することも稀ではない病気であり,また,合 併症としてみられる肺炎や脳炎は時に致死的です。 麻疹への対応として,特に学校や施設などでは, 日頃から麻疹の確実な予防接種歴・罹患歴を把握し ておくこと,患者発生を迅速に探知できる体制を作 っておくことが必要です。また,1例でも患者が発 生した場合には,感染拡大を防ぐため,関係者が協 力して迅速に適切な対応をとらなければならないと 考えます。 麻疹には抗麻疹薬というような特効薬はありませ ん。予防接種をぜひ受けていただきたいのは,定期 接種の対象者である1歳児を含む麻疹ワクチン未接 種で麻疹未罹 患の方です。ワクチン需要量が供給量を上回ってい る状況ではこの方々が第一優先です。ワクチンの供 給量が十分であれば,定期接種のもうひとつの対象 者である小学校入学前1年間の方で,さらにそれ以 外のワクチン接種歴が1回だけの方も接種を受ける ことが勧められます。 欧米の多くの国々では,麻疹は既に排除(elimination :国内での感染伝播がほぼなくなった状態。すなわ ち,国内での発症者が国外で感染した人か,そのよ うな発症者から感染した人である状態)が達成され ています。わが国においては,恒常的に麻疹が発生 し,しばしば大きな流行が起きるという時期はよう やく過ぎたと思われます。今後は全体の発生を低く 抑えつつ,今年みられているような集団発生を防い で,一刻も早い時期に麻疹の排除を達成できるよ う,国全体で取り組んでいかなければならないと考 えます。 (2007年6月4日) 感染症法改正関連法令・通知の動き(結核関係抜粋) 平成19年6月7日までに発表された公文書を列挙しました。 日付 番 号 名 称 その他 宛 先 3/16 事務連絡 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律による結核 患者の入院の勧告等の取扱いに関する疑義について 3/30 健発第0330034号 保発第0330005号 健康保険法、国民健康保険法、船員保険法及び老人保健法と感染症の 予防及び 感染症の患者に対する医療に関する法律との調整について 健康局長 保険局長通知 都道府県知事、 政令市長、 特別区長 3/30 健発第0330035号 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律と国家公務 員共済組 合法との調整について 健康局長通知 都道府県知事、 政令市長、 特別区長 4/1 健発第0401005号 感染症の予防の総合的な推進を図るための基本的な指針等の一部改正 等について 健康局長通知 都道府県知事、 政令市長、 特別区長 4/26 事務連絡 感染症法第12条第1項の規定に基づく結核の届出基準について 結核感染症課 通知 都道府県、 政令市、 特別区衛生主管 部(局)結核・感染症対策担当官 5/1 事務連絡 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に係る関係 通知の送付について(追加・訂正分) 結核感染症課 長通知 都道府県、 政令市、 特別区衛生部主 管部(局) 5/1 事務連絡 事務次官通知の差し替えについて 結核感染症課 通知 都道府県、 政令市、 特別区衛生主管 部(局) 厚生労働省発 健第0330048号 「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律による措置入院患者の費 用徴収額、結核予防法による命令入所患者等の自己負担額、麻薬及び 向精神薬取締法による措置入院者の費用徴収額及び感染症の予防及び 感染症の患者に対する医療に関する法律による入院患者の自己負担額 の認定基準について」の一部改正について 厚生労働事務 次官通知 都道府県知事、 政令市長、 特別区長 事務連絡 局長通知の差し替えについて 結核感染症課 通知 都道府県、 政令市、 特別区衛生主管 部(局) 3/30 4/9 結核感染症課 通知 都道府県、 政令市、 特別区衛生主管 部(局)結核・感染症対策担当官 3/30 健発第0330032号 「都道府県、保健所設置市及び特別区と社会保険診療報酬支払基金と の契約の締結及び覚書の交換について」の一部改正について 健康局長通知 都道府県知事、 政令市長、 特別区長 3/30 健発第0330033号 都道府県、保健所設置市及び特別区と社会保険診療報酬支払基金との 結核医療に係る契約の締結及び覚書の交換について 健康局長通知 都道府県知事、 政令市長、 特別区長 5/17 事務連絡 局長通知の差し替えについて 結核感染症課 通知 都道府県、 政令市、 特別区衛生主管 部(局) 3/30 健発第0330032号 「都道府県、保健所設置市及び特別区と社会保険診療報酬支払基金と の契約の締結及び覚書の交換について」の一部改正について 健康局長通知 都道府県知事、 政令市長、 特別区長 3/30 健発第0330033号 都道府県、保健所設置市及び特別区と社会保険診療報酬支払基金との 結核医療に係る契約の締結及び覚書の交換について 健康局長通知 都道府県知事、 政令市長、 特別区長 ※網掛けの部分は、 対象となる通知を再掲しています。 7/2007 複十字 No.316 27 結核予防会支部紹介のページ 長 野 県 支 部 結核予防会長野県支部 (財)長野県健康づくり事業団 総務企画部総務課長 あなたの 健やかな暮らしを願って はじめに 当支部は,昭和15年2月に厚生大臣の設立許可 を得,民間における結核予防対策の推進団体とし て発足しました。 その後,循環器健診事業,肺がん検診事業の導 入等,事業内容の拡充強化を重ねてまいりました が,各種のがん検診や生活習慣病予防等を含め, 多様化するニーズに総合的,複合的に対応し,県 民の健康生活に寄与するため,平成12年4月に長 野県成人病予防協会と統合し,「財団法人長野県 健康づくり事業団」として新たなスタートを切り, 日本対がん協会長野県支部も兼ねることとなりま した。 北條 千秋 究・検討を進め,事業化し,検診の充実に努めて まいりました。 「低X線量CTスキャンによる肺がん検診」, 「マンモグラフィ検診」,「前立腺がん検診」, また「動脈硬化検診」などは,時代の要請に応え るかたちで進められたものです。 また,平成16年4月には,県から業務委譲を受 けて,長野・伊那に健康センターを開設し,人間ド ック・生活習慣病予防健診等の施設健診機能,体 力づくりエリアの設置など実践を伴う健康増進指 導等の機能を充実強化しました。そして,内科・小 児科のほか禁煙外来を実施する診療所を含めた健康 づくりの拠点とすべく本部を移転整備いたしました。 さらに,個人情報保護への対応としては,平成 17年4月の「個人情報保護法」施行に併せて取得 準備を進めてきた「プライバシーマーク」を平成 19年2月に取得いたしました。 長野県健康づくり事業団全景 マルチスライスCT検診車 事業の概要 当支部は,前述の事業団設立にあたり,「基本 理念」を制定いたしました。これには,使命とし て保健活動を通じて県民の健康づくりに寄与する こと,活動方針として健康度を正確に把握し,適 切な保健活動を実践することとしています。 これに基づき,従来からの,結核・肺がん検診, 住民の基本健康診査,事業所の定期健康診断,胃 ・大腸がん検診,乳房・子宮がん検診など多様な 巡回健診を実施する一方,長野県医師会,信州大 学医学部などの指導・協力のもと,新規検診の研 28 7/2007 複十字 No.316 おわりに 全国各支部と同様,結核検診,胃がん検診等従 来の基幹事業の部門で受診人員の大幅な減少が続 き,大きな経営課題となっております。 当支部は,医療制度改革の一環として平成20年 度に予定される特定健診・特定保健指導の導入を 大きな変革の機会と捉え,迅速に対応し,積極的 な事業展開に努めてまいりたいと考えています。 予防会だより 公益認定等委員会に公益法人認定に関する 要望書を提出 6月15日(金),内閣府公益認定等委員会より「公益認定等に係る政令の制 定の立案及び内閣府令の制定について」の答申が出された。 3団体連絡協議会(日本対がん協会事務局長関戸衛氏,予防医学事業中央 会事務局長山内邦昭氏,結核予防会専務理事金子洋氏)は,6月18日(月), 公益認定等委員会委員長池田守男氏に,標記要望書を提出した。 平成20年度に施行される公益法人認定に際し,全国組織として協力・連携 を図るため,本部はもとより,支部においても公益認定を受けられるよう要 望した。要望書の内容は,以下の通り。 公益法人認定に関する要望(一部抜粋) 私共3団体は,これまで結核やがん及び成人病並びに 子供の生活習慣病予防をはじめ,各種疾病に対する早期 発見・早期治療・健康開発など,国民の健康を守るため, 僻地や離島を含め全国津々浦々に及ぶ健診検査等を公益 事業として担ってきた全国組織です。 そして,私共3団体は統合支部を含め47都道府県にお いて協力と連携体制を構築し,自治体基本健診,市町村 住民がん検診,胸部検診,学校健診,事業所定期健診 など,本部・支部直営の健診機関と1000台を超える検診 車等を駆使して,毎年の健診検査の実績は延べ数で3∼ 4千万件に及んでおります。 つきましては,このたびの公益法人認定法の趣旨が, 民間の団体が自発的に行う公益活動を奨励・促進し,支 援するための公益法人制度改革であることに鑑み,是非 ともこうした私共の全国組織としての事業を,貴委員会 並びに全都道府県の公益認定等委員会において,従来ど おり公益事業として認定していただけますよう特段のご 配慮を要望いたします。 現在,国は医療費の適正化を国民の健康増進によって 実現しようとする方向性を明確化しつつあります。一つ は医療制度改革であり,その柱の一つにメタボリックシ ンドロームに着目した生活習慣病対策があり,平成20年 4月から医療保険者に40歳以上の被保険者・被扶養者の 特定健診・特定保健指導が義務づけられました。また, 本年4月からは,日本人の死亡原因の第1位を占めるが んの罹患率・死亡率の減少のためにがん対策基本法が施 行され,結核対策に関しても中蔓延状況下で罹患状況に 質的な変化を来たしている現状に鑑み,これまで以上に 結核研究奨励賞受賞者決定 対策の強化を必要とする付帯決議を付して結核予防法が 新感染症法に統合されました。 私共3団体はこうした施策の大きな転換に伴う今日的 な国家的課題に対して,これまでと同様に協働・連携 し,47都道府県支部直属の診療所・病院・連携医療機関 や検診車,あるいは医師・保健師・看護師・管理栄養士 等の人的資源をフルに活用して,国の施策に協力してい く所存でおります。 とりわけ,40歳以上の全国民を対象とした特定健診・ 特定保健指導に関しては,個人情報保護への万全な配慮 を前提に,集積されたデータを活用した疫学的分析や精 度管理及び効果的な保健指導の方法等が求められてお り,全国組織としての地の利を生かしてそのための研究 機能も構築し,提言を含め国民の健康管理・健康増進に 役立てる所存でおります。 因みに,特定健診・特定保健指導に関しましては,既 に国の試行事業である国保ヘルスアップ事業や暫定版特 定保健指導プログラムの検証事業にも多くの支部が参加 し,実績を残しているところです。 また,私共は地域に根を張った社団法人全国結核予防 婦人団体連絡協議会(会長:中畔都舍子,会員数150万 人)と連携しており,結核対策やがん対策とともに,本 年から生活習慣病対策を新たな国民運動として展開して 参る所存でおります。 このように,私共3団体の本部と支部は別法人ではあ りますが,今後とも国の施策に沿った国民的課題の克服 に向けて一丸となって取り組む所存でおりますので,本 部・支部が行う事業を一体の公益事業としてご理解賜り たくお願い申し上げる次第です。 (以下3団体支部・代表者一覧 省略) 結核研究奨励賞とは,医療技術者の結核に関する研究を 奨励するために,結核予防会が設置。 平成19年(第22回)結核研究奨励賞(結核予防会主催)の受賞者4名が,2月27日の選定委員会にて選定され,3月 15日の常任理事会にて承認された。後日表彰状が各受賞者に授与される。受賞者及び業績表題は以下の通り。 ○樋口 武史氏(京都大学医学部附属病院検査部): 「Line Probe Assay(LiPA)によるリファンピシン 耐性結核菌群の喀痰からの直接検出」 ○藤原 江利子氏(市立秋田総合病院):「結核患者の 入院中に感じた不安・ストレス−退院時に面接調査を 用いて−」 ○鈴木 紳也氏(船橋市保健所保健予防課):調査報告 「平成16年度業務調査報告」 ○市岡 浜代氏(独立行政法人国立病院機構滋賀病院): 「抗結核薬服用患者の退院後の服薬実態調査『服薬行 動良好群』と『不良群』の比較検討から」 (文責:編集部) 7/2007 複十字 No.316 29 ●平成19年度ネットワーク事業担当者会議及 びCOPD事務担当者説明会 5月14日(月)10:00より,108名の参加を得て,こま ばエミナース(目黒区)において開催された。内容は下 記の通り。(詳細は本誌P.7参照) 10:00∼開会あいさつ 健康ネットワーク事業部長 山下 武子 10:10∼1.説明 「標準的な健診・保健指導プログラム (確定版)」に ついて 結核予防会アドバイザー株式会社HITS 代表取締役 片山 文善 「JATA生涯健康管理システムについて」 健康ネットワーク事業部副部長 吉田 達也 株式会社NTTデータ 13:30∼2.班別討議及び全体討議 班別討議 1班:ダイヤモンド(1F), 2班:鳳凰の間,3班:飛鳥の間(3F) 16:00∼ 全体討議 17:15∼3.COPD担当者説明会 健康ネットワーク事業部企画調整課主任 青木 新 ベーリンガーインゲルハイム株式会社 加藤 久幸 18:00∼意見交換会 ●平成19年度資金寄付者感謝状贈呈式並びに 永年勤続職員表彰式 5月16日(水)13:00より,リーガロイヤルホテル東 京において永年勤続職員表彰式が,また14:00より総裁 秋篠宮妃殿下の御臨席を賜り,資金寄付者感謝状贈呈式 が行われた。 永年勤続職員には青木会長から表彰状が,また結核予 防事業資金として多額のご寄付を下さった方々に総裁か ら感謝状が授与された。引き続き記念撮影とお茶会が行 われた。 【感謝状贈呈者(順不同,敬称略)】 ・事業資金(個人:4名) 太田伸一郎,久保國子,山本祝,吉田圭子 ・事業資金(団体:3社) 設計センター,東京医療化学,日本ベーリンガーイン ゲルハイム ・複十字シール募金協力者(個人:10名) 浅野淳一郎,麻生道子,高木勇,瀧島輝雄,中沢敬乘, 中嶋是栄,中島達晃,成田實,福田信子,吉田福子 ・複十字シール募金協力者(団体:4社) アロエベラエンタープライズ,アルデプロ,川昌エス エス献材林業オフィスビルディング,磐田電工 【永年勤続職員表彰者(敬称略)】 ・30年勤続者(26名) 高橋徹,水間誠(宮城県),渡辺道広,飯塚康(栃木 県),早乙女隆治(群馬県),多田勝二,小林昇寿(埼 30 7/2007 複十字 No.316 玉県),市川茂樹(山梨県),寺窪三代子(石川県), 田中玲子,松村眞佐美,野田政敏,山本佳子,山田恵 子(大阪府),陣内英幸(佐賀県),山口正憲,尼子 久紀(長崎県),原耕介,埜口稔,後藤朱実(熊本 県),和田雅子(結核研究所),尾形正方(複十字病 院),吉田智恵子,大槻英世(新山手病院),井上八 重子(保生の森),深水理子(本部) ・20年勤続者(75名) 佐藤直美,阿部良一,市場雄志,成田佳徳(北海道), 鈴木雄司,神山恵子(青森県),安藤百合子,佐藤守, 土屋寛幸,佐々木浩子(宮城県),吉田研,八鍬由美 子,西倉みゆき,岩渕佐代子,須貝一夫,浅沼美加, 永島裕志,三宅智彦,西倉一欽(山形県),吉田昌子, 斎藤順子,高橋敬尚(福島県),佐藤勝代,沼尻昌久, 高橋美佐夫,高畑公一,杉山弘行,小川守,植田直伸, 芥川悦子,佐藤茂,根本敏夫(茨城県),栃木典子, 野中友則,五月女静江,石塚昌美,松島史朗,秋元郁 夫(栃木県),柿沼幸美(群馬県),飯田貴生(埼玉 県),浅野和幸,高橋尚子,青木靜子(神奈川県),馬 場哲也,片岡正春,小林収(新潟県),山口哲也(石川 県),清水克行(京都府),岩下和子,松本高幸,心 光誠,鉄尾美由紀,高橋律子,児玉麗子,河内ちよか (大阪府),宮本享一(山口県),黒川いすず(愛媛 県),宮崎泰治(福岡県),村口理江(宮崎県),喜 多山きみ子,高田雪江,出井禎,秋山洋一,照井のぶ 子,長谷川綾子,橋爪チヨエ(複十字病院),野口恵 子,川野園子,斉藤操,辻内幸代,市川秀行(新山手 病院),神戸恵子(保生の森),鈴木信美,新本英美 (第一健康相談所),外山務(本部) ●平成19年度(第7回)結核予防会広報・シ ール担当者会議 5月17日(木)∼18日(金),結核研究所において, 30名の参加を得て,開催された。詳細は本誌P.14参照。 ●保健指導力をみがくコーチング上達講座 (第2回) 5月28日(月)∼5月29日(火)の2日間にわたり,結 核研究所において11名の参加を得て,標記講座が開催 された。 ●2007年世界禁煙デー記念シンポジウム 標記シンポジウムが5月31日(木)13:00∼16:30, 科学技術館サイエンスホールにおいて,開催された。 詳細は本誌P.22参照。 ●健康支援者養成研修会(中央基礎研修) 第4回 6月7日(木)∼6月10日(日)の4日間にわたり,結核 研究所において18名の参加を得て,標記研修会が開催 された。 ●ネットワークシステム担当者会議 6月14日(木)13:30∼17:30,LMJ東京研修センター (文京区)において48名の参加を得て標記会議が開催 された。内容は右記の通り。 内 容:①システム概要説明 (アンケートの結果をふまえて) ②討議・質疑応答 成果を出す保健指導のために! 受講生を募集します《19年度上半期》 保健指導力をみがく コーチング上達講座 第5回開催 9月6日(木)∼7日(金) 特定保健指導の個別面談に役立つコーチングの 基本スキル「傾聴」「承認」「質問」などが学べます 先着順・実技中心の少人数制研修です も っ て ま す か 聴 く 耳 、 ●対象 保健師・管理栄養士ほか ●人数 20名 ●費用 42,000円 ●場所 結核研究所 東京都清瀬市松山3-1-24 ●講師 佐藤利光 PHP認定ビジネスコーチ 財)生涯学習開発財団認定コーチ お問合せはお気軽に 財団法人結核予防会資金課 03-3292-9287 または [email protected] 多額のご寄付を下さった方々 <指定寄付等>敬称略 細渕セツ子(保生の森),坪谷勇,頼兆 昌(複十字病院),常磐会(本部) <復十字シール募金>敬称略 北海道−寺山吉彦,小野眼科医院,原田 配管工業所,札幌呼吸器科病院,久保田 幸代,滝沢電気設備,大栗新聞販売所, 大新工業,富樫光宏,仲野谷泌尿器科医 院,時計台鑑定,タイセー,日本土木工 業協会,札幌臨床検査センター,伊藤義 郎,札幌市医師会,岡本内科クリニック, 南一条病院,さかい眼科クリニック,梅 川医科器械店,鈴木寿江,札幌しらかば 台病院,河合新三,道下組,三王印刷, 医用センターフクヤ,道新中野販売所, 大平燃料店,神原商事,クラーク病院, 藤根勝,右近幸枝,酒井仁,渋谷みよ 京都府−浄美社 兵庫県−池本正広,上林正樹,菊池英彰, 岸清彦,公立豊岡病院組合立豊岡病院看 護部,さかいこどもクリニック酒井圭子, 自衛隊阪神病院准看護学院,新世薬品, 高畠康雄,近田幼稚園,とね歯科医院森 本真貴,友成油業,長田眼科肱黒和子, はとタクシー,ふじや薬局,やまだ整形 外科クリニック山田博,医王寺,岩崎一 郎,三村芳子,山川雅義,保尾道紀 奈良県−松井文代,佐藤又一 岡山県−山陽印刷,大熊,東中国エア・ ウォーター,パソナ岡山,日建,キャリ アプランニング,旭総合印刷,新青山, 岡本文広 福岡県−福岡県庁職員,福岡県警察職員, 福岡県教育庁職員,福岡市職員,秋富成 子,アドバンスウェア,いけだ内科クリ ニック,石河定子,石蔵富士子,石橋内 科循環器科医院,一律電機,井上内科医 院,入江内科医院,いわや小児科クリニ ック,うきは市婦人会,梅林寺,江崎佐 規,エス・アール,エスアールエル,エ スシーシー,エンゼル病院,大川市連合 婦人会,大木町婦人会,大久保雅,太田 良實,大脇久和,岡根勝,岡税務労務会 計事務所,小郡市婦人会,御所病院,遠 賀郡婦人会連絡協議会,甲斐電気工事, 春日市婦人会,かどもと眼科医院,嘉穂 郡桂川町婦人会,嘉麻市婦人会連絡協議 会,神代病院,唐原内科クリニック,河 野弘道,カンノ製作所,北九州市衛生総 合連合会,北九州市歯科医師会,北九州 市保健所,北原靖久,九州建設技術管理 協会,工藤耳鼻咽喉科医院,久留米市三 潴町婦人会,久留米市城島町婦人会,黒 瀬純子,健康保険直方中央病院,広真ビ ルテック,香文堂,高比良昌一,光林寺, 光應寺,小倉教会,小財スチ−ル,小竹 町保健センター,小林政人,福岡県済生 会,さく病院,佐久間啓,篠栗病院,佐 藤安弘,椎田病院,シギヤマ家具工業, 重松外海,篠 良一,柴田弘俊,柴田稔, 柴田医院,嶋田病院,拾六町病院,白水 清三,西方寺,瀬高町女性倶楽部, 木 病院,田川郡婦人会連絡協議会,タケシ マ整形外科医院,太宰府市婦人会,田中 喜代次,田主丸中央病院,筑後川温泉病 院,筑後市連合婦人会,筑紫郡婦人会, 筑紫野市総合保健福祉センター,筑紫野 市地域婦人会,筑紫南ヶ丘病院,筑前町 役場,中央区婦人の会,千代校区婦人会, つくし会病院,津田商事,戸谷満智子, 刀根五月,中島英之,中間市婦人会,中 村盛之,中村胃腸科医院,西鉄エム・テッ ク,西日本プラント工業,直方鞍手医師 会,直方鞍手薬剤師会,直方歯科医師会, 直方商工会議所,目野秀夫,箱崎校区婦 人会,箱田病院,林法生,原医院,東福 間病院,久野循環器科内科,平尾山病 院,深江保子,福岡県医師会,福岡県糸 島保健福祉環境事務所,福岡県遠賀保健 福祉環境事務所,福岡県粕屋保健福祉環 境事務所,福岡県鞍手保健福祉環境事務 所,福岡県久留米保健福祉環境事務所, 福岡県京築保健福祉環境事務所,福岡県 歯科医師会,福岡県信用保証協会,福岡 県田川保健福祉環境事務所,福岡県筑紫 保健福祉環境事務所,福岡県農業総合試 験場,福岡県八女保健福祉環境事務所, 福岡県立精神医療センター太宰府病院, 福岡市城南区保健福祉センター,福岡鳥 飼病院,福岡ビレジ,福津市地域婦人会, 福元孝三郎,富士フイルムメディカル, 豊前市役所,二日市共立病院,二日市中 町病院,扶桑薬品工業,穂積会計事務所, 保田眞澄,本地寺,丸山病院,水三島紙 工,水戸病院,南当仁校区婦人会,宮内 貴博,宮の陣病院,宮若市婦人会連絡協 議会,明王院,宗像歯科医師会,柳川市 地域婦人会連絡協議会柳川ブロック,八 女市連合婦人会,行橋記念病院,吉浦事 務所,吉住正子,吉田耳鼻咽喉科,吉富 町役場保健センター,冷泉婦人会,和田 治彦 7/2007 複十字 No.316 31 本部−立川治雄,寺岡紀美子,阿部誠次, 相馬淑子,麻生道子,荒井敏子,安西英 太郎,飯田和道,飯田正衛,市川雄一, 河野みい子,笠原庄治,熊田忠真,一家 政婦紹介所,田島ルーフィング,秩父石 灰工業,日本ビーシージー製造,日本看 護協会総務部庶務係,本浄寺,伊藤壮子, 浜田寛子,原あやめ,福田孟,藤枝よ志, 古田有子,平沢久男,平井孝,佐藤竹 雄,田島富次,田村碩子,田村直彦,高 橋進,照山紹,善照寺,難波睦子,長岡 愛太郎,野田照子,鉢呂賢治,川内幾 一,川崎竹雄,木曽マス子,早川一胤, 平林千江,堀口一男,堀田シナ,前島さ つき,牧元夫,宮崎政春,宮田清,林田 光永,山崎君代,山村ミヨシ,吉原尚二, 三宅長雄,木村和子,浅野良憲,浅村郁 子,朝倉馨,鮎沢鋭夫,小祝温子,秋 元,江口企業,亀戸ゴム工業,渡辺電機 工業,渡辺吉明,飯田真一,成毛典子, 岩倉理雄,勝本慶一郎,科研製薬総務管 理G,コーレンス,手嶋敏,藤倉化成, 江原若菜,岩田達明,古林誠,御園生芳 行,篠沢公平,高田妙子,寺田真文,安 養寺重夫,宇田川和俊,小石幸雄,福田 均治,山 登貴子,久保田誠夫,小川昭 二郎,小黒信一,今井栄,日本製茶,柳 川彰男,米山富次郎,宍倉テイ子,真貝 ます子,竹中一雄,中村晃一,長谷川治 郎兵衛,太田文子,河田親雄,小田島平 吉,大室政右,あみ印食品工業総務課, 植田商店,蔵町工業,廣谷郁,近藤泰, 三好信子,中山幸一,野原勝男,野崎健 一,直井精二,勝美印刷,三栄書房,五 十嵐実,杉田商事,タケモトデンキ,信 号器材,パックウェル,名倉司,堀江幸 夫,南部光徹,山岡建夫,庭野日鑛,内 藤義子,伊那貿易商会,稲毛商店,奥野 誠子,出口工業,中野運輸,谷口全亮, 桑原長子,博進紙器製作所,日野自動車 CSエンジニアリング部,ヒロセ電機, 平和物産,森ビル,東海浚渫,門野達 夫,青柳一夫,石川泰子,市原晃,菊田 淳子,兼松雅子,上野毛幼稚園,六合製 作所,渡辺建設,京扇堂東京店,木村バ ルサ,聖母会聖母病院,岡部国際特許事 務所,吉野賢治,若松第一,塚本利明, 浅川教徳,隨應寺,恩田明久,樋口光 善,屋代晶子,山口智道,佐藤秀抱,島 尾洋子,館野テル,高橋一郎,名取誠 二,中村茂,西村清,野口洋二,青木正 和,角田無線電機,カトリックイエズス 会,羽鳥藤雄,藤田禧,関崎三郎,榎本 コンクリート工業,吉澤千鶴子,クミア イ化学工業,CQ出版,デンソー工業, 富士計測器製作所,トヨフク,日本醫事 新報社,わかば,吉野製作所,守半海苔 店,南雲定次,平川秀雄,平井林三,小 山明,真田仁,飯田孝,梅田鍍金工業 所,スエヒロ,松坂屋ストア,徳榮商 事,庵原フミ,保坂三蔵,村野猛,森京 子,志村知男,大久保信之,大沢梱包運 送,香泉殖産,東峰タイヤ,保坂誠,上 原隆,小田義彦,大野俊司,岡田シゲ, 世田谷酸素商事,電鉄商事,西村商店, 原田畜産商店,岡惺治,原桃介,東山道 之,藤井源七郎,藤田信子,平嶋登志 夫,本橋達朗,松田守,美奈川太郎,宮 下英夫,山崎晴彦,山本恒,吉井参也, 渡辺栄衡,五味正子,斎藤ゆり,志立託 爾,白土本子,高桐あや子,徳田均,中 島厚二,永矢之政,青木修三,井出正敏, 伊藤道夫,池田弥生,石原道子,石堂武 昭,今野恒雄,今泉季正,馬渡一眞,梅 崎都志夫,大木正路,加藤健彦,今村眞 彦,古山佳文,百瀬博文,日根野妙子, 藤巻博教,平岡啓佑,儘田直久,万代恭 嗣,森学隆,八尾猛,矢島太郎,山住美 津子,斎藤慶一,桜井勇,三尾仁,三輪 敏彦 結核予防会役員人事(敬称略) 《支部》 発令日 支部名 氏 名 支部名 氏 名 H19.4.1 栃木県 小島直樹 副支部長を委嘱する H19.4.1 宮城県 鈴木隆一 副支部長を委嘱する H19.3.31 栃木県 矢板橋チヅ子 副支部長の委嘱を解く H19.3.16 静岡県 林 敬 副支部長を委嘱する H19.3.31 宮城県 加藤秀郎 副支部長の委嘱を解く H19.4.1 熊本県 尾形克巳 副支部長を委嘱する H19.3.16 静岡県 土居弘幸 副支部長の委嘱を解く H19.3.31 熊本県 田中 明 副支部長の委嘱を解く H19.4.1 茨城県 山口 巖 支部長を委嘱する H19.4.1 兵庫県 後藤 武 支部長を委嘱する H19.3.31 茨城県 橋本 昌 支部長の委嘱を解く H19.4.1 徳島県 川島 周 支部長を委嘱する H19.3.31 兵庫県 山本明生 支部長の委嘱を解く H19.4.1 香川県 細松英正 副支部長を委嘱する H19.3.31 徳島県 中川利一 支部長の委嘱を解く H19.6.1 香川県 宮下 裕 副支部長を委嘱する H19.4.22 神奈川 大久保吉修 副支部長を委嘱する H19.3.31 香川県 宝田守夫 副支部長の委嘱を解く H19.4.19 H19.5.29 神奈川 田中忠一 副支部長の委嘱を解く H19.6.1 香川県 新井哲二 副支部長の委嘱を解く 大分県 阿南 仁 副支部長を委嘱する H19.6.1 福島県 赤城惠一 副支部長を委嘱する H19.5.29 大分県 大津留 源 副支部長の委嘱を解く H19.5.31 福島県 村瀬久子 副支部長の委嘱を解く H19.4.1 山口県 今村孝子 副支部長を委嘱する H19.3.31 山口県 片山雅章 副支部長の委嘱を解く お詫びと訂正 32 7/2007 複十字 No.316 発令内容 発令日 発令内容 前号(315号)P.1の表紙写真名に誤りがありましたので,お詫びを申し上げますと共に訂正いたします。(誤)「早朝の田代湖」^(正)「早朝の田代池」 結核予防会の本 新刊のお知らせ 保健所 業務の す べて 待望の 1冊! 平成19年7月15日 発行 複十字 2007年316号 編集兼発行人 山下 武子 発行所 財団法人結核予防会 〒101- 0061 東京都千代田区三崎町1-3-12 電話 03(3292)9211(代) 印刷所 日本印刷株式会社 東京都千代田区外神田6-3-3 電話 03(3833)6971 結核予防会ホームページ URL http://www.jatahq.org 最新の見解・知見 最新の見解・知見 7年ぶりの大改訂 7年ぶりの大改訂 A4判・200頁 定価4,725円(税込) 日本結核病学会 抗酸菌検査法検討委員会 編 A5判・カラーグラビア10頁・192頁 定価3,150円(税込) ISBN978-4-87451-244-9 ISBN978-4-87451-243-2 本誌は皆様からお寄せいただいた複十字シール募金の益金により作られています。 複十字シール運動 みんなの力で目指す,結核・肺がんのない社会 平成19年度複十字シール 複十字シール運動は,結核や肺がんなど,胸の病 気をなくすため100年近く続いている世界共通の 募金活動です。複十字シールを通じて集められた 益金は,研究,健診,普及活動,国際協力事業な どの推進に大きく役立っています。皆様のあたた かいご協力を,心よりお願いいたします。 運動の輪を広げてください。シールは,はがきや,手紙や包装の封印,何にでも使えます。 問合せ:資金課 TEL03-3292-9287(直)
© Copyright 2024 Paperzz