Julien Labet (ドメーヌ・ジュリアン・ラベ

ド
メ
ー
ヌ
ジュリアン
ラ
ベ
Domaine Julien Labet
ナチュラルワインの先駆者、ピエール・オヴェルノワ
で名高い Jura 地方には、今続々と新しいナチュラルワ
インの生産者が登場しております。Jura はスイス寄り
のサヴァニャンやプールサールといったマイナーな品
種の生産地としてのイメージが強いのですが、私には
ブルゴーニュの隣というイメージの方が強いのです。
行かれた方はお分かりかと思いますが、ボーヌからシ
ャブリに行く感覚の距離、ボーヌからボジョレーに行
くより近いかもしれません。気候・土壌も共通点が
沢山あり、私にとってはコート・ドールの次にシャルドネやピノ・ノワールを醸造するなら!との思い
が強いテロワールが存在する土地なのです。
Domaine Labet と聞けば「あ~あのワインね」と思い当たる方も沢山いらっしゃると思います。そう
です、カテゴリーではナチュラルワインに位置付けされるアラン・ラべさんの Domaine を思い出す方
もいらっしゃると思います。そのアランさんの息子、ジュリアンが個人的に始めた別のドメーヌ、
『Domaine Julien Labet』のワインをご紹介させて頂きます。
19 世紀から Rotalier(ロタリエ)という村(ジュラ地方のやや南部)でワ
イン作りを行っている、地元では有名な Labet 家の3代目がお父様の
アラン・ラべ氏。その息子さんで4代目がジュリアンです。どこの生
産者も同じですが、ワイン造りだけで生計を立てられるようになった
のは最近の話。色んな農業を兼業しながらその中に葡萄栽培も入って
いた古い時代から、いち早く Labet 家ではワイン造りをしておりまし
た。アラン氏の時代になり、所謂 Domaine と名乗れるワイナリーを
設立、1974 年の時でした。ですから時の人、オヴェルノワ氏よりも
前からナチュラルワインを造っていたわけです。ヴァン・ド・パイユ
やヴァン・ジョーヌが主流の Jura ではスティルワインは軽視されが
ち。が、アラン氏はジュラの地質のポテンシャルを経験から知ってい
たので、あえて酸化させないスティルワインに拘りを持っておりました。スティルワインを作れば変わ
り者と言われた時代にです。周りが農薬や除草剤を使っていても、彼は当時からそれらを一切使用しな
い、一貫したワイン哲学の持ち主。息子ジュリアンもお父様のコンセプトを引き継ぎ、子供の頃から帝
王学のようにきっちりと基本的にお父様からワイン造りの全てを学びました。そしてボーヌの醸造学部
で勉強した後、マコンの醸造学部を出て、ブルゴーニュのラモネでワイン造りをしました。その後何と
アフリカでもワイン造りを勉強しました。1997 年に実家に戻り、Domaine Labet を手伝います。お
父様と同じ Chai で働いていると、やはり 100%自分の意見が通らないので、2003 年から自分のド
メーヌ、
『Domaine Julien Labet』を立ち上げました。Julien はお父様のワイナリー、すなわち
Domaine Labet と経営を分けた『Domaine Julien Labet』を立ち上げたのです。Domaine Julien
Labet は 100%無農薬なのですが、今年から少しづつヴァイオダイナミックに切り替えております。
そして 2013 年 1 月 1 日からお父様が完全引退なされ、Domaine Labet でも責任者となり、2つの
ワイナリーを Julien が責任者としてきり盛りしております。畑が複雑なので整理します↓
★Domaine Labet
13ha
お父様所有畑 4ha Julien 所有畑 1.2ha 妹所有畑 1.2ha
弟所有畑 1.2ha
残りは近所から借りている
★Domaine Julien Labet 3ha (100% Bio 2010 年エコセールの認証有)
Juline 所有畑 1.2ha 1.8ha は借りている
フランスは権利関係が複雑です。妹さん弟さんも勿論ワイナリーのお手伝いをしますが、それはお父様
の会社を引き継いだジュリアンのスタッフとしてなので、Julien の個人の Domaine は基本的に彼が1
人で切り盛りしております。
ブルゴーニュで修業をしたジュリアンは畑の個性、すなわちテロワールを尊重します。Jura でスティ
ルワインが作られるようになっても、まだまだ品種名を記載するのが精一杯の風潮下、ジュリアンは限
りなく畑の区画に拘ります。だから収穫・醸造が大変です。どの Cuvee も 1000 本ちょっとという単
位になるので、生産量も限られるし、管理も大変です。基本的に SO2 を使用しません(必要と判断し
た場合を除く)
。醸造方法は至ってシンプル、手で収穫後、天然酵母で発酵、プレスはストレスを避け
るため非常にゆっくりと丁寧に圧搾、新樽は基本的に使用しません。
1973 年 4 月 7 日生まれ、現在 39 歳、これからどんどん精力的に美味しいワインを作ってくれる事
間違いなし、久し振りに素晴らしい生産者と出会えました。
百聞は一見にしかず、まずは飲まれて下さい。どれもこれも綺麗な純粋なワインばかりです。ワインを
こよなく愛するジュリアンの心が澄んでいるから、出来上がるワインも綺麗なのかもしれません。
(2013 年 1 月 13 日 第 2 回目訪問)
各キュヴェ、詳しいテクニカルございます。会社までお問い合わせください。
コ ー ト
デュ
ジ ュ ラ
ブ ラ ン
フレール
ド
サ ヴ ァ ニ ャ ン
アン
シ ャ ラ ス
Côtes du Jura Blanc Fleur de Savagnin ‘En Chasse’ 2010
ヴァン・ジョーヌのイメージの強いサヴァニャンという品種を、スティルワインで
実際どれ位の人が楽しんでいるでしょうか?ジュラには色んな生産者がおりますが、
なんだかこの品種だけ「酸化」の味わいのイメージがなくなりませんよね?作って
いる側もサヴァニャンはこうあるべきだ!という土地柄なのかもしれません。が、
このワインを飲まれればそんな先入観もなくなります。色は若干グリーンが残り、
香も爽やかです。味わいは見た目よりももっと重たく、天然アルコール度数は 14.7
度もありますが、フレッシュな酸がその度数を感じさせません。通年より収穫を2週間遅らせたらしい
のですが、この綺麗な酸味は標高 240m という土地が齎せてくれた恩恵でしょう。とてもアロマティ
ックでミネラルたっぷりなワイン、今までのサヴァニャンのイメージを一新する1本です。
ヴァン・ド・フランス
V
d
F
ブ ラ ン
シ
ャ
ル
ド
ネ
アン
シ
ャ
ラ
ス
ナチュール
Blanc Chardonnay ‘En Chalasse’ Naure 2009
2 種類のシャルドネは畑違い、なので土壌が違います。このシャラスは粘土質が強く
味わいもどしっと重く、厚みがあり濃厚なタイプ。2011 年 7 月 21 日ボトル詰め。
南向きの斜面の畑なのでここまで糖度がのるのでしょうが、どうしてここまで酸が綺
麗に残るのかが不思議です。根が深~く深~く張っている証拠なのでしょう。まだま
だ寝かせたい味わいです。
ヴァン・ド・フランス
V
d
F
ブ ラ ン
シ
ャ
ル
ド
ネ
レ
ヴ ァ ロ ン
Blanc Chardonnay ‘Les Varrons’ 2009
ヴァロンは石灰質の強い土壌で、同じ厚みがありますが、やはり最後アフターはエレ
ガントに引っ張られます。だからこれだけのボリュームも重たく感じません。樹齢も
シャラスより若干古く、1932~1944 年の間に順々にセレクション・マサールで植
樹しました。土地の 60 ㎝下は色が全く違うので、ラベルもそれをイメージして描い
て貰いました。このワインも今飲むのは罪です。
畑には石が沢山ゴロゴロあるのですが、ローヌのようにその石がエネルギーを与えているのかもしれま
せん。フワッと見えて、実は超熟型のガメイです。こういうガメイが存在するのですね…。
コ ー ト
デュ
ジ ュ ラ
ル ー ジ ュ
ピ
ノ
ノワール
ナチュール
レ
ヴ ァ ロ ン
Côtes du Jura Rouge Pinot Noir Nature Les Varrons 2010
このワインは芸術作品です。無駄なものを一切削り、本当の純粋な葡萄のエキスだ
けを瓶に詰めた、透明感の高いピノ・ノワール。
「こんなに糖度が乗ったのは初めて
なんだ」と嬉しそうにジュリアンが説明してくれましたが、私としては頭をたたか
れた感じです。このワイン、誰かのオクセイ・デュレスにそっくりですね。ただた
だ美味しいです。ジュリアンにブルゴーニュの Grand Cru を醸造して貰いたい!
と思うのは私だけではないはずです
ヴァン・ド・フランス
V
d
F
ラ
パ イ ユ
ペ
ル
デ
ュ
‘La Paille Perdue’ 2007
Vin de Paille と全く同じに醸造したのだけど、糖度がのった関係で、結果 AOC の既定
アルコール度数迄到達出来ず、発酵が自然と止まってしまいました。天然酵母菌なので、
これ以上手の加えようがありませんでした。もしかしたらウイヤージュをまめに行った
からかもしれませんね。この作業は大変です。いくら AOC に拘らないナチュラルワイ
ンの生産者でも Vin de Paille を作ってその名が名のれないのは、たとえ問題の無いテ
ーブルワインでも悔しい事だったでしょう。だからワインのネーミングは「ペルデュ」
=『失った』という言葉を使ったのでしょうね。でも私は「La Vraie Paille ラ・ヴレ・
パイユ」
、本当の(=Vraie)…と付けて貰いたかったです。
さてさて気になる味わいは…まるで SGN のような高貴な香り、個人的に Vin de Paille は毎日飲みた
いほど大好きではないので、こういうスタイルにビックリです。まるで蜂蜜、普通の Vin de Paille と
はほど遠い、初めての味わい。酸がしっかり、でも甘~くて甘~くてまるでキャンディーのようです。
こういう表現をワインで用いたのは初めてです。口に含むとフワフワまるで綿菓子。その後でほんのり
と焼トウモロコシのような庶民的味わいも広がり、高貴なのかカジュアルなのか分からなくなりますが、
とにかく美味しいです。Vin de Paille に偏見を持っていた事に大きく反省する日となりました。2008
年 3 月 6 日にプレスし、2011 年 3 月 30 日にボトル詰めしました。
ラベルに関して…
この可愛らしいエチケットは、Jura 在住の画家 Pierre Casenove 氏(65 歳)が手がけました。彼は
セラミックの世界で有名な方で、一緒に畑を歩き、それぞれの区画・テロワールをピエール風に表現し
て貰いました。書いたデッサンは 25 もの作品だったそうで、その中から選んだものです。
ピエールも、今ではすっかりジュリアンのワインのファンとなったらしいです。