第2回 テーマ:エイズ!無関係と思っていませんか?

第2回
テーマ:エイズ!無関係と思っていませんか?
6月28日(土)
18:00~20:30
参加者数:
11名
【ゲストスピーカー】石川佳子さん(TAT 代表)
※TAT…Think about Aids Together & Taking Action Together
【ファシリテーター】河村槙子(多文化共生サークル smile)
【当日のプログラム】
1.ゲストスピーカーの経歴紹介
2.AIDS についての統計と基本的知識
3.VTR 鑑賞
VTR①「ケニアにおける AIDS の現状」
VTR②「日本における AIDS の現状」
4.食事
5.ゲストスピーカーと参加者による質疑応答、意見・感想交換
【ゲストスピーカーのお話】
1.ゲストスピーカーの経歴―HIV の活動に関わるようになったきっかけ―
石川さんは、ニューヨークの財団が派遣しているアフリカの医療チームに所属。
2002 年、そのチームのケニア訪問に参加。そこで、HIV 感染者に対する根強い差別や、ケニア訪問の際
に現地の人々を対象に抗体検査を行い、彼らの 30%あまりが HIV 感染していたという事実にショックを受
けた。
その後石川さんは、若者を対象に AIDS に関する啓発活動し始める。
現在は、鍼灸師として働きながら、TAT の代表として各地で講演するなど AIDS に関する幅広い活動を行
っている。AIDS 検査の普及活動にも熱心に取り組んでいる。
2.AIDS について
~AIDS についての統計~
まず、参加者に AIDS を身近に感じてもらうために、ネット上の資料を用いて、世界の死亡原因全体に対
して AIDS はどのくらいの割合を占めているのか話された。
心臓疾患で亡くなる人は 12.6%、脳疾患では 9.7%、交通事故では 2.1%、自殺では 1.5%、そして AIDS
では 4.9%だった。
交通事故や自殺で亡くなる人は日本でも多い。統計上、AIDS で亡くなる人は、交通事故死+自殺死より
も多いということになる。
~AIDS についての基本的知識~
AIDS は、後天性免疫不全症候群(Acquired
Immunodeficiency
Syndrome)という病気の名前であ
る。
一方 HIV とは、その病気の原因となるウイルスの名前(Human Immunodeficiency
Virus)である。
私たち人間をはじめ生き物はみんな、病気から体を守ってくれている免疫力をもっている。この免疫力が
あるからこそ、私たちは、日ごろから大きな病気にそう簡単にはかかることなく生きていくことができてい
る。
しかし HIV に感染すると、免疫力が低下する。そのせいで、普通なら防ぐことができる細菌やウイルス・
カビなどが体内に侵入・増殖し、肺炎や結核など様々な病気に侵されてしまう。
HIV は、感染者の血液、精液や膣分泌液、母乳を介して感染する。以下主な感染経路。
①感染している人とのセックス、オーラル、アナルセックス
※精液や膣分泌液を介して、あるいは出血を伴うような性行為
②輸血、血液製剤、注射器の共用、臓器移植など
日本で有名な事例…薬害エイズ(非加熱の血液製剤の使用により、使用した人たちの中で HIV 感染が発生
した)
③出産・授乳(HIV 感染している母→子への感染)
胎盤を通じて感染する場合、出産時の出血による場合、生後の母乳を通じて感染する場合がある
※妊婦への抗ウイルス剤の投与や、帝王切開で出産したり、母乳を与えないようにすることによって感染
率はかなり下がることが分かっている。
また、HIV は以下のようなことでは感染しない。
抱きしめる(日常的な軽いキス)・同じ電話の使用・握手・蚊やノミに刺される・同じトイレの使用・
同じ料理を食べる・くしゃみや咳を吸いこむ・同じプールで泳ぐ・同じお風呂に入る・吊革につかまる
~VTR①「ケニアにおける AIDS の現状」を通して~
・世界において、HIV 感染はアフリカで最多。また、HIV に対する根強い差別がある。
・現在の医療技術においても AIDS を完治できる治療法はまだ確立されていないが、HIV 治療薬を継続投与
することによって発症を遅らせることができる(長生きできる)。
・しかし、治療を継続するには多額のお金がかかる(一人当たり年間でおよそ 240 万円)。
AIDS の治療:いくつかの種類の薬を併用しながら、薬の血中濃度を一定ラインに保たせる。
そのために、薬は飲み続ける必要がある。
血中濃度が保たれないと、新たな型のウイルスが出現・増殖してしまう。
・ケニアでは、HIV 感染者が約 320 万人いるのに対し、そのうち治療を受けられる人は 1000 人程度に留
まっている。
・AIDS まん延の背景として、貧困、AIDS に対する理解の不十分さがある。
貧困によって…治療費がない
セックスワーカーの増加→性感染の拡大
栄養不足→病状の悪化
女性が経済的に自立できない→男性に頼らざるを得ない
帝王切開による出産ができない→母子感染の拡大
人工ミルクを買うことができない→母乳で育てざるを得ない→母子感染の拡大
きれいな水が手に入らない
AIDS への理解の不足によって…感染者への差別・偏見
予防できない
無意識のうちに感染を拡大させてしまう
~VTR②「日本における AIDS の現状」を通して~
・日本における性行動の傾向
性行動の低年齢化、性行動のネットワークの拡大・複雑化(携帯電話やメール、インターネットなどの通信
手段の発達による)、交際期間が短い
コンドームの使用目的が「避妊」にしぼられ、性感染症予防には意識が向けられていない。
・日本において、HIV 感染は、他の性感染症(クラミジア、性器ヘルペス、梅毒など)と併せて拡大傾向にあ
る。
・日本では、HIV 感染者や AIDS 患者は、ずっと右肩上がりで増え続けている(世界においても特徴的な傾
向)。
・HIV 感染は、特にゲイ(男性同士)に多い。←性交渉時にコンドームを使用しないため。
・今、日本において子どもを対象とした性教育・AIDS の予防教育が切に求められている。
徹底した予防・教育活動は、緊急かつ重要な課題である。
★教育を行う上での必要事項
①教育の「対象」をよく知るための詳細な事前調査
②教育を行う学校や対象の年齢・性別に合った内容であること
③地域性に合った内容であること
④性のネットワークに対する理解
★主な教育内容
①誰にでも感染する可能性があること
②セックスはとても重要な行為であること(軽率に行うべきではない)
③コンドーム使用の推奨
・科学的データと大人の熱意により、子どもたちは変わることができる。
・保護者は子どもとのコミュニケーションを積極的に行うべきである。
・教育者は子どもへの性教育や予防活動を活発に行うべきである。
・危ないことは「危ない」ということを子どもたちにきちんと伝えていくことが大人全体の義務である。
【参加者の意見】
・学校教育において、保護者がどこまでの性教育を望んでいるかが様々である。教育者として、学校として、
どこまでニーズに応えていくべきなのかが課題である。
・中学校で AIDS について学んだが、あまり印象に残らなかった。きちんと AIDS というものを認識し始めた
のは、テレビドラマがきっかけだった。
・AIDS は不治の病だと思っていたので、薬によって長生きできることを知り、薬の力はすごいと思った。
・AIDS について、いかに多くの人に関心をもってもらえるかを常々考えている。そのためには、
「かわいい」、
「おしゃれ」などのプラスで身近なイメージを感じてもらうことにより、より多くの人が興味をもつことが
できるのではないかと思った。
・自分はまだ学生であり、特に秀でたものはないが、そういった部分が逆に強みになるのではないかと思った。
普通の平凡な市民の視点から考えていくことが大事だと思う。
・中国でも AIDS がまん延しており、日ごろから AIDS について考えている。中国国内においても、地域ごと
にその原因は様々ある。
・AIDS まん延の原因である貧困は、本当に深刻であると思った。コンビニで、期限切れのお弁当が捨てられ
ているのをみると悲しい。
・アフリカで貧困が深刻であり、それが AIDS まん延の原因になっていることを知った。自分は将来栄養士を
目指しており、今後食育にも取り組んでいきたい。
・これまで AIDS の活動を行ってきて、AIDS の予防に関する教育の必要性・重要性を常に感じてきた。
・会社での健康診断で AIDS 検査を受けたが、年配の人ほど受ける人が少なかった(というかほとんどいなか
った)。
今回のお食事メニュー
・ ポモドーロとバジルのスバゲッティ
・ サンドイッチ3種類
・ クリームシチュー
・ ピタパン
・ 紅茶
海外ではエイズ感染者が減少してきて
いるのに日本では右肩上がりというの
は、日本人がまだエイズに対しての意
自分自身、エイズや HIV などに対
識が低いからだと思います。もっとた
する詳しいことを知らなかった。も
くさんの人がエイズに興味を持ってく
っと学んでいきたい。検査に行くの
れたらいいなと思います。私も、友だ
はやっぱり悩む(恐い)のが本音で
ちに「甘くみちゃダメ!」と伝えよう
す・・・。
と思います笑。ありがとうございまし
た。
第2回
エイズ!無関係と思っていませんか?
こういう機会がなければエ
ケニアの中で(他国に関しても言えるだろ
イズについて自ら考えよう
うが)、エイズに対しての偏見の根深さに
と思わなかったので、良いき
触れて、改めて現実を突きつけられたよ
っかけをいただきました。あ
うな、教育の重要性を認識しました。ま
りがとうございました。
さしく偏見は無知の裏返しです。そして
それは日本は物質的には恵まれていて
も、心が貧しいのではと悲しさが現状と
ともにせまってきました。自分は、やは
り貧困という根本的原因のためにどうに
去年に続いて石川さんの話
かしたいと感じました。
を聞いて、改めて心の中で何
かがざわめくのを感じてい
ます。何かにつなげたいで
す。
知らないことはいけないことだと
今までエイズについて学ぶ機会はあっ
思う。目の前のことだけでなく、い
ても、ただ「知っている」だけに留まっ
ろいろなところに目を向けて、いろ
ていた。今日、石川さんからのお話を聞
いろな問題を知り、考えていかない
いているうちに、エイズによる危機は今
といけないと思う。
まさに広がっており、今この瞬間にも考
えなければならない問題であると感じ
た。このことをきっかけに、私もエイズ
の予防活動に主体的に関わっていきた
いと思った。