音 声 現 表 文 力 章 3学年 国語総合 「表現」 表現」テキスト 奈良女子大学附属中等教育学校 1 国語科 目次 はじめに ・・・1 1. 1 分間スピーチに挑戦しよう 2. 1 分間に話している文字数を数えてみよう 3. 音声のしくみを知ろう ・ 小学生の読みとプロの読み ・ ポーズこの不思議なもの ・ 内容がわかる読み ・ 早口言葉とちるわけ 4. 朗読劇に挑戦しよう 5. 実用文とは何か 6. 実用文を書いてみよう ・ 読者とテーマ ・ 構想マップ ・ ノンストップライティング ・ パラグラフライティング ・ ピアレビュー 7. プレゼンテーションの基本を知ろう 8. 学校紹介しよう ・・・4 ・・・8 ・・・10 おわりに 参考文献一覧 ・・・58 ・・・59 2 ・・・22 ・・・36 ・・・37 ・・・52 ・・・54 はじめに はじめに 3 年「表現」は、音声表現力と文章表現力を身につけるために設定している本校独自の科目で す。国語の学習領域には、 「聞くこと・話すこと」 「書くこと」 「読むこと」「言語事項」の4つが あり、バランスよく学習し、21 世紀を力強く生きる学力をつけておくことが必要です。 特に、 「聞くこと・話すこと」の領域は、学校生活だけでなく日常生活で使っていることなので、 普段はあまり意識せずに身についていると思いがちです。しかし、ひとたび聴衆の前で話をしな ければならない場面に遭遇すると、自分の思っていることの半分も言えずに終わってしまった経 験はないでしょうか。 この科目では、私たちが日ごろ使っている日本語を科学的な分析に基づいて、具体的な実習を 繰り返しながら、日本語表現力を培っていくことを目指しています。音声の特質は、すぐに消え てしまい、後から見直すことができないところにあります。録音機器や再生技術が進歩しても、 その特質に変わりはありません。そこで、音声言語と文字言語の特質を十分に理解した上で、思 考力を深め、豊かな表現力を身につけてほしいと願っています。 音声表現力は、文字言語と合わせて学習していくことで、より効果的な学習ができるようにな ります。じっくりと考えて文章を練り上げ、的確に主旨を伝えるためには、論理的な思考力がな くてはなりません。 このテキストでは、音声学の知識を基礎として、実用的な文章の書き方を学ぶ中で、論理的な 表現とはどのように獲得していくものかを、実験や実習によって身につけられるように配列して います。テキストの音声言語領域については、音声学研究所の杉藤美代子先生の監修による「声 の曼荼羅 - 語りとコミュニケーション -」(文部科学省大学共同利用機関 メディア教育 開発センター 制作・著作)を利用して編集しています。また、文章表現領域については、早稲 田大学人間科学部准教授の向後千春先生の「実用文の書き方ワークショップ」の実践を利用して います。 この授業を通じて生涯にわたって活用できる日本語運用能力を培い、場面や状況に応じて自ら の考えを他者に伝えられるようになってください。 国語科 3 吉田 隆 このテキストは、著作権等の許諾を受けていないものが含まれているため、 営利目的の利用はできません。(非売品) 下記の著作物を利用しています。 「声の曼荼羅 - 語りとコミュニケーション (制作・著作 文部科学省大学共同利用機関 - 」 メディア教育開発センター 監修 杉藤美代子・音声言語研究所 所長 発行 財団法人 発売 丸善株式会社) 放送大学教育振興会 『声にだして読もう!-朗読を科学する-』杉藤美代子著(明治書院) 「実用文の書き方ワークショップ」 (早稲田大学人間科学部准教授 向後千春) 4 1. 1 分間スピーチ 分間スピーチに 挑戦しよう スピーチに挑戦しよう 課題:クラスの仲間に知られていない自分を 1 分間で紹介しなさい。 * 手順1:各自がスピーチ原稿を作り、1分間スピーチの練習をする。 * 手順2:4~5人が1グループとなり、各自がスピーチし、4つの観点で評価する。 * 手順3:各グループの代表 1 名を選出し、4人でスピーチ原稿を推敲する。 * 手順4:各グループの代表が全員の前でスピーチする。 1-1.スピーチ 1.スピーチ原稿 スピーチ原稿( 原稿(下書き 下書き) 横書き→ 5 6 1-2.各 2.各グループでの グループでのスピーチ でのスピーチを スピーチを評価する 評価する 話し手( 評価 内容がよくわかる スピード 声の大きさ 聞き手への意識 一言アドバイス )TIME( 良い A A A A 普通 B B B B 話し手( 評価 内容がよくわかる スピード 声の大きさ 聞き手への意識 一言アドバイス )TIME( 良い A A A A 普通 B B B B 話し手( 評価 内容がよくわかる スピード 声の大きさ 聞き手への意識 一言アドバイス )TIME( 良い A A A A 普通 B B B B 話し手( 評価 内容がよくわかる スピード 声の大きさ 聞き手への意識 一言アドバイス )TIME( 良い A A A A 普通 B B B B ) がんばれ C C C C ) がんばれ C C C C ) がんばれ C C C C ) がんばれ C C C C 1-3.グループ 3.グループの グループの代表を 代表を選出し 選出し、スピーチの スピーチの内容を 内容を推敲し 推敲し、読み方などのアドバイス などのアドバイスをする アドバイスをする アドバイスしたことをメモしておく メモ欄 7 1-4.グループ 4.グループ代表者 グループ代表者の 代表者のスピーチ □ 1分間スピーチ 分間スピーチの スピーチの振り返り 時間 気づいたこと 改善すべきこと 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 □ スピーチの スピーチの時、大切なことは 大切なことは何 なことは何だろうか( だろうか(箇条書きにしてあげてみよう 箇条書きにしてあげてみよう) きにしてあげてみよう) 8 2. 1分間に 分間に話している文字数 している文字数を 文字数を数えてみよう □ あなたの1 あなたの1分間スピーチ 分間スピーチの スピーチの原稿から 原稿から、 から、1分間に 分間に話している文字数 している文字数を 文字数を割り出してみよう あなたの1分間スピーチの原稿の文字数=A 実際にかかった時間(秒)=B あなたが1分間に話している文字数=A×60/B □ NHK ニュースの ニュースのアナウンサーはどのくらいの アナウンサーはどのくらいのスピード はどのくらいのスピードで スピードで話しているのでしょうか サッカーのワールドカップに出場する、南アフリカチームが、事前キャンプをする、三重県上 野市で、南アフリカに縁のある人たちによる、講演が、予定されています。今日は、南アフリカ の研究をしている、三重大学の野中謙一助教授ら、南アフリカに縁のある人たちが、南アフリカ の風土や習慣などを紹介することになっています。 今年の 10 月富山県高岡市で開かれる食文化を紹介するイベント、食彩富山の実行委員会の初 めての会合が高岡市役所で開かれます。食の祭り、食彩富山の実行委員会の初めての会合です。 食彩富山は、富山県の伝統の食文化を紹介するとともに、特産品を一同に集めるイベントで、今 年は 10 月 26 日から二日間、高岡市テクノドームで開かれることになっています。(311 文字) → 1 分間に( )文字 □ 講演会で 講演会で話者はどのくらいの 話者はどのくらいのスピード はどのくらいのスピードで スピードで話しているのでしょうか 世界的な名著の一つに数えられております本の中に、 『星の王子様』というのがあるのをご存じ かと思います。これは、一人のフランス人のパイロット、サンテグジュペリという人が書いた小 さな本ですけれども、日本語に訳されて、岩波少年文庫から出ております。この前書きの中で、 サンテグジュペリと呼ばれるパイロットが、私はこの本をある大人に捧げるけれども、子どもた ちにはすまないと思う。で、その自分が大人に、いわゆるデディケイション、捧げる、その言い 訳というのは、捧げる大人の人は子どもの本でも何でも解る人だから、そしてさらに言えばその 大人の人は昔一度は子どもだったからだ。(277 文字) → 1 分間に( )文字 9 □ 野球中継の 野球中継のアナウンサーはどのくらいの アナウンサーはどのくらいのスピード はどのくらいのスピードで スピードで話しているのでしょうか ツーエンドツーから六球目を投げた、打った、レフトへ飛んだ、入った。強烈なライナーが飛 んでいった。打った瞬間にわかった。33 号は同点ホームラン。セカンドキャンパスをまわりまし た。早くも紙テープがグランドを舞っています。三塁キャンバスをまわりました。真弓ホームラ ンをとばしました。1対1同点。 バッターボックスには吉武登場致しました。1球目打った。これはセカンドの上を越えた。右 中間の真ん中だ。抜いていった。ワンバウンド、ツーバウンド、スリーバウンド。フェンスに当 たった。ランナーは一塁をまわった。2塁もまわるか、まわった。まわった。まわった。ボール はセカンドにきた。セカンドから三塁へ来た。三塁打。(295 文字) → 1 分間に( )文字 □ まとめ 10 3. 音声のしくみを 音声のしくみを知 のしくみを知ろう 3-1.小学生 1.小学生と 小学生とプロの プロの読み □ 次の文章は 文章は、新美南吉の 新美南吉の「ごんぎつね」 ごんぎつね」の一節です 一節です。 です。上手に 上手に朗読する 朗読する工夫 する工夫をしましょう 工夫をしましょう。 をしましょう。 そのあくる日も、ごんは、くりをもって、兵十の家へ出かけました。兵十は物置でなわをな っていました。それで、ごんは、家のうら口から、こっそり中へはいりました。 そのとき兵十は、ふと顔をあげました。と、きつねが家の中へはいったではありませんか。 こないだ、うなぎをぬすみやがったあのごんぎつねめが、またいたずらをしにきたな。 「ようし」 兵十は、立ち上がって、納屋にかけてある火なわ銃をとって、火薬をつめました。そして、 足音をしのばせて近よって、いま戸口をでようとするごんを、ドンと、うちました。 ごんは、ぱたりとたおれました。兵十はかけよってきました。家の中を見ると、土間にくり がかためておいてあるのが、目につきました。 「おや」 と、兵十は、びっくりして、ごんに目をおとしました。 「ごん、おまえだったのか、いつも、くりをくれたのは」 ごんは、ぐったり目をつぶったまま、うなずきました。 兵十は火なわ銃を、ぱたりと、とり落としました。青いけむりが、まだ、つつぐちからほそ く出ていました。 問い:上の一節を朗読するとき、速く読む部分に波線を、ゆっくり読む部分に二重線を引き、間 をあける間隔を記号(∧)で示しなさい。長い間隔には∧∧∧、普通の間隔には∧∧、短い間隔 には∧を入れなさい。 11 □ プロと プロと小学生の 小学生の朗読音声を 朗読音声を聞いてみましょう。 いてみましょう。その際 その際、次の表の5つの観点 つの観点に 観点に注意し 注意し、当て はまる方 はまる方に○印をつけなさい。 をつけなさい。 プロ 小学生 (1)ことばがききとりやすい (2)情景・心情がうかぶ (3)親しみやすい (4)間の長さが やや長すぎる 短すぎる (5)速さが やや速すぎる 遅すぎる □ 下のグラフは グラフは、プロと プロと小学生の 小学生の朗読を 朗読を発話時間と 発話時間とポーズの ポーズの時間の 時間の関係に 関係に着目して 着目して分析 して分析したも 分析したも のです。 のです。このグラフ このグラフから グラフから何 から何がわかるか、 がわかるか、類推してみよう 類推してみよう。 してみよう。 あなたの類推 他の人の類推 □ プロと プロと小学生の 小学生の朗読からわかったことをまとめなさい 朗読からわかったことをまとめなさい 12 3-2.ポーズ 2.ポーズこの ポーズこの不思議 この不思議なもの 不思議なもの 私たちが話しをするときは吐く息で話します。そこで息つぎをする時間(間、マ)が必要となります。これが 主なポーズの時間です。では、話を聞くほうにとってポーズはどのような時間なのでしょうか。 □ 次(①)のニュースを ニュースを聞き取り、どんな内容 どんな内容だったかなど 内容だったかなど、 だったかなど、いくつか質問 いくつか質問しますので 質問しますので、 しますので、それ らに答 らに答えなさい。 えなさい。 問1. ニュースの内容を箇条書きで答えなさい。 問2. 今(①)のニュースを聞いてみた印象はどうですか。 □ 次(②)のニュースを ニュースを聞いて、 いて、さっきの① さっきの①のニュースと ニュースと比べましょう。 べましょう。 問1. どちらの方が内容をより理解できましたか。 問2. ニュースの内容を箇条書きで答えなさい。 問3.①と②のニュースを聞いた印象を比較表にしてみましょう。 テープ① テープ② 13 □ 種明かしをしましょう 種明かしをしましょう ①=( )音声 ②=( )音声 □ 元の音声を 音声を聞いてみましょう □ 聞き手にとってポーズ にとってポーズの ポーズの役割とは 役割とは □ 次の音声は 音声は、杉藤美代子先生(音声言語研究所所長) 音声言語研究所所長)が朗読について 朗読について話 について話されているものです。 されているものです。 「朗読」 朗読」とは、 とは、どのような活動 どのような活動なのかを 活動なのかを聞 なのかを聞き取り、まとめなさい。 とめなさい。 14 3-3. 内容がわかる 内容がわかる読 がわかる読み □ 次の文を二つに区別 つに区別して 区別して読 して読みなさい。 みなさい。 (1) 背の高い少女の母親 Aの場合 Bの場合 問い:AとBの音声波形とピッチ曲線から、区別して読む場合の特徴をまとめなさい。 15 (2) 昨日借りた本を読みました Cの場合 Dの場合 問い:CとDの音声波形とピッチ曲線から、区別して読む場合の特徴をまとめなさい。 □ 意味がわかる 意味がわかる読 がわかる読みのまとめ 16 3-4.早口言葉 4.早口言葉とちるわけ 早口言葉とちるわけ □ 次の早口言葉を 早口言葉を練習してみよう 練習してみよう A:赤巻紙青巻紙黄巻紙 B:東京特許許可局 □ 上の早口言葉を 早口言葉をローマ字 ローマ字に変換してみよう 変換してみよう A: B: □ 子音と 子音と母音を 母音をコンピュータで コンピュータで分析してみよう 分析してみよう □ Aの早口言葉のどこでとちるのか 早口言葉のどこでとちるのか、 のどこでとちるのか、考えてみよう。 えてみよう。 □ なぜそこでとちるのか、 なぜそこでとちるのか、考えてみよう。 えてみよう。 17 【解説】つまずきの原因 (1)赤巻紙青巻紙黄巻紙 「あかまきがみ」 、つづく「あおまきがみ」では、 「がみ」 の部分が前後の「ま」行音の影響で「まみ」となり、次の 「きまきがみ」も「きまきまみ」になりやすい。 この早口言葉の音の組合せを調べるために、子音と母音に 分離してみます。 母音は主に[a]と[i]、子音は [k] [m] [ ] ですね。その中で [ ]を [m] にまちがえる。つまり、[ a]が[ma]になってし まう。これがこの早口言葉のまちがえのパターンのようで す。 さて、[ma] と [ka] と [ a] の子音は次のようにして作 ります(図1参照) 。[m]は唇を閉じて(鼻から息を出して) つくる音、一方、[k]と[ ]はどちらも舌の奥が上顎つまり 口蓋の一番奥に接触してつくる音です。そこで、唇を閉じ たり開いたり、奥舌を上げたり下げたりという運動をくり かえすことになります。 これだけなら楽にできますが、次の問題があります。つま り [ka] と [ a] とは奥舌が上にあがり、同じ位置で発音 されますが、 [ki] の場合は少し違います。 [ka ka ka] と大きく口をひらいて言いながら、指を口の中 へ入れると奥まで入ります。が、[ki] では奥まで指を入れ ることができません。つまり、日本語のイ列の音は、子音 を発音するときから次の母音[i]の発音の影響をうけます (これを口蓋化とよびます)。 図1 「 赤巻紙青巻紙黄巻紙」 赤巻紙青巻紙黄巻紙 」 の 調音時の 調音時 の 舌 の 移動 図1左の「あかまきがみ」と言ったときの舌(橙色部分)の位置の変化を見てください。舌の位置が「か」と「が」は 同じですが「き」は少しちがいますね。また、[ma]と[ a] の矢印の部分に注目してください。鼻音をつくるとき、私 たちがどのような運動をするのか示しています。他の図と比べてください。声を出すとき、普通は、吐く息が鼻へ抜け ずに口から出るように喉の奥の口蓋垂が鼻への通路に蓋をしています。が、鼻音の時には口蓋垂がたれて息が鼻から抜 けます。早口言葉のなかには鼻音をつくるためにこのような運動も加わって発音をさらに難しくしている例です。 矢印は鼻音 m、 などの発音時に口蓋垂が下がり空気が鼻へ抜けることを示しています(口を開けて鏡で、のどの奥 に下がっている小さい「のどびこ」―いわゆる「のどちんこ」を見てください。これが口蓋帆又は口蓋垂です)。私達 は発音時にこういうことをしているのです! ガ行鼻音の場合:共通語あるいは方言により、 「が」行音は語中で鼻音 [ a] となります 。つまり、 「が行鼻音」を用 つまりよくいう鼻濁音の話者にとってはさらに発音が難しくなります。 ここでは、「が」がかっこに入っています。つまり、速く発音するためにこのような奥舌の運動が間に合わず、これを 唇の音「ま」にかえて舌がさぼったということを示します。 18 【解説】「あいうえお」と「かきくけこ」の話 -母音と子音- 【男性の場合】 【女性の場合】 19 声帯のある声門から呼気は「声道」を通って唇 (または鼻)から外へ出されます。声道は一種の 管です。これは空気で満たされていてそれ自体が 多くの共鳴を持っています。「あ、い、う、え、 お」と発音すると舌の位置、唇の形、顎の開き方 が変わる(声道の形が変わる)ので異なる音質の 音が作られるのです。 狭母音 図2 図 2 は 5 母音の 母音の舌の 位置を を重ね書きし、 位置 きし、 高い部分を 部分を線分で 線分で結 んだもの 広母音 「日本語の母音」は、母音「あ、い、う、え、 お(/a, i, u, e, o/)」の発音時の舌の位置をX線 写真の図で示したものです。ここでは、口を大き く開けて作る「あ」(/a/―声道(色を塗った部分) が広い)を一番下に置き、これと、発音時に舌を 高める「い、う」 (/i, u/―声道の上部が狭い) を最上位に置き、それらの間に、舌の位置が中間 である「え」と「お」/e, o/を配置しています。 /i, u/は狭母音、/a, e, o/は広母音と呼ばれま す。 まとめ 20 五十音図は、古代インドの音韻組織を日本語に応用 して 10 世紀ごろに作成されたといわれます。これは 日本語の母音と子音の特徴をもっとも簡潔な形で表現 した日本語の音節(拍)一覧表です。五十音図は、従 来、文字の学習に使われてきましたが、実際には、そ れぞれの音が発音上合理的に配列されているため、日 本語の「音」の学習に有効です。 表 1 では、まず、母音「あ、い、う、え、お(/a, i, u, e, o/)を縦軸に並べます。 図1 表1 次に、 「か、さ、た、な、は、ま、や、ら、わ」の子 音(/k, s, t, n, p, m, y, r, w/―「は行子音」は古代に は/p/でした――「はは(母)」の発音は[ papa ]でし た!)を横軸に並べます。/k, s, t, n/は、音を作る ときの舌の位置が後ろから前へと配列されています。 /p, m/は唇を閉じて作ります(図 1「子音の作り方」 参照)。/r/はとくに短い子音、/y, w/は半母音と 呼ばれます。これらも舌の位置が中ほどから前へと配 列されています。 子音の 子音 の 作 り 方 五十音図は 五十音図 は 日本語の 日本語 の 音節一覧表 このように、五十音図は、発音の方法を考慮して合 理的に作られているのです。 まとめ 21 □ 確認しておこう 確認しておこう 破裂音 摩擦音 破擦音 æ 無声子音(口音) k t p s ∫ 有声子音(口音) g d b (z) dz dæ 有声子音(鼻音) 〈η〉n m 破裂音=息を一時的に閉鎖して直後につめた息を破裂させてつくる音 摩擦音=舌と上顎との間をせばめて、その狭いところを呼気がとおるときの摩擦によってで きる音 破擦音=破裂した後、摩擦音がつづく音 鼻濁音=濁音の子音(有声子音)を発音するとき鼻に音を抜くもの 長音=日本語の音節で、母音を通常の倍にのばしたもの:「むかーし」 撥音=「はねるおん」と呼ばれ、直前の母音とともに音節を構成する:「やんま」 促音=「つまる音」と呼ばれ、日本語の仮名表記で「っ」「ッ」で表される:「かっぱ」 拗音=拗音とは「曲がった音」を意味し、直音の対語で、仮名2文字で表記されるが、音の 長さは直音1文字と同じ:「きゃ きゅ きょ」 オノマトペ=音声を字句で模倣した修辞技法の一つ:「メーメー」 拍=日本語の音の単位で、単語より小さく、子音や母音よりも大きい音のまとまり:一拍語 「え(絵・柄)」 アクセント=単語の音節で強くまたは高さを変えて発音される現象のこと なお、文末や文の区切れ目の直前の1音節内部での高低の変化を、イントネー ションという。 22 4. 朗読劇に 朗読劇に挑戦しよう 挑戦しよう □ 効果的な 効果的な語りとは 「大きなかぶ」 ものすごい大きなかぶができました。 あんまりみごとなので、おとのさまにさしあげたところ、 「なるほどみごとだ。」 そういって、ごほうびに、うまをくれました。 それをきいたある男が、みごとなうまをあげたら、どんなにすばらしいごほうびをくれるだろうと、だい じなうまをさしあげました。 「なるほどみごとだ。」 おとのさまは、さっきの大きなかぶを、ごほうびにくれました。 この大そう短い民話には 4 つの場面があ り、3 人の登場人物の動きが「大きなかぶ」 と「うま」をめぐって描かれています。物 語としての起承転結が、最小限の単語をも ちいてえがかれ、安定した結末へとみちび かれます。しかも意表をつくオチがついて います。 話者の発話の時間とポーズの時間とを棒 グラフで示したものです。ポーズがもっと も長い所は6行目の後です。ここで人も場 面も大きく変わります。 右端に示す速度は、1 秒間に語る拍数(か な文字数)です。1番遅いものは黒く示し ました。どれもとのさまの言葉です。 効果的な語りの工夫 「おおきなかぶができました。」は 「大きな」を強調して語ることが多い。が、「かぶ」を強調します。ま た、 「うまをくれました。 」の「うま」の場合はその前にポーズをいれて「う」を低く「ま」を高く「うま」 を強調して読みます。しかし「みごとなうま」「だいじなうま」の「うま」はゆっくり言って、むしろ「さ しあげました」の方に重点があるでしょう。 最後の「大きなかぶを、ごほうびにくれました」の「かぶ」は、すでに分かっている「かぶ」をややゆっく りよんで、「かぶ」の後にポーズをおき、これに続く「ごほうび」の方に重点を移す方がよいでしょう。 23 □ 朗読劇に 朗読劇に挑戦!! 挑戦!! * 手順1:A~Eの文章を一つ選んで、グループで朗読劇に挑戦する。 * 手順2:グループは8~9人。 * 手順3:グループで5つの文章を輪読し、朗読劇に使う文章を決める。 * 手順4:グループで文章の内容を読解し、5分以内で読める箇所を選定する。 * 手順5:朗読用の台本を作り、効果的な読み方を検討する。 * 手順6:グループで読み合わせをする。 * 手順7:みんなの前で朗読する。(録音) □ 朗読劇 班 ( )( )( )( ) ( )( )( )( ) 朗読劇に使う文章 話の内容を要約する 役割分担 名前 役割 備考 24 A 「人形」 人形」 ある時、大阪行の急行の食堂車で、遅い晩飯を食べていた。四人掛けのテーブルに、私は一人 で座っていたが、やがて、前の空席に、六十恰好の、上品な老人夫婦が腰をおろした。 細君の方は、小脇に何かを抱えてはいってきて私の向かいの席に着いたのだが、袖の陰から現 れたのは、横抱きにされた、おやと思うほど大きな人形であった。人形は、背広を着、ネクタイ をしめ、外套を羽織って、外套と同じ縞柄の鳥打帽子を被っていた。着付けのほうはまだ新しか ったが、顔のほうは、もうすっかり垢染みてテラテラしていた。眼元もどんよりと濁り、唇の色 もあせていた。何かの拍子に、人形は帽子を落とし、これも薄汚くなった丸坊主を出した。 細君が目くばせすると、夫は、床から帽子を拾い上げ、私の目が合うと、ちょっと会釈して、 車窓の釘に掛けたが、それは、子供連れで失礼とでも言いたげなこなしであった。 もはや、明らかなことである。人形は息子に違いない。それも、人形の顔から判断すれば、よ ほど以前のことである。一人息子は戦争で死んだのであろうか。夫は妻の乱心を鎮めるために、 彼女に人形を当てがったが、以来、二度と正気には還らぬのを、こうして連れて歩いている。た ぶんそんな事か、と私は想った。 夫は旅なれた様子で、ボーイに何かと注文していたが、今は、おだやかな顔でビールを飲んで いる。妻は、はこばれたスープを一匙すくっては、まず人形の口元に持って行き、自分の口に入 れる。それを繰り返している。私は、手元に引き寄せていたバタ皿から、バタを取って、彼女の パン皿の上に載せた。彼女は息子にかまけていて、気が付かない。 「これは恐縮」と夫が代わりに 礼を言った。 そこへ、大学生かと思われる娘さんが、私の隣に来て座った。表情や挙動から、若い女性の持 つ鋭敏を、私はすぐ感じたように思った。彼女は、一目で事を悟り、この不思議な会食に、素直 に順応したようであった。私は、彼女が、私の心持まで見てしまったとさえ思った。これは、私 には、彼女と同じ年頃の一人娘があるためであろうか。 細君の食事は、二人分であるから、遅々として進まない。やっとスープが終わったところであ る。もしかしたら、彼女は、全く正気なのかも知れない。身についてしまった習慣的行為かも知 れない。とすれば、これまでになるのは、周囲の浅はかな好奇心と随分戦わねばならなかったろ う。それまで彼女の悲しみは深いのか。 異様な会食は、ごく当たり前に、静かに、敢えて言えば、和やかに終わったのだが、もし、誰 かが、人形について余計な発言でもしたら、どうなったであろうか。私はそんなことを思った。 25 B 「清兵衛と 清兵衛と瓢箪」 瓢箪」 これは清兵衛という子供と瓢箪との話である。この出来事以来清兵衛と瓢箪とは縁がきれてし まったが、間もなく清兵衛には瓢箪に代わる物ができた。それは絵を描く事で、彼はかつて瓢箪 に熱中したように今はそれに熱中している・・・・・・ 清兵衛が時々瓢箪を買ってくることは両親も知っていた。三四銭から十五銭くらいまでの皮つ きの瓢箪を十程も持っていたろう。彼はその口を切る事も種を出す事も独りで上手にやった。栓 も自分で作った。最初茶渋で臭味をぬくと、それから父の飲みあました酒を貯えて置いて、それ でしきりに磨いていた。 全く清兵衛の凝りようは烈しかった。あくる日彼はやはり瓢箪の事を考え考え浜通りを歩いて いると、ふと、眼に入った物がある。彼ははっとした。それは路端に浜を背にしてズラリと並ん だ屋台店の一つから飛び出して来た爺さんの禿頭であった。清兵衛はそれを瓢箪だと思ったので ある。 「立派な瓢じゃ」こう思いながら彼はしばらく気がつかずにいた。―――気がついて、さす がに自分で驚いた。その爺さんはいい色をした禿頭を振り立てて向こうの横町へ入って行った。 清兵衛は急におかしくなって一人大きな声を出して笑った。堪らなくなって笑いながら彼は半町 ほど駆けた。それでもまだ笑いは止まらなかった。 これほどの凝りようだったから、彼は町を歩いていれば骨董屋でも八百屋でも荒物屋でも駄菓 子屋でもまた専門にそれを売る家でも、およそ瓢箪を下げた店といえば必ずその前に立ってじっ と見た。 清兵衛は十二歳でまだ小学校に通っている。彼は学校から帰ってくると他の子供とも遊ばずに、 一人よく町へ瓢箪を見に出かけた。そして、夜は茶の間の隅にあぐらをかいて瓢箪の手入れをし ていた。手入れが済むと酒を入れて、手ぬぐいで巻いて、缶にしまって、それごと炬燵へ入れて、 そして寝た。翌朝は起きるとすぐ彼は缶を開けて見る。瓢箪の肌はすっかり汗をかいている。彼 は厭かずそれを眺めた。それから丁寧に糸をかけて陽のあたる軒へ下げ、そして学校へ出かけて 行った。 清兵衛のいる町は商業地で船つき場で、市にはなっていたが、割りに小さな土地で二十分歩け ば細長い市のその長い方が通りぬけられるくらいであった。だからたとえ瓢箪を売る家はかなり 多くあったにしろ、ほとんど毎日それらを見歩いている清兵衛には、おそらくすべての瓢箪は眼 を通されていたろう。 彼は古瓢にはあまり興味を持たなかった。まだ口も切ってないような皮つきに興味を持ってい た。しかも彼の持っているのは大方いわゆる瓢箪形の、割りに平凡な恰好をした物ばかりであっ た。 「子供じゃけえ、瓢いうたら、こういうんでなかにゃあ気に入らんもんと見えるけのう」大工を している彼の父を訪ねて来た客が、傍で清兵衛が熱心にそれを磨いているのを見ながら、こう言 った。彼の父は、 「子供の癖に瓢いじりなぞをしおって・・・・・」とにがにがしそうに、その方を顧みた。 「清公。そんな面白うないのばかり、えっと持っとってもあかんぜ。もちっと奇抜なんを買わん かいな」と客が言った。清兵衛は、 「こういうがええんじゃ」と答えて済ましていた。 清兵衛の父と客との話は瓢箪の事になっていった。 26 「この春の品評会に参考品で出ちょった馬琴の瓢箪という奴はすばらしいもんじゃったのう」と 清兵衛の父が言った。 「えらい大けえ瓢じゃったけのう」 「大けえし、大分長かった」 こんな話を聞きながら清兵衛は心で笑っていた。馬琴の瓢というのはその時の評判な物ではあ ったが、彼はちょっと見ると、―――馬琴という人間も何者だか知らなかったし―――すぐ下ら ない物だと思ってその場を去ってしまった。 「あの瓢はわしには面白うなかった。かさ張っとるだけじゃ」彼はこう口を入れた。 それを聴くと彼の父は眼を丸くして怒った。 「何じゃ。わかりもせん癖して、黙っとれ!」 清兵衛は黙ってしまった。 ある日清兵衛が裏通りを歩いていて、いつも見慣れない場所に、しもた屋の格子先に婆さんが 干柿や蜜柑の店を出して、その背後の格子に二十ばかりの瓢箪を下げて置くのを発見した。彼は すぐ、 「ちょっと、見せてつかあせえな」と寄って一つ一つ見た。中に一つ五寸ばかりで一見ごく普通 な形をしたので、彼には震いつきたいほどにいいのがあった。 彼は胸をどきどきさせて、 「これ何ぼかいな」と聞いてみた。婆さんは、 「ぼうさんじゃけえ、十銭にまけときやんしょう」と答えた。彼は息をはずませながら、 「そしたら、きっと誰にも売らんといて、つかあせえのう。すぐ銭持って来やんすけえ」くどく、 これを言って走って帰って行った。 間もなく、赤い顔をしてハアハアいいながら還って来ると、それを受け取ってまた走って帰っ て行った。 彼はそれから、その瓢が離せなくなった。学校へも持って行くようになった。しまいには時間 中でも机の下でそれを磨いていることがあった。それを受持ちの教員が見つけた。修身の時間だ っただけに教員は一層怒った。 他所から来ている教員にはこの土地の人間が瓢箪などに興味を持つ事が全体気にくわなかった のである。 この教員は武士道を云う事の好きな男で、雲右衛門が来れば、いつもは通りぬけるさえ恐れて いる新地の芝居小屋に四日の興行を三日聴きに行く位だから、生徒が運動場でそれを唄う事には それ程怒らなかったが、清兵衛の瓢箪では声を震わして怒ったのである。 「到底将来見込のある人間ではない」こんなことまで云った。 そしてそのたんせいを凝らした瓢箪はその場で取り上げられて了った。 清兵衛は泣けもしなかった。 彼は青い顔をして家に帰ると炬燵に入って只ぼんやりして居た。 そこに本包みを抱えた教員が彼の父を訪ねてやって来た。 清兵衛の父は仕事へ出て留守だった。 「こう云う事は全体家庭で取り締って頂くべきで……」教員はこんな事をいって清兵衛の母に食 ってかかった。母は只々恐縮して居た。 清兵衛はその教員の執念深さが急に恐ろしくなって、唇を震わしながら部屋の隅で小さくなっ 27 ていた。教員の直ぐ後の柱には手入れの出来た瓢箪が沢山下げてあった。今気がつくか今気がつ くかと清兵衛はヒヤヒヤしていた。 散々叱言を並べた後、教員はとうとうその瓢箪には気がつかずに帰って行った。清兵衛はほッ と息をついた。清兵衛の母は泣き出した。そしてダラダラと愚痴っぽい叱言を云いだした。 間もなく清兵衛の父は仕事場から帰って来た。で、その話を聞くと、急に側にいた清兵衛を捕 えて散々に撲りつけた。清兵衛はここでも「将来とても見込のない奴だ」と云われた。「もう貴様 のような奴は出て行け」と云われた。 清兵衛の父は不図柱の瓢箪を穢れた物ででもあるかのように、捨てるように、年寄った学校の 小使にやって了った。小使はそれを持って帰って、くすぶった小さな自分の部屋の柱へ下げて置 いた。 二ヶ月程して小使は僅かの金に困った時に不図その瓢箪をいくらでもいいから売ってやろうと 思い立って、近所の骨董屋へ持って行って見せた。 骨董屋はためつ、すがめつ、それを見ていたが、急に冷淡な顔をして小使の前へ押しやると、 「五円やったら貰うとこう」と云った。 小使は驚いた。が、賢い男だった。何食わぬ顔をして、 「五円じゃとても離し得やしぇんのう」と答えた。骨董屋は急に十円に上げた。小使はそれでも 承知しなかった。 結局五十円で漸く骨董屋はそれを手に入れた。――小使は教員からその人の四ヶ月分の月給を 只貰ったような幸福に心ひそかに喜んだ。が、彼はその事は教員には勿論、清兵衛にも仕舞まで 全く知らん顔をして居た。だからその瓢箪の行方に就ては誰も知る者がなかったのである。 然しその賢い小使も骨董屋がその瓢箪を地方の豪家に六百円で売りつけた事までは想像も出来 なかった。 ……清兵衛は今、絵を描く事に熱中している。これが出来た時に彼にはもう教員を怨む心も、十 あまりの愛瓢を玄能で破って了った父を怨む心もなくなって居た。 然し彼の父はもうそろそろ彼の絵を描く事にも叱言を言い出して来た。 28 C 「杯」 せいれつ 温泉宿から鼓が滝へ登って行く途中に、清冽な泉が湧き出ている。 い げた とつめん 水は井桁の上に凸面をなして、盛り上げたようになって、余ったのは四方へ流れ落ちるのであ る。 おお 青い美しい苔が井桁の外を掩うている。 夏の朝である。 めぐ こ もや 泉を繞る木々の梢には、今まで立ち籠めていた靄が、まだちぎれちぎれになって残っている。 ばんこく 万斛の玉を転ばすような音をさせて流れている谷川に沿うて登る小道を、温泉宿の方から数人 の人が登って来るらしい。 にぎ 賑やかに話しながら近づいて来る。 さえず 小鳥が群がって 囀 るような声である。 皆子供に違いない。女の子に違いない。 「早くいらっしゃいよ。いつでもあなたは遅れるのね。早くよ」 「待っていらっしゃいよ。石がごろごろしていて歩きにくいのですもの」 後れ先立つ娘の子の、同じような洗髪を結んだ、真赤な、幅の広いリボンが、ひらひらと蝶が 群れて飛ぶように見えて来る。 ゆ かた ひるがえ は これもお揃いの、藍色の勝った浴衣の袖が 翻 る。足に履いているのも、お揃いの、赤い鼻緒 の草履である。 「わたし一番よ」 「あら。ずるいわ」 そば 先を争うて泉の傍に寄る。七人である。 年は皆十一二位に見える。きょうだいにしては、余りに粒が揃っている。皆美しく、ややなま めかしい。お友達であろう。 な なか さ んご たま この七顆の珊瑚の珠を貫くのは何の緒か。誰が連れて温泉宿に来ているのだろう。 ただよ ほとり 漂 う白雲の間を漏れて、木々の梢を今一度漏れて、朝日の光が荒い縞のような泉の 畔 に差す。 真赤なリボンの幾つかが燃える。 ほおずき 娘の一人が口に含んでいる丹波酸漿を膨らませて出して、泉の真中に投げた。 凸面をなして、盛り上げたようになっている水の上に投げた。 酸漿は二三度くるくる廻って、井桁の外へ流れ落ちた。 「あら。直ぐにおっこってしまうのね。わたしどうなるかと思って、楽しみにして遣って見たの だわ」 「そりゃあおっこちるわ」 「分かっていてよ」 「嘘ばっかし」 打つ真似をする。藍染の浴衣の袖が翻る。 「早く飲みましょう」 「そうそう。飲みに来たのだったわ」 「忘れていたの」 「ええ」 「まあ、いやだ」 29 て で ふところ 手ん手に 懐 を捜って杯を取り出した。 青白い光が七本の手から流れる。 皆銀の杯である。大きな銀の杯である。 はし 日が丁度一ぱいに差して来て、七つの杯はいよいよ輝く。七条の銀の蛇が泉を繞って奔る。 銀の杯はお揃いで、どれにも二字の銘がある。 それは自然の二字である。 妙な字体で書いてある。何か拠があって書いたものか。それとも独創の文字か。 かわるがわる泉を汲んで飲む。 濃い紅の唇を尖らせ、桃色の頬を膨らませて飲むのである。 木立のところどころで、じいじいという声がする。蝉が声を試みるのである。 白い雲が散ってしまって、日盛りになったら、山をゆする声になるのであろう。 この時只一人坂道を登って来て、七人の娘の背後に立っている娘がある。 第八の娘である。 背は七人の娘より高い。十四五になっているのであろう。 黄金色の髪を黒いリボンで結んでいる。 こ はく 琥珀のような顔から、サントオレアの花のような青い目が覗いている。永遠の驚きを以て自然 のぞ を覗いている。 唇だけがほのかに赤い。 ふち 黒の縁を取った鼠色の洋服を着ている。 東洋で生まれた西洋人の子か。それとも相の子か。 も 第八の娘は裳のかくしから杯を出した。 小さい杯である。 ようがん どこの陶器か。火の坑から流れ出た熔巌の冷めたような色をしている。 七人の娘は飲んでしまった。杯を漬けた跡のコンサントリックな圏が泉の面に消えた。 凸面をなして、盛り上げたようになっている泉の面に消えた。 第八の娘は、藍染めの浴衣の袖との間をわけて、井桁の傍に進み寄った。 七人の娘は、この時始めてこの平和の破壊者のあるのを知った。 そしてその琥珀いろの手に持っている、黒ずんだ、小さい杯を見た。 思い掛けない事である。 七つの濃い紅の唇は開いたままで詞がない。 蝉はじいじいと鳴いている。 やや久しい間、只蝉の声がするばかりであった。 一人の娘がようようの事でこう言った。 「お前さんも飲むの」 声は訝りに少しの怒りを帯びていた。 第八の娘は黙って頷いた。 今一人の娘がこう言った。 「お前さんの杯は妙な杯ね。ちょっと拝見」 いぶか あなど 声は 訝 りに少しの 侮 りを帯びていた。 第八の娘は黙って、その熔巌の色をした杯を出した。 30 けん 小さい杯は琥珀いろの手の、 腱ばかりから出来ているような指を離れて、 薄紅のむっくりした、 一つの手から他の手に渡った。 「まあ、変にくすんだ色だこと」 「これでも瀬戸物でしょうか」 「石じゃないの」 「火事場の灰の中から拾って来たような物なのね」 「墓の中から掘り出したようだわ」 「墓の中は好かったね」 七つの喉から銀の鈴を振るような笑い声が出た。 りょうひじ 第八の娘は両 肘 を自然の重みで垂れて、サントオレアの花のような目は只じいっと空を見てい る。 一人の娘が又こう言った。 「馬鹿に小さいのね」 今一人が言った。 「そうね。こんな物じゃあ飲まれはしないわ」 今一人が言った。 「あたいのを貸そうかしら」 憐れみの声である。 そして自然の銘のある、輝く銀の、大きな杯を、第八の娘の前に出した。 第八の娘の、今まで結んでいた唇が、この時始めて開かれた。 “MON.VERRE.NEST.PAS.GRAND.MAIS.BOIS.DANS.MON.VERRE” 沈んだ、しかも鋭い声であった。 「わたくしの杯は大きくはございません。それでもわたくしはわたくしの杯で戴きます」と言っ たのである。 七人の娘は可愛らしい、黒い瞳で顔を見合った。 言語が通ぜないのである。 第八の娘の両肘は自然の重みで垂れている。 言語は通ぜないでも好い。 第八の娘の態度は第八の娘の意志を表白して、誤解すべき余地を留めない。 一人の娘は銀の杯を引っ込めた。 自然の銘のある、輝く銀の、大きな杯を引っ込めた。 今一人の娘は黒い杯を返した。 火の坑から湧き出た熔巌の冷めたような色をした、黒ずんだ、小さい杯を返した。 第八の娘は静かに数滴の泉を汲んで、ほのかに赤い唇を潤した。 31 D 「明るい雨空 るい雨空」 雨空」 営団地下鉄の赤坂見附駅は永田町駅と通路で接続されていることもあって、朝夕は非常に混雑 する。人の波は申し合わせたように同じテンポで動き、自分と同じ方向に向かう波に混ざるとあ とは足を前後に動かすだけで入口の階段に運ばれるように進む。地面にあいた穴ぐらのような地 下階段を昇ると、地下の蛍光灯に馴れた目に太陽の光が眩しい。殊に春は、交差点の交番の傍に 植えられた樹々の葉のあいだから洩れる白い光が目を射る。 哲雄は階段のいちばん上まで来てから立ち止まった。高速道路のむこう側にそびえ立つ、ホテ ルの巨大な建物に目を向ける。なんということもなしに溜息をついてみた。最近、身体の調子が 悪いように思えるのは気のせいだろうか。 一流商事会社の海外渉外課勤務といえば聞こえはいいが、近ごろの哲雄は身体も神経もすり削 られているような思いがする。削り取られていった分の中に、かつての自分の大切なものがあっ たような気がして、それを思うともっと思い気持ちになる。 ブリーフケースと一緒に小脇にはさんでいた折りたたみ式の青い傘が、音を立てて落ちた。た たまれたままの傘はコンクリートの階段を二、三段転げていった。今朝のニュースが、今日の午 後からの降水確率を七十パーセントと告げていた。出がけにニュースを小耳にはさんだ哲雄があ わてて持って来たその青い傘は、朝の地下鉄銀座線の中で、電車の振動に合わせてブリーフケー スと一緒に網棚の上で揺れていた。 網棚の上で揺れる傘は、哲雄にあることを思い出させた。今朝の哲雄がいつもにも増して疲れ た気分でいるのは、もしかしたらそのせいかも知れない。 まだ高校生だったころの話だから、もう六、七年は前のことになる。都心にある私立高校の生 徒だった哲雄は、やはり地下鉄を使って学校に通っていた。 その日も昼間から雨が降り、哲雄は数人の友人たちと一緒に、学校から駅までを走った。誰も 傘を持ってきていなかった。学校の昇降口の傘立てにいつも何本かささっている忘れられた傘に も、その日は誰もありつけなかった。 地下鉄に乗って何駅かを過ごすうち、途中から乗って来る人の濡れ具合で雨が激しくなってき ているのが判った。 哲雄は四時に女の子と約束していた。約束の場所である喫茶店は、駅からかなり歩くところに あった。ずぶ濡れで行きたくないと思った。 「あー、やべえなあ」 哲雄は舌打ちして友人たちに言った。 「どうしたの」 「俺、これから女のコに会いに行くのに―――」 「だから何なンだよ」 「―――傘がない」 「いいじゃん、別に」 「ヤだよオ、濡れちゃうじゃん」 友人たちはへらへらと笑い、ざまあみろ、とか何とか言った。雨雨降れ降れ、もっと降れエと、 友人のひとりがふりを付けて歌った。当時ヒットしていたその歌を、ふざけてふり付きで歌うの が哲雄たちの間では流行っていた。 32 「クソやべえよ、どうしよっかな」 呟いて正面を向いた哲雄の目に、向かい側に坐って文庫本を読んでいる年とった男の姿が映っ た。深緑とも黒ともつかぬような色のレインコートを着たその老人は、熱心に本を読んでいる。 老人の真上の網棚の上には濡れた傘がたたまれて置いてあり、時おりほんの上にポトリと水滴を 落としていた。濡れた傘を気にしているふううにときどき上を向き、またすぐに本に目を戻す。 老人はさっきからそんな動作を繰り返していた。 老人の様子をしばらく眺めているうちに、哲雄はあるこを思いついた。気が咎めないこともな かったが、びしょ濡れの姿で女の子と会うよりはいいと思った。雨に濡れた制服はひどく嫌な匂 いがするのだ。 哲雄の降りるひとつ手前の駅に着いた。電車が再び動き出したとき、哲雄は隣に坐っていた友 人の耳もとで、囁くように言った。 「あの傘、ギっていい?」 友人ははじめ少し驚いた顔で哲雄を見たが、やがてにやりと笑って答えた。 「いいけどさ、別に……。そしたら俺たち、むこうの車両に移るからな」 友人たちがひとつ隣りの車両に移り、残された哲雄も立ちあがってカバンを抱えたとき、電車 が減速して車体が前のめりに傾いだ。次の駅にさしかかって車窓が明るくなった。 哲雄は扉に身体を貼りつけるようにして立った。すぐ横に本を読む老人がいた。 扉が閉まる寸前、哲雄は網棚の上にある老人の傘をわし掴みにし、 素早くホームに降り立った。 降りた哲雄のすぐ後ろで、シューと音がして扉が閉まった。隣りの車両の窓から身を乗り出して その様子を見守っていた友人たちが、大声で哲雄をはやし立てた。哲雄は笑いながら友人たちに 手を振り、おそるおそる自分の後方を見やった。 哲雄は老人が怒っていると思った。怒って哲雄を指さしているはずだった。あるいは、悔しが って地団駄を踏んでいてくれても良かった。あのときいっそ、あの老人が窓を開けて、返せとか 何とか叫んでくれれば良かったとすら哲雄は思う。それならば哲雄も、ちらっと舌を出して傘を 片手に改札口の階段を勢いよく駆け昇れただろうと思う。 けれどもその老人は怒っても悔しがってもいなかった。驚いて振り向きはしたが、彼はその姿 勢のまま、 窓のむこうから哲雄をじっと見ていた。見つめていたと言った方がいいかも知れない。 ことばでは言いあらわせないほどひどく悲しそうな目で―――。 哲雄は今でも、あのときの老人の目を忘れることができないでいる。 気象庁の予想があたって、三時ごろから雨が降り出した。窓ガラスにあたっては流れ落ちるあ めの滴の行方を目で追いながら、哲雄はまだ老人の傘のことを考えていた。 退社時刻を過ぎて外に出ると、雨は小降りになっていた。折りたたみの青い傘を開き、哲雄は 駅に向かって歩き出した。小刻みなポツポツという音が、頭の上に響いている。 一ツ木通りを裏から抜けて、白い駅ビルの姿が見えてきたとき、ふとこのまま帰りたくないよ うな気がした。大学を卒業してから親元を離れてはいるが、ワンルームの賃貸マンションに誰か が待っているわけではない。哲雄はそのまま廻れ右をして、たまに同僚たちと会社帰りに寄る小 さな店に向かった。 歩き続ける哲雄の頭の中に、削り取られた自分の身体と心のことがあった。生きていく上でと いうよりはむしろ、生活をする上で、自分のある部分を削り取っていくことは必要なのかも知れ ない。―――ぼんやりとそんなことを考えていた。けれど何か―――どんな「何か」なのかは判 33 らないけれど―――削り取れないものもあるような気がした。 「あの……」 声をかけられてふと我に返った。目の前に、背の低い痩せた男が立っていた。男は腕で雨をよ けるような格好をして、長身の哲雄を見あげた。十八、九に見えた。 「ニューオータニって、どういうふうに行くンですか」 およそ人にものを訊ねているとは思えないぶっきらぼうな調子で、彼は言った。 「ニューオータニ?―――えっと、まずここをまっすぐ行って、でかい道に出たら左に曲がって ……」 哲雄の答えに頷きながら、男はいちいちそれを口の中で反復した。全部聞き終えると、男はぺ こりと頭を下げた。 「どうも」 「傘ないの?歩くとかなりあるぜ」 「はあ……」 「貸してやろうか」 哲雄は自分の傘を少し持ちあげるようにして言った。男は驚いて答えた。 「いや、いいっすよ」 「いいよ、持ってけよ。バイトの面接かなんかだろ、濡れてったら印象悪いぞ」 哲雄のことばに男は一瞬、真面目に考えこみ、そうしてからさっきのようにぺこりと頭を下げ た。 「すいません、じゃあ借りていきます」 「返さなくていいからな」 男はもういちど頭を下げると、傘を受け取って小走りに去って行った。 哲雄は再び、今度は小雨に濡れながら歩きはじめた。身体も心も、年齢を重ねていくにつれて どんどん削られていくのだろうが、 あの雨の日の老人の目だけは、削ることができないと思った。 ―――雨があがるまで飲んでるかな……。 小さく呟くと、雨雲に埋められた空が心なしか明るくなった。 34 E 「好き友」 き もん おうおう 私の交友は誰々かとお尋ねになるのですか。貴問は私を怏々とさせます。私には友達というも のがないからです。それは私の孤独な、人と和しがたい性格から来ているのでしょう。どうもそ うらしい。 考えてみると、私には少年時代の昔から友達というべき者はなかったような気がします。私が 十二歳の時、私はちょうど、今日貴社から与えられたと全く同じ質問を、小学校の先生から与え られたことがありました。その時も私は今日と同じような不愉快を感じました。 その時先生の質問というのは、生徒たちの学校外での生活をしるために、各々の生徒たちが持 っている友達を五六人数え上げよ、というのであった。雨の日の体操の時間で、雨天体操場など のあるべきはずもない田舎の小学校では時おり、そんな機会にそんな事をする時間があったので す。先生が紙を配ってくれると、生徒はそれへ返答するのです。人に見られないようにと肘でし っかりと囲をして、それぞれに小さな頭と胸とを働かせながら書くのです。割合に自由な時間な ので、いつものこんな時には、私は楽しかったものです。一番好きな歴史上の人物は誰だとか、 あるいは誰でも教壇へ出て面白い話をしてみよとか、つまり雨の体操時間というのは遊びの時間 だった。それだのに、その日は何だか試験の日にように緊張した感じがあった。私はというと、 試験ならば即座に答えてしまえるものを、この日のこの質問には本当に悩まされた。答えように も私にはひとりも友達らしいものはなかったからである。 しかし、ひとりも友達がなかったと言って、私は人に馬鹿にされて相手になってもらえなかっ たのではない。かえって私は人に畏れられていたのである。私は大人びた子供で学科も不出来で はなかったし、私の家は医者だというので田舎の純朴な人たちは尊敬していてくれた。そういう い けい わけで、小さな我々の仲間までが、私をへんに畏敬する風であった。それに私は、いつもひとり で遊んでいる無口な子供ではあったし、誰も用事の時の外には、気軽るに口を利いてもくれなか ったのである。それを、私はふだんは大して不幸にも思ったのではない。しかし、今日こうして、 お前の友達は誰々だと問われると、直ぐに答え得る名のないのを淋しく思ったのです。どうして だか知りません。いろいろと考えた末で私は、教室における自分の座席のぐるり四五人の子供の 名を順々に書き並べたのです。何故かというのに、その子供たちが、そういう位置に置かれた自 然の関係として、自然と、最も多く私と口を利く機会が多かったからでした。 その時間が過ぎてしまって、自由な時間が来た時、子供たちは、今のさっきの先生の質問をさ も重大な事件のように話し合っていた。彼等は皆、人々に、俺はお前のことを書いたというよう なことを言い合っていた。 しかし、私に向かってそんなことを言いかけた者はひとりもなかった。 すると、いつものように黙っている私のところへ来て、ひとりの子供が話しかけた―――「あん た。誰書いたんな?」 その子は快活な口調で言った。それは教室で私のすぐうしろにいた子供であった。きさくな性 質で、気難しげな私に対して常から最も多く口を利いていた。彼に対して私は答えた――― 「おれはあんたの名を書いたんじゃ」 いち せ つ な その答えとともに、彼のはしゃいでいた顔は一刹那にがらりと変化した。しばらく無言だった 彼は、やっと私に言った。――― 「こらえておくれよ。のう、わあきゃあんたをわすれたあった。わあきゃあ、ぎょうさんつれが あるさか」 二十年を経た今日、彼のその言葉を、私はそっくりその田舎訛のままで思い出す。そうして私 35 は彼のこの正直な一言に、今も無限の友情を見出すのです。ひょっとすると、これが私のうけた 第一の友情ではないかとさえ思われるくらいです。 貴問に対して私は、仮に三四の名を挙げることも出来るでしょう。しかし、その人たちが数え 上げた名のなかには私が無かった時に、彼等は私に対して、果たして、 ゆる しつねん ゆえ 「恕せ、友よ、予は君を失念していたり。予は多くの友を持つが故に」 おぼつか と、そうはっきりと私に言ってくるだろうか。どうも覚束ないような気がするのです。 ある時、私は、ある雑誌社から『吾が交遊録』という題で一文を求められた時、それに答えよ うと思って以上のような文を書いた。しかし、あまりにひねくれた言い分だと人が思いはしない くずかご かと思って、書いたままでそれをまるめて、屑籠のなかへ入れてしまった。 作品と著者名 A=「人形」(小林秀雄著) B=「清兵衛と瓢箪」(志賀直哉著) C=「杯」(森鴎外著) D=「明るい雨空」(鷺沢萠) E=「好き友」(佐藤春夫著) 36 5.実用文とは 実用文とは何 とは何か 実用文というのは、事実や意見やアイデアを実質的に伝えることを目的とした文章です。企画 書や報告書、レポートや卒業論文、説明書やマニュアルも実用文です。クラブの紹介や学園祭の 案内、学校紹介などを載せる文章も実用文です。メールの多くも実用文といえるでしょう。 実用文の目的は、誰かに読んでもらい、理解してもらい、なんらかの行動を起こしてもらうこ とです。 ここで言う「実用文」は、いわゆる「生活作文」とは一線を画するものです。 「生活作文」は、 個々人の中の生活体験から生み出される個別具体的な事柄を表現するものですが、「実用文」は伝 えたい情報を伝えたい相手に分かりやすく「説明」するものです。「説明」の叙述法には、描写的 手法・説明的手法・論証的手法・情意的手法・独白的手法などがあります。 たとえば、国語の授業の中で、俳句の鑑賞文を書くとしましょう。俳句を鑑賞し感じたことを 書くわけですが、 各自が感想を整理し、さらに読みを深めるために鑑賞文を書くことになります。 そのとき、誰に読んでもらうのか、何を伝えたいのかを明確に意識して書くことが、実用文の一 番大切なところです。 日本語の作文技術にはさまざまな手法があり、起承転結と言われたりします。実用文では、起 承承承が基本的な形です。すなわち、一番伝えたい重要な事柄をはじめに書いて、その後は理由 や具体例、論証などが続く形をとるということです。このような形を「コロンボ型」と名づけて います。テレビの推理ドラマに「刑事コロンボ」という番組がありましたが、刑事コロンボのド ラマでは、はじめから犯人らしい人物は視聴者に分かっています。刑事コロンボはドラマの進行 とともに、犯人を追い詰めていきます。それに対して、 「名探偵コナン」などの推理ドラマは最後 の最後まで犯人が誰かわからずにどんでん返しがあります。 実用文は、 「コナン」 型ではなく、「コ ロンボ」型で自分の伝えたいことを明確に表現するようにしましょう。 では、実用文を書く前に、次の文章を読んでもらおう。 課題:次の文章は、「日本経済新聞」のコラムです。これを読んで、筆者の最も言いたいことを 20 字以内で要約しなさい。 リストラ時代の風向きとはいえ、中高年のサラリーマンへの世間の目は冷たい。揶揄・嘲笑も目立つ。 「お じさんたちはみんな頭が固い」という、個の時代にはふざわしくないはなはだ類型的な中年イメージが、そ の根拠になっているようだ。 脳科学の専門家によれば、その根拠は相当に怪しい。外国語を身に付ける脳の柔軟性は、二十代の若者と、 四十代、五十代の部課長との間に差はないという。脳細胞同士のつなぎ目であるシナプスの大規模な整理が 終わる十五歳以降に、ネイティブと同じレベルの会話能力を習得するのは相当に難しいらしい。外国語に関 する限り、十五を過ぎれば頭の固さは老若同程度、痛み分けである。 ゴリラなどの類人猿や人の脳が他のほ乳類に比べて発達している理由を、 「気配り」に求める説もある。 群れの中の他の個体との相互関係、恩を受けたらそれをいつか返すなどいうことに異様に気をつかうのが類 人猿の特徴という。人間関係を滑らかに進めるために、言語というコミュニケーションの手段を手に入れ、 人は急速に進歩した。 中間管理職が経験する人間関係のあやと、摩擦を起こさずそれを処理するノウハウは、まさに大脳進化の 原点といっていい。単なるごますり、お追従ではなければ、それは一種の技かもしれない。気配りを知識や 技能と並ぶ個人的な能力と評価して、中高年の雇用を拡大できないだろうか。 37 6.実用文を 実用文を書いてみよう 6-1.読者と 読者とテーマ はじめに、誰に読んでもらう文章を書くのかを決めることが大切です。 相手を意識することで、 文体や語彙も変わってくるはずです。そして読者のイメージが決まったら、何を伝えたいのか、 何を伝えなければならないのかを決めましょう。それがテーマです。 では、練習してみましょう。 課題:次のビデオは第 60 回学園祭の時、学園祭運営委員が先輩訪問して、学園祭の思い出につ いて語ってもらっているものです。ビデオを見た後、読者とテーマを決めて実用文を書きましょ う。 □ 読者を 読者をイメージしよう イメージしよう これから書く文章の読者をイメージしなさい。個人ですか?集団ですか?それはどんな人(た ち)ですか?書く上で気を付けるべきことはありますか? 読者のイメージ 気を付けるべき点 □ テーマを テーマを決めよう 何を伝えたいのか決めます。伝えたい内容は、主張ですか?お願いですか?報告ですか?謝罪 ですか? 主張・お願い・報告・謝罪・計画・方針・告白・独り言 どんな形で その他( ) 何を伝えたいのか? 38 □ 実用文を 実用文を書いてみよう →横書き 39 40 6-2.構想マップ 構想マップ 構想マップは、あなたの頭の中にある事柄を文章ではなく、絵を描く要領でまとめていくもの です。次の課題にしたがって、構想マップを書く練習をしてみよう。 課題:現在、学校ではペットボトル飲料を販売していません。しかし、ペットボトルが持ち込ま れ、生徒会生活部が中心となって、ラベルやふたを取ってリサイクルできるようにしてか ら業者に回収してもらっています。しかし、ペットボトルの回収にはお金がかかります。 そこで、生活部は、ペットボトルの校内持ち込み問題を解決するために、生徒全員に意見 をもとめました。 「学校へのペットボトル持ち込み」について、あなたの意見を述べる文章 を書きなさい。 * 手順1: 印の中にテーマ(ペットボトル持ち込み)と記入する * 手順2:テーマから連想されることを、その周りに単語や短文で書き、線で結ぶ * 手順3:連想されたことからさらに連想されたことも、同じように書き、線で結ぶ * 手順4:すべてのことが書き出せたと思うまで繰り返す ※ 考え込まないのが秘訣です。途中で詰まったら別の枝に移って連想を続けましょう。 ペットボトルの持ち込み 41 6-3.ノンストップライティング 文章を書くのが苦手な人は、どのように書き始めていいのか分からないという場合が多いよう です。そこで、苦手意識をなくすために、ノンストップライティングに挑戦してみましょう。 ノンストップライティングとは、おしゃべりするように書いていくことです。書き手は少々字 が汚くても構いませんし、漢字で書こうとする必要もありません。では、ノンストップライティ ングの練習をしてみましょう。 課題1:二人一組になって、「ペットボトルの持ち込み」構想マップを見ながら、一人はしゃべる ことに専念し、もう一人はひたすら書き取ることに専念します。できるだけしゃべる人 の邪魔をしないように素早く、忠実に書き取りなさい。時間は 1 分間です。 ( )さんの話 42 課題2:今度は一人でノンストップライティングに挑戦してみましょう。「ペットボトル持ち込 み」構想マップを見ながら、おしゃべりするように書いていきましょう。 おしゃべり 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 43 分類 おしゃべり 分類 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 44 6-4.パラグラフライティング ノンストップライティングで書いたものは構成や脈絡がないので、パラグラフに変換すること が必要です。パラグラフとは段落のことで、パラグラフを成立させる条件は次の2つです。 ① 一つのパラグラフの中では、一つの話題だけについて書く ② 一つのパラグラフを、一つのトピック文とそれを支える一つ以上のサポート文で作る □ ノンストップライティングを ノンストップライティングをパラグラフに パラグラフに変換する 変換する ノンストップライティングの文章を次の手順でパラグラフにしなさい。 * 手順1:ノンストップライティングの文を、内容別に分類して印を付ける * 手順2:分類したものを眺めて、要するに何が言いたいかを考え、トピック文とする * 手順3:トピック文を先頭にして、残りの文をサポート文として書き写す * 手順4:パラグラフを続けて読んで、つながりを調整する ※ 以上の手順をすべてのパラグラフについて行う ※ パラグラフの数を3つ以内とする(できれば1つだけで、後は捨てる) パラグラフ トピック文 つなぎの言葉 サポート文 45 パラグラフ2 トピック文 つなぎの言葉 サポート文 パラグラフ3 トピック文 つなぎの言葉 サポート文 46 □ 構成を 構成をマスターしよう マスターしよう 実用文の基本は、「序論・本論・結論」です。 序論では、何について書こうとしているのか、それは何のために、誰のために書くのか、そし て読むとどんないいことがあるのかを書きます。つまり、読み手が、序論だけを読んで、本論を 読むかどうか決められる情報をすべて出すということです。 結論では、本論で書いたことを一言でまとめます。つまり、時間のない人が本論だけ読まずに、 結論だけ読んだとしても分かるように書きます。また、結論では、本論で書いたこと以外のこと を書いてはいけません。結論では、力強く終わることを意識してください。 3 段落構成 これから何をかくのか 序論 : 予告 何のために書いたのか/誰のために書いたのか これを読むとどんないいことがあるのか 本論 : : 動機 魅力・効用 各論1 まず、いいたいのはこういうことだ。 各論2 次に、いいたいのはこういうことだ。 各論3 最後に、いいたいのはこういうことだ。 以上書いたことを一言でまとめるなら、こういうことだ。 結論 これこそが私がいいたかったことだ。 : 強調 さらに残った点としては、こういうことがある。 47 : 展望 : まとめ □ 序論と 序論と結論を 結論を書いてみよう 下の表をすべて埋める必要はありません。5 段落構成の場合と 3 段落構成の場合で序論や結論 の内容も変わってきます。本論が1つのトピックから成る 3 段落構成の場合、序論と結論を 100 字程度とし、本論を 200 字程度とすると、400 字の文章ができあがります。本論が3つのトピッ クから成る 5 段落構成の場合、序論と結論を 200 字程度とし、本論をそれぞれ 200 字程度とする と、800 字の文章ができあがることになります。 序論 これから何を書くのか 何のために、誰のために書 いたのか これを読むとどんないいこ とがあるのか 結論 まとめるとこういうことだ これこそ私が言いたかった ことだ 残った点、言い足りなかっ た点はこれだ 48 □ 清書してみよう 清書してみよう →横書き 49 50 6-5.ピアレビュー ピアレビューとは、友達に文章を読んでもらってチェックを受けることです。内容の善し悪し や賛否など、感想を聞くものではありません。あくまでも文章が分かりやすく書けているかどう かを判断してもらうものです。 □ □ 判断の 判断の基準は 基準は3つ ① 一貫性 ② 主張の成立 ③ クリアであること 書き込みの仕方 みの仕方( 仕方(コメントは コメントは短く端的に 端的に) ① 漢字の間違い:赤字で囲むだけで、書き直しはあくまでも本人がする ② 主述の不具合:主述と書く ③ 文が長くてわかりにくい:下線をひいて長いと書く ④ 専門用語を解説なしで使っている:赤字で囲んで、解説と書く ⑤ 主張を成立させる根拠やデータが不足している:根拠・データと書く ⑥ 主張が一方的な場合:公平か?と書く ⑦ 具体的な例がほしい場合:具体例と書く ⑧ 論理が飛躍している場合:どうして?と書く ピア・ ピア・レビューを レビューを行う上での評価 での評価の 評価の観点 【主張の一貫性】 言いたいことが首尾一貫している 書き手の立場が明確である 【主張の成立】 主張の根拠が書かれている データや事実が書かれている 【明瞭さ】 一文では一つのことしか書かない 主語と述語が対応した文章になっている 【構成】 段落で構成されている(序論、本論、結論という構成を守っている) 何のために、あるいは誰のために書いたのか動機が明瞭である 結論に新たな内容が盛り込まれていない 1 パラグラフに 1 トピックを守っている 【内容】 借り物の主張ではなく、自分の主張が表現できている 書かれている対象への理解が十分に感じ取れる 51 □ 自己評価 ピアレビューの感想をまとめておこう 52 7.プレゼンテーションの プレゼンテーションの基本を 基本を知ろう □ プレゼンの プレゼンの基本 1枚 ・1ネ タ コントラス トを は っきりと フォントもは っき りゴ シ ックで □ 次のプレゼンを プレゼンを比較してみよう 比較してみよう Aの場合 テーマ設定に至るまで 三つの視点と三つの論 法隆寺創建の理由は何か? という疑惑の浮上 ①梅原猛先生説 ①梅原猛先生説 ②歴史家説 ←先生からの助言 「法隆寺は聖徳太子一族の 怨霊を鎮魂・封印するための寺」 ③法隆寺の意見 いくつかの視点から調べてみよう ②歴史家説 ③法隆寺の意見 「豪族が自分の権力を 象徴するため」 「仏教を広めることで 平和な社会を実現する」 梅原猛先生論の根拠① 中門の真ん中に柱がある ↓ 「仏様が出入りする門」だと考えると 「中に居る霊を外に出さないための 通せん坊」ではないか B の場合 □一般的に 一般的に言われる『 われる『法隆寺の 法隆寺の七不思議』 七不思議』 ①法隆寺には蜘蛛が巣を作らない ②南大門の前に『鯛石(たいいし)』と言われる大き な石がある ③五重塔の上に鎌が刺さっている ④不思議な伏蔵がある ⑤法隆寺の蛙には片目がない ⑥夢殿の礼盤(らいばん)の下に汗をかいている ⑦雨だれが穴をあけるべき地面に穴があかない あなたは聖徳太子、 あるいは法隆寺を どんなものだと思っていますか? □『隠された十字架』とは? 著者;梅原猛さん 歴史学上では「仏教を広めるため」「聖徳太 子を讃えるため」に建てられたとされてきた法 隆寺 ⇔作者は「太子一族の 太子一族の怨念を 怨念を鎮めるた め」に建てられたという仮説を建てた ※作者は「法隆寺再建論」を唱えている 642年 皇極天皇即位(執政は蘇我入鹿) 643年 蘇我入鹿により、山背大兄皇子と太子 一族が殺される 645年 中大兄皇子と中臣鎌足により、 蘇我蝦夷と蘇我入鹿が殺害される ――大化の改新の始まり 軽皇子即位、孝徳天皇となる 53 □法隆寺に関わる歴史的な出来事 574年 厩戸皇子(うまやどのおうじ)誕生 576年 太子の握り締めた手の中から、仏舎利が出 てくる・・・・太子が二歳のとき (592年 推古天皇(太子の叔母)即位) 593年 太子摂政となる (607年 法隆寺建立される) 622年 斑鳩宮にて太子逝去 628年 推古天皇崩御 643年 蘇我入鹿により、山背大兄皇子と太子一族 □梅原さんが注目する 歴史的出来事 ①山背大兄皇子殺害について ②蘇我入鹿・蝦夷の殺害について ③法隆寺の再建について ④藤原氏の一族が、何か悪いことがある 度に法隆寺に寄付を行った点 □ 情報の 情報の出し方 説明の基本 全体から部分へ順序よく 「コロンボ」型を基本として、重要な事柄を先に話すようにしましょう。何が言いたいのかを 明確にすることです。聞いていて話しては何が言いたいのだろうと思うことがあります。そうな らないように気をつけましょう。 音声は消えていきますが、スクリーン上の文字は消えません。重要な事柄は文字で視覚にも訴 えかけることです。最近のテレビでは、出演者の話し言葉が文字化されてテロップのように流れ る仕掛けが使われています。これは視聴者へ訴えかける効果をねらったものだと思われます。効 果的な手法はまねて使ってみましょう。 また、音声は消えていくものなので、重要な事柄は繰り返すこともたいせつです。 □ 音声表現と 音声表現と文章表現 人前でのプレゼンは、誰しも緊張するものです。人によっては大勢の聴衆があるほど、気分が よいという人もいるかもしれません。得意な人も苦手と感じている人も、プレゼンは準備を周到 に行って、場数を踏めば必ず上手になります。 プレゼンの準備として大切なことは何でしょうか。 スクリーンにスライドや映像を映しながら音声によって他者に伝えるという行為には、音声表 現力と文章表現力の両方の能力が必要です。 まず、実用文で実践したように、実用文では読者とテーマが重要でしたが、プレゼンでは聴衆 とテーマを想定することが必要です。話すこと・書くことは相手意識が重要でした。もう一度確 認しておきましょう。 次に、伝えたい内容を簡潔に要約することです。その内容によって情報の出し方を工夫しまし ょう。言いたいことが明確に伝えるためには、演出も時に必要かも知れません。 そうしてプレゼンで最も大事なことは、「見せる」ことです。百聞は一見にしかずという言葉が あるように、視覚に訴えかけることが聴衆をひきつける重要な要素です。プレゼンの上手といわ れる人たちは、この「見せる」という要素で、プレゼンを構成しているとも言われています。 プレゼンは時間設定があるはずです。20 分間のプレゼンの場合、私たちは何文字くらい話して いるのでしたか。発表原稿を読んでプレゼンするのは感心しません。しかし、発表原稿は一度は 作ってみましょう。発表原稿は自分のプレゼンの内容を自分自身が把握するためでもあり、さら に内容を深めていくきっかけにもなります。 54 8.学校紹介しよう 学校紹介しよう 課題:2 分間で「学校紹介」のプレゼンテーションをしなさい。 * 手順1:学校紹介する相手と場面を設定する * 手順2:学校紹介のテーマを設定する * 手順3:実用文の書き方にそって自分の伝えたい事柄をまとめる * 手順4:パワーポイントを使ってスライドを制作する * 手順5:スライドに合わせた発表原稿を作る * 手順6:リハーサルをする * 手順7:評価の観点を確認し、プレゼンする ※ 2 分間で話せる内容には限りがあるので、学校のどの部分をプレゼンするかを十分 に考えて、プレゼンの基本で学んだことを生かす。 □ プレゼンテーションの プレゼンテーションの評価 以下の 4 つの観点で採点します。点数は最高で 5 点です。 ・ 計時 1 分 45 秒~2 分 15 秒以内=+1 1 分 30 秒~1 分 45 秒=-1 2 分 15 秒~2 分 30 秒=-1 これ以外=-2 ・ 音声表現(音量・スピード・間・視線) 聞き手を意識している=+1 聞き手を意識しているとは思えない=-1 ・ 構成 全体から部分へ順序よく=+1 聞き手をひきつける工夫=+1 まとまりがない=-1 ・ 総合 聞き手へのアピール度が高い=+1 発表の意欲が感じられない=-1 55 □ プレゼンテーションの プレゼンテーションの評価表 順番 発表者 1 発表の状況設定 計時 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 56 音声表現 構成 総合 合計 順番 発表者 21 発表の状況設定 計時 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 57 音声表現 構成 総合 合計 □ 学校紹介プレゼン 学校紹介プレゼンを プレゼンを終えて 気づいたこと 自分にとっての今度の課題 58 おわりに □ 次の項目について 項目について、 について、学習が 学習が定着しているかどうかを 定着しているかどうかを自己診断 しているかどうかを自己診断してみよう 自己診断してみよう。 してみよう。 A:万全(誰にでも説明できる段階) B:ほぼ万全(他人には説明できないが自分では理解している段階) C:少し不安(完全に理解しているとは言いがたい段階) D:不安(ほとんど学んだことが残っていない段階) 1 学習内容チェックリスト 1 分間に話す文字数は? 2 内容がわかる読みとは? 3 小学生の読みとプロの読みの違いは? 4 ポーズの働きとは? 5 早口言葉をとりるわけとは? 6 実用文とはどのような文章のことか? 7 ノンストップライティングとは? 8 パラグラフライティングとは? 9 プレゼンテーションの基本事項とは? 10 音声表現と文章表現の特質とは? A 59 B C D 参考文献一覧 杉藤美代子『声にだして読もう!-朗読を科学する-』(明治書院) 荒木晶子・向後千春・筒井陽一『自己表現力の教室』(情報センター出版局) 杉藤美代子監修「声の曼荼羅」(放送大学教育振興会) 佐藤春夫『退屈読本 齋藤 上』(冨山房百科文庫) 孝『理想の国語教科書』(文藝春秋社) 石原千秋『評論入門のための高校入試国語』(NHK ブックス) 川本信幹『21 世紀を生きぬく日本語力』(明治書院) 鷺沢 萠『海の鳥・空の魚』(角川文庫) 奈良県国語教育実践研究会編『課題条件法による作文指導 木村 中学校編』(明治図書) 泉『ワープロ作文技術』(岩波新書) 高橋明男『仕事文の書き方』(岩波新書) 藤沢晃治『「分かりやすい表現」の技術』(講談社ブルーバックス) 諏訪邦夫『発表の技法』(講談社ブルーバックス) 山田恒夫・足立隆弘・ATR 人間情報通信研究所『英語スピーキング科学的上達法』 (講談社ブルーバックス) 清水 誠『データ分析 はじめの一歩』(講談社ブルーバックス) 国語教育研究所編『国語教育研究大辞典』(明治図書) 国語教育研究所編『「作文技術」指導大事典』(明治図書) 60 注意 本テキストは、奈良女子大学附属中等教育学校の校長裁量経費により制作したものです。 なお、本テキスト内のデータ等は、教育研究のためのものとして掲載しています。著作権等の 許諾を受けていないものがありますので、販売目的等での使用ではできません。(非売品) 2007 年度 第3学年 国語総合 「表現」 表現」テキスト (非売品) 非売品) 2007 年4月1日発行 発行者 奈良女子大学附属中等教育学校 国語科 〒630-8305 奈良市東紀寺町1丁目 60 番1号 TEL 0742-26-2571 FAX 0742-20-3660 http://www.nara-wu.ac.jp/fuchuko/ 編集責任者 吉田 印刷 育萌社 隆 [email protected] 奈良市田中町 345-7 TEL 0742-61-4768 61
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