画像処理による生け花の特徴抽出 発表者 野尻 倫未 指導教員 奥本 幸 1.はじめに 3.特徴抽出のための前処理アルゴリズム 生け花に関するエディタの研究として、スケッチ ベースのモデリングシステムの開発がある1)。しか し、このエディタはユーザーの生け花センスが問わ れるものであり、初心者には使いづらい。 そこで本研究では、初心者の生け花画像と熟練者 の手直し画像の比較を行い、画像処理を用いて生け 花特徴を自動的に抽出する方法を検討する。抽出結 果を利用して将来的には、初心者の生け花を支援す るツールを開発することが可能である。 生け花特徴を抽出するために、生け花画像へ前処 理を施す。以下にその手順を示す。 (1)メディアンフィルタをかけて画像の微小なノイ ズを減らす。 (2)RGB 形式から HSV 形式に変換する。 (3)同系色のかたまりを抽出する。 図2に同系色のかたまりを抽出した結果を示す。 ①同系色のラベリング 任意の点の8近傍において、2点の HSV 値の差 が許容範囲(|H|<15、|S|<50、|V|<50)内なら同 じラベルを貼る。 ②同系ラベルの結合 任意のラベルにおいて①と同様な処理を行う。 (4)花・葉などの意味付けを行う。 ラベルの平均色情報をもとに、花や葉などの意味 付けを行う。意味付けの種類は、プログラム固定 とする。表 1 に手順1、2の結果を示す。 手順1:色のみの判定 ラベルの色情報だけを見て、どの意味にあたる かを判定する。 手順2:意味に応じた再割り当てによる判定 再割り当て条件に一致した場合、手順1での意 味付けとは別の意味付けを行う。 2.生け花特徴 生け花のよしあしを表す特徴として、次の4つを 仮定する。以下には横幅を求める式を示す。 (1)生け花の高さと幅 花器の横 × 100 花器を除いた外接枠の横 (2)花のかたまり位置 花器の口の中心からかたまりまでの横 × 100 花器の口の中心からかたまりまでの縦 (3)色の割合 かたまりの画素数 × 100 全体の画素数 (4)生け花の重心 色つき画素数の総和 100 × 色数 花器を除いた外接枠の横 ① ② これらの情報を算出するために必要な情報を以下 に示す。 X:花器の横 Y:花器の縦 X’:花器を除く外接枠の横 Y’:花器を除く外接枠の縦 O:花器の口の中心 Xo:外接枠の横 Yo:外接枠の縦 X”:O からかたまりの 中心までの横 Y”:O からかたまりの 中心までの縦 図2:かたまり抽出結果 表1:意味付け結果の例 手順1 での意味 赤い花 黄色の花 図1:必要情報 再割り当て条件 面積が狭い(40 画素以下) 周囲にピンク色が多い (500 画素以上) ⇒ ピンク中の雑音 同じ色で囲まれている (500 画素以上) ⇒ 花の一部 手順2 での意味 ピンクの花 黄色の領域 を囲んでい る色の花 4.2 システムの評価 4.結果と考察 4.1 生け花特徴の評価 図3に訓練データの初心者の生け花である元画像 1(a)とそれを熟練者が手直しした手直し画像(b)を 示す。(a)を見た熟練者の評価と、画像処理による特 徴抽出値を比較し、生け花特徴が妥当であるかを考 察する。 特徴抽出値を表2に示す。 図3(a)に対する熟練者の評価を次にあげる。 ・花が多く不安定 ・縦の線に対して横の線が少ない ・ベージュの花の役割が少ない 表2の特徴(2)より、元画像1からはベージュの花 のかたまりを検出することができなかったが、手直 し画像はかたまりを検出している。また、表2の特 徴(3)より、手直し画像からはベージュの割合も検出 している。よって手直し画像は元画像1よりもベー ジュの花を主張できていることがわかる。 表2の特徴(4)より、元画像1の重心のy値は、x 値の 2.8 倍であるが、手直し画像は 1.7 倍となって いる。また、表2の特徴(1)より、手直し画像のy値 は元画像の約半分である。このことから、手直し画 像は元画像1よりも横の成分が増え、全体的バラン スが安定していることがわかる。 以上の結果より、本研究で抽出する特徴は、生け 花特徴を表していることが確認できた。 図3(c)にテストデータの初心者の生け花を示す。 これを用いて、作成システムが初心者の問題点を導 き出すことができるかを試験する。表3に(c)の特徴 抽出値の結果を示す。システムは次の2点を問題点 としてあげている。 (1)特徴2より、ピンクの花と黄色の花は、花器の 中心よりも左寄り、かつ高さも近いため、左側 に偏っている。 (2)特徴3より、ピンク、黄、赤とも色の割合が似 ており、どの部分を強調したいのかが不明確で ある。 図3(c)に対する熟練者の評価は次の通りである。 (1)横の流れがない。 (2)ポイントとなるピンクの花と黄色の花の位置 が近く、ポイントに視点をおけない。 初心者の問題点(1)は、熟練者の評価の(1)、(2) のどちらにも当てはまり、特徴値から問題点を導き 出すことができている。 5.おわりに 本研究では、画像処理により抽出可能な生け花特 徴として、生け花の高さと幅、花のかたまり位置、 色の割合、生け花の重心の4つを仮定した。訓練デ ータを用いた実験の結果、仮定した特徴の妥当性を 確認することができた。また、テストデータを用い たシステムの評価実験の結果、システムは、初心者 の問題点を導き出すことができた。 今回、訓練データ 3 組、テストデータ 4 組という 少ないデータでの実験であったため、実験結果の精 度は高くない。今後、実験データ数を増やし、有効 な特徴を増やしたい。さらにこの結果を利用した、 生け花初心者のためのツールを開発する予定である。 参考文献 (a)元画像1 (b)手直し画像 (c)元画像2 図3:生け花画像の例 1)スケッチベースの植物のモデリングシステム 井尻 敬 http://www.interaction-ipsj.org/archives/paper2004/pd f2004/B34.pdf 表2:画像処理による特徴抽出値の例1 [%] 特徴 かたまり名 元画像1 x (1) (2) y 表3:画像処理による特徴抽出値の例2[%] 手直し画像 x y 631.4 455.7 588.1 264.4 青い花1 -5.4 -11.9 -15.6 -17.2 青い花 2 22.2 -8.9 -18.7 (3) 花 (3) 1.58 白 1.50 0.87 ベージュ (4) 29.9 82.3 43.8 73.6 かたまり名 (1) (2) -2.9 ベージュの 特徴 (4) 元画像2 x y 239.2 143.9 ピンクの花1 -1.7 -34.8 黄色の花1 -54.8 -40.5 ピンク 1.82 黄 赤 1.95 1.35 51.4 67.1
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