フィードバック制御 (FF), フィードバック制御 (FB) の特徴の違いについて F3102069 佐藤 康明 2005 年 04 月 28 日 いま,G を与えられた設計用モデルとして,CF ,CB をこれから設計しようとしている制 御則としよう.ここでは簡単のため,G は単なる正の定数とする (実質的には静的システ ム), このとき, 図 1, 図 2 に示すような 2 つの制御系を考えてみる. 図 1 (FF) フィードフォワード制御 CB u G 図 2 (FB) フィードバック制御 図中,(FF) はフィードフォワード制御系,(FB) はフィードバック制御系の構造になって いる. ここで,r は目標値,u は入力,y は出力,n は観測雑音とする.また,e は制御誤 差,d を外乱とする. 1 1.目標値追従性 目標値追従性について検討してみる.目標値追従性とはどの程度出力を目標値に一致さ せることが出来るかを調べる.目標値=出力となるのが理想的である.まず,図 1, 図 2 で d = 0,n = 0 として (FF),(FB) における r と y の関係を求めてみる. 図 1 より (FF) については u = CF r (1) y = Gu (2) 式 (2) に式 (1) を代入して u を消去すると y = GCF r となる.この式 (3) を y = r の式にするためには CF に (3) 1 G を代入すればよい 1 ×r G y=r y =G× となる.ただし G は既知とする.同じようにして,図 2 の (FB) についても考えてみると e=r−y (4) となる,e は制御誤差なので目標値より出力を引いた値となる. u = CB e (5) y = Gu (6) u = CB (r − y) (7) となり,式 (5) に式 (4) を代入し 式 (6) に式 (7) を代入して y について整理すると y = GCB (r − y) = GCB r − GCB y (1 + GCB )y = GCB r GCB r y= (1 + GCB ) r = 1 GCB + 1 2 (8) となる.この式 (8) を y = r の式にするためには CB に ∞ を代入すればよい y= r +1 1 G∞ r 1 y=r = (9) となる.ただし G は既知とする.このように (FF)(FB) とも C に適切な値を入れてやれ ば,理想的な状態 (d = 0, n = 0, G が既知) における目標値追従性特性に関しては,フィー ドフォワード制御とフィードバック制御は同等の能力を持っていることがいえる. 2.外乱除去 次に,(FF),(FB) において外乱 d がどの程度出力 y へ影響するかをみてみよう.理想 的には,外乱の影響は全く出力に現れないことが望ましいことはいうまでもない. 外乱除去を調べるために今度は r = 0,n = 0 として,d と y との関係を求めてみる. (FF) について u = CF r y = Gu + d y = GCF r + d (10) y=d (11) ここで r = 0 を式 (10) に代入する. 式 (12) をみてみると,フィードフォワード制御では制御則 (式に CF が入っていないた め) によって外乱を積極的に除去する機能を持ち得ないことがわかる. 次に (FB) について e=r−y u = CB e y = Gu + d y = GCB (r − y) + d この式 (12) を y についてまとめると y = GCB r − GCB y + d 3 (12) GCB r + d (1 + GCB ) = (13) となりここでは r = 0 と考えるので式 (13) は d (1 + GCB ) y= (14) 式 (14) には,CB が入っているので CB = inf ty と代入すると 1 d 1+∞ =0 y= (15) となり,フィードバック制御では外乱の出力への影響を取り除くことができることがわか る.したがって外乱除去に関しては,フィードフォワード制御よりもフィードバック制御 のほうが有利である. 3.特性変動 さて 1 項では,G が既知の場合には,目標値追従性に関してはフィードフォワード制御 でもフィードバック制御でも同等の特性が得られることをみた.しかしながら,一般に G を正確に知ることは困難であり,何らかの誤差が含まれていることがある. 図 3 (FF)’ フィードフォワード制御 CB u G' 図 4 (FB)’ フィードバック制御 4 そこでこのような状況を考慮して,実際の制御対象を図 3, 図 4 の様に G0 = (1 + δ) (16) で表現しておく,ここに G は設計用モデルであり既知として,δ は何らかのモデル誤差と する (設計用モデルが厳密に正確な場合には δ = 0). このとき,1 項では (FF),(FB) それぞれに対して 1 (FF) CF = G (FB) CB = ∞ という制御則を考え,G0 = G(d = 0, n = 0) ならば (FF) y = G0 CF r 1 =G =r G (FB) G0 CB r 1 + G0 CB 1 = r= 1 (G0 CB ) + 1 (17) y= 1 ∞ 1 +1 (18) が達成できるということであった.ところがいまは,G0 = (1 + δ)G としたので,この場 合,式 (17),(18) は次のようになる. (FF)0 y = G0 CF r = (1 + δ)G 1 r G = (1 + δ)r (FB)0 (19) G0 CB r 1 + G0 CB (1 + δ)GCB = 1 + (1 + δ)GCB 1 = r 1 (1+δ)GCB + 1 y= = 1 r +1 1 (∞) (20) 式 (20) は,フィードバック制御においては CB を大きくすることによって設計用モデル のモデル化誤差・制御対象の特性変動の入出力関係への影響を小さくできることを示して 5 いる.一方で式 (19) は,フィードフォワード制御においては,そのような誤差・変動な どが存在すると,目標値追従性は悪化することを示している.このように,モデル化誤差 や特性変動がある場合にもフィードフォワード制御よりもフィードバック制御を行うほう が有利である. 4.観測雑音 それでは,観測雑音の影響についてはどうであろうか?このことを調べるためには,図 1, 1で d = 0, r = 0 とおき,n から y までの関係を求めてみればよい. 実際, 求めてみると 図よりフィードフォワード制御は (FF) y = GCF r = 0(観測しないので明らかに影響は無い) (21) となり, フィードバック制御は e = r − (y + n) u = CB e y = Gu y = GCB r − (y + n) (1 + GCB )y = GCB (r − n) GCB (r − n) y= 1 + GCB GCB =− n 1 + GCB (22) となる. したがって, フィードバック制御系において観測雑音の影響を小さくしようとす ると CB = 0 とすればよいことがわかる. ところが, 目標値追従性を考慮すると CB = ∞ が望ましいというのが 1 項の結果であった. そこで,CB = ∞ としてみると (FB) y=− =− 1 1 GCB 1 ∞ +1 n 1 n = −n +1 (23) となる. すなわち, フィードバック制御系では, 観測雑音がそのまま y に表れることになる. 6 まとめ 最後にフィードフォワード制御とフィードバック制御の長所と短所を以下の表にまと める. フィードフォワード制御 目標値追従性 外乱除去 特性変動 観測雑音 ○ × × ○ フィードバック制御 ○ ○ ○ 表中, ○は”性能がよい”, ×は”性能が悪い”を表しているものとする. × 一般的に観測雑音は小さいことが多いので, 全体的にみるとフィードバック制御のほう が有利になっているといえる. 7
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