From Independent Valuation to Customized Solutions PLUTUS+ MEMBER’S REPORT No.81 国際評価基準審議会(IVSC)の取り組みについて November 30, 2016 株式会社プルータス・コンサルティング 植田 渉 1. はじめに ~IVS とは IVS とは不動産を含む資産の評価についての国際評価基準をいい、IVS は International Valuation Standards の略語である。IVS は資産評価の国際的基準として、国際評価基準審議 会(International Valuation Standards Council:IVSC)によって策定・提案されており、どこの国 であっても共通に理解され、信頼され、適用されるべき評価基準であり、細目を偏重せず 基本ルールを定めて実務的な運用を行うべしとする原則主義に立って策定・提案されてい る。 ここでは IVS を策定・提案している IVSC の取り組み状況について紹介したい。 2. 「国際評価基準審議会(IVSC)の )の活動目的と組織概要 「国際評価基準審議会( )の活動目的と組織概要」の 活動目的と組織概要」の紹介 」の紹介 「国際評価基準審議会(IVSC)の活動目的と組織概要」は IVSC の評議員である山田辰 己氏により発表されている1。ここではその内容について簡単に紹介し、詳細については「会 計・監査ジャーナル No.716 MAR. 2015」を参照されたい。 2.1 IVSC の目的 IVSC は 1981 年にプライベートセクターの非営利組織として設立され、その目的は下記 のとおりである。 ①高品質の国際基準を開発し、その採用及び利用を支援すること ②IVSC のメンバー(会員)となっている組織間の連携と協調を促進すること ③その他の国際組織との連携及び協調を図ること ④評価専門職業に関する国際的な見解を示すことによって役立つこと 2.2 IVSC のメンバー(会員) のメンバー(会員) IVSC のメンバー(会員)は、下記のような 6 つの異なるカテゴリーから構成されている。 ①評価職業組織(日本からは日本不動産鑑定士協会連合会が加入している) 1 会計・監査ジャーナル No.716 MAR. 2015 P105~107 参照 ©2015 PLUTUS CONSULTING, Ltd. All Rights Reserved. 1/6 From Independent Valuation to Customized Solutions ②暫定的な評価職業組織 ③法人メンバー(日本からは 1 社が加入している) ④クライアント・メンバー ⑤機関メンバー ⑥アカデミックメンバー 2.3 IVSC の主要組織 2015 年 3 月時点において IVSC の活動の中心は、IVS を設定する国際評価基準理事会 (International Valuation Standards Board:IVSB)と資産等の評価を行う職業専門家の教育育成な どを行う国際評価専門職業理事会(International Valuation Professional Board:IVPB)の 2 つであ る。 2.4 IVS IVSB が設定する IVS は、下記の 5 つの種類から形成されている。 ①IVS フレームワーク ②IVS 一般基準 ③IVS 資産等別基準 ④IVS 評価適用指針 ⑤テクニカル情報資料 3. 「国際評価基準審議会(IVSC)の組織改革の提言について」の紹介 )の組織改革の提言について」の紹介 「国際評価基準審議会( 「国際評価基準審議会(IVSC)の組織改革の提言について」は IVSC の評議員である山 田辰己氏により発表されている2。ここではその内容について簡単に紹介し、詳細について は「会計・監査ジャーナル No.721 AUG. 2015」を参照されたい。 3.1 レビュー・グループからの報告書 IVSC が臨時に組成したレビュー・グループによる IVSC の組織改革に関する提言を含ん だ報告書が 2015 年 4 月に公表された。これを受けて、IVSC の評議員会は、この報告書の 提案に対するコメントを求めて、2015 年 5 月にエンゲージメント・ペーパーを公表した。 報告書の構成は下記のとおりである。 1.1 背景 1.2 見直しプロセス 1.3 重要なコメント及び提言 1.3.1 全体的評価(提言 1 及び 2) 1.3.2 基準の目的と品質(提言 3 から 5) 2 会計・監査ジャーナル No.721 AUG. 2015 P83~87 参照 ©2015 PLUTUS CONSULTING, Ltd. All Rights Reserved. 2/6 From Independent Valuation to Customized Solutions 1.3.3 基準及びガイダンスの設定プロセス(提言 6 及び 7) 1.3.4 評議員会(提言 8) 1.3.5 国際評価基準理事会(IVSB)(提言 9 及び 10) 1.3.6 国際評価専門職業理事会(IVPB)及びアドバイザリー・フォーラム(提言 11 及び 12) 1.3.7 スタッフ(提言 13 及び 14) 1.3.8 メンバーシップ(提言 15) 1.3.9 移行審議会(Transition Council)(提言 16) 1.4 提言のまとめ 付録 1 IVSC レビュー・グループ・メンバーの略歴 付録 2 レビューした資料の閲覧 付録 3 レビューのプロセス 付録 4 インタビューでの質問事項 3.2 「1.3.1 全体的評価(提言 1 及び 2) )」 報告書では IVSC の評議委員会に対して、組織の構造及びスタッフの能力を強化し、戦略 的方向性を決定するために、直ちに行動すべき優先事項として下記の事項を指摘している。 ①主要な利害関係者からの IVSC に対する信認の改善を図ること ②IVS の質の改善を行うこと 3.3 「1.3.2 基準の目的と品質(提言 3 から 5) )」 現在の IVS は、どのような目的でも使えるように作られているため、定義が広すぎる結 果となっており、市場において広く受け入れられていない。このため、報告書では IVS の 大きく改善するための現行基準の見直しを行うことを提言し、さらに IVS の構造として強 制力のある基準と強制力のないガイダンスとを明確に区別できるように変更を行うべきこ とも推奨している。 3.4 「1.3.3 基準及びガイダンスの設定プロセス(提言 6 及び 7) )」 現在の付属定款やデュー・プロセスは、効率的な基準設定プロセスとなっておらず、評 価専門家やその他の利害関係者のニーズに合う基準の設定がなされていない。このため、 報告書では下記の事項を推奨している。 ①IVS の中に、基準設定プロセスでの議論の状況を示す「結論の根拠(basis for conclusions) を設けること ②利害関係者が、新基準の提案に対して検討して意見を述べることができるよう十分な 時間を取ること ③新基準の適用後レビューを実施すること ©2015 PLUTUS CONSULTING, Ltd. All Rights Reserved. 3/6 From Independent Valuation to Customized Solutions ④基準のドラフトを作成できる専門性を持った専門家から構成される常設のワーキン グ・グループを組成すること 3.5 「1.3.5 国際評価基準理事会(IVSB)(提言 (提言 9 及び 10) )」 国際評価基準理事会 IVSB は IVS の新設・改訂を行う、いわば IVSC の活動の中心組織であり、報告書では下 記のような点について評議委員会が検討すべきだと推奨している。 ①IVSB のメンバーを削減するとともに、メンバー構成も学者、企業、基準設定経験のあ る者などにも広げる。 ②IVSB は、不動産及び無形資産、企業評価並びに金融商品の 3 つの分野を担当するワー キング・グループをその下部組織として組成する。 ③IVSB のメンバーの資格要件を改訂する。 ④ワーキング・グループのメンバーの選任プロセス及び資格要件を明確化する。 3.6 「1.3.6 国際評価専門職業理事会(IVPB)及びアドバイザリー・フォーラム(提言 及びアドバイザリー・フォーラム(提言 11 及び 国際評価専門職業理事会 12) )」 IVPB の主要な任務は、鑑定人(valuers)の教育、訓練、そして資格認定に関する各国の 動向のモニタリングを行うことであり、それらを通じて、評価専門職業組織(Valuation Professional Organizations : VPOs)を含めた利害関係者が集まり意見交換を行う場として機能 することが期待されているが、その機能は効率的に発揮されているとは言えない状況であ る。このため、報告書では現在進行中のプロジェクトを完成させた後は、IVPB を廃止し、 これに代えて VPOs 自身がフォーラムを創設し、IVSC にはそのまとめ役(facilitator)とし て機能すべきことを推奨している。 3.7 「1.3.8 メンバーシップ(提言 15) )」 IVSC は主として大手会計事務所をはじめとするスポンサー企業からの資金的支援に頼っ ているため、報告書ではこのような収益構造の改善の可能性をレビューすることを IVSC に 助言している。 3.9 「1.3.9 移行審議会(Transition Council)(提言 )(提言 16) )」 移行審議会( 報告書では上述した短期及び中期の活動計画が確実に実行されるように評議委員会及び レビュー・グループから選ばれたメンバーによって移行審議会を組織することを推奨して いる。 4. 「ANNUAL REPORT 2015-16」 」の IVSC の現在の組織体制の紹介 IVSC のホームページ上に「ANNUAL REPORT 2015-16」が公開されている3。ここでは現 3 https://www.ivsc.org/files/file/view/id/758 2016 年 11 月 30 日閲覧 ©2015 PLUTUS CONSULTING, Ltd. All Rights Reserved. 4/6 From Independent Valuation to Customized Solutions 在の IVSC の組織体制について簡単に紹介し、その詳細については「ANNUAL REPORT 2015-16」を参照されたい。 現在の IVSC の組織体制は下記のとおりである。 Trustees (評議委員会) Standards Review Board (基準レビュー理事会) Board Chairman (議長) Tangible Assets (有形資産理事会) Business Valuation (企業評価理事会) Financial Instruction (金融商品理事会) CEO 最高運営責任者 Advisory Forum on Tangible Assets (有形資産アドバイザ リー・フォーラム) Advisory Forum on Business Valuation (企業評価アドバイザ リー・フォーラム) Advisory Forum on Financial Instruction (金融商品アドバイザ リー・フォーラム) その他下部組織 Membership & Standards Recognition Board (会員及び基準認識理事会) VPO Advisory Forum (評価専門職業組織アドバイザリー・フォーラム) 5. 「IVS 2017」 」の紹介 IVSC のホームページ上に 2016 年 6 月 3 日付で「IVS 2017」ドラフト版が公開されている 4。ここではその構成について簡単に紹介し、その詳細については「IVS 2017」ドラフト版 を参照されたい。 「IVS 2017」ドラフト版の構成は下記のとおりである。 IVS 2017 はじめに及びフレームワーク IVS 101 業務の適用範囲 IVS 102 業務の実施 IVS 103 報告 IVS 104 価値の基礎 IVS 105 評価のアプローチと方法 IVS 200 事業と事業権益 IVS 210 無形資産 IVS 300 機械設備・装置器具 IVS 400 不動産権益 IVS 410 不動産の開発 IVS 500 金融商品 6. 最後に M&A 等の取引目的による評価ニーズのみならず会計目的からの評価ニーズ等、評価を必 要とする場面が飛躍的に増えており、信頼性のある評価実務の発展が望まれる時代に来て 4 https://www.ivsc.org/files/file/view/id/677 2016 年 11 月 30 日閲覧 ©2015 PLUTUS CONSULTING, Ltd. All Rights Reserved. 5/6 From Independent Valuation to Customized Solutions いる。それ故、国際的な評価基準の確立が望まれているのであり、本稿を通じて IVSC の取 り組みについて注視して頂ければ、幸甚である。 以上 ©2015 PLUTUS CONSULTING, Ltd. All Rights Reserved. 6/6
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