ファシリティマネジメント

理想的な本社オフィスをつくることで
FMの有効性を全社に伝えていきたい
全国に2000カ所近い支社や営業所を持つ日本生命
では、
これまでオフィスの管理は、
あくまで
「不動産」
の運用という視点で行われることが多く、デザイン
やレイアウトの改善を含めたきめ細かいオフィス
戦略を進めるまでには至らなかったそうです。しか
しオフィスの有効活用が急務となってきた現在、
「戦
略的なオフィス(ファシリティ)づくりの重要性」を
全社的に浸透させていく必要性が生じてきました。
そのため、
池田さんたちファシリティマネジャーは、
来年10月に完成する「東京駅」駅前の新本社ビルに
おいて、ユニバーサルレイアウトを中心にした理想
的なワークプレイスをつくることで、オフィス戦略
の意義を示そうとしているのです。
池田宜之氏
日本生命保険相互会社
不動産部 担当課長
新本社ビル外観イメージ
▼「FM特集/日本のファシリティマネジャー」
下記バックナンバーはhttp://www.websanko.comからアクセスしてください。
03年07月号 経営トップからの指示を待つのではなく、
事前に戦略を立て行動できるファシリティマネジャーに
ソニー株式会社 ソニーファシリティマネジメント株式会社 コクヨオフィスシステム株式会社
03年05月号 「公認ファシリティマネジャー」
の資格は、
オフィスという共通用語を持つ仲間の証明です。
東京海上あんしん生命保険株式会社
(加藤利江氏)
03年03月号 ファシリティマネージャーになってよかったのは
会社の枠をこえた広い人脈を得られたことです。
エーザイ株式会社
(志牟田 章氏)
02年11月号 オランダ、
イギリスの先進的なオフィスづくりとサービス
富士ゼロックスゼネラルビジネス株式会社
(熊谷比斗史氏)
02年09月号 経営戦略の中でFMを推進できる組織に変わることが日本企業の課題
株式会社松岡総合研究所
02年07月号 コミュニケーションの促進はオフィスのモチベーションを高める武器
株式会社リンクアンドモチベーション
02年05月号 郵政事業庁がすすめる先進的なマネジメント手法
総務省郵政事業庁
02年03月号 欧米の進んだFM事情から学ぶ"文化の香りのするFM'erになろう"
有限会社グローバルFM集団
02年01月号 FM業務支援サービスをオフィス移転プロジェクトに活用する。
三幸エステート株式会社
01年11月号 組織統合に伴い誕生した新スタイルオフィスのケーススタディ
株式会社アイ・ティ・フロンティア
01年09月号 日本におけるFMの先進企業に見るオフィス戦略のケーススタディ
日本アイ・ビー・エム株式会社
01年07月号 自分流のワークスタイルを実現する新しいオフィスの方向性を追求
ソニー株式会社
01年05月号 在席率40%以下のフリーアドレス型オフィス
日本ヒューレット・パッカード株式会社
01年03月号 オフィスのデザインが社員のモチベーションを変える
日本ヒューレット・パッカード株式会社
01年01月号 外資系企業の先進的なFM手法は
「日本からの発想」
で生まれる
エクソンモービルビジネスサービス有限会社
00年11月号 これからのオフィスについて広く意見交換する集まり
FM女性ネットワーク
(WFM)
00年09月号 全社員完全フリーアドレスで
「創造とコミュニケーション」
のオフィスを実
現
ジェイアールバス関東株式会社
00年07月号 先進的なFM戦略を行うことが企業の経営体質強化につながる
ソニー株式会社
00年05月号 コスト意識を徹底させるために社内で課金制度を導入する
オムロン株式会社
00年03月号 オフィスの効率化を考えていくとFM手法が最適である
富山化学工業株式会社
00年01月号 日本企業には日本企業にあったファシリティマネジメントがある
富士通株式会社
99年11月号 経営のスピードアップを促すのもファシリティマネジャーの仕事
富士ゼロックス株式会社
99年09月号 財務評価手法で移転メリットを分析する
有限会社中津エフ.
エム.
コンサルティング
99年07月号 オフィスは考え抜いた作品である
日本オラクル株式会社
99年05月号 ファシリティマネジャーは会社の経営全体を把握する
東京海上火災保険株式会社
ファシリティマネジャーがつくると
オフィスビルは使いやすくなる
です。
● 現在入居ビル
● 新本社ビル
この作業は都市計画に似ています。広大な更地に宅地を
造成する場合、まず道路の部分を確保してから、それにそっ
て1軒分づつ区画を分けていきますよね。決して、先に家を
日本生命では、2004年10月の運用開始を目指して、東京
建ててから土地を分けるわけではない。同じことをオフィ
駅丸の内北口前の旧国鉄本社跡地に新しい本社ビルの建設
スでも行ったのです。
を進めています。私は、社内のオフィスづくりを担当してき
実際にその「区画」をどう使うかは、ある程度、個々の部門
たファシリティマネジャーの一人として、このプロジェク
に任せています。たとえば、
「 デスクを少なくして打ち合わ
トに計画段階から携わっています。
せ用のテーブルを増やしたい」という要望があれば、決めら
従来なら、ビル建設とオフィスづくりはまったく別の作
れたスペースの中であればOKです。ただこの場合でも、2区
業でした。自社ビルを建てるときでも、建物をつくるのはあ
画や4区画といった単位で「用地転換」をしてもらうように
くまで建築家と建設会社の仕事です。そして、工事がかなり
ルールにしたいと思います。ただし、
「3.5区画を……」とい
進んだ段階で、初めて、ファシリティマネジャーが内装やレ
った区分けの変更は認めないこととします。もしそれを許
イアウトに取りかかります。
可してしまうと、やがて徐々に区画が曖昧になり、レイアウ
さらに賃貸ビルであれば、ファシリティマネジャーの仕
トが乱れていってしまいますから。厳密な区画分けにした
事領域はもっと狭くなってしまうでしょう。標準内装まで
がってデスクやミーティングスペースの配置をしてもらっ
すでにできあがった状態からオフィスづくりに入るのが一
ていれば、何年か経っても、境界がずれてくる可能性は大分
般的ですから、ファシリティマネジャーが望ましいと思う
低くなるのです。
オフィスを計画するのは簡単ではありません。
今回の新本社プロジェクトでは、全国で自社のオフィス
づくりを行ってきたインハウスのファシリティマネジャーが、
家具の種類やレイアウトの標準化で
ランニングコストは最小限になる
ビル建設に参加することで、よりオフィス計画のしやすい
ビルを構築しようということになったのです。
すべてのフロアに共通の区画を割り当てるユニバーサル
ちなみに、新しいビルは日本生命が本社として使うだけ
レイアウトはスペースの有効利用になるだけではありませ
でなく、賃貸用のフロアも用意しています。したがって、
「魅
ん。よくいわれるように組織変更や人事異動に伴う家具の
力的なオフィスを供給し、ビルの資産価値を高める」という
移動を最小限に抑えることができます。今後のオフィスづ
ビジネス上の目的からも、ファシリティマネジャーが計画
くりでは、レイアウト変更にかかるコスト、いわゆるチャー
に参画する意味はあるのではないでしょうか。
ンコストの削減は重要な課題の一つです。ユニバーサルレ
自由度の高いモジュール式のグリッド天井や複数フロア
イアウトのもう一つの目的は、この点にあります。
を借りる企業のために内階段を可能にした開口可能な床、
これまで日本生命では、ワークステーションの標準化、モ
さらにフロアごとに独立した専用の光ファイバーなど、フ
ジュール化ということがあまり重要視されてきませんでし
ァシリティマネジャーたちの期待に応える新しい試みを行
た。卑近な例ですが、課長職の社員は1200mm幅の机に
っており、かなりオフィス計画のしやすいオフィスビルに
400mmの脇机を一つつけて使っていることが多いのですが、
なるものと自負しています。
役職が更にあがると、1600mmの机1つに脇机なしという
モジュール(区画)
を明確にした
都市計画型のオフィスレイアウト
のが一般的で、
わざわざ、デスクを取り替えていたのです。
実質的な違いは、天板が1枚か2つに分かれているかだけ
なのですが、こんなことにもオペレーションコストがかか
っていたわけです。
建物の全体的な企画に続き、私たちは本社ビル内の新し
新しいオフィスでは、日本企業伝統の「上長席を独立させ
い自社オフィスの設計を始めました。ここでも「今後、日本
た島型対向レイアウト」は廃止する予定です。ユニバーサル
生命のオフィスづくりのポリシーを示すスタンダードにし
レイアウトに基づいてデスクを一律に並べるようにしてい
ていこう」という高い目標を持って作業を進めてきたため、
ます。それによりワークステーションが統一され、大きなオ
いくつか新しい試みに挑戦しています。その一つがユニバ
ペレーションコストのダウンになるはずです。もちろん、組
ーサルレイアウトです。
織変更や人事異動があっても、デスクのレイアウトを大き
ユニバーサルレイアウトといっても、ただ整然とデスク
く変える必要もありません。
を並べただけではありません。まず私たちは、フロアの平面
マネジメントの第一歩は「単位」を決めることにあるので
図を見ながら、通路とデスクスペースを明確に決めました。
はないでしょうか。それが、ユーザーとマネージャーとの共
そして後者については、一定面積のブロックで完全にモジ
通認識の基礎になるわけです。その共通認識が成立してい
ュール化したのです。具体的には、あるサイズで1人あたり
る前提があれば、今後仕事内容が変化した場合でも、柔軟に
の面積を規定し、1ユニットとしました。そのユニットを組
対応できるルールを定めておくことによって、中長期的な
み合わせることで、全体の区画がつくられるようにしたの
オフィスコストのマネジメントも可能になると思います。
個室占率7.5%
個室占率35.8%
オフィスづくりは運用を開始した時点で終わりではあり
かし本当に密室が必要とされるケースがどれだけあるので
ません。継続してオペレーションできるかどうかにこそ、フ
しょうか?ミーティングがしたければ、デスクの横の区画
ァシリティマネジャーは知恵を絞るべきなのだと思います。
にテーブルを置けばいい。そのほうがスペース効率はあが
オフィスの無駄につながる
SMLを徹底的に排除しよう
う利点もあります。
るし、インフォーマルコミュニケーションを誘発するとい
一般的には、会議室の使用時間というのは勤務時間の約3
分の1程度といわれていますから、個室型会議室がいかに効
新オフィスではもう一つ、スペースの有効利用を図るた
率の悪いスペースであるかお解かりと思います。
めに、効率の悪いものを徹底的に排除しました。その対象に
したがって、新しいオフィスでは、デスクの周囲に打ち合
なったのが、よくいわれるオフィスのSML。ストックルーム
わせスペースを多くとるようにし、密閉式の会議室はでき
とミーティングルーム、
ロッカールームのことです。
るだけ減らすようにしました。固定された部屋がなくなっ
まず、資料などを保管する共用のストックルームは、本社
たことで、レイアウト変更にも対応しやすくなり、チャーン
内に設けずに、郊外にスペースを用意することにしました。
コストの削減にこの点でも寄与することができています。
試算してみると、都心のビルと比べてファシリティコスト
同様にいえばロッカールームも似たような存在ですね。
は約10分の1になります。
朝と夕方の数分ずつしか使わないのに専用のスペースを確
場合によっては「手元にあったほうが便利な資料」という
保しておくのは、ファシリティの無駄でしかありません。
のもあると思います。これはDVD等を使った電子化を検討
このようにSMLはスペースの有効活用を図るうえで、廃
してはどうかと考えています。ちなみに社外倉庫に預けた
止や削減を検討すべき対象なのですが、ただこれらをなく
場合でも、申請した次の日には手元に届けてもらえるので、
していくには、それなりにきちんとした対策が必要です。た
ほとんどの場合、不都合はないと思われます。
とえばストックルームを郊外に移すには書類をデリバリー
ミーティングルームについては、私たちは常々、効率の悪
できるシステムがなければならないし、ロッカールームは
いスペースだと考えていました。もちろんビジネスを進め
女性社員の制服をやめなければ廃止できません。日本生命
るうえで打ち合わせは頻繁に行わなければなりません。し
では、すでに制服は廃止されたので、
ロッカールームは必要
企業にとっても参考になるような気がしますね。
せん。日本生命では、すでに制服は廃止されたので、ロッカー
ルを実現できるか否かは、個人の机を書類置き場としての
ルームは必要なくなりました。現在、オフィスの35%を占め
役割から開放できるか否かにかかっています。つまりは、1
このようなスタイルであれば、昼食時以外にもさまざまな
るこれらの個室面積は、新本社では8∼10%に削減されます。
人1台のノートパソコンと電子化された文書の共用ができ
目的で利用できますので、広いスペースがより有効に活用で
スペースの有効活用により、フロア全体での1人あたりスペ
るかどうかがポイントなのです。いくらデスクやレイアウ
きます。さらに社内のコラボレーションにも有効であり、仕
ースは現行のままで、各自のデスクまわりには若干の余裕を
トを工夫しても、社内のどこでも同じように仕事ができる
事のスタイルを変えるのにも大いに効果があるはずです。
持たせることが可能になりました。その余裕を利用して、フロ
システムがなければ、
ノンテリトリアルなど実現できません。
ア内での職員の行き来がしやすいよう工夫をすることで、オ
反対に、こうしたシステムさえあれば、現在の旧態全とした
フィス内の活性化を図ることにしたのです。またフロアの両
デスクでもノンテリトリアルは可能なのです。私たちファ
新本社で生まれるオフィスのDNAが
全国の支社や営業所に広がってほしい
サイドに外部排気式の喫煙室を設け、南面の窓側にお茶など
シリティマネジャーにとって重要なのは、会社が働き方と
を飲むことができるオープンパントリーをつくるなど、全体
してのノンテリトリアルを採用した場合に、円滑に移行で
ご存じの通り、日本生命は全国にたくさんの支社や営業所
として職員の出会い、いわゆるインフォーマルコミュニケー
きるようにオフィス空間の仕掛けをつくっておくことでは
を持つ会社です。その数は約2000カ所にも及びます。このた
ションを誘発する仕掛けを随所に設けてあります。
ないでしょうか。もっとも、働き方のデザインにまで、ファ
め、従来は自社ビルや賃貸ビルを含めた不動産の管理が私た
ちの部門の役目であり、レイアウトを含めたオフィス空間全
本社オフィスということもあり、
セキュリティの強化にはか
体のマネジメントまではなかなか手が回っていないのが現
●新オフィスのレイアウト
状です。
そのため、多くのオフィスのマネジメントは現場まかせに
なり、現場は非常に多い課題を少ない人員でこなす必要があ
るため、
結果的にオフィスへの対応は後手後手になりがちで、
無駄なスペースを抱えていたり、資料があふれたりと、ワー
キングプレイスとして決していい環境とはいえない状態を
つくってきてしまうことが多かったと思います。そんな反省
から、ここ数年、全社的なファシリティマネジメントの導入
が急務となってきていました。
私は不動産部門に配属されて8年目になりますが、最初の
ころは自社ビルの建て替えプロジェクトを担当したり、賃料
コスト削減の観点から、自社物件・賃貸物件のポートフォリ
オの組換えを推進したりと、ハードウェア中心のマネジント
が主でした。ところが、将来に向けたオフィス戦略を考える
ためにはその利用状況まで細かくチェックしてオペレーシ
なり気を使いました。
新本社ビルでは動線計画を綿密に行い、
シリティマネジャーが積極的に提言を行うべきという考え
ョンを計画する必要にせまられてきたのです。
ニッセイ社員・テナントの職員・来館者等のセグメントにあわ
方もあり、そうした考え方が認知されている会社では、ファ
たとえば、あるオフィスが70坪のスペースを使用してい
せて動線をしっかり区別し、できるだけセキュリティチェッ
シリティ主導で働き方が検討されることもあっていいとは
たとします。それが、もしかするとその営業所の状況によっ
クがしやすいような工夫も施しました。
思います。
ては60坪で大丈夫かもしれず、その際、わざわざ賃貸ビルを
ノンテリトリアルの導入を決めるのは
レイアウトではなくシステムの問題
社員食堂ではなく、打ち合わせができ
食事もできるフリースペースという発想
借りなくても自社保有のビルに吸収でき、賃料コストをまる
まる削減できるというケースが散見されたのです。
なにしろ物件の数は多いですから、こうやって少しずつス
ペースの無駄を省いていくだけで、全社では10億円単位の
ところで、ユニバーサルレイアウトを採用するというと、
新本社の工夫の一つとして、社員食堂の代わりに約400席
コストダウンができるかもしれないのです。そんな考えから
よく「フリーアドレスのノンテリトリアル型オフィスにする
のフリースペースを設けたことがあげられます。ここは原則
ファシリティマネジメントの意義について本格的に考えは
のですか?」といった質問を受けるのですが、このテーマに
として自由な打ち合わせや作業を行う場所なので、各テーブ
じめると、自社ファシリティの問題点が次々とわかってくる
ついては少し誤解されているように思うので、少しだけ解説
ルにネットワークや電源の配線をしてあります。
ものです。利用実態にオフィスプランやビルプランがマッチ
しておきます。
しかし同時に、食事や喫茶にも利用できるように、外部に
していなかったり、オフィス空間と使われる家具、システム
日本生命では、現時点で全社的にノンテリトリアルオフィ
委託して、調理場を持った売店を開設してもらうことにしま
インフラがチグハグだったり・・・改めて「ニッセイのオフィス
スを採用することは考えていません。ユニバーサルレイアウ
した。もちろん社員食堂ではありませんから光熱費などの補
をトータルに構築すること」の重要さにについて考えさせら
トした新本社でも全員分のデスクを用意します。
助は行いません。社員食堂ほど安くはありませんが、外食に
れました。この点、今回の新本社の建設は大きなチャンスで
もちろん、今後は方針が変わるかもしれませんが、ただそ
比べたら安く済みますから、社員には納得してもらえるので
した。まずここで合理的なオフィス空間を提示しスペースの
のときでも、
レイアウトを大きく変更する必要はありません。
はないでしょうか。
有効活用を実現させれば、ファシリティをマネジメントする
今のままのデスク配置で、
勤務形態だけを変えればいいのです。
たしかに500円程度で食事ができる社員食堂は魅力的で
ことの有用性が会社全体に認知されると思ったのです。その
よく、家具メーカーさんが「このデスクはノンテリトリア
すが、コストやスペースの効率を考えたら、都心のビルでは
結果、やがて本社から支社や営業所に異動していく社員が、
ルオフィスに向いています」といったPRをしてくることがあ
なかなか難しい話です。したがって、
「 食事も可能なフリー・
これに倣い、オフィス空間を合理的に構築する試みをしてく
りますが、これって本当は変な話ですよね。ノンテリトリア
ミーティングスペース」というまったく新しい施設は、他の
れることが期待できます。つまり、
「 マネジメントされたフ
ァシリティ」のDNAを伝えていくためにも、トリガーとなる
画期的なオフィス戦略を示す必要があったのです。
経営資源の一つであるファシリティの
有効活用と質の向上が大きな課題になる
ファシリティは今や重要な経営資源の一つとして認識さ
れるようになってきましたが、まだまだ有効な戦略を採用
している日本企業は少ないように思います。たとえば、同じ
ような経営資源である「人」や「情報」には多くの投資をし、
さまざまな改革を進めているのに、オフィスに関しては、い
まだに「スペースだけ確保すればいいだろう」という発想の
会社が多いのではないでしょうか。
しかし、
私たちは、
オフィスは、
利益を生み出す
「生産装置」
だと考えています。メーカーが工場の生産性を高めようと
するように、非製造業はオフィスの生産性こそが業績を左
右する重要なファクターであると意識しなければならない。
そしてそのレベルアップを図るのがファシリティマネジャ
ーの仕事だと思うのです。
問題なのは、
「 オフィスの生産性を向上する」ために行っ
た施策の結果が、なかなか数量化しにくく、効果がわかりに
くい点でしょうね。オフィスが良くなったら急に売上が伸
びたなどということは、あまり頻繁にあるとは思えません。
経営サイドからすれば、コストの圧縮ならいざ知らず、生産
性の向上という定性的なものに真剣に取り組む動機はなか
なか得られないのだと思います。
幸い、最近はファシリティマネジメントに取り組む企業
も増えてきており、オフィス環境をマネジメントすること
の意義が少しずつ認知されはじめてきています。試行錯誤
を続けながらも新しい試みを続けていれば、やがてそこに
答が見えてくる。今回の、新本社の例は、日本生命のオフィ
スの環境を大きく改善していくための第一歩になると信じ
ています。