2006 年度国際法基礎ガイダンス Ⅰ.この授業のねらい ○国際法の主要な制度(1年次の「武力紛争と法」で取り上げた部分を除く)の説明を通 して、国際法の基礎的な知識と考え方を身につける。 制度の趣旨、制度の沿革(歴史) 、重要な法律問題の解説にウェイトをおく。 国内法との比較→国内法の学習の参考に。 国際法のより特殊な分野を扱う科目(3年次の「国際機構論」 「国際環境法」 )につな げる。 ○国際法に関連する、または国際法上の制度の背景にある世界情勢や国際問題、国際社会 の仕組みに関する知識を身につける。 他の国際関係科目( 「国際関係論」 「平和学」など)とともに、グローバル化し相互依 存の高まった国際社会において、地球市民として生きてゆくために必要な知識を修 得する。 新聞の国際面がよく理解できるようにする。 Ⅱ.国際法とは何か――法律学の体系における位置づけ 一般的な分類――公法と私法(と社会・経済法) 実体法と手続法(訴訟法) 国際法と国内法 国際(公)法と国際私法 国際法の体系 国際法の定立――法源 国際法と国内法の関係 国際法の主体(権利義務の担い手)――国家 個人 国際機構 国際法の実体的部分 空間の管轄――領土 海洋 空域 国際公域(南極・宇宙など) 個人の管轄――外国人の地位 国際人権法 国際犯罪の規制 国際法実施の手続――外交関係 国際責任 紛争の平和的解決 国際裁判 戦争――武力行使の規制 国際人道法 軍縮 国際法では各論の分化が著しい――国際機構法(国連法・EU法) 国際経済法 国際 人権法 国際環境法 国際刑事法など Ⅲ.講義の仕方と受講上の注意 口述。レジュメ・資料配布(結構多い) 。 出席はとりません。 単位認定方法・・・・・・試験 60点・レポートまたは小テスト 40点の総合点の予定。 昨年度の実績……履修登録者207 名・受験者 167名・合格者 118 名(70.7%) -1- 2006 国際法基礎 学生による授業評価……授業目標達成度・平均 3.32(5−7人、4−41 人、3−72 人、2−11 人、1−1人) 、満足度・平均 3.72(5−22 人、4−67 人、3−32 人、2−9人、1−2人) 適宜アンケートを実施し、受講者の意見を取り入れたいと思います。 Ⅳ.テキスト・参考書 ◎テキスト――なし ◎条約集(六法に相当)――広部和也・杉原高嶺編『解説条約集』 (三省堂、2006年版) <必ず購入のこと>(それ以外に有斐閣・東信堂の条約集がある) ◎参考書(※は指定参考書) ・入門書 松井芳郎編『国際法から世界を見る 市民のための国際法入門』 (東信堂)※ 中谷和弘・植木俊哉他著『国際法』 (有斐閣アルマ) (2006年3月刊行) 西井正弘編『図説国際法』 (有斐閣) (品切) ・概説書 杉原高嶺他『現代国際法講義(第3版) 』 (有斐閣)※ 小寺彰他『講義国際法』 (有斐閣) ・判例集・資料集 山本・古川・松井編「国際法判例百選」 (ジュリスト別冊・有斐閣) 田畑・竹本・松井編『判例国際法』 (東信堂) 大沼編『資料で読み解く国際法』 (上・下、第2版) (東信堂) -----------------------------------------------------------------------------------------◎担当教官のプロフィール 湯山智之(ゆやまともゆき) 法学部助教授 1969年4月・愛媛県今治市生まれ 今治西高校・東北大学卒業 東北大学大学院修了 1999年4月・香川大学赴任 -2- 第Ⅰ講 イントロダクション――国際法の概要と歴史 A.国際法の概要 国際法の定義=国家によって定立され、国家を規律対象とする法 特徴=法を定立し執行する集権的機関(国内社会における政府)の不存在 国際社会はアナ−キー・分権的社会である ※国連安全保障理事会の経済制裁・軍事行動→権限が限定される ◎立法=国家の同意による(国内法では議会が法を制定) 条約(二国間条約・多数国間条約) 同意(批准)した国家のみを拘束する 慣習法(一般国際法) (原則として)すべての国を拘束する ◎執行(行政)=原則として国家自身による(国内法では行政府) ◎司法(紛争解決)=紛争の平和的解決の義務(国連憲章2③・33) 裁判による解決(国家は裁判による解決に消極的である/国内法ではこれが原則) 司法裁判所(常設)と仲裁裁判所(事件毎に設置) ★ 国際司法裁判所(ICJ) 国連の主要な司法機関(憲章 92) ・前身は常設国際司法裁判所(PCIJ) 争訟手続と勧告的意見手続がある 裁判所への付託は紛争当事国の同意による(国内法では応訴義務がある) ※合意付託――特別協定(事後の合意) 、裁判条約・裁判条項(事前の合意) 強制管轄権受諾宣言(宣言をした国同士に限られる) 判決の不履行には国連安保理が制裁(憲章 94②) 裁判所の機能分化→国際海洋法裁判所・WTO紛争解決機関・EC裁判所・欧 州人権裁判所・投資紛争解決センター(ICSID) ・国際刑事裁判所・国連行 政裁判所など 政治的解決(交渉による)……見舞金(ex gracia compensation)支払、陳謝など -3- 2006 国際法基礎 実力による解決(自力救済) 武力行使……戦争など(伝統的国際法)→現在は禁止 対抗措置(復仇 reprisal)……相手国の違法行為に違法行為で対応 報復(retorsion)……相手国の違法行為に適法な行為で対応 -4- B.国際法の歴史 (1)「国際法」の成立 近代化と国際法成立の要因――①中世的権威の打倒 ②新大陸の発見 ③経済の発展 スペイン・ポルトガル間のトルデシラス条約(1494) ヴィトリアの講義「インド人 について」 (1539) 近代国際社会=ウェストファリア・システムと呼ばれる 三十年戦争(1618-48)後のウェストファリア会議(1648)で成立 対等かつ独立した主権国家のみが国際社会のアクター グロティウス(1583-1645)――“国際法の父” 著書「戦争と平和の法」 (1625) 正戦論……正当原因のある君主のみが戦争をすることができる ローマ私法――law of nations(jus gentium,万民法)を君主間に類推適用 →国際法の始まり ヴァッテル(1714-1767) 著書「諸国民の法」(1758) 国際社会を「自然状態」とみなした。国家は絶対的な自然権を持つ。 主権国家の概念(独立・主権平等・内政不干渉・自衛権)を提唱 正戦論を放棄 (2)古典的国際法の成立(19世紀)とその主な特徴 ①ヨーロッパ社会の法 「文明国」 (西洋諸国)と「非文明国」 (アジアなど)のダブルスタンダード 保護・従属関係 不平等条約(領事裁判権) その他の地域(アフリカなど)=無主地先占による植民地獲得・支配の対象 ②正戦論から無差別戦争観へ 正当な戦争・不正な戦争を区別せず、宣戦布告などの手続さえ踏めば動機・目的の如 何を問わず戦争に訴えることができる 平時国際法と戦時国際法の区別 交戦者(国)の平等 第三国の中立義務 ③条約締結と仲裁裁判の実行――ルール整備と裁判による解決が行われる 通商、領事、犯罪人引渡、郵便、電信電話、鉄道、知的所有権などの分野 ハーグ平和会議(1899,1907)――戦時法に関する条約が中心 英米ジェイ条約(1794)→常設仲裁裁判所設置(1907) (3)現代国際法の主な特徴 ①国際機構の発達(国際社会の組織化・集団化) 国際行政連合(19世紀) -5- 2006 国際法基礎 集団安全保障体制……国際連盟(1920)→国際連合(1945) ※国連(加盟 191 か国、本部・ニューヨーク)の主要な機関 安全保障理事会……国際の平和と安全の維持に主要な責任を持つ。15 か国で構成。5大国は 常任理事国として拒否権を持つ(このため冷戦中はほとんど機能できず) 。決議は全国連加 盟国を拘束する。平和の破壊や脅威となる事態には経済制裁・軍事行動を発動できる。 総会……全加盟国が各一票を持つ。国連の扱うすべての問題について審議できるが決議に拘 束力はない(国連の財政、安保理非常任理事国の選挙、国連加盟の承認などを除く) 。 1960 年代以降 アジア・アフリカ諸国の独立により発展途上国が多数派になり発言力を増 す。 事務総長……事務局の長。安保理または総会から委任された任務を実行するほか、自らのイ ニシアチブで紛争の仲介を行う。 ②戦争の違法化(無差別戦争観の否定) 国際連盟規約(1919)→不戦条約(1928)→国連憲章(2④) 武力不行使原則……武力の行使及び武力による威嚇は原則として禁止 例外――自衛のための戦争と国連安保理(の許可)による武力行使 ③人権の保護(国家の絶対的主権の制約) 憲章の人権規定(1③,55,56)→世界人権宣言(1948)→国際人権規約(1966) ④自決権(植民地支配の違法化) 第一次大戦後のウィルソン 14原則→国連憲章1条2項→植民地独立付与宣言(1960) ※植民地以外への自決権の拡大 国際人権規約1①・友好関係原則宣言(1970) -6- 第Ⅱ講 国際法の主体 (1)国際法の主体とは? =①受動的主体(権利義務の保持)と②能動的主体(国際法の定立) 国家のみが国際法の主体(①+②)→個人や国際機構も国際法主体となる (2)国家 国家の要素(要件) (1933モンテビデオ条約1)=領土・住民・政府・外交能力(独立) 国家の様態は様々 国家連合・連邦国家 自由連合国 国家の成立態様・・・・・・合併・併合(吸収合併) ・分離独立・分裂 国家の人格の継続性・同一性……ソ連の崩壊/旧ユーゴスラビア崩壊(1991) 政府の交替・分裂は国家の交替・分裂を意味しない (3)国家承認(State recognition)=他国が新しく成立した国の存在を認める一方的行為 承認の方法 ①法律上の承認(完全な外交上の承認)……撤回不可能 (1)明示的承認・・・・・・一方的行為(電報・書簡)または合意による (2)黙示的承認・・・・・・外交関係の開設・条約の締結など ②事実上の承認……暫定的承認・撤回可能。 承認の意義 創設的効果説(伝統的立場)・・・・・・国家の成立には他国による承認が必要とされ、承 認によって国際法上の関係に入る 宣言的効果説(現在の通説)・・・・・・承認の有無に関係なく国家はその要件をみたせば 成立し、承認は国家成立の事実を確認するにすぎない 実際の承認の態様 承認の個別性・相対性 未承認国の地位 承認の裁量性 国連加盟と承認――国連事務局の見解(1950)は無関係とする(有力学説や日本政府 の実行は異なる) -7- 2006 国際法基礎 ※不承認主義(集合的不承認政策)……武力不行使原則や自決権など国際法に違反 して成立した国家の不承認(1932満州国、1965南ローデシア、1976トランスカ イ、1983北キプロスなど) ※政府承認(recognition of Government) 国内憲法に反する形(クーデター・革命・内戦)で政府が交替した場合に、新政府が 当該国家を代表する資格を有することについての各国の認定(明示的承認と黙示的 承認がある) トバール主義(正統主義)・・・・・・暴力により憲法に反して成立した政府は承認しない エストラーダ主義(事実主義、1930年・メキシコ) ・政府承認廃止論(1977 年以降の 英・米など)=明示的承認はせず、新政府が実効的支配を確立すればその範囲で実 務関係を処理 (4)ケーススタディ 分裂国家 ①東西ドイツ 西ドイツのハルシュタイン主義 東西ドイツ基本関係条約(1972)で相互の地位を承認→国連同時加盟(1973) 東西ドイツ統一条約(1990)で西ドイツが東ドイツを併合 ②南北朝鮮 カイロ宣言→日本の朝鮮領有権放棄(サンフランシスコ平和条約2a) 日韓基本関係条約(1965) 国連同時加盟・南北基本合意(1991) 日朝平壌宣言(2002) ③中国と台湾(中華民国) 国共内戦と中華人民共和国の「建国」 (1949) 西側による台湾政府から北京政府への政府承認の切替と国連代表権の交替(1971) 米中共同声明(1978)と米国の台湾関係法(1979) 日華平和条約(1952)→日中共同声明と日華条約の「失効」 (1972) パレスチナ 英国統治→国連総会の分割決議(1948)→イスラエル建国・第一次中東戦争(1949) 第三次中東戦争(1967)によるヨルダン川西岸・ガザ地区などの占領 国連総会、PLOをオブザーバーとして招請(民族解放団体) (1974) パレスチナ独立宣言(1988)と一部諸国の承認 インティファーダ(1987∼) イスラエルとパレスチナのオスロ合意(1993)→紛争激化(2000.9∼) 国連安保理ロードマップ決議(2003) イスラエルによる壁建設と ICJ勧告的意見(2004) -8- 第Ⅲ講 国際法の法源 国際法の法源(形式的法源)……ICJ規程 38Ⅰ (1)条約 名称……条約(treaty; convention) 協定・取極(agreement) 議定書(protocol) 規約(covenant) 交換公文(exchange of notes) 共同声明(joint comuniqué) など 条約の締結手続 交渉 ※国家の代表者(条約法条約7)→署名・採択(条約法9・10) →条約に拘束されることについての同意(批准/受諾・承認/加入) (条約法 10、 14-16) ※簡略形式の条約(条約法 12) 国連への登録・秘密条約の禁止(国連憲章102・条約法 80) 条約の解釈(条約法 31・32) 留保(条約法 19-23)と解釈宣言 条約の無効原因……国の代表者の錯誤(条約法 48) ・詐欺(同 49) ・買収(同 50) 、国 の代表者に対する強制(同 51) 、武力による強制(同 52) 、一般国際法上の強行規範 の違反(同 53)など 条約の終了原因……他の当事国による重大な違反 (条約法 60) 、 後発的履行不能 (同61) 、 事情の根本的変化(同 62) ※口頭の合意、一方的宣言 ※非法律的合意(政治的約束、紳士協定) (2)国際慣習法(international customary law) 慣習法の意義(条約と比較して) ①不文法 条約=成文法 ②国家の黙示的同意 条約=明示的同意 ③国際社会のすべての国を拘束する一般国際法(原則として。地域的慣習・二国間慣 習もある) 条約=締約国のみを拘束 慣習法の要件(国内法の類推) ①一般慣行……客観的・事実的要素 国家実行*(法令・判決・行政府の決定、宣言・ 外交覚書などを含む)の集積 ②法的信念(法的確信、opinio juris)……主観的・心理的要素 -9- 2006 国際法基礎 国際慣習法概念の変容・・・・・・法典化・立法条約の増大/国際社会の組織化・集団化 慣習法が問題になる局面 ①国家実行の集積による慣習法の成立(伝統的な成立方法) ②多数国間条約の効力が非当事国に及ぶ場合(条約法条約38) 北海大陸棚事件ICJ判決による条約の慣習法化の類型 a)先行する慣習法の明文化(法典化) b)規範創設的条項が事後に要件を備えて慣習法になる ※生成途上の規範が条約採択の際に慣習法として成立(結晶化) リビア・マルタ大陸棚事件ICJ判決 ③国連総会決議が法的効力を持つ場合 世界人権宣言 友好関係原則宣言 植民地独立付与宣言 宇宙活動原則宣言 深 海底原則宣言 インスタント慣習法論 ソフトロー論 ニカラグア事件ICJ判決 核兵器使用の合法性に関するICJ勧告的意見 (3)特殊な法源 法の欠缺の場合の裁判不能回避手段 法の一般原則……国内法の一般原則の類推適用 例・遅延利息・既判力・エストッペ ル(禁反言) ・間接証拠など 衡平(equity) 北海大陸棚事件以降、大陸棚・EEZの境界画定基準として用いられる (4)法源間の優劣関係 一般原則による ・後法は前法を廃する(lex posterior derogat prioriti) ・特別法は一般法を破る(lex specialis derogat generali) 他の条約に優先することを定める条約(国連憲章103・万国著作権条約 19) 条約に優先する慣習法規範=ユス・コーゲンス(強行規範) (条約法 53) - 10 - 第Ⅳ講 領域 (1)領域の概念 領域(territory)=領土と領海・領空(領土の従物)からなる 領域と領域主権の性質についての学説 客体説……領土=所有の客体 所有権(dominium)=使用・収益・処分の権利 空間説……領土は国家の一部 支配権(imperium, 統治権)行使の範囲 権能説……領土=領土内の人・物・事項に法的作用を及ぼす権能(管轄権)の根拠 領域主権(territorial sovereignty)……処分と統治の両面がある (2)領域権原(title)=領域主権を取得するための原因・根拠たる事実 原始取得 ①先占(占有) (occupation) 要件=領有の意思/継続的かつ平和的な主権の発現(具体的な国家活動の表示) ②発見(discovery) かつては認められた 未成熟の権原にすぎない(パルマス島事件) ③添付(accrretion) 新たな土地の形成 河床の移動・土砂の堆積・海底の隆起・埋め立てなど ※隣接性(contiguity) 西欧列強の植民地獲得の論理(後背地理論) 南極の領有権主張の根拠 権原とはならない(パルマス島事件) 承継取得 ④征服(conquest) 軍事占領による ①実効的かつ確定的支配と②征服意思の2要件 戦争の禁止が確立された現在は認められない。不承認主義の適用(スティムソン主 義→友好関係原則宣言・侵略の定義5③) ⑤割譲(cession) 二国間の合意による 例・アラスカ割譲(1867) サンフランシスコ平和条約 2 ※時効(prescription) 権原の評価……時際法の理論 (3)領土紛争における解決の原則 critical date(決定的期日)……それ以後の証拠は採用されない - 11 - 2006 国際法基礎 ・実効的占有(effective occupation) (近年の判例では実効性 effectivitésという) パルマス島事件仲裁判決(1928 年、米国対オランダ) 東部グリーンランド事件PCIJ判決(1933年、デンマーク対ノルウェー) マンキエ・エクレオ事件ICJ判決 ・黙認(acquiescense) ・禁反言(estoppel) 東部グリーンランド事件 プレア・ビヘア寺院事件ICJ判決 ・条約の解釈 リビア・チャド領土紛争事件ICJ判決 カシキリ/セドゥドゥ島事件ICJ判決 ・uti possidetis原則 ラテンアメリカ諸国の慣行→アフリカ諸国の国境画定原則 国境紛争事件ICJ判決(1986 年、ブルキナファソ対マリ) 陸地・島・海洋境界事件ICJ判決(1991年、エルサルバドル対ホンジュラス) (4)ケーススタディ――日本の領土紛争 ①北方領土(歯舞・色丹・国後・択捉4島) 日露通好条約(1855)では日本領→千島樺太交換条約(1875) カイロ宣言(1943) ・ポツダム宣言(1945) 第二次大戦中のヤルタ協定(1945)とソ連の参戦・北方領土の占領 サンフランシスコ平和条約2cによる「千島諸島」の放棄 日ソ共同宣言(1956)による2島引渡(平和条約締結後) 日ソ共同声明(1991) 東京宣言(1993) ②竹島(韓国名・独島) 江戸幕府による欝陵島・竹島支配の許可(1616)→江戸幕府による欝陵島放棄・李氏 朝鮮による欝陵島空島政策(1696)→明治政府による竹島の島根県への編入(1905) →GHQ覚書による日本領から除外する(暫定)措置(1946)→サンフランシスコ平 和条約→李承晩ラインの設定(1952)と韓国の竹島統治 ③尖閣諸島(中国名・魚釣島) 明治政府による沖縄県編入(1895)→サンフランシスコ平和条約による米軍統治・返 還→中国政府による領有権主張(70年代後半) - 12 - 第Ⅴ講 海洋法(その1) (1)海洋法秩序の歴史 伝統的海洋法秩序(領海/公海)の成立 スペイン・ポルトガル間のトルデシラス条約(1494)←英・オランダの反対 グロチウス(1609「海洋自由論」 )とセルデン(1635「閉鎖海論」 )の論争 バインケルスフーク(1673-1743)の着弾距離説(領海幅員3海里) 海洋法の変動……沿岸国による漁業・鉱物資源の独占 国際連盟ハーグ法典化会議(1930)……海洋法の法典化作業は失敗 トルーマン宣言(1945)……大陸棚の鉱物資源と公海の生物資源に対する管轄権を主張 第一次国連海洋法会議(1958)……ジュネーブ海洋法4条約(領海/公海/生物資源 保存/大陸棚)を採択――領海・接続水域/公海・大陸棚(水深 200mまでの海 底) 第二次国連海洋法会議(1960)…合意に至らず失敗 ※12海里漁業水域設定の動き 国連総会・深海底原則宣言(1970) ※200海里漁業水域の主張(1970-73) 第三次国連海洋法会議(1973-82) 反対していた米・加・EC・ソ(76) 、日本(77) も 200海里漁業水域を設定し 200 海里水域が一般化 国連海洋法条約(UNCLOS)採択(1982)……先進国は深海底制度に反発 国連海洋法条約第11部実施協定(1994)……深海底制度についての妥協が成立 (2)領海(territorial seas)と内水(inland waters) 領海……領海基線から 12海里(UN3) 内水……領海基線の内側(UN8①) 領海基線……原則=低潮線(UN5) 例外=直線基線(UN7) ・内水の閉鎖線 領海の地位……国家の領域の一部(UN2) 領域主権の制限(UN2③)……外国船舶の無害通航を認める義務 無害通航権(innocent passage) (UN17, cf.領海 14)……19世紀に成立 無害性の基準――船種基準説(商船か軍艦か)→行為態様説 無害通航の定義(UN19①)と例示(UN19②) 沿岸国の義務……無害通航の妨害の禁止(UN24) 沿岸国の権利……法令制定権(UN21) 保護権(UN25) 船舶に対する刑事裁判権の制限(UN27) ・民事裁判権の制限(UN28) - 13 - 2006 国際法基礎 ※軍艦・政府船舶の特則(UN30-32) 軍艦の無害通航権の有無と沿岸国の事前通告・許可の要求 ※その他特殊な船舶――潜水船(UN20)/原子力船・核物質運搬船(UN23) 内水 領土の一部・排他的支配権 入港・停泊を認める義務はない(cf. 日米通商 19③・ 日ソ通商8) 河川・湖 港(UN11) 湾(UN10) 河口(UN9) 直線基線の内側 歴史的湾(水域)……湾の条件をみたさない水域であっても、①沿岸国が平穏かつ長期 に主権を行使し(継続性) 、②他国もこれに異議を唱えない(非抗争性)場合に内 水として認められる ※瀬戸内海(紀伊水道)の法的地位……テキサダ号事件判決(1974・1981)→領海 法2条 (3)接続水域(contiquous zone) 範囲……領海基線から 12海里(領海 24)→24海里(UN33) 沿岸国の権限……一定の目的に関する規則違反の防止と処罰(UN33) - 14 - 第Ⅵ講 海洋法(その2) (4)公海(high seas) 公海の範囲(UN86、cf.公海1) 公海自由の原則(UN87、cf.公海2) 他国の利益に妥当な考慮を払う 領有の禁止(UN89) ・平和目的の使用(UN88) 公海上の船舶の地位……国籍(UN91)/旗国の排他的管轄権(旗国主義) (UN92)/ 旗国の義務(UN94) 公海上の衝突・事故の際の刑事裁判権(UN97) 旗国主義の例外 ①公海海上警察権(UN110, cf.公海 22)・・・・・・海賊行為・奴隷取引・無許可放送・国 籍・国籍濫用を行う船舶に対する国籍確認と臨検の権利 ②海上犯罪に対する刑事裁判権(拿捕・抑留・関係者の処罰) 海賊行為(UN101・105) ・無許可放送(UN109, 関係国による) ③継続追跡権(UN111, cf.公海 33) 領海・内水からの追跡を公海においても継続し拿捕できる権利(接続水域・排他的経 済水域にも拡大) (5)排他的経済水域(exclusive economic zone; EEZ) 特別の水域(UN55) 範囲――領海の外・領海基線から 200海里(UN55・57) 内容――資源目的に限定された権利(UN56) (1)主権的権利……天然資源(漁業・鉱物)の探査・開発・保存・管理/ EEZの経 済開発のための活動 (2)管轄権……海洋の科学的調査・環境保全・人工島設置 (3)その他の権利義務 生物資源の管理――許容漁獲量の決定(UN61①) 適当な保存・管理措置(同②) 自国の能力で許容漁獲量を収穫できない場合取極を結んで他国に余剰分の漁獲を 認める義務(UN62②) 沿岸国の入漁規則・法令制定権(UN64④) ・執行権(UN73) ※海底とその下は大陸棚の規定を適用(UN56③) ※EEZにおいては、航行・上空飛行・海底電線・パイプライン敷設の自由と関連規則 について、公海に関する 88−115条を適用(UN58) - 15 - 2006 国際法基礎 (6)大陸棚(continental shelf) (国連海洋法条約における) 範囲――大陸縁辺部の外縁までの海底(地質学上の大陸棚) ただし、領海基線から 200 海里までは認められる(76①) ※上部水域の地位(78条) 内容――大陸棚の天然資源に対する主権的権利(77) (7)漁業資源の保護 公海での漁獲の権利・義務(UN116-120) 公海・EEZにまたがって生息する魚種の規制 ・溯河性魚種(UN66) ・降河性魚種(UN67)……沿岸国に第一次的管理権 EEZ外 での漁獲を禁止 ・ストラドリング魚種(UN63)・高度回遊性魚種(UN64)……適当な国際機関を通 じて協力する義務 ・海産哺乳動物(UN65・120)……沿岸国・国際機関によるより厳しい規制 資源保存のため公海での船舶への規制を認める傾向 コンプライアンス協定(93年) 国連公海漁業実施協定(95年)……ストラドリング魚種・高度回遊性魚種の保護(長 期的持続可能性・予防的アプローチの採用) 。公海上の違反を理由とする旗国だけで なく沿岸国(EEZ内)や入港国の規制、公海上での乗船・検査の承認。保存措置に 同意しない地域的機関・取極非加盟国のアクセス排除など。 国内法(加、チリ、アルゼンチン、ペルーなど) ・地域的取極(2000年中部及び西部 太平洋における高度回遊性魚種資源の保存・管理のための条約) ※エスタイ号事件ICJ判決(1998年) ※みなみまぐろ保存委員会(CCSBT, 93年設立)とみなみまぐろ事件(豪・NZ対 日本。99年日本に調査漁獲中止を命じる国際海洋法裁判所(ITLOS)の暫定措置 命令、2000年管轄権を否定し命令を取消す仲裁裁判所判決) 国際捕鯨委員会(IWC)……79 年インド洋サンクチュアリ設定、82 年商業捕鯨モラ トリアム(86 年から実施、日本は異議申立するも 85 年に撤回) 、94 年南氷洋サン クチュアリ設定(日本はミンククジラについて異議申立) - 16 - 第Ⅶ講 空域と国際公域 A.空域(airs) 航空機の発達→空域の地位が問題 自由説と主権説 1919 パリ国際航空条約1条→1944シカゴ条約1 領空主権が慣習法上確立 無害航空権(パリ2)の否定/上空飛行・着陸には許可が必要/領空侵犯=違法行為 領空の範囲・・・・・・領土・領海の上空(シカゴ2) 領空侵犯に対する措置 民間機の侵犯……領域国は要撃し、警告、着陸命令 or退去・航路変更命令、進路妨害 を行う権利 ※大韓航空機撃墜事件(1983) ICAO理事会の武力行使非難決議 シカゴ条約改正(1984採択・98発効)=武器使用禁止・人命尊重(シカゴ3の2) 軍用機の侵犯……U2型機撃墜事件(1960) 武力行使が可能かは議論がある 公空……公海上空飛行の自由(公空の自由)(国連海洋法条約87) 防空識別圏(ADIZ)……接続空域 領海に近接する公海上空に設定しこの空域に 飛来した飛行機に対し、目的地・経路などの報告を要求する。要撃を行う国もある 民間航空機の地位 航空機の登録と国籍(シカゴ 17・20) ・管轄権・・・・・・登録国主義(シカゴ 12) 無着陸横断飛行と輸送以外の目的での着陸の自由……定期航空業務 (1944国際航空業 務通過協定) ・不定期飛行(シカゴ5) 定期国際航空業務……特別の許可(シカゴ6) 二国間航空業務協定によって相互乗 り入れ、路線、旅客・積荷の積載量、運賃などが取り決められる(1946米・英のバ ミューダ協定がモデル) 航空犯罪の防止……ハイジャック(1970ハーグ条約) ・航空テロ(1971モントリオー ル条約) B.国際公域 (1)南極(Antarctica) 南極の領有をめぐる紛争→国際地球観測年(1957-58)→南極条約(1959) 適用範囲……南緯 60度以南(6) 科学的調査の自由と国際協力(2・3) 領土権の凍結・領土権原設定の禁止(4) 平和利用……軍事的利用の禁止(1) 核爆発・放射性廃棄物処分の禁止(5) 管轄権……属人主義(8) 南極条約締約国協議国会議(9) - 17 - 2006 国際法基礎 南極あざらし保存条約(1972) ・南極海洋生物資源保存条約(1980) ・南極鉱物資源活 動規制条約(1988) ・南極環境保護議定書(1991) (2)宇宙(outer space) 1957 スプートニク1号打ち上げ→1963 宇宙活動原則宣言(国連総会決議)→1966 宇 宙条約 宇宙の探査・利用・科学的調査の自由(1) 宇宙活動の協力(9) 領有の禁止(2) 軍事的利用の禁止(4) 宇宙物体の地位……登録国の管轄権(8)/宇宙物体登録条約(1974)――打ち上げ国 による登録・国連事務総長への通報義務 宇宙活動に対する国家の責任(6) 国家の賠償責任(7)……打ち上げ国の国際責任 宇宙損害責任条約(1972)2条……無過失・無限責任 空域と宇宙空間の境界 高度説…1)航空機飛行の上限 2)引力がなくなる上限 3)衛星軌道の下限(近地点) 機能説…物体の活動内容(飛行機か人工衛星か)によって区別 宇宙の利用にともなう問題(衛星放送・遠隔探査など) 静止衛星軌道……1976 ボゴダ宣言(赤道直下の諸国による領有権・優先権の主張) 衛星通信放送……先進国の発出する番組の規制(1972ユネスコ総会決議・1982国連 総会決議) (3)深海底(seabed) 1967国連総会でのマルタ代表の提案(人類の共同遺産)→1970深海底原則宣言 人類の共同遺産(UNCLOS136)→人類全体の権利(UN137②) 主権(的権利) ・所有権設定の禁止(UN137①・③) 深海底の利用……人類全体の利益のため(UN140) 平和目的の利用(UN141) 深海底の資源の開発……国際海底機構直属の事業体(エンタープライズ)または機構の 承認した国家・自然人・法人など(UN153)→94 年 UNCLOS 第 11 部実施協定で修 正 (4)月その他天体(の資源開発) 1969アポロ月面着陸・月岩石のサンプル採取→1979月協定 人類の共同遺産(11①) 主権・所有権設定の禁止(11②・③) 天然資源開発の国際制度(11⑤・⑦) - 18 - 第Ⅷ講 国家機関の地位 (1)国家の民事裁判権からの免除(主権免除 sovereign immunity) 国家とその財産=他国の国内裁判所の管轄権から免除される 主権免除の意義――主権、主権平等、友好関係など ①裁判権免除 伝統的立場=絶対免除主義――スクーナー船エクスチェンジ号事件米国連邦最高裁判 決(1812年)で確立 例外=法廷地国内に所在する不動産に関する訴訟、免除を放棄した場合 制限免除主義 主権的行為(act jure imperi)と商業的行為(act jure gestionis)の区別 19世紀末のヨーロッパ大陸諸国の国内判例→1952年米国・テート書簡 1970 年代の立法――米国(1976年) 英国(78年) 欧州国家免除条約(72年) 国連・裁判権免除条約(1991年に ILCが草案作成→2004 年国連総会採択)…… 制限免除主義が慣習法になったとされる 区別の基準――行為目的説と行為性質説 国連条約……原則性質説だが目的も考慮(2②) 商取引(10・2①(c)) 、雇用 契約(11) 、法廷地国内での不法行為(12) 、法廷地国内の財産・知的財産権(13・ 14) 、会社などへの参加(15)など 日本――昭和3年 12.18大審院決定で絶対免除主義を表明 →横田基地夜間飛行差止訴訟最高裁判決(平 14.4.12) ②執行免除……免除が原則(例外あり。国連条約18-20) ※人権侵害に関する訴訟で加害国の主権免除を認めない国内裁判所の判決あり (2)国家機関の地位 ①国家元首・政府の長/ 外務大臣――絶対的免除を享有(慣習法) ②外交使節とその特権・免除(外交特権) 外交使節=派遣国を代表して接受国との外交事務を処理(外交関係条約3) 外交関係の開設=二国間の同意による(2) 外交特権の根拠――①治外法権説 ②代表説(威厳説) ③機能説 外交使節団の特権・免除――公館の不可侵(22) ・通信の自由(27)など - 19 - 2006 国際法基礎 外交官の特権・免除――身体の不可侵(29) ・裁判権の免除(31)など 外交使節の義務(41・42) 接受国の対抗手段――アグレマン(4) ペルソナ・ノン・グラータ(9) 外交関係 の断絶 ③領事機関とその特権免除(領事特権) 領事機関の任務……自国民の通商上・商業上・経済上の利益の保護、一定の行政事務の 遂行(領事関係条約5) 領事特権――外交特権に比べると制限される 例・公館の不可侵(22)・通信の自由 (27) ・身体の不可侵(29) ・裁判権の免除(31) (3)外国軍隊の免除と在日駐留米軍をめぐる問題 外国軍隊・軍艦・軍用機の免除=絶対的免除(ただし公務中のみ) ※駐留米軍の地位……日米安保条約に基づく駐留 在日米軍地位協定(1960) 旧安保条約に基づく行政協定(1952)→NATO軍地位協定(1951)に沿って改訂 A米軍の施設……米軍に管理権(日米地位協定3①) 日本当局の立入は原則として できない B米国軍人に対する民事裁判権(18⑨a) 執行免除(18⑤f) 公務執行中の行為に対する賠償請求権(18⑤)――民事特別法により日本国が賠償 責任→米国に償還(日本が 25%・米国が 75%負担) 公務執行外の行為に対する賠償請求権(18⑥) ※ファントム機墜落事件(横浜地判昭62.3.4判時 1225号 45 頁) ※米軍基地夜間飛行差止訴訟――平 5.2.25最高裁判決(日本国に対する差止請求を 却下) 平 14.4.12最高裁判決(米国に対する差止請求を主権免除を理由に却下) 。 C米国軍人に対する刑事裁判権 裁判権の競合を認める方式(17①)←52年行政協定では米軍が完全な裁判権 ①米軍当局の専属的裁判権(17②a) ②日本当局の専属的裁判権(17②b) ③競合する場合 (a)米軍当局の第一次裁判権(17③a) (b)日本当局の第一次裁判権(17③b) 逮捕・引渡(17⑤)……起訴までは米軍当局が身柄を確保 運用に関する 95年日米合意→04年日米合意 - 20 - 第Ⅸ講 外国人の地位に関する法 (1)総論 伝統的国際法=在留外国人の生命・人身・財産を保護する義務 外交的保護……請求国の裁量 外国人に与える保護の基準・・・・・・国際標準主義と国内標準主義の対立 国際人権法の発達とその影響 (2)外国人の出入国 受入国の主権的裁量事項←領域主権 入国――国家は外国人の入国を認める義務はない cf.出入国管理・難民認定法5 出国――原則として自由(慣習法・国際人権自由権規約 12②) 例外(自由権規約 12 ③) 強制的出国 ①追放(退去強制) 恣意的な追放は国際法違反(慣習法) 手続的保障(自由権規約 13) cf.出入国管理法 24 /日韓法的地位協定・入管特例法(特別永住者に対する退去強制 事由を制限) ②犯罪人引渡・・・・・・逃亡犯罪人引渡法 日米犯罪人引渡条約 双方可罰性の原則(法2三・四、条約2) 特定性の原則(条約7①) 自国民不引渡原則(法2、条約5) 政治犯不引渡原則(法2一・二、条約4①一) 政治犯の概念(純粋政治犯罪と相対的政治犯罪) 原則の性格――義務説と権能説の対立 慣習法化の有無(1976年尹秀吉事件最高裁判決は否定) 国際人権法による外国人出入国に関する国家の裁量権の制約 ※在日韓国・朝鮮人と「自国に戻る権利」 (自由権規約12④)……崔善愛(チェ・ソン エ)事件(最高裁判決・平成 10.4.10) ※不法残留外国人と家族生活の権利・児童の権利……01年自由権規約委員会ウィナタ 事件 ※引渡・追放に対する人権条約の適用……89 年欧州人権裁判所ゾーリング事件判決、 拷問禁止条約3 - 21 - 2006 国際法基礎 (3)難民の保護(庇護) 難民=政治難民(亡命者、条約上の難民) Cf. 難民条約1A(2) UNHCRの任務は貧困(経済難民) 、武力紛争、災害による難民(流民) 、国内避 難民に拡大 庇護・・・・・・難民(政治亡命者)に対して国家が与える保護 領域的(内)庇護・・・・・・領域主権の効果 外交的庇護・・・・・・接受国の主権の侵害とされ違法 cf.庇護事件ICJ判決 庇護権=国家の権利か個人の権利か? 世界人権宣言14①・・・・・・庇護を「求める」権利・すでに与えた庇護は奪ってはならな いという意味 難民条約・・・・・・難民受け入れは国家の裁量であることを前提(起草過程) ※ノン・ルフールマン原則(亡命者不送還原則) 迫害のおそれのある国家へ追放・送還することはできない(難民条約 33・国連領域的 庇護宣言→慣習法化したという見解が多数説) 難民条約による難民の保護 難民の定義(難民条約1A(2)・同議定書) 消極的保護・・・…不法入国・滞在を理由とする処罰の禁止(31) 、追放の制限(32・33) 積極的保護・・・…身分証明書・旅行証明書の発給(27・28) 、定住に必要な一定の待遇 (13-24) - 22 - 第Ⅹ講 国際犯罪の規制 (1)国家管轄権の種類 属地主義(cf.刑法1①…国内犯) 属人主義(cf.刑法3…自国民の国外犯/1②…船舶・航空機 ※3の2・受動的属人主 義) 保護主義(cf.刑法2…外国人の国外犯、自国の政治的・経済的な安全・秩序を害する犯 罪) 普遍主義(cf. 刑法4ノ2…外国人の国外犯、条約による設定) (2)個人の国際犯罪の類型 ①諸国の共通利益を害する犯罪 条約で普遍主義管轄権設定と「引渡か訴追か」を義務づけ ハイジャック(70年ハーグ条約) ・民間航空の安全を害する行為(71年モントリオール条約) 外交官に対する犯罪(73年外交官保護条約) ・人質行為(73年人質禁止条約) 核物質に関する犯罪(80年核物質防護条約) 拷問(84年拷問等禁止条約) シージャック(88 年海上航行の安全を害する不法行為防止ローマ条約) 麻薬・向精神薬の不法取引(88 年麻薬・向精神薬不正取引防止条約) 国連要員に対する犯罪(94年国連要員保護条約) 爆弾テロ(97 年爆弾テロ防止条約) テロリズムに対する資金供与(99 年テロ資金供与防 止条約) 児童の売買・買春/児童ポルノ(00 年児童の権利条約児童売買等選択議定書) 国際的組織犯罪(00年国連組織犯罪防止条約) ②国際法上の犯罪(国際法違反の犯罪・広義の戦争犯罪) 慣習法上個人に直接義務が課せられる 戦争犯罪・平和に対する罪・人道に対する罪(1945 ニュルンベルク裁判所憲章・ 1946極東軍事裁判所条例) →1946 国連総会「ニュルンベルク国際軍事裁判所条例及び同裁判所によって認め られた国際法の諸原則」を確認する決議 ジュネーブ諸条約の重大な違反行為(1949ジュネーブ諸条約・1977第一追加議定 書) ジェノサイド(1948 ジェノサイド条約) ・アパルトヘイト(1973 アパルトヘイト 条約) ※1998国際刑事裁判所(ICC)規程(ローマ条約)5① ジェノサイド/人道に対する罪(アパルトヘイトを含む)/戦争犯罪(ジュネー ブ諸条約の重大な違反・戦争の法規慣例の違反など)/侵略の罪 - 23 - 2006 国際法基礎 (3)国際法上の犯罪に関する規則 ①国際社会の名の下での処罰 国際裁判所による処罰……ニュルンベルク裁判(1945-46) ・東京裁判(1946-48) ジ ェノサイド条約6 アパルトヘイト条約5 旧ユーゴ・ルワンダ国際刑事裁判所 (1993/94・国連安保理が強制措置として設置) ICC 混合裁判所方式……シエラレオネ特別裁判所 (2000年8月国連とシエラレオネ政府の 協定により設立) カンボジア裁判所特別裁判部(03年6月に国連・カンボジアが 協定締結)など 国家による処罰←国際刑事裁判所の 98年まで未設置の状態 管轄権の普遍主義が認められるか or 伝統的な属地主義・属人主義にとどまるか? 普遍主義を明示・・・・・・ジュネーブ条約の重大な違反 アパルトヘイト4b ※ジェノサイド条約6――国際刑事裁判所・犯罪行為地国の裁判権 アイヒマン裁判(イスラエル・1958-59) ・バルビー裁判(仏・1983-85) ピノチェト裁判(英・1998-99)……拷問禁止条約を根拠 ②犯罪者の公的地位の無関係……軍事裁判所条例・ジェノサイド条約4・時効不適用条 約2・アパルトヘイト条約3・旧ユーゴ規程7②・ICC規程 27 ※大量人権侵害を行った国家元首などを逮捕・起訴する動き ピノチェト裁判……拷問禁止条約が国家元首の特権に優先 ICJ国際逮捕状事件(2002年4月)……現職外務大臣の特権が他国の普遍的管轄 権に優先するとした ミロシェビッチ元ユーゴ大統領に対する旧ユーゴ裁判所の起訴・審理 ③国際法上の罪刑法定主義(犯罪のみ)の適用 自由権規約 15・ICC規程 22 ④時効の不適用 1968戦争犯罪時効不適用条約・ICC規程 29 ⑤上官責任(部下の行為に対する上官の刑事責任) 山下裁判(1945 在マニラ米国軍事裁判所判決)で確立→時効不適用2・第一追加 議定書 86②・旧ユーゴ規程7③・ICC規程 28 ⑥上官命令の抗弁の否定 ニュルンベルク・極東軍事裁判所条例→旧ユーゴ規程7④・ICC規程 33 - 24 -
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